IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電工デバイス・イノベーション株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129808
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】キャパシタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20230912BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20230912BHJP
   H01G 4/33 20060101ALI20230912BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H01L27/04 C
H01L21/90 K
H01L21/90 B
H01L21/90 S
H01G4/33 102
H01G4/30 541
H01G4/30 547
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034090
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 武司
(72)【発明者】
【氏名】小松 嘉英
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
5F033
5F038
【Fターム(参考)】
5E001AH07
5E001AJ01
5E082BC33
5E082EE23
5E082EE37
5E082FG03
5E082FG22
5E082FG42
5F033GG01
5F033GG02
5F033GG03
5F033HH13
5F033HH18
5F033HH23
5F033HH28
5F033HH32
5F033HH33
5F033JJ01
5F033JJ13
5F033JJ18
5F033JJ23
5F033JJ28
5F033JJ32
5F033JJ33
5F033KK18
5F033KK23
5F033KK28
5F033KK32
5F033KK33
5F033MM05
5F033MM08
5F033MM19
5F033NN03
5F033NN06
5F033PP15
5F033PP19
5F033PP27
5F033QQ08
5F033QQ09
5F033QQ10
5F033QQ14
5F033QQ37
5F033QQ41
5F033RR04
5F033RR06
5F033RR08
5F033RR21
5F033RR22
5F033SS11
5F033SS22
5F033UU04
5F033VV10
5F033XX14
5F033XX19
5F038AC04
5F038AC05
5F038AC15
5F038AC17
5F038DF02
5F038EZ02
5F038EZ04
(57)【要約】
【課題】キャパシタの電気的特性の劣化を抑制する。
【解決手段】キャパシタは、基板10、前記基板上に設けられた第1電極14と、前記第1電極上に設けられた誘電体膜16と、前記誘電体膜上に設けられた第2電極18と、下面のうち少なくとも一部の第1領域50において前記第2電極に接触する第3電極20と、前記誘電体膜の上部、前記第2電極の上部および前記第3電極を覆う有機絶縁体膜26と、を備え、前記基板の上面の法線方向において前記第3電極の下面と前記第2電極との間に前記有機絶縁体膜は設けられていない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた第1電極と、
前記第1電極上に設けられた誘電体膜と、
前記誘電体膜上に設けられた第2電極と、
下面のうち少なくとも一部の第1領域において前記第2電極に接触する第3電極と、
前記誘電体膜の上部、前記第2電極の上部および前記第3電極を覆う有機絶縁体膜と、
を備え、
前記基板の上面の法線方向において前記第3電極の下面と前記第2電極との間に前記有機絶縁体膜は設けられていないキャパシタ。
【請求項2】
前記第2電極上に設けられ、前記第1領域に開口を有する無機絶縁体膜を備え、
前記第3電極の下面のうち前記第1領域は前記開口を介し前記第2電極に接触し、前記第3電極の下面のうち前記第1領域を囲む第2領域は前記開口の外側の前記無機絶縁体膜に接触する請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項3】
前記第3電極は、前記第2電極上に設けられたシード層と、前記シード層上に設けられためっき層と、を備える請求項2に記載のキャパシタ。
【請求項4】
前記無機絶縁体膜の上面のうち前記第3電極を囲む第3領域に、凹部が設けられている請求項3に記載のキャパシタ。
【請求項5】
前記法線方向において前記第3電極の下面のうち前記基板の上面に平行な部分と前記第2電極との間に前記有機絶縁体膜は設けられていない請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項6】
前記第3電極は、前記第2電極上に設けられた第1層と、前記第1層上に設けられ前記第1層の抵抗率より低い抵抗率の第2層と、を備え、
前記法線方向において前記第1層と前記第2電極との間に前記有機絶縁体膜は設けられていない請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項7】
基板上に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極上に誘電体膜を形成する工程と、
前記誘電体膜上に第2電極を形成する工程と、
前記第2電極上に第1開口を有する第1マスク層を形成する工程と、
前記第1開口の内面および前記第1マスク層上にシード層を形成する工程と、
平面視において、前記シード層上に前記第1開口に含まれ前記第1開口より開口面積が小さい開口面積を有する第2開口を有する第2マスク層を形成する工程と、
前記第2開口内にめっき層を形成する工程と、前記第2マスク層を除去する工程と、
前記めっき層をマスクに前記シード層を除去することで、前記シード層と前記めっき層とで第3電極を形成する工程と、
前記基板上に前記第3電極を覆うように有機絶縁体膜を形成する工程と、
を含むキャパシタの製造方法。
【請求項8】
前記有機絶縁体膜を形成する工程は、前記基板の上面の法線方向において前記第3電極の下面と前記第2電極との間に前記有機絶縁体膜が形成されないように、前記有機絶縁体膜を形成する工程を含む請求項7に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項9】
前記第1マスク層を形成する前に、前記第2電極上に、第3開口を有する無機絶縁体膜を形成する工程を含み、
前記第2マスク層を形成する工程は、平面視において、前記第3開口を含み、前記第3開口の開口面積以上の大きさの開口面積を有する前記第2開口を有する前記第2マスク層を形成する工程を含む請求項7または請求項8に記載のキャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に第1電極、誘電体膜および第2電極を積層したキャパシタが知られている。第2電極上に配線として用いられる第3電極を形成することが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-6620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、キャパシタを覆うように有機絶縁体膜を形成すると、有機絶縁体膜の応力により、第3電極が剥がれる、またはキャパシタの耐圧が低下することがある。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みなされたものであり、キャパシタの電気的特性の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態は、基板と、前記基板上に設けられた第1電極と、前記第1電極上に設けられた誘電体膜と、前記誘電体膜上に設けられた第2電極と、下面のうち少なくとも一部の第1領域において前記第2電極に接触する第3電極と、前記誘電体膜の上部、前記第2電極の上部および前記第3電極を覆う有機絶縁体膜と、を備え、前記基板の上面の法線方向において前記第3電極の下面と前記第2電極との間に前記有機絶縁体膜は設けられていないキャパシタである。
【0007】
本開示の一実施形態は、基板上に第1電極を形成する工程と、前記第1電極上に誘電体膜を形成する工程と、前記誘電体膜上に第2電極を形成する工程と、前記第2電極上に第1開口を有する第1マスク層を形成する工程と、前記第1開口の内面および前記第1マスク層上にシード層を形成する工程と、平面視において、前記シード層上に前記第1開口に含まれ前記第1開口より開口面積が小さい開口面積を有する第2開口を有する第2マスク層を形成する工程と、前記第2開口内にめっき層を形成する工程と、前記第2マスク層を除去する工程と、 前記めっき層をマスクに前記シード層を除去することで、前記シード層と前記めっき層とで第3電極を形成する工程と、前記基板上に前記第3電極を覆うように有機絶縁体膜を形成する工程と、を含むキャパシタの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、キャパシタの電気的特性の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1に係るキャパシタの断面図である。
図2図2は、実施例1に係るキャパシタの平面図である。
図3A図3Aは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図3B図3Bは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図4A図4Aは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図4B図4Bは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図5A図5Aは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図5B図5Bは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図6A図6Aは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図6B図6Bは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図7A図7Aは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図7B図7Bは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図8A図8Aは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図8B図8Bは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図9A図9Aは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図9B図9Bは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図10A図10Aは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図10B図10Bは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図11A図11Aは、比較例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図11B図11Bは、比較例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図12A図12Aは、比較例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図12B図12Bは、比較例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図13A図13Aは、比較例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図13B図13Bは、比較例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図14A図14Aは、比較例2に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図14B図14Bは、比較例2に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図15A図15Aは、比較例2に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図15B図15Bは、比較例2に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図16図16は、比較例2に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図17図17は、実施例1の変形例1に係るキャパシタの断面図である。
図18図18は、実施例1の変形例2に係るキャパシタの断面図である。
図19A図19Aは、実施例1の変形例3に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図19B図19Bは、実施例1の変形例3に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図20A図20Aは、実施例1の変形例4に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図20B図20Bは、実施例1の変形例4に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図21A図21Aは、実施例1の変形例4に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図21B図21Bは、実施例1の変形例4に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図22A図22Aは、実施例1の変形例5に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図22B図22Bは、実施例1の変形例5に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図23A図23Aは、実施例1の変形例6に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図23B図23Bは、実施例1の変形例6に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図24A図24Aは、実施例1の変形例6に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図24B図24Bは、実施例1の変形例6に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の一実施形態は、基板と、前記基板上に設けられた第1電極と、前記第1電極上に設けられた誘電体膜と、前記誘電体膜上に設けられた第2電極と、下面のうち少なくとも一部の第1領域において前記第2電極に接触する第3電極と、前記誘電体膜の上部、前記第2電極の上部および前記第3電極を覆う有機絶縁体膜と、を備え、前記基板の上面の法線方向において前記第3電極の下面と前記第2電極との間に前記有機絶縁体膜は設けられていないキャパシタである。第3電極の下面と第2電極との間に有機絶縁体膜が設けられていないため、有機絶縁体膜の応力に起因したキャパシタの電気的特性の劣化を抑制できる。
(2)前記第2電極上に設けられ、前記第1領域に開口を有する無機絶縁体膜を備え、前記第3電極の下面のうち前記第1領域は前記開口を介し前記第2電極に接触し、前記第3電極の下面のうち前記第1領域を囲む第2領域は前記開口の外側の前記無機絶縁体膜に接触することが好ましい。
(3)前記第3電極は、前記第2電極上に設けられたシード層と、前記シード層上に設けられためっき層と、を備えることが好ましい。
(4)前記無機絶縁体膜の上面のうち前記第3電極を囲む第3領域に、凹部が設けられていることが好ましい。
(5)前記法線方向において前記第3電極の下面のうち前記基板の上面に平行な部分と前記第2電極との間に前記有機絶縁体膜は設けられていないことが好ましい。
(6)前記第3電極は、前記第2電極上に設けられた第1層と、前記第1層上に設けられ前記第1層の抵抗率より低い抵抗率の第2層と、を備え、前記法線方向において前記第1層と前記第2電極との間に前記有機絶縁体膜は設けられていないことが好ましい。
(7)本開示の一実施形態は、基板上に第1電極を形成する工程と、前記第1電極上に誘電体膜を形成する工程と、前記誘電体膜上に第2電極を形成する工程と、前記第2電極上に第1開口を有する第1マスク層を形成する工程と、前記第1開口の内面および前記第1マスク層上にシード層を形成する工程と、平面視において、前記シード層上に前記第1開口に含まれ前記第1開口より開口面積が小さい開口面積を有する第2開口を有する第2マスク層を形成する工程と、前記第2開口内にめっき層を形成する工程と、前記第2マスク層を除去する工程と、前記めっき層をマスクに前記シード層を除去することで、前記シード層と前記めっき層とで第3電極を形成する工程と、前記基板上に前記第3電極を覆うように有機絶縁体膜を形成する工程と、を含むキャパシタの製造方法である。これにより、キャパシタの電気的特性の劣化を抑制できる。
(8)前記有機絶縁体膜を形成する工程は、前記基板の上面の法線方向において前記第3電極の下面と前記第2電極との間に前記有機絶縁体膜が形成されないように、前記有機絶縁体膜を形成する工程を含むことが好ましい。
(9)前記第1マスク層を形成する前に、前記第2電極上に、第3開口を有する無機絶縁体膜を形成する工程を含み、前記第2マスク層を形成する工程は、平面視において、前記第3開口を含み、前記第3開口の開口面積以上の大きさの開口面積を有する前記第2開口を有する前記第2マスク層を形成する工程を含むことが好ましい。
【0011】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態にかかるキャパシタおよびその製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0012】
[実施例1]
図1は、実施例1に係るキャパシタの断面図である。図2は、実施例1に係るキャパシタの平面図である。図1図2のA-A断面図である。図2では、第1電極14、第2電極18、第3電極20および領域50を主に図示している。基板10の上面に法線方向をZ方向、基板10の上面に平行な方向をX方向およびY方向とする。
【0013】
図1に示すように、基板10は、基板10aと基板10a上に設けられた半導体層10bを備えている。半導体層10bは例えばGaN系半導体層またはGaAs系半導体層である。半導体層10bがGaN系半導体層の場合、基板10は例えばSiC基板、サファイア基板、シリコン基板またはGaN基板であり、半導体層10bは、GaN、AlN、InNおよびこれらの混晶からなる層を含む。半導体層10bがGaAs系半導体層の場合、基板10aは例えばGaAs基板であり、半導体層10bは、GaAs、AlAs、InAsおよびこれらの混晶からなる層を含む。キャパシタが設けられた領域における半導体層10bはイオン注入等により不活性化されている。基板10上に半導体層10bを用いたトランジスタが設けられて、キャパシタとトランジスタとは同じ基板10上に集積化され、MMIC(Monolithic Microwave Itegrated Circuit)を形成していてもよい。基板10には半導体層10bが設けられておらず、基板10上にはトランジスタ等の能動素子が設けられていなくてもよい。
【0014】
基板10上に絶縁体膜12が設けられている。絶縁体膜12は、例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜等の無機絶縁体膜、ポリイミドまたはBCB(Benzocyclobutene)樹脂等の有機絶縁体膜である。絶縁体膜12の厚さは例えば100nm~1200nmである。基板10上の絶縁体膜12上に第1電極14が設けられている。第1電極14上に誘電体膜16が設けられている。誘電体膜16上に第2電極18が設けられている。第1電極14、誘電体膜16および第2電極18により、MIM(Metal Insulator Metal)キャパシタ60が形成される。
【0015】
誘電体膜16を介した第1電極14と第2電極18との距離が製造誤差程度にほぼ均一である。Z方向(基板10の上面の法線方向)の上方からみた平面視において、第1電極14の外周は第2電極18の外周より外側に位置する。誘電体膜16の外周は、第1電極14の外周より外側に位置する。第1電極14および第2電極18は、例えば密着膜と密着膜上に設けられた低抵抗膜を含む金属膜である。密着膜は例えばTi膜、WSi膜、TiW膜、TiWN膜またはTiN膜である。低抵抗膜は、密着膜より抵抗率が低い材料からなり例えばAu膜である。密着膜の厚さは例えば3nm~300nmである。密着膜は設けられていなくてもよい。低抵抗膜の厚さは例えば50nm~400nmである。誘電体膜16は例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜等の無機絶縁体膜である。誘電率を高くする観点から誘電体膜16は窒化シリコン膜が好ましい。誘電体膜16の厚さは例えば50nm~400nmである。誘電体膜16の膜厚は、MIMキャパシタ60の容量値および耐圧等を考慮し設定される。
【0016】
第2電極18を覆うように無機絶縁体膜22が設けられている。無機絶縁体膜22は例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜であり、MIMキャパシタ60を保護する観点から無機絶縁体膜22は窒化シリコン膜が好ましい。無機絶縁体膜22の厚さは例えば50nm~400nmである。領域50において、無機絶縁体膜22には開口23が設けられている。第2電極18上に第3電極20が設けられている。第3電極20の下面のうち中央領域に相当する領域50において、第3電極20の下面は開口23を介して第2電極18と接触している。領域50の外側の領域52において、第3電極20の下面は無機絶縁体膜22に接触している。領域50と52とを合わせた領域は領域54である。領域54より広い領域56が設けられている。領域56のうち第3電極20以外の領域55において無機絶縁体膜22の上面には凹部23aが形成されている。領域51に第2電極18が設けられている。
【0017】
第3電極20は、第2電極18側からシード層20dとシード層20d上に設けられためっき層20cとを備える。シード層20dは例えば密着層20aと密着層20a上に設けられた低抵抗層20bを含む金属層である。密着層20aは例えばTi膜、WSi膜、TiW膜、TiWN膜またはTiN膜である。低抵抗層20bは、密着層20aより抵抗率が低い材料からなり例えばAu膜である。密着層20aの厚さは例えば3nm~400nmである。密着層20aは設けられていなくてもよい。低抵抗層20bの厚さは例えば50nm~200nmである。めっき層20cは低抵抗層20bと同じ材料からなる金属膜であり、例えばAu膜である。めっき層20cの厚さは例えば1μm~6μmである。
【0018】
無機絶縁体膜22および第3電極20を覆うように、無機絶縁体膜24が設けられている。無機絶縁体膜24は、例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜である。保護する機能の観点で、無機絶縁体膜24は窒化シリコン膜を用いることが好ましい。無機絶縁体膜24の厚さは例えば30nm~800nmである。無機絶縁体膜24は設けられていなくてもよい。無機絶縁体膜24を覆うように、有機絶縁体膜26が設けられている。有機絶縁体膜26は、例えばポリイミドまたはBCB樹脂等の樹脂膜である。有機絶縁体膜26の厚さは例えば1μm~10μmである。
【0019】
図2に示すように、第1電極14はMIMキャパシタ60が設けられた領域より-Y側に大きく設けられている。MIMキャパシタ60の-Y側では、第1電極14の上面に電極21が設けられている。電極21は領域50aにおいて第1電極14に接触する。電極21は、第3電極20と同じシード層20dとめっき層20cを備え、第3電極20と同時に形成される。第2電極18に接触された第3電極20はMIMキャパシタ60が設けられた領域より+Y側に大きく設けられている。第3電極20は第2電極18と、電極21は第1電極14と、それぞれ電気的に接続する配線として機能する。
【0020】
領域50、54および56の幅をそれぞれL1、L2およびL3とする。第2電極18の幅をL4とすると、幅L3は幅L4より小さく、幅L2は幅L3以下であり、幅L1は幅L2以下である。好ましくは、幅L2は幅L3より小さく、幅L1は幅L2より小さい。図2に示されるように、Z方向における+方向側から―方向側を見た第1電極14の平面サイズが第2電極18の平面サイズより大きいという場合に、第2電極18の幅L4は、MIMキャパシタ60の目標とする容量値により設計され、例えば10μm~1mmである。領域50の幅L1は、例えば幅L4より1μm~10μm小さい。領域54の幅L2は、例えば幅L1より0μm~5μm大きい。領域56の幅L3は、例えば幅L2より0μm~5μm大きい。
【0021】
[実施例1の製造方法]
図3A図10Bは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。図3Aに示すように、基板10上に絶縁体膜12を形成する。絶縁体膜12上に第1電極14を形成する。第1電極14はスパッタリング法または真空蒸着法を用い形成し、エッチング法またはリフトオフ法を用い所望の形状にパターニングする。図3Bに示すように、絶縁体膜12上に第1電極14を覆うように誘電体膜16を形成する。誘電体膜16は例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用い形成する。
【0022】
図4Aに示すように、誘電体膜16上に第2電極18を形成する。第2電極18の形成は、例えば真空蒸着法およびリフトオフ法を用いる。第1電極14、誘電体膜16および第2電極18によりMIMキャパシタ60が形成される。図4Bに示すように、誘電体膜16および第2電極18を覆うように無機絶縁体膜22を形成する。無機絶縁体膜22の形成は、例えばCVD法を用いる。エッチング法を用い、誘電体膜16および無機絶縁体膜22を所望の形状にパターニングする。
【0023】
図5Aに示すように、無機絶縁体膜22上に開口41を有するマスク層40を形成する。マスク層40は例えばフォトレジストでありフォトリソグラフィ法を用い形成する。開口41は領域50に設けられ、開口41のX方向に沿った幅はL1である。図5Bに示すように、エッチング法を用いマスク層40をマスクに無機絶縁体膜22を除去する。これにより、無機絶縁体膜22に開口23が形成される。開口23は領域50に設けられ、開口23のX方向に沿った幅はL1である。
【0024】
図6Aに示すように、マスク層40を除去する。図6Bに示すように、無機絶縁体膜22上に開口43を有するマスク層42を形成する。マスク層42は例えばフォトレジストでありフォトリソグラフィ法を用い形成する。開口43は領域56に設けられ、開口43のX方向に沿った幅はL3である。開口43は、開口23を含むように形成され、開口23より大きい。
【0025】
図7Aに示すように、開口43の内面およびマスク層42上にシード層20dを形成する。シード層20dは例えばスパッタリング法を用い形成する。領域50においてシード層20dは第2電極18の上面に接触する。領域56のうち領域50以外の領域において、シード層20dは無機絶縁体膜22の上面に接触する。図7Bに示すように、シード層20d上に開口45を有するマスク層44を形成する。マスク層44は例えばフォトレジストでありフォトリソグラフィ法を用い形成する。開口45は領域54に設けられ、開口45のX方向に沿った幅はL2である。開口45は、開口23を含むように形成され、開口43に含まれるように形成される。開口45は、開口23より大きく開口43より小さい。領域50を囲む領域52において、シード層20dは無機絶縁体膜22に接触する。
【0026】
図8Aに示すように、開口45内にめっき層20cを形成する。めっき層20cは、例えばシード層20dから電流を供給する電解めっき法を用い形成する。領域54にめっき層20cが形成される。図8Bに示すように、マスク層44を除去する。
【0027】
図9Aに示すように、めっき層20cをマスクにシード層20dを除去する。シード層20dは、例えばアルゴンイオン等のイオン48をシード層20dに照射するイオンミリング法等のエッチング法を用い除去する。これにより、領域54以外に形成されたシード層20dが除去され、シード層20dとめっき層20cとからなる第3電極20が形成される。領域54のうち領域50以外の領域52において、第3電極20は無機絶縁体膜22に接触する。領域56のうち領域54以外の領域55において、無機絶縁体膜22の上面に凹部23aが形成される。凹部23aは、シード層20dを除去するときに、無機絶縁体膜22の上面が削れることにより形成される。図9Bに示すように、マスク層42を除去する。
【0028】
図10Aに示すように、基板10上に無機絶縁体膜22および第3電極20を覆うように、無機絶縁体膜24を形成する。無機絶縁体膜24の形成には、例えばCVD法を用いる。図10Bに示すように、無機絶縁体膜24上に有機絶縁体膜26を形成する。有機絶縁体膜26の形成は、有機溶剤を含む樹脂を塗布し、熱処理することにより行う。熱処理は、例えば250℃~350℃の温度において行う。これにより、樹脂が硬化し、有機絶縁体膜26が形成される。以上により実施例1に係るキャパシタが製造される。
【0029】
実施例1では、領域54が領域50より大きく、領域56が領域54より大きい。これにより、第3電極20の下面は、領域50において第2電極18に接触し、領域52において無機絶縁体膜22に接触する。領域50、またはX方向に沿った幅L1で表される第3電極20の下面と第2電極18との間には有機絶縁体膜26は設けられていない。
【0030】
[比較例1]
図11Aから図13Bは、比較例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。図11Aに示すように、実施例1の図3Aから図5Bと同じ工程を行う。マスク層40の開口41により画定される開口23が無機絶縁体膜22に形成される。開口23は領域50に設けられ、開口23の幅はX方向に沿ってL1である。図11Bに示すように、無機絶縁体膜22および第2電極18上に、開口43を有するマスク層42を形成する。開口43は開口23より大きい。開口43は領域54に設けられ、開口43の幅はX方向に沿ってL3である。
【0031】
図12Aに示すように、開口43の内面およびマスク層42上にシード層20dを形成する。図12Bに示すように、開口45を有するマスク層44を形成する。開口45は開口43より大きい。開口45は領域58に設けられ、開口45の幅はX方向に沿ってL5である。開口45内にめっき層20cを形成する。
【0032】
図13Aに示すように、マスク層44を除去する。めっき層20cをマスクにシード層20dを除去する。マスク層42を除去する。領域58のうち領域54以外の領域57には第3電極20の庇が形成される。図13Bに示すように、無機絶縁体膜22および第3電極20を覆うように無機絶縁体膜24を形成する。無機絶縁体膜24上に有機絶縁体膜26を形成する。領域57における第3電極20の庇の下面と第2電極18との間にも無機絶縁体膜24および有機絶縁体膜26が形成される。以上により比較例1に係るキャパシタが製造できる。
【0033】
比較例1では、図11Bのように、開口43を有するマスク層42を形成した後に、図12Aのようにシード層20dを形成している。これは、マスク層42を形成せずにシード層20dを形成すると、シード層20dを除去した後、無機絶縁体膜22の上面の段差に残存したシード層20dが剥がれ、不良の原因となるためである。詳細は、実施例1の変形例3において説明する。図12Bのように、開口43より大きな開口45を有するマスク層44を形成し、開口45内にめっき層20cを形成する。図13Aのように、めっき層20cをマスクにシード層20dを除去する。マスク層42の上面は比較的平坦なため、段差が形成されずにシード層20dが残存しない。仮に、マスク層42の上面に段差が形成され、シード層20dが残存しても、マスク層42の除去により残存したシード層20dを除去できる。
【0034】
しかし、領域58の幅L5が領域54の幅L3より大きい。このため、図13Bのように、領域57に第3電極20の庇が形成される。有機絶縁体膜26は、無機絶縁体膜22に比べると応力が大きい。また、無機絶縁体膜22は第3電極20の庇の高さに比べ十分薄く、第3電極20の庇の下部、領域57におけるZ方向に沿った有機絶縁体膜26の厚さは無機絶縁体膜22の合計の厚さより大きくなることが多い。このため、図13B中に矢印62で示したように、領域57において第3電極20と第2電極18との間の有機絶縁体膜26の応力62がX方向に沿って矢印62で示したように第3電極20に加わる。特に、有機絶縁体膜26を熱処理すると、有機絶縁体膜26は収縮し応力62が大きくなる。これにより、第3電極20が第2電極18から剥がれる可能性がある。また、応力62により、MIMキャパシタ60の耐圧が低くなる、または、使用することにより電気的特性が劣化する可能性がある。
【0035】
[比較例2]
図14Aから図16は、比較例2に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。図14Aに示すように、無機絶縁体膜22上に有機絶縁体膜26aを形成する。有機絶縁体膜26a上に開口47を有するマスク層46を形成する。マスク層46は例えば窒化シリコン膜等の無機絶縁体膜である。マスク層46をマスクに、有機絶縁体膜26aに開口27を形成する。図14Bに示すように有機絶縁体膜26aをマスクに無機絶縁体膜22に開口23を形成する。開口27および23の内面および有機絶縁体膜26a上にシード層20dを形成する。
【0036】
図15Aに示すように、シード層20d上に開口45を有するマスク層44を形成する。開口45は領域58に設けられ、開口45のX方向に沿った幅はL5である。開口45内にめっき層20cを形成する。図15Bに示すように、マスク層44を除去し、めっき層20cをマスクにシード層20dを除去する。領域58のうち領域50以外の領域57に第3電極20の庇が形成される。
【0037】
図16に示すように、有機絶縁体膜26aおよび第3電極20を覆うように無機絶縁体膜24を形成する。無機絶縁体膜24上に有機絶縁体膜26bを形成する。以上により比較例2に係るキャパシタが製造できる。
【0038】
比較例2においても、領域57において、Z方向において第3電極20の下面と第2電極18との間に有機絶縁体膜26aが形成される。矢印62で示したように、第3電極20と第2電極18との間の有機絶縁体膜26の応力62がX方向に沿って矢印62で示したように第3電極20に加わる。これにより、第3電極20が第2電極18から剥がれる可能性がある。また、MIMキャパシタ60の耐圧が低くなる、または、使用することにより電気的特性が劣化する可能性がある。
【0039】
実施例1によれば、図1のように、第3電極20のZ方向に沿った-方向における最下面は領域50において第2電極18に接触する。有機絶縁体膜26は、誘電体膜16の上部、第2電極18の上部および第3電極20を覆い設けられている。しかし、有機絶縁体膜26は、Z方向(基板10の上面の法線方向)において第3電極20の下面と第2電極18との間に、領域50とさらにその周辺である領域52を含め、設けられていない。すなわち、第3電極20の下面の鉛直下(-Z方向)には有機絶縁体膜26は設けられていない。これにより、図13Bおよび図16の比較例1および2のように、第3電極20の庇の下に設けられた有機絶縁体膜26に起因する応力62により、第3電極20が剥がれることを抑制できる。また、MIMキャパシタ60の耐圧の低下または使用により電気的特性が劣化することを抑制できる。このように、有機絶縁体膜26の応力62に起因したキャパシタの電気的特性の劣化を抑制できる。
【0040】
[実施例1の変形例1]
図17は、実施例1の変形例1に係るキャパシタの断面図である。図17に示すように、無機絶縁体膜22の開口23内に第3電極20が設けられている。第3電極20の下面は全て第2電極18に接触し、無機絶縁体膜22の上面には接触していない。第2電極18は、例えば無電解めっき法または真空蒸着法を用い形成することができる。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例1のように、第3電極20の下面は全て第2電極18に接触していてもよい。このように、第3電極20の下面の少なくとも一部の領域50が第2電極18の上面に接触していればよい。
【0041】
[実施例1の変形例2]
図18は、実施例1の変形例2に係るキャパシタの断面図である。図18に示すように、第3電極20の側面はZ方向に対し傾斜している。第3電極20の側面のZ方向に対する傾斜角度はθである。傾斜角度θは、Z方向における+方向を0°として例えば-30°~30°である。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例2のように、第3電極20の側面が傾斜していても、第3電極20の下面と第2電極18との間に有機絶縁体膜26が設けられていなければ、有機絶縁体膜26の応力に起因した電気的特性の劣化を抑制できる。第3電極20の側面が傾斜している場合、第3電極20の側面は第3電極20の下面といえなくもない。このような場合には、Z方向において第3電極20の下面のうち基板10の上面に平行な部分と第2電極18との間に有機絶縁体膜26が設けられていなければよい。
【0042】
第3電極20を配線として用いる場合、第3電極20を厚くする。第3電極20は、例えば第2電極18より厚い。第3電極20の厚さは、第1電極14、誘電体膜16および第2電極18の合計の厚さより大きく、例えば1μm以上である。このように厚い第3電極20を形成する方法は一般的には電解めっき法である。このため、実施例1の図3A図10Bのようにキャパシタを製造する。
【0043】
[実施例1の変形例3]
実施例1において、マスク層42を設ける理由を説明するため実施例1の変形例3について説明する。図19Aおよび図19Bは、実施例1の変形例3に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。図19Aに示すように、実施例1の図3A図6Aの工程を行い、図6Bにおいてマスク層42を形成せず、シード層20dを形成する。図7Bおよび図8Aと同様に、めっき層20cを形成する。図8Bと同様に、マスク層44を除去する。実施例1の変形例3では、実施例1の図6Bのようなマスク層42が形成されていない。このため、シード層20dは無機絶縁体膜22に接触する。無機絶縁体膜22の上面は、第1電極14および第2電極18の端部に相当する段差が形成されている。シード層20dは無機絶縁体膜22の上面の段差にも形成される。
【0044】
図19Bのように、めっき層20cをマスクにシード層20dをエッチングすると、無機絶縁体膜22の上面の段差にシード層64が残存する。その後、実施例1の図10Aおよび図10Bと同様に無機絶縁体膜24および有機絶縁体膜26を形成する。その他の工程は実施例1とおなじであり説明を省略する。
【0045】
実施例1の変形例3では、残存したシード層64はその後の工程で剥がれ、不良の原因となる可能性がある。実施例1では、図6Bのようにマスク層42の上面は比較的平坦なため、マスク層42の上面に段差が形成されない。このため、図9Aのように、無機絶縁体膜22の上面の段差にシード層20dが残存しない。仮に、マスク層42の上面に段差が形成され、シード層20dが残存しても、マスク層42の除去により残存したシード層20dを除去できる。また、マスク層42の開口43の側面を開口43の上部が下部より大きくなるように傾斜させることで、マスク層42の側面にシード層20dを残存し難くできる。
【0046】
実施例1では、図3A図4Aのように、基板10上に第1電極14、誘電体膜16および第2電極18を形成する。図6Bのように、第2電極18上に開口43(第1開口)を有するマスク層42(第1マスク層)を形成する。図7Aのように、開口43の内面およびマスク層42上にシード層20dを形成する。図7Bのように、平面視において、シード層20d上に開口43に含まれ開口43より開口面積が小さい開口面積を有する開口45(第2開口)を有するマスク層44(第2マスク層)を形成する。図8Aのように、開口45内にめっき層20cを形成する。図8Bのように、マスク層44を除去する。図9Aのように、めっき層20cをマスクにシード層20dを除去することで、シード層20dとめっき層20cとで第3電極20を形成する。図10Bのように、基板10上に第3電極20を覆うように有機絶縁体膜26を形成する。以上により、電解めっき法を用い第3電極20を形成できるため、第3電極20を厚くできる。また、有機絶縁体膜26を形成するときに、Z方向における第3電極20の下面と第2電極18との間に有機絶縁体膜26が形成されない。これにより、有機絶縁体膜26の応力62に起因したキャパシタの電気的特性の劣化を抑制できる。さらに、実施例1の変形例3のような無機絶縁体膜22の上面の段差に残存したシード層64による不良を抑制できる。
【0047】
マスク層42を形成する前に、図4B図6Aのように、第2電極18上に、開口23(第3開口)を有する無機絶縁体膜22を形成する。図6Bのように、開口23を含み開口23の開口面積以上の大きさの開口面積を有する開口43を有するマスク層42を形成する。このように、無機絶縁体膜22を設けることで、図9Aにおいて、シード層20dをエッチングするときに、領域55における第2電極18の上面が削れることを抑制できる。
【0048】
実施例1の製造方法を用い製造されたキャパシタでは、図1のように、第2電極18上に領域50に開口23を有する無機絶縁体膜22が設けられている。第3電極20の下面のうち領域50は開口23を介し第2電極18に接触し、第3電極20の下面のうち領域50を囲む領域52は開口23の外側の無機絶縁体膜22に接触する。
【0049】
また、第3電極20を電解めっき法を用い形成するため、第3電極20は、第2電極18上に設けられたシード層20dと、シード層20d上に設けられためっき層20cと、を備える構造となる。このような構造では、シード層20dを除去するときに第2電極18の上面が削れないように、無機絶縁体膜22を設けることが好ましい。
【0050】
図9Aのように、シード層20dをエッチングするときに、無機絶縁体膜22の上面のうち第3電極20を囲む領域55(第3領域)に、凹部23aが設けられる。領域55の外周が第2電極18の外周より外側に位置すると、第2電極18の端部に位置する無機絶縁体膜22の上面の段差にシード層64が残存する。よって、領域55の外周は第2電極18の外周より内側に位置することが好ましい。
【0051】
シード層20dは、密着層20aと密着層20aより抵抗率の低い低抵抗層20bが設けられている。これにより、第3電極20は、第2電極18上に設けられた密着層20a(第1層)と、密着層20a上に設けられ密着層20aの抵抗率より低い抵抗率の低抵抗層20bおよびめっき層20c(第2層)と、を備える。Z方向において密着層20aと第2電極18との間に有機絶縁体膜26は設けられていない構造となる。これにより、有機絶縁体膜26の応力62に起因したキャパシタの電気的特性の劣化を抑制できる。
【0052】
[実施例1の変形例4]
図20Aから図21Bは、実施例1の変形例4に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。図20Aに示すように、開口43を有するマスク層42上および開口43内にシード層20dを形成する。実施例1の図7Aに比べ、マスク層42の開口43のX方向に沿った幅L3が小さい。図20Bに示すように、シード層20d上に形成されたマスク層44の開口45のX方向に沿った幅L2は開口43のX方向に沿った幅L3より若干小さい。開口43内にめっき層20cを形成する。幅L3とL2とがほぼ同じため、開口45の周縁部では、開口43の側面に形成されたシード層20d上にめっき層20cが形成される。
【0053】
図21Aに示すように、マスク層44を除去した後、めっき層20cをマスクにシード層20dをエッチングする。このとき、開口43の側面に形成されたシード層20dの少なくとも一部がエッチングされ、シード層20dに段差66が生じる。図21Bに示すように、無機絶縁体膜24および有機絶縁体膜26を形成する。これにより、実施例1の変形例4に係るキャパシタが製造される。その他の工程は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0054】
図20Bにおいて、開口43のX方向に沿った幅L3と開口45のX方向に沿った幅L2は同じであっても、開口43と開口45とが一致していれば、第3電極20の下面と第2電極18との間に有機絶縁体膜26は設けられない。しかし、開口45と開口43との合わせずれを考慮すると、幅L2は幅L3より小さいことが好ましい。幅L2と幅L3との差が小さい場合、実施例1の変形例4のように、シード層20dに段差66が形成されてしまう(図21Aおよび図21B)。段差66の形成を抑制するためには、開口45のX方向に沿った幅L2は開口43のX方向に沿った幅L3より、シード層20dの厚さの2倍以上小さいことが好ましく、5倍以上小さいことがより好ましい。また、開口45と43との合わせ精度を考慮すると、幅L2は幅L3より1μm以上大きいことが好ましく、2μm以上大きいことがより好ましい。
【0055】
[実施例1の変形例5]
図22Aおよび図22Bは、実施例1の変形例5に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。図22Aに示すように、実施例1の変形例4の図20Aのマスク層42の代わりに開口27を有する有機絶縁体膜26aが設けられている。開口27はX方向に沿った領域56に設けられ、開口27のX方向に沿った幅はL3である。図22Bに示すように、実施例1の変形例4と同様に第3電極20を形成し、有機絶縁体膜26aおよび第3電極20上に無機絶縁体膜24および有機絶縁体膜26bを形成する。その他の工程は実施例1および実施例1の変形例4と同じであり説明を省略する。
【0056】
実施例1の実施例5のように、マスク層42の代わりに有機絶縁体膜26aを用い、有機絶縁体膜26aを除去せずに残存させてもよい。
【0057】
[実施例1の変形例6]
図23Aおよび図23Bは、実施例1の変形例6に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。図23Aに示すように、開口45のX方向に沿った幅L2は開口23のX方向に沿った幅L1より若干大きい。開口45のX方向における-方向側端は開口23のX方向における-方向側端に略一致する。開口45の+X側端は開口23の+X側端より外側に位置する。図23Aにおいて、領域52が、X方向において領域50の-方向側のみにしか存在しない。図23Bに示すように、実施例1の図8B図10Bの工程を行うことで、実施例1の変形例6に係るキャパシタが製造される。その他の工程は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0058】
図23Aにおいて、幅L2は幅L1と同じでもよい。しかし、開口45と開口23との合わせずれが生じると、開口45より開口23が外側に位置する領域が生じる。この場合、図9Aのように、めっき層20cをマスクにシード層20dをエッチングするときに、第2電極18の上面が削れてしまう。そこで、幅L2は幅L1より大きいことが好ましい。開口45と23との合わせ精度の観点から幅L1は幅L2より1μm以上小さいことが好ましく、2μm以上小さいことがより好ましい。
【0059】
[実施例1の変形例7]
図24Aおよび図24Bは、実施例1の変形例7に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。図24Aに示すように、開口45のX方向に沿った幅L2は開口43のX方向に沿った幅L3より若干小さい。開口45のX方向における-方向側端は開口43のX方向における-方向側端に略一致する。開口45のX方向における+方向側端は開口43のX方向における+方向側端より内側に位置する。図24Bに示すように、実施例1の図8B図10Bの工程を行うことで、実施例1の変形例7に係るキャパシタが製造される。図24bにおいて、領域55は、X方向における領域54の+方向側のみにしか存在しない。その他の工程は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0060】
図24Aにおいて、幅L2は幅L3と同じでもよい。しかし、開口45と開口43との合わせずれが生じると、開口45より開口43が外側に位置する領域が生じる。この場合、第3電極20の下面と第2電極18との間に有機絶縁体膜26が形成される。そこで、幅L3は幅L2より大きいことが好ましい。開口45と43との合わせ精度の観点から幅L3は幅L2より1μm以上大きいことが好ましく、2μm以上大きいことがより好ましい。
【0061】
実施例1およびその変形例において、第2電極18を特許文献1のように、2層としてもよい。これにより、第2電極18を真空蒸着法を用い形成するときに形成されるスプラッシュに起因したキャパシタの耐圧低下を抑制できる。
【0062】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
10、10a 基板
10b 半導体層
12 絶縁体膜
14 第1電極
16 誘電体膜
18 第2電極
20 第3電極
20a 密着層
20b 低抵抗層
20c めっき層
20d シード層
21 電極
22、24 無機絶縁体膜
23 開口(第3開口)
23a 凹部
26、26a、26b 有機絶縁体膜
27、41、47 開口
40、46 マスク層
42 マスク層(第1マスク層)
43 開口(第1開口)
44 マスク層(第2マスク層)
45 開口(第2開口)
50 領域(第1領域)
52 領域(第2領域)
55 領域(第3領域)
50a、51、54、56~58 領域
60 MIMキャパシタ
62 応力
64 シード層
66 段差
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B
図23A
図23B
図24A
図24B
【手続補正書】
【提出日】2023-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
図1図1は、実施例1に係るキャパシタの断面図である。
図2図2は、実施例1に係るキャパシタの平面図である。
図3A図3Aは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図3B図3Bは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図4A図4Aは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図4B図4Bは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図5A図5Aは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図5B図5Bは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図6A図6Aは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図6B図6Bは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図7A図7Aは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図7B図7Bは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図8A図8Aは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図8B図8Bは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図9A図9Aは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図9B図9Bは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図10A図10Aは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図10B図10Bは、実施例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図11A図11Aは、比較例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図11B図11Bは、比較例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図12A図12Aは、比較例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図12B図12Bは、比較例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図13A図13Aは、比較例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図13B図13Bは、比較例1に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図14A図14Aは、比較例2に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図14B図14Bは、比較例2に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図15A図15Aは、比較例2に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図15B図15Bは、比較例2に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図16図16は、比較例2に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図17図17は、実施例1の変形例1に係るキャパシタの断面図である。
図18図18は、実施例1の変形例2に係るキャパシタの断面図である。
図19A図19Aは、実施例1の変形例3に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図19B図19Bは、実施例1の変形例3に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図20A図20Aは、実施例1の変形例4に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図20B図20Bは、実施例1の変形例4に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図21A図21Aは、実施例1の変形例4に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図21B図21Bは、実施例1の変形例4に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図22A図22Aは、実施例1の変形例5に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図22B図22Bは、実施例1の変形例5に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図23A図23Aは、実施例1の変形例6に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図23B図23Bは、実施例1の変形例6に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図24A図24Aは、実施例1の変形例に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
図24B図24Bは、実施例1の変形例に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
図1に示すように、基板10は、基板10aと基板10a上に設けられた半導体層10bを備えている。半導体層10bは例えばGaN系半導体層またはGaAs系半導体層である。半導体層10bがGaN系半導体層の場合、基板10aは例えばSiC基板、サファイア基板、シリコン基板またはGaN基板であり、半導体層10bは、GaN、AlN、InNおよびこれらの混晶からなる層を含む。半導体層10bがGaAs系半導体層の場合、基板10aは例えばGaAs基板であり、半導体層10bは、GaAs、AlAs、InAsおよびこれらの混晶からなる層を含む。キャパシタが設けられた領域における半導体層10bはイオン注入等により不活性化されている。基板10上に半導体層10bを用いたトランジスタが設けられて、キャパシタとトランジスタとは同じ基板10上に集積化され、MMIC(Monolithic Microwave Itegrated Circuit)を形成していてもよい。基板10には半導体層10bが設けられておらず、基板10上にはトランジスタ等の能動素子が設けられていなくてもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
実施例1の変形例5のように、マスク層42の代わりに有機絶縁体膜26aを用い、有機絶縁体膜26aを除去せずに残存させてもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
[実施例1の変形例6]
図23Aおよび図23Bは、実施例1の変形例6に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。図23Aに示すように、開口45のX方向に沿った幅L2は開口23のX方向に沿った幅L1より若干大きい。開口45のX方向における-方向側端は開口23のX方向における-方向側端に略一致する。開口45の+X側端は開口23の+X側端より外側に位置する。図23Aにおいて、領域52が、X方向において領域50の方向側のみにしか存在しない。図23Bに示すように、実施例1の図8B図10Bの工程を行うことで、実施例1の変形例6に係るキャパシタが製造される。その他の工程は実施例1と同じであり説明を省略する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
[実施例1の変形例7]
図24Aおよび図24Bは、実施例1の変形例7に係るキャパシタの製造方法を示す断面図である。図24Aに示すように、開口45のX方向に沿った幅L2は開口43のX方向に沿った幅L3より若干小さい。開口45のX方向における-方向側端は開口43のX方向における-方向側端に略一致する。開口45のX方向における+方向側端は開口43のX方向における+方向側端より内側に位置する。図24Bに示すように、実施例1の図8B図10Bの工程を行うことで、実施例1の変形例7に係るキャパシタが製造される。図24Bにおいて、領域55は、X方向における領域54の+方向側のみにしか存在しない。その他の工程は実施例1と同じであり説明を省略する。