(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129829
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】回転工具
(51)【国際特許分類】
B23C 3/12 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
B23C3/12 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034114
(22)【出願日】2022-03-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】柳原 裕介
(72)【発明者】
【氏名】武藤 充
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022DD11
3C022DD17
(57)【要約】
【課題】工具や接着剤を使わずに、緩みにくい回転工具を提供する。
【解決手段】回転工具30は、回転軸1を中心に配置された、突き当て面11aと、円筒穴部11cと、平行雌ねじ11bとを有するボディ11と、ボディ11に装着され、ボディ11と一体に回転するカバー13であって、円筒穴部11cに挿入される円筒軸部13bと、突き当て面11dに当接する当接面13aと、平行雌ねじ11bと嵌まり合う平行雄ねじ13cとを有するカバー13と、円筒軸部13b又はボディ11に形成された円周溝17と、円周溝17に装着され、円筒軸部13bとボディ11の両方に接する緩み止めリング15とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に配置された、突き当て面と、円筒穴部と、平行雌ねじと、を有するボディと、
前記ボディに装着され、前記ボディと一体に回転するカバーであって、
前記円筒穴部に挿入される円筒軸部と、
前記突き当て面に当接する当接面と、
前記平行雌ねじと嵌まり合う平行雄ねじと、
を有するカバーと、
前記円筒軸部又は前記ボディに形成された円周溝と、
前記円周溝に装着され、前記円筒軸部と前記ボディの両方に接する緩み止めリングと、
を有する、回転工具。
【請求項2】
回転軸を中心に配置された、突き当て面と、平行雄ねじと、円筒軸部と、を有するボディと、
前記ボディに装着され、前記ボディと一体に回転するカバーであって、
前記円筒軸部と接する円筒穴部と、
前記平行雄ねじと嵌まり合う平行雌ねじと、
前記突き当て面に当接する当接面と、
を有するカバーと、
前記円筒軸部又は前記カバーに形成された円周溝と、
前記円周溝に装着され、前記円筒軸部と前記カバーの両方に接する緩み止めリングと、
を有する、回転工具。
【請求項3】
前記円周溝は、前記円筒軸部に形成される、
請求項1又は2に記載の回転工具。
【請求項4】
前記緩み止めリングは、つぶされて前記円周溝に装着される、
請求項1~3のいずれかに記載の回転工具。
【請求項5】
前記緩み止めリングは、ゴムリングである、
請求項1~4のいずれかに記載の回転工具。
【請求項6】
前記カバーは、滑り止めを有する、
請求項1~5のいずれかに記載の回転工具。
【請求項7】
前記ボディの内部に挿入され、前記回転軸に沿って往復するスライダと、
前記スライダと前記カバーとの間に配置され、前記スライダを付勢する弾性体と、
を更に有する、
請求項1~6のいずれかに記載の回転工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ハウジングと、伝達ロッドと、リカバリーロッドと、傾動シャフトと、ばねと、ホルダと、回転直動変換機構を含むバリ取り工具が提案されている(特開2020-182998。以下、特許文献1)。
また、シャンクと、シャンクに連結されるハウジングと、ハウジングに支持され、ローラを支持するフレームと、マンドレルとを含むローラバニシング工具が提案されている(特許第6712113号。以下、特許文献2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1や特許文献2の回転工具は、高い回転数で回転する。特許文献1や特許文献2の工具のシャンクやハウジングは、工具の中心軸に配置されたねじで締結されるキャップを有する。このようなキャップは、工具の回転の加速時や減速時に緩むことがある。キャップの緩みを防止するため、キャップが工具によってシャンクに固く締結される場合がある。このとき、特殊な工具が利用される場合がある。更に、径方向からねじ込まれた止めねじによって、ゆるみ止めされる場合がある。また、キャップは、シャンクやハウジングに接着される場合がある。
【0004】
本発明は、工具や接着剤を使わずに、緩みにくい回転工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の観点は、
回転軸を中心に配置された、突き当て面と、円筒穴部と、平行雌ねじと、を有するボディと、
前記ボディに装着され、前記ボディと一体に回転するカバーであって、
前記円筒穴部に挿入される円筒軸部と、
前記突き当て面に当接する当接面と、
前記平行雌ねじと嵌まり合う平行雄ねじと、
を有するカバーと、
前記円筒軸部又は前記ボディに形成された円周溝と、
前記円周溝に装着され、前記円筒軸部と前記ボディの両方に接する緩み止めリングと、
を有する、回転工具である。
【0006】
本発明の第2の観点は、
回転軸を中心に配置された、突き当て面と、平行雄ねじと、円筒軸部と、を有するボディと、
前記ボディに装着され、前記ボディと一体に回転するカバーであって、
前記円筒軸部と接する円筒穴部と、
前記平行雄ねじと嵌まり合う平行雌ねじと、
前記突き当て面に当接する当接面と、
を有するカバーと、
前記円筒軸部又は前記カバーに形成された円周溝と、
前記円周溝に装着され、前記円筒軸部と前記カバーの両方に接する緩み止めリングと、
を有する、回転工具である。
【0007】
円筒穴部を有するボディは、第1端から順に、円筒穴部と、雌ねじとを有して良い。この場合、雌ねじの谷径は、円筒軸部の内径以下であって良い。
また、円筒穴部を有するボディは、第1端から順に、雌ねじと、円筒穴部を有しても良い。この場合、雌ねじの谷径は、円筒軸部の内径よりも小さい。
円筒穴部を有するボディは、円筒軸部と雌ねじとの間の段差に、突き当て面を有して良い。円筒穴部を有するボディは、円筒穴部の先端(第1端)や、円筒穴部の底面(第2端)に突き当て面を有しても良い。突き当て面は、平面や円錐面である。
【0008】
円筒軸部を有するボディは、第1端から順に、円筒軸部と、雄ねじとを有して良い。この場合、雄ねじの山径は、円筒軸部の外径以上であって良い。
また、円筒軸部を有するボディは、第1端から順に、雄ねじと、円筒軸部を有しても良い。この場合、雄ねじの山径は、円筒軸部の外径よりも小さい。
円筒軸部を有するボディは、円筒軸部と雄ねじとの間の段差に、突き当て面を有して良い。円筒軸部を有するボディは、円筒軸部の先端(第1端)や、円筒軸部の基端(第2端)に突き当て面を有しても良い。突き当て面は、平面や円錐面である。
【0009】
円周溝は、ボディと円筒軸部のいずれか一方にのみ形成されて良い。
また、円周溝は、ボディと円筒軸部の両方に形成されても良い。このとき、2つの円周溝の軸方向の位置を一致させる。ボディの円周溝と円筒軸部の一方を深い円周溝とし、他方を浅い円周溝とする。緩み止めリングは、深い円周溝に装着される。
例えば、緩み止めリングは、Oリングである。例えば、緩み止めリングは、装着時に、8%~30%つぶされる。好ましくは、緩み止めリングは、装着時に10~20%程度つぶされる。
キャップは、作業者によって、手で回転体軸にねじ込まれる。
回転加速時に生じる慣性力により、キャップが緩んだとしても、Oリングとシャンク間の摩擦力により、ねじの緩みが抑制される。
【0010】
緩み止めリングは、円環状である。緩み止めリングは、円形や矩形の断面を有する。
ボディは、滑り止めを有しても良い。
【0011】
回転体締結継手は、ねじ締結されるメンテナンス部分を有する工具に好適である。例えば、回転工具は、バリ取り工具やローラバニシング工具である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、工具や接着剤を使わずに締結でき、緩みにくい回転工具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
図1及び
図2に示すように、実施形態1の回転工具30は、工具ボディ31と、プラグ(カバー)13と、ピストン(スライダ)39と、スライドリング43と、ボール45と、フローター47と、第1コイルばね(第1弾性体)37と、第2コイルばね(第2弾性体)41と、を有する。回転工具30は、更に、緩み止めリング15を有する。回転工具30は、例えば、バリ取り工具である。
【0015】
工具ボディ31は、ボディ11と、シャンク31aと、シリンダ穴31hと、第2ばね室31eと、ハウジング31fと、シリンダ31gと、スライド溝31iと、止め輪31kと、ボール穴31mと、を有する。ボディ11と、シャンク31aと、シリンダ穴31hと、第2ばね室31eと、ハウジング31fと、シリンダ31gと、止め輪31kとは、中心軸1と同軸に配置される。
プラグ13は、円周溝17を有する。ボディ11と、プラグ13と、円周溝17と、緩み止めリング15とが、回転体締結継手10を構成する。
【0016】
ボディ11は、装着穴11eを有する。装着穴11eは、第1端(基端)から順に、突き当て面11aと、雌ねじ11bと、円筒穴部11cと、を有する。装着穴11eは、第1端面に開口11dを有する。ボディ11は、中心軸(回転軸)1を有する中空の円筒軸である。突き当て面11aと、雌ねじ11bと、円筒穴部11cは、ボディ11の中心軸1と同軸に配置される。
突き当て面11aは、ボディ11の第1端面である。突き当て面11aは、例えば、平面である。突き当て面11aは、円錐面でも良い。突き当て面11aが円錐面であるときは、円錐面の頂点が突き当て面11aの第1端側(基端側)、第2端側(先端側)のいずれにあっても良い。雌ねじ11bは、平行ねじであり、円筒穴部11cよりも大径である。円筒穴部11cの内面は、滑らかに仕上げられる。
【0017】
プラグ13は、装着穴11eに装着され、開口11dを塞ぐ。プラグ13は、第1端(基端)から順に、頭部13dと、当接面13aと、雄ねじ13cと、円筒軸部13bと、を有する。プラグ13は、滑り止め13fを有しても良い。頭部13dと、当接面13aと、雄ねじ13cと、円筒軸部13bは、中心軸1と同軸に配置される。
頭部13dは、プラグ13の第1端部に配置される。頭部13dは、例えば、直円筒状である。滑り止め13fは、例えば、ローレット溝、縦溝、複数の突起である。縦溝である滑り止め13fは、丸溝であり、頭部13dの外周に中心軸1に沿って円周上に均等に配置される。頭部13dの外径は、例えば、15mm~30mmである。
当接面13aは、頭部13dの第2端面(先端面)に配置される。当接面13aは、ボディ11の突き当て面11aに当接する。雄ねじ13cは、平行ねじであり、雌ねじ11bに嵌まり合う。円筒軸部13bは、円筒穴部11cと接する。円筒軸部13bと円筒穴部11cとは、隙間ばめである。
【0018】
なお、突き当て面11aは、雌ねじ11bと円筒穴部11cの段差に配置されても良い。この場合、当接面13aは、雄ねじ13cと円筒軸部13bの段差に配置される。
【0019】
円周溝17は、矩形断面を有し、円周方向に延びる。円周溝17は、円筒軸部13bに配置される。円周溝17は、円筒軸部13bの全周に亘って延びる。円周溝17の位置に合わせて、溝の浅い円周溝が更に円筒穴部11cに配置されても良い。
【0020】
なお、円周溝17は、円筒軸部13bに配置されず、円筒穴部11cに配置されても良い。すなわち、ボディ11が円周溝17を有してもよい。この場合において、円周溝17の位置に合わせて、溝の浅い円周溝が円筒軸部13bに配置されても良い。
【0021】
緩み止めリング15は、手でつぶせる程度の弾性を有する。緩み止めリング15は、丸や四角の断面形状を有する円環である。緩み止めリング15は、例えば、天然ゴムや合成ゴムである。例えば、緩み止めリング15は、ゴム製のOリングである。例えば、緩み止めリング15のつぶし率は15%程度である。緩み止めリング15のつぶし率は、8~30%程度である。緩み止めリング15のつぶし率が30%を超えると、手での締め付けが困難となる。緩み止めリング15のつぶし率が8%未満の場合、緩み止め効果が低減される。
【0022】
なお、ボディ11は、第1端から順に、円筒穴部11cと、雌ねじ11bを有しても良い。この場合、円筒穴部11cは、雌ねじ11bと同径か、雌ねじ11bより大径である。この場合、プラグ13は、第1端から順に、頭部13dと、円筒軸部13bと、雄ねじ13cと、を有する。
【0023】
プラグ13は、装着穴11eに装着され、作業者の手で締め込まれる。このとき、当接面13aが突き当て面11aに突き当たり、締結トルクが発生する。
【0024】
シャンク31aは、加工機の主軸や、テールストックに装着される。シャンク31aは、例えば、ストレートシャンクや、テーパシャンクである。シリンダ31gは、中空円筒状で、工具ボディ31の第2端部(先端部)に配置される。
ハウジング31fは、シリンダ31gよりも大径であり、工具ボディ31の中央部に配置される。ハウジング31fは、先端側に開口する中空円筒状の第2ばね室31eを有する。
【0025】
シリンダ穴31hは、シリンダ31gの内部に配置される。シリンダ穴31hは、先端に開口を有する。シリンダ穴31hは、装着穴11eと接続される。シリンダ31gの外面は、円筒面であり、第2ばね室31eの内面を構成する。
止め輪31kは、シリンダ31gの中央部に配置される。スライド溝31iは、シリンダ31gを貫通し、中心軸1に沿って延びる。スライド溝31iは、軸方向において、ハウジング31fの中間に位置する。
ボール穴31mは、シリンダ31gを貫通し、ボール45を支持する。ボール穴31mは、止め輪31kよりもやや基端側に位置する。ボール穴31mの直径は、ボール45の直径と実質的に同一である。
【0026】
ピストン39は、プッシャ39aと、案内ピン39bと、ばねガイド39cと、を有する。プッシャ39aは、円板状であり、シリンダ穴31h内を往復する。案内ピン39bは、プッシャ39aの径方向に延びる。案内ピン39bは、スライド溝31iの側面に当接する。案内ピン39bがスライド溝31iの溝内を案内されて、プッシャ39aがシリンダ穴31h内を往復する。スライド溝31iは、プッシャ39aの往復幅を規制する。ばねガイド39cは、プッシャ39aの第1端面に配置される。ばねガイド39cの外径は、第1コイルばね37の内径と実質的に同一である。ばねガイド39cは、第1コイルばね37を案内する。
【0027】
第1コイルばね(第1弾性体)37は、プラグ13とピストン39の間に配置される。第1コイルばね37は、ピストン39を先端方向に付勢する。
【0028】
スライドリング43は、中空円筒状であり、逃がし部43aと、押さえ面43bと、外筒面43cと、第2ばねガイド43dと、を有する。スライドリング43は、第2ばね室31eの内部に装着され、止め輪31kと第2ばね室31eの底面との間を往復する。スライドリング43が基端側にスライドしたとき、逃がし部43aは、ボール穴31mに一致する。このとき、ボール45は、シリンダ穴31hの径方向外側に逃げて、逃がし部43aに収納される。
【0029】
押さえ面43bは、逃がし部43aよりも基端側に配置される。スライドリング43が先端方向にスライドしているときに、押さえ面43bは、ボール45を径方向内側に押さえ込む。このとき、ボール45の一部はシリンダ穴31hの内側に突出する。
第2ばねガイド43dは、スライドリング43の基端部に配置された円筒穴である。第2ばねガイド43dの内径は、第2コイルばね41の外径と実質的に等しい。
【0030】
第2コイルばね41は、第2ばね室31eと、スライドリング43との間に装着される。第2コイルばね41は、スライドリング43を先端方向に付勢する。第2コイルばね41は、第2ばねガイド43dに案内される。
【0031】
フローター47は、円筒状であり、外円筒面47aと、ボール溝47bと、工具装着穴47cと、を有する。外円筒面47aは、シリンダ穴31hに摺動し、シリンダ穴31h内部を中心軸1に沿って往復する。ボール溝47bは、中心軸1に沿って延びる丸溝であり、外円筒面47aに配置される。工具装着穴47cには、先端工具3が装着される。フローター47が往復すると、ボール45は、ボール溝47b内を相対的に移動する。
【0032】
回転工具30は、例えば、加工機の主軸に装着されて、主軸と共に回転する。シャンク31aの回転は、ボール45と、ボール溝47bを介して、フローター47に伝達される。フローター47と共に回転する先端工具3がワークのバリと接触して、バリ取りが行われる。ワークにはばらつきがあるところ、フローター47が中心軸1に沿ってスライドして、ばらつきを吸収する。これによって、回転工具30は、均一にバリ取り加工できる。
【0033】
回転工具30のバリ取り加工の強さは、第1コイルばね37の強さを変更することによって調整できる。ここで、締結工具を使わずに、作業者の手でプラグ13を回転できる。これにより、第1コイルばね37を容易に交換できる。
【0034】
回転工具30は、非常に高速(例えば、毎分1万~3万回転)に回転する。回転工具30の回転が加速する際や減速する際に、プラグ13が緩むと、フローター47の押出し力が変化し、バリ取り効果が変わる。本実施形態の回転工具30によれば、緩み止めリング15の慣性力や弾性力と、緩み止めリング15と円周溝17や円筒穴部11cとの間に摩擦力が生じる。そのため、締結工具を使わずに手でプラグ13を締めた場合においても、回転工具30の回転が加速する際や減速する際に、プラグ13が緩むことが抑制される。また、回転工具30の振動によりプラグ13が緩むことが抑制される。また、プラグ13の手締めトルクが不十分な場合や、プラグ13を締めこむことを忘れて使用した場合においても、緩み止めリング15によりプラグ13の緩みが抑制される。
【0035】
また、本実施形態の円周溝17は、円筒軸部13bに配置される。そのため、回転工具30が高速回転したときに、緩み止めリング15は遠心力を受けて、円筒穴部11cに密着する。これにより、緩み止めリング15と円筒穴部11cの接触面積が増加し、緩み止めリング15による緩み止め効果が促進される。
また、円周溝17が円筒軸部13bに配置されるため、円周溝17が円筒穴部11cに配置される場合に比べて、回転体締結継手10を製造しやすく、緩み止めリング15を交換しやすい。
【0036】
<実施形態2>
以下、
図3を参照して、第2実施形態の回転工具70について説明する。本実施形態の回転工具70は、ローラバニシング工具である。
図3に示すように、本実施形態の回転工具70は、工具ボディ71と、調整リング73と、調整ナット75と、スラスト軸受76と、キー(回り止め)74と、ハウジング77と、コイルばね(弾性体)81と、カバー113と、フレーム79と、一つ又は複数のローラ83と、を有する。回転工具70は、中心軸(回転軸)1を中心に回転する。工具ボディ71と、調整リング73と、調整ナット75と、スラスト軸受76と、ハウジング77と、コイルばね(弾性体)81と、カバー113と、フレーム79とは、中心軸1に同軸に配置される。ハウジング77は、ボディ111を有する。ボディ111と、カバー113と、円周溝117と、緩み止めリング115とが、回転体締結継手100を構成する。
【0037】
工具ボディ71は、円筒状であり、シャンク71aと、スライド軸71bと、スライド溝71cと、雄ねじ71dと、ステム71fと、マンドレル71eと、を有する。シャンク71aは、例えば、ストレートシャンク、モールステーパシャンクである。スライド軸71bは、工具ボディ71の中央部に配置される。雄ねじ71dは、スライド軸71bの外周円筒面に配置される。スライド溝71cは、中心軸1に平行に延びて、スライド軸71bに配置される。スライド溝71cは、例えば、長方形の横断面を有する。
ステム71fは、工具ボディ71の中央部から先端部にかけて配置され、マンドレル71eとスライド軸71bとを接続する。マンドレル71eは、先端が細い円錐台であり、工具ボディ71の先端部に配置される。
【0038】
調整ナット75は、円環状であり、雌ねじ75aと、第1スプライン軸75bと、止め輪75cと、を有する。雌ねじ75aは、調整ナット75の内面に配置され、雄ねじ71dと嵌まり合う。第1スプライン軸75bは、調整ナット75の外面の先端部に配置される。止め輪75cは、調整ナット75の基端部の外径に配置される。
【0039】
調整リング73は、円環状であり、調整ナット75の基端部に接続される。調整リング73は、内円筒面73aと、止め輪溝73bと、第2スプライン軸73cと、キー溝73dと、を有する。内円筒面73aは、調整リング73の内面であり、雄ねじ71dの山の径よりも大径である。止め輪溝73bには、止め輪75cが挿入される。第2スプライン軸73cは、調整リング73の外径部の基端部に配置される。キー溝(回り止め溝)73dは、内円筒面73aに配置される。調整リング73は、調整ナット75に対して、自由に回転する。
キー74は、キー溝73dとスライド溝71cとの間に挿入される。
【0040】
ハウジング77は、調整室77aと、第1スプライン穴77bと、第2スプライン穴77cと、を有する。ハウジング77は、中空円筒状であり、先端部にボディ111を有する。ハウジング77は、工具ボディ71に対して、中心軸1に沿って往復する。
調整室77aは、ハウジング77の内側の先端側の内部空洞である。調整室77aは、基端側から順に、調整リング73と、調整ナット75と、スラスト軸受76と、フレーム79と、コイルばね81と、を収納する。
【0041】
第1スプライン穴77bは、ハウジング77の中央部の内面に配置され、第1スプライン軸75bと滑動する。第2スプライン穴77cは、ハウジング77の基端部の内面に配置され、第2スプライン軸73cと滑動する。ここで、第1スプライン穴77bは、第2スプライン穴77cよりも長い。具体的には、ハウジング77を基端方向にスライドさせたときに、第2スプライン穴77cが第2スプライン軸73cから外れるが、第1スプライン穴77bは第1スプライン軸75bから外れない。作業者がハウジング77を基端方向に引っ張りながら、ハウジング77を回転させると、調整ナット75の軸方向の位置が変化し、コイルばね81の装着長さが変更される。
【0042】
ボディ111は、先端部(第1端部)から順に、円筒軸部111cと、雄ねじ111bと、突き当て面111aと、滑り止め111dと、を有する。円筒軸部111cは、中心軸1を中心とする直円筒である。雄ねじ111bは、中心軸1を中心とする平行ねじであり、円筒軸部111cよりも大径である。突き当て面111aは、雄ねじ111bの基端面である。突き当て面111aは、平面でも、円筒面でも良い。滑り止め111dは、例えば、ローレット溝や、中心軸1の方向に延びた縦溝、突起である。滑り止め111dは、省いても良い。
【0043】
カバー113は、キャップ状であり、調整室77aの先端側の開口を覆う。カバー113は、先端部から順に、円筒穴部113bと、雌ねじ113cと、当接面113aと、を有する。カバー113は、滑り止め113dを有しても良い。円筒穴部113bは、円筒軸部111cと接する。円筒穴部113bと円筒軸部111cは、隙間ばめである。雌ねじ113cは、雄ねじ111bと嵌まり合う。当接面113aは、突き当て面111aに突き当たる。滑り止め113dは、カバー113の外周面に配置される。滑り止め113dは、例えば、ローレット溝や、中心軸1の方向に延びた縦溝や、突起である。
【0044】
なお、突き当て面111aは、雄ねじ111bと円筒軸部111cとの間の段差部に配置されても良い。この場合、当接面113aは、円筒穴部113bと雌ねじ113cとの間の段差部に配置される。
【0045】
円周溝117は、円筒軸部111cに配置される。緩み止めリング115は、円周溝117に装着される。緩み止めリング115は、例えば、Oリングであり、円周溝117に装着されるときにつぶされる。
なお、円周溝117は、円筒穴部113bに配置されても良い。円周溝117や緩み止めリング115は、第1実施形態の円周溝17や緩み止めリング15と同様に変形でき、配置を変更できる。
【0046】
フレーム79は、一つ又は複数のローラ保持穴79aと、つば79bと、ばねガイド79cと、を有する。フレーム79は、中空円筒状である。フレーム79は、ステム71f及びマンドレル71eに対して回転自在に、ステム71f及びマンドレル71eの径方向外側に配置される。
ローラ保持穴79aは、マンドレル71eに面して、フレーム79の先端部に配置される。ローラ保持穴79aは、径方向外側から見て矩形状の断面形状を有し、フレーム79を貫通する。複数のローラ保持穴79aは、中心軸1について回転対称に配置される。
つば79bは、フレーム79の基端部に配置される。つば79bはスラスト軸受76に接しても良い。ばねガイド79cは、つば79bよりも先端側に配置される。ばねガイド79cの外径は、コイルばね81の内径に実質的に等しい。
【0047】
コイルばね81は、調整室77aの内部で、つば79bと、カバー113の間に配置される。コイルばね81は、フレーム79をマンドレル71eに対して基端方向に付勢する。コイルばね81は、ばねガイド79cに案内される。
【0048】
ローラ83は、マンドレル71eの半分の頂角を有する円錐台形状である。ローラ83は、基端方向に向かうにつれて径が小さくなる。各ローラ83は、各ローラ保持穴79aに、回転自在に支持される。
【0049】
回転工具70は、回転しながら施工穴に挿入される。施工穴は、ローラ83の外接円よりも若干小さい内径を有する。ローラ83が施工穴に挿入されると、ローラ83及びフレーム79がスラスト荷重を受け、マンドレル71eに対してローラ83が基端方向に移動する。そして、ローラ83の外接円が大きくなり、ローラ83が施工穴をバニシング加工する。コイルばね81の強さと、コイルばね81の装着長さによって、ローラ83の外接円の直径の拡大量が変更される。
【0050】
回転工具70は、非常に高速(例えば、毎分1万~3万回転)に回転する。回転工具70が回転する際や停止する際に、カバー113が緩むと、加工径が変化する。本実施形態の回転工具70によれば、締結工具を使わずに手でカバー113を締めた場合においても、回転工具70の回転が加速する際や減速する際に、カバー113が緩むことが抑制される。また、回転工具70の振動により、カバー113が緩むことが抑制される。また、カバー113の手締めトルクが不十分な場合や、カバー113を締めこむことを忘れて使用した場合においても、緩み止めリング15によりカバー113の緩みが抑制される。
【0051】
本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
11、111 ボディ
11a、111a 突き当て面
11b 雌ねじ(平行雌ねじ)
11c 円筒穴部
13 プラグ(カバー)
13a、113a 当接面
13b 円筒軸部
13c 雄ねじ(平行雄ねじ)
15、115 緩み止めリング
17、117 円周溝
111b 雄ねじ(平行雄ねじ)
111c 円筒軸部
113 カバー
113b 円筒穴部
113c 雌ねじ(平行雌ねじ)
【手続補正書】
【提出日】2022-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機の主軸に装着される回転工具であって、
回転軸を中心に配置されるボディであって、
基端に位置する突き当て面と、
基端側に開口を有する円筒穴部と、
前記円筒穴部の内周面に形成される平行雌ねじと、
を有するボディと、
前記開口を介して前記ボディの基端側に装着され、前記ボディと一体に回転するカバーであって、
前記円筒穴部に挿入される円筒軸部と、
前記突き当て面に当接する当接面と、
前記平行雌ねじと嵌まり合う平行雄ねじと、
を有するカバーと、
前記ボディの内部に挿入され、前記回転軸に沿って往復するスライダと、
前記スライダと前記カバーとの間に配置され、前記スライダを前記回転軸方向に付勢する弾性体と、
前記円筒軸部又は前記ボディに形成された円周溝と、
前記円周溝に装着され、前記円筒軸部と前記ボディの両方に接する緩み止めリングと、
を有する、回転工具。
【請求項2】
前記円周溝は、前記円筒軸部に形成される、
請求項1に記載の回転工具。
【請求項3】
前記緩み止めリングは、つぶされて前記円周溝に装着される、
請求項1又は2に記載の回転工具。
【請求項4】
前記緩み止めリングは、ゴムリングである、
請求項1~3のいずれかに記載の回転工具。
【請求項5】
前記カバーは、滑り止めを有する、
請求項1~4のいずれかに記載の回転工具。