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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129841
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】工程計画作成支援システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20230912BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20230912BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034130
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】関 洋
(72)【発明者】
【氏名】平野 克彦
(72)【発明者】
【氏名】笠原 孝保
(72)【発明者】
【氏名】上野 克宜
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA05
3C100AA16
3C100AA18
3C100AA38
3C100AA43
3C100AA68
3C100BB13
3C100BB14
3C100EE18
5L049CC04
(57)【要約】
【課題】遅延リスクが高い作業を明確化して作業の遅延を回避できる工程計画作成支援システムを提供する。
【解決手段】本発明による工程計画作成支援システムは、複数のアクティビティに分けられた作業を、アクティビティの関係を表すネットワーク・モデルで表現する作業プロセスネットワーク装置40と、ロボットがアクティビティを実行して作業を実行する3次元シミュレーションを行い、ロボットが作業の実行に要する作業時間を求めるシミュレーション装置50と、シミュレーション装置50が求めた作業時間を基に工程計画の成立性を評価し、シミュレーション装置50が求めた作業時間が予め定められた計画時間を超える場合には、工程計画が不成立であると判断する工程成立性評価装置60と、工程成立性評価装置60が工程計画が不成立であると判断した場合には、ネットワーク・モデルを修正する作業プロセスネットワーク修正装置70とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアクティビティに分けられた作業を、前記アクティビティの関係を表すネットワーク・モデルで表現する作業プロセスネットワーク装置と、
ロボットが前記アクティビティを実行して前記作業を実行する3次元シミュレーションを行い、前記ロボットが前記作業の実行に要する時間である作業時間を求めるシミュレーション装置と、
前記シミュレーション装置が求めた前記作業時間を基に工程計画の成立性を評価し、前記シミュレーション装置が求めた前記作業時間が予め定められた計画時間を超える場合には、前記工程計画が不成立であると判断する工程成立性評価装置と、
前記工程成立性評価装置が前記工程計画が不成立であると判断した場合には、前記ネットワーク・モデルを修正する作業プロセスネットワーク修正装置と、
を備えることを特徴とする工程計画作成支援システム。
【請求項2】
前記作業プロセスネットワーク修正装置は、前記工程計画が不成立となった要因の前記アクティビティをボトルネックの作業とみなし、前記ボトルネックの作業について前記ネットワーク・モデルを修正することで、前記ボトルネックである前記アクティビティの前記作業時間を短縮させる、
請求項1に記載の工程計画作成支援システム。
【請求項3】
前記作業プロセスネットワーク修正装置による前記ネットワーク・モデルの修正に合わせて、前記工程計画を修正する工程計画修正装置を備える、
請求項2に記載の工程計画作成支援システム。
【請求項4】
表示装置を備え、
前記表示装置は、前記ボトルネックである前記アクティビティについての情報を表示する、
請求項2に記載の工程計画作成支援システム。
【請求項5】
表示装置を備え、
前記表示装置は、前記シミュレーション装置が前記3次元シミュレーションを行って得られた前記ロボットの動作の3次元動画を表示する、
請求項1に記載の工程計画作成支援システム。
【請求項6】
表示装置を備え、
前記表示装置は、前記作業プロセスネットワーク修正装置が修正した前記ネットワーク・モデルを表示する、
請求項1に記載の工程計画作成支援システム。
【請求項7】
表示装置を備え、
前記表示装置は、前記工程計画修正装置が修正した前記工程計画を表示する、
請求項3に記載の工程計画作成支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業の工程計画の作成を支援するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラントや工場での作業においては、例えば作業現場の状況の変化に伴い、作業が計画通りに進まないことがある。作業が計画通りに進まないと、作業期間が延びて、作業コストが上昇したり順守すべき期限を守れなかったりすることもありうる。このため、特に遅延リスクが高くボトルネックとなり得る作業を明確化し、この作業の工程計画を見直す必要がある。
【0003】
作業の工程計画の作成を支援する工程計画作成支援システムの従来の例は、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の生産計画立案支援装置では、予め定められた投入計画に従ってワークを生産単位ごとに生産工程に順次投入する場合における、各工程の各時間帯にワークが存在する確率をそれぞれ算出した第1のモデルを生産単位ごとにそれぞれ生成し、生成した生産単位ごとの第1のモデルをすべて重ね合わせた第2のモデルを生成し、生成した第2のモデルに基づいて、ボトルネックとなる工程の時間帯を特定して表示することで、ボトルネックが発生しない生産計画を立案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-194587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラントや工場での作業では、上位工程(例えば、月単位で定められる工程)と下位工程(例えば、日単位で定められる工程)が計画される。下位工程に遅延が生じると、上位工程を計画通りに進めることができず、計画された工程が成立しないことになる。作成された工程計画を守るためには、遅延リスクが高くボトルネックとなり得る作業を明確化することが重要である。
【0006】
一般的に、各工程で行われる作業(アクティビティ)の間には、工程表には描かれない相互関係(例えば、次の作業を行うための準備)が存在する。従来の技術では、このような相互関係(インタラクション)が考慮されておらず、遅延リスクが高い作業を正確に明確化することが困難である。また、作業の遅延を回避するためには、工程計画を表示したりロボットの動作を表示したりして説明性の高い工程計画をユーザーに提示することも必要である。
【0007】
本発明の目的は、遅延リスクが高い作業を明確化して作業の遅延を回避できる工程計画作成支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による工程計画作成支援システムは、複数のアクティビティに分けられた作業を、前記アクティビティの関係を表すネットワーク・モデルで表現する作業プロセスネットワーク装置と、ロボットが前記アクティビティを実行して前記作業を実行する3次元シミュレーションを行い、前記ロボットが前記作業の実行に要する時間である作業時間を求めるシミュレーション装置と、前記シミュレーション装置が求めた前記作業時間を基に工程計画の成立性を評価し、前記シミュレーション装置が求めた前記作業時間が予め定められた計画時間を超える場合には、前記工程計画が不成立であると判断する工程成立性評価装置と、前記工程成立性評価装置が前記工程計画が不成立であると判断した場合には、前記ネットワーク・モデルを修正する作業プロセスネットワーク修正装置とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、遅延リスクが高い作業を明確化して作業の遅延を回避できる工程計画作成支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例による工程計画作成支援システムの全体構成を示す図である。
図2】工程データ・データベースが保存している作業工程の例を示す図である。
図3】ロボットが作業を実施する作業現場を3次元の仮想環境モデルに表現した現場環境モデルの例である。
図4図2の加工アクティビティのネットワーク・モデルの例を示す図である。
図5】本実施例による工程計画作成支援システムが行う処理を示すフローチャートの例である。
図6】工程成立性評価装置が、工程計画が不成立であると判断した場合の例を示す図である。
図7】工程計画が不成立であると判断された場合に、ペトリネットを修正して下位工程の工程計画を修正することで、工程計画を成立させた場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による工程計画作成支援システムは、プラントや工場などでの作業の工程計画の作成を支援するシステムであり、工程計画の成立性を評価することができて、遅延リスクが高くボトルネックとなり得る作業を明確化して作業の遅延を回避することができる。作業現場では、作成された工程計画に基づき、主にロボットが作業を実施する。作業現場において各工程で行われる作業は、アクティビティという複数の作業単位に分けられる。本発明による工程計画作成支援システムは、複数のアクティビティに分けられた作業を、アクティビティの関係を表すネットワーク・モデルで表現し、3次元シミュレーション(物理シミュレーション)を行ってロボットの作業時間を求め、作業時間が計画された作業時間を超える場合には、ネットワーク・モデルを修正して工程計画を修正する。
【0012】
工程計画が成立するとは、見積もられた作業時間が、予め定められた作業時間である計画時間以内であり、工程を計画通りに進めることができるということであり、例えば、見積もられた下位工程の作業時間が上位工程で定められた作業時間と整合するということである。工程計画が不成立となる要因のアクティビティは、ボトルネックであるアクティビティであり、遅延リスクが高い作業である。本発明では、工程計画が不成立となる要因のアクティビティを求めることで、遅延リスクが高い作業を明確化にする。
【0013】
また、本発明による工程計画作成支援システムは、ボトルネックであるアクティビティについての情報、3次元シミュレーションを行って得られたロボットの動作の3次元動画、修正されたネットワーク・モデル、及び修正された工程計画のうち少なくとも1つを表示してもよい。本発明では、このような表示により、説明性の高い工程計画をユーザーに提示することができる。
【0014】
以下、本発明の実施例による工程計画作成支援システムについて、図面を用いて説明する。以下の実施例では、ロボットがプラントで作業を実施する場合に、工程計画作成支援システムが作業の工程計画の作成を支援する例を説明する。
【実施例0015】
図1は、本実施例による工程計画作成支援システムの全体構成を示す図である。本実施例による工程計画作成支援システムは、コンピュータで構成することができ、入力装置10、表示装置20、アクティビティ抽出装置30、作業プロセスネットワーク装置40、3Dシミュレーション装置50、工程成立性評価装置60、作業プロセスネットワーク修正装置70、及び工程計画修正装置90を備える。
【0016】
入力装置10は、工程計画作成支援システムのユーザーが、工程計画作成支援システムにデータや指示を入力するための装置である。
【0017】
表示装置20は、工程計画作成支援システムの演算結果(例えば、作成した工程計画や求めたロボットの動作の動画など)をユーザーに表示するための装置である。
【0018】
アクティビティ抽出装置30は、後述する工程データ・データベース100から計算に必要なアクティビティを抽出する。
【0019】
作業プロセスネットワーク装置40は、アクティビティに分けられた作業をネットワーク・モデルで表現する。具体的には、作業プロセスネットワーク装置40は、後述する作業プロセス・ネットワークデータ・データベース200から、アクティビティ抽出装置30が抽出したアクティビティに対応するプロセスネットワークのデータを抽出することで、作業をネットワーク・モデルで表現する。
【0020】
3Dシミュレーション装置50は、作業現場においてロボットがアクティビティを実行して作業を実行することの3次元シミュレーション(物理シミュレーション)を行い、ロボットが作業の実行に要する時間を求める。3Dシミュレーション装置50は、スループット(処理速度)を求めることもできる。
【0021】
工程成立性評価装置60は、3Dシミュレーション装置50のシミュレーション結果を基に、工程計画の成立性(下位工程の作業時間が上位工程で定められた計画時間以内であるか)を評価する。すなわち、工程成立性評価装置60は、3Dシミュレーション装置50が求めたロボットの作業時間(下位工程の作業時間)が、計画時間(上位工程で予め定められた作業時間)以内であるかによって、工程計画の成立性を評価する。具体的には、工程成立性評価装置60は、ロボットの作業時間が計画時間を超える場合には、工程計画が不成立であると判断する。
【0022】
作業プロセスネットワーク修正装置70は、工程成立性評価装置60が工程計画が不成立であると判断した場合に、プロセスネットワークすなわちネットワーク・モデルを修正する。作業プロセスネットワーク修正装置70は、ロボットの作業時間(下位工程の作業時間)が計画時間(上位工程で予め定められた作業時間)を超える場合には、工程計画が不成立であるので、ネットワーク・モデルを修正する。
【0023】
工程計画修正装置90は、工程成立性評価装置60が工程計画が不成立であると判断した場合に、作業プロセスネットワーク修正装置70によるネットワーク・モデルの修正に合わせて下位工程の工程計画を修正する。
【0024】
作業プロセスネットワーク修正装置70がネットワーク・モデルを修正し、工程計画修正装置90が下位工程の工程計画を修正すると、下位工程の作業時間が上位工程で定められた計画時間以内になり、工程計画が成立する。
【0025】
3Dシミュレーション装置50、工程成立性評価装置60、及び作業プロセスネットワーク修正装置70は、ロボット動作シミュレーションによる動作成立性を判定する判定モジュール80として、統合的に機能する。
【0026】
本実施例による工程計画作成支援システムは、さらに、工程データ・データベース100、作業プロセス・ネットワークデータ・データベース200、環境モデル・データベース300、ロボットモデル・データベース400、及び作業対象物モデル・データベース500を備える。
【0027】
工程データ・データベース100には、工程計画作成支援システムに入力された作業工程が、初期工程データとして保存されている。この作業工程は、予め作成されており、入力装置10を用いたユーザーの入力により、または上位のシステムから、工程データ・データベース100に保存される。この作業工程には、上位工程(例えば、月単位で定められた工程)と下位工程(例えば、日単位で定められた工程)が含まれており、各工程での開始時期と終了時期と作業内容が含まれている。
【0028】
作業プロセス・ネットワークデータ・データベース200には、それぞれのアクティビティ(作業単位)についてのプロセスネットワークのデータが、作業プロセスネットワークデータとして保存されている。プロセスネットワークとは、アクティビティにおける作業プロセスをネットワーク・モデルで表現したものであり、例えば、離散事象シミュレーションにおけるペトリネットである。作業プロセス・ネットワークデータ・データベース200には、全てのアクティビティについてのプロセスネットワーク(例えばペトリネット)が保存されている。
【0029】
以下では、プロセスネットワークがペトリネットである例について説明する。
【0030】
環境モデル・データベース300には、ロボットが作業を実施するプラントの全体の現場環境モデルが保存されている。現場環境モデルは、ロボットの作業現場を3次元の仮想環境に表現したモデルであり、ユーザーによって予め作成されている。現場環境モデルには、モデル化されたロボットも含まれる。
【0031】
ロボットモデル・データベース400には、モデル化されたロボットの情報が保存されている。モデル化されたロボットの情報とは、現場環境モデルにおける3次元のロボットのモデルについての情報であり、例えば、ロボットの動作がモデル化された情報を含む。
【0032】
作業対象物モデル・データベース500には、モデル化された作業対象物の情報が保存されている。モデル化された作業対象物の情報とは、現場環境モデルにおける3次元の作業対象物のモデルについての情報であり、例えば、ロボットにより加工される物体がモデル化された情報を含む。
【0033】
図2は、工程データ・データベース100が保存している作業工程(初期工程データ)の例を示す図である。図2には、一例として、月単位で定められた上位工程110と、日単位で定められた下位工程120とを有する工程表(ガントチャート)を示している。
【0034】
上位工程110は、加工アクティビティ112、回収アクティビティ113、及び移送前処理アクティビティ114で構成されている。加工アクティビティ112は、作業対象物を加工するアクティビティ(作業単位)である。回収アクティビティ113は、加工アクティビティ112で加工した作業対象物を回収容器に収容するアクティビティである。移送前処理アクティビティ114は、回収アクティビティ113で回収した作業対象物を移送するための準備を行うアクティビティであり、例えば、作業対象物を収容した回収容器に蓋をして、この回収容器を移送ロボットに載せるなどの作業が含まれる。
【0035】
下位工程120は、上位工程110のアクティビティ112~114のそれぞれについて定められている。上位工程110から下位工程120には、下位工程120の開始時期と終了時期と作業内容を含むデータが与えられる。以下では、一例として、加工アクティビティ112の下位工程120について説明する。下位工程120では、作業対象物ががれきであり、がれきを加工する作業を行う。
【0036】
下位工程120は、加工アクティビティ112を実施するための下位アクティビティで構成されている。すなわち、下位工程120は、ロボット配置アクティビティ121、がれき切断アクティビティ122、がれき撤去アクティビティ123、及びがれき運搬アクティビティ124で構成されている。これらのアクティビティ121~124は、分単位または時間単位の作業として設定される。
【0037】
ロボット配置アクティビティ121は、作業を実施するロボット(例えば、切断・撤去ロボットや運搬ロボット)を作業現場に配置するアクティビティである。がれき切断アクティビティ122は、切断・撤去ロボットが、撤去物であるがれきを切断するアクティビティである。がれき撤去アクティビティ123は、切断・撤去ロボットが、がれき切断アクティビティ122で切断したがれきを運搬ロボットに載せて撤去するアクティビティである。がれき運搬アクティビティ124は、運搬ロボットが、がれき撤去アクティビティ123で撤去されたがれきを運搬するアクティビティである。
【0038】
上位工程110のアクティビティ112~114のそれぞれの下位工程120には、上位工程110で定められたマイルストーンが、順守すべき期限として設定されている。図2に示した例では、下位工程120のマイルストーン111が作業開始から5時間後であると、上位工程110の加工アクティビティ112により定められている。
【0039】
アクティビティの間には、前のアクティビティが終了してから次のアクティビティが開始するFinish to Start(FS)の関係や、前のアクティビティが開始してから次のアクティビティが開始するStart to Start(SS)の関係がある。図2に示した例では、下位工程120において、ロボット配置アクティビティ121とがれき切断アクティビティ122の間には、FSの関係があり、がれき切断アクティビティ122とがれき撤去アクティビティ123の間と、がれき撤去アクティビティ123とがれき運搬アクティビティ124の間には、SSの関係がある。
【0040】
実際の作業では、下位工程120の複数のアクティビティの間には、複数の相互関係(インタラクション)があった上で作業が進んでいく。この相互関係とは、例えば、2つのアクティビティの間に行われる、次のアクティビティを行うための準備作業であり、次のアクティビティで実施する作業に必要な資材の準備や、作業を実施するロボットの移動などの作業が含まれる。
【0041】
図2に示した例では、がれき切断アクティビティ122とがれき撤去アクティビティ123の間と、がれき撤去アクティビティ123とがれき運搬アクティビティ124の間には、複数の相互関係130がある。例えば、がれき切断アクティビティ122とがれき撤去アクティビティ123の間には、切断・撤去ロボットが、がれき切断アクティビティ122で切断したがれきを収納容器に入れる作業がある。また、例えば、がれき撤去アクティビティ123とがれき運搬アクティビティ124の間には、切断・撤去ロボットが、がれきを入れた収納容器に代わる新しい空の収納容器を用意する作業がある。
【0042】
このような相互関係130(インタラクション130)の作業は、実施するのに一定の時間がかかるが、工程表(ガントチャート)には描かれず、管理されない(考慮されない)情報となっている。このため、ユーザーが入力した作業工程(工程データ・データベース100が保存している初期工程データ)を基に、下位工程120での作業時間を推定する計算式を求めたとしても、この計算式を用いて得られた作業時間は、概略の作業時間であり、実際の作業時間との誤差が大きいことがある。
【0043】
図3は、ロボットが作業を実施する作業現場を3次元の仮想環境モデルに表現した現場環境モデル310の例である。プラントの全体の現場環境モデル310は、環境モデル・データベース300に保存されている。図3には、図2の加工アクティビティ112に記載された作業内容に対応する現場環境モデル310の例を示している。
【0044】
現場環境モデル310には、切断・撤去ロボット510、運搬ロボット520、収納容器530、及び作業対象物550(がれき)のモデルが配置されている。現場環境モデル310では、現場環境モデル310に存在する物体のお互いの位置関係だけでなく、時間経過に伴うロボット510、520の移動や姿勢の変更と、切断による作業対象物550の形状の変化を表すことができる。また、作業現場が線量率の高い雰囲気である場合には、ロボット510、520は、仕様の限界積算線量に応じて交換する必要がある。現場環境モデル310では、ロボット510、520が交換されたことを表すことができる。
【0045】
表示装置20は、3次元の現場環境モデル310を表示することができる。表示装置20が現場環境モデル310を表示することにより、ユーザーは、現場環境モデル310に存在する物体の位置関係、時間経過に伴うロボット510、520の移動や姿勢の変更や交換、及び作業対象物550の形状の変化を把握することができる。
【0046】
本実施例では、このように各アクティビティと3次元の現場環境モデル310とを対応付けることができて、作業時間を高精度に計算することができ、説明性の高い工程計画をユーザーに提示することもできる。
【0047】
図4は、図2の加工アクティビティ112のネットワーク・モデル(プロセスネットワークのデータ)の例を示す図である。図4には、加工アクティビティ112の作業プロセスをペトリネットで表現した例を示している。ペトリネットは、離散事象シミュレーションで多用される代表的なプロセスネットワークである。
【0048】
上述したように、図2に示す工程表(ガントチャート)では、例えば、上位工程110の加工アクティビティ112における下位工程120のアクティビティ121~124が詳細に描かれていたとしても、アクティビティ121~124の間に存在する複数の相互関係130(インタラクション130)は、明確に描かれていない。
【0049】
本実施例では、ペトリネットを用いてネットワーク・モデルでアクティビティの関係を表現することで、アクティビティ121~124の間に存在する複数の相互関係130(インタラクション130)を考慮することができ、加工アクティビティ112に要する作業時間をより正確に求めることができる。
【0050】
一般に、ペトリネットNは、作業状態を示すプレースpの集合P、作業状態間の遷移を表すトランジションtの集合T、トランジションtとプレースpを有向グラフで結ぶアークの集合F、及びアークの重みの集合Wで表され、プレースpの内部に非負整数個のトークンが置かれる。プレースp内のトークンの配置は、マーキングと呼ばれ、システムの状態を表す。また、初期のシステムの状態は、初期マーキングの集合mで表される。
【0051】
プレースpの集合P、トランジションtの集合T、アークの集合F、重みの集合W、及び初期マーキングの集合mは、次の式で表現される。
P={p,p,...,p|P|
T={t,t,...,t|T|
F⊆(P×T)∪(T×T)
W:F→{1,2,...}
:P→{0,1,2,...}
ただし、|P|は、プレースpの数を表し、|T|は、トランジションtの数を表す。
【0052】
図4に示すペトリネットは、以上の定式化を、図2に示した上位工程110の加工アクティビティ112、すなわち下位工程120について示したペトリネットである。
【0053】
プレースp1は、切断・撤去ロボット510と運搬ロボット520が作業現場に配置された状態(ロボット配置状態)を表す。プレースp2は、切断・撤去ロボット510に切断された作業対象物550(がれき)が収納容器530に収納された状態(収納状態)を表す。プレースp3は、作業対象物550(がれき)を収納した収納容器530が運搬ロボット520に載せられた状態(積込状態)を表す。
【0054】
トランジションt1は、切断・撤去ロボット510が作業対象物550(がれき)を切断し、切断した作業対象物550を収納容器530に収納する作業プロセス(切断)を表す。トランジションt2は、切断・撤去ロボット510が、この収納容器530を運搬ロボット520に載せる作業プロセス(撤去)を表す。トランジションt3は、収納容器530を載せた運搬ロボット520が移動する作業プロセス(運搬)を表す。トランジションt4は、収納容器530を運搬した運搬ロボット520が移動して元の位置に戻る作業プロセス(ロボット復帰)を表す。
【0055】
プレースp1からトランジションt1を結ぶアークf1には、重みw1が付けられている。重みw1は、切断・撤去ロボット510の作業の速度や効率を表す。
【0056】
プレースp1~p3の内部には、トークン251が配置される。トークン251は、プレースp1~p3の状態での作業対象物550の滞留を示す。トークンを単位時間あたりに何個処理できるかが、作業効率の指標であり、スループット(処理速度)として表される。
【0057】
図3に示した3次元の現場環境モデル310において作業プロセスの3次元シミュレーションを実行すると、3次元シミュレーションで得られた作業動作は、それぞれのトランジションt1~t4に対応させることができる。現場環境モデル310における作業プロセスの3次元シミュレーションは、ロボット510、520の実際の作業動作(例えば、切断・撤去ロボット510の回転や腕の移動、運搬ロボット520の移動など)を模擬する物理シミュレーションである。この3次元シミュレーションでは、ロボット510、520の作業動作の3次元動画を生成することができる。表示装置20は、この3次元動画を表示することができる。
【0058】
トランジションt1~t4のそれぞれは、3次元シミュレーションで得られた作業動作(作業動作の動画)と対応付けることができる。例えば、切断のトランジションt1は、切断・撤去ロボット510が作業対象物550を切断し、切断した作業対象物550を収納容器530に収納する作業動作の動画と対応付けることができる。撤去のトランジションt2は、切断・撤去ロボット510が、作業対象物550を収納した収納容器530を運搬ロボット520に載せる作業動作の動画と対応付けることができる。トランジションt1~t4と3次元シミュレーションで得られた作業動作とを対応付けることで、仮想環境を伴う詳細計算を有限個に絞り込むことができる。
【0059】
図5は、本実施例による工程計画作成支援システムが行う処理を示すフローチャートの例である。
【0060】
ステップ2100で、工程計画作成支援システムは、工程計画の成立性を調べたい工程についての情報を入力する。本実施例では、工程計画作成支援システムは、加工アクティビティ112とその下位工程120(図2)についての情報を入力する。ユーザーは、入力装置10を操作して、工程計画の成立性を調べたい工程(例えば、加工アクティビティ112とその下位工程120)についての情報を工程計画作成支援システムに入力することができる。
【0061】
工程計画の成立性とは、作成した下位工程の計画が上位工程と整合するか(下位工程が上位工程と両立するか)ということである。工程計画の成立性を調べたい工程についての情報とは、例えば、対象とする工程、作業現場、及び作業種別などの情報であり、工程計画の成立性を調べたい工程の対象範囲を定める情報である。
【0062】
ステップ3100で、アクティビティ抽出装置30は、工程データ・データベース100に保存された作業工程(初期工程データ)から、ステップ2100で入力された工程について、作業時間、割り当てる作業員、及び使用するロボットなどのリソースを計算するためのアクティビティを抽出する。本実施例では、アクティビティ抽出装置30は、下位工程120のアクティビティ121~124(図2)を抽出する。
【0063】
ステップ4100で、作業プロセスネットワーク装置40は、アクティビティに分けられた作業をネットワーク・モデルで表現する。作業プロセスネットワーク装置40は、作業プロセス・ネットワークデータ・データベース200から、ステップ3100で抽出したアクティビティに対応するプロセスネットワークのデータを抽出することで、アクティビティに分けられた作業をネットワーク・モデルで表現する。本実施例では、ネットワーク・モデルがペトリネットであるとする。すなわち、作業プロセスネットワーク装置40は、アクティビティ抽出装置30が抽出したアクティビティに対応するペトリネットのデータ(例えば図4に示すペトリネットのデータ)を抽出する。
【0064】
ステップ5100で、3Dシミュレーション装置50は、作業現場においてロボット510、520がアクティビティを実行して作業を実行する3次元シミュレーション(物理シミュレーション)を行い、ロボット510、520が作業の実行に要する時間を求める。3Dシミュレーション装置50は、環境モデル・データベース300から、ロボット510、520が作業を実施する作業現場の現場環境モデル310についての情報を抽出し、ロボットモデル・データベース400から、使用するロボット510、520のモデルについての情報を抽出し、作業対象物モデル・データベース500から、作業対象物550のモデルについての情報を抽出する。そして、3Dシミュレーション装置50は、抽出したこれらの情報を用いて、ステップ4100で抽出したペトリネットのトランジションに対応するロボット510、520の作業について、シミュレーションを実行する。
【0065】
例えば、3Dシミュレーション装置50は、図4に示したペトリネットの切断のトランジションt1に対応するロボットの作業として、図3に示した3次元の現場環境モデル310において、切断・撤去ロボット510が作業対象物550を切断し切断した作業対象物550を収納容器530に収納する作業のシミュレーションを実行する。
【0066】
3Dシミュレーション装置50は、ペトリネットの各トランジションについて、作業現場においてロボット510、520が実際に作業をする動作(例えば、移動、回転、腕の移動、荷台の移動、作業対象物の切断、切断した作業対象物の収納容器への収納など)の3次元シミュレーション、すなわち物理シミュレーションを行う。そして、3Dシミュレーション装置50は、加工アクティビティ112の下位工程120における全ての作業について物理シミュレーションを実行し、作業にかかる時間を求める。3Dシミュレーション装置50は、既存の手法を用いて、このシミュレーションを行うことができる。
【0067】
なお、表示装置20は、この物理シミュレーションで得られた3次元動画をユーザーに表示することができる。物理シミュレーションで得られた動画には、作業現場においてロボット510、520が実際に作業をする動作の3次元動画が含まれる。
【0068】
ステップ6100で、3Dシミュレーション装置50は、待ち時間を算出してスループット(処理速度)を求める。
【0069】
初めに、3Dシミュレーション装置50は、概念シミュレーションを行ってペトリネットから下位工程120の作業にかかる時間を求める。すなわち、3Dシミュレーション装置50は、ステップ4100で抽出したペトリネットについて既存のペトリネットシミュレータを用いてシミュレーション(概念シミュレーション)を実行し、ペトリネットから下位工程120の作業にかかる時間を求める。そして、3Dシミュレーション装置50は、ステップ5100で物理シミュレーションにより求めた下位工程120の作業にかかる時間から、概念シミュレーションにより求めた下位工程120の作業にかかる時間を差し引き、得られた時間を待ち時間とする。この待ち時間には、ペトリネットにおけるプレースも含めた状態の待ち時間が含まれる。
【0070】
次に、3Dシミュレーション装置50は、物理シミュレーションにより求めた下位工程120の作業にかかる時間から、下位工程120の作業(アクティビティ121~124)のスループット(処理速度)を求める。スループットを求めることにより、例えば、作業対象物550を切断する速度や撤去する速度などが求められる。
【0071】
ステップ7100で、工程成立性評価装置60は、3Dシミュレーション装置50のシミュレーション結果を基に工程計画の成立性を評価し、評価結果に基づいてペトリネットを修正する。工程計画の成立性とは、作成した下位工程の作業計画が上位工程と整合するか(下位工程の作業時間が上位工程で定められた計画時間以内であるか)ということである。
【0072】
工程成立性評価装置60は、ステップ5100で物理シミュレーションにより求めた下位工程120の作業(アクティビティ121~124)にかかる時間を基に、下位工程120に対して上位工程110で定められたマイルストーン111を順守できるか否かを判断する。すなわち、工程成立性評価装置60は、物理シミュレーションの結果を基に、下位工程120の作業時間が上位工程110から与えられた計画時間以内であるか否かを判断する。なお、上位工程110から与えられた計画時間には、遅延許容時間ΔTmaxが設定されてもよい。遅延許容時間ΔTmaxが設定されている場合には、工程成立性評価装置60は、下位工程120の作業時間が、上位工程110から与えられた計画時間と遅延許容時間ΔTmaxの合計の時間以内であるか否かを判断する。
【0073】
なお、ロボット510、520の動作実績などからロボット510、520の下位工程120の作業時間を求めることができる場合には、工程成立性評価装置60は、3Dシミュレーション装置50が実行した物理シミュレーションの結果に替えて、この作業時間を利用して工程計画の成立性を評価してもよい。
【0074】
工程成立性評価装置60が、マイルストーン111を順守できない(下位工程120の作業時間が、上位工程110から与えられた計画時間、または上位工程110から与えられた計画時間と遅延許容時間ΔTmaxの合計の時間を超える)と判断した場合には、工程計画が不成立であるので、作業プロセスネットワーク修正装置70は、ペトリネットを修正し、工程計画修正装置90は、下位工程120の工程計画を修正する。工程成立性評価装置60は、工程計画が不成立となった要因のアクティビティ(ボトルネックであるアクティビティ)を求めることができる。
【0075】
表示装置20は、工程成立性評価装置60が工程計画が不成立であると判断したことと、工程計画が不成立となった要因のアクティビティ(ボトルネックであるアクティビティ)についての情報を、ユーザーに表示することができる。ボトルネックであるアクティビティについての情報には、例えば、アクティビティの作業内容、アクティビティを実行するロボット510、520の性能や台数、及び使用する器具や容器(例えば、収納容器530)についての情報が含まれる。
【0076】
ステップ7100で、作業プロセスネットワーク修正装置70がペトリネット(ネットワーク・モデル)を修正し、工程計画修正装置90が作業プロセスネットワーク修正装置70によるペトリネットの修正に合わせて下位工程120の工程計画を修正する。本実施例による工程計画作成支援システムは、このようにして、工程計画を成立させる。
【0077】
作業プロセスネットワーク修正装置70は、工程計画が不成立となった要因のアクティビティをボトルネックの作業(遅延リスクが高い作業)とみなし、ボトルネックの作業についてペトリネットを修正することで、ボトルネックであるアクティビティの作業時間を短縮させて、このボトルネックを解消させる。工程計画が不成立となった要因のアクティビティとは、例えば、スループット(処理速度)が計画よりも遅い作業や、実施に要する時間が計画よりも長い作業である。作業プロセスネットワーク修正装置70は、ペトリネットのトランジションやプレースに関わる属性、例えば、ロボット510、520の性能や台数、及び収納容器530の数などを変更することによりスループットを向上させて作業時間を短縮してボトルネックを解消し、下位工程120の作業時間が上位工程110から与えられた計画時間以内となるようにする。
【0078】
作業プロセスネットワーク修正装置70は、予め定められた手順に従って、またはユーザーが入力装置10を用いて入力した指示に基づいて、ペトリネットを修正することができる。
【0079】
工程計画修正装置90は、作業プロセスネットワーク修正装置70によるペトリネットの修正に合わせて下位工程120の工程計画を修正する。
【0080】
作業プロセスネットワーク修正装置70がペトリネットを修正し、工程計画修正装置90が下位工程120の工程計画を修正すると、下位工程120の作業時間が上位工程110で定められた計画時間以内になり、作業の遅延を回避することができて工程計画が成立する。
【0081】
ステップ8100で、表示装置20は、作業プロセスネットワーク修正装置70が修正したペトリネットと、工程計画修正装置90が修正した工程計画との両方または一方をユーザーに表示する。さらに、表示装置20は、作業プロセスネットワーク修正装置70が修正したペトリネット、または工程計画修正装置90が修正した工程計画に基づいて3Dシミュレーション装置50が実行したロボット510、520の物理シミュレーション(例えば、ステップ5100を参照)の結果の動画を、ユーザーに表示することができる。
【0082】
図6は、工程成立性評価装置60が、工程計画が不成立であると判断した場合の例を示す図である。図6には、作業対象物550であるがれきを切断して撤去する例を示している。トランジションt1は、図4を用いて説明したように、切断・撤去ロボット510が作業対象物550(がれき)を切断する作業プロセス(切断)である。図6に示した例では、物理シミュレーションで得られた切断のトランジションt1に要する時間が計画での作業時間より長くなって、スループットが計画よりも低下しているため、工程計画が不成立になっている。
【0083】
3Dシミュレーション装置50は、切断のトランジションt1に対応するロボットの作業として、3次元の現場環境モデル310において、切断・撤去ロボット510が作業対象物550を切断する作業のシミュレーション(物理シミュレーション)を実行する。
【0084】
実際の作業においては、がれき切断アクティビティ122では、物理シミュレーションにおける切断・撤去ロボット510は、作業対象物550(がれき)を切断・撤去ロボット510が収納容器530に収納可能な物量単位に分割するように切断する。図6に示す例では、切断・撤去ロボット510は、作業対象物550を3箇所の切断位置550a、550b、550cで切断するものとする。
【0085】
そうすると、切断位置550a、550b、550cの数に応じて、がれき切断アクティビティ122は分割される。図6に示す例では、がれき切断アクティビティ122は、3つのがれき切断アクティビティ122a、122b、122cに分割される。3Dシミュレーション装置50は、物理シミュレーションにより、3つのがれき切断アクティビティ122a、122b、122cに要する時間(切断時間)を求める。
【0086】
がれき切断アクティビティ122が3つに分割されたことにより、がれき撤去アクティビティ123も3つのがれき撤去アクティビティ123a、123b、123cに分割される。3Dシミュレーション装置50は、物理シミュレーションにより、3つのがれき撤去アクティビティ123a、123b、123cに要する時間(撤去時間)を求める。
【0087】
3Dシミュレーション装置50は、このようにしてトランジションのそれぞれに対応するアクティビティについて、ロボット510、520の作業の3次元の物理シミュレーションにより、作業時間(例えば、切断時間と撤去時間)を求める。このとき、例えば、作業対象物550がトランジションの前後で形状を変える場合には、トランジションの前後で同一のアクティビティが実行されてもアクティビティの作業時間が長くなる場合がある。例えば、作業対象物550が切断される場合には、作業対象物550は、切断トランジションの前後で形状を変える。作業対象物550の形状の変化により、がれき切断アクティビティ122に要する時間が切断トランジションの前後で変わり、作業時間が長くなる場合がある。
【0088】
工程成立性評価装置60は、3Dシミュレーション装置50が実行した物理シミュレーションにより計算された作業時間が、上位工程110から与えられた計画時間(遅延許容時間ΔTmaxが設定されている場合には、上位工程110から与えられた計画時間と遅延許容時間ΔTmaxの合計の時間)を超えた場合には、工程計画が不成立であると判断する。図6に示した例では、切断のトランジションt1に要する時間が計画での作業時間より長くなってスループットが低下しており、がれき撤去アクティビティ123cの終了時期がマイルストーン111を超えている。従って、工程成立性評価装置60は、物理シミュレーションにより計算された作業時間が上位工程110から与えられた計画時間を超えているので、工程計画が不成立であると判断する。そして、工程成立性評価装置60は、工程計画が不成立となった要因のアクティビティ(ボトルネックであるアクティビティ)を、がれき切断アクティビティ122(122a、122b、122c)と求めることができる。
【0089】
作業プロセスネットワーク修正装置70は、がれき切断アクティビティ122(122a、122b、122c)が工程計画が不成立となった要因のアクティビティであるので、このアクティビティ122(122a、122b、122c)をボトルネックの作業とみなす。
【0090】
図7は、図6において工程計画が不成立であると判断された場合に、ペトリネットを修正して下位工程120の工程計画を修正することで、工程計画を成立させた場合の例を示す図である。
【0091】
作業プロセスネットワーク修正装置70は、ボトルネックの作業であるアクティビティ122(122a、122b、122c)について、予め定められた手順に従い、またはユーザーが入力装置10を用いて入力した指示に基づき、ペトリネットを修正して、アクティビティ122(122a、122b、122c)の作業時間を短縮させる。
【0092】
工程計画修正装置90は、作業プロセスネットワーク修正装置70によるペトリネットの修正に合わせて、下位工程120の工程計画を修正する。まず、3Dシミュレーション装置50は、修正されたペトリネットに基づいて、ロボット510、520がアクティビティを実行して作業を実行する3次元シミュレーション(物理シミュレーション)を行い、ロボット510、520が作業の実行に要する時間を求める。工程計画修正装置90は、この3次元シミュレーションの結果に基づいて、下位工程120の工程計画を修正する。
【0093】
作業プロセスネットワーク修正装置70がペトリネットを修正し、工程計画修正装置90がペトリネットの修正に合わせて下位工程120の工程計画を修正することで、ボトルネックを解消させて工程計画を成立させることができる。図7に示した例では、ペトリネットのノード(プレースとトランジション)を変更することで工程計画を成立させている。
【0094】
図7に示すように、図6に示すペトリネットのうち、スループットが計画よりも低下して工程計画の不成立の要因となった切断のトランジションt1を、切断速度が向上した別の切断・撤去ロボット510Aを用いたトランジションt5に変更する。これにより、がれき切断アクティビティ122a、122b、122cに要する時間が短縮され、がれき切断アクティビティ122cは、当初の計画でのがれき切断アクティビティ122の終了時刻よりもΔtだけ早く終了する。そして、がれき切断アクティビティ122a、122b、122cに要する時間が短縮されたため、がれき撤去アクティビティ123cは、計画時のがれき撤去アクティビティ123の終了時刻よりもΔtだけ早く終了する。
【0095】
図7に示した例では、工程計画の不成立の要因となったトランジションt1を新たなトランジションt5に変更することにより、切断のトランジションに要する時間を当初の計画での作業時間よりも短縮してスループットを向上させ、加工アクティビティ112の下位工程120の終了を当初の計画よりも早くすることができる。トランジションt2~t4についても、工程計画の不成立の要因と判断されれば、トランジションt1と同様にペトリネットのノードを変更することで、工程計画が成立するように修正することができる。
【0096】
本実施例による工程計画作成支援システムは、このようにして、工程計画の不成立の要因となる作業、すなわち遅延リスクが高くボトルネックとなり得る作業を明確化して、作業の遅延を回避できる。さらに、本実施例による工程計画作成支援システムは、3次元シミュレーションを行って得られたロボットの動作の3次元動画や、工程計画が成立するように修正されたペトリネットや工程計画を表示することで、説明性の高い工程計画をユーザーに提示することができる。
【0097】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0098】
10…入力装置、20…表示装置、30…アクティビティ抽出装置、40…作業プロセスネットワーク装置、50…3Dシミュレーション装置、60…工程成立性評価装置、70…作業プロセスネットワーク修正装置、80…判定モジュール、90…工程計画修正装置、100…工程データ・データベース、110…上位工程、112…加工アクティビティ、113…回収アクティビティ、114…移送前処理アクティビティ、120…下位工程、121…ロボット配置アクティビティ、122…がれき切断アクティビティ、123…がれき撤去アクティビティ、124…がれき運搬アクティビティ、130…相互関係、200…作業プロセス・ネットワークデータ・データベース、251…トークン、300…環境モデル・データベース、310…現場環境モデル、400…ロボットモデル・データベース、500…作業対象物モデル・データベース、510…切断・撤去ロボット、520…運搬ロボット、530…収納容器、550…作業対象物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7