(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129898
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】X線撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
A61B6/00 300D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034235
(22)【出願日】2022-03-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】304035908
【氏名又は名称】株式会社アールエフ
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】丸山 次郎
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA08
4C093CA37
4C093EB13
4C093EB17
4C093EC16
4C093EC28
4C093ED10
4C093ED15
4C093FA28
(57)【要約】
【課題】像の向きが揃ったX線画像および撮像装置による画像を短時間で取得することを可能にするX線撮影装置を提供すること。
【解決手段】被写体にX線を照射するX線照射器と、前記被写体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線照射器と前記被写体の間にあり、前記X線照射器が照射するX線を透過し、前記被写体からの光を反射するX線ハーフミラーと、前記X線ハーフミラーにて反射された前記被写体からの光を受光する撮像装置と、を備えるX線撮影装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体にX線を照射するX線照射器と、
前記被写体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記X線照射器と前記被写体の間にあり、前記X線照射器が照射するX線を透過し、前記被写体からの光を反射するX線ハーフミラーと、
前記X線ハーフミラーにて反射された前記被写体からの光を受光する撮像装置と、
を備えるX線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線撮影装置において、
前記X線ハーフミラーと前記被写体の間にあり、前記被写体を照らす照明ライトを備え、
前記照明ライトは、リング形状であり、前記X線照射器が照射するX線が中央部を通るX線撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線撮影装置において、
前記照明ライトは、中心波長が異なる複数の光源を備えるX線撮影装置。
【請求項4】
請求項3に記載のX線撮影装置において、
前記X線検出器と、前記X線検出器に対して前記被写体を挟む位置にある前記X線照射器、前記X線ハーフミラー、および前記撮像装置と、を前記被写体を中心に旋回させる旋回アームを備えるX線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線撮影装置において、X線による被写体の撮影部位を赤外線カメラにて撮影することで、X線画像及び赤外線画像を対比可能にし、診断能を向上させたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置の一態様では、赤外線カメラをX線焦点の軸上に移動させ、赤外線画像を撮像し、X線照射器による撮影時には、赤外線カメラをX線照射野外に移動させる。この態様では、X線画像および赤外線画像の取得に時間がかかるという問題がある。
【0005】
また、該装置の他の態様では、X線照射野の外側にある赤外線カメラをX線焦点に向けて赤外線画像を撮像する。この場合、X線画像および赤外線画像で撮影部位の姿勢が異なるという問題がある、または、赤外線画像の撮影部位の姿勢をX線画像の撮像部位の姿勢に一致させるための複雑な補正を赤外線画像に行う必要があるという問題がある。
【0006】
本発明は、像の向きが揃ったX線画像および撮像装置による画像を短時間で取得することを可能にするX線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、図面の符号を参照すると以下の通りである。
(1)被写体にX線を照射するX線照射器31と、
前記被写体を透過したX線を検出するX線検出器61と、
前記X線照射器と前記被写体の間にあり、前記X線照射器が照射するX線を透過し、前記被写体からの光を反射するX線ハーフミラー51と、
前記X線ハーフミラー51にて反射された前記被写体からの光を受光する撮像装置52と、
を備えるX線撮影装置1。
(2)(1)に記載のX線撮影装置において、
前記X線ハーフミラーと前記被写体の間にあり、前記被写体を照らす照明ライト4を備え、
前記照明ライトは、リング形状であり、前記X線照射器が照射するX線が中央部を通るX線撮影装置。
(3)(2)に記載のX線撮影装置において、
前記照明ライトは、中心波長が異なる複数の光源を備えるX線撮影装置。
(4)(3)に記載のX線撮影装置において、
前記X線検出器と、前記X線検出器に対して前記被写体を挟む位置にある前記X線照射器、前記X線ハーフミラー、および前記撮像装置と、を前記被写体を中心に旋回させる旋回アーム2を備えるX線撮影装置。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】X線画像およびカメラ画像の撮影原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、X線撮影装置1を示す図である。
X線撮影装置1は、同一姿勢の撮影部位が写るX線画像およびカメラ画像(撮像装置52による画像)を取得できるように、X線照射、X線検出、および撮像を行う。X線撮影装置1は、頭部および胴体等、被写体の広範な部位を撮影可能なX線CT装置を例に説明する。X線撮影装置1は、開閉可能なドアが設けられてX線遮蔽機能を有する筐体11を備え、病院内の適宜の場所に設置可能である。筐体11には、被写体が座る座部111と、被写体が両腕を上げた状態で把持する把持部112と、が設けられる。X線撮影装置1は、立位の被写体を撮影するように構成されていてもよい。
【0010】
X線撮影装置1は、旋回アーム2、ディスプレイ91、入力部92、制御部93、およびPC94を備える。
ディスプレイ91は、操作者が撮影方向(画角)を確認するためのX線画像や後述の撮像装置52によるカメラ画像を表示したり、X線撮影装置1の操作および設定を行うための設定情報を表示したりする。
入力部92は、ボタンやキー、タッチパネル等を備え、操作者の入力を受け付ける。
制御部93は、プロセッサやメモリを備え、X線撮影装置1の全体の制御を行う。
【0011】
PC94(Personal Computer)は、プロセッサ、メモリ、入力部941、ディスプレイ942を備える。プロセッサは、メモリ内のプログラムを読み込むことで、各種の処理を行う。メモリは、各種のプログラムのほか、プロセッサが生成したX線画像やカメラ画像を記憶する。入力部941は、ボタンやキー、タッチパネル等を備え、操作者の入力を受け付ける。ディスプレイ942は、3次元または2次元のX線画像やカメラ画像を表示する。
【0012】
PC94には、OS(Operating System)上で動作するアプリ(アプリケーションプログラム)がインストールされている。PC94は、該アプリにより、受信するX線画像データおよびカメラ画像データを処理し、3次元または2次元のX線画像やカメラ画像を様々な態様で表示できる。該アプリは、例えば、被写体の同一撮影部位の3次元または2次元のX線画像およびカメラ画像を同一画面で表示する。
【0013】
旋回アーム2は、筐体11の天面側に位置する支持部21、支持部21の左右端から垂下するアーム22,23を備え、下向きのU字状に形成される。アーム22,23は、被写体を挟んで対向する。旋回アーム2は、不図示の駆動機構によって、被写体を中心に旋回する。
【0014】
一方のアーム22には、第1、第2X線照射器31,32と、第1駆動機構33とが内蔵されるとともに、外側に照明ライト4、X線ハーフミラー51、撮像装置52が設置される。
【0015】
第1駆動機構33は、第1、第2X線照射器31,32を共に上下に移動させるとともに、第1、第2X線照射器31,32の姿勢を制御し、X線の照射方向を制御する。
【0016】
第1、第2X線照射器31,32は、X線を発生させる真空管であり、上下に離れて設けられ、被写体にX線を照射する。
【0017】
他方のアーム23には、第1、第2X線照射器31,32から照射されて被写体を透過するX線を検出するX線検出器61と、X線検出器61を上下動させる第2駆動機構62とが設けられている。X線検出器61は、例えばX線を検出する検出素子が2次元に配列されたFPD(Flat Panel Detector)である。X線検出器61による各画素の信号により生成されるX線画像データは、PC94に送られ、PC94によりX線画像データに基づいて3次元または2次元のX線画像が生成される。
【0018】
頭部を撮影する場合、第1、第2X線照射器31,32は、上方に位置づけられ、上方の第1X線照射器31によるX線照射野に被写体の頭部が配置され、下方の第2X線照射器32によるX線照射野に例えば胸部が配置される。第1、第2X線照射器31,32は、所定の間隔(例えば0.03秒)ごとに交互にX線を照射する。X線検出器61も、第1、第2X線照射器31,32の位置に対応した位置に対応付けられ、この場合、上方に位置づけられる。
【0019】
X線検出器61の上下方向の検出範囲は、第1、第2X線照射器31,32が照射するX線を共に検出できる長さとなっている。第1、第2X線照射器31,32は、上方に位置づけられている場合、X線の照射方向が下方に制御されてもよい。三次元画像を撮影する場合、旋回アーム2が旋回することにより、被写体の周囲360度から被写体が撮影され、X線画像データが取得される。
【0020】
第1、第2X線照射器31,32およびX線検出器61を下方に移動させ、旋回アーム2を旋回させることで、被写体の胸部から下側の部位を撮影できる。被写体の下部側を撮影する際には、第1、第2X線照射器31,32の照射方向が上方に制御されてもよい。
【0021】
アーム22において、照明ライト4、X線ハーフミラー51、撮像装置52は、頭部のX線画像を撮影する際の第1X線照射器31の位置に対応した位置に設置される。
【0022】
図2は、X線画像およびカメラ画像の撮影原理を示す図である。
照明ライト4は、X線ハーフミラー51と被写体の間にあり、被写体を照らす。照明ライト4は、リング形状であり、第1X線照射器31が照射するX線(X線照射野)が中央の空洞部を通る。照明ライト4は、撮影目的に応じて、中心波長が異なる複数の光源41,42を備えていてもよい。光源41,42は、LED(Light Emitting Diode)であってもよい。例えば、光源41は、通常の外観画像を明るく取得するための可視光域の波長の光を出射する。光源41として、ピーク波長が例えば380nm~780nmの範囲にあるものを使用してもよい。光源42は、可視光域の波長より長い赤外線光域の波長の光を出射する。光源42として、ピーク波長が例えば780~1500nmの範囲にあるものを使用してもよい。LEDである複数の光源41,42は、リング状に配置されていてもよい。赤外線光域の波長の光を検出する撮像装置52によりカメラ画像データを取得することで、該データを処理し、撮影部位の温度分布を可視化できる(
図3参照)。撮影目的によって光源41,42の出力が切り替えられるようになっていてもよい。
【0023】
X線ハーフミラー51は、第1X線照射器31と被写体の間にあり、第1X線照射器31が照射するX線を透過し、被写体からの光を反射する。X線ハーフミラー51は、例えば、特開平10-020095号公報に開示されるように、シリコン基板において、一方の面にボロン含有シリコン層及び多膜層が積層され、他方の面にX線透過窓が形成されたものであってもよい。光源41が出力する場合、可視光域の波長の光の反射が増大し、光源42が出力する場合、赤外線光域の波長の光の反射または被写体からの放射が増大する。X線画像およびカメラ画像の画角(撮影部位に対する視線、画像中の撮影部位の姿勢)が同一となるように、X線ハーフミラー51は、第1X線照射器31が照射するX線(X線照射野)の基準軸であって第1X線照射器31のX線焦点を通る基準軸に対し、45度傾いている。X線ハーフミラー51による光の反射方向は、適宜の方向に設定可能であり、例えば反射方向を水平方向とし、撮像装置52をX線ハーフミラー51の側方に設けてもよく、また、反射方向を鉛直方向下向きとし、撮像装置52をX線ハーフミラー51の下方に配置してもよい。
図1において、X線ハーフミラー51の反射角度が下向きで撮像装置52が下方にあることや、
図2において、X線ハーフミラー51の反射角度が水平方向で撮像装置52が側方にあることは例示であり、
図1、2では、X線ハーフミラー51の反射角度が第1X線照射器31の基準軸に対して45度であることを示している。
【0024】
撮像装置52は、X線ハーフミラー51にて反射された被写体からの光を受光する。撮像装置52は、撮像素子として、可視光域の波長の光用のCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を備えていてもよいし、赤外線光域の波長の光用のFPA(Focal Plane Array)を備えていてもよく、ハーフミラーやプリズム等の光学部品により、照明ライト4の光源41,42に対応する撮像素子に光を導くように、光路が分岐されていてもよい。例えば、可視光域の波長の光はCCDに導かれ、赤外線域の波長の光はFPAに導かれるように光路が設計されていてもよい。本実施形態では、撮像装置52は、上述の構成により、遠赤外線光域(例えば4000~1000000nm)の波長の光を検出するものとするが、中赤外線光域(例えば2500~4000nm)の波長の光を検出するものであってもよい。また、撮像装置52は、可視光域の波長の光を選択的に透過するフィルターが設けられた画素と、近赤外線光域(例えば780~2500nm)の波長の光を選択的に透過するフィルターが設けられた画素と、を備えるCCDまたはCMOSにより、同一姿勢(同一画角)の被写体のX線画像データおよびカメラ画像データを同時に取得できてもよい。撮影要素31,32、4,51,52は、頭部等の撮影部位の姿勢(撮影方向)がX線画像およびカメラ画像で同一となるように位置づけられる。
【0025】
旋回アーム2が旋回することにより、撮像装置52により、360度のカメラ画像データが取得されてPC94に送信され、PC94により、3次元または2次元のカメラ画像データであって、外観を示すまたは表面温度等を示すカメラ画像データが生成される。
【0026】
本実施形態では、照明ライト4、X線ハーフミラー51、撮像装置52は、上下方向位置が固定されるものとしたが、これらの撮影要素4,51,52を第1X線照射器31の上下動に対応した位置に上下動させる第3駆動装置がアーム22に設けられてもよい。
【0027】
(効果)
X線撮影装置1は、X線を透過し、被写体からの光を撮像装置52側に反射するX線ハーフミラー51を利用してカメラ画像を撮影するので、X線画像およびカメラ画像で撮影部位の姿勢(撮影方向、画角、目線と換言可能)が同一となる(
図3参照)。また、X線撮影装置1は、撮像装置52と第1、第2X線照射器31、32の相対位置を固定した状態で撮影できるので、X線画像およびカメラ画像を迅速に取得できる。
【0028】
X線撮影装置1は、3次元のX線画像に3次元のカメラ画像を同一画面内で表示できる。そして、表面は、カメラ画像、内部はCT画像等の表示が可能となるため、診断能を向上できる。
【0029】
X線撮影装置1は、撮像装置52により自然光以外の赤外線光等を受光でき、該画像データを処理することで、目視では不可能だった頭部等の撮影部位の痛み、腫れ、温度分布などを可視化したカメラ画像の生成が可能である。
【0030】
X線撮影装置1は、リング状の照明ライト4により、頭部等の撮影部位の周囲から、ムラ無く影も無く光を照射でき、良好なカメラ画像を撮影できる。
【0031】
X線撮影装置1は、旋回アーム2により撮影要素31,32、4,51,52を被写体に対して旋回させるので、被写体がベッドに寝そべることなく座って静止した状態で被写体の全周を撮影できる。
【0032】
(変形例)
本実施形態では、X線撮影装置1は、撮影要素31,32、4,51,52を被写体に対して旋回させたが、撮影要素31,32、4,51,52を周方向においては固定位置とし、被写体を回転台に乗せて回すことで、3次元画像を取得できるように構成されていてもよい。X線撮影装置1は、被写体を昇降機能を有する台に載せ、被写体を撮影要素31,32、4,51,52に対して上下動させてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…X線撮影装置、2…旋回アーム、4…照明ライト、31…X線照射器(第1X線照射器)、51…X線ハーフミラー、52…撮像装置、61…X線検出器。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体にX線を照射するX線照射器と、
前記被写体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記X線照射器と前記被写体の間にあり、前記X線照射器が照射するX線を透過し、前記被写体からの光を反射するX線ハーフミラーと、
前記X線ハーフミラーにて反射された前記被写体からの光を受光する撮像装置と、
前記X線ハーフミラーと前記被写体の間にあり、前記被写体を照らす照明ライトと、を備え、
前記照明ライトは、リング形状であり、前記X線照射器が照射するX線が中央部を通り、
前記照明ライトは、中心波長が異なる複数の光源を備えるX線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線撮影装置において、
前記照明ライトは、中心波長が380nm~780nmの範囲にある第1光源と、前記第1光源と中心波長が異なる第2光源であって、中心波長が780nm~1500nmの範囲にある第2光源と、を備えるX線撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線撮影装置において、
前記第1光源と前記第2光源のいずれかに出力を切り替えることができるX線撮影装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のX線撮影装置において、
前記X線検出器と、前記X線検出器に対して前記被写体を挟む位置にある前記X線照射器、前記X線ハーフミラー、前記撮像装置、および前記照明ライトと、を前記被写体を中心に旋回させる旋回アームを備えるX線撮影装置。