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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129900
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】バスバーの接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/516 20210101AFI20230912BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20230912BHJP
   H01M 50/503 20210101ALI20230912BHJP
【FI】
H01M50/516
H01M50/505
H01M50/503
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034237
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直剛
(72)【発明者】
【氏名】稲村 卓思
【テーマコード(参考)】
5H043
【Fターム(参考)】
5H043AA01
5H043AA13
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA22
5H043FA04
5H043FA22
5H043FA23
5H043FA24
5H043FA26
5H043FA37
5H043HA11D
5H043HA11F
5H043HA17D
5H043HA17F
5H043JA01F
5H043JA02F
5H043JA12F
5H043JA13F
5H043KA09F
5H043LA02F
5H043LA21F
5H043LA22F
5H043LA24F
5H043LA25F
(57)【要約】
【課題】バスバーおよび端子部の間の接続強度を高めることが可能なバスバーの接続構造、を提供する。
【解決手段】バスバーの接続構造は、第1対向面61を有する端子部18と、所定方向において第1対向面61と隙間52を設けて対向する第2対向面62を有し、端子部18に対して重ね合わされるバスバー31と、端子部18およびバスバー31を接続する溶接部51とを備える。溶接部51は、バスバ31ーに設けられる第1溶接層56と、端子部18に設けられる第2溶接層57と、隙間52に配置され、第1溶接層56および第2溶接層57を接続する中間溶接層58とを有する。溶接部51は、所定方向に平行な平面により切断された場合に、所定方向に直交する方向における中間溶接層58の最小幅Laが、所定方向に直交する方向における第1溶接層56の最小幅Lbよりも大きくなる断面形状を有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1対向面を有する端子部と、
所定方向において前記第1対向面と隙間を設けて対向する第2対向面を有し、前記端子部に対して重ね合わされるバスバーと、
前記端子部および前記バスバーを接続する溶接部とを備え、
前記溶接部は、
前記バスバーに設けられ、前記所定方向において前記バスバーを貫き、前記第2対向面まで延びる第1溶接層と、
前記端子部に設けられ、前記第1対向面から前記所定方向に延びる第2溶接層と、
前記隙間に配置され、前記第1溶接層および前記第2溶接層を接続する中間溶接層とを有し、
前記溶接部は、前記所定方向に平行な平面により切断された場合に、前記所定方向に直交する方向における前記中間溶接層の最小幅が、前記所定方向に直交する方向における前記第1溶接層の最小幅よりも大きくなる断面形状を有する、バスバーの接続構造。
【請求項2】
前記バスバーには、前記所定方向において前記第1対向面から遠ざかる方向に凹む形状を有する凹部が設けられ、
前記第2対向面は、前記凹部の底面からなる、請求項1に記載のバスバーの接続構造。
【請求項3】
前記隙間は、外部開放された空間からなる、請求項1または2に記載のバスバーの接続構造。
【請求項4】
前記所定方向に見た場合に、前記溶接部は、環状に延び、
前記バスバーには、前記所定方向において前記バスバーを貫通し、環状に延びる前記溶接部の内側で前記第2対向面に開口する貫通孔が設けられる、請求項3に記載のバスバーの接続構造。
【請求項5】
前記所定方向に見た場合に、前記溶接部は、円形のリング形状を有し、
前記貫通孔は、前記円形のリング形状の中心軸上で延びる、請求項4に記載のバスバーの接続構造。
【請求項6】
前記溶接部は、前記所定方向に平行な平面により切断された場合に、前記所定方向に直交する方向における前記溶接部の幅が、前記第1溶接層および前記中間溶接層の境界の位置で最大となる断面形状を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載のバスバーの接続構造。
【請求項7】
前記所定方向における前記隙間の大きさは、0.01mm以上である、請求項1から6のいずれか1項に記載のバスバーの接続構造。
【請求項8】
前記所定方向における前記隙間の大きさは、前記所定方向における前記バスバーの厚み以下である、請求項1から7のいずれか1項に記載のバスバーの接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バスバーの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2015-11785号公報(特許文献1)には、複数の電池セルと、複数の電池セル間を電気的に接続するための複数のバスバーとを備える電池モジュールが開示されている。バスバーは、10μm以上50μm未満の大きさの隙間を設けて、電池セルの外部端子に重ね合わされている。電池モジュールには、レーザ溶接により、外部端子およびバスバーを接続する溶接部が設けられている。溶接部の断面形状は、逆三角形状または逆台形形状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-11785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外部端子に対してバスバーを接続するための溶接部に過大な外力が加わった場合に、溶接部が破損し、バスバーおよび外部端子間の接続状態が損なわれる可能性がある。このため、このようなバスバーの接続構造にはさらなる改良が求められている。
【0005】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、バスバーおよび端子部の間の接続強度を高めることが可能なバスバーの接続構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従ったバスバーの接続構造は、第1対向面を有する端子部と、所定方向において第1対向面と隙間を設けて対向する第2対向面を有し、端子部に対して重ね合わされるバスバーと、端子部およびバスバーを接続する溶接部とを備える。溶接部は、バスバーに設けられ、所定方向においてバスバーを貫き、第2対向面まで延びる第1溶接層と、端子部に設けられ、第1対向面から所定方向に延びる第2溶接層と、隙間に配置され、第1溶接層および第2溶接層を接続する中間溶接層とを有する。溶接部は、所定方向に平行な平面により切断された場合に、所定方向に直交する方向における中間溶接層の最小幅が、所定方向に直交する方向における第1溶接層の最小幅よりも大きくなる断面形状を有する。
【0007】
このように構成されたバスバーの接続構造によれば、溶接部は、中間溶接層の最小幅が、第1溶接層の最小幅よりも大きくなる断面形状を有するため、隙間に配置される中間溶接層の強度を十分に確保することができる。これにより、バスバーおよび端子部の間の接続強度を高めることができる。
【0008】
また好ましくは、バスバーには、所定方向において第1対向面から遠ざかる方向に凹む形状を有する凹部が設けられる。第2対向面は、凹部の底面からなる。
【0009】
また好ましくは、隙間は、外部開放された空間からなる。このように構成されたバスバーの接続構造によれば、バスバーおよび端子部の溶接時、バスバーの溶融金属が隙間に進入する場合に、空気を隙間から外部に逃がすことができる。これにより、中間溶接層の最小幅が第1溶接層の最小幅よりも大きくなる断面形状を有する溶接部を容易に得ることができる。
【0010】
また好ましくは、所定方向に見た場合に、溶接部は、環状に延びる。バスバーには、所定方向においてバスバーを貫通し、環状に延びる溶接部の内側で第2対向面に開口する貫通孔が設けられる。
【0011】
このように構成されたバスバーの接続構造によれば、貫通孔を、バスバーおよび端子部の溶接時に隙間から逃げる空気の通路とすることができる。
【0012】
また好ましくは、所定方向に見た場合に、溶接部は、円形のリング形状を有する。貫通孔は、円形のリング形状の中心軸上で延びる。
【0013】
このように構成されたバスバーの接続構造によれば、貫通孔に対する溶接部の各部位の位置関係が、円形のリング形状を有する溶接部の周方向において均一となる。これにより、溶接部の周方向においてばらつきのない中間溶接層の断面形状を得ることができる。
【0014】
一方で、所定方向に見た場合に、溶接部は、環状の一部が途切れた形状(たとえば、C字形状、または、U字形状)を有してもよいし、直線形状または曲線形状を有してもよい。溶接部の形状を適宜、選択することによって、溶接可能な領域の面積に対応した溶接が可能となる。
【0015】
また好ましくは、溶接部は、所定方向に平行な平面により切断された場合に、所定方向に直交する方向における溶接部の幅が、第1溶接層および中間溶接層の境界の位置で最大となる断面形状を有する。
【0016】
このように構成されたバスバーの接続構造によれば、第1溶接層および中間溶接層の境界における溶接部の強度を十分に確保することにより、バスバーおよび端子部の間の接続強度をさらに高めることができる。
【0017】
また好ましくは、所定方向における隙間の大きさは、0.01mm以上である。このように構成されたバスバーの接続構造によれば、バスバーおよび端子部の溶接時、バスバーの溶融金属が隙間に進入するスペースを十分に確保することができる。これにより、中間溶接層の最小幅が第1溶接層の最小幅よりも大きくなる断面形状を有する溶接部を容易に得ることができる。
【0018】
また好ましくは、所定方向における隙間の大きさは、所定方向におけるバスバーの厚み以下である。
【0019】
このように構成されたバスバーの接続構造によれば、バスバーおよび端子部の溶接時、隙間に進入したバスバーの溶融金属が第1対向面および第2対向面の間に渡って保持されないことに起因して、中間溶接層による第1溶接層および第2溶接層の間の接続が得られない現象を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上に説明したように、この発明に従えば、バスバーおよび端子部の間の接続強度を高めることが可能なバスバーの接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の実施の形態におけるバスバーの接続構造が適用された電池パックを示す分解組み立て図である。
図2図1中の電池パックを構成する電池セルを示す斜視図である。
図3】バスバーを示す斜視図である。
図4】バスバーを示す別の斜視図である。
図5】バスバーの接続構造を示す上面図である。
図6図5中のVI-VI線上の矢視方向に見たバスバーの接続構造を示す断面図である。
図7図6中の2点鎖線VIIで囲まれた範囲のバスバーの接続構造を示す断面図である。
図8】実施例において、端子部に対してバスバーを溶接する工程を示す断面図である。
図9】実施例における溶接部の断面形状を示す概略図である。
図10】比較例における溶接部の断面形状を示す概略図である。
図11】比較例における溶接部の断面形状を示す別の概略図である。
図12図6中のバスバーの接続構造の第1変形例を示す断面図である。
図13図6中のバスバーの接続構造の第2変形例を示す断面図である。
図14図3および図4中のバスバーの第1変形例を示す斜視図である。
図15図3および図4中のバスバーの第2変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0023】
図1は、この発明の実施の形態におけるバスバーの接続構造が適用された電池パックを示す分解組み立て図である。図2は、図1中の電池パックを構成する電池セルを示す斜視図である。
【0024】
図1および図2を参照して、電池パック100は、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)または電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)などの車両の駆動用電源として用いられる。
【0025】
本明細書においては、電池パック100の構造を説明する便宜上、後述する複数の電池セル11の積層方向、かつ、水平方向に延びる軸を「Y軸」といい、Y軸に直交する方向、かつ、水平方向に延びる軸を「X軸」といい、上下方向に延びる軸を「Z軸」という。
【0026】
まず、電池パック100の全体構造について説明する。電池パック100は、複数の電池セル11と、ケース体21とを有する。複数の電池セル11は、Y軸方向に積層されている。ケース体21は、複数の電池セル11を収容している。ケース体21は、ケース本体23と、ケース頂部24とを有する。ケース本体23は、直方体形状の外観を有し、上方を向いて開口される箱体からなる。ケース頂部24は、ケース本体23の開口部に対して着脱可能に取り付けられる蓋体からなる。
【0027】
図2に示されるように、電池セル11は、リチウムイオン電池である。電池セル11は、角形であり、直方体の薄板形状を有する。複数の電池セル11は、Y軸方向が電池セル11の厚み方向となるように積層されている。
【0028】
電池セル11は、外装体12を有する。外装体12は、直方体形状の筐体からなり、電池セル11の外観をなしている。外装体12には、電極体および電解液が収容されている。
【0029】
外装体12は、第1側面13と、第2側面14と、頂面15と、底面16とを有する。第1側面13および第2側面14の各側面は、Y軸に直交する平面からなる。第1側面13および第2側面14は、Y軸方向において、互いに反対側を向いている。第1側面13および第2側面14の各側面は、外装体12が有する複数の側面のうちで最も大きい面積を有する。
【0030】
頂面15および底面16の各面は、Z軸に直交する平面からなる。頂面15は、上方を向いている。底面16は、下方を向いている。底面16は、接着剤20を用いて、ケース体21(ケース本体23)の内底面に固定されている。頂面15には、外装体12の内部で発生したガスにより外装体12の内圧が所定値以上となった場合に、そのガスを外装体12の外部に排出するためのガス排出弁17が設けられている。
【0031】
電池セル11は、正極端子18Pおよび負極端子18Nが対となった端子部18をさらに有する。端子部18は、金属からなる。端子部18は、頂面15に設けられている。正極端子18Pおよび負極端子18Nは、X軸方向において、互いに離れて設けられている。正極端子18Pおよび負極端子18Nは、X軸方向におけるガス排出弁17の両側にそれぞれ設けられている。
【0032】
複数の電池セル11は、Y軸方向に隣り合う電池セル11,11の間において、第1側面13同士が向かい合わせとなり、第2側面14同士が向かい合わせとなるように積層されている。これにより、複数の電池セル11が積層されるY軸方向において、正極端子18Pと負極端子18Nとが、交互に並んでいる。
【0033】
図3および図4は、バスバーを示す斜視図である。図1から図4を参照して、電池パック100は、複数のバスバー31をさらに有する。バスバー31は、金属からなる。Y軸方向に隣り合う電池セル11,11の間において、Y軸方向に並ぶ正極端子18Pと負極端子18Nとが、バスバー31により、互いに接続されている。これにより、複数の電池セル11は、互いに電気的に直列に接続されている。なお、複数の電池セル11は、互いに電気的に、並列、または、直列および並列の組み合わせで接続されてもよい。
【0034】
バスバー31は、第1主面32と、第2主面33とを有する板材からなる。第1主面32および第2主面33の各面は、Z軸に平行な平面からなる。第2主面33は、第1主面32の裏側に配置されている。
【0035】
バスバー31には、貫通孔41と、凹部46とが設けられている。貫通孔41は、Z軸方向において、バスバー31を貫通している。貫通孔41は、Z軸方向に平行な中心軸110の軸上で延びている。貫通孔41は、中心軸110を中心とする円形状の開口をなしている。凹部46は、第2主面33からZ軸方向に凹む凹形状をなしている。凹部46は、中心軸110の軸上に設けられている。凹部46は、中心軸110を中心とする円形状を有し、貫通孔41よりも大きい直径を有する開口を第2主面33になしている。
【0036】
バスバー31は、第2対向面62を有する。第2対向面62は、Z軸に直交する平面からなる。本実施の形態では、第2対向面62が、凹部46の底面からなる。第2対向面62は、中心軸110を中心とする円形のリング形状を有する。貫通孔41は、リング形状を有する第2対向面62の内側で開口している。
【0037】
バスバー31には、Y軸方向に隣り合う電池セル11,11の端子部18に接続される2箇所に、上記の貫通孔41および凹部46が一組になって設けられている。
【0038】
続いて、端子部18に対するバスバー31の接続構造について説明する。図5は、バスバーの接続構造を示す上面図である。図6は、図5中のVI-VI線上の矢視方向に見たバスバーの接続構造を示す断面図である。図7は、図6中の2点鎖線VIIで囲まれた範囲のバスバーの接続構造を示す断面図である。
【0039】
図5から図7を参照して、バスバー31は、端子部18に対してZ軸方向に重ね合わされている。端子部18は、頂面19を有する。頂面19は、Z軸方向に直交する平面からなる。頂面19は、バスバー31の第2主面33と面接触している。
【0040】
端子部18は、第1対向面61を有する。第1対向面61は、Z軸方向に直交する平面からなる。本実施の形態では、第1対向面61が、頂面19の一部である。バスバー31の第2対向面62は、Z軸方向において、第1対向面61と隙間52を設けて対向している。本実施の形態では、第1対向面61および第2対向面62の対向方向であるZ軸方向が、本発明における「所定方向」に対応している。
【0041】
Z軸方向における隙間52の大きさtは、0.01mm以上であることが好ましい(0.01mm≦t)。Z軸方向における隙間52の大きさtは、0.05mm以上であってもよいし(0.05mm≦t)、0.1mm以上であってもよいし(0.1mm≦t)、0.3mm以上であってもよい(0.3mm≦t)。Z軸方向における隙間52の大きさtは、後出の溶接部51が設けられる位置のZ軸方向におけるバスバー31の厚みT以下であることが好ましい(t≦T)。
【0042】
隙間52は、外部開放された空間からなる。隙間52は、貫通孔41を通じて、端子部18およびバスバー31の周りの空間(図1中のケース体21内の空間)に開放されている。凹部46が、Z軸方向において、第2主面33から第1対向面61から遠ざかる方向に凹むことによって、第1対向面61および第2対向面62の間に隙間52が形成されている。
【0043】
電池パック100は、溶接部51をさらに有する。溶接部51は、端子部18およびバスバー31を接続する。溶接部51は、レーザ溶接などの溶接を用いて、端子部18およびバスバー31を接続するように構成されている。溶接部51は、溶接時に、バスバー31および端子部18が挙げた順に溶融し、そのあと、バスバー31および端子部18の溶融金属が凝固することによって、互いに一体化されている部分である。
【0044】
溶接部51は、Z軸方向に見た場合に、隙間52と重なる位置に設けられている。溶接部51は、第1主面32に露出し、第1主面32から、第1主面32より遠ざかるZ軸方向に延びている。溶接部51は、Z軸方向において、バスバー31を貫き、隙間52を通じて端子部18に進入し、端子部18の内部に先端部51pを有する。Z軸方向は、溶接部51の深さ方向に対応している。Z軸方向に見た場合に、溶接部51は、環状に延びている。溶接部51は、中心軸110を中心とする円形のリング形状を有する。貫通孔41は、環状に延びる溶接部51の内側で第2対向面62に開口している。
【0045】
図7に示されるように、溶接部51は、第1溶接層56と、第2溶接層57と、中間溶接層58とを有する。第1溶接層56、第2溶接層57および中間溶接層58は、Z軸方向に連なって溶接部51を構成している。
【0046】
第1溶接層56は、バスバー31に設けられている。第1溶接層56は、Z軸方向において、第1主面32から第2対向面62に向けてZ軸方向に延びている。第1溶接層56は、Z軸方向においてバスバー31を貫き、第2対向面62まで延びている。第2溶接層57は、端子部18に設けられている。第2溶接層57は、第1対向面61からZ軸方向に延びている。第2溶接層57は、端子部18の内部に溶接部51の先端部51pをなしている。中間溶接層58は、隙間52に配置されている。中間溶接層58は、第2対向面62から第1対向面61に向けてZ軸方向に延びている。中間溶接層58は、第1溶接層56および第2溶接層57を接続している。
【0047】
溶接部51は、Z軸方向に平行な平面210により切断された場合に、Z軸方向に直交する方向における中間溶接層58の最小幅Laが、Z軸方向に直交する方向における第1溶接層56の最小幅Lbよりも大きくなる断面形状を有する(La>Lb)。
【0048】
平面210は、リング形状をなす溶接部51の中心軸110を含み、中心軸110からその半径方向外側に向けて延びる平面である。平面210は、Z軸方向に見て溶接部51が延びる方向(中心軸110を中心とする円の接線方向)に直交する平面である。平面210は、後述するレーザヘッド71の走査方向に直交する平面である。図5中には、代表的に、平面210がY軸-Z軸平面である場合が示されている。なお、レーザヘッド71によるレーザ加工がバスバー31の表面上のスポット(定点)に対して行なわれる場合、平面210を、Z軸方向に延びる溶接部51の中心軸を含む平面とすればよい。
【0049】
図7中には、Z軸方向において、第1主面32および第2対向面62の間に位置する第1深さ位置120Bと、Z軸方向において、第2対向面62(第1溶接層56および中間溶接層58の境界)に位置する第2深さ位置120Cと、Z軸方向において、第2対向面62および第1対向面61の間に位置する第3深さ位置120Aと、Z軸方向において、第1対向面61(中間溶接層58および第2溶接層57の境界)に位置する第4深さ位置120Dとが示されている。
【0050】
Z軸方向に直交する方向(Y軸方向)における溶接部51(第1溶接層56,中間溶接層58,第2溶接層57)の幅Lは、Z軸方向における位置によって変化する。概ね、第1溶接層56の幅Lは、第1主面32から第1深さ位置120Bに近づくに従って小さくなり、第1深さ位置120Bで最小幅Lbとなる。第1溶接層56の幅Lは、第1深さ位置120Bから第2深さ位置120Cに近づくに従って大きくなり、第2深さ位置120Cで最大幅Lcとなる。中間溶接層58の幅Lは、第2深さ位置120Cで最大幅Lcとなり、第2深さ位置120Cから第3深さ位置120Aに近づくに従って小さくなり、第3深さ位置120Aで最小幅Laとなる。中間溶接層58の幅Lは、第3深さ位置120Cから第4深さ位置120Dに近づくに従って大きくなり、第4深さ位置120Dで、最小幅Laよりも大きく、最大幅Lcよりも小さい幅Ldとなる。第2溶接層57の幅Lは、第4深さ位置120Dで最大幅Ldとなり、第4深さ位置120Dから先端部51pに近づくほど小さくなる。
【0051】
溶接部51は、Z軸方向に平行な平面210により切断された場合に、Z軸方向に直交する方向における溶接部51の幅Lが、第1溶接層56および中間溶接層58の境界の位置で最大となる断面形状を有する。すなわち、第2深さ位置120Cにおける溶接部51の幅Lcが、溶接部51の幅Lのうちで最大である。
【0052】
本実施の形態では、中間溶接層58の最小幅Laが、第1溶接層56の最小幅Lbよりも大きいため、隙間52に配置される中間溶接層58の強度を十分に確保することができる。また、溶接部51の幅が、第1溶接層56および中間溶接層58の境界の位置で最大となるため、第1溶接層56および中間溶接層58の境界の位置で溶接部51が破断することを効果的に防ぐことができる。これにより、バスバー31および端子部18の間の接続強度を高めることができる。
【0053】
図8は、実施例において、端子部に対してバスバーを溶接する工程を示す断面図である。図9は、実施例における溶接部の断面形状を示す概略図である。図8および図9を参照して、本実施例では、0.8mmの厚みを有するアルミニウム製のバスバー31と、1.8mmの厚みを有するアルミニウム製の端子部18とを用い、Z軸方向における隙間52の大きさを0.3mmとした。この際、貫通孔41を通じて、Z軸方向における隙間52の大きさを測定した。
【0054】
ファイバーレーザ溶接機を用いて、端子部18に対してバスバー31を溶接した。より具体的には、ファイバーレーザ溶接機のレーザヘッド71をバスバー31と対向させ、レーザ光Lを第1主面32に向けて照射しながら、レーザヘッド71を中心軸110を中心にその周方向に走査した。レーザ光Lの出力を1000~2000Wとし、レーザ光Lのスポット径を0.15mmとし、レーザヘッド71の走査速度を100~500mm/sとした。この結果、図7を参照しながら説明した断面形状を有する溶接部51を得ることができた。
【0055】
図10および図11は、比較例における溶接部の断面形状を示す概略図である。図10および図11を参照して、これら比較例では、バスバー31および端子部18の間に隙間52を設けることなく、端子部18およびバスバー31を重ね合わせ、上記の実施例と同様に、端子部18に対してバスバー31を溶接した。その結果、端子部18およびバスバー31の境界において、図10に示されるように、溶接部51に微小クラックが生じたり、図11に示されるように、ガスが抜けきらず、ブローホールが発生したりした。
【0056】
図5から図7を参照して、本実施の形態では、端子部18の第1対向面61と、バスバー31の第2対向面62との間に隙間52を設けることによって、隙間52に配置される中間溶接層58の最小幅Laが、バスバー31に設けられる第1溶接層56の最小幅Lbよりも大きい断面形状を有する溶接部51を設ける。この場合に、隙間52の大きさtを0.01mm以上とすることによって、バスバー31および端子部18の溶接時にバスバー31の溶融金属が隙間52に進入するスペースを十分に確保することができる。また、隙間52が貫通孔41を通じて外部に開放されているため、バスバー31および端子部18の溶接時に貫通孔41が空気の通路となって、バスバー31の溶融金属が隙間52に進入し易くなる。これらによって、中間溶接層58の最小幅Laが、第1溶接層56の最小幅Lbよりも大きい断面形状を有する溶接部51を容易に得ることができる。
【0057】
また、貫通孔41は、Z軸方向に見て円形のリング形状をなす溶接部51の中心軸110上で延びるため、貫通孔41に対する溶接部51の各部位の位置関係が、中心軸110の周方向において均一となる。これにより、中心軸110の周方向においてばらつきのない中間溶接層58の断面形状を得ることができる。
【0058】
また、隙間52が大きすぎる場合、隙間52に進入したバスバー31の溶融金属が第1対向面61上に落ち込むことで、溶接部51がバスバー31および端子部18の間で縁切れする現象が起こり得る。これに対して、隙間52の大きさをバスバー31の厚み以下とすることによって、このような現象を効果的に防ぐことができる。
【0059】
また、バスバー31には、隙間52を設けるための凹部46が設けられている。バスバー31は、凹部46が設けられた位置で薄肉となるため、バスバー31および端子部18の溶接時に、レーザ光Lの出力をより小さくしてバスバー31を溶融させることが可能となる。これにより、端子部18に対して高出力のレーザ光Lが照射されることを回避して、端子部18を適切に保護することができる。
【0060】
図12および図13は、図6中のバスバーの接続構造の変形例を示す断面図である。図12を参照して、本変形例では、隙間52を設けるための凹部46が端子部18に設けられている。凹部46は、頂面19から凹む凹形状をなしている。第2対向面62は、第2主面33の一部であり、第1対向面61は、凹部46の底面からなる。バスバー31には、第1主面32から凹む凹形状をなす凹部47が設けられている。なお、バスバー31に凹部46が設けられる場合、端子部18に凹部46が設けられる場合と比較して、凹部46を設けるための加工が容易である。
【0061】
図13を参照して、本変形例では、隙間52を設けるための凹部46として、バスバー31に第1凹部46Aが設けられ、端子部18に第2凹部46Bが設けられている。第1凹部46Aは、第2主面33から凹む凹形状をなしている。第2凹部46Bは、頂面19から凹む凹形状をなしている。第2対向面62は、第1凹部46Aの底面からなり、第1対向面61は、第2凹部46Bの底面からなる。
【0062】
図14および図15は、図3および図4中のバスバーの変形例を示す斜視図である。図14を参照して、本変形例では、バスバー31に、凹部46に替わって、隙間52を設けるための複数の突出部81が設けられている。突出部81は、第2主面33から突出している。複数の突出部81は、互いに間隔を開けて、貫通孔41の周りに設けられている。図15を参照して、本変形例では、バスバー31に、凹部46に替わって、隙間52を設けるための突条部86が設けられている。突条部86は、第2主面33から突出している。突条部86は、貫通孔41の周りで環状に延びている。
【0063】
これら変形例においては、突出部81または突条部86の先端部が端子部18の頂面19に当接することによって、バスバー31および端子部18の間に隙間52が設けられる。
【0064】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
11 電池セル、12 外装体、13 第1側面、14 第2側面、15,19 頂面、16 底面、17 ガス排出弁、18 端子部、18N 負極端子、18P 正極端子、20 接着剤、21 ケース体、23 ケース本体、24 ケース頂部、31 バスバー、32 第1主面、33 第2主面、41 貫通孔、46,47 凹部、46A 第1凹部、46B 第2凹部、51 溶接部、51p 先端部、52 隙間、56 第1溶接層、57 第2溶接層、58 中間溶接層、61 第1対向面、62 第2対向面、71 レーザヘッド、81 突出部、86 突条部、100 電池パック、110 中心軸、120A 第3深さ位置、120B 第1深さ位置、120C 第2深さ位置、120D 第4深さ位置、210 平面。
図1
図2
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図7
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図10
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図15