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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129901
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】溶接式管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 13/02 20060101AFI20230912BHJP
   F16L 41/02 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
F16L13/02
F16L41/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034238
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山本 竜平
【テーマコード(参考)】
3H013
3H019
【Fターム(参考)】
3H013BA08
3H019AA04
3H019BA04
3H019BD03
3H019DA03
3H019GA01
(57)【要約】
【課題】通路内を流れる流体の圧力に対して十分な肉厚を有し、かつ小型化された溶接式管継手を提供する。
【解決手段】溶接式管継手1は、軸心Bを有する軸体2と、軸方向通路3と、一端が軸方向通路3に連通すると共に他端が軸体2の外周面に開口する径方向通路4とを有し、軸体2には、軸方向通路3に接続された流体管路、および径方向通路4に接続された他の流体管路が溶接される。軸体2のうち径方向通路4が開口する部位には、軸方向通路3に対して平行な平坦面5が設けられ、軸方向通路3の中心Cは、軸心Bに対して平坦面5から離れる方向に偏心している。これにより、軸体2に平坦面5を形成した場合でも、軸体2の外径寸法φAを増大させることなく、軸体2の一側端面2Bおよび他側端面2Cに開口した軸方向通路3の周囲に、水素ガスの圧力に対応できるだけの十分な肉厚を確保することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心を有する軸体と、
前記軸体の軸方向に貫通した第1の通路と、
前記軸体に形成され、一端が前記第1の通路に連通すると共に他端が前記軸体の外周面に開口する第2の通路と、を有し、
前記軸体には、前記第1の通路に接続された流体管路および前記第2の通路に接続された他の流体管路が溶接される溶接式管継手において、
前記軸体の外周面のうち前記第2の通路の他端が開口する部位には、前記第1の通路に対して平行な平坦面が設けられ、
前記第1の通路の中心は、前記軸体の軸心に対して前記平坦面から離れる方向に偏心していることを特徴とする溶接式管継手。
【請求項2】
前記第2の通路に接続される前記他の流体管路の外周面と前記平坦面との間には環状の溶接部が形成され、
前記平坦面は、前記環状の溶接部が収まる大きさに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の溶接式管継手。
【請求項3】
前記平坦面は、前記軸体の長さ方向の全域に亘って形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の溶接式管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば水素ガス等の高圧な流体が流れる複数の流体管路間を接続する溶接式管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流体が流れる複数の流体管路間を接続する管継手として、溶接式管継手(三方接続管)が開示されている。この溶接式管継手の内部にはT字型に分岐した3本の通路が形成され、これら3本の通路にそれぞれ1本づつ(合計3本)流体管路が接続されている。これら3本の流体管路と溶接式管継手との接続部には、それぞれの流体管路の全周に亘って溶接が施されている。これにより、流体管路と溶接式管継手との接続部には、環状の溶接部(溶接ビード)が形成され、流体の漏れが防止されている。
【0003】
ここで、蓄圧器に貯留された高圧な燃料ガスを、充填ノズルを通じて車両の燃料タンク等に充填する燃料ガス充填装置が知られている。例えば燃料ガスとして水素ガスを供給する水素ディスペンサでは、蓄圧器と充填ノズルとの間に接続された複数の流体管路内を高圧(例えば、70MPa以上)な水素ガスが流れる。このため、複数の流体管路間を溶接式管継手を用いて接続する場合には、溶接式管継手の肉厚を水素ガスの圧力に耐えられる大きさに設定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4-138534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶接式管継手の内部に形成された通路に流体管路を接続する場合には、通常、流体管路の外径寸法に対応する取付穴を溶接式管継手に形成し、この取付穴に流体管路を挿入した状態で、流体管路の外周面と溶接式管継手との間に環状の溶接部を形成する。このため、溶接式管継手のうち取付穴の周囲の肉厚を大きく確保することにより、全体的に溶接式管継手が大型化してしまうという問題がある。しかも、流体管路と溶接式管継手との間に形成される環状の溶接部の強度を大きくするため、当該溶接部の脚長は十分な長さを確保する必要があり、かつ、流体管路の周囲に環状に形成された溶接ビードを、ほぼ均等な断面形状とする必要がある。
【0006】
本発明の一実施形態の目的は、通路内を流れる流体の圧力に対して十分な肉厚を有し、かつ小型化を図ることができるようにした溶接式管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、軸心を有する軸体と、前記軸体の軸方向に貫通した第1の通路と、前記軸体に形成され、一端が前記第1の通路に連通すると共に他端が前記軸体の外周面に開口する第2の通路と、を有し、前記軸体には、前記第1の通路に接続された流体管路および前記第2の通路に接続された他の流体管路が溶接される溶接式管継手において、前記軸体の外周面のうち前記第2の通路の他端が開口する部位には、前記第1の通路に対して平行な平坦面が設けられ、前記第1の通路の中心は、前記軸体の軸心に対して前記平坦面から離れる方向に偏心している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、溶接式管継手は、通路内を流れる流体の圧力に対して十分な肉厚を有し、かつ小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態による溶接式管継手を、接続される複数の流体管路と共に示す分解斜視図である。
図2】溶接式管継手を示す断面図である。
図3】溶接式管継手を図2中の矢示III-III方向から見た側面図である。
図4】溶接式管継手に複数の流体管路を接続した状態を示す断面図である。
図5】比較例による溶接式管継手を示す断面図である。
図6】比較例による溶接式管継手を図5中の矢示VI-VI方向から見た側面図である。
図7】変形例による溶接式管継手を示す断面図である。
図8】流体管路の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態による溶接式管継手について、添付図面に従って説明する。
【0011】
図1ないし図4において、溶接式管継手1は、例えば水素ディスペンサを構成する複数の流体管路のうち3本の流体管路を互いに接続するために用いられる。
【0012】
ここで、水素ディスペンサは、高圧な水素ガスを貯留する蓄圧器、蓄圧器から吐出した水素ガスを車両の燃料タンク等に充填する充填ノズル、燃料タンク等に充填される水素ガスの流量を計測する計量機、蓄圧器から充填ノズルに供給される水素ガスの圧力を検出する圧力センサ等の各種の機器類(いずれも図示せず)を含んで構成されている。水素ディスペンサを構成する各種の機器類には、高圧な水素ガスが流れる流体管路が接続されている。
【0013】
溶接式管継手1は、例えば蓄圧器に接続された蓄圧器用流体管路10と、計量機に接続された計量機用流体管路11と、圧力センサに接続されたセンサ用流体管路12とに、それぞれ溶接によって接続されている。これら蓄圧器用流体管路10、計量機用流体管路11、センサ用流体管路12は、それぞれ水素ガスの圧力に対応した肉厚な鋼管等を用いて形成され、溶接式管継手1を介して相互に接続される。溶接式管継手1は、例えば円形の断面形状を有する円柱状の素材を用いて形成され、軸体2と、軸方向通路3と、径方向通路4と、平坦面5とを含んで構成されている。
【0014】
軸体2は、溶接式管継手1のベースを構成している。軸体2は、外径寸法φAを有する円柱状の素材の外周面を平坦に切削することにより、後述する平坦面5と、円弧状の断面形状を有する円弧面2Aと、軸方向(長さ方向)の一側に位置する一側端面2Bと、軸方向の他側に位置する他側端面2Cとを含んで構成されている。軸体2は軸心Bを有し、円弧面2Aは軸心Bを中心とした断面円弧状の湾曲面となっている。軸体2の一側端面2Bおよび他側端面2Cは、軸心Bに対して直交する平坦な端面となっている。
【0015】
第1の通路としての軸方向通路3は、軸体2の内部に設けられ、軸体2を軸方向に貫通している。軸方向通路3は、軸方向の中間部に位置する中間通路部3Aと、軸方向通路3の一端側に位置し軸体2の一側端面2Bに開口する一側管路挿入穴3Bと、軸方向通路3の他端側に位置し軸体2の他側端面2Cに開口する他側管路挿入穴3Cとにより構成されている。中間通路部3Aの内径寸法は、蓄圧器用流体管路10および計量機用流体管路11の内径寸法と等しく設定されている。
【0016】
一側管路挿入穴3Bの内径寸法は、蓄圧器用流体管路10の外径寸法よりも僅かに大きく設定されている。他側管路挿入穴3Cの内径寸法は、計量機用流体管路11の外径寸法よりも僅かに大きく設定されている。軸方向通路3の中間通路部3Aと一側管路挿入穴3Bとの境界部には、環状段部3Dが形成され、中間通路部3Aと他側管路挿入穴3Cとの境界部には、環状段部3Eが形成されている。
【0017】
図3に示すように、軸方向通路3の中心(孔中心)Cは、軸体2の軸心Bに対し、平坦面5から離れる方向に偏心量Dをもって偏心している。従って、軸方向通路3は、軸体2の軸心Bから偏心量Dだけ離れた位置を中心Cとする貫通孔として形成され、軸心Bと平行して軸方向に延びている。
【0018】
第2の通路としての径方向通路4は、軸方向通路3と直交して軸体2の内部に設けられている。径方向通路4の一端は、軸方向通路3の中間通路部3Aに開口し、径方向通路4の他端は平坦面5に開口している。平坦面5に開口した径方向通路4の他端側には、管路挿入穴4Aが形成されている。径方向通路4は、例えば軸体2の長さ方向の中間部に配置され、管路挿入穴4Aの周囲には、水素ガスの圧力に対応できるだけの肉厚が確保されている。管路挿入穴4Aの内径寸法は、センサ用流体管路12の外径寸法よりも僅かに大きく設定されている。径方向通路4と管路挿入穴4Aとの境界部には、環状段部4Bが形成されている。
【0019】
平坦面5は、軸体2の外周面に設けられ、軸体2の一部を構成している。平坦面5は、軸体2の外周面のうち径方向通路4が開口する部位を切削することにより、一定の幅寸法Eを有し、かつ、軸体2の長さ方向(軸方向)の全域に亘る長方形の面として形成されている。そして、平坦面5は、軸方向通路3および軸体2の軸心Bに対して平行に延びている。
【0020】
ここで、軸体2の径方向通路4にセンサ用流体管路12を接続したときには、図4に示すように、センサ用流体管路12と軸体2との間に溶接を施す。これにより、センサ用流体管路12の外周面と軸体2との間に、全周に亘って環状の溶接部(溶接ビード)6が形成される。このため、軸体2とセンサ用流体管路12とが強固に接合され、水素ガスの漏れが抑えられる。この場合、センサ用流体管路12と軸体2との接合強度を高めるためには、溶接部6の脚長を十分に確保し、かつ、センサ用流体管路12の周囲に形成される溶接部6の断面形状を均一にする必要がある。
【0021】
これに対し、実施形態では、軸体2の外周面のうち径方向通路4が開口する部位に、軸方向通路3に対して平行に延びる平坦面5が設けられている。これにより、径方向通路4に接続したセンサ用流体管路12の外周面と平坦面5との間に溶接を施したときに、センサ用流体管路12の周囲に均一な断面形状を有する環状の溶接部6が形成され、かつ溶接部6の脚長を十分に確保することができる構成となっている。このため、平坦面5は、センサ用流体管路12との間に形成された環状の溶接部6が収まるだけの大きさに設定されている。
【0022】
一方、軸体2に平坦面5を形成することにより、軸体2の軸心Bから平坦面5までの距離(径方向寸法)Fは、軸体2の半径寸法よりも小さくなる(図3参照)。このため、仮に軸心Bと同心上に軸方向通路3と同等な軸方向通路を形成した場合には、軸体2の一側端面2Bに開口する一側管路挿入穴3Bと平坦面5との間、および他側端面2Cに開口する他側管路挿入穴3Cと平坦面5との間に、水素ガスの圧力に対応できるだけの肉厚を確保することができない。
【0023】
これに対し、実施形態では、軸方向通路3の中心Cを、軸体2の軸心Bに対して平坦面5から離れる方向に偏心量Dだけ偏心させ、かつ、軸心Bを通って平坦面5と直交する仮想線G-G上に設定している。言い換えれば、実施形態では、仮想線G-G上における軸方向通路3の内壁と平坦面5までの最短距離(軸体2の肉厚)と、仮想線G-G上における軸方向通路3の内壁と軸体2の下側の円弧面2Aまでの最短距離(軸体2の肉厚)とは同一の肉厚とされるように、軸方向通路3が形成されている。これにより、軸体2の径方向通路4に接続されるセンサ用流体管路12と軸体2との溶接による接合強度を高めるため、軸体2に平坦面5を形成した場合でも、軸体2の一側端面2Bに開口した軸方向通路3の一側管路挿入穴3B、および他側端面2Cに開口した他側管路挿入穴3Cの周囲に、水素ガスの圧力に対応できるだけの十分な肉厚を確保することができる構成となっている。
【0024】
実施形態による溶接式管継手1は、上述の如き構成を有するもので、水素ディスペンサを構成する複数の流体管路のうち、例えば蓄圧器に接続された蓄圧器用流体管路10と、計量機に接続された計量機用流体管路11と、圧力センサに接続されたセンサ用流体管路12とを相互に接続するために用いられる。
【0025】
軸体2の径方向通路4にセンサ用流体管路12を接続するときには、径方向通路4の管路挿入穴4Aにセンサ用流体管路12を挿入し、センサ用流体管路12の先端を環状段部4Bに当接させる。この状態で、センサ用流体管路12の外周面と軸体2の平坦面5との間に全周に亘って溶接を施す。これにより、センサ用流体管路12の周囲に環状の溶接部(溶接ビード)6を形成することができる。
【0026】
このように、径方向通路4(管路挿入穴4A)が開口する軸体2の外周面には、平坦面5が形成されている。このため、平坦面5とセンサ用流体管路12との間に形成される溶接部6は、均一な断面形状を有し、かつ十分な脚長を有している。この結果、軸体2とセンサ用流体管路12との接合強度を高めることができ、両者間の接合部からの水素ガスの漏れ等を防止することができる。なお、センサ用流体管路12は溶接時に膨張するため、管路挿入穴4Aおよび環状段部4Bとセンサ用流体管路12との間には、予め適度な隙間を形成しておくことが望ましい。
【0027】
軸体2の軸方向通路3に蓄圧器用流体管路10を接続するときには、一側管路挿入穴3Bに蓄圧器用流体管路10を挿入し、蓄圧器用流体管路10の先端を環状段部3Dに当接させる。この状態で、蓄圧器用流体管路10の外周面と軸体2の一側端面2Bとの間に全周に亘って溶接を施す。これにより、蓄圧器用流体管路10の周囲に環状の溶接部7を形成することができる。軸体2の一側端面2Bは、軸心Bに対して直交した平坦な端面となっている。従って、一側端面2Bと蓄圧器用流体管路10との間に形成される溶接部7は、均一な断面形状を有し、かつ十分な脚長を有しているため、軸体2と蓄圧器用流体管路10との接合強度を高めることができる。なお、蓄圧器用流体管路10は溶接時に膨張するため、一側管路挿入穴3Bおよび環状段部3Dと蓄圧器用流体管路10との間には、予め適度な隙間を形成しておくことが望ましい。
【0028】
軸体2の軸方向通路3に計量機用流体管路11を接続するときには、他側管路挿入穴3Cに計量機用流体管路11を挿入し、計量機用流体管路11の先端を環状段部3Eに当接させる。この状態で、計量機用流体管路11の外周面と軸体2の他側端面2Cとの間に全周に亘って溶接を施す。これにより、計量機用流体管路11の周囲に環状の溶接部8を形成することができる。軸体2の他側端面2Cは、軸心Bに対して直交した平坦な端面となっている。従って、他側端面2Cと計量機用流体管路11との間に形成される溶接部8は、均一な断面形状を有し、かつ十分な脚長を有しているため、軸体2と計量機用流体管路11との接合強度を高めることができる。なお、計量機用流体管路11は溶接時に膨張するため、他側管路挿入穴3Cおよび環状段部3Eと計量機用流体管路11との間には、予め適度な隙間を形成しておくことが望ましい。
【0029】
実施形態では、軸方向通路3の中心Cが、軸体2の軸心Bに対して平坦面5から離れる方向に偏心(偏心量D)している。このため、軸体2の径方向通路4に接続されるセンサ用流体管路12と軸体2との溶接による接合強度を高めるため、軸体2に平坦面5を形成した場合でも、軸体2の一側端面2Bに開口した軸方向通路3の一側管路挿入穴3B、および他側端面2Cに開口した他側管路挿入穴3Cの周囲に、水素ガスの圧力に対応できるだけの十分な肉厚を確保することができる。
【0030】
次に、実施形態による溶接式管継手1と、図5および図6に示す比較例による溶接式管継手101との比較について説明する。
【0031】
比較例による溶接式管継手101は、実施形態による溶接式管継手1と同様に、円柱状の素材を用いて形成され、軸心B′を有する軸体102と、軸体102の内部に形成された軸方向通路103および径方向通路104と、軸体102の外周面に形成された平坦面105とを含んで構成されている。
【0032】
軸体102は、円弧面102Aと、一側端面102Bと、他側端面102Cと、平坦面105とを有している。軸方向通路103は、中間通路部103Aと、軸体102の一側端面102Bに開口した大径な一側管路挿入穴103Bと、軸体102の他側端面102Cに開口した大径な他側管路挿入穴103Cとを有している。径方向通路104は、一端が軸方向通路103の中間通路部103Aに開口すると共に他端が平坦面105に開口し、他端側には大径な管路挿入穴104Aが形成されている。平坦面105は、軸体102の外周面のうち径方向通路104が開口する部位を切削することにより、実施形態による溶接式管継手1と同等な幅寸法E′を有している。
【0033】
ここで、比較例による溶接式管継手101は、軸方向通路103が、軸体102の軸心B′と同心上に形成されている。即ち、軸方向通路103の中心は、軸体102の軸心B′に一致している。このように、平坦面105が形成された軸体102の軸心B′と同心上に軸方向通路103を形成した場合には、軸方向通路103の一側管路挿入穴103Bおよび他側管路挿入穴103Cの周囲に水素ガスの圧力に対応できる肉厚を確保するため、軸体102の外径寸法φA′を、実施形態による溶接式管継手1を構成する軸体2の外径寸法φAよりも大きくする必要がある(φA′>φA)。従って、比較例による溶接式管継手101は、水素ディスペンサを構成する複数の流体管路(例えば、蓄圧器用流体管路10、計量機用流体管路11、センサ用流体管路12)間を、水素ガスの圧力に対応した状態で接続することができるものの、実施形態による溶接式管継手1に比較して大型化してしまう。
【0034】
かくして、実施形態による溶接式管継手1は、軸心Bを有する軸体2と、軸体2の軸方向に貫通した軸方向通路3と、軸体2に形成され、一端が軸方向通路3に連通すると共に他端が軸体2の外周面に開口する径方向通路4と、を有し、軸体2には、軸方向通路3に接続された蓄圧器用流体管路10と計量機用流体管路11、および径方向通路4に接続されたセンサ用流体管路12が溶接される。そして、軸体2の外周面のうち径方向通路4の他端が開口する部位には、軸方向通路3に対して平行な平坦面5が設けられ、軸方向通路3の中心Cは、軸体2の軸心Bに対して平坦面5から離れる方向に偏心している。
【0035】
このように、軸体2の外周面のうち径方向通路4の他端が開口する部位に、軸方向通路3に対して平行な平坦面5が設けられることにより、径方向通路4に接続したセンサ用流体管路12の外周面と平坦面5との間に溶接を施したときに、センサ用流体管路12の周囲に均一な断面形状を有する環状の溶接部6を形成し、かつ溶接部6の脚長を十分に確保することができる。この結果、軸体2とセンサ用流体管路12との接合強度を高め、両者の接合部から高圧な水素ガスが漏れるのを防止することができる。
【0036】
また、軸方向通路3の中心Cが、軸体2の軸心Bに対して平坦面5から離れる方向に偏心量Dだけ偏心していることにより、軸体2の径方向通路4に接続されるセンサ用流体管路12と軸体2との溶接による接合強度を高めるため、軸体2に平坦面5を形成した場合でも、軸体2の外径寸法φAを増大させることなく、軸体2の一側端面2Bに開口した軸方向通路3の一側管路挿入穴3B、および他側端面2Cに開口した他側管路挿入穴3Cの周囲に、水素ガスの圧力に対応できるだけの十分な肉厚を確保することができる。この結果、実施形態による溶接式管継手1は、蓄圧器用流体管路10、計量機用流体管路11、センサ用流体管路12等を流れる高圧な水素ガスの圧力に対して十分な肉厚を有し、かつ、全体形状を可及的に小型化することができる。
【0037】
また、溶接式管継手1は、径方向通路4に接続されるセンサ用流体管路12の外周面と平坦面5との間には環状の溶接部6が形成され、平坦面5は、環状の溶接部6が収まる大きさに設定されている。これにより、センサ用流体管路12の周囲に、均一な断面形状を有し、かつ十分な脚長を有した環状の溶接部6を形成することができる。この結果、軸体2とセンサ用流体管路12との接合強度を高めることができ、両者間の接合部からの水素ガスの漏れ等を確実に防止することができる。
【0038】
さらに、溶接式管継手1の平坦面5は、軸体2の長さ方向の全域に亘って形成されている。これにより、径方向通路4を、管路挿入穴4Aの周囲に水素ガスの圧力に耐え得る肉厚が確保できる範囲で、軸体2の長さ方向において自由な位置に配置することができる。
【0039】
なお、実施形態では、軸方向通路3を構成する中間通路部3Aと一側管路挿入穴3Bとの境界部に環状段部3Dを設け、中間通路部3Aと他側管路挿入穴3Cとの境界部に環状段部3Eを設けると共に、径方向通路4と管路挿入穴4Aとの境界部に環状段部4Bを設けている。そして、蓄圧器用流体管路10の挿入量を環状段部3Dによって規制し、計量機用流体管路11の挿入量を環状段部3Eによって規制し、センサ用流体管路12の挿入量を環状段部4Bによって規制する構成を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図7および図8に示す変形例のような溶接式管継手21として構成してもよい。
【0040】
変形例による溶接式管継手21は、実施形態による溶接式管継手1と同様に、軸体2と、軸方向通路3′と、径方向通路4′と、平坦面5とを含んで構成されている。軸方向通路3′は、実施形態による一側管路挿入穴3Bおよび他側管路挿入穴3Cを有しておらず、蓄圧器用流体管路10および計量機用流体管路11の外径寸法と同等な内径寸法を有している。径方向通路4′は、実施形態による管路挿入穴4Aを有しておらず、センサ用流体管路12の外径寸法と同等な内径寸法を有している。
【0041】
図7に示す変形例では、蓄圧器用流体管路10、計量機用流体管路11、センサ用流体管路12の挿入量を規制する手段がない。この場合には、蓄圧器用流体管路10および計量機用流体管路11を、軸方向通路3′に適度に挿入した状態で軸体2に溶接し、センサ用流体管路12を、径方向通路4′に適度に挿入した状態で軸体2に溶接する構成としてもよい。
【0042】
図8に示す変形例では、蓄圧器用流体管路10′の外周側に大径なフランジ10A′が設けられ、計量機用流体管路11′の外周側に大径なフランジ11A′が設けられ、センサ用流体管路12′の外周側に大径なフランジ12A′が設けられている。このように、フランジ10A′,11A′,12A′によって、蓄圧器用流体管路10′、計量機用流体管路11′、センサ用流体管路12′の挿入量を規制する構成としてもよい。
【0043】
また、実施形態では、軸体2の素材として円形の断面形状を有する円柱状の素材を用いた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば楕円形、あるいは多角形の断面形状を有する素材を用いて軸心を有する軸体を形成してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1,21 溶接式管継手
2 軸体
3,3′ 軸方向通路(第1の通路)
4,4′ 径方向通路(第2の通路)
5 平坦面
6 溶接部
10,10′ 蓄圧器用流体管路(流体管路)
11,11′ 計量機用流体管路(流体管路)
12,12′ センサ用流体管路(他の流体管路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8