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2023-129903樹脂粒子及びその製造方法、トナー、トナー収容ユニット、並びに、画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129903
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】樹脂粒子及びその製造方法、トナー、トナー収容ユニット、並びに、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20230912BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20230912BHJP
   G03G 9/093 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/08 381
G03G9/093
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034242
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】長友 庸泰
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 純一
(72)【発明者】
【氏名】溝口 由花
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 甲介
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500BA09
2H500BA11
2H500BA17
2H500CA06
2H500CA44
2H500EA42B
2H500EA43B
2H500EA44B
2H500EA60A
2H500EA62B
(57)【要約】
【課題】環境負荷が少なく、バイオマス由来樹脂を使用しても低温定着性及び耐フィルミング性に優れる樹脂粒子の提供。
【解決手段】少なくとも結着樹脂を含有する樹脂粒子であって、前記結着樹脂が、バイオマス由来樹脂及びポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートを含有し、前記バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aと、前記ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートの含有量Bとが、A>Bを満たし、前記樹脂粒子が、シェル層及びコア層からなるコアシェル構造を有し、前記シェル層の平均厚さが100nm~500nmである樹脂粒子である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂を含有する樹脂粒子であって、
前記結着樹脂が、バイオマス由来樹脂及びポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートを含有し、
前記バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aと、前記ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートの含有量Bとが、A>Bを満たし、
前記樹脂粒子が、シェル層及びコア層からなるコアシェル構造を有し、
前記シェル層の平均厚さが100nm~500nmであることを特徴とする樹脂粒子。
【請求項2】
前記シェル層が、前記バイオマス由来樹脂を含有しない結着樹脂からなる、請求項1に記載の樹脂粒子。
【請求項3】
前記シェル層の平均厚さが200nm~300nmである、請求項1から2のいずれかに記載の樹脂粒子。
【請求項4】
前記樹脂粒子の全質量に対する、前記バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aと、前記ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートの含有量Bとの合計含有量[A+B]が、35質量%以上である、請求項1から3のいずれかに記載の樹脂粒子。
【請求項5】
前記樹脂粒子の全質量に対する前記バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aが、25質量%~35質量%である、請求項4に記載の樹脂粒子。
【請求項6】
前記樹脂粒子の放射性炭素同位体14C濃度が、10.8pMC以上である、請求項1から5のいずれかに記載の樹脂粒子。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の樹脂粒子の製造方法であって、
バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aと、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートの含有量BとがA>Bを満たすように、前記バイオマス由来樹脂及び前記ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートを含有する結着樹脂を有機溶媒に溶解又は分散させた油相を調製する工程と、
前記油相に水相を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相乳化させる工程と、
前記水中油型分散液中の微粒子を凝集させた凝集粒子を調製する工程と、
前記凝集粒子に、シェル層及びコア層からなるコアシェル構造を有するように、かつ前記シェル層の平均厚さが100nm~500nmとなるようにシェル層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の樹脂粒子を含有することを特徴とするトナー。
【請求項9】
請求項8に記載のトナーを収容することを特徴とするトナー収容ユニット。
【請求項10】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成するトナーを備える現像手段と、
を有し、
前記トナーが、請求項8に記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子及びその製造方法、トナー、トナー収容ユニット、並びに、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トナーには環境への負荷低減が求められている。その対応として、例えば、トナー自体の低温定着性向上による消費電力の低減、製造でのエネルギー削減、結着樹脂におけるバイオマス(植物)由来樹脂の採用などが検討されている。また、近年、人口の増加に伴いエネルギーの使用が拡大し、資源の枯渇化に伴って、省資源、省エネルギー、及び資源のリサイクルなどの必要性が重要視され始めている。ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)製のボトルは、各自治体がリサイクルを実施し、各種衣類や容器に利用され始めている。そのため、リサイクルPET又はリサイクルPBTの再利用を可能とする新規用途開発の要望も高い。
【0003】
そのような観点から、リサイクルPET又はリサイクルPBTを原料として、トナー用結着樹脂を製造し、これを含有させたトナー(リサイクルトナー)が知られている。例えば、バイオベースであり、かつ以前の他の目的製品から再利用され、かつトナー用に再生された持続性内容物を少なくとも約70%含む、バイオベースのポリエステルと、脱重合された再生プラスチックを含むポリオールと、任意のワックスと、任意の着色剤とを含むトナー樹脂が提案されている(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、環境負荷が少なく、バイオマス由来樹脂を使用しても低温定着性及び耐フィルミング性に優れる樹脂粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の樹脂粒子は、少なくとも結着樹脂を含有する樹脂粒子であって、前記結着樹脂が、バイオマス由来樹脂及びポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートを含有し、前記バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aと、前記ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートの含有量Bとが、A>Bを満たし、前記樹脂粒子が、シェル層及びコア層からなるコアシェル構造を有し、前記シェル層が、前記シェル層の平均厚さが100nm~500nmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、環境負荷が少なく、バイオマス由来樹脂を使用しても低温定着性及び耐フィルミング性に優れる樹脂粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明のトナー収容ユニットとしてのプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
図2図2は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図3図3は、本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図4図4は、本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図5図5は、図4の部分拡大図である。
図6図6は、本発明の樹脂粒子の断面のTEM画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(樹脂粒子)
本発明の樹脂粒子は、少なくとも結着樹脂、を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
前記結着樹脂は、バイオマス由来樹脂及びポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートを含有し、前記バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aと、前記ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートの含有量Bとは、A>Bを満たす。
また、前記樹脂粒子は、シェル層及びコア層(「コア部」とも称する)からなるコアシェル構造を有し、前記シェル層が、前記シェル層の平均厚さが100nm~500nmである。
【0009】
本明細書において、「シェル層」とは、前記樹脂粒子の最外層に存在する層を意味し、「コア層」とは、前記シェル層を除く樹脂粒子内の領域を意味し、「コアシェル構造を有する」とは、前記コア層と前記シェル層とを有する構造を意味する。
前記コア層と前記シェル層とは、互いに完全には相溶せずに不均質に形成されてなる。
前記コアシェル構造において、前記コア層の表面は、前記シェル層によって被覆された形態であることが好ましい。
前記コアシェル構造において、前記コア層の表面は、前記シェル層によって完全に被覆されていてもよく、前記シェル層によって完全に被覆されていなくてもよい。前記コア層の表面が前記シェル層によって完全に被覆されていない形態としては、例えば、前記コア層が前記シェル層に網目状に被覆されている形態、前記コア層が部分的に前記シェル層から露出した形態などが挙げられる。これらの中でも、耐フィルミング性の点から、前記コア層の表面が、前記シェル層によって完全に被覆されていることが好ましい。
【0010】
近年、前記バイオマス由来樹脂を含め、環境対応性を高めながらトナーとしての機能を向上させることが強く求められている。しかしながら、離型剤以外の構成、例えば結着樹脂によりトナーのバイオマス度を高めると、非晶質樹脂の溶解パラメーターと、結晶性樹脂の溶解パラメーターとの差の絶対値ΔSP値が上昇することにより相溶性が悪化し、低温定着性が悪化することがある。更に、石油系樹脂は、その構成モノマーに芳香環骨格を有するものが多く、機械的強度を得やすいが、前記バイオマス由来樹脂は、その構成モノマーに芳香環骨格を有しないため、所望の機械的強度を得難く、前記樹脂粒子をトナーに用いた場合は、感光体フィルミングが発生することがある。したがって、再生可能資源を使用し、環境対応性を高めることと、トナー特性として求められる低温定着性及び耐フィルミング性とを同時に満たすことは難しいという問題があった。
【0011】
前記問題に対し、本発明者らは、鋭意検討し、前記樹脂粒子に、バイオマス由来樹脂に加え、芳香環骨格を有するポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)を導入することで、前記バイオマス由来樹脂による機械的強度を補強することが可能であること、したがって、前記樹脂粒子は、環境負荷を低減することができ、かつ、該樹脂粒子の機械的強度にも優れるため、耐フィルミング性に優れるものであることを見出し、環境負荷低減と実用性を両立した樹脂粒子の発明に至った。
【0012】
以下、本発明に係る樹脂粒子について説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、又は削除などの当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用及び効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0013】
<<放射性炭素同位体14C濃度>>
前記樹脂粒子の放射性炭素同位体14C濃度(以下、「14C濃度」と称することがある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10.8pMC以上が好ましく、20.0pMC以上がより好ましく、30.0pMC以上が更に好ましい。前記樹脂粒子の放射性炭素同位体14C濃度が、10.8pMC以上であると、一般的に後述するバイオマス度が高いと認知されやすく、環境への負荷低減を実現できる。
【0014】
前記14C濃度は、自然界(大気中)に存在し、植物内が活動している間は光合成によって取り込まれ、大気中に存在する14C濃度と平衡(107.5pMC)となっている。しかし、生物が生命活動を停止した段階から光合成による取り込みが停止し、14Cの半減期である5,730年に従い該14C濃度は減少する。生物を源とする化石資源は、生命活動停止から数万年~数億年を経過しているため、前記14C濃度は殆ど検出されない。
【0015】
ここで、「pMC」とは、パーセントモダンカーボン(percent Modern Carbon)の略であり、1950年のバイオマス中の14Cと12Cとの比(14C/12C)を100pMCと定義したものである。
【0016】
前記14C濃度は、下記式(1)で算出されるバイオマス度としても表すことができる。
バイオマス度(%)=14C濃度(pMC)/107.5×100 ・・・ 式(1)
【0017】
前記14C濃度が10.8pMC以上であるとは、前記バイオマス度が10%以上であることを意味しており、これはカーボンニュートラルの観点からも要望される濃度である。
【0018】
トナーなどにおいては、植物由来のワックスが使用されることがあるが、前記樹脂粒子の前記14C濃度を10.8pMC以上とする、即ち、前記バイオマス度を10%以上とするためには、前記樹脂粒子中にワックスを含有させるだけでは達成することができず、結着樹脂についてもバイオマス化を考慮する必要があり、この点が本発明を構成する上で重要な点である。
【0019】
前記14C濃度の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、放射性炭素年代測定法が特に好ましい。
前記放射性炭素年代測定法の測定手順としては、前記樹脂粒子を燃焼させ、そのCO(二酸化炭素)を還元し、C(グラファイト)を得る。該グラファイトの14C濃度を加速器質量分析装置(AMS:Accelerator Mass Spectroscopy)によって計測する。このAMSによる測定は、例えば、特許第4050051号などに開示されている。
【0020】
<結着樹脂>
前記結着樹脂は、バイオマス由来樹脂及びポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートを含有する。
【0021】
<<ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレート>>
前記ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)は、主に、機械的強度の向上による耐フィルミング性の向上のために含有される。前記PET又はPBTは、前記樹脂粒子の前記コア層に含まれることが好ましい。
【0022】
なお、PET及びPBTは、いずれも芳香族二酸と脂肪族ジオールとの反応によって形成される半芳香族ポリエステルである。具体的には、PETは、芳香環骨格を有し、前記脂肪族ジオールに由来する炭素数がC2の化合物である。また、PBTは、芳香環骨格を有し、前記脂肪族ジオールに由来する炭素数がC4の化合物である。このように、PET及びPBTは、その化学的性質が類似しているため、当該技術分野においては、PETで実施可能であることは、概ねPBTでも実施可能であることが周知慣用技術である。本発明の樹脂粒子においてもPETとPBTとは、代替可能なものであり、前記樹脂粒子においては、特にPET及びPBTにおける芳香環骨格が、該樹脂粒子の機械的強度の向上に有効である。
これらの中でも、前記脂肪族ジオールに由来する炭素数が小さい方が、前記樹脂粒子の機械的強度の向上の点でより好ましく、PETが特に好ましい。
【0023】
前記PET又はPBTとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記PET又はPBTのリサイクル品、オフスペックの繊維クズ、又はペレットを用いることができるが、環境負荷の低減の点から、リサイクル品(以下、「リサイクル樹脂」と称することがある)をフレーク状に加工したものであることが好ましい。
なお、本明細書において、前記バイオマス由来樹脂と、前記リサイクル樹脂とを併せて「環境対応樹脂」と称することがある。
【0024】
前記PET又はPBTの分子量分布、組成、製造方法、及び使用する際の形態などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記PET又はPBTの重量平均分子量(Mw)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30,000~100,000が好ましい。
【0025】
前記樹脂粒子中の前記PET又はPBTの含有量の分析方法及び算出方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、前記樹脂粒子からGPC等により分離を行い、その分離した各成分について後述の分析手法を採ることで、前記樹脂粒子の構成成分の質量比を算出することができる。また、反応試薬(10%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)/メタノール溶液)による300℃のGC/MSにより、前記樹脂構造中のエステル結合部をメチル化によるソフトな分解から主な構成成分を推定し、全イオン電流クロマトグラム(TICC)強度の検量線を引くことでも定量分析が可能である。
【0026】
前記PET又はPBTは、前記結着樹脂の合成時に導入する比率を調整することで、後述する環境対応比率や、前記樹脂粒子をトナーに適用した場合のトナー品質を調整することができる。
【0027】
前記PET又はPBTの含有量Bとしては、前記バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aと、前記PET又はPBTの含有量BとがA>Bを満たす限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、環境への負荷低減の点から、前記樹脂粒子の全質量に対して、5質量%~50質量%が好ましく、5質量%~20質量%がより好ましい。
【0028】
<<バイオマス由来樹脂>>
前記バイオマス由来樹脂とは、植物由来の化合物を原料として含む樹脂である。前記バイオマス由来樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、結晶性樹脂に含有されていてもよく、非晶質樹脂に含有されていてもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記バイオマス由来樹脂は、前記樹脂粒子の前記コア層に含まれる。
前記樹脂粒子において、前記結晶性樹脂や前記非晶質樹脂を構成するアルコール成分及び酸成分について、石油由来の成分と植物由来の成分(バイオマス由来成分)との比率を調整することで、後述する環境対応樹脂比率や、前記樹脂粒子をトナーに適用した場合のトナー品質を調整することができる。
【0029】
前記バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aとしては、該バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aと、前記ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートの含有量BとがA>Bを満たす限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、環境への負荷低減の点から、前記樹脂粒子の全質量に対して、20質量%~70質量%が好ましく、25質量%~35質量%がより好ましい。
【0030】
-バイオマス由来樹脂及びPET又はPBTの含有量-
前記バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aと、前記PET又はPBTの含有量Bとは、A>B(即ち、前記バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量は、前記PET又はPBTの含有量より多い)を満たす。前記バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aと、前記PET又はPBTの含有量Bとが、A=B又はA<Bである場合、所望の低温定着性が得られない。
【0031】
前記樹脂粒子の全質量に対する、前記バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aと、前記PET又はPBTの含有量Bとの合計含有量[A+B]としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、環境への負荷低減の点から、10質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましい。また、前記樹脂粒子の全質量に対する、前記バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aと、前記PET又はPBTの含有量Bとの合計含有量[A+B]の上限値としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、80質量%以下が好ましい。
【0032】
ここで、前記PET又はPBTとして、前記PET又はPBTリサイクル樹脂を用いた場合、前記バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aと、前記PET又はPBTの含有量Bとの合計含有量[A+B]は、前記環境対応樹脂の含有量(「環境対応樹脂比率」とも称する)となり得る。
【0033】
前記環境対応樹脂比率(質量%)は、下記式(2)により算出した値である。
環境対応樹脂比率(質量%)=バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量(A)+PET又はPBTの含有量(B)=バイオマス度+PET又はPBTの含有量(B) ・・・ 式(2)
但し、前記式(2)において、「バイオマス度」は、前記式(1)に基づき算出された値である。また、「バイオマス度」は、前記バイオマス由来樹脂の組成及び配合比率が既知である場合は、前記バイオマス由来樹脂の構成成分の配合量から算出することもできる。
【0034】
<<<結晶性樹脂>>>
前記樹脂粒子は、低温定着性向上のために、結晶性樹脂を含有することが好ましい。前記結晶性樹脂は、前記樹脂粒子の前記コア層に含まれることが好ましい。前記結晶性樹脂は、環境負荷を低減することができる点から、前記バイオマス由来樹脂を含有することが好ましい。
前記結晶性樹脂としては、結晶性を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ビニル樹脂、又は変性結晶性樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記結晶性樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0035】
-結晶性ポリエステル樹脂-
前記結晶性ポリエステル樹脂は、高い結晶性を持つために、定着開始温度付近において急激な粘度変化を示す熱溶融特性を示す。
このような特性を有する前記結晶性ポリエステル樹脂を非晶質樹脂と共に用いることで、良好な耐熱保存性と低温定着性とを兼ね備えた樹脂粒子が得られる。例えば、前記結晶性ポリエステル樹脂と、前記非晶質樹脂とを共に用いることにより、溶融開始温度直前までは結晶性による耐熱保存性がよく、溶融開始温度では前記結晶性ポリエステル樹脂の融解による急激な粘度低下(シャープメルト性)を起こし、それに伴い後述する非晶質ポリエステル樹脂Bと相溶し、共に急激に粘度低下することで良好に定着させることができる。
【0036】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコール(ポリオール)と、多価カルボン酸(ポリカルボン酸)又はその誘導体とから得ることができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記多価アルコール及び前記多価カルボン酸の少なくともいずれかにおいて、植物由来の化合物を使用することにより、前記結晶性ポリエステル樹脂を前記バイオマス由来樹脂とすることができる。
【0037】
前記多価カルボン酸の誘導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価カルボン酸無水物、又は多価カルボン酸エステルが挙げられる。
【0038】
なお、本明細書において、前記結晶性ポリエステル樹脂とは、前記多価アルコールと、前記多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えば、プレポリマー、並びに、該プレポリマーを架橋反応及び伸長反応の少なくともいずれかの反応をさせて得られる樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂には含まれない。
【0039】
--多価アルコール--
前記多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、又は3価以上のアルコールが挙げられる。
前記ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。
前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、直鎖飽和脂肪族ジオール、又は分岐飽和脂肪族ジオールが挙げられる。これらの中でも、前記飽和脂肪族ジオールとしては、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。前記飽和脂肪族ジオールが直鎖型であると、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が高く、融点が高くなる点で好ましい。なお、前記飽和脂肪族ジオールの炭素数が12を超えると、実用上の材料の入手が困難となる。
【0040】
前記飽和脂肪族ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、又は1,14-エイコサンデカンジオールが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、又は1,12-ドデカンジオールが好ましい。
【0041】
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又はペンタエリスリトールが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
--多価カルボン酸--
前記多価カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のカルボン酸、又は3価以上のカルボン酸が挙げられる。
前記2価のカルボン酸としては、例えば、飽和脂肪族ジカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸、若しくは、これらの無水物又はこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルが挙げられる。
前記飽和脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、又は1,18-オクタデカンジカルボン酸が挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、又はメサコニン酸が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記多価カルボン酸は、カーボンニュートラルの観点から、植物由来の炭素数が12以下の飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましく、植物由来の炭素数が4~12以下の飽和脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。
【0043】
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、又は1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、若しくは、これらの無水物又はこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
これらの中でも、前記結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数4~12の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸と、炭素数が2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールとから構成されることが好ましい。これにより、結晶性が高く、シャープメルト性に優れるため、優れた低温定着性を発揮できる。
【0045】
また、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性及び軟化点を制御する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル合成時にアルコール成分にグリセリン等の3価以上の多価アルコールや、酸成分に無水トリメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸を追加して縮重合を行った非線状ポリエステルなどを設計し、使用するなどの方法が挙げられる。
【0046】
前記結晶性樹脂の分子構造は、溶液や固体による核磁気共鳴分光法(NMR)による測定の他、X線回折、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)、液体クロマトグラフ分析(LC/MS)、又は赤外吸収分光法(IR)による測定方法により確認することができる。これらの中でも、IRで得られる赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1及び990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを結晶性樹脂として検出する方法が、簡便である。
【0047】
前記結晶性樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、分子量が高い成分が多いと耐熱保存性が良好であるという観点から、鋭意検討した結果、o-ジクロロベンゼンの可溶分のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分子量分布で、横軸をlog(M)、縦軸を重量%で表した分子量分布図のピーク位置が、3.5~4.0の範囲にあり、ピークの半値幅が1.5以下であり、以下の範囲であることが好ましい。
前記結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、3,000~30,000が好ましく、5,000~15,000がより好ましい。
前記結晶性樹脂の数平均分子量(Mn)としては、1,000~10,000が好ましく、2,000~10,000がより好ましい。
前記結晶性樹脂の分子量の比(Mw/Mn)としては、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
【0048】
前記結晶性樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記酸化の下限値としては、記録媒体と前記樹脂粒子との親和性の観点から、目的とする低温定着性を達成するために、5mgKOH/g以上が好ましく、転相乳化法による樹脂粒子の作製の点から、7mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、前記結晶性樹脂の酸価の上限値としては、ホットオフセット性を向上させる点から、45mgKOH/g以下であることが好ましい。
前記結晶性樹脂の酸価は、JIS K0070-1992に記載の測定方法に準拠して測定することができる。
【0049】
前記結晶性樹脂の水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、所定の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成する観点から、0mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~50mgKOH/gがより好ましい。
前記結晶性樹脂の水酸基価は、JIS K0070-1966に記載の測定方法に準拠して測定することができる。
【0050】
前記樹脂粒子における前記結晶性樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子100質量部に対して、3質量部~20質量部が好ましく、5質量部~10質量部がより好ましい。前記結晶性樹脂の含有量が、前記樹脂粒子100質量部に対して3質量部以上であると、非結晶性樹脂への軟化させやすく低温定着性に有利である。また、前記結晶性樹脂の含有量が、前記樹脂粒子100質量部に対して20質量部以下であると、耐フィルミング性に有利である。前記結晶性樹脂の含有量が、前記より好ましい範囲であると、低温定着性と耐フィルミング性の両立の点で有利である。
【0051】
<<<非晶質樹脂>>>
前記非晶質樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、変性ポリエステル樹脂(以下、「非晶質ポリエステル樹脂A」と称することがある)、又は未変性ポリエステル樹脂(以下、「非晶質ポリエステル樹脂B」と称することがある)が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記樹脂粒子は、前記変性ポリエステル樹脂及び前記未変性ポリエステル樹脂の両方を含有することが好ましい。
また、前記非晶質樹脂は、環境負荷を低減することができる点から、前記バイオマス由来樹脂を含有することが好ましい。
なお、本明細書において、前記非晶質樹脂は、前記PET又はPBTを除く樹脂を意味する。
【0052】
-非晶質ポリエステル樹脂A-
前記非晶質ポリエステル樹脂A(変性ポリエステル樹脂)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記活性水素基含有化合物と、前記活性水素基含有化合物と反応可能な基を含有する反応性前駆体(以下、「プレポリマー」と称することがある)との反応生成物などが挙げられる。前記非晶質ポリエステル樹脂Aは、前記樹脂粒子の前記コア層に含まれることが好ましい。
【0053】
前記非晶質ポリエステル樹脂Aは、テトラヒドロフラン(THF)に不溶なポリエステル樹脂である。テトラヒドロフラン(THF)に不溶なポリエステル樹脂成分は、ガラス転移温度(Tg)や溶融粘性を低下させ、低温定着性を担保しつつ、分子骨格中に分岐構造を有し、分子鎖が三次元的な網目構造となるため、低温で変形するが流動しないというゴム的な性質を有する。
【0054】
--活性水素基含有化合物--
前記活性水素基含有化合物は、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂と反応する化合物である。
【0055】
前記活性水素基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基(アルコール性水酸基又はフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、又はメルカプト基が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
前記活性水素基含有化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂がイソシアネート基を含有するポリエステル樹脂である場合には、該ポリエステル樹脂と伸長反応又は架橋反応により前記ポリエステル樹脂を高分子量化できる点で、アミン類が好ましい。
【0057】
前記アミン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアミン、3価以上のアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、又はこれらのアミノ基をブロックしたものが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記アミン類としては、ジアミン、又はジアミンと少量の3価以上のアミンとの混合物が好ましい。
【0058】
前記ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、又は脂肪族ジアミンが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記芳香族ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、又は4,4’-ジアミノジフェニルメタンが挙げられる。
前記脂環式ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、又はイソホロンジアミンが挙げられる。
前記脂肪族ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、又はヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
【0059】
前記3価以上のアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチレントリアミン、又はトリエチレンテトラミンが挙げられる。
【0060】
前記アミノアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノールアミン、又はヒドロキシエチルアニリンが挙げられる。
【0061】
前記アミノメルカプタンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノエチルメルカプタン、又はアミノプロピルメルカプタンが挙げられる。
【0062】
前記アミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノプロピオン酸、又はアミノカプロン酸が挙げられる。
【0063】
前記アミノ基をブロックしたものとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ基をケトン類でブロックすることにより得られるケチミン化合物又はオキサゾリゾン化合物が挙げられる。
前記ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンが挙げられる。
【0064】
--活性水素基含有化合物と反応可能な基を含有する反応性前駆体--
前記活性水素基含有化合物と反応可能な基を含有する反応性前駆体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記活性水素基含有化合物と反応可能な基を含有するポリエステル樹脂(以下、「ポリエステルプレポリマー」と称することがある)などが挙げられる。
【0065】
前記活性水素基含有化合物と反応可能な基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸、又は酸クロリド基が挙げられる。これらの中でも、前記活性水素基含有化合物と反応可能な基としては、前記非晶質ポリエステル樹脂Aにウレタン結合又はウレア結合を導入可能な点で、イソシアネート基が好ましい。
【0066】
前記反応性前駆体は、3価以上のアルコール及び3価以上のカルボン酸の少なくともいずれかによって付与される分岐構造を有していてもよい。
【0067】
前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性水素基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートとの反応生成物などが挙げられる。
【0068】
---活性水素基を有するポリエステル樹脂---
前記活性水素基を有するポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価アルコールと、多価カルボン酸とを重縮合することにより得られるものなどが挙げられる。前記多価アルコール及び前記多価カルボン酸の少なくともいずれかにおいて、植物由来の化合物を使用することにより、前記非晶質ポリエステル樹脂Aを前記バイオマス由来樹脂とすることができる。
【0069】
前記多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、3価以上のアルコール、又はジオールと3価以上のアルコールとの混合物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジオール又はジオールと少量の3価以上のアルコールとの混合物が好ましい。前記3価以上のアルコールは、前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂に分岐構造を付与する。
【0070】
前記ジオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジオール、オキシアルキレン基を有するジオール、脂環式ジオール、脂環式ジオールのアルキレンオキシド付加物、ビスフェノール類、又はビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
前記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、又は1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
前記オキシアルキレン基を有するジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
前記脂環式ジオールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、又は水素添加ビスフェノールAが挙げられる。
前記脂環式ジオールのアルキレンオキシド付加物としては、例えば、前記脂環式ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したものが挙げられる。
前記ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はビスフェノールSが挙げられる。
前記ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物としては、例えば、前記ビスフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したものが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
これらの中でも、前記非晶質ポリエステル樹脂Aのガラス転移温度(Tg)を20℃以下に制御する観点から、前記ジオールとしては、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等の炭素数3以上10以下の脂肪族ジオールを使用することが好ましい。
【0072】
前記炭素数3以上10以下の脂肪族ジオールの使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記非晶質ポリエステル樹脂A中のアルコール成分の50モル%以上使用することがより好ましい。
【0073】
前記非晶質ポリエステル樹脂Aは、樹脂鎖に立体障害を持たせることで定着時の溶融粘度が低下し、低温定着性がより発現しやすくなる。このため、前記脂肪族ジオールの主鎖は下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
【化1】
(前記一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、nは3~9の奇数を表す。ただし、n個の繰り返し単位において、R及びRはそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。)
【0074】
ここで、本明細書において、前記脂肪族ジオールの主鎖とは、前記脂肪族ジオールが有する2つのヒドロキシル基間を最短数で結ばれた炭素鎖を意味する。
前記脂肪族ジオールの主鎖の炭素数が奇数である場合、偶奇性により結晶性が低下するため好ましい。また、前記脂肪族ジオールが、その側鎖に少なくとも1つ以上の炭素数1~3のアルキル基を有する場合、立体性により主鎖分子間の相互作用エネルギーが低下するためより好ましい。
【0075】
前記3価以上のアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族アルコール、3価以上のポリフェノール類、又は3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
前記脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、又はソルビトールが挙げられる。
前記3価以上のポリフェノール類としては、例えば、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、又はクレゾールノボラックが挙げられる。
前記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物としては、例えば、前記3価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したものが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
前記多価カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸、又はジカルボン酸と3価以上のカルボン酸との混合物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記多価カルボン酸としては、カルボン酸又はジカルボン酸と少量の3価以上のカルボン酸との混合物が好ましい。前記3価以上のカルボン酸は、前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂に分岐構造を付与する。
【0077】
前記ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、若しくは、これらの無水物や低級(炭素数1~3)アルキルエステル化物、又はハロゲン化物が挙げられる。
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、又はフマル酸が挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、又はナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
これらの中でも、前記非晶質ポリエステル樹脂Aのガラス転移温度(Tg)を20℃以下に制御する観点から、前記ジカルボン酸としては、炭素数4以上12以下の脂肪族ジカルボン酸を使用することが好ましく、カーボンニュートラルの観点から、植物由来のセバシン酸を使用することがより好ましい。
【0079】
前記炭素数4以上12以下の脂肪族ジカルボン酸の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記非晶質ポリエステル樹脂A中のカルボン酸成分の50モル%以上使用することがより好ましい。
【0080】
前記3価以上のカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3価以上の芳香族カルボン酸などが挙げられる。
前記3価以上の芳香族カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭素数9以上20以下の3価以上の芳香族カルボン酸、若しくは、前記炭素数9以上20以下の3価以上の芳香族カルボン酸の無水物、低級(炭素数1~3)アルキルエステル化物、又はハロゲン化物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記炭素数9以上20以下の3価以上の芳香族カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、又はピロメリット酸が挙げられる。
【0081】
---ポリイソシアネート---
前記ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、又は3価以上のポリイソシアネートが挙げられる。また、前記ポリイソシアネートは、これらの変性物であってもよい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
前記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI[粗製ジアミノフェニルメタン〔ホルムアルデヒドと芳香族アミン(アニリン)又はその混合物との縮合生成物;ジアミノジフェニルメタンと少量(例えば、5質量%~20質量%)の3官能以上のポリアミンとの混合物〕のホスゲン化物、ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)]、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、又はp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートが挙げられる。
【0083】
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、又は2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエートが挙げられる。
【0084】
前記脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、又は2,6-ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0085】
前記芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、m-キシリレンジイソシアネート(XDI)、p-キシリレンジイソシアネート(XDI)、又はα,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)が挙げられる。
【0086】
前記3価以上のポリイソシアネートとしては、例えば、リジントリイソシアネート、又は3価以上のアルコールのジイソシアネート変性物が挙げられる。
【0087】
前記ポリイソシアネートの変性物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、又はオキサゾリドン基を含有する変性物などが挙げられる。
【0088】
前記非晶質ポリエステル樹脂Aの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子100質量部に対して、3質量部~20質量部が好ましく、5質量部~15質量部がより好ましい。前記非晶質ポリエステル樹脂Aの含有量が、前記樹脂粒子100質量部に対して3質量部以上であると、低温定着性への効果ができる。また、前記非晶質ポリエステル樹脂Aの含有量が、前記樹脂粒子100質量部に対して20質量部以下であると、耐ホットオフセット性の効果ができる。前記非晶質ポリエステル樹脂Aの含有量が、前記より好ましい範囲であると、低温定着性や耐ホットオフセット性と耐熱保存性との両立の点で有利である。
【0089】
-非晶質ポリエステル樹脂B-
前記非晶質ポリエステル樹脂Bは、架橋構造を実質的に有しないポリエステル樹脂を意味し、線状ポリエステル樹脂であることが好ましい。前記非晶質ポリエステル樹脂Bは、前記樹脂粒子の前記コア層に含まれていてもよく、前記シェル層に含まれていてもよいが、前記コア層及び前記シェル層の両方に含まれることが好ましい。
【0090】
前記非晶質ポリエステル樹脂Bとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価アルコールと、多価カルボン酸とを重縮合することにより得られるものなどが挙げられる。前記非晶質ポリエステル樹脂Bは、ウレタン結合及びウレア結合を有しないことが好ましい。
前記多価アルコール及び前記多価カルボン酸又はその誘導体の少なくともいずれかにおいて、植物由来の化合物を使用することにより、前記非晶質ポリエステル樹脂Bを前記バイオマス由来樹脂とすることができる。
【0091】
--多価アルコール--
前記多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオールなどが挙げられる。
前記ジオールとしては、例えば、ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物、エチレングリコール、プロピレングリコール、水添ビスフェノールA、又は水添ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物が挙げられる。
前記ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、又はポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記多価アルコールとしては、カーボンニュートラルの観点から、植物由来のプロピレングリコールを使用することが好ましい。
【0092】
--多価カルボン酸--
前記多価カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジカルボン酸などが挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸などが挙げられる。
前記の炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸としては、例えば、ドデセニルコハク酸、又はオクチルコハク酸が挙げられる。
前記多価カルボン酸の誘導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価カルボン酸無水物又は多価カルボン酸エステルが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0093】
これらの中でも、前記多価カルボン酸としては、コハク酸及びテレフタル酸の少なくともいずれかを使用することが好ましく、カーボンニュートラルの観点から、植物由来の飽和脂肪族のコハク酸を使用することがより好ましい。前記飽和脂肪族は、前記結晶性樹脂の再結晶化性を高める効果があり、該結晶性樹脂のアスペクト比を高め、低温定着性を向上させることができる。
【0094】
前記非晶質ポリエステル樹脂Bにおける前記多価カルボン酸の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐熱保存性の点で、前記多価カルボン酸として、テレフタル酸を50モル%以上使用することが好ましい。
【0095】
また、酸価、水酸基価を調整する目的で、前記非晶質ポリエステル樹脂Bは、その樹脂鎖の末端に3価以上のカルボン酸及び3価以上のアルコールの少なくともいずれかを含んでいてもよい。
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、又はそれらの酸無水物が挙げられる。
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、又はトリメチロールプロパンが挙げられる。
【0096】
前記非晶質ポリエステル樹脂Bの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下の範囲であることが好ましい。
前記非晶質ポリエステル樹脂Bの重量平均分子量(Mw)としては、3,000~10,000が好ましく、4,000~7,000がより好ましい。
前記非晶質ポリエステル樹脂Bの数平均分子量(Mn)として、1,000~4,000が好ましく、1,500~3,000がより好ましい。
前記非晶質ポリエステル樹脂Bの分子量の比(Mw/Mn)としては、1.0~4.0が好ましく、1.0~3.5がより好ましい。
前記非晶質ポリエステル樹脂Bの前記重量平均分子量(Mw)及び前記数平均分子量(Mn)は、GPCにより測定できる。
前記非晶質ポリエステル樹脂Bの前記重量平均分子量(Mw)及び前記数平均分子量(Mn)が、前記下限値以上の場合、前記樹脂粒子の耐熱保存性や現像機内での攪拌等のストレスに対する耐久性が低下することを抑制することができる。また、前記非晶質ポリエステル樹脂Bの前記重量平均分子量(Mw)及び前記数平均分子量(Mn)が、前記上限値以下の場合、前記樹脂粒子の溶融時の粘弾性が高くなることを抑え、低温定着性が低下することを抑制することができる。
【0097】
前記非晶質ポリエステル樹脂Bの酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~30mgKOH/gがより好ましい。前記非晶質ポリエステル樹脂Bの酸価が、1mgKOH/g以上であることにより、前記樹脂粒子を含有するトナーが負帯電性となりやすく、更には、記録媒体への定着時に、記録媒体とトナーの親和性が良くなり、低温定着性を向上させることができる。また、前記非晶質ポリエステル樹脂Bの酸価が、50mgKOH/g以下であることにより、帯電安定性、特に環境変動に対する帯電安定性が低下することを抑制することができる。
前記非晶質ポリエステル樹脂Bの酸価は、JIS K0070-1992に記載の測定方法に準拠して測定することができる。
【0098】
前記非晶質ポリエステル樹脂Bの水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mgKOH/g以上であることが好ましい。
前記非晶質ポリエステル樹脂Bの水酸基価は、JIS K0070-1966に記載の測定方法に準拠して測定することができる。
【0099】
前記非晶質ポリエステル樹脂Bのガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上70℃以下がより好ましい。前記非晶質ポリエステル樹脂Bのガラス転移温度(Tg)が、40℃以上であることにより、前記樹脂粒子を含有するトナーの耐熱保存性及び現像機内での攪拌等のストレスに対する耐久性が十分なものとなり、また、耐フィルミング性も良好となる。また、前記非晶質ポリエステル樹脂Bのガラス転移温度(Tg)が、80℃以下であることにより、前記樹脂粒子を含有するトナーの定着時における加熱及び加圧による変形が十分なものとなり、低温定着性が良好となる。
【0100】
前記非晶質ポリエステル樹脂Bの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子100質量部に対して、50質量部~90質量部が好ましく、60質量部~80質量部がより好ましい。前記非晶質ポリエステル樹脂Bの含有量が、前記樹脂粒子100質量部に対して50質量部以上であると、前記樹脂粒子中の顔料又は離型剤の分散性の悪化することを抑制でき、画像のかぶりや乱れが生じることを抑制することができる。また、前記非晶質ポリエステル樹脂Bの含有量が、前記樹脂粒子100質量部に対して90質量部以下であると、前記結晶性樹脂及び非晶質ポリエステル樹脂Aの含有量が少なくなることを防止し、低温定着性が低下することを抑制することができる。前記非晶質ポリエステル樹脂Bの含有量が、前記より好ましい範囲であると、高画質、及び低温定着性の全てに優れる点で有利である。
【0101】
前記非晶質ポリエステル樹脂A及び前記非晶質ポリエステル樹脂Bの分子構造は、溶液又は固体によるNMRによる測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、又はIRによる測定方法により確認することができる。これらの中でも、IRで得られる赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1及び990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有しないものを前記非晶質ポリエステル樹脂A又は非晶質ポリエステル樹脂Bとして検出する方法が、簡便である。
【0102】
<<シェル用樹脂>>
前記樹脂粒子は、コアシェル構造を有する。前記シェル層を構成する樹脂(以下、「シェル用樹脂」と称することがある)は、前記バイオマス由来樹脂を含有しない結着樹脂からなるものであるであることが好ましい。
【0103】
本発明者らは、前記バイオマス由来樹脂が樹脂粒子の表層に露出していると、耐フィルミング性が不十分となることがあることを見出した。これに対し、前記樹脂粒子の構造としてコアシェル構造を有し、かつシェル層にバイオマス由来成分を含有しない樹脂の構成を取ることで、前記バイオマス由来樹脂を用いた樹脂粒子であっても、従来よりも格段に耐フィルミング性を向上させることができることを見出した。
【0104】
前記シェル層を構成するシェル用樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、バイオマス由来樹脂を含有しない前記非晶質樹脂が好ましく、バイオマス由来樹脂を含有しない前記非晶質ポリエステル樹脂Bがより好ましい。
【0105】
前記シェル用樹脂としての非晶質樹脂は、前述の通り、多価アルコールと、多価カルボン酸とを重縮合することにより得られるものなどが挙げられるものなどが挙げられるが、前記多価アルコール及び前記多価カルボン酸においてバイオマス由来の化合物を使用しないことにより、前記バイオマス由来樹脂を含有しない非晶質樹脂とすることができる。
【0106】
-シェル層の樹脂組成の分析-
前記シェル層が前記バイオマス由来樹脂を含有しないことを確認する指標としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナノ(nano)IR(「AMF-IR」とも称する)を用いた表層(シェル層)組成分析によって確認できる。
ナノ(nano)IRの原子間力顕微鏡(AFM)とIRとを組み合わせたナノスケール分解能を実現する分析手法により、前記樹脂粒子の表層(シェル層)のIRスペクトルを取得することで組成構成を得ることができる。
【0107】
具体的には、前記樹脂粒子をエポキシ系樹脂に包埋して硬化させた後、ナイフで断面出しして、ウルトラミクロトーム(Leica ULTRACUT UCT、Leica社製、ダイヤナイフ使用)を用いて、50nmの厚さに切除し、樹脂粒子の超薄切片を作製する。作製したトナーの超薄切片を、基板上(ZnS)に回収し、ナノスケール赤外分光分析システム(例えば、nanoIR2、アナシスインスツルメント社製)を用い、測定箇所(シェル層)をAFM-IR法にて測定する。測定範囲は、1,900cm-1から910cm-1とし、分解能は2cm-1として、得られたAFM-IR吸収スペクトルから、測定箇所(シェル層)の化学構造を解析することができる。したがって、この分析によって表層(シェル層)にバイオマス由来の組成が存在するかを識別することができる。
なお、前記測定箇所をコア層とすることで、コア層の化学構造を解析することもできる。
【0108】
前記シェル層の平均厚さは、100nm~560nmであり、100nm~500nmが好ましく、200nm~300nmがより好ましい。前記シェル層の平均厚さが100nm未満であると、前記樹脂粒子の内部のコア層を保護することができず、耐機械強度及び耐フィルミング性が劣り、560nm超であると、低温定着性が阻害され、十分な耐機械強度及び耐フィルミング性が得られない。
なお、本明細書において、「シェル層の平均厚さ」とは、任意に選択した10個の樹脂粒子について、後述の方法でそれぞれのシェル層の厚さを測定し、この10個の樹脂粒子のシェル層の厚さを平均した厚さを意味する。
【0109】
前記コア層表面の前記シェル層による被覆率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70%~100%が好ましく、90%~100%がより好ましい。なお、前記被覆率が100%であるとは、前記樹脂粒子における前記コア層の表面全域が、前記シェル層で覆われていることを意味する。
前記コア層表面の前記シェル層による被覆率(%)は、下記式(3)により算出した値である。
被覆率(%)=(被覆領域の面積)/(樹脂粒子の全表面積)×100 ・・・ 式(3)
前記式(3)中、「樹脂粒子の全表面積」は、被覆領域の面積と、コア層露出面積との合計を意味し、「被覆領域の面積」は、樹脂粒子の全表面積のうち、コア層がシェル層により被覆された領域の面積を意味し、「コア層露出面積」は、樹脂粒子の全表面積のうち、コア層がシェル層により被覆されていない領域の面積を意味する。
【0110】
-コアシェル構造の確認方法-
前記樹脂粒子が、コアシェル構造を有することを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂粒子をエポキシ系樹脂に包埋して硬化させた後、ナイフで断面出しして、ウルトラミクロトーム(Leica ULTRACUT UCT、Leica社製、ダイヤナイフ使用)を用いて、80nmの厚さに切除し、樹脂粒子の超薄切片を作製する。作製したトナーの超薄切片を、四酸化ルテニウムでガス暴露し、シェルとコアを識別染色する(以下、「ルテニウム染色」と称することがある)。ガス暴露時間は観察時のコントラストにより適宜調整することができる。その後、透過型電子顕微鏡(TEM)(H-7000、株式会社日立ハイテク製)を用いて、加速電圧100kV、観察倍率15k倍で観察することで確認することができる。
【0111】
また、前述の方法で観察されたTEM画像において、前記樹脂粒子の表面におけるコア層の被覆領域(樹脂粒子において、コア層がシェル層により被覆された領域)と、コア層の露出領域(樹脂粒子において、コア層がシェル層により被覆されていない領域)とは、輝度値の違いにより区別することができる。そのため、前述の方法で観察されたTEM画像からシェル層を特定することができる。また、前記TEM画像を、画像処理ソフトを利用して2値化処理を行い、そのコントラスト比により、シェル層を特定することもできる。したがって、前記TEM画像から、シェル層の厚さを測定することができる。
図6に前記樹脂粒子の断面のTEM画像の一例を示す。図6に示されるように、シェル層は、コア層よりコントラストが濃く見える。
【0112】
前記画像処理ソフトとしては、Image-Jを使用することができる。Image-Jはオープンソースであり、コードの一部を拡張することで、処理のバリエーションや追加機能をプラグインとして開発することができる。Image-Jを使用した前記シェル層の平均厚さの算出方法は、以下の通りである。
(1)Straight Lineでスケールをなぞった直線を引く。AnalyzeのSet Scaleでその実長と単位を設定する。
(2)樹脂粒子1個の前記断面像における該樹脂粒子の外周をFreehand-sectionsで囲い、「領域1」を作成する。
(3)前記樹脂粒子1個の前記断面像におけるシェル層を除いた領域の外周(即ち、シェル層とコア層との境界)をFreehand-sectionsで囲い、「領域2」を作成する。
(4)前記「領域1」の重量中心をAnalyzeにより求める。
(5)独自に開発したプラグインを使用し、前記「領域1」の外周、即ち、前記(2)において前記樹脂粒子1個の外周をFreehand-sectionsで囲った線を等間隔に100分割した座標から、前記(4)で求めた樹脂粒子の重量中心に向かって直線を引く。
(6)前記(5)で作成した100個の各直線の前記「領域1」を通る長さから、前記「領域2」を通る長さを除いたものの長さを、前記(1)で作成したスケールをなぞった直線を利用して算出し、100個の平均をとったものを、前記樹脂粒子1個のシェル層の厚さとする。
(7)前記(2)~(6)の操作を10個の樹脂粒子について行い、10個の樹脂粒子のシェル層の厚さの平均値を算出する。この平均値を、本発明におけるシェル層の平均厚さとする。
【0113】
また、Image-Jを使用した前記シェル層による被覆率の算出方法は、以下の通りである。
(1)樹脂粒子1個の前記断面像における該樹脂粒子の外周のシェル層で被覆されている部分をFreehand Lineでなぞり、なぞった線の長さをAnalyzeにより測定する。この長さを「長さ1」とする。
(2)前記樹脂粒子1個の前記断面像における該樹脂粒子の外周をFreehand Lineでなぞり、なぞった線の長さをAnalyzeにより測定する。この長さを「長さ2」とする。
(3)長さ1/長さ2×100を算出し、これを前記樹脂粒子1個のシェル層による被覆率とする。
(4)前記(1)~(3)の操作を10個の樹脂粒子について行い、10個の樹脂粒子のシェル層による被覆率の平均値を算出する。この平均値を、本発明におけるシェル層による被覆率とする。
【0114】
<その他の成分>
前記樹脂粒子における前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、着色剤、離型剤、帯電制御剤、又はクリーニング性向上剤が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0115】
<<着色剤>>
前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、又はこれらの混合物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0116】
前記着色剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子の全量に対して、1質量%~15質量%が好ましく、3質量%~10質量%がより好ましい。
【0117】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。
前記マスターバッチの製造に使用される又は前記マスターバッチとともに混練される前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記非晶質樹脂の他、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、又はパラフィンワックスが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記スチレン又はその置換体の重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリp-クロロスチレン、又はポリビニルトルエンが挙げられる。
前記スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、又はスチレン-マレイン酸エステル共重合体が挙げられる。
【0118】
前記マスターバッチの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マスターバッチ用の前記樹脂と、前記着色剤とを高せん断力をかけて混合し、混練して得る方法などが挙げられる。この際、前記着色剤と前記樹脂との相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる前記着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合混練を行い、前記着色剤を前記樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
【0119】
<<離型剤>>
前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、融点が50℃~120℃の低融点の離型剤が好ましい。前記低融点の離型剤は、前記結晶性樹脂又は前記非晶質樹脂と分散されることにより、離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これによりオイルレス(定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布しない)でもホットオフセット性が良好となる。
【0120】
前記離型剤の具体例としては、ロウ類又はワックス類、脂肪酸アミド、ポリアクリレートのホモ重合体又は共重合体、又は側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0121】
前記ロウ類又はワックス類としては、例えば、天然ワックス、合成炭化水素ワックス、又は合成ワックスが挙げられる。
前記天然ワックスとしては、例えば、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、又は石油ワックスが挙げられる。
前記植物系ワックスとしては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウ、又はライスワックスが挙げられる。
前記動物系ワックスとしては、例えば、ミツロウ、又はラノリンが挙げられる。
前記鉱物系ワックスとしては、例えば、オゾケライト、又はセルシンが挙げられる。
前記石油ワックスとしては、例えば、パラフィン、マイクロクリスタリン、又はペトロラタムが挙げられる。
前記合成炭化水素ワックスとしては、例えば、フィッシャー・トロプシュワックス、又はポリエチレンワックスが挙げられる。
前記合成ワックスとしては、例えば、エステル、ケトン、又はエーテルが挙げられる。
【0122】
前記肪酸アミドとしては、例えば、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、又は塩素化炭化水素が挙げられる。
【0123】
前記ポリアクリレートとしては、例えば、低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ-n-ステアリルメタクリレート、又はポリ-n-ラウリルメタクリレートが挙げられる。
前記ポリアクリレートのホモ重合体又は共重合体としては、例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体などが挙げられる。
【0124】
これらの中でも、前記離型剤としては、環境負荷の低減の観点から、植物系ワックス又は植物由来モノマーの合成ワックスが好ましい。
【0125】
前記離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃~120℃が好ましく、60℃~90℃がより好ましい。融点が、50℃以上であると、前記離型剤が耐熱保存性に悪影響を与えるのを防止でき、120℃以下であえると、低温での定着時にコールドオフセットを起こすという問題を有効に防止できる。
【0126】
前記離型剤の溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記離型剤の融点より20℃高い温度での測定値として、5cps~1,000cpsが好ましく、10cps~100cpsがより好ましい。前記離型剤の溶融粘度が、5cps以上であると、前記離型性の低下を防止でき、1,000cps以下であると、耐ホットオフセット性及び低温定着性の効果が十分発揮できる。
【0127】
前記離型剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子全量に対して、0質量%~40質量%が好ましく、3質量%~30質量%がより好ましい。
【0128】
<<帯電制御剤>>
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のものを全て使用することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、第四級アンモニウム塩(フッ素変性四級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、オキシナフトエ酸金属塩、フェノール系縮合物、アゾ系顔料、ホウ素錯体、又は官能基(例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、又は四級アンモニウム塩等)を有する高分子系の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0129】
前記帯電制御剤の具体例として、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP-51、含金属アゾ染料のボントロンS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE-82、サリチル酸系金属錯体のE-84、フェノール系縮合物のE-89(以上、オリエント化学工業株式会社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業株式会社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、又はキナクリドンが挙げられる。
【0130】
前記帯電制御剤の含有量としては、性能を発現し、定着性などへの阻害がない範囲の量で用いられれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子の全量に対して、0.5質量%~5質量%が好ましく、0.8質量%~3質量%がより好ましい。
【0131】
<<クリーニング性向上剤>>
前記クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのものである。
前記クリーニング性向上剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪酸金属塩又はポリマー微粒子が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0132】
前記脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、又はステアリン酸が挙げられる。
【0133】
前記ポリマー微粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレート微粒子、又はポリスチレン微粒子が挙げられる。前記ポリマー微粒子は、例えば、ソープフリー乳化重合などによって製造することができる。
【0134】
前記ポリマー微粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01μm~1μmのものが好ましい。
【0135】
前記クリーニング性向上剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子の全量に対して、0.01質量%~5質量%が好ましい。
【0136】
前記樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm~10μmが好ましく、4μm~6μmがより好ましい。前記樹脂粒子の体積平均粒径が3μm以上であると、クリーニング性が維持でき安定した画像品質が得られることができ、10μm以下であると、現像性、転写性が良好であり、画質の向上が期待できる。
【0137】
<<樹脂粒子の体積平均粒径の測定>>
前記樹脂粒子の体積平均粒径は、粒度分布測定装置(例えば、コールターマルチサイザーIII、コールター社製)を用いて測定することができる。
具体的には、電解液100mL中に分散剤として界面活性剤、好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを2mL加えた混合液を得る。この混合液に、更に測定試料を固形分にして10mg加え、測定試料を懸濁した電解液を得る。この測定試料を懸濁した電解液を、超音波分散器で約1分間~約3分間の分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIIにより、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用い、前記樹脂粒子の体積及び個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、前記樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)を求めることができる。
なお、前記電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて約1質量%塩化ナトリウム水溶液を調製したものであり、例えば、ISOTON-II(コールター社製)を用いることができる。
【0138】
<<樹脂粒子の構成成分の分離手段>>
前記樹脂粒子中の前記バイオマス由来樹脂、前記PET又はPBT、前記結晶性樹脂、及び前記非晶質樹脂などの各樹脂の分子量、モノマー組成、及び構成比率を分析する際の各成分の分離手段の一例を詳細に示す。
【0139】
まず、前記樹脂粒子1gを100mLのクロロホルム中に投入し、25℃の条件下、30分間攪拌しながら可溶分が溶解した溶解液を得る。これを目開き0.2μmのメンブランフィルターにて濾過し、前記樹脂粒子中のクロロホルム可溶分を得る。次いで、これをクロロホルム可に溶解してゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定用の試料とすることができる。
【0140】
一方、GPCの溶出液排出口にフラクションコレクターを配置して、所定のカウントごとに溶出液を分取(溶出曲線の全面積分のうちの所望の分子量部分に相当するフラクションをまとめて分取)しておき、溶出曲線の溶出開始(曲線の立ち上がり)から面積率で5%毎に溶出液を得る。次いで、各溶出分について、エバポレーターなどにより濃縮及び乾燥した後、固形分を1mLの重クロロホルム又は重THF等の重溶媒30mgのサンプルを溶解させ、基準物質として0.05体積%のテトラメチルシラン(TMS)を添加する。得られた溶液を5mm径の核磁気共鳴分光法(NMR)測定用ガラス管に充填し、核磁気共鳴装置(例えば、JNM-AL400、日本電子株式会社製)を用い、23℃~25℃の温度下、128回の積算を行い、スペクトルを得る。得られたスペクトルのピーク積分比率から、溶出成分における前記樹脂粒子に含まれる前記各樹脂のモノマー組成、及び構成比率を求めることができる。
【0141】
また、他の手法としては、前記溶出液を濃縮後、水酸化ナトリウム等により加水分解を行い、分解生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などにより定性定量分析することで構成モノマー比率を算出することもできる。
【0142】
<<分子量の測定>>
前記樹脂粒子の各構成成分の分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定装置を用いて、以下の方法で測定することができる。
測定用試料としては、前述の方法で分離したGPC測定用の試料を用いることができる。測定用試料の分子量測定にあたっては、測定用試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Showdex(登録商標)STANDARD(昭和電工株式会社製)のStd.No S-6550、S-2330,S-1700、S-740、S-10、S-662、S-2.9、及びS-0.6を用いる。
[分析条件]
・装置:GPC-8220GPC(東ソー株式会社製)
・カラム:TSKgel(登録商標) SuperHZM-H 15cm 3連(東ソー株式会社製)
・温度:40℃
・検出器:RI(屈折率)検出器
・溶媒:テトラヒドロフラン(THF)又はクロロホルム
・流速:0.35mL/分間
・試料:0.1質量%の試料を100μL注入
・試料の前処理:前記樹脂粒子をTHF(例えば、テトラヒドロフラン(安定剤含有)、富士フイルム和光純薬株式会社製)又はクロロホルムに0.1質量%で溶解した後、0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。
【0143】
<<融点(Tm)及びガラス転移温度(Tg)の測定方法>>
本明細書において、各成分の融点(Tm)及びガラス転移温度(Tg)は、例えば、DSCシステム(示差走査熱量計)(Q-200、TAインスツルメント社製)を用いて測定することができる。
具体的には、対象試料の融点及びガラス転移温度は、下記手順により測定できる。
まず、測定試料約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、-80℃から昇温速度10℃/分間にて150℃まで加熱する(昇温1回目)。その後、150℃から降温速度10℃/分間にて-80℃まで冷却させ、更に昇温速度10℃/分間にて150℃まで加熱(昇温2回目)する。この昇温1回目、及び昇温2回目のそれぞれにおいて、示差走査熱量計(Q-200、TAインスツルメント社製)を用いてDSC曲線を計測する。
得られるDSC曲線から、Q-200システム中の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、測定試料の昇温1回目におけるガラス転移温度を求めることができる。また同様に、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、測定試料の昇温2回目におけるガラス転移温度を求めることができる。
また、得られるDSC曲線から、Q-200システム中の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、測定試料の昇温1回目における吸熱ピークトップ温度を融点として求めることができる。また同様に、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、測定試料の昇温2回目における吸熱ピークトップ温度を融点として求めることができる。
本明細書では、前記非晶質ポリエステル樹脂A、前記非晶質ポリエステル樹脂B、及び前記結晶性ポリエステル樹脂、更には前記離型剤等のその他の構成成分のガラス転移温度及び融点については、特に断りが無い場合、2回目の昇温時における吸熱ピークトップ温度を各対象試料の融点とし、2回目の昇温時におけるTgを各対象試料のTgとする。
【0144】
前記樹脂粒子の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、環境負荷が少なく、低温定着性及び耐フィルミング性に優れるため、トナーに好適に用いられる。したがって、トナー用樹脂粒子も、本発明の範囲に含まれる。
【0145】
前記樹脂粒子の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する本発明の樹脂粒子の製造方法により製造されることが好ましい。
【0146】
(樹脂粒子の製造方法)
本発明の樹脂粒子の製造方法は、前述の本発明の樹脂粒子の製造方法であって、バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aと、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートの含有量BとがA>Bを満たすように、前記バイオマス由来樹脂及び前記ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートを含有する結着樹脂を有機溶媒に溶解又は分散させた油相を調製する工程(以下、「油相調製工程」と称することがある)と、前記油相に水相を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相乳化させる工程(以下、「転相乳化工程」と称することがある)と、前記水中油型分散液中の微粒子を凝集させた凝集粒子を調製する工程(以下、「凝集工程」と称することがある)と、前記凝集粒子に、シェル層及びコア層からなるコアシェル構造を有するように、かつ前記シェル層の平均厚さが100nm~500nmとなるようにシェル層を形成する工程(以下、「シェル化工程」と称することがある)と、を含み、更に必要に応じて、水相調製工程、脱溶剤工程、融着工程、洗浄工程、乾燥工程、アニーリング工程、外添工程などのその他の工程を含む。
【0147】
<油相調製工程>
前記油相調製工程は、少なくとも結着樹脂を有機溶媒に溶解又は分散させた油相を調製する工程である。
【0148】
前記油相の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶媒中に、攪拌しながら、樹脂粒子の原料を徐々に添加し、溶解又は分散させる方法などが挙げられる。
【0149】
前記樹脂粒子の原料としては、少なくとも結着樹脂であるが、更に必要に応じて、着色剤、離型剤、活性水素基含有化合物、帯電制御剤、クリーニング性向上剤等のその他の成分を用いることもできる。なお、前記離型剤は、後述する凝集工程で添加してもよい。
【0150】
前記分散に際しては、公知のものが使用でき、例えば、ビーズミルやディスクミル等の分散機を用いることができる。
【0151】
前記油相調製工程に用いられる前記各原料は、前記(樹脂粒子)の項目で説明したものを使用することができる。
また、前記油相調製工程に用いられる前記結着樹脂としては、前記(樹脂粒子)の項目で説明した、非晶質樹脂又はプレポリマー、及びPET又はPBTが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記非晶質樹脂又は前記プレポリマーが、バイオマス由来樹脂であることが好ましい。
なお、前記樹脂粒子において、前記結晶性樹脂はコアに局在することが、良好な耐熱保存性と低温定着性の点から、前記結晶性樹脂は、前記油相調製工程で添加されてもよいが、凝集工程で添加されることが好ましい。
【0152】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、沸点が100℃未満の揮発性溶媒であることが、後の有機溶媒除去が容易になる点から好ましい。
このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、又はイソプロピルアルコールが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0153】
前記有機溶媒中に溶解又は分散させる樹脂が、ポリエステル骨格を有する樹脂である場合、前記有機溶媒としては、エステル系溶媒又はケトン系溶媒が、溶解性が高い点で好ましい。
前記エステル系溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、又は酢酸ブチルが挙げられる。
前記ケトン系の溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンが挙げられる。
これらの中でも、前記有機溶媒としては、溶媒除去性の高い、酢酸メチル、酢酸エチル、又はメチルエチルケトンが好ましい。
【0154】
前記有機溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子の原料100質量部に対し、40質量部~300質量部が好ましく、60質量部~140質量部がより好ましく、80質量部~120質量部が更に好ましい。
【0155】
<水相調製工程>
前記水相調製工程は、水相(水系媒体)を調製する工程である。
前記水系媒体としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、水、該水と混和可能な溶剤、又はこれらの混合物が挙げられる。
前記水と混和可能な溶剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、低級ケトン類、又はエステル類が挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、又はエチレングリコール等が挙げられる。
前記低級ケトン類としては、例えば、アセトン、又はメチルエチルケトンが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0156】
<転相乳化工程>
前記転相乳化工程は、前記油相に水相を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相乳化させる工程である。これにより、前記油相を微粒子化した微粒子分散液を得ることができる。
【0157】
前記転相乳化工程において、前記油相は、前記水相を添加する前に、水酸化ナトリウム又はアンモニア水等のアルカリで中和しておくことが好ましい。前記中和した油相に、前記水相を徐々に添加することで、油中水型分散液から水中油型分散液に転相乳化させることができ、これにより、前記樹脂粒子の原料を含む微粒子分散液を得ることができる。
【0158】
前記微粒子分散液中の分散体(油滴)の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100nm~2,000nmが好ましく、300nm~800nmがより好ましい。
前記微粒子分散液中の分散体(油滴)の体積平均粒径は、例えば、粒度分布測定装置(コールターマルチサイザーIII、コールター社製)により測定することができる。
【0159】
前記油相100質量部に対する前記水相の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50質量部~2,000質量部が好ましく、100質量部~1,000質量部がより好ましい。
【0160】
前記転相乳化は、攪拌翼を用いて行うことができる。
前記攪拌翼としては、特に制限はなく、溶液の粘度に応じて適宜選択することができ、例えば、パドルやプロペラ等の低粘度攪拌翼;アンカーやマックスブレンド等の中粘度攪拌翼;又はヘリカルリボン等の高粘度攪拌翼が挙げられる。これらの中でも、分散体(油滴)の体積平均粒径を前記好ましい範囲に制御することができる点で、パドル又はアンカーが好ましい。
【0161】
前記攪拌翼を用いた場合の、周速、分散時間、及び分散温度等の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記攪拌翼を用いた場合の周速としては、特に制限はなく、0.4m/秒間~2.0m/秒間が好ましく、0.7m/秒間~1.5m/秒間がより好ましい。
前記攪拌時間及び前記攪拌温度としては、特に制限はない。
【0162】
<脱溶剤工程>
前記脱溶剤工程は、前記転相乳化工程で得られた微粒子分散液から前記有機溶媒を除去し、母体粒子を得る工程である。
【0163】
前記微粒子分散液から有機溶媒を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、反応系全体を攪拌しながら徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法、前記微粒子分散液を攪拌しながら乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の有機溶媒を完全に除去する方法、前記微粒子分散液を攪拌しながら減圧し、有機溶媒を蒸発除去する方法などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、反応系全体を攪拌しながら徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法が好ましい。
【0164】
前記微粒子分散液が噴霧される乾燥雰囲気としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体などが挙げられ、使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。
【0165】
前記脱溶剤工程は、装置を用いて行うことができ、例えば、スプレードライヤー、ベルトドライアー、又はロータリーキルンを用いることができ、短時間の処理で十分に目的とする品質を得ることができる。
【0166】
<凝集工程>
前記凝集工程は、前記水中油型分散液の微粒子を凝集させた凝集粒子を調製する工程である。前記樹脂粒子の製造方法が、前記脱溶剤工程を含む場合は、前記凝集工程は、脱溶剤後の母体粒子を凝集させた凝集粒子を調製する工程であってもよい。
【0167】
前記凝集工程では、更に結晶性樹脂を添加することが、前記結晶性樹脂を母体粒子内で微分散させることができる点で好ましい。
前記結晶性樹脂は、前記(樹脂粒子)の項目で説明したものを使用することができる。
前記凝集工程において、前記結晶性樹脂は、分散液の状態で前記凝集粒子又は前記母体粒子と混合されることが好ましい。
【0168】
前記結晶性樹脂の分散液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結晶性樹脂を前記水系媒体に分散させたものであることが好ましく、水酸化ナトリウム又はアンモニア水等のアルカリで中和された分散液であることがより好ましい。
【0169】
前記結晶性樹脂の分散液の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100nm~1,000nmが好ましく、100nm~300nmがより好ましい。
前記結晶性樹脂の体積平均粒径は、例えば、粒度分布測定装置(コールターマルチサイザーIII、コールター社製)を用いて測定することができる。
【0170】
前記微粒子又は前記母体粒子、若しくは、前記微粒子又は前記母体粒子と前記結晶性樹脂との混合物を任意の粒径になるまで凝集させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記凝集粒子又は前記母体粒子、若しくは、前記微粒子又は前記母体粒子と前記結晶性樹脂との混合物を攪拌しながら凝集剤を添加する方法、前記凝集粒子又は前記母体粒子、若しくは、前記凝集粒子又は前記母体粒子と前記結晶性樹脂との混合物を攪拌しながらpH調整を行う方法などが挙げられる。
前記凝集剤を添加する方法の場合、そのまま前記凝集剤を添加してもよいが、該凝集剤を水溶液の状態にした方が、局所的な高濃度化を避けることができるため好ましい。また、前記凝集剤は、前記凝集粒子の粒径を見ながら、徐々に添加することが好ましい。
【0171】
前記凝集剤としては、特に制限はなく、公知ものの中から適宜選択することができ、例えば、1価の金属の金属塩、2価の金属の金属塩、又は3価の金属の金属塩が挙げられる。
前記1価の金属の金属塩としては、例えば、ナトリウム又はカリウムが挙げられる。
前記2価の金属の金属塩としては、例えば、カルシウム又はマグネシウムが挙げられる。
前記3価の金属の金属塩としては、例えば、鉄又はアルミニウムが挙げられる。
【0172】
前記凝集工程を行う温度(反応系の温度)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、使用する樹脂のガラス転移温度(Tg)付近であることが好ましい。前記温度が低すぎると凝集があまり進まないため効率が悪くなることがあり、前記温度が高すぎると凝集速度が速くなり、粗大粒子が発生するなど粒径分布が悪化することがある。
【0173】
前記凝集工程において、前記凝集粒子が目的とする粒径に達した後、凝集を停止させる。
前記凝集を停止させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン価数の低い塩やキレート剤を添加する方法、pHを調整する方法、系の温度を下げる方法、水系媒体を多量に添加して濃度を薄める方法などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0174】
前記凝集粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2μm~10μmが好ましく、3μm~6μmがより好ましい。
【0175】
凝集工程においては、離型剤を添加してもよい。前記離型剤としては、前記(樹脂粒子)の項目で説明したものを使用することができる。
前記凝集工程において前記離型剤を添加する場合、前記離型剤を水系媒体に分散させた分散液を用いる方法、又は前記離型剤を前記母体粒子及び前記結晶性樹脂と混合した上で凝集させる方法などを用いることで、均一に、前記離型剤及び前記結晶性樹脂が分散した凝集粒子を得ることができる。
【0176】
<シェル化工程>
前記シェル化工程は、前記凝集粒子に、シェル層及びコア層からなるコアシェル構造を有するように、かつ前記シェル層の平均厚さが100nm~500nmとなるようにシェル層を形成する工程である。前記樹脂粒子の製造方法が、後述する融着工程を含む場合は、前記シェル化工程は、該融着工程で得られた球形化粒子にシェル層を形成する工程であってもよい。
【0177】
前記シェル層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記凝集工程で得られた凝集粒子に、シェル用樹脂を含む分散液を添加し、加熱する方法;前記融着工程で目的とする粒径の球形化した粒子に、シェル用樹脂を含む分散液を添加し、加熱する方法などが挙げられる。
前記加熱は、前記融着工程の加熱の際に行われてもよく、別工程として行われてもよい。
【0178】
前記シェル用樹脂としては、前記バイオマス由来樹脂を含有しない結着樹脂であることが好ましく、前記(樹脂粒子)の<<シェル用樹脂>>の項目に記載のものと同様のものを使用することができ、前記非晶質ポリエステル樹脂Bが特に好ましい。
【0179】
前記分散液中の前記シェル用樹脂の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10nm以上150nm以下であることが好ましく、30nm以上100nm以下であることがより好ましい。
前記分散液中の前記シェル用樹脂の体積平均粒径は、例えば、粒度分布測定装置(コールターマルチサイザーIII、コールター社製)により測定することができる。
【0180】
<融着工程>
前記融着工程は、前記シェル化工程で得られた粒子を融着させて凹凸を減らし、球形化を行い、樹脂粒子を得る工程である。
【0181】
前記シェル化工程で得られた粒子を融着させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記シェル化工程で得られた粒子の分散液を攪拌しながら加熱する方法などが挙げられる。
【0182】
前記加熱の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記非晶質ポリエステル樹脂Bのガラス転移温度(Tg)を超える温度付近が好ましく、前記非晶質ポリエステル樹脂BのTg以上Tg+20℃以下がより好ましく、Tg以上Tg+10℃以下が更に好ましい。前記加熱の温度が、前記非晶質ポリエステル樹脂BのTg+20℃以下であると、前記非晶質ポリエステル樹脂と前記結晶性樹脂とが適度に相溶し、前記結晶性樹脂の再結晶化時のドメインの長径が大きくなりすぎず、前記樹脂粒子表面に露出しにくくなる。
【0183】
前記樹脂粒子の平均円形度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子の平均円形度が高いほど、前記樹脂粒子をトナーとして用いる場合に、現像ニップにおいてスムーズに回転するため、より多くの樹脂粒子が静電潜像担持体に移行できる点で、0.930以上が好ましく、0.950以上がより好ましい。
【0184】
-平均円形度の測定-
本実施形態において、平均円形度は、例えば、フロー式粒子像分析装置(FPIA-3000、シスメックス株式会社製)を用いて測定することができる。
具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100mL~150mL中に、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1mL~0.5mL加え、更に測定試料を0.1g~0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は、超音波分散器で約1分間~3分間の分散処理を行い、分散液濃度を3,000個/μL~1万個/μLとして前記装置により平均粒子径、平均円形度、及び円形度の標準偏差(SD)を測定する。
ただし、粒子径は円相当径とし、平均粒子径は円相当径(個数基準)により求め、前記フロー式粒子像分析装置の解析条件は以下とする。
[解析条件]
粒子径限定:0.5μm≦円相当径(個数基準)≦200.0μm
粒子形状限定:0.93<円形度≦1.00
また、本実施形態において平均円形度の定義は次の通りである。
(平均円形度)=(粒子の投影面積と等しい円の周囲長)/(粒子の投影像の周囲長)
【0185】
<洗浄工程>
前記洗浄工程は、前記シェル化工程又は前記融着工程で得られた樹脂粒子を洗浄する工程である。
上述の方法で得られた樹脂粒子の分散液には、該樹脂粒子の他に、凝集剤等の副材料が含まれていることがあるため、前記樹脂粒子の分散液から前記樹脂粒子のみを取り出すために洗浄を行うことが好ましい。
【0186】
前記樹脂粒子の洗浄方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、遠心分離法、減圧濾過法、又はフィルタープレス法が挙げられる。
いずれの洗浄方法によっても前記樹脂粒子のケーキ体が得られるが、一度の操作で十分に洗浄できない場合は、得られたケーキ体を再度水系溶媒に分散させてスラリーにして前記洗浄方法の少なくともいずれかで、前記樹脂粒子を取り出す工程を繰り返してもよい。
前記減圧濾過法又は前記フィルタープレス法によって洗浄を行う場合は、水系溶媒を前記ケーキ体に貫通させて、前記樹脂粒子が抱き込んだ副材料を洗い流す方法をとってもよい。
【0187】
前記洗浄工程に用いられる前記水系溶媒としは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、又は水とアルコールとの混合溶媒が挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、又はエタノールが挙げられる。
これらの中でも、前記水系溶媒は、コストや排水処理などによる環境負荷の点から、水が好ましい。
【0188】
<乾燥工程>
前記乾燥工程は、前記洗浄工程で得られた樹脂粒子を洗浄する工程である。
前記洗浄工程で洗浄された樹脂粒子は、前記水系媒体を多く抱き込んでいるため、前記乾燥工程で乾燥を行い、前記水系媒体を除去することで、前記樹脂粒子のみを得ることができる。
【0189】
乾燥の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動槽乾燥機、回転式乾燥機、又は攪拌式乾燥機等の乾燥機を使用する方法が挙げられる。
【0190】
乾燥された樹脂粒子の最終的な水分量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水分が1質量%未満であることが好ましい。
【0191】
前記乾燥工程で乾燥された樹脂粒子は、軟凝集をしており、使用に際して不都合が生じる場合には、解砕を行い、軟凝集をほぐしてもよい。
前記解砕を行う方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、コーヒーミル、オースターブレンダー、又はフードプロセッサー等の装置を用いる方法が挙げられる。
【0192】
<アニーリング工程>
前記アニーリング工程は、結晶性樹脂を添加した場合に、前記乾燥工程の後に行われる工程であり、結晶性樹脂と、非晶質樹脂とを相分離させる工程である。
【0193】
前記アニーリング処理を行う方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)付近の温度で10時間以上保管する方法などが挙げられる。
【0194】
前記融着工程において、使用している樹脂のガラス転移温度(Tg)を超える温度付近で加熱した場合、前記結晶性樹脂と前記非晶質樹脂とが相溶状態となり、耐熱保存性と低温定着性の両立ができないことがあるが、前記アニーリング処理を行うと、前記結晶性樹脂と前記非晶質樹脂との相分離が進み、相溶状態ではなくなる点で有利である。
【0195】
<外添工程>
前記外添工程は、前記乾燥工程又は前記アニーリング工程で得られた樹脂粒子と、帯電制御剤又はクリーニング性向上剤とを混合して、前記樹脂粒子の表面に帯電制御剤又はクリーニング性向上剤を付与する工程である。
これにより、前記樹脂粒子に、流動性、帯電性、又はクリーニング性等の性質を付与することができる。
【0196】
前記帯電制御剤又はクリーニング性向上剤としては、前記(樹脂粒子)の項目で説明したものを使用することができる。
【0197】
前記樹脂粒子と、前記帯電制御剤又は前記クリーニング性向上剤とを混合する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士又は複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などが挙げられる。
【0198】
前記混合に使用する装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オングミル(ホソカワミクロン株式会社製)、I式ミル(日本ニューマチック工業株式会社製)、又はこれらの装置を改造して粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業株式会社製)、若しくは、自動乳鉢が挙げられる。
【0199】
前記樹脂粒子は、環境負荷が少なく、低温定着性、耐熱保存性、及び耐フィルミング性に優れるものであるため、トナーに好適に用いられる。したがって、本発明には、トナーに用いられる前記樹脂粒子である「トナー用樹脂粒子」が含まれる。
【0200】
(トナー)
本発明のトナーは、本発明の樹脂粒子を含有し、更に外添剤を含有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0201】
<樹脂粒子>
前記樹脂粒子は、前記(樹脂粒子)の項目に記載の通りであり、その詳細は省略する。
前記トナーにおいて、前記樹脂粒子は、トナー母体粒子となる。
【0202】
前記トナーにおける前記樹脂粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記トナーは、前記樹脂粒子そのものであってもよい。
【0203】
<外添剤>
前記外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機粒子又は高分子系微粒子が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0204】
前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、又は窒化ケイ素が挙げられる。
【0205】
前記無機微粒子の一次粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm~2μmが好ましく、5nm~500nmがより好ましい。
【0206】
前記無機粒子のBET法による比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20m/g~500m/gであることが好ましい。
【0207】
前記高分子系微粒子としては、例えば、ソープフリー乳化重合、懸濁重合、又は分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステル共重合体又はアクリル酸エステル共重合体、シリコン、ベンゾグアナミン、又はナイロン等の重縮合系、若しくは、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0208】
前記外添剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。
前記表面処理に用いられる表面処理剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコンオイル、又は変性シリコンオイルが挙げられる。
【0209】
前記外添剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂粒子の全量に対して、0.01質量%~5質量%が好ましい。
【0210】
<その他の成分>
前記トナーにおける前記その他の成分としては、トナーに使用し得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記その他の成分の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0211】
前記トナーは、前記樹脂粒子を含有するため、環境負荷が少なく、低温定着性、耐熱保存性、及び耐フィルミング性に優れるものである。
【0212】
前記トナーの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、前記トナー母体粒子としての樹脂粒子と、前記外添剤とを混合する方法などが挙げられる。この際、機械的衝撃力を印加することが、前記トナー母体粒子の表面から前記外添剤の粒子が脱離するのを抑制することができる点で好ましい。
【0213】
前記機械的衝撃力を印加する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高速で回転する羽根によって、前記樹脂粒子と前記外添剤との混合物に衝撃力を印加する方法;高速気流中に前記樹脂粒子と前記外添剤との混合物を投入し、加速させて粒子同士又は粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などが挙げられる。
【0214】
(現像剤)
本発明の現像剤は、少なくとも本発明のトナーを含有し、更に必要に応じてキャリア等の適宜選択されるその他の成分を含有する。
本発明の現像剤に含有される前記トナーは、本発明の樹脂粒子を含有するため、前記現像剤は、環境負荷が少なく、低温定着性、耐熱保存性、及び耐フィルミング性に優れるものである。
前記現像剤は、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命が向上することから、二成分現像剤が好ましい。
【0215】
前記現像剤を一成分現像剤として用いる場合、前記トナーの収支が行われても、該トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するブレード等の部材へのトナーの融着が少なく、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0216】
前記現像剤を二成分現像剤として用いる場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0217】
<キャリア>
前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、該芯材を被覆する樹脂層を有するものが好ましい。
【0218】
<<芯材>>
前記芯材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50emu/g~90emu/gのマンガン-ストロンチウム系材料、又は50emu/g~90emu/gのマンガン-マグネシウム系材料などが挙げられる。また、画像濃度を確保するためには、100emu/g以上の鉄粉、又は75emu/g~120emu/gのマグネタイト等の高磁化材料を用いることが好ましい。また、穂立ち状態となっている現像剤の感光体に対する衝撃を緩和でき、高画質化に有利であることから、30emu/g~80emu/gの銅-亜鉛系等の低磁化材料を用いることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0219】
前記芯材の体積平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm以上150μm以下が好ましく、40μm以上100μm以下がより好ましい。前記芯材の体積平均粒子径が10μm以上であると、キャリア中に微粉が多くなることを防ぎ、一粒子当たりの磁化が低下してキャリアの飛散が生じることを抑制することができる。また、前記芯材の体積平均粒子径が、150μm以下であると、比表面積が低下することを防ぎ、トナーの飛散が生じることを抑制することができ、ベタ部分の多いフルカラーでは、特に、ベタ部の再現が悪くなることを抑制することができる。
【0220】
前記トナーを二成分系現像剤に用いる場合、前記キャリアと混合して用いればよく、前記二成分現像剤中の前記キャリアの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記二成分現像剤100質量部に対して、90質量部以上98質量部以下が好ましく、93質量部以上97質量部以下がより好ましい。
【0221】
前記現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、又は二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。
【0222】
(トナー収容ユニット)
本発明のトナー収容ユニットは、トナーを収容する機能を有するユニットに、トナーを収容したものである。
前記トナー収容ユニットに収容される前記トナーは、本発明のトナーである。したがって、本発明のトナー収容ユニットは、環境負荷が少ないものである。
【0223】
前記トナー収容ユニットの態様としては、前記トナーを収容できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トナー収容容器、現像器、又はプロセスカートリッジが挙げられる。
【0224】
<トナー収容容器>
前記トナー収容容器とは、前記トナーを収容した容器をいう。
前記トナー収容容器としては、特に限定されず、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、容器本体と、キャップとを有するものなどが挙げられる。
【0225】
前記容器本体の大きさとしては、特に限定されず、適宜変更することができる。
【0226】
前記容器本体の形状としては、特に限定されず、適宜変更することができるが、筒状であることが好ましい。
【0227】
前記容器本体の構造としては、特に限定されず、適宜変更することができるが、内周面にスパイラル状の凹凸が形成され、回転させることにより内容物である前記トナーが排出口側に移行することが可能である、スパイラル状の凹凸の一部又は全てが蛇腹機能を有する構造が好ましい。
【0228】
前記容器本体の材質としては、特に限定されず、適宜変更することができるが、寸法精度がよいものであることが好ましく、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、又はポリアセタール樹脂等の樹脂材料が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0229】
前記トナー収容容器は、保存及び搬送が容易であり、取扱性に優れるため、プロセスカートリッジ又は画像形成装置に着脱可能に取り付け、前記トナーの補給に使用することができる。
【0230】
<現像器>
前記現像器とは、前記トナーを収容し、現像手段を有するものをいう。
前記現像手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記トナー収容容器と、該トナー収容容器内に収容されたトナーを担持すると共に搬送するトナー担持体とを少なくとも有する。
なお、前記現像手段は、担持するトナーの厚さを規制するため規制部材等を更に有してもよい。
【0231】
<プロセスカートリッジ>
前記プロセスカートリッジとは、少なくとも静電潜像担持体と、現像手段とを一体とし、前記トナーを収容し、画像形成装置に対して着脱可能であるものをいう。前記プロセスカートリッジは、更に必要に応じて、帯電手段、露光手段、クリーニング手段、及び除電手段から選択される少なくとも1種を有していてもよい。
【0232】
前記プロセスカートリッジの一例としては、各種画像形成装置に着脱可能に成型されており、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に担持された静電潜像を前記トナーで現像してトナー像を形成する現像手段を少なくとも有するものなどが挙げられ、必要に応じて、更にその他の手段を有していてもよい。
【0233】
次に、前記プロセスカートリッジの一実施形態を図1に示す。本実施形態のプロセスカートリッジ110は、図1に示すように、静電潜像担持体10を内蔵し、帯電手段としての帯電器58、現像手段としての現像器40、及びクリーニング手段としてのクリーニング装置90を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。図1中、符号Lは、露光手段(図示せず)からの露光、符号95は記録紙をそれぞれ示す。
静電潜像担持体10としては、後述する画像形成装置における静電潜像担持体と同様のものを用いることができる。帯電器58には、任意の帯電部材が用いられる。
図1に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについては、静電潜像担持体10は、矢印方向に回転しながら、帯電器58による帯電、露光手段による露光Lにより、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。
この静電潜像は、現像器40でトナー現像され、該トナー現像は転写ローラ80により、記録紙95に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の静電潜像担持体10表面は、クリーニング装置90によりクリーニングされ、更に除電手段(図示せず)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【0234】
(画像形成装置及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成するトナーを備える現像手段と、を有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。前記現像手段における前記トナーは、本発明のトナーである。
【0235】
本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、トナーを用いて前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成する現像工程と、を含み、更に必要に応じて、その他の工程を有する。前記現像工程における前記トナーは、本発明のトナーである。
【0236】
前記画像形成方法は、前記画像形成装置によって工程に行われる。以下に、本発明の画像形成装置の説明と併せて、本発明の画像形成方法について説明する。
【0237】
<静電潜像担持体>
前記静電潜像担持体(以下、「感光体」と称することがある)の材質、構造、及び大きさとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。
前記静電潜像担持体の材質としては、例えば、無機感光体又は有機感光体が挙げられる。
前記無機感光体としては、例えば、アモルファスシリコン又はセレンが挙げられる。
前記有機感光体としては、例えば、ポリシラン又はフタロポリメチンが挙げられる。
前記静電潜像担持体としては、これらの中でも長寿命性の点でアモルファスシリコンが好ましい。
【0238】
前記アモルファスシリコン感光体としては、例えば、支持体を50℃~400℃に加熱し、該支持体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD(化学気相成長、Chemical Vapor Deposition)法、光CVD法、又はプラズマCVD法等の成膜法によりa-Siからなる光導電層を有する感光体を用いることができる。前記成膜法は、これらの中でも、プラズマCVD法、即ち、原料ガスを直流又は高周波あるいはマイクロ波グロー放電によって分解し、支持体上にa-Si堆積膜を形成する方法が好適である。
【0239】
前記静電潜像担持体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、円筒状が好ましい。
前記円筒状の前記静電潜像担持体の外径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3mm以上100mm以下が好ましく、5mm以上50mm以下がより好ましく、10mm以上30mm以下が特に好ましい。
【0240】
<静電潜像形成手段及び静電潜像形成工程>
前記静電潜像形成手段は、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する手段である。
前記静電潜像形成工程は、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。
前記静電潜像形成工程は、前記静電潜像形成手段によって好適に行われる。
【0241】
前記静電潜像形成手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光部材とを少なくとも有する手段などが挙げられる。
【0242】
前記静電潜像形成工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記静電潜像担持体の表面を帯電させた後、像様に露光することにより行うことができる。
【0243】
<<帯電部材及び帯電>>
前記帯電部材としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、接触帯電器、コロトロン、又はスコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器などが挙げられる。
前記非接触帯電器は、導電性又は半導電性の、ローラ、ブラシ、フィルム、又はゴムブレード等を備えていることが好ましい。
【0244】
前記帯電は、例えば、前記帯電部材を用いて前記静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
【0245】
前記帯電部材の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等どのような形態をとってもよく、前記画像形成装置の仕様や形態に合わせて選択することができる。
前記帯電部材としては、前記接触式の帯電部材に限定されるものではないが、帯電部材から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電部材を用いることが好ましい。
【0246】
<<露光部材及び露光>>
前記露光部材としては、前記帯電部材により帯電された前記静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、又は液晶シャッタ光学系等の各種露光部材などが挙げられる。
【0247】
前記露光部材に用いられる光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、又はエレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般などが挙げられる。
【0248】
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、又は色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
【0249】
前記露光は、例えば、前記露光部材を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0250】
<現像手段及び現像工程>
前記現像手段は、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成するトナーを備える手段である。
前記現像工程は、トナーを用いて前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成する工程である。
前記現像工程は、前記現像手段によって好適に行われる。
【0251】
前記現像手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよい。また、前記現像手段は、単色用現像手段であってもよいし、多色用現像手段であってもよい。これらの中でも、前記現像手段としては、前記トナーを摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、内部に固定された磁界発生手段を有し、かつ表面に前記トナーを含む現像剤を担持して回転可能な現像剤担持体を有する現像装置が好ましい。
【0252】
前記現像手段内では、例えば、前記トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記静電潜像担持体近傍に配置されている。そのため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該静電潜像担持体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該静電潜像担持体の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0253】
ここで、前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(現像剤)の項目に記載のものを用いることができる。
【0254】
<その他の手段及びその他の工程>
前記その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、転写手段、定着手段、クリーニング手段、除電手段、リサイクル手段、又は制御手段が挙げられる。
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、転写工程、定着工程、クリーニング工程、除電工程、リサイクル工程、又は制御工程が挙げられる。
前記転写工程は前記転写手段により好適に行われ、前記定着手段は前記定着手段により好適に行われ、前記クリーニング工程は前記クリーニング手段により好適に行われ、前記除電工程は前記除電手段により好適に行われ、前記リサイクル工程は前記リサイクル手段により好適に行われ、前記制御工程は前記制御手段により好適に行われる。
【0255】
<<転写手段及び転写工程>>
前記転写手段は、前記現像手段で形成された可視像を記録媒体に転写する手段である。
前記転写工程は、前記現像工程で形成された可視像を記録媒体に転写する工程である。
【0256】
前記転写手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
【0257】
前記転写工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に前記可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましい。
【0258】
ここで、前記記録媒体上に二次転写される画像が複数色のトナーからなるカラー画像である場合に、前記転写手段により、前記中間転写体上に各色のトナーを順次重ね合わせて当該中間転写体上に画像を形成し、前記中間転写手段により、当該中間転写体上の画像を前記記録媒体上に一括で二次転写する構成とすることができる。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルトなどが好適に挙げられる。
【0259】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記感光体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。
前記転写器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、又は粘着転写器が挙げられる。
【0260】
なお、前記記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0261】
<<定着手段及び定着工程>>
前記定着手段は、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる手段である。
前記定着工程は、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる工程である。
【0262】
前記定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧部材が好ましい。
前記加熱加圧部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、又は加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せなどが挙げられる。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着手段と共に、あるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0263】
前記定着工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
【0264】
前記加熱加圧部材における加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、80℃以上200℃以下が好ましい。
【0265】
前記定着工程における面圧としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10N/cm以上80N/cm以下であることが好ましい。
【0266】
<<クリーニング手段及びクリーニング工程>>
前記クリーニング手段は、前記感光体上に残留する前記トナーを除去する手段である。
前記クリーニング工程は、前記感光体上に残留する前記トナーを除去する工程である。
【0267】
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、又はウエブクリーナが挙げられる。
【0268】
<<除電手段及び除電工程>>
前記除電手段は、前記感光体に対し除電バイアスを印加して除電する手段である。
前記除電工程は、前記感光体に対し除電バイアスを印加して除電する工程である。
【0269】
前記除電手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除電ランプなどが挙げられる。
【0270】
<<リサイクル手段及びリサイクル工程>>
前記リサイクル手段は、前記クリーニング手段により除去した前記トナーを前記現像手段に搬送し、リサイクルさせる手段である。
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像工程に搬送し、リサイクルする工程である。
【0271】
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の搬送手段などが挙げられる。
【0272】
<<制御手段及び制御工程>>
前記制御手段は、前記各手段の動きを制御できる手段である。
前記制御工程は、前記各手段の動きを制御できる工程である。
【0273】
前記制御手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、又はコンピュータ等の機器が挙げられる。
【0274】
次に、本発明の画像形成装置及び本発明の画像形成方法の一実施形態について、図2図5を参照しながら説明する。
図2に示すカラー画像形成装置100Aは、前記静電潜像担持体としての感光体ドラム10(以下「感光体10」と称することがある)と、前記帯電手段としての帯電ローラ20と、前記露光手段としての露光装置30と、前記現像手段としての現像器40と、中間転写体50と、クリーニングブレードを有する前記クリーニング手段としてのクリーニング装置60と、前記除電手段としての除電ランプ70とを備える。
【0275】
中間転写体50は、無端ベルトであり、その内側に配置されこれを張架する3個のローラ51によって、矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体50の近傍には、クリーニングブレードを有するクリーニング装置90が配置されている。また、中間転写体50の近傍には、記録媒体としての転写紙95に現像像(トナー画像)を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加可能な前記転写手段としての転写ローラ80が、中間転写体50に対向して配置されている。中間転写体50の周囲には、中間転写体50上のトナー画像に電荷を付与するためのコロナ帯電器58が、該中間転写体50の回転方向において、感光体10と中間転写体50との接触部と、中間転写体50と転写紙95との接触部との間に配置されている。
【0276】
現像器40は、前記現像剤担持体としての現像ベルト41と、現像ベルト41の周囲に併設したブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cとから構成されている。なお、ブラック現像ユニット45Kは、現像剤収容部42Kと現像剤供給ローラ43Kと現像ローラ44Kとを備えている。イエロー現像ユニット45Yは、現像剤収容部42Yと現像剤供給ローラ43Yと現像ローラ44Yとを備えている。マゼンタ現像ユニット45Mは、現像剤収容部42Mと現像剤供給ローラ43Mと現像ローラ44Mとを備えている。シアン現像ユニット45Cは、現像剤収容部42Cと現像剤供給ローラ43Cと現像ローラ44Cとを備えている。また、現像ベルト41は、無端ベルトであり、複数のベルトローラに回転可能に張架され、一部が静電潜像担持体10と接触している。
【0277】
図2に示すカラー画像形成装置100Aにおいて、例えば、帯電ローラ20が感光体ドラム10を一様に帯電させる。露光装置30が感光体ドラム10上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。感光体ドラム10上に形成された静電潜像を、現像器40からトナーを供給して現像してトナー画像を形成する。該トナー画像が、ローラ51から印加された電圧により中間転写体50上に転写(一次転写)され、更に転写紙95上に転写(二次転写)される。その結果、転写紙95上には転写像が形成される。なお、感光体10上の残存トナーは、クリーニング装置60により除去され、感光体10における帯電は除電ランプ70により一旦、除去される。
【0278】
図3に、本発明の画像形成装置の他の一例を示す。画像形成装置100Bは、現像ベルト41を設けずに、感光体ドラム10の周囲に、ブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cが直接対向して配置されている以外は、図2に示す画像形成装置100Aと同様の構成を有する。
【0279】
図4に、本発明の画像形成装置の他の一例を示す。図4に示す画像形成装置100Cは、複写装置本体150と、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400とを備えている。
複写装置本体150には、無端ベルト状の中間転写体50が中央部に設けられている。そして、中間転写体50は、支持ローラ14、15、及び16に張架され、図4中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラ15の近傍には、中間転写体50上の残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング装置17が配置されている。支持ローラ14と支持ローラ15とにより張架された中間転写体50には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段18が対向して並置されたタンデム型現像器120が配置されている。タンデム型現像器120の近傍には、前記露光部材である露光装置21が配置されている。中間転写体50における、タンデム型現像器120が配置された側とは反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22においては、無端ベルトである二次転写ベルト24が一対のローラ23に張架されており、二次転写ベルト24上を搬送される転写紙と中間転写体50とは互いに接触可能である。二次転写装置22の近傍には前記定着手段である定着装置25が配置されている。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26と、これに押圧されて配置された加圧ローラ27とを備えている。
なお、タンデム画像形成装置においては、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、転写紙の両面に画像形成を行うために該転写紙を反転させるためのシート反転装置28が配置されている。
【0280】
次に、タンデム型現像器120を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。即ち、先ず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、あるいは原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。
【0281】
スタートスイッチを押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ300が駆動する。そして、第1走行体33及び第2走行体34が走行する。このとき、第1走行体33により、光源からの光が照射されると共に原稿面からの反射光を第2走行体34におけるミラーで反射し、結像レンズ35を通して読取りセンサ36で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報とされる。
【0282】
そして、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各画像情報は、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段、及びシアン用画像形成手段)にそれぞれ伝達される。そして、各画像形成手段において、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各トナー画像が形成される。
【0283】
即ち、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)は、図5に示すように、それぞれ、静電潜像担持体10(ブラック用静電潜像担持体10K、イエロー用静電潜像担持体10Y、マゼンタ用静電潜像担持体10M、及びシアン用静電潜像担持体10C)と、該静電潜像担持体10を一様に帯電させる前記帯電手段である帯電装置160と、各カラー画像情報に基づいて各カラー画像対応画像様に前記静電潜像担持体を露光(図5中、L)し、該静電潜像担持体上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光装置と、該静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー、及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー画像を形成する前記現像手段である現像装置61と、該トナー画像を中間転写体50上に転写させるための転写帯電器62と、クリーニング装置63と、除電器64とを備えている。
【0284】
そして、各画像形成手段18は、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像)を形成可能である。こうして形成された該ブラック画像、該イエロー画像、該マゼンタ画像及び該シアン画像は、支持ローラ14、15、及び16により回転移動される中間転写体50上にそれぞれ、ブラック用静電潜像担持体10K上に形成されたブラック画像、イエロー用静電潜像担持体10Y上に形成されたイエロー画像、マゼンタ用静電潜像担持体10M上に形成されたマゼンタ画像及びシアン用静電潜像担持体10C上に形成されたシアン画像が、順次転写(一次転写)される。そして、中間転写体50上に前記ブラック画像、前記イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像が重ね合わされて合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
【0285】
一方、給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つからシート(記録紙)を繰り出す。シートは、分離ローラ145で1枚ずつ分離されて給紙路146に送り出され、搬送ローラ147で搬送されて複写機本体150内の給紙路148に導かれ、レジストローラ49に突き当てて止められる。あるいは、給紙ローラ142を回転して手差しトレイ54上のシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。なお、レジストローラ49は、一般には接地されて使用されるが、シートの紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。
【0286】
そして、中間転写体50上に合成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体50と二次転写装置22との間にシート(記録紙)を送出させ、二次転写装置22により該合成カラー画像(カラー転写像)を該シート(記録紙)上に転写(二次転写)する。そうすることにより、該シート(記録紙)上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写体50上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置17によりクリーニングされる。
【0287】
カラー画像が転写され形成された前記シート(記録紙)は、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25へと送出され、定着装置25において、熱と圧力とにより前記合成カラー画像(カラー転写像)が該シート(記録紙)上に定着される。その後、該シート(記録紙)は、切換爪55で切り換えて排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。あるいは、シートは、切換爪55で切り換えてシート反転装置28により反転されて再び転写位置へと導かれ、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
【実施例0288】
以下に製造例、調製例、実施例、及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの製造例、調製例、及び実施例に何ら限定されるものではない。なお、製造例、調製例、実施例、及び比較例において、別段の断りない限り、「%」は「質量%」を示し、「部」は「質量部」を示す。また、実施例及び比較例における配合量は、各原材料における固形分の配合量を示す。
【0289】
<<アミン価の測定>>
以下の製造例において、ケチミン化合物のアミン価は、アミン価はJIS K7237に記載の方法により測定した。
【0290】
<<分子量の測定>>
以下の合成例において、非晶質ポリエステル樹脂A、非晶質ポリエステル樹脂B、及び結晶性ポリエステル樹脂Cの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定装置を用いて、下記分析条件で測定した。
[分析条件]
・装置:GPC-8220GPC(東ソー株式会社製)
・カラム:TSKgel(登録商標) SuperHZM-H 15cm 3連(東ソー株式会社製)
・温度:40℃
・検出器:RI(屈折率)検出器を用
・溶媒:テトラヒドロフラン(THF)又はクロロホルム
・流速:0.35mL/分間
・試料:0.15質量%の試料を100μL注入
・試料の前処理:非晶質ポリエステル樹脂A、非晶質ポリエステル樹脂B、又は結晶性ポリエステル樹脂CをTHF(テトラヒドロフラン(安定剤含有)、富士フイルム和光純薬株式会社製)又はクロロホルムに0.15質量%で溶解した後、0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いた。
測定試料の分子量測定にあたっては、測定試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Showdex(登録商標)STANDARD(昭和電工株式会社製)のStd.No S-6550、S-2330,S-1700、S-740、S-10、S-662、S-2.9、及びS-0.6を用いた。
【0291】
<<融点(Tm)及びガラス転移温度(Tg)の測定>>
以下の合成例において、非晶質ポリエステル樹脂A及び非晶質ポリエステル樹脂Bのガラス転移温度(Tg)、並びに結晶性ポリエステル樹脂Cの融点(Tm)は、DSCシステム(示差走査熱量計)(Q-200、TAインスツルメント社製)を用いて測定した。
まず、測定試料約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットした。次いで、窒素雰囲気下、-80℃から昇温速度10℃/分間にて150℃まで加熱した(昇温1回目)。その後、150℃から降温速度10℃/分間にて-80℃まで冷却させ、更に昇温速度10℃/分間にて150℃まで加熱(昇温2回目)した。この昇温1回目、及び昇温2回目のそれぞれにおいて、示差走査熱量計(Q-200、TAインスツルメント社製)を用いてDSC曲線を計測した。
得られたDSC曲線から、Q-200システム中の解析プログラムを用いて、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、測定試料の昇温2回目におけるガラス転移温度を求めた。
また、得られたDSC曲線から、Q-200システム中の解析プログラムを用いて、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、測定試料の昇温2回目における吸熱ピークトップ温度を融点として求めた。
この2回目の昇温時における吸熱ピークトップ温度を各対象試料の融点とし、2回目の昇温時におけるTgを各対象試料のTgとした。
【0292】
<<体積平均粒径の測定>>
以下の調製例、実施例、及び比較例において、結晶性ポリエステル樹脂C分散液中の結晶性ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径、ワックス粒子の体積平均粒径、及び乳化スラリーの体積平均粒径は、粒度分布測定装置(コールターマルチサイザーIII、コールター社製)を用いて測定した。
具体的には、電解液(ISOTON-II、コールター社製)100mL中に分散剤として界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、東京化成工業株式会社製)を2mL加えた混合液を得た。この混合液に、更に測定試料を固形分にして10mg加え、測定試料を懸濁した電解液を得た。この測定試料を懸濁した電解液を、超音波分散器で約1分間~約3分間の分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIIにより、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用い、測定試料の体積及び個数を測定して、体積分布と個数分布を算出した。得られた分布から、測定試料の体積平均粒径(Dv)を求めた。
【0293】
<<平均円形度の測定>>
以下の実施例及び比較例において、分散スラリーの平均円形度は、下記式で定義され、フロー式粒子像分析装置(FPIA-3000、シスメックス株式会社製)を用いて測定した。
(平均円形度)=(粒子の投影面積と等しい円の周囲長)/(粒子の投影像の周囲長)
【0294】
具体的には、容器中の予め不純固形物を除去した水100mL中に分散剤として界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、東京化成工業株式会社製)を0.1mL加え、更に測定試料を0.1g程度加えた。測定試料を分散した懸濁液を、超音波分散器で約1分間の分散処理を行い、分散液濃度を3,000個/μL~1万個/μLとして前記装置により平均粒子径、平均円形度、及び円形度の標準偏差(SD)を測定した。
ただし、粒子径は円相当径とし、平均粒子径は円相当径(個数基準)により求め、前記フロー式粒子像分析装置の解析条件は以下とした。
[解析条件]
・粒子径限定:0.5μm≦円相当径(個数基準)≦200.0μm
・粒子形状限定:0.93<円形度≦1.00
【0295】
(製造例1:ケチミンの合成)
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン170部及びメチルエチルケトン75部を仕込み、50℃で5時間反応を行い、[ケチミン化合物1]を得た。[ケチミン化合物1]のアミン価は418mgKOH/gであった。
【0296】
(製造例A-1:非晶質ポリエステル樹脂A-1の合成)
<プレポリマーA-1の合成>
冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器中に、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、イソフタル酸、及び植物由来のセバシン酸(豊国製油株式会社製)を、水酸基とカルボキシル基のモル比である[OH/COOH]が1.1であり、ジオール成分の構成が3-メチル-1,5-ペンタンジオール100モル%であり、ジカルボン酸成分の構成がイソフタル酸73モル%及びセバシン酸23モル%であり、全モノマー中におけるトリメチロールプロパンの量が1.5モル%となるように、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して1,000ppm)とともに投入した。その後、4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。その後更に、10mmHg~15mmHgの減圧下で5時間反応させ、[中間体ポリエステルA-1]を得た。
【0297】
次に、冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器中に、得られた[中間体ポリエステルA-1]とイソホロンジイソシアネート(IPDI)とをモル比(IPDIのイソシアネート基/中間体ポリエステルの水酸基)2.0で投入し、酢酸エチルで50%酢酸エチル溶液となるように希釈後、150℃で4時間反応させ、[プレポリマーA-1]を得た。
【0298】
<非晶質ポリエステル樹脂A-1の合成>
得られた[プレポリマーA-1]を加熱装置、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器中で撹拌し、更に[プレポリマーA-1]中のイソシアネート量に対して[ケチミン化合物1]のアミン量が等モルになる量の[ケチミン化合物1]を反応容器に滴下していき、45℃で10時間撹拌後にプレポリマー伸長物を取り出した。得られたプレポリマー伸長物を残酢酸エチル量が100ppm以下になるまで50℃で減圧乾燥させ、[非晶質ポリエステル樹脂A-1]を得た。この樹脂のTgは-51℃、分子量(Mw)は17,000であった。
【0299】
(製造例B-1:非晶質ポリエステル樹脂B-1の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱伝対を装備した四つ口フラスコに、植物由来のプロピレングリコール(Dupont社製)、テレフタル酸、及び植物由来のコハク酸(Bioamber社製)を、ジオール成分の構成がプロピレングリコール100モル%であり、ジカルボン酸成分の構成がテレフタル酸86モル%及びコハク酸14モル%であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比である[OH/COOH]が1.3となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1モル%になるよう入れ、180℃、常圧、4時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]を得た。この樹脂のTgは57℃、分子量(Mw)は10,000であった。
【0300】
(製造例B-2:非晶質ポリエステル樹脂B-2の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物、テレフタル酸、及びアジピン酸を、ジオール成分の構成がビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物60モル%及びビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物40モル%であり、カルボン酸成分の構成がテレフタル酸97モル%及びアジピン酸3モル%であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比である[OH/COOH]が1.3となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1モル%になるよう入れ、180℃、常圧、4時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂B-2]を得た。この樹脂のTgは65℃、分子量(Mw)は9,000であった。
【0301】
製造例A-1で得られた非晶質ポリエステル樹脂A及び製造例B-1及びB-2で得られた非晶質ポリエステル樹脂Bについて、下記表1にまとめて示す。
【0302】
【表1】
【0303】
(製造例C-1:結晶性ポリエステル樹脂C-1の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコに、植物由来のセバシン酸、及び1,6-ヘキサンジオールを、水酸基とカルボキシル基とのモル比である[OH/COOH]が0.9となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に、180℃で10時間反応させた後、200℃に昇温して3時間反応させ、更に8.3kPaの圧力にて2時間反応させて[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を得た。この樹脂の融点は67℃、分子量(Mw)は25,000であった。
【0304】
(調製例1-1:結晶性ポリエステル樹脂分散液1の調製)
[結晶性ポリエステル樹脂C-1]350部、メチルエチルケトン210部、及びイソプロピルアルコール61.8部をセパラブルフラスコに入れ、これを50℃で充分混合、溶解した後、10%アンモニア水溶液を16.24部滴下した。加熱温度を65℃に下げ、攪拌しながらイオン交換水を、送液ポンプを用いて送液速度8g/分間で滴下し、液が均一に白濁した後、送液速度12g/分間に上げ、総液量が1,400部になったところで、イオン交換水の滴下を止めた。その後、減圧下で溶媒の除去を行い、[結晶性ポリエステル樹脂分散液1]を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径は150nm、樹脂粒子の固形分濃度は30%であった。
【0305】
(調製例2-1:ワックス分散液W-1の調製)
イオン交換水720部にエステルワックス180部(日油株式会社製、WE-11、植物由来モノマーの合成ワックス、融点67℃)、界面活性剤としてアニオン系界面活性剤17部(第一工業製薬株式会社製、ネオゲン(登録商標)SC、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を添加した。これを90℃に加熱しながらホモジナイザーで分散処理し、[ワックス分散液W-1]を得た。得られたワックス粒子の体積平均粒径は300nm、樹脂粒子の固形分濃度は25%であった。
【0306】
(調製例3-1:マスターバッチ(MB)-1の調製)
水1,200部に、カーボンブラック(Printex(登録商標)35、デクサ社製)〔DBP吸油量=42mL/100mg、pH=9.5〕500部及び[非晶質ポリエステル樹脂B-1]500部を加え、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で混合し、混合物を、2本ロールを用いて150℃で30分間混練後、圧延冷却し、パルペライザーで粉砕し、マスターバッチ[MB-1]を得た。
【0307】
(実施例1)
<油相の調製>
[非晶質ポリエステル樹脂A-1]80部、[ワックス分散液W-1]50部(固形分)、[非晶質ポリエステル樹脂B-1]450部、フレーク状のリサイクルPET樹脂[P-1]150部及び[MB-1]100部を容器に入れ、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)で5,000rpmで60分間混合し、[油相1]を得た。
【0308】
<水相の調製>
水990部、ドデシル硫酸ナトリウム20部、及び酢酸エチル90部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とした。
【0309】
<転相乳化>
[油相1]700部をTKホモミキサーで回転数8,000rpmで撹拌しながら28%アンモニア水20部を加え、10分間混合した後、[水相1]1,200部を徐々に滴下していき、[乳化スラリー1]を得た。得られた[乳化スラリー1]の体積平均粒径は、560nmであった。
【0310】
<脱溶剤>
撹拌機及び温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃にて180分間脱溶剤した後、[脱溶剤スラリー1]を得た。
【0311】
<凝集>
[脱溶剤スラリー1]に[結晶性ポリエステル樹脂分散液1]70部(固形分)を添加し、更に3%塩化マグネシウム溶液100部を滴下して5分攪拌した後、60℃に昇温し、粒径が5.0μmになったところで塩化ナトリウムを50部添加して凝集工程を終了し、[凝集スラリー1]を得た。
【0312】
<微粒子分散液の調製>
[非晶質ポリエステル樹脂B-2]100部と、メチルエチルケトン300部とを容器に入れ、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)で混合溶解させ、[樹脂溶解液1]を得た。
別途、水990部、ドデシル硫酸ナトリウム20部、及びメチルエチルケトン90部を混合撹拌し、乳白色の液体得た。これを[水相2]とした。
[樹脂溶解液1]をTKホモミキサーで、回転数8,000rpmで撹拌しながら20%水酸化ナトリウム水溶液20部を加え、10分間混合した後、[水相2]1,200部を徐々に滴下していき、[微粒子分散スラリー1]を得た。撹拌機及び温度計をセットした容器に、[微粒子分散スラリー1]を投入し、30℃180分脱溶剤した後、[微粒子分散液1]を得た。得られた[微粒子分散液1]の体積平均粒径は、75nmであった。
【0313】
<シェル化及び融着>
[凝集スラリー1]を攪拌しながら[微粒子分散液1]200部(固形分)を添加し、更に3%塩化マグネシウム溶液100部を滴下して5分攪拌した後、70℃に加熱して、所望の平均円形度である0.957になったところで塩化ナトリウムを50部添加して冷却し、[分散スラリー1]を得た。
【0314】
<洗浄及び乾燥>
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後、以下の(1)~(4)の操作を2回行い[濾過ケーキ1]を得た。
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。
(2):前記(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3):前記(2)の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。
(4):前記(3)の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後、濾過した。
得られた[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmのメッシュで篩い[樹脂粒子母体1]を得た。
【0315】
<外添剤処理工程>
[樹脂粒子母体1]100部に対して、外添剤として疎水性シリカ(HDK(登録商標)H2000、クラリアント株式会社製)2.0部をヘンシェルミキサーにて混合し、目開き500メッシュの篩を通過させ、[トナー1]を得た。
【0316】
(実施例2)
実施例1において、<油相の調製>の工程で使用したPET樹脂[P-1]の添加部数、及び<微粒子分散液の調整>の工程で使用した[非晶質ポリエステル樹脂B-2]の添加部数(<シェル化及び融着>の工程で使用した[微粒子分散液1]中の[非晶質ポリエステル樹脂B-2]の添加部数)を、下記表2に記載した通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の[トナー2]を得た。
【0317】
(実施例3)
実施例1において、<油相の調製>の工程で使用した[非晶質ポリエステル樹脂B-1]の添加部数及びPET樹脂[P-1]の添加部数を、下記表2に記載した通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の[トナー3]を得た。
【0318】
(実施例4)
実施例1において、<油相の調製>の工程で使用した[非晶質ポリエステル樹脂B-1]の添加部数及びPET樹脂[P-1]の添加部数、並びに<微粒子分散液の調整>の工程で使用した[非晶質ポリエステル樹脂B-2]の添加部数(<シェル化及び融着>の工程で使用した[微粒子分散液1]中の[非晶質ポリエステル樹脂B-2]の添加部数)を、下記表2に記載した通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の[トナー4]を得た。
【0319】
(実施例5)
実施例1において、<油相の調製>の工程で使用した[非晶質ポリエステル樹脂B-1]の添加部数を下記表2に記載した通りに変更し、PET樹脂[P-1]150部をフレーク状のリサイクルPBT樹脂[P-2]50部に変更し、かつ<微粒子分散液の調整>の工程で使用した[非晶質ポリエステル樹脂B-2]の添加部数(<シェル化及び融着>の工程で使用した[微粒子分散液1]中の[非晶質ポリエステル樹脂B-2]の添加部数)を下記表2に記載した通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5の[トナー5]を得た。
【0320】
(比較例1)
実施例1において、<油相の調製>の工程で使用した[非晶質ポリエステル樹脂B-1]の添加部数を下記表2に記載した通りに変更し、<油相の調製>の工程でPET樹脂[P-1]を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の[トナー6]を得た。
【0321】
(比較例2)
実施例1において、<油相の調製>の工程で使用した[非晶質ポリエステル樹脂B-1]の添加部数及びPET樹脂[P-1]の添加部数、並びに<微粒子分散液の調整>の工程で使用した[非晶質ポリエステル樹脂B-2]の添加部数(<シェル化及び融着>の工程で使用した[微粒子分散液1]中の[非晶質ポリエステル樹脂B-2]の添加部数)を、下記表2に記載した通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の[トナー7]を得た。
【0322】
(比較例3)
実施例1において、<油相の調製>の工程で使用した[非晶質ポリエステル樹脂B-1]の添加部数を下記表2に記載した通りに変更し、<シェル化及び融着>の工程で[微粒子分散液1]を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の[トナー8]を得た。
【0323】
(比較例4)
実施例1において、<油相の調製>の工程で使用した[非晶質ポリエステル樹脂B-1]の添加部数を下記表2に記載した通りに変更し、<油相の調製>の工程でPET樹脂[P-1]を添加せず、かつ<シェル化及び融着>の工程で[微粒子分散液1]を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4の[トナー9]を得た。
【0324】
(比較例5)
実施例1において、<油相の調製>の工程で[非晶質ポリエステル樹脂B-1]450部を、[非晶質ポリエステル樹脂B-2]700部に変更し、PET樹脂[P-1]を添加せず、かつ<シェル化及び融着>の工程で[微粒子分散液1]を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例5の[トナー10]を得た。
(比較例6)
実施例1において、<油相の調製>の工程で使用した[非晶質ポリエステル樹脂B-1]の添加部数及びPET樹脂[P-1]の添加部数を、下記表2に記載した通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例6の[トナー11]を得た。
【0325】
【表2】
【0326】
実施例1~5及び比較例1~6で得られた各トナーについて、以下の方法で、コアシェル構造の確認及びシェル層の平均厚さの測定、シェル層の樹脂組成の分析、植物度を示す放射性同位体14C濃度の測定、並びに、環境対応樹脂比率(質量%)の算出を行った。結果を下記表3-1に示す。また、実施例1~5及び比較例1~6で得られた各トナーにおけるバイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量A(質量%)及びPET又はPBTの含有量B(質量%)についても、併せて下記表3-1に示す。
【0327】
<<コアシェル構造の確認及びシェル層の平均厚さの測定>>
得られた各トナーをエポキシ系樹脂(Devcon S-31、株式会社ITWパフォーマンスポリマーズ&フルイズジャパン社製)に包埋して硬化させた後、ナイフで断面出しして、ウルトラミクロトーム(Leica ULTRACUT UCT、Leica社製、ダイヤナイフ使用)を用いて、80nmの厚さに切除し、トナーの超薄切片を作製した。作製したトナーの超薄切片を、四酸化ルテニウムで5分間ガス暴露し、シェルとコアを識別染色した。その後、透過型電子顕微鏡(TEM)(H-7000、株式会社日立ハイテク製)を用いて、加速電圧100kV、観察倍率15k倍で観察した。この際、観察するトナーは、任意に10個選択して撮影を行った。前記TEM画像の一例として、実施例1のトナーの断面像を図6に示す。
【0328】
シェル層の平均厚さは、画像処理ソフト(Image-J)を用いて、以下のようにして算出した。
(1)Straight Lineでスケールをなぞった直線を引いた。AnalyzeのSet Scaleでその実長と単位を設定した。
(2)樹脂粒子1個の前記断面像における該樹脂粒子の外周をFreehand-sectionsで囲い、「領域1」を作成した。
(3)前記樹脂粒子1個の前記断面像におけるシェル層を除いた領域の外周(即ち、シェル層とコア層との境界)をFreehand-sectionsで囲い、「領域2」を作成した。
(4)前記「領域1」の重量中心をAnalyzeにより求めた。
(5)独自に開発したプラグインを使用し、前記「領域1」の外周、即ち、前記(2)において前記樹脂粒子1個の外周をFreehand-sectionsで囲った線を等間隔に100分割した座標から、前記(4)で求めた樹脂粒子の重量中心に向かって直線を引いた。
(6)前記(5)で作成した100個の各直線の前記「領域1」を通る長さから、前記「領域2」を通る長さを除いたものの長さを、前記(1)で作成したスケールをなぞった直線を利用して算出し、100個の平均をとったものを、前記樹脂粒子1個のシェル層の厚さとした。
(7)前記(2)~(6)の操作を10個の樹脂粒子について行い、10個の樹脂粒子のシェル層の厚さの平均値を算出した。
下記表3-1に結果を示す。また、下記表3において、コアシェル構造を有するものを「〇」、コアシェル構造を有しないものを「×」で示す。
【0329】
<<シェル層の樹脂組成の分析>>
得られた各トナーをエポキシ系樹脂(Devcon S-31、株式会社ITWパフォーマンスポリマーズ&フルイズジャパン社製)に包埋して硬化させた後、ナイフで断面出しして、ウルトラミクロトーム(Leica ULTRACUT UCT、Leica社製、ダイヤナイフ使用)を用いて、50nmの厚さに切除し、樹脂粒子の超薄切片を作製した。作製したトナーの超薄切片を、基板上(ZnS)に回収し、ナノスケール赤外分光分析システム(nanoIR2、アナシスインスツルメント社製)を用い、シェル層をAFM-IR法にて測定した。測定範囲は、1,900cm-1から910cm-1とし、分解能は2cm-1として、得られたAFM-IR吸収スペクトルから、シェル層の化学構造を解析した。
下記表3-1において、シェル層がバイオマス由来樹脂を含有しないものを「〇」、シェル層がバイオマス由来樹脂を含有するものを「×」、コアシェル構造を有しないものを「-」で示す。
【0330】
<<放射性同位体14C濃度の測定方法>> 各トナーの放射性炭素同位体14C濃度は、放射性炭素年代測定により測定した。 トナーを燃焼させて、そのCO(二酸化炭素)を還元し、C(グラファイト)を得た。該C(グラファイト)の14C濃度を、加速器質量分析装置(AMS、Beta Analytic社製)を用いて計測した。
なお、標準品としては、シュウ酸標準体(HOxII、NIST製)を使用した。
【0331】
<<環境対応樹脂比率(質量%)の算出>>
環境対応樹脂比率を算出するために、まず、各トナーの全質量に対する、バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量(A)、即ちバイオマス度を下記式(1)により算出した。また、PET又はPBTの含有量(B)を、各成分の配合量から算出した。
次に、下記式(2)により、環境対応樹脂比率を算出した。
バイオマス度(%)=14C濃度(pMC)/107.5×100 ・・・ 式(1)
環境対応樹脂比率(質量%)=バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量(A)+PET又はPBTの含有量(B) ・・・ 式(2)
【0332】
実施例1~5及び比較例1~6で得られた各トナーについて、以下の方法で、環境対応性、低温定着性、及び耐フィルミング性の評価を行った。結果を下記表3-2に示す。
【0333】
<評価方法>
<<環境対応性>>
実施例1~5及び比較例1~6で得られたトナー中の環境対応樹脂比率により、下記評価基準に基づき「環境対応性」を評価した。
-「環境対応性」の評価基準-
○:環境対応樹脂比率が、35質量%以上
△:環境対応樹脂比率が、10質量%以上35質量%未満
×:環境対応樹脂比率が、10質量%未満
【0334】
<<低温定着性>>
imageo MP C5503(株式会社リコー製)に使用されているキャリアと、実施例1~5及び比較例1~6で得られたトナーとを、それぞれトナーの濃度が5%となるように混合し、現像剤を得た。
imageo MP C5503(株式会社リコー製)のユニットに前記現像剤を投入した後、PPC用紙タイプ6000<70W>A4 T目(株式会社リコー製)に2cm×15cmの長方形のベタ画像を、トナーの付着量が0.40mg/cmとなるように形成した。このとき、定着ローラの表面温度を変化させ、ベタ画像の現像残画像が所望の場所以外の場所に定着されるコールドオフセットが発生するかどうかを観察し、コールドオフセット温度(定着下限温度)を求め、下記評価基準に基づき「低温定着性」を評価した。
-「低温定着性」の評価基準-
〇:コールドオフセット温度が、110℃未満
△:コールドオフセット温度が、110℃以上125℃未満
×:コールドオフセット温度が、125℃以上
【0335】
<<耐フィルミング性>>
imageo MP C5503(株式会社リコー製)に使用されているキャリアと、実施例1~5及び比較例1~6で得られたトナーとを、トナーの濃度が5%となるように混合し、現像剤を得た。
imageo MP C5503(株式会社リコー製)のユニットに前記現像剤を投入した後、PPC用紙タイプ6000<70W>A4 T目(株式会社リコー製)に印字率2%のプリントパターンを、高温高湿環境下(温度27℃、湿度80%)にて1ジョブ当たり1枚で印字した。10,000枚毎に感光体部分を目視で観察しながら印刷し、下記評価基準に基づき「耐フィルミング性」を評価した。
-「耐フィルミング性」の評価基準-
○:200,000枚で感光体フィルミングが未発生
△:80,000枚~200,000枚で感光体フィルミングが発生した
×:70,000枚までに感光体フィルミングが発生した
【0336】
【表3-1】
【0337】
【表3-2】
【0338】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 少なくとも結着樹脂を含有する樹脂粒子であって、
前記結着樹脂が、バイオマス由来樹脂及びポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートを含有し、
前記バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aと、前記ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートの含有量Bとが、A>Bを満たし、
前記樹脂粒子が、シェル層及びコア層からなるコアシェル構造を有し、
前記シェル層の平均厚さが100nm~500nmであることを特徴とする樹脂粒子である。
<2> 前記シェル層が、前記バイオマス由来樹脂を含有しない結着樹脂からなる、前記<1>記載の樹脂粒子である。
<3> 前記シェル層の平均厚さが200nm~300nmである、前記<1>から<2>のいずれかに記載の樹脂粒子である。
<4> 前記樹脂粒子の全質量に対する、前記バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aと、前記ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートの含有量Bとの合計含有量[A+B]が、35質量%以上である、前記<1>から<3>のいずれかに記載の樹脂粒子である。
<5> 前記樹脂粒子の全質量に対する前記バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aが、25質量%~35質量%である、前記<4>に記載の樹脂粒子である。
<6> 前記樹脂粒子の放射性炭素同位体14C濃度が、10.8pMC以上である、前記<1>から<5>のいずれかに記載の樹脂粒子である。
<7> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の樹脂粒子の製造方法であって、
バイオマス由来樹脂のバイオマス由来成分の含有量Aと、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートの含有量BとがA>Bを満たすように、前記バイオマス由来樹脂及び前記ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートを含有する結着樹脂を有機溶媒に溶解又は分散させた油相を調製する工程と、
前記油相に水相を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相乳化させる工程と、
前記水中油型分散液中の微粒子を凝集させた凝集粒子を調製する工程と、
前記凝集粒子に、シェル層及びコア層からなるコアシェル構造を有するように、かつ前記シェル層の平均厚さが100nm~500nmとなるようにシェル層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする樹脂粒子の製造方法である。
<8> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の樹脂粒子を含有することを特徴とするトナーである。
<9> 前記<8>に記載のトナーを含有することを特徴とする現像剤である。
<10> 前記<8>に記載のトナーを収容することを特徴とするトナー収容ユニットである。
<11> 静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成するトナーを備える現像手段と、
を有し、
前記トナーが、前記<8>に記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置である。
<12> 前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
トナーを用いて前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成する現像工程と、
を含み、
前記トナーが、前記<8>に記載のトナーであることを特徴とする画像形成方法である。
【0339】
前記<1>から<6>のいずれかに記載の樹脂粒子、前記<7>に記載の樹脂粒子の製造方法、前記<8>に記載のトナー、前記<9>に記載の現像剤、前記<10>に記載のトナー収容ユニット、前記<11>に記載の画像形成装置、及び前記<12>に記載の画像形成方法は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0340】
10 感光体(感光体ドラム、静電潜像担持体)
10K ブラック用静電潜像担持体
10Y イエロー用静電潜像担持体
10M マゼンタ用静電潜像担持体
10C シアン用静電潜像担持体
14 支持ローラ
15 支持ローラ
16 支持ローラ
17 中間転写体クリーニング装置
18 画像形成手段
20 帯電装置(帯電ローラ)
21 露光装置
22 二次転写装置
23 ローラ
24 二次転写ベルト
25 定着装置
26 定着ベルト
27 加圧ローラ
28 シート反転装置
30 露光装置
32 コンタクトガラス
33 第一走行体
34 第二走行体
35 結像レンズ
36 読取りセンサ
40 現像器
41 現像ベルト
42K 現像剤収容部
42Y 現像剤収容部
42M 現像剤収容部
42C 現像剤収容部
43K 現像剤供給ローラ
43Y 現像剤供給ローラ
43M 現像剤供給ローラ
43C 現像剤供給ローラ
44K 現像ローラ
44Y 現像ローラ
44M 現像ローラ
44C 現像ローラ
45K ブラック現像ユニット
45Y イエロー現像ユニット
45M マゼンタ現像ユニット
45C シアン現像ユニット
49 レジストローラ
50 中間転写体
51 ローラ
52 分離ローラ
53 手差し給紙路
54 手差しトレイ
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排紙トレイ
58 コロナ帯電器
60 クリーニング装置
61 現像装置
62 転写帯電器
63 感光体クリーニング装置
64 除電装置
70 除電ランプ
80 転写ローラ
90 クリーニング装置
95 転写紙
100A、100B、100C 画像形成装置
110 プロセスカートリッジ
120 タンデム型現像器
130 原稿台
142 給紙ローラ
143 ペーパーバンク
144 給紙カセット
145 分離ローラ
146 給紙路
147 搬送ローラ
148 給紙路
150 複写装置本体
160 帯電装置
200 給紙テーブル
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置(ADF)
L 露光
【先行技術文献】
【特許文献】
【0341】
【特許文献1】特許第6138021号
図1
図2
図3
図4
図5
図6