(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129866
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】接合金物及び接合方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20230912BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
E04B1/58 505L
E04B1/58 508L
E04B1/26 G
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034182
(22)【出願日】2022-03-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】591000757
【氏名又は名称】株式会社アクト
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 出
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB12
2E125AC23
2E125AF05
2E125AG03
2E125AG12
2E125AG13
2E125AG23
2E125AG41
2E125BB03
2E125BB19
2E125BB22
2E125BD01
2E125BE07
2E125BE08
2E125BF08
2E125CA03
2E125CA13
2E125CA79
(57)【要約】
【課題】柱材や建築用パネル等の建築用構成部材に組み込む場合に軸の外表面を平らにできるようにするとともに、部品点数を低減して接合作業がより簡素に行えるようにする。
【解決手段】一の被接合材xに1個以上の他の被接合材yを接合する接合金物11を、一の被接合材xに全体が埋設される棒状の固定芯部材13と、固定芯部材13の外周に挿嵌される管状の管体部51、及び管体部51に一体で他の被接合材yに先端側の全体が差し込まれて固定される差し込み固定部52を有する連結部材15で構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の被接合材に1個以上の他の被接合材を接合する接合金物であって、
前記一の被接合材に全体が埋設される棒状の固定芯部材と、
前記固定芯部材の外周に挿嵌される管状の管体部、及び前記管体部に一体で前記他の被接合材に先端側の全体が差し込まれて固定される差し込み固定部を有する連結部材を備えた
接合金物。
【請求項2】
前記固定芯部材が、その長手方向と直交し前記一の被接合材に対する固定を行うピンが挿入されるピン挿入穴を有し、
前記連結部材の前記管体部に、前記ピンと係止する位置規制係止部が形成された
請求項1に記載の接合金物。
【請求項3】
前記固定芯部材の長手方向の端部に長手方向に延びる雌ねじ穴が形成され、
前記雌ねじ穴に螺合する雄ねじ部、及び前記雄ねじ部と一体で前記固定芯部材に挿嵌した前記管体部を抜け止めする前記雄ねじ部よりも大径の押さえ部を有した閉止部材が備えられた
請求項1または請求項2に記載の接合金物。
【請求項4】
同一の前記固定芯部材に一端側から順に挿嵌される前記連結部材が2個以上備えられ、
前記差し込み固定部が、前記管体部の側面から径方向外方に延設され平板状であるとともに、
すべての前記連結部材における前記差し込み固定部の芯の位置が、前記固定芯部材に対する挿嵌状態で同一レベルに設定された
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の接合金物。
【請求項5】
一の被接合材に1個以上の他の被接合材を接合する接合金物として、前記一の被接合材に全体が埋設される棒状の固定芯部材と、前記固定芯部材の外周に挿嵌される管状の管体部、及び前記管体部に一体で前記他の被接合材に先端側の全体が差し込まれて固定される差し込み固定部を有する連結部材を用い、
前記固定芯部材が埋設された前記一の被接合材を用意し、
前記固定芯部材に対して前記連結部材の前記管体部を挿嵌保持して前記差し込み固定部に前記他の被接合材を固定する、又は前記他の被接合材に前記連結部材の前記差し込み固定部を固定して前記管体部を前記固定芯部材に対して挿嵌保持する
接合方法。
【請求項6】
前記連結部材を2個以上用意し、
前記一の被接合材と前記他の被接合材を前記固定芯部材と1個の前記連結部材で接合して構成された建築用パネルを設け、
前記建築用パネルの前記固定芯部材に、前記連結部材を用いて前記他の被接合材又は前記他の被接合材を備えた建築用構成部材を接合する
請求項5に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば木造軸組建築物の構築において柱や梁などの軸同士の接合に用いるのに好適な接合金物に関する。
【背景技術】
【0002】
軸同士を接合する接合金物としては、例えば下記特許文献1~4に開示されているように、円筒状の芯金具を用いたものがある。この芯金具は、軸心部の穴における少なくとも端部に雌ねじが形成されており、また長手方向の一部に径方向に貫通するピン穴が形成されている。
【0003】
特許文献1の接合金物では、芯金具(柱脚金物)は基礎のアンカーボルトに挿嵌して取り付けられる土台金物と共に使用される。すなわち、土台金物はパイプからなる取り付け本体と、取り付け本体の側面から水平方向に突出する、互いに同一形状をなす複数の接合プレートで構成されており、取り付け本体部がアンカーボルトに挿嵌されて基礎の上に載置される。接合プレートには土台の端部が固定され、アンカーボルトにおける取り付け本体から出ている上端部には芯金具(柱脚金物)が螺合される。そしてこの芯金具は、柱の下端部に埋め込まれて固定される。
【0004】
つまり芯金具(柱脚金物)は土台金物を締め付けて固定する機能と柱をアンカーボルトに結合する機能を有している。
【0005】
特許文献2の接合金物では、芯金具(第一接合ロッド)は柱(縦材)の上に連結金具を固定するために使用される。すなわち、芯金具(第一接合ロッド)の下側部分は柱の上端部に差し込まれて固定され、柱から突出する上側部分に連結金具が固定される。連結金具は上下に間隔を隔てて配設される柱より大きい四角形の基板と補助板を有し、これら基板と補助板の外周部に、互いに同一形状をなす接続片が複数固定され、これら固定片に横材が固定される。
【0006】
特許文献3の接合金物では、芯金具(連結金具)は横材である被連結部材(土台や梁等)の端部で長手方向と直交する方向に貫通しているジョイント穴に挿入される。芯金具(連結金具)の側面には、ねじ孔が形成されており、このねじ孔を利用して被連結部材の端部側面に、接合する被連結部材の端部を受ける複数の受け金具が取り付けられる。複数の受け金具は互いに同一形状である。
【0007】
また、芯金具(連結金具)の軸心部には貫通穴が形成されており、縦材である被連結部材に備えられた接合ボルトが挿通され、縦材と横材合計6本の被連結部材が接合された状態が得られる。
【0008】
つまり、この芯金具(連結金具)は主として受け金具を保持する機能を有している。
【0009】
特許文献4の接合金物では、芯部材(上下ネジパイプ/上下ネジ筒)は、一階接合金物や二階接合金物と共に用いられ、特許文献1と同様に金物を締め付けてアンカーボルト等に固定する機能とアンカーボルト等と柱を結合する機能を有している。
【0010】
また特許文献4の
図6、
図7には、二階接合金物を胴部と翼部に分けて構成し、芯部材(上下ネジ筒)が胴部に挿通される構成が記載されている。ここでは、芯部材(上下ネジ筒)は上下のボルト同士を連結するとともに二階接合金物との結合を行う機能を有している。
【0011】
この芯部材(上下ネジ筒)は二階接合金物の胴部に挿通されるが、二階接合金物は梁の端部を翼部で受けるものであるので、芯部材(上下ネジ筒)と胴部は被接合材に埋設されるものではなく、接合作業に際して組み付けられる。
【0012】
また、胴部と翼部、胴部と芯部材(上下ネジ筒)は接合に際して別体のボルトで固定される。このため、接合作業に際して必要な部品点数が多く、作業性はよくない。
【0013】
ところで、下記特許文献5のように、予め軸を備えた建築用構成部材としての建築用パネルで木造軸組建築物を構成することが提案されている。このような建築用パネルを用いる木造軸組建築物では、建築用パネルに接合金物を備えるが、その接合金物は可能な限り外面から突出しないのが好ましい。これは建築用パネルを平積みしたりして取扱い性を良くすることができるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9-13500号公報
【特許文献2】特開平11-200492号公報
【特許文献3】特公平6-94691号公報
【特許文献4】特開2002-13197号公報
【特許文献5】特許第7005046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、この発明は、建築用パネルに組み込む場合に軸の外表面を平らにできるようにするとともに、部品点数を低減して接合作業がより簡素に行えるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そのための手段は、一の被接合材に全体が埋設される棒状の固定芯部材と、固定芯部材の外周に挿嵌される管状の管体部、及び管体部に一体で他の被接合材に先端側の全体が差し込まれて固定される差し込み固定部を有する連結部材を備えた接合金物である。
【0017】
この構成では、固定芯部材は、その全体が一の被接合材の内部に保持されて、接合される他の被接合材に固定される連結部材の管体部の挿嵌を受け入れる。一の被接合材に既に接合された他の被接合材がある場合には、固定軸部材はその他の被接合材に固定された連結部材の管体部を保持しつつ、後に接続される他の被接合材に固定される連結部材の管体部の挿嵌を受け入れる。連結部材は、固定芯部材に挿嵌される管体部を固定芯部材に対して保持した後に、管体部と一体の差し込み固定部に他の被接合材を固定する。あるいは、差し込み固定部を他の被接合材に固定した後で管体部が固定芯部材に保持される。
【0018】
固定芯部材を備えた一の被接合材と、連結部材を備えて一の被接合材に接合された他の被接合材の外表面は、接合金物の突出の無い平らな状態である。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、接合金物は一の被接合材に全体が埋設される固定芯部材と、これに挿嵌される管体部及び管体部と一体で先端側の全体が他の被接合材に差し込み固定される差し込み固定部を有した連結部材を備えた構成である。このため、固定芯部材を備えた一の被接合材や、固定芯部材と連結部材を備えた一の被接合材と他の被接合材との接合体の外表面を平らにできる。この結果、柱などの軸や軸を組んで構成した建築用パネルなどの建築用構成部材を平積みできるようにすることができ、取扱い性が良好である。
【0020】
また、連結部材は固定芯部材に挿嵌して保持する構成であるので、接合に必要な部品点数を低減でき、接合作業の簡素化をはかれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図6】1枚の建築用パネルに接合金物を組み込んだ状態の斜視図。
【
図7】他の例に係る接合金物の接合例を示す斜視図。
【
図8】
図7に示した接合に用いる接合金物の斜視図。
【
図9】他の例に係る接合金物の接合例を示す斜視図。
【
図10】
図9に示した接合に用いる接合金物の斜視図。
【
図11】他の例に係る接合金物の接合例を示す斜視図。
【
図14】他の例に係る接合金物の接合例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0023】
図1は、木造軸組建築物を構築するための軸を備えた建築用パネルA,B同士を接合する接合例を示す斜視図である。この図に示すように互いに接合される一方の建築用パネルAには、接合金物11を構成する一部の部材が埋設されており、他方の建築用パネルBは、一方の建築用パネルAに対して接合金物11を構成する他の一部の部材を介して接合される。建築用パネルA,B同士の接合は現場においてなされる。
【0024】
このような接合を行う接合金物11は、一の被接合材xに1個以上の他の被接合材yを接合する接合金物11である。このため、
図1に示した例の場合、一方の建築用パネルAが一の被接合材xに、他方の建築用パネルBが他の被接合材yに相当する。同時に、一方の建築用パネルAを構成する一方の軸a1が一の被接合材xに、他方の軸a2が他の被接合材yに、他方の建築用パネルBを構成する軸b1が他の被接合材yに相当する。
【0025】
接合金物11は、
図2に示したように固定芯部材13と連結部材15を備える。
【0026】
具体的には、固定芯部材13は、一の被接合材xに全体が埋設されるものであって、棒状に形成されている。固定芯部材13の全体形状は円筒形であり、軸心部には長手方向に貫通する貫通穴31を有している。貫通穴31の少なくとも上端部は長手方向に延びる雌ねじ穴32であって、内周面に雌ねじが形成されている。
【0027】
また固定芯部材13は、その長手方向と直交して一の被接合材xに対する固定を行うピン17が挿入されるピン挿入穴33,34,35を有している。ピン挿入穴33,34,35はピン17の断面形状と同じ円形であり、その形成位置と数は、固定芯部材13の長さと備える連結部材15の数などによって設定される。
【0028】
連結部材15は、固定芯部材13の外周に挿嵌される管状の管体部51と、管体部51に一体で他の被接合材yに先端側の全体が差し込まれて固定される差し込み固定部52を有している。管体部51は固定芯部材13の外周面に嵌合対応してぴたりと嵌まる円筒形であり、固定芯部材13の長さよりも短く形成されている。
【0029】
また管体部51は、固定芯部材13に対して回り止めをするための回転規制部53を有している。回転規制部53は穴や切欠き、段差、凹凸などで構成される。回転規制部53としては、固定芯部材13に対して直接的に回り止めする位置規制係止部53aと、間接的に作用する噛合部53bがある。
【0030】
位置規制係止部53aは、管体部51における固定芯部材13に嵌めたときにピン挿入穴33,34,35と対応する部位に形成され、ピン挿入穴33,34,35に挿入したピン17と係止するものである。噛合部53bは、並べて保持される他の連結部材15における管体部51と噛み合うものであって、切欠きや段差、凹凸などで構成される。
【0031】
差し込み固定部52は、管体部51の側面から径方向外方に延設されており、平板状である。差し込み固定部12の形状は、軸である梁材等の高さよりも幅狭の略短冊状であり、軸に差し込まれる先端側部分54とこれを支える基部55を有している。
【0032】
先端側部分54には、軸に対する固定のためのピン18(
図1参照)を保持するためのピン挿入穴56が形成されている。基部55は、同一の固定芯部材13に保持されるすべての連結部材15における差し込み固定部52の芯Sの位置が、固定芯部材13に対する挿嵌状態で同一レベルになるように形成されている。すなわち基部55は、先端側部分54の位置を固定芯部材13の長手方向においてずらす変形部を必要に応じて有している(
図3参照)。
【0033】
前述した「差し込み固定部52の芯S」とは、差し込み固定部52が略短冊板状でありピン挿入穴56を有する構成であるので、そのピン挿入穴56を有する部分の幅方向の中間位置である。差し込み固定部52が例えば円筒状であれば、その軸心に対応する位置である。なお、差し込み固定部52に形成される前述のピン挿入穴56は差し込み固定部52の芯に形成されている。
【0034】
前述の「必要に応じて」とは、
図1~
図3に示したように、軸の高さ方向の中間に対応する位置に保持される連結部材15aの場合には、基部55を側面から径方向外方に真っすぐ形成すればよく、先端側部分54の位置をずらす必要がないからである。
【0035】
接合金物11は、前述の固定芯部材13と1個以上の連結部材15の他に、閉止部材19を有し、必要に応じて調整筒部材16を備える。
【0036】
閉止部材19は、固定芯部材13の雌ねじ穴32に螺合する雄ねじ部91と、雄ねじ部91と一体で固定芯部材13に挿嵌した管体部51を抜け止めする雄ねじ部91よりも大径の押さえ部92を有している。この閉止部材19には雄ねじ部91の一端に大径の頭部を有したボルトが好適に使用される。
【0037】
調整筒部材16は、連結部材15の管体部51と同じ構成である。すなわち、調整筒部材16は固定芯部材13の外周面に嵌合対応してぴたりと嵌る円筒形であり、固定芯部材13の長さよりも短く形成されている。また調整筒部材16は、固定芯部材13に対する回り止めのための回転規制部53を有している。
【0038】
図1、
図2に例示の接合金物11について、以下に、より具体的に説明する。この接合金物11は、第1に一方の建築用パネルAを構成する軸としての柱材101と梁材102を接合するものであり、第2に建築用パネルA,B同士を一直線状に連結するものであるため、2個の連結部材15が備えられる。一方の建築用パネルAにおける柱材101と梁材102の関係は、柱材101の側面に梁材102を接合する構成であるので、柱材101を一の被接合材xとし、梁材102を他の被接合材yとしている。他方の建築用パネルBは、軸として梁材102を有しており、この梁材102が他の被接合材yである。なお、図示は省略するが建築用パネルA,Bには構造用合板等からなる面材が取り付けられている。
【0039】
柱材101に埋設保持される固定芯部材13は、
図3に示したように、柱材101の上端面から梁材102の高さよりも深く入り込む長さに設定され、ピン17を保持するための3個のピン挿入穴33,34,35が長手方向に間隔をあけて配設されている。固定芯部材13における梁材102に対応する部位を上側部分13aとし、それより下の部分は下側部分13bとする。また固定芯部材13の長さは、上側部分13aの上端面が柱材101の上端面よりも下に位置するように設定される。上側部分13aの上端面と柱材101の上端面との高さの差は、閉止部材19の押さえ部92の高さ以上である。
【0040】
3個のピン挿入穴33,34,35のうち最も下のピン挿入穴33は、柱材101に対する固定のためだけのものであり、下側部分13bに形成されている。他の2個のピン挿入穴34,35は、柱材101に対する固定と連結部材15の位置規制のためのものである。2個のピン挿入穴34,35のうち、上のピン挿入穴35は、上側部分13aにおける梁材102の高さの中間に対応する位置に形成されている。中間位置のピン挿入穴34は、上側部分13aと下側部分13bの間に形成されている。
【0041】
2個の連結部材15は、中段連結部材15aと上段連結部材15bである。接合金物11にはこれらの連結部材15に加えて調整筒部材16が備えられる。
【0042】
中段連結部材15aは、一方の建築用パネルAを構成する梁材102を連結するためのものであって、固定芯部材13の上側部分13aにける長手方向の中間部、つまり上のピン挿入穴35に対応する位置に保持されるものである。このため、中段連結部材15aは、管体部51の中央に、軸心を通る貫通穴57からなる位置規制係止部53aを有している。また管体部51の上端には、上段連結部材15bの管体部51と係止して上段連結部材15bを回り止めする切欠き58からなる噛合部53bを有している。この切欠き58は、管体部51の上端部における径方向の半分を適宜高さ切り欠いて段差を設けた形状である。一方、管体部51の下端は平らである。
【0043】
差し込み固定部52は、外方ほど幅広になる等脚台形状の基部55と、基部55の先から延びる短冊形状の先端側部分54を有している。
【0044】
上段連結部材15bは、他方の建築用パネルB、またそれを構成する梁材102を連結するためのものであって、固定芯部材13の上側部分における長手方向の上端部、つまり上のピン挿入穴35に対応する位置よりも上に保持されるものである。管体部51の下端には、中段連結部材15aの管体部51に形成した噛合部53bと係止して周り止めされる切欠き58からなる噛合部53bが形成されている。
【0045】
差し込み固定部52は、先端側に形成された変形部が下方へ変位した略ひし形をなす基部55と、基部55の先から延びる短冊形状の先端側部分54を有している。
【0046】
調整筒部材16は、上端面が中段連結部材15aの管体部51の下端面と面接触するように平らに形成され、下端部には中間のピン挿入穴34に挿入されるピン17と係止する切欠き59からなる位置規制係止部53aを有している。切欠き59の形状は、ピン17の一方の外側に嵌まる平面視半円弧よりも短い大きさの凸部59aを形成するものである。切欠き59は側面視半円弧状に形成して、凸部59aが両側に形成される形状であってもよい。
【0047】
このような接合金物11で固定される柱材101と梁材102には、次のような加工が施される。すなわち、柱材101の上端部には、上端面の中央位置に、上端面から長手方向に延びる平面視円形の保持穴103が形成されている。保持穴103は、固定芯部材13の上側部分13aを保持する上側保持穴103aと、固定芯部材13の下側部分13bを保持する下側保持穴103bを有している。下側保持穴103bは固定芯部材13の太さに嵌合対応する太さであるのに対して、上側保持穴103aはそれよりも太く、連結部材15の管体部51が嵌合対応する太さである。
【0048】
柱材101における接合方向と直交する方向の2つの側面であって保持穴103に挿入される固定芯部材13のピン挿入穴33,34,35に対応する位置には、ピン17を挿入保持する挿入穴104が形成されている。挿入穴104を有する側面以外の2つの側面と保持穴103との間であって梁材102に対応する部分には、保持穴103と側面を連通して差し込み固定部52の基部55を通すスリット105が形成されている。
【0049】
梁材102の長手方向の端部であって柱材101のスリット105に対応する部位には、差し込み固定部52を保持するスリット106が形成され、差し込み固定部52のピン挿入穴56に対応する部位には、ピン18を挿入保持する挿入穴107が形成されている。
【0050】
以上のような構成の接合金物11は、
図4、
図5に示したようにして柱材101と梁材102を接合して工場等で建築用パネルAを構成したのち、この建築用パネルAは現場において、
図1に示したようにして別途に構成された別の建築用パネルBと接合される。
【0051】
建築用パネルAの構成に際してはまず、
図4に示したように柱材101の保持穴103に固定芯部材13を挿入して、下と中間の挿入穴33,34に差し込む2本のピン17で保持する。
【0052】
つぎに、柱材101の上側保持穴103aに調整筒部材16を挿入するとともに、その上に中段連結部材15aの管体部51を挿入する。調整筒部材16と中段連結部材15aは固定芯部材13に嵌まり、調整筒部材16の下端の噛合部53bはすでに挿入されているピン17に係止し、その上端は中段連結部材15aの管体部51における下端面と面接触する。上の挿入穴35にピン17を挿入すると、保持穴103における中段連結部材15aの位置は規制され、回り止めもなされる。同時に、調整筒部材16の位置決めと回り止めもなされる。
【0053】
このあと、梁材102を中段連結部材15aの差し込み固定部52にピン18で固定する。この固定は固定芯部材13に対する嵌合よりも先に行っておくこともできる。
【0054】
建築用パネルA,B同士の接合に際しては、
図1に示したように、固定芯部材13が埋設されて構成された一方の建築用パネルAに、上段連結部材15bを用いて他方の建築用パネルBを接合する。すなわち、一方の建築用パネルAの固定芯部材13に対して上段連結部材15bの管体部51を挿嵌保持する。固定芯部材13に対する管体部51の挿嵌後に、閉止部材19を固定芯部材13の上端部の雌ねじ穴32に螺合すると、上段連結部材15bは抜け止めされ、保持状態が維持される(
図6参照)。
【0055】
固定芯部材13に対する上段連結部材15bの保持は、閉止部材19を螺合するだけでよいので簡単であるとともに、閉止部材19にはボルトを使用できるので利便性が高い。
【0056】
このあと、柱材101の側面から突出している上段連結部材15bの差し込み固定部52に、他方の建築用パネルBの梁材102を固定する。上段連結部材15bの差し込み固定部52に対する梁材102の固定は、固定芯部材13に対する管体部51の嵌合に先立って行うこともできる。
【0057】
このようにして接合される一方の建築用パネルAは、
図1に示したように接合金物11の保持されるすべての部材が軸(柱材101、梁材102)に収まっており、軸の外表面から突出する部分はない。このため、製造後の管理や運搬において建築用パネルAを平積みでき、取扱い性が良好である。軸の外表面から接合金物11が突出しないのは、建築用パネルA,B同士の接合後においても同じであり、後に他の部材を組んだりする際に支障をきたすこともなく施工の自由度も高い。
【0058】
また、連結部材15は固定芯部材13に挿嵌して保持する構成であるので、閉止部材19は必要とするものの、別途に複数のボルトで固定する必要はなく、接合に必要な部品点数や工数を低減できる。このため、接合作業を簡素にでき、施工時間の短縮も可能である。
【0059】
さらに、被接合材x,yの接合状態においては、固定芯部材13を一方の被接合材xに対して固定するピン17を利用して連結部材15の位置規制と回り止めがなされている。しかも、位置規制係止部53aを有しない上段連結部材15bにおいても、噛合部53bによって並設される中段連結部材15aに対して係止して回り止めがなされる構成である。このため、複数の部材からなる接合金物11は、確かな接合状態を得られるうえに、掛かる荷重を分散するので接続強度も高い。
【0060】
連結部材15は固定芯部材13の長手方向に沿って並設されるが、それらの差し込み固定部52は芯の位置Sが互いに同じ高さに位置する構成であるので、他の被接合材yに対する差し込み固定部52の固定は被接合材yの芯から外れることなく、確実に行える。
【0061】
そのうえ、固定芯部材13と1個以上の連結部材15を備える接合金物11は、連結部材15を組み替えることにより、また閉止部材19を代えることによって、前述例のような一直線状の接合のほか、その他の形態での接合も可能である。
【0062】
その一例を以下、
図7~
図14を用いて説明する。この説明において、前述の構成と同一の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0063】
図7は、2枚の建築用パネルA,Bを平面視L字型に接合した例を示している。すなわち、一の被接合材xとしての柱材101と他の被接合材yとしての梁材102を有する建築用パネルAの柱材101における梁材102と直交する方向の側面に、他の被接合材yとしての梁材102を有する建築用パネルBが接合されている。このような接合を行う接合金物11は、
図8に示したように、固定芯部材13、これらに嵌められる2個の連結部材15(中段連結部材15aと上段連結部材15b)、調整筒部材16及び閉止部材19を備える。
【0064】
この接合金物11は上段連結部材15b以外の部材は、前述した構成と同一である。
【0065】
上段連結部材15bは、差し込み固定部52の管体部51に対する形成位置が前述例のものとは異なる。つまり、接合がI字型ではなくL字型であるので、管体部51の側面における接合方向に対応する方向に差し込み固定部52が形成されている。差し込み固定部52の形状は前述例のものと同じである。
【0066】
このような構成の接合金物11は、前述と同様に使用されて被接合材x,yの接合がなされ、同様の作用を有する。
【0067】
図9は、3枚の建築用パネルA,B,Cを平面視T字型に接合する例を示している。すなわち、一の被接合材xとしての柱材101と他の被接合材yとしての梁材102を有する建築用パネルAの柱材101の一つの側面に、他の被接合材yとしての梁材102を有する建築用パネルBが接合される。また、その側面と隣接する他の側面に、他の被接合材yとしての梁材102を有する建築用パネルCが接合される。
【0068】
このような接合を行う接合金物11は、
図10に示したように、固定芯部材13、これらに嵌められる3個の連結部材15(中段連結部材15aと上段連結部材15bと下段連結部材15c)及び閉止部材19を備える。
【0069】
この接合金物11の固定芯部材13と上段連結部材15bと閉止部材19は、前述した
図2の構成と同一である。
【0070】
中段連結部材15aは、建築用パネルCを接合するものとして使用される構成にしてあり、管体部51の側面における建築用パネルCの接合方向に差し込み固定部52が形成されている。この差し込み固定部52が形成される位置は、貫通穴57からなる位置規制係止部53aが形成される位置であるので、差し込み固定部52における貫通穴57に対応する位置に長方形の窓部61が形成されている。この窓部61は、ピン17の挿入を可能にするためのものである。
【0071】
下段連結部材15cは、建築用パネルAを形成するものとして使用される構成にしてあり、
図2に示した調整筒部材16と同様の形状の管体部51における梁材102の接合方向の側面に差し込み固定部52が形成されている。差し込み固定部52の基部55は、先端側に形成された変形部が上方へ変位した略ひし形をなしている。
【0072】
このような構成の接合金物11は、前述と同様に使用されて被接合材x,yの接合がなされ、同様の作用を有する。
【0073】
図11は、4枚の建築用パネルA,B,C,Dを平面視十字型に接合する例を示している。すなわち、一の被接合材xとしての柱材101と他の被接合材yとしての梁材102を有する建築用パネルAの柱材101における直列方向の側面に、他の被接合材yとしての梁材102を有する建築用パネルBが接合される。また、その側面と隣接する一方の側面に、他の被接合材yとしての梁材102を有する建築用パネルCが、他方の側面に、他の被接合材yとしての梁材102を有する建築用パネルDが接合される。
【0074】
このような接合を行う接合金物11は、
図12に示したように、固定芯部材13、これらに嵌められる3個の連結部材15(中段連結部材15aと上段連結部材15bと下段連結部材15c)及び閉止部材19を備える。
【0075】
この接合金物11の上段連結部材15bを除く部材は、前述した
図10の構成と同一である。
【0076】
上段連結部材15bは、建築用パネルBを接合する差し込み固定部52のほかに、建築用パネルDを接合する差し込み固定部52を備えている。2枚の差し込み固定部52自体の形状は互いに同一である。
【0077】
このような構成の接合金物11は、前述と同様に使用されて被接合材x,yの接合がなされ、同様の作用を有する。
【0078】
図13は、閉止部材19についての変形例である。すなわち、閉止部材19として前述のような一般的なボルト形状のものではなく、それに代えて特殊なボルト装置19aを用いて一の被接合材xにおける長手方向の上端面に、
図14に示したように建築用構成部材である柱材101を接合する例を示している。このような接合により、1階の上に2階を構築することができる。
【0079】
ボルト装置19aは、寸切りボルト状のボルト本体95における長手方向の一端側部分に、ボルト本体95と一体で相対回転不可能な固定ナット部97が形成されている。ボルト本体95における固定ナット部97よりも他端側の部分には、2個のナット96,98が回転可能に保持されている。これらのうち固定ナット97が押さえ部92に相当する。
【0080】
このようなボルト装置19aは、ボルト本体95における固定ナット97と反対側の部分が、柱材101の下端部に内蔵された長ナット108に保持されており、柱材101を建築用パネルAの柱材101の上にのせたのち、ボルト本体95の固定ナット97側の部分が固定芯部材13の雌ねじ穴32に螺合される。螺合作業は柱材101の下端部に形成された凹所109をとおして行える。ボルト本体95の螺合によって固定ナット97が上段連結部材15bに当たり、上段連結部材15bが保持される。この状態で2個のナット96,98を順に固定芯部材13に向けて回転して締め付けて、これらのうち固定芯部材13側のナット97を、その上のナット98を固定した状態で逆回転させる。
【0081】
このように閉止部材19の選択によって、接合金物11で多様な接合を行うことができる。
【0082】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することができる。
【0083】
例えば、固定芯部材13は軸の長手方向と直交する方向に挿入保持されるものであってもよい。
【0084】
また、複数の連結部材を備える場合、それらの間の角度が前述のように直角をなすように配設される構成ではなく、その他の角度で配設されるようにしてもよい。この場合は、柱材などの被接合材を断面四角形の角材ではなく例えば断面円形の丸柱などにすると、適宜の角度に接続することが容易である。
【符号の説明】
【0085】
11…接合金物
13…固定芯部材
15…連結部材
17…ピン
19…閉止部材
32…雌ねじ穴
33,34,35…ピン挿入穴
51…管体部
52…差し込み固定部
53a…位置規制係止部
91…雄ねじ部
92…押さえ部
x…一の被接合材
y…他の被接合材
A…建築用パネル
S…差し込み固定部の芯
【手続補正書】
【提出日】2022-04-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の被接合材に1個以上の他の被接合材を接合する接合金物であって、
前記一の被接合材に全体が埋設される棒状の固定芯部材と、
前記固定芯部材の外周に挿嵌される管状の管体部、及び前記管体部に一体で前記他の被接合材に先端側の全体が差し込まれて固定される差し込み固定部を有する連結部材を備え、
前記固定芯部材が、その長手方向と直交し前記一の被接合材に対する固定を行うピンが挿入されるピン挿入穴を有し、
前記連結部材の前記管体部に、前記ピンと係止する位置規制係止部が形成された
接合金物。
【請求項2】
前記固定芯部材の長手方向の端部に長手方向に延びる雌ねじ穴が形成され、
前記雌ねじ穴に螺合する雄ねじ部、及び前記雄ねじ部と一体で前記固定芯部材に挿嵌した前記管体部を抜け止めする前記雄ねじ部よりも大径の押さえ部を有した閉止部材が備えられた
請求項1に記載の接合金物。
【請求項3】
同一の前記固定芯部材に一端側から順に挿嵌される前記連結部材が2個以上備えられ、
前記差し込み固定部が、前記管体部の側面から径方向外方に延設され平板状であるとともに、
すべての前記連結部材における前記差し込み固定部の芯の位置が、前記固定芯部材に対する挿嵌状態で同一レベルに設定された
請求項1または請求項2に記載の接合金物。
【請求項4】
一の被接合材に1個以上の他の被接合材を接合する接合金物として、前記一の被接合材に全体が埋設される棒状の固定芯部材と、前記固定芯部材の外周に挿嵌される管状の管体部、及び前記管体部に一体で前記他の被接合材に先端側の全体が差し込まれて固定される差し込み固定部を有する連結部材を用い、
前記固定芯部材が埋設された前記一の被接合材を用意し、
前記固定芯部材に対して前記連結部材の前記管体部を挿嵌保持して前記差し込み固定部に前記他の被接合材を固定する、又は前記他の被接合材に前記連結部材の前記差し込み固定部を固定して前記管体部を前記固定芯部材に対して挿嵌保持する接合方法において、
前記連結部材を2個以上用意し、
前記一の被接合材と前記他の被接合材を前記固定芯部材と1個の前記連結部材で接合して構成された建築用パネルを設け、
前記建築用パネルの前記固定芯部材に、前記連結部材を用いて前記他の被接合材又は前記他の被接合材を備えた建築用構成部材を接合する
接合方法。