(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129957
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】自己位置演算装置
(51)【国際特許分類】
G01S 19/51 20100101AFI20230912BHJP
G01S 19/48 20100101ALI20230912BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20230912BHJP
G01S 13/52 20060101ALI20230912BHJP
G01C 21/28 20060101ALI20230912BHJP
G05D 1/02 20200101ALN20230912BHJP
【FI】
G01S19/51
G01S19/48
G01S13/931
G01S13/52
G01C21/28
G05D1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034336
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 俊
(72)【発明者】
【氏名】岡野 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】高島 亨
(72)【発明者】
【氏名】溝尾 駿
(72)【発明者】
【氏名】小林 尚史
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 博文
(72)【発明者】
【氏名】古田 浩貴
【テーマコード(参考)】
2F129
5H301
5J062
5J070
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB19
2F129BB33
2F129BB47
2F129BB62
2F129GG17
5H301BB02
5H301FF11
5H301GG08
5H301KK08
5H301MM01
5H301MM09
5H301QQ01
5J062BB01
5J062CC07
5J062FF01
5J062FF02
5J070AC02
5J070AC13
5J070AE01
5J070AF03
5J070AK32
(57)【要約】
【課題】大きさの異なる複数種類のモビリティが走行する状況においても、自己位置演算の精度低下を抑制することができる。
【解決手段】本発明は、衛星から受信した信号に基づいて自モビリティの絶対位置を演算する位置演算部22と、自モビリティの周辺を監視する周辺監視部5と、自モビリティの周囲に位置する所定のモビリティである周囲モビリティの絶対位置情報を取得する情報取得部32と、信号の受信状況が悪化した場合に、周囲モビリティの絶対位置情報と周辺監視部5の検出結果とに基づいて、周囲モビリティに対する自モビリティの相対位置を演算する相対位置演算部33と、周囲モビリティの絶対位置情報及び相対位置演算部で演算された相対位置の情報に基づいて、位置演算部22で演算された自モビリティの絶対位置情報を補正する補正部34と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星から受信した信号に基づいて自モビリティの絶対位置を演算する位置演算部と、
前記自モビリティの周辺を監視する周辺監視部と、
前記自モビリティの周囲に位置する所定のモビリティである周囲モビリティの絶対位置情報を取得する情報取得部と、
前記信号の受信状況が悪化した場合に、前記周囲モビリティの絶対位置情報と前記周辺監視部の検出結果とに基づいて、前記周囲モビリティに対する前記自モビリティの相対位置を演算する相対位置演算部と、
前記周囲モビリティの絶対位置情報及び前記相対位置演算部で演算された相対位置の情報に基づいて、前記位置演算部で演算された前記自モビリティの絶対位置情報を補正する補正部と、
を備える、自己位置演算装置。
【請求項2】
複数のモビリティの絶対位置情報を取得する管制システムに、前記自モビリティの絶対位置情報を送信する送信部を備え、
前記情報取得部は、前記周囲モビリティの絶対位置情報を前記管制システムから取得する、
請求項1に記載の自己位置演算装置。
【請求項3】
前記相対位置演算部は、前記信号の受信レベルが所定の閾値未満である場合、前記相対位置を演算する、
請求項1又は2に記載の自己位置演算装置。
【請求項4】
前記相対位置演算部は、前記周囲モビリティの絶対位置情報と前記周辺監視部の検出結果とに基づいて、前記周辺監視部で検出された物体の中から前記周囲モビリティに対応する物体を特定する、
請求項1~3の何れか一項に記載の自己位置演算装置。
【請求項5】
前記情報取得部は、前記周囲モビリティの型又は種類に関する情報を取得し、
前記相対位置演算部は、前記周囲モビリティの特性情報及び絶対位置情報に基づいて、前記周辺監視部で検出された物体の中から前記周囲モビリティに対応する物体を特定する、
請求項1~4の何れか一項に記載の自己位置演算装置。
【請求項6】
前記情報取得部は、前記周囲モビリティでの前記信号の受信状況に関する情報を取得し、
前記相対位置演算部は、前記周囲モビリティが複数である場合、複数の前記周囲モビリティのうち、前記信号の受信状況が悪化していない前記周囲モビリティに対して前記相対位置を演算する、
請求項1~5の何れか一項に記載の自己位置演算装置。
【請求項7】
前記情報取得部は、前記周囲モビリティの体格の大きさに関する情報を取得し、
前記相対位置演算部は、前記周囲モビリティが複数である場合、複数の前記周囲モビリティのうち最も体格が大きい前記周囲モビリティに対して前記相対位置を演算する、
請求項1~6の何れか一項に記載の自己位置演算装置。
【請求項8】
前記管制システムは、前記周囲モビリティとして、前記信号の受信状況が悪化していないモビリティを選択する、
請求項2に記載の自己位置演算装置。
【請求項9】
前記所定のモビリティは、前記自モビリティよりも大型のモビリティである、
請求項1~8の何れか一項に記載の自己位置演算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モビリティの自己位置演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等のモビリティの位置は、例えば、GPS(Global Positioning System:全方位測位システム)の情報に基づいて演算される。モビリティの位置の演算には、モビリティに搭載されたGPS受信機がGPS衛星からの信号を受信することが必要である。衛星からの信号の受信状況が悪化すると、自己位置の演算精度が低下する。自己位置の演算技術として、例えば国際公開第2015/097905号公報には、予め求められたランドマークの位置と、ランドマークとダンプトラックとの相対位置とに基づいて、ダンプトラックの推定位置を補正する管理システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/097905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術は、鉱山全体にわたって多数のランドマークが配置されていることが前提の技術となる。また、鉱山では、例えば、ダンプトラック(大型の重機)とともに、ピックアップトラック(小型貨物自動車)等の他の小型モビリティが走行する状況も考えられる。ダンプトラックとピックアップトラックとが同じタイミングで同じ鉱山内を走行する場合、大型重機であるダンプトラックの影にピックアップトラックが入る可能性があり、ダンプトラックの影響でピックアップトラックのGPS信号の受信状況が悪化する可能性がある。このような点において、上記技術は改良の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、大きさの異なる複数種類のモビリティが走行する状況においても、自己位置演算の精度低下を抑制することができる自己位置演算装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自己位置演算装置は、衛星から受信した信号に基づいて自モビリティの絶対位置を演算する位置演算部と、前記自モビリティの周辺を監視する周辺監視部と、前記自モビリティの周囲に位置する所定のモビリティである周囲モビリティの絶対位置情報を、通信ネットワークを介して取得する情報取得部と、前記信号の受信状況が悪化した場合に、前記周囲モビリティの絶対位置情報と前記周辺監視部の検出結果とに基づいて、前記周囲モビリティに対する前記自モビリティの相対位置を演算する相対位置演算部と、前記周囲モビリティの絶対位置情報及び前記相対位置演算部で演算された相対位置の情報に基づいて、前記位置演算部で演算された前記自モビリティの絶対位置情報を補正する補正部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衛星からの信号の受信状況が悪化した場合、周囲モビリティの絶対位置情報と、周囲モビリティに対する自モビリティの相対位置とに基づいて、自モビリティの絶対位置情報が補正される。これにより、例えば、自モビリティが、周囲を走行する自モビリティより大型の他のモビリティの影響で、信号の受信状況が悪化した場合でも、当該大型モビリティとの相対位置に基づいて自モビリティの絶対位置情報が補正されるため、自己位置演算の精度低下は抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の自己位置演算装置の構成図である。
【
図2】本実施形態における周囲モビリティの特定について説明するための概念図である。
【
図3】本実施形態の自己位置の補正に関する制御例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の一実施形態である自己位置演算装置1を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。本開示におけるモビリティは、移動体ともいえ、車両や重機を含む概念である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の自己位置演算装置1は、モビリティに設けられた装置であって、受信機2と、演算処理装置3と、無線通信機4と、周辺監視装置5と、を備えている。受信機2は、本実施形態ではGPS受信機であって、衛星(GPS衛星)から受信した信号に基づいて自モビリティの絶対位置を演算する装置である。より詳細に、受信機2は、衛星から信号を受信するアンテナ部21、及び衛星から受信した信号に基づいて自モビリティの絶対位置を演算する位置演算装置(「位置演算部」に相当する)22を備えている。受信機2は、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)受信機であってもよい。
【0011】
演算処理装置3は、少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリを備えるコンピュータ(例えば車載コンピュータ)又は電子制御ユニット(ECU)である。メモリには、各種プログラムや各種データが記憶されている。プロセッサは、メモリからプログラムを読み出して実行し、各種演算を実行する。演算処理装置3は、受信機2と通信可能に接続され、受信機2から位置情報を取得する。演算処理装置3は、自身のメモリ又は他のメモリに記憶された地図データを読み込み可能に構成されている。演算処理装置3は、無線通信機4及び通信ネットワークを介して、管制システム9と通信可能に構成されている。なお、モビリティ内の通信は、例えばモビリティが車両の場合、CAN(car area network or controllable area network)によって行われる。
【0012】
管制システム9は、サーバとして機能するコンピュータで構成され、複数のモビリティの位置情報を取得し記憶している。管制システム9は、例えば、モビリティ外の施設内に配置されている。管制システム9と複数のモビリティとは、通信ネットワーク(例えばローカル無線基地局等で構築されたネットワーク)を介して通信可能となっている。管制システム9には、各モビリティから、GPSで測位された位置に基づく自己の絶対位置情報(以下「GPSデータ」ともいう)が送信される。したがって、管制システム9は、各モビリティにおいて衛星からの信号の受信状況が良好である場合、登録されたすべてのモビリティのGPSデータを取得する。
【0013】
管制システム9は、例えば、各モビリティのGPSデータ及び目的地情報に基づいて、各モビリティの目標ルートを演算し、各モビリティに目標ルートに関する情報を送信する。演算処理装置3は、例えば自動運転制御装置として機能する場合、管制システム9から送信される目標ルートの情報に基づいて、自動運転時における自モビリティの挙動(例えば、駆動力、制動力、及び転舵角)を制御する。
【0014】
周辺監視装置(「周辺監視部」に相当する)5は、自モビリティの周辺を監視する装置であって、例えばライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging, or Laser Imaging Detection and Ranging)を含んで構成されている。本実施形態の周辺監視装置5は、例えば、1つ以上のライダー、自モビリティの周辺を撮像する1つ以上のカメラ、及び自モビリティと自モビリティ周辺の物体との距離を測定する1つ以上のレーダーを備えている。周辺監視装置5は、自モビリティと周辺の物体(例えば障害物や他のモビリティ)との位置関係を演算するために、自モビリティと自モビリティ周辺の物体との距離を測定するための装置ともいえる。例えば、周辺監視装置5の検出結果と3次元地図データとに基づいて、より精度の高い自己位置の演算が可能となる。演算処理装置3は、所定の識別条件及び周辺監視装置5の検出結果(例えば物体の形状等の認識データ)に基づいて、その物体が何であるかを識別(特定、認識)することができる。
【0015】
演算処理装置3は、機能として、送信部31と、情報取得部32と、相対位置演算部33と、補正部34と、を備えている。送信部31は、無線通信機4及び通信ネットワークを介して、管制システム9に自モビリティの絶対位置情報(GPSデータ)を送信する。無線通信機4は、管制システム9と自モビリティとを通信可能にする通信装置である。送信部31が送信する絶対位置の情報は、信号の受信状況が悪化していない場合、すなわち信号の受信レベルが閾値以上である場合、受信機2が演算した絶対位置の情報である。
【0016】
情報取得部32は、自モビリティの周囲に位置する所定のモビリティである周囲モビリティの絶対位置情報を、通信ネットワークを介して取得する。本実施形態では、所定のモビリティとして、すなわち周囲モビリティとして、ダンプトラック(大型重機)が設定されている。つまり、本実施形態の情報取得部32が取得する情報は、自モビリティの周囲に位置するダンプトラックの絶対位置情報(GPSデータ)である。
【0017】
情報取得部32が周囲モビリティの絶対位置情報を取得するタイミングは、例えば、常時(所定間隔毎)でもよいし、所定のタイミングであってもよい。所定のタイミングは、例えば、受信機2の信号の受信状況が悪化したタイミングであってもよい。この場合、例えば、情報取得部32は、受信機2の信号の受信状況が悪化した場合、管制システム9に情報要求信号を送信してもよい。管制システム9は、例えば、常時又は情報要求信号の受信に応じて、自己位置演算装置1に、周囲モビリティの絶対位置情報を送信する。管制システム9は、自モビリティのGPSデータ(自モビリティの受信状況が正常時のデータ又は悪化した後のデータ)に基づいて、周囲モビリティを特定する。
【0018】
相対位置演算部33は、受信機2の信号の受信状況が悪化した場合に、周囲モビリティの絶対位置情報と周辺監視装置5の検出結果とに基づいて、周囲モビリティに対する自モビリティの相対位置を演算する。相対位置演算部33は、周辺監視装置5が検出した検出範囲(監視可能範囲)内における物体の位置と形状の情報に基づいて、管制システム9から取得した絶対位置情報に対応するモビリティを特定する。相対位置演算部33は、周囲モビリティの判断条件(例えばダンプトラックの形状)に基づいて、周辺監視装置5が検出した物体の識別を実行し、検出された物体の中からダンプトラックを特定する。
【0019】
相対位置演算部33は、周辺監視装置5の検出結果からダンプトラックと識別される物体を特定し、特定した物体と管制システム9から取得した絶対位置情報とを対応付ける。続いて、相対位置演算部33は、周辺監視装置5の検出結果に基づいて、特定した物体(ダンプトラック)と自モビリティとの位置関係、すなわちダンプトラックに対する自モビリティの相対位置を演算する。より具体的に、相対位置演算部33は、モビリティ間の距離と、モビリティ同士の離間方向とを演算する。
【0020】
周辺監視装置5によりダンプトラックと識別される物体が複数検出された場合、相対位置演算部33は、自モビリティのGPSデータ(受信状況悪化直前又は悪化後のデータ)と、情報取得部32が取得した複数の周囲モビリティの情報とを比較し、検出物体と取得情報とを対応付ける。
【0021】
例えば
図2に示すように、相対位置演算部33は、周辺監視装置5の検出結果に基づいて、自モビリティの近接した右側に位置するダンプトラックと、自モビリティから比較的遠く且つ左前方に位置するダンプトラックとを認識する。相対位置演算部33は、モビリティ間の方向(座標)と離間距離に基づいて、情報取得部32が取得した一方のダンプトラックのGPSデータを、認識した一方の物体(ダンプトラック)に対応付け、他方のダンプトラックのGPSデータを、認識した他方の物体(ダンプトラック)に対応付ける。なお、相対位置演算部33は、少なくとも一方の認識物体(ダンプトラック)と、取得したGPSデータとを対応付けできればよい。このように、相対位置演算部33は、周囲モビリティの絶対位置情報と周辺監視装置5の検出結果とに基づいて、周辺監視装置5で検出された物体の中から周囲モビリティに対応する物体を特定する。
【0022】
相対位置演算部33は、周辺監視装置5の検出結果に基づいて、周囲モビリティと認識した物体と自モビリティとの距離、及び自モビリティから周囲モビリティと認識した物体に向かう方向(反対方向でもよい)を演算する。このように、相対位置演算部33は、周辺監視装置5の検出結果に基づいて、周囲モビリティと認識した物体に対する自モビリティの相対位置(例えば離間距離及び離間方向)を演算する。
【0023】
補正部34は、周囲モビリティの絶対位置情報、及び相対位置演算部33が演算した相対位置の情報に基づいて、受信機2で演算された自モビリティの絶対位置情報を補正する。補正部34は、基準となる周囲モビリティのGPSデータと、周囲モビリティに対する自モビリティの相対位置とに基づいて、自モビリティの絶対位置を演算する。補正部34が演算した絶対位置と、受信機2の演算結果とで差がある場合、補正部34は、自身の演算結果を自モビリティの絶対位置と認識し、受信機2の演算結果を補正する。自己位置演算装置1は、補正後の絶対位置を自モビリティの絶対位置として認識する。送信部31は、補正後の絶対位置情報を管制システム9に送信する。送信部31の送信データには、絶対位置情報の他に、補正済みであることや、受信レベルが閾値未満であること等が含まれてもよい。
【0024】
本実施形態の自己位置演算処理の流れについて
図3を参照して説明する。この説明において、管制システム9に登録されているモビリティは、ダンプトラックとピックアップトラックであるとする。また、説明において、自モビリティはピックアップトラックであり、周囲モビリティとしてダンプトラックが設定されているものとする。
【0025】
自己位置演算装置1は、受信機2の信号の受信レベルが閾値未満であるか否かを判定する(S1)。受信レベルが閾値未満となる状況としては、例えば、自モビリティが自モビリティよりも大型の他のモビリティの近くを走行している状況(例えば両モビリティが並走している状況)、又は自モビリティが鉱山の土壁の近くを走行している状況等が挙げられる。このような状況は、自モビリティが他のモビリティ又は土壁の影に入っている状況ともいえる。例えば、タイヤの直径が2m以上のダンプトラックの影にピックアップトラックが存在した場合(ある方向から見てダンプトラックの後ろにピックアップトラックが隠れている場合)、ピックアップトラックのGPS信号の受信レベルは低下する可能性がある。一方で、ダンプトラック等の大型モビリティは、他のモビリティの影に隠れる可能性が低く、信号の受信レベルは低下しにくい。したがって、大型のモビリティは、相対位置の演算の基準に適している。
【0026】
受信レベルが閾値未満である場合(S1:Yes)、自己位置演算装置1は、周辺監視装置5の検出結果に基づいて、周囲のダンプトラックを認識し(S2)、ダンプトラックに対する自モビリティの相対位置を演算する(S3)。自己位置演算装置1は、管制システム9から自モビリティの周囲のダンプトラックのGPSデータを取得し、認識したダンプトラックとGPSデータとを対応付ける(S4)。自己位置演算装置1は、周囲モビリティのGPSデータと演算した相対位置とに基づいて、自モビリティの絶対位置を演算する(S5)。自己位置演算装置1は、演算した絶対位置情報に基づいて、受信機2で演算されたGPSデータを補正する(S6)。受信レベルが閾値未満である状況では、相対位置は所定時間毎に更新(演算)され、周囲モビリティのGPSデータも所定時間毎に更新(取得)され、それらに応じて自モビリティの絶対位置情報も更新(演算)される。
【0027】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、衛星からの信号の受信状況が悪化した場合、周囲モビリティの絶対位置情報と、周囲モビリティに対する自モビリティの相対位置とに基づいて、自モビリティの絶対位置情報が補正される。これにより、例えば、自モビリティが、周囲を走行する自モビリティより大型の他のモビリティの影響で、信号の受信状況が悪化した場合でも、当該大型モビリティに対する相対位置に基づいて自モビリティの絶対位置情報が補正され、自己位置演算の精度低下は抑制される。
【0028】
各モビリティの絶対位置情報は、管制システム9に集約され、例えば各モビリティからの要求等に応じて管制システム9から各モビリティの自己位置演算装置1に送信される。管制システム9により、周囲モビリティの情報のよりスムーズで統一的な取得が可能となる。
【0029】
(その他)
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、管制システム9は、信号の受信状況が良好(例えば受信レベルが閾値以上)である周囲モビリティの絶対位置情報のみを、自己位置演算装置1に送信するように構成されてもよい。つまり、管制システム9は、周囲モビリティとして、信号の受信状況が悪化していないモビリティを選択してもよい。あるいは、自己位置演算装置1は、管制システム9から取得した周囲モビリティの絶対位置情報のうち、受信レベルが良好であるもののみを相対位置演算に用いるように構成されてもよい。この場合、自己位置演算装置1は、例えば、管制システム9から周囲モビリティの絶対位置情報と、GPS信号の受信状況(受信レベル)に関する情報とを取得する。つまり、この場合、管制システム9には、例えば、各モビリティから絶対位置情報(GPSデータ)と受信レベルに関する情報(特性情報)とが送信される。これにより、自己位置演算装置1は、精度の高いGPSデータを、相対位置演算の基準の絶対位置情報として用いることができる。換言すると、自己位置の演算精度を向上させることができる。
【0030】
また、所定のモビリティ(周囲モビリティ)として、複数型(複数種類)のモビリティが設定されてもよい。この場合、例えば、情報取得部32は、管制システム9から周囲モビリティの特性情報及びGPSデータを取得する。特性情報は、周囲モビリティの型又は種類に関する情報を含んでいる。つまり、自己位置演算装置1は、特性情報により、周囲モビリティがどんなモビリティ(例えばダンプトラック、ピックアップトラック、又は中型トラック等)であるかが把握できる。例えば、自己位置演算装置1は、自モビリティの周囲にダンプトラックが存在すると認識している場合、特性情報がダンプトラックであるGPSデータを管制システム9から取得してもよい。
【0031】
また、自己位置演算装置1は、受信レベルが閾値未満で且つ周辺監視装置5により自モビリティから所定距離以内の範囲に周囲モビリティが検出されている場合、自モビリティが周囲モビリティの影に入ったと判断し、周囲モビリティに対する自モビリティの相対位置に基づく自己位置演算を実行するように構成されてもよい。これにより、より確実に受信機2が周囲モビリティの影響を受けた場面で、自己位置が補正される。
【0032】
また、所定のモビリティ(周囲モビリティ)として、自モビリティよりも大型のモビリティが設定されることが好ましい。大型のモビリティは、GPS信号の受信に関して他のモビリティから影響を受けにくく、そのGPSデータの精度は高いと推定できる。また、情報取得部32は、周囲モビリティの絶対位置情報の他に、周囲モビリティの体格の大きさに関する情報を取得してもよい。相対位置演算部33は、周囲モビリティが複数である場合、複数の周囲モビリティのうち最も体格が大きい周囲モビリティに対して相対位置を演算するように構成されてもよい。体格の大きさに応じて相対位置演算の優先度が設定されてもよい。
【0033】
また、情報取得部32は、周囲モビリティの絶対位置情報を、管制システム9ではなく、例えば、周囲モビリティから直接的に取得してもよい。例えば自モビリティと周囲モビリティとの無線通信(通信ネットワーク)により、情報取得部32は、周囲モビリティから絶対位置情報(GPSデータ)を取得することができる。これによっても、相対位置に基づいて自モビリティの絶対位置を演算することができる。この構成では、管制システム9や送信部31は省略できる。また、管制システム9は、例えばモビリティ内に配置されてもよい。また、受信レベルの悪化の判断は、受信レベルの大小でなく、自モビリティの走行位置(壁沿い等)に基づいて判断(推定)されてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…自己位置演算装置、2…受信機、21…アンテナ部、22…位置演算装置(位置演算部)、3…演算処理装置、31…送信部、32…情報取得部、33…相対位置演算部、34…補正部、4…無線通信機、5…周辺監視装置(周辺監視部)、9…管制システム。