(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129960
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】焼却炉の原料供給装置
(51)【国際特許分類】
F23G 5/44 20060101AFI20230912BHJP
F23G 5/50 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
F23G5/44 C ZAB
F23G5/50 Q
F23G5/50 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034340
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】506347517
【氏名又は名称】DOWAエコシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(72)【発明者】
【氏名】永原 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】吉原 実
【テーマコード(参考)】
3K062
3K065
【Fターム(参考)】
3K062AA11
3K062AB01
3K062CB01
3K062DA11
3K062DA22
3K062DA33
3K062DB01
3K065AA11
3K065AB01
3K065EA06
3K065EA12
3K065EA23
3K065EA60
(57)【要約】
【課題】定量かつ少量ずつの原料供給が可能な焼却炉の原料供給装置を提供する。
【解決手段】原料供給装置1は、原料供給部2、原料貯留部3、およびこれらの動作を制御する制御部4を有し、原料供給部2は、原料10を収容する原料ホッパ11と、原料ホッパ11の下方に設けられた原料搬送機構(スクリューコンベア)12と、を備え、原料貯留部3は、原料搬送機構12から焼却炉の原料投入口31までの間において原料10を通過させるシュート21と、シュート21に投入された原料10の重量測定手段22と、シュート21の原料投入口31側の開口部を開閉可能な観音開き式フラップダンパ23と、を備え、制御部4は、重量測定手段22が予め設定した範囲の重量を検知すると、フラップダンパ23が開くように制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉に原料を供給する装置であって、
原料供給部、原料貯留部、およびこれらの動作を制御する制御部を有し、
前記原料供給部は、前記原料を収容する原料ホッパと、前記原料ホッパの下方に設けられた原料搬送機構と、を備え、
前記原料貯留部は、前記原料搬送機構から前記焼却炉の原料投入口までの間において前記原料を通過させるシュートと、前記シュートに投入された前記原料の重量測定手段と、前記シュートの前記原料投入口側の開口部を開閉可能な観音開き式フラップダンパと、を備え、
前記制御部は、前記重量測定手段が予め設定した範囲の重量を検知すると、前記フラップダンパが開くように制御することを特徴とする、焼却炉の原料供給装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記焼却炉の炉体内部が正圧になると、前記フラップダンパが閉じるように制御することを特徴とする、請求項1に記載の焼却炉の原料供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記焼却炉の排ガスの成分に応じて、前記原料搬送機構の搬送速度を制御することを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の焼却炉の原料供給装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記焼却炉の炉体内部が正圧になると、前記原料搬送機構が停止するように制御することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の焼却炉の原料供給装置。
【請求項5】
前記原料搬送機構はスクリューコンベアであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の焼却炉の原料供給装置。
【請求項6】
前記制御部は、燃焼炉の後段に設けたボイラ出口の酸素濃度に応じて、前記スクリューコンベアの回転速度を制御することを特徴とする、請求項5に記載の焼却炉の原料供給装置。
【請求項7】
前記焼却炉が流動床炉であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の焼却炉の原料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床式焼却炉等の焼却炉へ原料(焼却物)を供給する原料供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般ごみや産業廃棄物の焼却、あるいはこれらの焼却により発生する焼却灰を無害化処理する焼却設備の一つとして、流動床炉が知られている。流動床炉は、炉床部に珪砂等の流動媒体を堆積させた流動層を備え、炉床から流動層中に空気等の気体を噴出させながら、流動砂を吹き上げて加熱する。流動床炉に投入された原料(廃棄物)は、高温の流動砂と混合して攪拌され、乾燥、熱分解、燃焼される。
【0003】
流動床炉の炉内の燃焼室への原料供給方法として、プッシャ装置により供給する方法が知られている。従来、例えば、灰ホッパへの灰の供給時に所定量の加湿水を噴射させる供給制御装置や、ホッパ内部に堆積・保有される灰の状態を定量的に把握する装置が提案されており、これらはプッシャ装置を用いて灰の送り出しを行う構成となっている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-65334号公報
【特許文献2】特開2005-147847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に開示されているようなプッシャ装置は、筒体の内径と略同一径寸法に形成されたプッシャが筒体内を伸縮する構成であるため、灰を供給する場合、プッシャにより押し出された灰が筒体の先端部に残留したり、プッシャに付着したりすることがある。その結果、筒体の本来の伸縮幅で加圧が伝わらない状態となり、灰の送り出しが十分に行えないことがある。
【0006】
あるいは、スライドダンパを開閉させて、バッチ式定量供給を図ることも考えられる。しかし、従来型のスライド式ダンパでは、ダンパが長いため速やかな開閉ができず、原料を少量ずつ定量供給するのが困難であるという問題がある。
【0007】
また、原料供給を行う際ダンパを開くと、大量の原料が塊状になって燃焼室に一気に投入されてしまうことがある。この場合、燃焼室が過大な燃焼状態になり、その結果、炉内正圧・酸欠、排ガス負荷増など、燃焼室内の環境が不安定となり、後段の排気ガス処理設備への負担が大きくなるという問題も生じる。
【0008】
そこで、本発明は、定量かつ少量ずつの原料供給が可能な焼却炉の原料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するため、本発明は、焼却炉に原料を供給する装置であって、原料供給部、原料貯留部、およびこれらの動作を制御する制御部を有し、前記原料供給部は、前記原料を収容する原料ホッパと、前記原料ホッパの下方に設けられた原料搬送機構と、を備え、前記原料貯留部は、前記原料搬送機構から前記焼却炉の原料投入口までの間において前記原料を通過させるシュートと、前記シュートに投入された前記原料の重量測定手段と、前記シュートの前記原料投入口側の開口部を開閉可能な観音開き式フラップダンパと、を備え、前記制御部は、前記重量測定手段が予め設定した範囲の重量を検知すると、前記フラップダンパが開くように制御することを特徴とする、焼却炉の原料供給装置を提供する。
【0010】
前記制御部は、前記焼却炉の炉体内部が正圧になると、前記フラップダンパが閉じるように制御することが好ましい。
【0011】
また、前記制御部は、前記焼却炉の排ガスの成分に応じて、前記原料搬送機構の搬送速度を制御してもよい。
【0012】
前記制御部は、前記焼却炉の炉体内部が正圧になると、前記原料搬送機構が停止するように制御してもよい。
【0013】
前記原料搬送機構はスクリューコンベアでもよい。また、前記制御部は、燃焼炉の後段に設けたボイラ出口の酸素濃度に応じて、前記スクリューコンベアの回転速度を制御してもよい。
【0014】
前記焼却炉が流動床炉でもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、焼却炉へ定量かつ少量ずつの原料供給を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態にかかる原料の供給装置の例を示す図である。
【
図2】実施例において比較例として用いた原料の供給装置を示す図である。
【
図3】実施例において本発明例と比較例との炉の排ガスCO濃度を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
本発明の原料供給装置が適用される焼却炉の例としては、ストーカ炉、ガス化燃焼炉、流動床炉、ロータリーキルン炉などがあり、未燃ガスの発生を抑える観点からは、流動床炉に適用することが好ましい。したがって、本実施形態では、焼却炉を流動床炉とする。この流動床炉は一般的なものであり、略円筒状の炉本体と、炉本体の下部の開口部を塞ぐ炉床とを備えている。炉本体の内部空間は、下部に、コークス等を燃料に用いて焼却物の燃焼を行う一次燃焼室、その上部に、焼却物の一次燃焼で発生した排ガスの燃焼を行う二次燃焼室を有している。一次燃焼室の底部には、粒子状の流動媒体である例えば珪砂等の流動砂が堆積し、焼却物を攪拌しながら燃焼させる流動層が形成される。炉床には、流動砂を吹き上げて流動化させるための流動化用ガスを一次燃焼室に供給する流動化用ガス供給口が設けられ、流動化用ガスを上方に向かって吐出させることによって、一次燃焼室内の流動砂を吹き上げて攪拌、流動化させ、流動層を形成する。
【0019】
流動床炉の炉本体には、一次燃焼室に原料(焼却物)を投入するための原料投入口31が設けられ、原料投入口31の上方に、本発明の実施形態にかかる原料供給装置1が配置される。
【0020】
図1は、本実施形態にかかる原料供給装置1の例を示すものである。原料供給装置1は、原料供給部2、原料貯留部3、および、これらの動作を制御する制御部4を有している。
【0021】
原料供給部2は、原料10を原料貯留部3へ供給する機構であり、原料10を収容する原料ホッパ11と、原料ホッパ11の下方に設けられた原料搬送機構とを有している。また、原料の種類や形状等に応じて、原料ホッパ11の側面に、ブリッジブレーカ13が設けられる。本実施形態において、原料搬送機構は、原料ホッパ11の下方に設けられたスクリューコンベア12である。スクリューコンベア12は、モータで駆動し回転速度が自在に調整可能であり、これによって原料10の供給量および搬送速度を調整することができる。スクリューコンベア12の回転速度調整は、手動で行ってもよいが、例えば原料10の質が均一でなく、頻繁に調整する必要がある場合等には、炉からの排ガスの成分、あるいは炉の後段に設けたボイラ出口の、例えば酸素濃度に応じて、制御部4によりPIDフィードバックなどで速度を自動制御することが好ましい。また、炉内が正圧になった場合に自動停止するように制御されることが好ましい。さらに、手動と自動とを切り替え可能としてもよい。
【0022】
原料貯留部3は、スクリューコンベア12と流動床炉の原料投入口31とを連結して設けられたシュート21と、シュート21に投入された原料10の重量測定手段としての秤量器22と、シュート21の先端付近の原料投入口31側の開口部を開閉可能な観音開き式フラップダンパ23とを有している。スクリューコンベア12で搬送された原料10は、シュート21を通過して炉内へ供給される。フラップダンパ23は、炉の運転の開始時や終了時、または緊急停止時等には閉じられており、これにより炉内と系外が遮断され、炉内の気密の保持や炉内の温度低下を防止する。閉じた状態のフラップダンパ23上に堆積した原料の重量は秤量器22で計量され、予め設定した任意の重量の原料が堆積したときに開くように、制御部4で制御される。原料貯留部3と原料供給部2との間、および原料貯留部3と炉の原料投入口31との間は、伸縮継手24で連結することが好ましい。
【0023】
炉内は、通常、圧力計測手段を有しており、本実施形態において、炉内が負圧時、例えば-0.25kPa以下のときが正常時、0kPa以上の正圧時を異常時と判断する。
【0024】
このような原料供給装置1において、原料供給部2は、原料貯留部3での計量が開始されると原料10の供給を稼働し、原料ホッパ11からスクリューコンベア12を介して原料10が供給される。原料貯留部3での計量結果が所定の重量に到達すると、原料供給部2は原料10の供給を停止する。また、炉内が正圧になったときにも、原料10の供給を停止する。原料貯留部3のフラップダンパ23は、計量開始時には閉じた状態であり、供給された原料10が所定の重量に到達すると開く。炉内の燃焼室が正圧になったときには、速やかに閉じる。そして、炉内の燃焼室が正常時に戻ったとき、即ち-0.25kPa以下になると、原料供給部2は原料10の供給を再開し、原料ホッパ11からスクリューコンベア12を介して原料10を供給する。原料貯留部3での計量も再開する。
【0025】
このように、フラップダンパ23は予め設定した重量の範囲によって開閉制御されるので、原料の大小に関わらず定量かつ少量ずつの供給を実現できる。したがって、炉内に供給される原料10(燃焼物)の量を正確に予測することができるので、炉の二次燃焼室を適正に制御することができ、不完全燃焼等を避けて安定した燃焼を維持することができる。
【0026】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例0027】
本発明の実施例として、
図1に示すように原料貯留部3にフラップダンパ23を設け、原料10が所定の重量に到達するとフラップダンパ23を開いて流動床炉内へ原料10の供給を行った。本発明例のフラップダンパ23は、1サイクルの平均時間が8秒であり、最小投入量が16kg、0.08m
3、平均密度が0.2であった。
【0028】
この結果、流動床炉内の圧力の実測平均値は-0.26kPaで安定しており、ばらつきも大きくはなかった。また、
図3に示すように、炉からの排ガスCO濃度も20ppm程度で保持されており、安定した燃焼を実現できた。さらに、原料10のフラップダンパ23への付着は少量であり、定期清掃を行う程度で、計量の誤差もなく、正確に計量し原料10を供給することができた。
【0029】
したがって、本発明例の供給装置では、炉内の燃焼状態を正確に予測でき、炉内の燃焼室の圧力が設定値と同等であり、ばらつきも少なかった。また、万一炉内が正圧になった場合等の緊急時には、迅速にダンパを閉じることができる。
【0030】
比較例として、フラップダンパ23の代わりに
図2に示すようにシングルスライド式ダンパ25を用いた原料供給装置で原料10の供給を行った。比較例のシングルスライド式ダンパ25は、1サイクルの平均時間が40秒であり、最小投入量が69kg、0.35m
3、平均密度が0.2であった。
【0031】
この結果、流動床炉内の圧力の実測平均値は、開始後0kPaを超え、ばらつきも大きかった。また、
図3に示すように、炉からの排ガスCO濃度は開始から45分で80ppmに達してしまい、平均60~70ppm程度で変動し、漏煙も発生した。さらに、原料10の一部がスライド式ダンパ25上に残ったり、ガイドへ引っかかったりすることにより、スムーズな供給を継続することができなかった。なお、この引っかかりにより、スライド式ダンパ25が変形したり、シリンダに汚れが付着したりするため、補修のためのコストを要する。また、開閉に時間を要するため、炉内が正圧になった場合等の緊急時に応答時間がかかるという問題もある。