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特開2023-129881コイル部品、ボビン、及びコイル装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129881
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】コイル部品、ボビン、及びコイル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20230912BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20230912BHJP
   H01F 27/08 20060101ALI20230912BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20230912BHJP
   H01F 5/02 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H01F30/10 E
H01F30/10 S
H01F37/00 E
H01F37/00 S
H01F27/08 101
H01F27/28 176
H01F5/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034211
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】519315280
【氏名又は名称】NJコンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩之
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043DA01
5E070AB01
5E070BA08
5E070DA05
5E070DA12
(57)【要約】
【課題】コイルの内側を放熱材により効果的に放熱できるコイル部品を提供する。
【解決手段】中空筒状の巻軸部22を有するボビン2と、巻軸部の周囲に導線32が巻回されてなるコイル3と、巻軸部の中空部24に挿通される中脚42を有するコア4とを備えたコイル部品1であって、ボビンは、コイルと接する面に、当該コイルが配置される領域の内外を連絡する溝26が形成されている。巻軸部にコイルの巻軸31方向に延長する溝が形成されていてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の巻軸部を有するボビンと、前記巻軸部の周囲に導線が巻回されてなるコイルを備えたコイル部品であって、
前記ボビンは、前記コイルと接する面に、当該コイルが配置される領域の内外を連絡する溝が形成されている、
コイル部品。
【請求項2】
請求項1に記載のコイル部品であって、前記巻軸部に、前記コイルの巻軸方向に延長する前記溝が形成されているコイル部品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコイル部品であって、前記コイルの巻軸方向を前後方向として、
前記ボビンは、前記巻軸部の前後両端にフランジ状の鍔部を備え、
前記溝は、前記鍔部に形成されている、
コイル部品。
【請求項4】
請求項2に記載のコイル部品であって、
前記コイルの巻軸方向を前後方向として、
前記ボビンは、前記巻軸部の前後両端にフランジ状の鍔部を備え、
前記溝は、前記巻軸部に前記コイルの巻軸方向に形成された第1の溝と、前記鍔部に形成された第2の溝とを有し、
前記第1の溝と前記第2の溝とが連続して形成されている、
コイル部品。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のコイル部品であって、前記溝は、前記コイルを形成する前記導線の巻はじめと巻終わりのリード部が引き出される方向に沿って形成されている、コイル部品。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のコイル部品を構成する前記ボビンであって、
周囲にコイルを形成する導線が巻回される筒状の巻軸部を有し、
前記コイルと接する面に、当該コイルが配置される領域の内外を連絡する溝が形成されている、
ボビン。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかのコイル部品が樹脂からなる放熱材が充填された有底箱状のケース内に収納されたコイル装置であって、
前記放熱材は、前記コイル部品の外面を覆うとともに、前記溝の内方に充填されて、前記コイルと前記ボビンとが接触する領域に介在している、
コイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品、ボビン、及びコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
巻線型のコイル部品は、中空筒状の巻軸部を有するボビンと、巻軸部の外周に巻回されてコイルを形成する導線と、巻軸部の中空部に挿入されるコアとを有する。周知のごとく、コイル部品は導線に流れる電流によって発熱する。そのため、大電力を扱うトランス等のコイル部品では、熱対策を施す必要がある。そこで、以下の特許文献1に記載されているコイル装置のように、コイル部品を、熱伝導率が高い金属製のケース内に設置する場合がある。そして、このような場合では、そのケース内に熱伝導性と絶縁性とを有する放熱材を充填する。放熱材は、コイル部品とケースとの間に充填されることで、コイル部品とケースとを電気的に絶縁しつつ、コイル部品からの熱を、ケースを介して外部に放出させる。なお、放熱材としては、周知の「ポッティング材」等と呼ばれる樹脂材料が用いられる。ポッティング材として用いられる樹脂としては、例えば、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等がある。
【0003】
なお、以下の特許文献2に記載のコイル装置では、一次巻き線と二次巻き線とがボビンの巻軸部に同心に巻回されたコイルを有し、外周側のコイルの巻線は、内周側のコイルの外周を覆うボビンカバーの外周に巻回されている。そして、ボビンカバーは、外周側のコイルの巻線が巻回される領域より下方の位置に内外を連通させる開口部と切欠部とを有している。それにより、コイル装置の外方から供給されるポッティング樹脂が、開口部と切欠部とを介して内周側のコイルの外表面に接触できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-016739号公報
【特許文献2】特開2020-126954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、コイル部品の放熱対策として、コイル部品が設置されたケース内にポッティング樹脂を充填することがある。そして、従来のコイル部品の熱対策は、ポッティング樹脂をコイルの表面に接触させることで放熱している。特許文献2に記載のコイル装置においても、外周側のコイルと内周側のコイルの双方の表面にポッティング剤を接触させている。したがって、従来の熱対策では、導線をボビンの巻軸部に巻回して形成されるコイルの内側からの熱を効果的に放出することが難しい。そして、近年のコイル部品では、さらなる小型化と高出力化とが求められており、熱対策が十分でないとコイル部品の電気的な特性が低下し、求められる仕様を満たすことが難しくなる。
【0006】
そこで、本発明は、コイルの内側を放熱材により効果的に放熱できるコイル部品、ボビン、及びコイル装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、筒状の巻軸部を有するボビンと、前記巻軸部の周囲に導線が巻回されてなるコイルとを備えたコイル部品であって、前記ボビンは、前記コイルと接する面に、当該コイルが配置される領域の内外を連絡する溝が形成されているコイル部品である。
【0008】
また、前記巻軸部に、前記コイルの巻軸方向に延長する前記溝が形成されているコイル部品、あるいは前記コイルの巻軸方向を前後方向として、前記ボビンは、前記巻軸部の前後両端にフランジ状の鍔部を備え、前記溝は、前記鍔部に形成されているコイル部品であってもよい。
【0009】
前記コイルの巻軸方向を前後方向として、前記ボビンは、前記巻軸部の前後両端にフランジ状の鍔部を備え、前記溝は、前記巻軸部に前記コイルの巻軸方向に形成された第1の溝と、前記鍔部に形成された第2の溝とを有し、前記第1の溝と前記第2の溝とが連続して形成されている、コイル部品とすることもできる。
【0010】
上記いずれかのコイル部品において、前記溝が、前記コイルを形成する前記導線の巻はじめと巻終わりのリード部が引き出される方向に沿って形成されてもよい。
【0011】
上記いずれかに記載のコイル部品を構成する前記ボビンも本発明の範囲であって、当該ボビンは、周囲にコイルを形成する導線が巻回される筒状の巻軸部を有し、前記コイルと接する面に、当該コイルが配置される領域の内外を連絡する溝が形成されているボビンとしている。
【0012】
本発明の範囲には、上記のいずれかのコイル部品が樹脂からなる放熱材が充填された有底箱状のケース内に収納されたコイル装置も含まれており、当該コイル装置は、前記放熱材が、前記コイル部品の外面を覆うとともに、前記溝の内方に充填されて、前記コイルと前記ボビンとが接触する領域に介在しているコイル装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コイルの内側を放熱材により効果的に放熱できるコイル部品、ボビン、及びコイル装置が提供される。なお、その他の効果については以下の記載で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例に係るコイル部品の外観図である。
図2】実施例に係るコイル部品の分解斜視図である。
図3】実施例に係るコイル部品の一部を切断したときの斜視図である。
図4】実施例に係るコイル部品を備えたコイル装置の外観図である。
図5A】実施例に係るコイル部品を構成するボビンの外観図である。
図5B】実施例に係るコイル部品を構成するボビンの外観図である。
図6A】実施例に係るコイル部品におけるポッティング材の充填経路を示す図である。
図6B】実施例に係るコイル部品におけるポッティング材の充填経路を示す図である。
図7】実施例に係るコイル部品におけるポッティング材の充填状態を示す図である。
図8】実施例に係るコイル部品を構成するボビンの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明に用いた図面において、同一又は類似の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略することがある。図面によっては説明に際して不要な符号を省略することもある。
【0016】
===実施例===
本実施例に係るコイル装置100の全体構成を図1及び図2に示す。図1及び図2に示すように、コイル装置100は、コイル部品1とケース10とを備えて構成される。図1には、実施例に係るコイル部品1の外観が示されている。図2には、コイル部品1の分解斜視図が示されている。なお、以下の説明では、コイル3の巻軸31と平行な方向を前後方向とする。
【0017】
実施例に係るコイル部品1は、巻軸31と同じ前後方向を筒軸21とした中空筒状の巻軸部22を有するボビン2と、その巻軸部22の外周面に導線32が巻回されてなるコイル3と、コイル3を囲繞して閉磁路を形成するコア4とを基本的な構成としている。
【0018】
実施例に係るコイル部品1におけるコア4は、図2に示したように、互いに前後方向に対面するE型の二つのコア部材41によって構成され、各コア部材41の中脚42がボビン2の巻軸部22の中空部24に挿通されている。以下、E型のコア部材41の外脚43が中脚42に対して左右両側に形成されていることとして、前後方向と直交する左右方向を規定するとともに、前後方向と左右方向とに直交する方向を上下方向とする。また、図1図2を、上方から見た時の斜視図として、上下の各方向を規定することとする。
【0019】
図3に、図1における一点鎖線a-aを含んで左右上下の各方向と平行な面でコイル部品1を切断したときの斜視図を示した。以下、図1図3を参照しつつ、実施例に係るコイル部品1の基本構成について説明する。実施例に係るコイル部品1はトランスであり、二つのコイル3が前後方向に同軸に配置されている。また、二つのコイル3のそれぞれを構成する導線32の巻はじめと巻終わりの部分がリード部33としてボビン2の外方に案内されている。
【0020】
組み立てられた状態のコイル部品1では、図1に示したように、コア4の前後左右の面を囲繞するようにテープ5aが巻回され、二つのコア部材41が互いに分離しないようになっている。また、コイル3の周囲にも、主に絶縁を目的としたテープ5bが巻回されている。なお、図2図3では、コイル部品1の内部構造が理解し易いようにテープ(5a、5b)を省略している。
【0021】
ところで、コイル部品1は、最終的に回路基板などに実装されることから、図1図3に示したような、有底箱状の金属製のケース10内に収納された電子部品(以下、「コイル装置100」と言うことがある。)の形態で提供されることがある。そして、コイル部品1は、コイル装置100において、放熱材(以下、「ポッティング材」と言うことがある。)に覆われた状態でケース10内に収納される。
【0022】
図4にコイル装置100の外観図を示した。図中網点で示したポッティング材6が、ケース10の内面とコイル部品1との間に充填され、ケース10内のコイル部品1は、そのほとんどの領域がポッティング材6によって覆われている。図4に示したコイル装置100では、実装時に基板上の回路に接続されるリード部33の先端が上方に屈曲されてポッティング材6から外方に突出している。もちろん、リード部33が端子台等に接続されつつポッティング材6に覆われた状態で固定され、端子台の端子がポッティング材6の外方の突出していてもよい。なお、図4ではポッティング材6に覆われたコイル部品1を透視して示している。
【0023】
===放熱構造===
図1図3に示したように、実施例に係るコイル部品1では、ボビン2に、コイル3が配置される領域の内外を連絡する溝26が形成されている。そしてコイル部品1は、その溝26により、コイル3の導線32に発生した熱を、ポッティング材6を介して効果的にコイル装置100の外部に放出することができるようになっている。
【0024】
図5A図5Bにボビン2の外観を示した。ここで、上記の前後左右上下の各方向に関する規定に従えば、図5Aはボビン2を上方から見たときの斜視図であり、図5Bはボビン2を下方から見たときの斜視図である。図5A図5Bに示したように、ボビン2は、コイル部品1において前後方向に同軸に配置された二つのコイル3に対応して前後方向に二つの巻軸部22が同軸に接続された構造を有する。
【0025】
巻軸部22の端面は、長円形で、左右の縁辺が半円になっている。二つの巻軸部22のそれぞれの前後両端には、前後方向から見ると、長円環状にフランジ状に張り出した部位(以下、「鍔部23a、鍔部23b」と言うことがある。)が形成されている。なお、ボビン2の前後両端に形成されている鍔部23aは、長円の上縁辺の一部が巻軸部22の外面22sまでの領域で切り欠かれており、巻軸部22の上面22uは、その切り欠かれた領域(以下、「切欠部25」と言うことがある。)を介して前方、及び後方に延長し、中空部24の開口端よりも前方、及び後方に平板状に突出している。なお、以下では、この平板状に突出する部位を「舌片部27」と称することとする。
【0026】
そして、実施例に係るコイル部品1のボビン2は、コイル3と接する面に、当該コイル3が配置される領域の内外を連絡する溝26が形成されている。具体的には、巻軸部22の外面22sに前後方向に延長する溝(以下、「第1の溝26a」と言うことがある。)が形成されている。また、二つの巻軸部22のそれぞれに形成されている前後二つの鍔部(23a、23b)には、前後方向で互いに対面する側の面(以下、「鍔部の内面23i」と言うことがある。)に長円の環状に形成された鍔部23の内周側から外周側に向かって延長する溝(以下、「第2の溝26b」と言うことがある)が形成されている。
【0027】
なお、本実施例において、第1の溝26aは、巻軸部の上面22u側と下面22d側とに、それぞれ左右に平行となるように二つずつ形成されている。巻軸部22の上面22u側の第1の溝26aは、鍔部23aの切欠部25を介して舌片部27の縁端27eまで延長し、この縁端27eで開口している。
【0028】
また、巻軸部22の上面22u側の二つの第1の溝26aは、夫々が舌片部27の縁端27eから前後内方に向かって延長しつつ前後内方の鍔部23bに形成された二つの第2の溝26bのそれぞれと個別に連続している。そして、前後内方の鍔部23bに形成された二つの第2の溝26bは、当該鍔部23bの上縁側にて開口している。
【0029】
一方、巻軸部22の下面22d側の二つの第1の溝26aは、ボビン2の前後両端側では、この二つの第1の溝26aを包含するように前後両端の鍔部23aに形成された一つの幅広の溝26cに連続しているとともに、上面22u側の第1の溝26aと同様に、ボビン2の前後両端から前後内方に向かって延長して前後内方の鍔部23bに形成された二つの第2の溝26bのそれぞれに連続している。そして、この鍔部23bに形成された二つの第2の溝26bは、当該鍔部23bの下縁辺にて開口している。
【0030】
===ポッティング材の充填状態===
実施例に係るコイル部品1は、コイル3が形成される領域に溝26が形成されたボビン2を備えている。そして、コイル装置100を得るためには、このコイル部品1をケース10に収納した後、ケース10内にポッティング材6を充填する。実施例に係るコイル部品1では、このポッティング材6がケース10内に充填される際、そのポッティング材6が溝26を介して導線32が巻軸部22の周囲に中空筒状に巻回されてなるコイル3の内面側に案内される。それによって、実施例に係るコイル部品1では、コイル3の内面側に巻回されている導線32にもポッティング材6が接触し、コイル3の内面側の熱を効果的に放出することができるようになっている。
【0031】
図6A図6Bは、コイル部品1におけるポッティング材6の充填経路を示す図である。図6A、及び図6Bは、コイル3が形成された状態のボビン2を、図1における二点鎖線b-bを含んで上下方向と前後方向とに平行な面で切断したときに、上方、及び下方から見たときの斜視図である。
【0032】
コイル部品1をケース10に収納し、そのケース10にポッティング材6を充填すると、ポッティング材6は、コイル部品の表面を覆いつつ、図6A図6Bにおいて白抜き矢印で示したように、コイル3と鍔部23との隙間や鍔部23や舌片部27の縁端における溝(23a~23c)の開口から溝(23a~23c)の内方に案内される。
【0033】
図7にコイル部品1におけるポッティング材6の充填状態を示した。図7は、図4において、コイル部品1をc-c線を含んで上下前後の各方向に平行な面で切断したときの断面を左右方向から見たときの図である。図7に示したように、ポッティング材6は、コイル3と巻軸部22の外面22sとの間、及びコイル3と鍔部23の内面23iとの間に充填される。それにより、放熱しにくいコイル3の内面側からの熱が効果的に放熱される。また、実施例のコイル部品1では、ポッティング材6がコイル3の外面側と内面側の双方から導線32の間に浸透することで、ポッティング材6とコイル3の導線32との接触面積がより大きくなり、放熱効果をより高めることができる。
【0034】
なお、実施例に係るコイル部品1では 一つの第1の溝26aと一つの第2の溝26bとが互いに接続されて、それぞれの溝(23a、23b)が互いに連絡し合っているため、ケース10内にポッティング材6を充填する際、コイル3の内面と、巻軸部22の外面22sや鍔部23の内面23iとの間の空気がこの溝26を通ってボビン2の外方に逃げることができる。それによって、ポッティング材6が溝26の全領域に渡って速やかに充填される。さらに、実施例に係るコイル部品1では、巻軸部22の上面22u側の第1の溝26aが、導線32のリード部33の引き出し方向に沿うように舌片部27の縁端27eまで形成されており、リード部33の領域で発生した熱も確実にポッティング材6に伝えることができるようになっている。もちろん、ポッティング材6は、巻軸部22の中空部24にも充填され、コア4において、ボビン2から外方に露出する部分の熱だけではなく、中脚42からの熱もコイル部品1の外方に放出させることができる。
【0035】
===その他の実施例===
上記実施例に係るコイル部品1では、前後方向から見たときのボビン2の巻軸部22や鍔部23の平面形状が長円形であったが、巻軸部22や鍔部23の平面形状は、円形や矩形など、中空部24に挿通されるコア部材41の中脚42の形状に応じて適宜に変更すればよい。
【0036】
上記実施例に係るコイル部品1では、巻軸部22の上面22u側の第1の溝26aがボビン2の前後両端の鍔部23aの切欠部25を介して舌片部27の縁端27eまで形成されていたが、鍔部23aに第1の溝26aとリード部33とを通す孔が形成されていてもよい。また、例えば、図8に示したボビン102のように、巻軸部22の上面22uに形成されている第1の溝26aが、舌片部27の縁端27eまで延長して形成されていなくてもよい。さらに、上記実施例に係るコイル部品1では、巻軸部22に形成される第1の溝26aが直線状であったが、例えば、前後方向を螺旋軸とした螺旋状となるように前後方向に延長するように形成されていてもよい。いずれにしても、巻軸部22や鍔部23に形成される溝26の端部がボビン2においてコイル3が形成される領域外にあればよい。
【0037】
溝26は巻軸部22と鍔部23の双方になくてもよく、いずれか一方にあってもよい。また、上記実施例では、巻軸部22の上面22u側と下面22d側とに二本一組の第1の溝26aが形成されていたが、上面22u側と下面22d側とに一本ずつ形成されていてもよい。もちろん、巻軸部あるいは鍔部の内面の少なくとも一方に一本の第1の溝26aが形成されていてもよい、
【0038】
巻軸部22と鍔部23の双方に溝26を設ける場合、双方の溝26を互いに接続せず、個別に形成してもよい。
【0039】
上記実施例に係るコイル部品1は、コア4の構造がEE型であったが、中脚42を有するコア4であれば、EI型など、他の構造のコア4であってもよい。もちろん。コア4は、自身の一部あるいは全部がボビン2における巻軸部22の中空部24に挿通されるものであってもよい。コイル部品1は、インダクタなど、トランス以外のコイル部品1であってもよい。さらには、空芯コイルのようにコアがないコイル部品1であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 コイル部品、2,102 ボビン、3 コイル、4 コア、5a,5b テープ、
6 ポッティング材、10 ケース、21 筒軸、22 巻軸部、
22d 巻軸部の下面、22u 巻軸部の上面、22s 巻軸部の外面、
23,23a,23b 鍔部、24 中空部、26,26a,26b,26c 溝、
31 巻軸、32 導線、33 リード部、41 コア部材、42 中脚、43 外脚、100 コイル装置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8