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  • 特開-鶏糞処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129815
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】鶏糞処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/148 20190101AFI20230912BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20230912BHJP
   C02F 1/52 20230101ALI20230912BHJP
   C02F 1/56 20230101ALI20230912BHJP
【FI】
C02F11/148
B01D21/01 111
C02F1/52 E ZAB
C02F1/56 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034098
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】515039650
【氏名又は名称】有限会社日向栄進産業
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 瑞穂
【テーマコード(参考)】
4D015
4D059
【Fターム(参考)】
4D015BA11
4D015BA19
4D015BB06
4D015BB12
4D015CA03
4D015DA04
4D015DA05
4D015DA25
4D015DB02
4D015DC02
4D015DC06
4D015EA02
4D015EA06
4D015EA14
4D015EA18
4D015EA22
4D015EA32
4D015FA02
4D015FA15
4D059AA01
4D059BE31
4D059BE49
4D059BE55
4D059BE58
4D059BF15
4D059BJ00
4D059CA21
4D059CC01
4D059DA06
4D059DA16
4D059DA17
4D059DB08
4D059DB24
4D059EB01
4D059EB05
4D059EB11
(57)【要約】
【課題】乾燥・発酵・焼却等の処理を施していない未処理の鶏糞(鶏糞尿原液)に水分を加え、この水分を加えた鶏糞溶液を凝集剤を用いて固体成分と液体成分とに固液分離処理する鶏糞処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】鶏糞処理方法であって、鶏糞尿原液に所定の水分を加えて前記鶏糞を希釈する第1の工程と、該希釈された鶏糞尿原液と、凝集剤水溶液とを混合する第2の工程と、前記希釈された鶏糞尿原液を固体と液体とに固液分離処理する第3の工程とを備えたことを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏糞尿原液に所定の水分を加えて前記鶏糞を希釈する第1の工程と、
該希釈された鶏糞尿原液と、凝集剤水溶液とを混合する第2の工程と、
前記希釈された鶏糞尿原液を固体と液体とに固液分離処理する第3の工程と
を備えたことを特徴とする鶏糞処理方法。
【請求項2】
前記鶏糞尿原液の含水率が、30%乃至50%である
ことを特徴とする請求項1に記載の鶏糞処理方法。
【請求項3】
前記第3の工程において前記固液分離処理された液体を濾過し、前記第1の工程における前記鶏糞尿原液に加える所定の水分として再利用する工程を含む
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鶏糞処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏糞処理方法に関し、特に、乾燥・発酵・焼却等の処理を施していない未処理の鶏糞に水分を加え、この水分を加えた鶏糞溶液を凝集剤を用いて固体成分と液体成分とに固液分離処理する鶏糞処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
養鶏場においては、毎日大量の鶏糞が発生しており、従来、この鶏糞の処理は様々な方法で行われてきたが、特に、平成11年にいわゆる「家畜排せつ物法」が施行されてからは、未処理鶏糞の野積みや素掘りといった不適切な管理が違法となり、より適切な処理技術の開発が望まれている。
【0003】
ここで、いくつかの従来の鶏糞処理技術について提示する。例えば、特許文献1には、「鶏糞がよく乾燥して軽くかつ取扱が良好にできるようにした鶏糞処理装置を提供する」(段落「0003」参照。)を目的として、「上下に複数段あって上端の段で互いに逆向きに隣接した状態から下方の段になるにしたがって、両側に拡開させるように離してそれぞれの多くのケージが列を作って長く伸びたケージの集合体の下で使用する鶏糞処理装置であって、前記ケージの集合体の下に床面より所定の高さでケージの集合体が伸びる方向に伸びるように間隔をもって配置した複数列の木製の板と、電動機及びこの電動機に駆動されて前記板の上面に沿い板が伸びる方向に往復移動して鶏糞の掻落作業を行う掻落部材を有する掻落装置とを包含することを特徴とする鶏糞処理装置」(「請求項1」参照。)が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、「環境問題を考慮して、鶏糞を、微生物を用いて効率良く分解処理する方法および装置の開発」(段落「0007」参照。)を目的として、「高温菌を含む発酵処理物と鶏糞とを混合する工程、および得られた混合物を加温して該混合した鶏糞を発酵させる工程を含み、該発酵が48時間以内に完了される、鶏糞の処理方法」(「請求項1」参照。)が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、「安定処理材料である消石灰の一部代替え材料として鶏糞灰を利用することができれば鶏糞灰を使用することができれば鶏糞灰を資源として有効活用することが可能である。石灰は道路材料としては高価なものであり、またその一部だけでも鶏糞灰で代替えして石灰の使用量を減らすことができれば環境保全にも寄与できることになり、一石二鳥の効果を有することになる。また、凝集剤として使用されている生石灰の一部を、その性能を満足し得る範囲で鶏糞灰で代替えすることができれば、やはりその使用量は多い分野であるので環境保全に寄与する効果は大きいものとなる」(段落「0009」参照。)ということを目的として、「石灰粉末と鶏糞粉末を、その両者の粒度をほぼ等しく揃えて混ぜたことを特徴とする石灰と鶏糞灰の混合物」(「請求項1」参照。)が記載されている。
【0006】
また、特許文献4には、「固形状の堆肥原料に含まれる線虫などの有害物質を除去することができるとともに、堆肥原料中の未完熟分を除去する」(段落「0046」参照。)(段落「0004」参照。)ために、「前記肥料生成工程は、前記沈殿物と発酵菌とを混合して発酵させることによって堆肥原料を生成する堆肥原料生成工程と、前記堆肥原料生成工程で生成した堆肥原料に水を加えて静置することで固液分離して液体状の堆肥を抽出する液体状堆肥抽出工程とを有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の鶏糞の処理方法」(「請求項6」参照。)が記載されている。
【0007】
また、特許文献5には、「鶏糞をエネルギー源とし、直接燃焼させることなくエネルギー変換することにより、鶏糞をより有効に活用することができる鶏糞処理方法、及び、該鶏糞処理方法を使用する鶏糞処理システムの提供」(段落「0006」参照。)を課題として、「鶏糞を廃熱により乾燥させる工程と、乾燥された鶏糞を熱分解させ、熱分解ガスと炭化物とを得るガス化・炭化工程と、該ガス化・炭化工程を経た熱分解ガスを冷却し、凝集成分を分離して酢液及び重質油状物を得る冷却工程と、該冷却工程を経た熱分解ガスを液体と接触させ、軽質油状物を捕集する気液接触工程と、該気液工程を経た熱分解ガスを熱機関に供給し、該熱機関で発電機を駆動して発電する発電工程と、該発電工程で排出される熱を回収する熱回収工程とを具備することを特徴とする鶏糞処理方法」(「請求項1」参照。)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10-165034号公報
【特許文献2】特開2003-311247号公報
【特許文献3】特開2006-022124号公報
【特許文献4】特開2007-275760号公報
【特許文献5】特開2015-112579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の発明は、「床20に落ちた糞が極めて良好に乾燥するで、床17に落ちた糞と一緒にしても全体としての水分が著しく減少して軽くなり非常に処理しやすくなるという効果を有している」(段落「0010」、図1参照。)というものであり、特許文献1には、乾燥させた鶏糞のその後の処理については開示されていない。
【0010】
また、特許文献2に記載の発明は、「高温菌を含む発酵処理物鶏糞とを混合し、55℃~80℃で発酵させることにより、短時間(48時間以内)に、鶏糞を発酵処理することができる。得られた発酵処理物は、悪臭もほとんどなく、そのまま、次の鶏糞の処理に用いられるか、肥料として用いられる」(段落「0055」参照。)というものである。「短時間」と記載されてはいるものの、48時間、つまり、二日間の処理時間の短縮が望まれる。
【0011】
また、特許文献3に記載の発明は、「この発明にかかる石灰と鶏糞灰の混合物は、鶏糞灰粉末と消石灰粉末又は生石灰粉末を混合することにより、土質安定剤や凝集剤として活用することができ、鶏糞灰を大量に道路材料などとして再資源化して利用することができる。その上、結果として石灰の使用量を減らすことが可能となり環境保全にも寄与することとなる」(段落「0020」参照。)というものであり、処理過程において事前に「鶏糞を800℃~1000℃で焼却」(段落「0014」等参照。)する必要があるし、また、消石灰粉末と鶏糞灰粉末の粒度をほぼ等しくする必要があり、処理工程が簡単ではない。
【0012】
また、特許文献4には、「次に、液体状堆肥抽出工程では、貯留槽19から処理槽20に移し、処理槽20の内部において、堆肥原料生成工程で生成した堆肥原料に重量比で約8倍の水を加えて撹拌混合し、その後、約24時間静置する。これにより、固形分が処理槽20の底部に沈殿し、上澄み液と沈殿物とに固液分離される。そして、処理槽20の上澄み液だけを液体状の堆肥として抽出して貯留槽21に移す」(段落「0045」参照。)と記載されている。ここで、本願発明を含め、一般に知られている家畜糞尿等の固液分離の「液」とは、例えば、所定の水質基準をクリアしたものであり、濾過、希釈等の処理後、河川に放流したり、畜舎の洗浄水として再利用(還流)したりすることができる液体(「清澄水」ともいう。)のことをいい、特許文献4に記載の「液体状の堆肥」とは技術的意味が明確に異なる。
【0013】
さらに、特許文献5に記載の発明は、「上記構成の腱糞処理方法によれば、乾燥工程、ガス化・炭化工程、冷却工程、気液接触工程、発電工程、熱回収工程という一連の工程を行うことにより、鶏糞をエネルギーの源として、「炭化物」、「酢液」、「油状物質(重質油状物質、軽質油状物質)」、「電気」、及び「熱」という、五つのエネルギー資源に変換することができる。これにより、従来は肥料程度に限られていた鶏糞の用途が多様な物隣、養鶏場から日々多量に排出される鶏糞を、エネルギー資源として有効に活用することができる」(段落「0008」参照。)と記載されているように、鶏糞をエネルギー資源に変換する処理であるため、処理工程が複雑で、処理を実現する装置も非常に大型化されるものと推量される。
【0014】
上記特許文献1、5に記載に記載の鶏糞の処理は、鶏糞を乾燥させるという技術思想に基づいている。また、特許文献2に記載の鶏糞の処理は、鶏糞を発酵させるという技術思想に基づいている。また、特許文献3に記載の鶏糞の処理は、鶏糞灰と石灰を混合させて再資源化するので、鶏糞を焼却するという技術思想を含んでいる。特許文献4に記載の発明は、水を加えた堆肥原料を固形分(沈殿物)と液体状の堆肥とに固液分離するという技術思想を含んでいる。
【0015】
しかしながら、本願出願人は、上記の特許文献1~5のいずれにも記載されていない技術思想による鶏糞処理方法について鋭意、研究した結果、鶏舎から排出した未処理の鶏糞の含水率に着目して、新規の鶏糞処理方法の開発をすることに至った。
【0016】
そこで、本発明は、鶏舎から排出された鶏糞であって乾燥・発酵・焼却等の処理を施していない未処理の鶏糞に水分を加え、この水分を加えた鶏糞溶液を凝集剤を用いて固体成分と液体成分とに固液分離処理する鶏糞処理方法を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明は、上述の未処理の鶏糞用いて、簡単な固液分離方法による鶏糞処理方法を提供することを目的とする。
なお、以下、本発明では、鶏舎から排出された鶏糞であって乾燥・発酵・焼却等の処理を施していない未処理の鶏糞を「鶏糞尿原液」という。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、鶏糞処理方法であって、鶏糞尿原液に所定の水分を加えて前記鶏糞尿原液を希釈する第1の工程と、該希釈された鶏糞尿原液と、凝集剤水溶液とを混合する第2の工程とを含み、前記希釈された鶏糞尿原液を固体と液体とに固液分離処理することを特徴とする。
【0019】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の鶏糞処理方法であって、前記鶏糞尿原液の含水率が、30%乃至50%であることを特徴とする。
【0020】
また、請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載の鶏糞処理方法であって、前記第3の工程において前記固液分離処理された液体を濾過し、前記第1の工程における前記鶏糞尿原液に加える所定の水分として再利用する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の鶏糞処理方法によれば、鶏舎から排出された鶏糞であって乾燥・発酵・焼却等の処理を施していない未処理の鶏糞(鶏糞尿原液)に水分を加え、この水分を加えた鶏糞溶液を凝集剤を用いて固体成分と液体成分とに固液分離処理することができるという顕著な効果を奏する。
【0022】
本発明の鶏糞処理方法によれば、前記未処理の鶏糞(鶏糞尿原液)を用いて、簡単に鶏糞処理をすることができるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態における鶏糞尿固液分離処理工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、好適な実施形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
(実施形態)
本実施形態の鶏糞処理方法について図1を参照しながら説明する。なお、鶏舎から排出された鶏糞は、通常、糞と尿が混合されたものであるので、本実施形態では、特に、「鶏糞尿」という表現を用いるが、上記特許文献に記載された「鶏糞」を含め、一般的に表現される「鶏糞」と、本実施形態で表現する「鶏糞尿」とは同意義であるものとする。
【0026】
ここで、本願出願人は、過去に「養豚糞尿混合排水処理方法及び循環型養豚糞尿混合排水処理システム」(「特許第6242436号公報」参照。)を発明した。以下、本発明にの固液分離処理ついて、簡単に説明する。養豚糞尿混合排水は、養豚場の畜舎から集水された養豚の糞尿が混合された排水であり、特段の固液分離処理を施していないので、「原水」と称されることもある。この養豚糞尿混合排水は、pH値が7(中性)近傍の安定したアルカリ性を示す排水であることに特徴がある。本願出願人は、養豚糞尿混合排水のこの特徴を利用して、一度の凝集反応工程で固体成分と液体成分との固液分離処理を完全に行い、養豚糞尿混合排水処理を効率的に行うことができる方法を見いだしたのである。
【0027】
通常、排水や汚水等の被処理水の凝集処理を行う場合、被処理水の濃度指標に応じてpH調整を行う必要がある。これは、被処理水が中性を示すときに凝集剤の凝集作用効果が最も大きいためである。つまり、被処理水のpH値の変動が大きいほど、pHの調整度合いが大きくなるということである。例えば、被処理水がアルカリ性を示す場合と酸性を示す場合とでは、pH調整剤の成分を全く異なるものに変更する工程が必要となる。また、pH調整が自動制御されている場合は、その制御方法や制御手段が複雑になり、制御手段が大型化する問題がある。
【0028】
しかしながら、本願出願人は、上述したように、養豚糞尿混合排水はpH値が7近傍の安定したアルカリ性を示す排水であることに着目し、この排水を、凝集効果の大きい中性にするためには、複雑なpH調整方法・pH調整手段を用いることなく、ほぼ一定のpH値の酸性を示す無機系凝集剤の水溶液を添加すればよいことを見いだしたのである。
【0029】
そして、上記発明においては、同一の凝集反応槽において、養豚糞尿混合排水の原水に、上記の無機系凝集剤の水溶液と、有機系高分子凝集剤の水溶液とを同時に添加して、攪拌手段による攪拌を行うことで、上記原水の固体成分と液体成分とを完全に固液分離処理することを実現した。この固液分離処理の工程では、3つの凝集反応が同時に進行される。まず、無機系凝集剤の凝集作用で、原水の固体成分(コロイド粒子等)が凝集され微小フロックを形成する(上記発明の請求項1の「第1の凝集反応」に対応する。)。そして、この微小フロックが、有機系高分子凝集剤の凝集作用で吸着・架橋されて粗大フロックが形成される。さらに、有機系高分子凝集剤の凝集作用で、原水の固体成分が凝集されて粗大フロックが形成される。この有機系高分子凝集剤の異なる2つの凝集作用による粗大フロックの形成が、上記請求項1に記載の「第2の凝集反応」に対応する。粗大フロックの形成が完了する、つまり、凝集反応が完了すると、原水中の固体成分と液体成分との完全な固液分離処理が完了する。従来技術では、凝集反応槽において原水に凝集剤を添加して凝集反応させても、粗大フロックの形成が不十分であったため、最初の凝集反応槽の後に追加の凝集反応槽を設けて、被処理水にさらに別成分の凝集剤を添加して撹拌する等の追加の凝集反応工程を経て十分な粗大フロックを形成させて、固液分離処理を行う必要があったが、上記発明においては、追加の凝集反応工程を設ける必要がなく、最初の凝集反応工程のみで、効率的に短時間での完全な固液分離処理を行うことができる。ここで、「同時に添加」の「同時」には、多少の時間的ズレも含まれる。要するに、上述した3つの凝集反応が同時に進行されるようなタイミングで、無機系凝集剤水溶液と有機系高分子凝集剤水溶液とが原水に添加されればよい。
【0030】
無機系凝集剤としては、水溶液が酸性を示す硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸カルシウム(石膏)等が用いられ、有機系高分子凝集剤としては、水溶液が中性のポリアクリルアミド等が用いられる。上述したように、被処理水が中性であることが凝集作用効果が最も大きいので、無機系凝集剤水溶液とは別に、pH調整剤、例えば、水溶液が酸性を示すクエン酸を無機系凝集剤水溶液と有機系高分子凝集剤と同時に添加してもよい。前述したように、原水のpH値は7近傍で安定したアルカリ性を示すので、クエン酸の濃度は複雑な制御を行う必要はなく、所定範囲の濃度に設定すればよい。
【0031】
このようにして、固液分離処理されて生成された液体成分、つまり、清澄水は、さらに浄化槽で浄化され、畜舎の洗浄水等に使用するために環流される。なお、固体成分(つまり、凝集反応で形成された粗大フロック)は、水質基準値内でpH調整することで、ユーザの要求するシステム構成に応じて、浮上させることも、沈降させることも可能である。
以上が、「特許第6242436号」の簡単な説明である。
【0032】
一般的に、鶏糞(鶏糞尿原液)はpHが約7.9の弱アルカリ性を示し、ブロイラー鶏糞の含水率が30%~50%程度であり、牛糞堆肥材料の含水率の65~70%、養豚糞尿混合排水の含水率の98%に比べ、含水率が相当低い。したがって、上記の「養豚糞尿混合排水処理方法」を鶏糞の処理にそのまま適用することはできない。そこで、本願出願人は、鶏糞尿原液の含水率を養豚糞尿混合排水の含水率と同程度にすれば、上記の発明「養豚糞尿混合排水処理方法」を適用することができるのではないかと考えついた。つまり、鶏糞尿原液に水分を加え、一定の含水率にした後、適切な凝集剤を利用して、一度の凝集反応で固体成分と液体成分との固液分離処理を完全に行い、鶏糞処理を効率的に行うことができる方法を見いだしたのである。
【0033】
図1に示すように、鶏舎から排出された含水率30%~50%の鶏糞尿原液を希釈槽に投入し、後述する再利用された希釈水(濾過水)を加え希釈する。なお、再利用された濾過水がない場合は、水を利用する。次に、この希釈された鶏糞尿原液(以下、「希釈鶏糞尿原液」という。)を攪拌・分離槽に移し、水用液槽に予め貯留された凝集剤水溶液を所定量加える。この凝集剤水溶液は、無機系凝集剤及び有機系凝集剤を含む固液分離剤を溶剤として水溶液化されたものである。そして、凝集剤水溶液が混合されて希釈された鶏糞尿原液(希釈糞尿原液)を攪拌し、上澄み液(「清澄水」ともいう。)と、固形物とに固液分離処理する。
【0034】
固液分離処理が完了すると、濾過槽において上澄み液は濾過水として抽出され濁度調整後、一部は、河川等に放流され、一部は前述の希釈水に再利用される。放流される濾過水のpHは6.5~8.5、濁度は25以下である。一方、分離された固形物は産廃として廃棄される。なお、必要に応じて固形物は所定の処理後、肥料として再利用されてもよい。
以上のように、鶏糞尿原液は固液分離処理される。
(実施例)
【0035】
以下、本願発明を実施例によって説明するが、本願発明はこれによって限定されるものではない。
【0036】
<固液分離剤配合試験>
本試験では、含水率30%~50%の鶏糞尿原液を用いた。鶏糞尿原液のpH値は、7.92(弱アルカリ性)であるため、pH値の変動に影響の少ない薬剤での良型フロック形成による分離を目的に実験を重ね、今回の基本試験薬の配合を決定した。なお、固液分離剤(凝集剤)水溶液の過量によるpH値の変動は認められなかった。凝集剤は、水1000リットルに対し700g使用した。
<鶏糞尿原液の希釈試験>
表1は、比較例及び実施例の固液分離外観状況を示すものであり、表2は、固液分離後の処理水(濾過水)の希釈度と濁度を示すものである。
鶏糞尿原液の含水量が少なくヘドロ状態であるため、鶏糞尿原液を水で希釈することで固液分離反応試験を行った。この結果、鶏糞尿液原液のみ(比較例1)、容積比で鶏糞尿原液:水=1:1(比較例2)、容積比で鶏糞尿原液:水:凝集剤溶液=1:1:1(比較例3)の条件では、固液分離処理することができず、容積比で鶏糞尿原液:水:凝集剤溶液=1:1:4(実施例1)の条件で、フロックが形成し固液分離処理できることを確認した。また、容積比で鶏糞尿原液:水:凝集剤溶液=1:1:6(実施例2)の条件で、良型フロックが形成し、容積比で鶏糞尿原液:水:凝集剤溶液=1:1:8(実施例3)の条件で、良型大フロックが形成し、凝集剤水溶液が増えるほど、固液分離処理の効果が向上することが確認された。しかしながら、表1には示していないが、容積比で鶏糞尿原液:水:凝集剤溶液=1:1:10の条件では、フロック形成の外観が実施例3と対比して実質的に変化がないことが確認された。したがって、実施例3の容量を超えた凝集剤水溶液の投入は、固液分離の効果が実施例3を越えて向上しないものと判断される。なお、凝集剤水溶液を増加させることは、製造コストの増加にもなるので、凝集剤水溶液の容積比は、実施例1以上で、好ましくは実施例2以上、さらに好ましくは実施例3と判断される。
【0037】
【表1】
【0038】
また、表2の実施例5、実施例6に示すように、鶏糞尿原液の分離処理水(濾過水)を3倍以上希釈することで、放流基準値(25)以下にすることが確認された。この結果、鶏糞尿原液を希釈して固液分離処理し、濾過した後、さらに希釈水で3倍以上に希釈することで、河川等へ放流することができ、また、鶏糞尿原液の希釈水として再利用することができる。なお、鶏舎及び関連施設の洗浄水として再利用することができるのはいうまでもない。
【表2】
図1