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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129914
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】流体ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   F04B 51/00 20060101AFI20230912BHJP
   G05D 7/06 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
F04B51/00
G05D7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034257
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮部 善和
【テーマコード(参考)】
3H145
5H307
【Fターム(参考)】
3H145AA12
3H145AA23
3H145AA42
3H145BA13
3H145CA03
3H145CA07
3H145FA02
3H145FA13
3H145FA14
5H307EE04
5H307EE21
5H307FF12
(57)【要約】
【課題】電力消費を抑えながらポンプの流量特性を評価する。
【解決手段】流体ポンプシステムは、ポンプと、第1流体をポンプに導入する第1吸入通路と、第1流体より比重の小さい第2流体をポンプに導入する第2吸入通路と、ポンプから流体を吐き出す吐出通路と、二つの吸入通路のいずれか一つを選択的にポンプに連通させるよう構成された切替弁と、前記吐出通路に配置された第2流体の状態量を測定する状態量センサと、制御装置とを備える。制御装置は、第1流体の圧送時には、切替弁で第1吸入通路をポンプに連通させ、ポンプを作動させて第1流体を吐出通路に流入させ、ポンプの流量特性の評価時には、切替弁で第2吸入通路をポンプに連通させ、ポンプを作動させてり第2流体を吐出通路に流入させ、状態量センサで第2流体の流量を計測し、この第2流体の流量に基づいて第1流体を圧送する際のポンプの流量特性を評価するよう構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体ポンプシステムであって、
ポンプと、
第1流体を前記ポンプに導入するための第1吸入通路と、
前記第1流体より比重の小さい第2流体を前記ポンプに導入するための少なくとも一つの第2吸入通路と、
前記ポンプから流体を吐き出すための吐出通路と、
前記第1吸入通路と前記第2吸入通路のいずれか一つを選択的に前記ポンプに連通させるよう構成された少なくとも一つの切替弁と、
流量を計測するために前記吐出通路に配置された第2流体の状態量を測定する状態量センサと、
制御装置とを備えており、この制御装置は、
第1流体の圧送時には、前記切替弁により前記第1吸入通路を前記ポンプに連通させ、
前記ポンプを作動させることにより第1流体を前記吐出通路に流入させ、
ポンプの流量特性の評価時には、前記切替弁により前記第2吸入通路を前記ポンプに連通させ、
前記ポンプを作動させることにより第2流体を前記吐出通路に流入させ、
前記状態量センサを用いて第2流体の流量を計測し、
この第2流体の流量に基づいて第1流体を圧送する際の前記ポンプの流量特性を評価するよう構成されている流体ポンプシステム。
【請求項2】
請求項1の流体ポンプシステムであって、
前記状態量センサは圧力センサであり、
前記吐出通路に配置された閉鎖弁を備えており、
前記制御装置は前記吐出通路が第2流体で満たされたときに閉鎖弁を閉鎖し、
前記ポンプを作動させることにより第2流体をさらに前記吐出通路に流入させ、
前記圧力センサを用いて前記吐出通路の中の第2流体の圧力増加を測定し、
この圧力増加に基づいて第2流体の流量を決定するよう構成されている流体ポンプシステム。
【請求項3】
請求項1の流体ポンプシステムであって、
前記状態量センサは流量センサであり、
前記制御装置は前記流量センサによって第2流体の流量を測定するよう構成されている流体ポンプシステム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの流体ポンプシステムであって、
前記制御装置は、前回評価した前記ポンプの流量特性を記憶しておき、
前記切替弁により前記第1吸入通路を前記ポンプに連通させ、
記憶している前記流量特性に基づいて前記ポンプを作動させることにより第1流体を圧送するよう構成されている流体ポンプシステム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかの流体ポンプシステムであって、
前記第1流体は液体であり、前記第2流体は気体であり、
前記吐出通路に配置された温度センサを備えており、
前記制御装置は、
前記切替弁により前記第2吸入通路を前記ポンプに連通させ、
前記ポンプを作動させることにより気体を前記吐出通路に流入させ、
前記温度センサによりその気体の温度を測定し、
測定された気体の温度に基づいて前記温度センサの異常の有無を判定するよう構成されている流体ポンプシステム。
【請求項6】
請求項5の流体ポンプシステムであって、
前記第2流体は前記流体ポンプシステムが設置される環境内の空気であり、
前記制御装置は、前記温度センサにより測定された空気の温度を別途測定された環境温度と比較することにより前記温度センサの異常の有無を判定するよう構成されている流体ポンプシステム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかの流体ポンプシステムであって、
前記第1流体は第1濃度を有する塩水であり、
前記第2流体は前記第1濃度より小さい第2濃度を有する低濃度塩水または淡水であり、
前記吐出通路に配置された塩分濃度センサを備えており、
前記制御装置は、
前記切替弁により前記第2吸入通路を前記ポンプに連通させ、
前記ポンプを作動させることにより低濃度塩水または淡水を前記吐出通路に流入させ、
前記塩分濃度センサによりその低濃度塩水または淡水の塩分濃度を測定し、
測定された塩分濃度に基づいて前記塩分濃度センサの異常の有無を判定するよう構成されている流体ポンプシステム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかの流体ポンプシステムであって、
前記吐出通路に配置された閉鎖弁を備えており、
前記制御装置は、
前記切替弁により前記第2吸入通路を前記ポンプに連通させ、
前記ポンプを作動させることにより第2流体を前記吐出通路に流入させ、
前記ポンプの内部を第2流体で満たした状態で前記ポンプを停止させ、
前記閉鎖弁を閉じるよう構成されている流体ポンプシステム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかの流体ポンプシステムであって、
前記吐出通路は生物を飼育するための水槽または湿泥漕に連通しており、
前記第1流体はその水槽または湿泥漕に供給するための水溶液である流体ポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示する技術は流体ポンプシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動ポンプを用いて流量を制御しながら流体を移送する場合、例えば電力を変化させることにより吐出流量を制御する。この場合、この電力と流量の関係として表されるポンプの流量特性はシステムの劣化や故障により変化する可能性がある。また、同一モデルのポンプであっても一般に流量特性が個々に少しずつ異なっていると考えられる。流量制御の精度を向上させるため、あるいはポンプの異常を検出するために、必要に応じて流量を計測し、ポンプの流量特性を評価することが必要となる。例えば、特開平06-066287号公報には、流体の圧送中に吸い込み水位とポンプの吐出圧とに基づいて流量を計測することのできるシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-066287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報のシステムでは、通常運転の最中に流量を計測することが前提となっている。したがって、上記公報の計測技術を利用してポンプの流量特性を評価したい場合、特にポンプで流体を圧送する必要がない時であってもその評価のためだけに流体を圧送する必要があり、電力消費の増加が課題となる。したがって、電力消費を抑えながらポンプの流量特性を評価することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの態様は流体ポンプシステムであって、ポンプと、第1流体を前記ポンプに導入するための第1吸入通路と、前記第1流体より比重の小さい第2流体を前記ポンプに導入するための少なくとも一つの第2吸入通路と、前記ポンプから流体を吐き出すための吐出通路と、前記第1吸入通路と前記第2吸入通路のいずれか一つを選択的に前記ポンプに連通させるよう構成された少なくとも一つの切替弁と、流量を計測するために前記吐出通路に配置された第2流体の状態量を測定する状態量センサと、制御装置とを備えており、この制御装置は、第1流体の圧送時には、前記切替弁により前記第1吸入通路を前記ポンプに連通させ、前記ポンプを作動させることにより第1流体を前記吐出通路に流入させ、ポンプの流量特性の評価時には、前記切替弁により前記第2吸入通路を前記ポンプに連通させ、前記ポンプを作動させることにより第2流体を前記吐出通路に流入させ、前記状態量センサを用いて第2流体の流量を計測し、この第2流体の流量に基づいて第1流体を圧送する際の前記ポンプの流量特性を評価するよう構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一つの実施形態として飼育水を水槽に供給するためのポンプシステムの構成を示す図である。
図2図1のポンプシステムにおいて別の吸入通路から空気を吐出通路に導入している状態を示す図である。
図3】別の実施形態として飼育水の温度を監視する温度センサを備えたポンプシステムの構成を示す図である。
図4図3のポンプシステムにおいて別の吸入通路から空気を吐出通路に導入している状態を示す図である。
図5】さらに別の実施形態として飼育水の塩分濃度を監視する塩分濃度センサを備えたポンプシステムの構成を示す図である。
図6図5のポンプシステムにおいて別の吸入通路から淡水を吐出通路に導入している状態を示す図である。
図7】さらに別の実施形態として図1図3図5の特徴を兼ね備えたポンプシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、各種実施形態について図面を参照しながら説明する。なお以下の実施形態のうち同様に構成することができる部分については類似の符号を付して説明の繰り返しを省略する。
【0008】
[ポンプシステム]
図1図2は、一つの実施形態として、魚介類を養殖するための水槽12に飼育水を供給するためのポンプシステム10を示している。水槽12には飼育水を通すための供給通路14が接続され、供給通路14にはポンプ16が配置される。水槽には飼育水を循環させるための排出通路36を接続することもできる。供給通路14の上流側は飼育水の供給源(図示しない)と連通させる。ポンプ16を作動させると供給源から飼育水が供給通路14を通して水槽12に供給される(矢印24)。
【0009】
[流量制御]
電動ポンプによる流量の制御は、例えばポンプに与える電力(具体的には電圧や電流の平均値などの変数)を変化させることにより行われる。この場合、ポンプ16の流量特性はポンプに通される流体の密度(比重)に依存する電力と流量の関係として表される。実施形態によっては、吐出通路20(ポンプ16の下流側の供給通路14)に流量センサ(図示しない)を設け、この流量センサにより測定した実際の流量を制御にフィードバックすることもできる。このような制御はポンプシステム10に設けられる制御装置(コントローラ)22で行うことができる。具体的には、制御装置22は、プログラムを実行する処理装置(プロセッサ)とプログラムやデータを保存する記憶装置とを備えた電子制御装置(ECU)とすることができる。制御装置22は本明細書で説明している各種センサからデータを受信し、ポンプや各種弁に制御信号を送信することができるよう構成される。以下に説明する様々な方法も、記憶装置に保存したプログラムを処理装置で実行することにより実現できる。
【0010】
[ポンプの流量特性の評価]
供給通路14には空気を導入するための吸入通路30をポンプ16の上流側で合流させる。吸入通路30の上流側は大気に解放する。その合流箇所には三方弁32を設けて、飼育水の吸入通路18(ポンプ16の上流側の供給通路14)と空気の吸入通路30のいずれか一方を選択的にポンプ16に連通させられるようにする。三方弁32は、図1に示したようにポンプ16の吸入口に直接結合した一体的なものであってもよいが、別の実施形態として、長さのある通路を介してポンプ16と接続してもよい。また、吐出通路20には、連通を閉鎖することのできる閉鎖弁34を設ける。閉鎖弁34は例えば電磁弁とすることができる。吐出通路20には、ポンプ16から閉鎖弁34までの区間に連通するよう圧力センサ38を配置する。
【0011】
ポンプの流量特性の評価を行うには、まず、図2に示すように、三方弁32を切り替えて空気の吸入通路30をポンプ16に連通させ、大気から空気を吐出通路20に導入する(矢印40)。ある程度の時間が経過すると空気が閉鎖弁34を越えて水槽12に漏れ出るようになる(矢印42)。このように空気が水槽12に漏れ出るまでに必要な時間としてあらかじめ規定された時間が経過したら、ポンプ16を一時的に停止させ、閉鎖弁34を閉鎖する。これにより、三方弁32から下流側の供給通路14が大気圧P0の空気で満たされる。ここで、ポンプ16を所定の時間tだけ作動させることによりその区間にさらに空気を押し込み、圧力センサ38で大気圧からの空気の圧力増加ΔPを測定する。ポンプ16から閉鎖弁34までの区間の吐出通路20の容積をVとすると、ポンプ16を通過する空気の流量Qは、Q=(V×ΔP/P0)/tとして計算できる。なお、大気圧からの圧力増加の代わりに、所定の時間tが経過する前後の2回の圧力測定の間の圧力増加を用いることもできる。この空気の流量から、同じ電力でポンプ16が作動させた際の飼育水の流量Q’に換算するには、一つの実施形態としては、大気圧の空気を基準とする飼育水の比重(密度比)を用いて換算することができる。あるいは別の実施形態として、同じ電力でポンプ16を作動させた際の空気の流量Qと飼育水の流量Q’の間の関係(マップ)をあらかじめ測定し、制御装置22に記憶させておき、その関係に基づいて飼育水の流量Q’を決定することも可能である。このようにして決定された流量に基づいて、ポンプ16の流量特性を評価する。以上の方法によれば、通常の空気は飼育水よりも比重(密度)が小さいため、飼育水の供給中にポンプ16の流量特性を評価する場合と比べると、電力消費が抑えられる。
【0012】
このような流量特性の評価は、例えば、ポンプシステム10の初回運転時に、使用されているポンプ16の固有の(製品としてのばらつきによる)流量特性を把握あるいは学習するために行うことができる。また、初回運転後も、システムの継時変化に追従して流量制御の精度を向上させるために、定期的あるいは単発的に流量特性を評価することができる。これらの場合、評価された流量特性を制御装置22に記憶させてその後の流量制御(あるいは次回の評価)に使用し、新たな評価を行うたびにその記憶している流量特性を更新することができる。なお、定期的な評価を行う場合、規定時間が経過した際に飼育水の供給がなされていることがありうる。その場合、飼育水の供給を中断して流量特性の評価に移行してもよいし、飼育水の供給が休止されるのを待ってから実行してもよい。他の実施形態として、評価した流量特性はポンプ16の劣化や故障などの異常を検出するために利用することもできる。
【0013】
図示しないが、他の実施形態として、圧力センサ38の代わりに流量センサを設けて上記の空気の流量Qを直接測定することもできる。この場合、閉鎖弁34は必ずしも必要でなく、閉鎖弁34がある場合は閉鎖弁34を解放した状態でポンプ16を作動させて流量を測定することになる。圧力センサ38と図示しない流量センサはいずれも飼育水の流量を計測するために空気の状態量(圧力や流量)を測定する状態量センサである。
【0014】
[供給の休止と再開]
飼育水の供給を短期的あるいは長期的に休止する場合、三方弁32の切り替えにより空気の吸入通路30をポンプ16に連通させ、ポンプ16を作動させることにより空気を吐出通路20に流入させてからポンプ16を停止させる。これにより少なくともポンプ16の内部が空気で満たされた状態となる。ポンプ16を十分な時間だけ作動させてから停止すれば、ポンプ16を含む三方弁32から閉鎖弁34までの供給通路14の内部から塩分を含んだ飼育水を排除することができる。このため、単に飼育水の供給中にポンプ16を停止するだけの場合と比べると、塩分に起因するポンプ16や配管の内部の腐食を抑えることができる。ポンプ16を停止させた後、必要に応じて、三方弁32を全閉状態、すなわち吸入通路18、30のいずれもポンプ16に連通していない状態に切り替えることもできる。
【0015】
飼育水の供給を再開する際は、三方弁32を切り替えて飼育水の吸入通路18(ポンプ16の上流側の供給通路14)をポンプ16に連通させる。閉鎖弁34を開いた状態でポンプ16を作動させ、吐出通路20を通して飼育水を水槽12に供給する。
【0016】
[飼育水の温度制御]
図3図4は、別の実施形態として、飼育水の温度を監視しながら水槽12に供給するポンプシステム50を示している。この実施形態では、上記の実施形態の圧力センサ38の代わりに温度センサ56を設ける。制御装置54は、温度センサ56により吐出通路20を流れる飼育水の温度を常にあるいは定期的に測定し、その温度が設定した目標水温から大きく外れている場合には水温が異常と見なす。例えば、測定した水温が目標水温を含む所定の範囲内にあるときは供給する飼育水の温度が正常であるとみなし、それ以外の場合は異常であると見なすことができる。異常と判定した場合は、吸入通路18から吸入させる飼育水の温度を調節する。
【0017】
[温度センサの異常検出]
吸入通路30の上流側は環境に解放するなどして空気の供給源と連通させておく。例えば、この供給源となる環境は単にポンプシステム50が設置されている部屋とすることができる。そして、供給源の空気の温度を測定するための別の温度センサ62を設ける。温度センサ56の異常検出を行うには、まず、図4に示すように、三方弁32を切り替えて空気の吸入通路30をポンプ16に連通させ、空気を吐出通路20に導入する(矢印40)。ある程度の時間が経過すると空気が閉鎖弁34を越えて水槽12に漏れ出るようになる(矢印42)。このように空気が水槽12に漏れ出るまでに必要な時間としてあらかじめ規定された時間が経過したら、ポンプ16を停止させ、閉鎖弁34を閉鎖する。これにより、三方弁32から下流側の供給通路14が取り込まれた空気で満たされる。ここで、供給通路14の温度センサ56によりその空気の温度を測定し、その温度が別の温度センサ62で測定された空気の供給源の温度から大きく外れている場合には、供給通路14の温度センサ56が異常と見なす。例えば、供給通路14の温度センサ56で測定した水温が供給源の温度を含む所定の範囲内にあるときは温度センサ56が正常であるとみなし、それ以外の場合は異常であると見なすことができる。実施形態によっては、異常と判定された場合は警告灯やブザーで作業者に警告を発することもできる。供給源の温度センサ62が他の目的で既に設置され、制御装置54がそのデータを受信できるように構成されている場合には特に以上に説明したような異常検出の方法が有利である。他の実施形態として、必要に応じて空気以外の気体を用いることもできる。
【0018】
[飼育水の塩分濃度制御]
図5図6は、さらに別の実施形態として、水槽12で海生の魚介類を養殖する場合において飼育水(人工海水などの塩水)の塩分濃度を監視しながら水槽12に供給するポンプシステム70を示している。この実施形態では、供給通路14の上流側には塩水の供給源(図示しない)が接続される。また、上記の実施形態の圧力センサ38や温度センサ56の代わりに塩分濃度センサ76を設ける。制御装置74は、塩分濃度センサ76により吐出通路20を流れる飼育水の塩分濃度を常にあるいは定期的に測定し、その塩分濃度が設定した目標濃度から大きく外れている場合には塩分濃度が異常と見なす。例えば、測定した塩分濃度が目標濃度を含む所定の範囲内にあるときは供給する飼育水の塩分濃度が正常であるとみなし、それ以外の場合は異常であると見なすことができる。異常と判定した場合は、吸入通路18から吸入させる飼育水の塩分濃度を調節する。
【0019】
[塩分濃度センサの異常検出]
供給通路14には淡水(塩分濃度がゼロに近い水)を導入するための吸入通路72をポンプ16の上流側で合流させる。吸入通路72の上流側は淡水の供給源(図示しない)と連通させる。例えば、この供給源は水槽12の近くに設置された水耕栽培システムとすることができる。そして、供給源の淡水の塩分濃度を測定するための別の塩分濃度センサ(図示しない)を設ける。淡水の吸入通路72の合流箇所には三方弁32を設けて、2つの吸入通路18、72のいずれか一方を選択的にポンプ16に連通させられるようにする。
【0020】
塩分濃度センサ76の異常検出を行うには、まず、図6に示すように、三方弁32を切り替えて淡水の吸入通路72をポンプ16に連通させ、淡水を吐出通路20に導入する(矢印78)。ある程度の時間が経過すると淡水が閉鎖弁34を越えて水槽12に漏れ出るようになる(矢印80)。このように淡水が水槽12に漏れ出るまでに必要な時間としてあらかじめ規定された時間が経過したら、ポンプ16を停止させ、閉鎖弁34を閉鎖する。必要に応じて三方弁32も全閉状態とする。これにより、三方弁32から下流側の供給通路14が取り込まれた淡水で満たされる。ここで、供給通路14の塩分濃度センサ76によりその淡水の塩分濃度を測定し、その塩分濃度が別の塩分濃度センサで測定された淡水の供給源の塩分濃度(ゼロに近い値)から大きく外れている場合には、供給通路14の塩分濃度センサ76が異常と見なす。例えば、供給通路14の塩分濃度センサ76で測定した塩分濃度が供給源の塩分濃度を含む所定の範囲内にあるときは塩分濃度センサ76が正常であるとみなし、それ以外の場合は異常であると見なすことができる。実施形態によっては、異常と判定された場合は警告灯やブザーで作業者に警告を発することもできる。淡水の供給源が前記の水耕栽培システムである場合など、別の塩分濃度センサ(図示しない)が他の目的で既に供給源に設置され、制御装置74がそのデータを受信できるように構成されている場合には特に、以上に説明したような異常検出の方法が有利である。他の実施形態として、淡水に代えて、飼育水より塩分濃度が小さい低濃度塩水(例えば汽水)を用いることもできる。
【0021】
飼育水の供給を休止する場合、上述の空気を用いた場合と同様に、ポンプ16の内部や三方弁32から閉鎖弁34までの供給通路14の内部を淡水や低濃度塩水で満たした状態にすることができる。このようにすれば、単に飼育水の供給中にポンプ16を停止するだけの場合と比べると、高濃度の塩分に起因するポンプ16や配管の内部の腐食を抑えることができる。
【0022】
[その他の実施形態]
図7に示すように、他の実施形態として、以上に説明した流量の制御や温度・塩分濃度の監視はひとつのポンプシステム90で行うことができる。具体的には、吐出通路20に圧力センサ38(または流量センサ)、温度センサ56、塩分濃度センサ76をすべて設ける。また、飼育水の供給通路14には、ポンプ16の上流側において、空気などの気体の吸入通路30と淡水または低濃度塩水の吸入通路72の両方を合流させる。三方弁の代わりに、これらの吸入通路18、30、72のいずれか一つを選択的にポンプ16と連通させることのできる単一の切替弁96あるいは複数の切替弁の組み合わせを用いる。これにより、吐出通路20には矢印40、78で示すように空気や淡水を選択的に導入することができる。このポンプシステム90では、ポンプ16の流量特性の評価や、温度センサ、塩分濃度センサの異常検出を行うことも可能である。その方法は上で図1図6を用いて説明したものと実質的に同様であり、すべて単一の制御装置94で実施することができる。
【0023】
他の実施形態として、魚介類の養殖用の水槽12の他に、食用、観賞用、展示用の生物のための様々な飼育槽、栽培漕、培養槽とすることができる。例えば、植物を水耕栽培するための水槽(養液漕)やトレー、あるいは甲殻類や貝類などの底生生物を飼育するための人工干潟を再現した水槽(湿泥漕)とすることができる。水耕栽培の場合、上記の飼育水に代えて、例えば栄養分を溶解させた水溶液(養液)とすることができる。
【0024】
他の実施形態として、養殖用や水耕栽培用の水槽から貯留槽や調整層に水を引き込む場合に適用することも可能である。また別の実施形態として、干潟用の水槽から調整槽に回収した湿泥を再利用可能な状態とするためにその調整槽に水を加える場合に利用することができる。さらに別の実施形態として、干潟の潮の満ち引きを再現するために水槽と調整槽の間で水を移動させる場合に利用することもできる。この場合、ポンプは双方向に圧送可能なタイプのポンプとし、必要に応じてポンプの両側に空気の吸入通路を接続することもできる。
【0025】
他の実施形態として、第二流体は第一流体よりも密度が小さい任意の流体とすることができる。この場合でも、第二流体を用いて流量特性を評価することで電力消費を抑えることができる。場合によっては第一流体と第二流体がいずれも気体であっても良い。
【0026】
以上、様々な具体的な実施形態を説明したが、本願に開示する技術はこれらの実施形態に限定されるものではなく、当業者であれば本技術の目的を逸脱することなく様々な置換、改良、変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0027】
10 ポンプシステム
12 水槽
14 飼育水の供給通路
16 ポンプ
18 飼育水の吸入通路
20 吐出通路
22 制御装置
24 飼育水の流れ
30 空気の吸入通路
32 三方弁
34 閉鎖弁
36 水槽からの排出通路
38 圧力センサ
40 ポンプを通る空気の流れ
42 水槽に入る空気の流れ
50 ポンプシステム
54 制御装置
56 吐出通路の温度センサ
62 供給源の温度センサ
70 ポンプシステム
72 淡水の吸入通路
74 制御装置
76 塩分濃度センサ
78 ポンプを通る淡水の流れ
80 水槽に入る淡水の流れ
90 ポンプシステム
94 制御装置
96 切替弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7