(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129850
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ネジ締付システム
(51)【国際特許分類】
B23P 19/06 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
B23P19/06 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034145
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】500285923
【氏名又は名称】株式会社エスティック
(74)【代理人】
【識別番号】100125117
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 泰弘
(74)【代理人】
【識別番号】100086933
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】土田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】大高 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 豊之
(57)【要約】
【課題】ネジ締付装置による推力を精密に制御することができ、カムアウトが生じない最小の推力でネジに対する押し付けを行うことを可能にすること。
【解決手段】
駆動軸に沿って直線移動するよう駆動される駆動基板と、駆動基板に連結装置40を介して連結され駆動軸と平行なネジ締め軸に沿って移動されるネジ締付装置とを有するネジ締付システム1であって、連結装置40は、駆動基板に固定的に設けられた第一ブロック41と、ネジ締付装置に固定的に設けられた第二ブロック42と、第二ブロックが駆動基板に対してネジ締め軸に沿ってのみ移動可能なように支持するリニアガイド50と、第一ブロックと第二ブロックとの間に設けられ、これらの間においてネジ締め軸に沿って作用する荷重を検出する荷重検出器43とを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸に沿って直線移動するよう駆動される駆動基板と、前記駆動基板に連結装置を介して連結され前記駆動軸と平行なネジ締め軸に沿って移動されるネジ締付装置とを有するネジ締付システムであって、
前記連結装置は、
前記駆動基板に固定的に設けられた第一ブロックと、
前記ネジ締付装置に固定的に設けられた第二ブロックと、
前記第二ブロックが前記駆動基板に対して前記ネジ締め軸に沿ってのみ移動可能なように支持するリニアガイドと、
前記第一ブロックと前記第二ブロックとの間に設けられ、これらの間において前記ネジ締め軸に沿って作用する荷重を検出する荷重検出器と、
を有してなることを特徴とするネジ締付システム。
【請求項2】
前記荷重検出器は、前記第二ブロックに対し、遊びクリアランスを有して取り付けられている、
請求項1記載のネジ締付システム。
【請求項3】
前記一ブロックと前記第二ブロックとの間に、前記ネジ締付装置によってネジを締め付ける際に前記荷重検出器に加わる荷重がその許容値を越えないよう前記一ブロックと前記第二ブロックとの間の相対距離を制限する前進ストッパが設けられている、
請求項1または2記載のネジ締付システム。
【請求項4】
前記荷重検出器は、ビーム型ロードセルであり、
前記ビーム型ロードセルは、前記第一ブロックと前記第二ブロックとの互いに対向する表面の間において前記ネジ締め軸と直交する平面上に配置され、その一方の端部が第一台座を介して前記第一ブロックの表面に固定され、その他方の端部が第二台座を介して前記第二ブロックの表面に取り付けられている、
請求項3記載のネジ締付システム。
【請求項5】
前記前進ストッパは、前記第一ブロックの表面に固定された駒ブロックが前記ビーム型ロードセルの前記他方の端部の表面に当接することによって構成されるものである、
請求項4記載のネジ締付システム。
【請求項6】
前記一ブロックと前記第二ブロックとの間に、前記ネジ締付装置によってネジを緩める際に前記荷重検出器に加わる荷重がその許容値を越えないよう前記一ブロックと前記第二ブロックとの間の相対距離を制限する後進ストッパが設けられている、
請求項1ないし5のいずれかに記載のネジ締付システム。
【請求項7】
前記リニアガイドは、
前記駆動基板に取り付けられたガイド部材と、
前記第二ブロックに取り付けられ、前記ガイド部材に設けられたガイド穴を貫通して摺動するガイド軸部と、を有し、
前記後進ストッパは、前記ガイド軸部に取り付けられたセットカラーが前記ガイド部材の端面に当接することによって構成されるものである、
請求項6記載のネジ締付システム。
【請求項8】
前駆動基板を駆動するモータを制御するための制御装置を有し、
前記制御装置は、
前記荷重検出器により検出された荷重に基づいて、前記ネジ締付装置によるネジ締め付け時の推力を制御する推力制御部を有する、
請求項1ないし7のいずれかに記載のネジ締付システム。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記重検出器により検出された荷重が許容設定値を越えたときに、前記モータが停止するよう制御を行う停止制御部を有する、
請求項8記載のネジ締付システム。
【請求項10】
前記駆動基板は、スカラーロボットの先端アームに取り付けられている、
請求項1ないし9のいずれかに記載のネジ締付システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ、ボルト、タッピングネジ、ナットなどを締め付けまたは緩めるためのネジ締付システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場の生産ラインにおけるワークのネジ締めのために、ネジ締付装置が用いられている。ネジ締付装置は「ナットランナ」などと呼ばれることがある。
生産ラインの省力化のために、直交ロボットまたはスカラーロボットなどの産業用ロボットがしばしば用いられる。産業用ロボットによってネジ締付装置をワークの位置まで移動させ、ネジ締付装置にネジ締めまたはネジ緩めを実行させる。
【0003】
さて、電子機器の組み立て工程において、プリント基板などをフレームや筐体に固定するためのネジとして、十字穴付きネジ(十字穴付きボルト)が多く採用されている。十字穴付きネジを締め付ける場合に、締め付けの間においてカムアウトを防ぐため一定以上の推力で当該ネジを押し付けておく必要がある。しかし、押し付けるための推力が大き過ぎると、プリント基板やフレームに撓みが生じで締付不良を招いたり破損する危険性がある。また、ネジがプリント基板などのワークに接触してネジ頭が着座する間において、過度の大きな推力で押し付けた場合は、小ネジである場合にねじ山が破損してしまう危険性がある。
【0004】
したがって、ネジがワークに接触してからネジ頭が着座する間においては、可能な限り低い推力で、しかも締付トルクの発生した後においてはカムアウトが生じない範囲における最小の推力をネジ締付装置に与え、ネジ締付装置によるネジの押し付けを行うことが必要である。
【0005】
そのため、特許文献1に示されるように、ネジ締付装置に推力(押圧力)を与えるためのボールねじとこれを回転駆動するモータとの間にトルクセンサを設け、トルクセンサにより検出されるトルクに基づいて推力を補正し、カムアウトの発生を防止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上に述べた特許文献1によると、ネジ締付装置の昇降動作にともなう摩擦力および慣性力に加えて、ボールねじの回転と動力伝達にともなう摩擦力などがトルクセンサの出力に含まれるため、ネジ締付装置による実際の推力を正確に検出できないという問題がある。
【0008】
そのため、ネジ締付装置による推力を精密に制御することができず、カムアウトの防止やねじ山の破損の防止に必要な最小の推力となるよう制御することが困難であった。
【0009】
また、モータの電流値から負荷荷重を求めて制御を行った場合においても、ネジ締付装置による推力を精密に制御することが困難であり、同様の問題が生じてしまう。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、ネジ締付装置による推力を精密に制御することができ、カムアウトが生じない最小の推力でネジに対する押し付けを行うことを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る装置は、駆動軸に沿って直線移動するよう駆動される駆動基板と、前記駆動基板に連結装置を介して連結され前記駆動軸と平行なネジ締め軸に沿って移動されるネジ締付装置とを有するネジ締付システムであって、前記連結装置は、前記駆動基板に固定的に設けられた第一ブロックと、前記ネジ締付装置に固定的に設けられた第二ブロックと、前記第二ブロックが前記駆動基板に対して前記ネジ締め軸に沿ってのみ移動可能なように支持するリニアガイドと、前記第一ブロックと前記第二ブロックとの間に設けられ、これらの間において前記ネジ締め軸に沿って作用する荷重を検出する荷重検出器と、を有してなる。
【0012】
好ましくは、前記荷重検出器は、前記第二ブロックに対し、遊びクリアランスを有して取り付けられている。
【0013】
好ましくは、前記第一ブロックと前記第二ブロックとの間に、前記ネジ締付装置によってネジを締め付ける際に前記荷重検出器に加わる荷重がその許容値を越えないよう前記第一ブロックと前記第二ブロックとの間の相対距離を制限する前進ストッパが設けられている。
【0014】
好ましくは、前記荷重検出器は、ビーム型ロードセルであり、前記ビーム型ロードセルは、前記第一ブロックと前記第二ブロックとの互いに対向する表面の間において前記ネジ締め軸と直交する平面上に配置され、その一方の端部が第一台座を介して前記第一ブロックの表面に固定され、その他方の端部が第二台座を介して前記第二ブロックの表面に取り付けられている。
【0015】
好ましくは、前記前進ストッパは、前記第一ブロックの表面に固定された駒ブロックが前記ビーム型ロードセルの前記他方の端部の表面に当接することによって構成されるものである。
【0016】
好ましくは、前記第一ブロックと前記第二ブロックとの間に、前記ネジ締付装置によってネジを緩める際に前記荷重検出器に加わる荷重がその許容値を越えないよう前記第一ブロックと前記第二ブロックとの間の相対距離を制限する後進ストッパが設けられている。
【0017】
好ましくは、前記リニアガイドは、前記駆動基板に取り付けられたガイド部材と、前記第二ブロックに取り付けられ、前記ガイド部材に設けられたガイド穴を貫通して摺動するガイド軸部と、を有し、前記後進ストッパは、前記ガイド軸部に取り付けられたセットカラーが前記ガイド部材の端面に当接することによって構成されるものである。
【0018】
好ましくは、前駆動基板を駆動するモータを制御するための制御装置を有し、前記制御装置は、前記荷重検出器により検出された荷重に基づいて、前記ネジ締付装置によるネジ締め付け時の推力を制御する推力制御部を有する。
【0019】
好ましくは、前記制御装置は、前記重検出器により検出された荷重が許容設定値を越えたときに、前記モータが停止するよう制御を行う停止制御部を有する。
【0020】
好ましくは、前記駆動基板は、スカラーロボットの先端アームに取り付けられている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、ネジ締付装置による推力を精密に制御することができ、カムアウトが生じない最小の推力でネジに対する押し付けを行うことを可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態のネジ締付システムの正面図である。
【
図2】
図1のネジ締付システムの左側からみたネジ締付装置および連結装置を示す図である。
【
図3】
図1におけるネジ締付システムのAA-AA線断面矢視図である。
【
図4】
図2におけるネジ締付システムのBB-BB線断面矢視図である。
【
図6】ビーム型ロードセルの動作原理を説明するための斜視図である。
【
図7】本発明の他の実施形態のネジ締付システムの正面図である。
【
図8】ネジ締付システムを制御する制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は本発明の実施形態のネジ締付システム1の正面図、
図2は
図1のネジ締付システム1の左側からみたネジ締付装置20および連結装置40を示す図、
図3は
図1におけるネジ締付システム1のAA-AA線断面矢視図、
図4は
図2におけるネジ締付システム1のBB-BB線断面矢視図である。
【0024】
図1ないし
図3において、ネジ締付システム1は、昇降駆動装置10、ネジ締付装置20、連結装置40を備える。
【0025】
昇降駆動装置10は、フレーム11、フレーム11の上端に取り付けられ正逆回転するようかつ回転速度が制御されたモータ12、フレーム11の上板11aと下板11bとの間に設けられモータ12によって回転駆動されるボールネジ軸13、ボールネジ軸13と螺合しボールネジ軸13の回転によって駆動軸5に沿って直線移動するよう昇降駆動されるボールナット箱14、ボールナット箱14にボルト16で固定されて一体に移動する駆動基板15などを有する。
【0026】
ネジ締付装置20は、駆動基板15に連結装置40を介して連結され、駆動軸5と平行なネジ締め軸6に沿って昇降移動される。ネジ締付装置20は、例えば、制御によってトルク角度がコントロール可能な電動サーボ式ナットランナとし、高速回転制御を行い、トルク検出によりボルト着座の判断を行い、低速に切り替えてトルク検出を行いながら目標トルクまで締付を行う機能を有する。
【0027】
すなわち、ネジ締付装置20は、正逆回転するようかつ回転速度が制御されたモータ21、減速装置22、トルクセンサ23、出力軸24、ビット25などを有する。モータ21の回転駆動によってビット25が回転し、ビット25に係合したネジまたはナットが回転して締め付けまたは緩めが行われる。ビット25に与えられる回転トルクは、トルクセンサ23によって検出される。減速装置22にはインパクト発生装置が含まれていてもよく、その場合にはインパクト式のネジ締付装置20として動作可能である。
【0028】
なお、ネジ締付装置20には、トルクセンサ23の出力軸24の側つまり負荷側に、本発明の第二ブロックに相当するプレート42がネジなどによって固定されている。
【0029】
図4および
図5も参照して、連結装置40は、駆動基板15に固定的に設けられた第一ブロック41、ネジ締付装置20に固定的に設けられた前述のプレート42、プレート42が駆動基板15に対してネジ締め軸6に沿ってのみ移動可能なように支持するリニアガイド50、第一ブロック41とプレート42との間に設けられ、これらの間においてネジ締め軸6に沿って作用する荷重を検出する荷重検出器43を有する。
【0030】
第一ブロック41とプレート42との間には、ネジ締付装置20によってネジを締め付ける際に荷重検出器43に加わる荷重がその許容値を越えないよう第一ブロックとプレート42との間の相対距離を制限する前進ストッパ48Aが設けられている。
【0031】
荷重検出器43は、ビーム型ロードセルであり、ビーム型ロードセルは、第一ブロック41とプレート42との互いに対向する表面の間においてネジ締め軸6と直交する平面上に配置され、その一方の端部が第一台座44を介して第一ブロック41の表面にボルト45で固定され、その他方の端部が第二台座46を介してプレート42の表面に遊びクリアランス9を有してボルト47およびワシャ部材47により取り付けられている。
【0032】
つまり、第二台座46は外周面に段を有した円筒形状であり、第二台座46の外周面とプレート42の穴の内周面との間の直径方向、および第二台座46の段部とプレート42の正面との間の軸方向とに、遊びクリアランス9が設けられ、これによって、荷重検出器43には、ネジ締め軸6と平行なガイド軸7a、7bに沿った方向以外の力は作用しないようになっている。なお、プレート42にはボルト45を着脱するための穴42aが設けられている。
【0033】
リニアガイド50は、左右に1つずつ設けられた合計2つの同じ構造のリニアガイド50a、50bからなる。各リニアガイド50a、50bは、それぞれ、駆動基板15にボルト54および位置決めピン55により取り付けられたガイド部材51、ガイド部材51の内周面に嵌入されたブシュ部材52、プレート42に取り付けられ、ガイド部材51に設けられたガイド穴52aを貫通して摺動するガイド軸部61を有する。ガイド穴52aは、実際にはブシュ部材52の内周面である。ガイド軸部61には、その端部にセットカラー63がボルトによって締め付けられて取り付けられている。
【0034】
セットカラー63は、本実施形態においては、形状が円環状であり、周方向の一か所が切り離されていてその部分をボルトで締め付けることによりその内周面でガイド軸部61の外周面を強く把持して固定されるものである。しかし、これ以外の種々の形態のものを用いることができる。例えば、円環状のカラーの半径方向にセットネジを設けてこのセットネジをガイド軸部61の外周面に押し付ける形態のもの、また、ガイド軸部61の端部に一体的に段部を形成しておいてこの段部をストッパとして用いる形態のものなど、ストッパとして機能するものであれば種々の形態とすることができる。
【0035】
リニアガイド50は、荷重検出器43に荷重が加わって撓む範囲において、ガイド部材51とガイド軸部61とがガイド軸7a、7bに沿って相対的に移動可能であり、これによって、荷重検出器43は、ネジ締付装置20によるネジ締め時の推力を正確に検出できるとともに、横荷重やねじれ荷重などを受けることなく、長期にわたって高い精度を維持することができる。
【0036】
さらに、ガイド軸7a、7bに沿った方向においても、荷重検出器43に過大な荷重が加わらないように、前進ストッパ48Aおよび後進ストッパ63Aが設けられている。
【0037】
前進ストッパ48Aは、第一ブロック41の表面にボルト49により固定された駒ブロック48が、ビーム型ロードセル(43)の他方の端部つまり第二台座46の側の表面に当接することによって構成される。駒ブロック48とビーム型ロードセル(43)との間には、自由状態つまり荷重が加わらない状態において、クリアランス8aが設けられており、ビーム型ロードセル(43)の許容荷重の範囲内において、または荷重検出の最大値において、クリアランス8aが零になって当接し、この状態で停止する。
【0038】
後進ストッパ63Aは、第一ブロック41とプレート42とが離れる方向に相対移動するときに、ガイド部材51とガイド軸部61とが相対的に移動し、ガイド軸部61に取り付けられたセットカラー63がガイド部材51の端面に当接することによって構成される。セットカラー63とガイド部材51の端面との間には、自由状態においてクリアランス8bが設けられており、ビーム型ロードセル(43)のマイナス方向(逆方向)の許容荷重の範囲内において、または荷重検出の最大値において、クリアランス8bが零になって当接し、この状態で停止する。
【0039】
なお、自由状態におけるクリアランス8a、8bの大きさは、例えば0.4mm~1mm程度であり、ビーム型ロードセル(43)の仕様などに応じて固定値となるように設計しておいてもよく、または現場において調整可能としておいてもよい。
【0040】
図5に示されるように、ビーム型ロードセル(43)には、歪ゲージが貼られてリード線が引き出される検出部43a、検出荷重調整のための穴43bが設けられている。
【0041】
図6にはビーム型ロードセルの動作原理を説明するための斜視図が示されている。
【0042】
図6に示すように、ビーム型ロードセル80は、例えば、断面が矩形の棒状であり、その表裏面に複数の歪ゲージ81が貼られて例えばブリッジ接続されている。その一方の端部を基台82にボルト83で固定した状態で、他方の端部に荷重Fを加えると、ビーム型ロードセル80は弾性範囲内で撓み、歪ゲージ81は撓み量に応じて変化し、リード線から荷重Fに対応した信号が出力される。
【0043】
上に述べたネジ締付システム1では、ネジ締付装置20が単に昇降駆動する昇降駆動装置10によって支持されているが、これ以外の種々の動作をするロボットまたはマニピュレータによって支持してもよい。次にその例を示す。
【0044】
図7には本発明の他の実施形態のネジ締付システム1Bが示されている。
【0045】
図7において、ネジ締付システム1Bは、スカラーロボット10B、ネジ締付装置20、連結装置40を備える。
【0046】
スカラーロボット10Bは、先端に取り付けたネジ締付装置20を、X、Y、およびZの各軸に平行に移動駆動することができるロボットである。つまり、ネジ締付装置20は、スカラーロボット10Bによって所定の空間内の任意の位置に移動され、ワークであるネジに応じたビットをネジ締めしまたは緩めることができる。
【0047】
図7に示すように、スカラーロボット10Bは、図示しない基台に固定されたベース、ベースに対して第一軸を中心に回転駆動可能な第一アーム11Ba、第一アーム11Baに支持されて第二軸4を中心に回転駆動可能な第二アーム11Bb、第二アーム11Bbに支持されてモータ12Bにより駆動軸5に沿って昇降駆動される昇降軸14B、昇降軸14Bの下端に取り付けられた駆動基板15Bなどを有する。
【0048】
ネジ締付装置20は、駆動基板15Bに連結装置40を介して連結され、上に述べたと同様に駆動軸5と平行なネジ締め軸6に沿って昇降移動される。
【0049】
図8にはネジ締付システム1、1Bを制御する制御装置100のブロック図が示されている。
【0050】
図8において、制御装置100は、ネジ締付制御部101、推力制御部102、停止制御部103、ロボット制御部104などを有する。
【0051】
ネジ締付制御部101は、ネジ締付装置20のモータ21を制御する。例えば、トルクセンサ23などの入力信号に基づいて、ネジ締付装置20のモータ21を制御し、ビットが所定の回転速度で回転するよう制御する。
【0052】
推力制御部102は、荷重検出器43により検出された荷重に基づいて、ネジ締付装置20によるネジ締め付け時の推力を制御する。このとき例えば、ネジがワークに接触してからネジ頭が着座する間においては、可能な限り低い推力となるよう、また締付トルクの発生した後においてはカムアウトが生じない範囲における最小の推力となるよう、制御を行う。
【0053】
停止制御部103は、荷重検出器43により検出された荷重が許容設定値を越えたときに、モータ12,21が停止するよう制御を行う。このとき、スカラーロボット10Bの全体を停止するよう制御してもよい。この停止制御部103の制御動作が適正に行われることによって、上に述べた前進ストッパ48Aおよび後進ストッパ63Aが実際に当接して働くことを無くすことができる。
【0054】
ロボット制御部104は、スカラーロボット10Bおよび昇降駆動装置10の全体を制御する。
【0055】
制御装置100は、電気部品、電子機器、電子回路、集積素子、コンピュータなど、種々のハードウエアおよびソフトウエアを用いて実現することができる。
【0056】
上に述べたように、ネジ締付システム1、1Bは、ネジ締付装置20が直近の連結装置40によって支持され、連結装置40に設けられた荷重検出器43によってネジ締付装置20に加えられる推力を検出するので、推力を高精度で検出することができ、ネジ締付装置20による推力を精密に制御することができる。これによって、カムアウトが生じない最小の推力でネジに対する押し付けを行うことが可能であり、生産効率の向上に寄与することができる。
【0057】
また、荷重検出器43は、その一方の端部がプレート42に対して遊びクリアランス9を有して支持されているので、ガイド軸7a、7bの方向以外の不要な力が作用することがなく、推力を正確に検出することができ、かつ損傷や劣化が防止される。
【0058】
また、ガイド軸7a、7bの方向についても、前進ストッパ48Aおよび後進ストッパ63Aが設けられているので、荷重検出器43には許容荷重を越える過大な荷重が加わることがなく、荷重検出器43の損傷や劣化が防止される。
【0059】
また、前進ストッパ48Aおよび後進ストッパ63Aは、簡単な構造でありながらその動作が確実である。
【0060】
また、推力制御に際して、荷重検出器43で検出された荷重に対して、ネジ締付装置20その他の荷重検出器43に加わる荷重を考慮することによって、微妙な推力を正確に制御することが可能である。
【0061】
また、荷重検出器43で検出される荷重を常時監視することにより、ネジの高速送り時に指令値に対して推力が下がれば押し付け速度を上げてロボットの追従性を上げ、また指令値以上に推力が上昇すれば押し付け速度を下げて指令値に戻すようなフィードバック制御を行うことで、より最小限の推力でネジへの押付けができ、しかもネジの高速送りに対しても十分に追従することが可能となる。
【0062】
上に述べた実施形態において、ネジ締付装置20をスカラーロボット10に取り付けた例を示したが、これ以外の種々の動作をするロボットに取り付けて使用することができる。
【0063】
上に述べた実施形態において、昇降駆動装置10、ネジ締付装置20、連結装置40、リニアガイド50、ネジ締付システム1、1Bなどの各部または全体の構造、形状、寸法、材質、個数、連結方法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0064】
1,1B ネジ締付システム
5 駆動軸
6 ネジ締め軸
7a、7b ガイド軸
8a、8b クリアランス
9 遊びクリアランス
10 昇降駆動装置
10B スカラーロボット
11Bb 第二アーム(先端アーム)
12、12B モータ
15 駆動基板
20 ネジ締付装置
40 連結装置
41 第一ブロック
42 プレート(第二ブロック)
43 荷重検出器
44 第一台座
46 第二台座
48 駒ブロック
48A 前進ストッパ
50 リニアガイド
51 ガイド部材
52A ガイド穴
61 ガイド軸部
63 セットカラー
63A 後進ストッパ
100 制御装置
102 推力制御部
103 停止制御部