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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129984
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】二多段式駐車装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/06 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
E04H6/06 E
E04H6/06 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034374
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513256284
【氏名又は名称】株式会社IHI扶桑エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】堀井 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 將人
(57)【要約】
【課題】搬器が乗込高さ(地表面)で横行でき、幅方向に隣接する搬器間の隙間を小さくでき、かつ、ピットの深さを維持したまま、ピットに収容できる車両の車高を大幅に増やすことができる二多段式駐車装置を提供する。
【解決手段】昇降駆動装置10、バランス機構20、及び固定部材30を備える。昇降駆動装置10は、搬器2の後側に設置され上限と下限との間で搬器2の後端部2bを昇降させる。バランス機構20は、乗込高さFLより下方に位置し、搬器2の前側と後側の昇降を同期する。固定部材30は、ピット内の搬器2から前方隙間を隔てて乗込高さFLより下方に設けられ、水平下面30aを有する。搬器2は、さらに、フロントアップ機構40を有する。フロントアップ機構40は、上限近傍において水平下面30aに当接し、上限までの上昇により前端部2aの高さを乗込高さFLまで持ち上げる。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗込高さに位置する搬器上に前側から車両が入出庫し、前記乗込高さとその下方に設けられたピットとの間で搬器を昇降させるピット式の二多段式駐車装置であって、
前記搬器の後側に設置され上限と下限との間で前記搬器の後端部を昇降させる昇降駆動装置と、
前記乗込高さより下方に位置し、前記搬器の前側と後側の昇降を同期するバランス機構と、
前記ピット内の前記搬器から前方隙間を隔てて前記乗込高さより下方に設けられ、水平下面を有する固定部材と、を備え、
前記搬器は、上限近傍において前記水平下面に当接し、前記上限までの上昇により前端部の高さを前記乗込高さまで持ち上げるフロントアップ機構を有する、二多段式駐車装置。
【請求項2】
前記バランス機構は、前記搬器の前記前端部に設けられ幅方向水平軸を中心に空転してバランスチェーンを案内する前部スプロケットと、
前記搬器の前記後端部に設けられ幅方向水平軸を中心に空転して前記バランスチェーンを案内する後部スプロケットと、を有し、
前記バランスチェーンは、一端が前記固定部材に固定され、前記水平下面より上方から下方に延び、前記前部スプロケットの下側と前記後部スプロケットの上側を介して、さらに下方に延び、他端がピット底部に固定されている、請求項1に記載の二多段式駐車装置。
【請求項3】
前記フロントアップ機構は、前記搬器の前記前端部に設けられ幅方向水平軸を中心に揺動可能であり先端部が前記水平下面に達する長さを有するフック部材と、該フック部材の揺動中心と前記先端部との中間に設けられた前記前部スプロケットと、を有し、
上限近傍において前記フック部材の前記先端部が、前記水平下面に当接し、前記上限までの上昇時に前記フック部材が下方に揺動し、これにより前記前端部を上方に持ち上げる、請求項2に記載の二多段式駐車装置。
【請求項4】
前記フック部材の前記揺動中心は、前記搬器の車両支持面の近傍に位置しており、
前記上限において前記前部スプロケットは、前記車両支持面より下方に位置し、
前記先端部が前記水平下面に当接しないとき、前記前部スプロケットは、前記車両支持面より上方に位置する、請求項3に記載の二多段式駐車装置。
【請求項5】
前記ピット内に、前記搬器から後方隙間を隔てて上方まで延びる後方支柱を有し、
前記昇降駆動装置は、前記搬器の前記後端部に一端が固定され前記乗込高さより上方まで延びる昇降用チェーンと、
前記後方支柱の前記乗込高さより上方に設けられ、前記昇降用チェーンを吊下げる吊りスプロケットと、
前記吊りスプロケットを回転駆動するスプロケット駆動装置と、を有する、請求項1に記載の二多段式駐車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピット式駐車装置に係り、さらに詳しくは、ピット式の二多段式駐車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ピット式駐車装置、例えばピット式の二多段式駐車装置において、車両の入出庫は、乗込高さ(FL)に位置するパレット(以下、搬器)上に車両が直接入庫し、又は乗込高さの搬器上から車両が直接出庫することで行われる。
そして、二多段式駐車装置は、搬器を駐車スペースに昇降または横行させることにより、同一の設置スペースに設けられた2段以上の駐車スペースに車両を収容する。
かかる二多段式駐車装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
ピット式駐車装置において、地下に収容できる車両の高さ(上限)は、ピットの深さと昇降機構により制限される。しかし、ピット深さを大きくすると工事費用が過大となる。また、既設のピット式駐車装置の場合には、その工事自体が非常に困難である。
そこで、ピット深さを維持したまま、地下に収容できる車両の高さ(上限)を増やすことが強く要望されており、例えば、特許文献2,3が既に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-105997号公報
【特許文献2】特開2007-146543号公報
【特許文献3】特開2013-159928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献2,3の駐車装置により、既存のピットを造成し直すことなく従来より車高が高い車両をピット内に格納することができる。
しかし、特許文献2,3の駐車装置には、車両を載せる搬器が昇降のみするピット式駐車装置である。そのため、乗込高さ(FL)で横行する搬器を有するピット式の二多段式駐車装置に適用すると、以下の問題点があった。
【0006】
(1)特許文献2の「ピット式駐車装置」は、搬器の左右方向の傾動を防止するバランスチェーン装置を有する。このバランスチェーン装置は、搬器を乗込高さ(FL)まで上昇させるため、チェーンの一端を乗込高さ(例えば地表面)より高い位置に固定する必要がある。そのため、乗込高さ(地表面)で隣接する搬器の間に位置する支柱にチェーンを固定する必要があり支柱が大型化する。
また、支柱が乗込高さの搬器の幅方向外側に突出するため、乗込高さ(FL)で搬器が横行するピット式の二多段式駐車装置には適用できない。
【0007】
(2)特許文献3の「機械式駐車装置」は、特許文献2の問題を回避するため、地下柱を乗込高さ(例えば地表面)より低く設定し、左右の地下柱の一方の上端付近にチェーンの一端を固定し、他方の上端付近に吊りスプロケットを設ける。これにより、搬器の左右をチェーンを介して吊りスプロケットで吊り下げて、搬器を乗込高さ(FL)まで上昇させている。
この構成により、搬器の乗込面(乗込高さ)から搬器の左右下部に固定されたスプロケットの下端までの距離H3よりも、地表面から地下柱の上端付近の吊りスプロケットの下端までの距離H1を短く設定して、その短い分だけ、ピットの深さを浅くすることができる。
【0008】
しかし、上記の距離H3を搬器の必要厚(車両支持面から下端まで:例えば100~150mm)より大きく設定するとその分、収容可能な車高が低くなる。また、上記の距離H1は、吊りスプロケットの外径より大きい必要があり、少なくとも50mmである。
従って、特許文献3により、ピットの深さを維持したまま収容可能となる車高の増加分量は少なく(例えば50~100mm)、車高の高い車(例えばハイルーフ車)の収容は難しかった。
また、特許文献3の装置の場合、搬器の幅方向外側に吊りスプロケットの外径、及び地下昇降装置の外形より大きな支柱が不可欠であり、幅方向に隣接する搬器の間に大きな隙間(例えば200mm以上)が必要になり、装置の収容効率が低い。
【0009】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、搬器が乗込高さ(地表面)で横行でき、幅方向に隣接する搬器間の隙間を小さくでき、かつ、ピットの深さを維持したまま、ピットに収容できる車両の車高を大幅に増やすことができる二多段式駐車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、車両の乗込高さに位置する搬器上に前側から車両が入出庫し、前記乗込高さとその下方に設けられたピットとの間で搬器を昇降させるピット式の二多段式駐車装置であって、
前記搬器の後側に設置され上限と下限との間で前記搬器の後端部を昇降させる昇降駆動装置と、
前記乗込高さより下方に位置し、前記搬器の前側と後側の昇降を同期するバランス機構と、
前記ピット内の前記搬器から前方隙間を隔てて前記乗込高さより下方に設けられ、水平下面を有する固定部材と、を備え、
前記搬器は、上限近傍において前記水平下面に当接し、前記上限までの上昇により前端部の高さを前記乗込高さまで持ち上げるフロントアップ機構を有する、二多段式駐車装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上限と下限との間で搬器の後端部を昇降させる昇降駆動装置が、搬器の後側に設置されているので、昇降駆動装置が乗込高さより上方に位置していても、搬器の前側から自由に車両が入出庫できる。
従って、搬器の上限位置を乗込高さ(地表面)に維持したまま、下限位置をピット内でより下方に設定して、搬器の後端部の上限と下限との差(昇降ストローク)を増やすことができる。
【0012】
また、乗込高さより下方に位置するバランス機構が、搬器の前側と後側の昇降を同期するので、搬器の前端部を後端部と同期させて昇降することができる。
また、バランス機構は、動力源を持たないので、幅方向に隣接する搬器間の隙間を小さくできる。
【0013】
さらに、水平下面を有する固定部材が、ピット内の搬器から前方隙間を隔てて乗込高さより下方に設けられている。また搬器に設けられたフロントアップ機構が、上限近傍において固定部材の水平下面に当接し、上限までの上昇により前端部の高さを乗込高さまで持ち上げるので、乗込高さ(地表面)で前側から車両が入出庫することができる。
【0014】
従って、搬器が乗込高さ(地表面)で横行でき、幅方向に隣接する搬器間の隙間を小さくでき、かつ、ピットの深さを維持したまま、ピットに収容できる車両の車高を大幅に増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による二多段式駐車装置の正面図である。
図2図1(B)の拡大図である。
図3図2の前部(A)と後部(B)の拡大図である。
図4】フロントアップ機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明による二多段式駐車装置100の全体構成図である。この図において、車両の乗込高さFLに位置するゲートは省略している。
図1において、(A)は正面図、(B)は(A)のB-B矢視図である。
【0018】
図1において、6は前方支柱、7は後方支柱、8は水平梁である。
この例で、4本の前方支柱6は下端がピットPの前側に固定され、4本の後方支柱7は下端がピットPの後側に固定されている。4本の前方支柱6の間隔と、4本の後方支柱7の間隔は、好ましくは等間隔でありそれぞれ車両1が通過できるように設定されている。
また、前方支柱6は、搬器2から前方隙間を隔てて上方まで延びる。後方支柱7は、搬器2から後方隙間を隔てて上方まで延びる。
水平梁8は、4本の前方支柱6、4本の後方支柱7、前後の前方支柱6と後方支柱7をそれぞれ水平に連結している。水平梁8には、前後方向の水平梁も含まれる。
前方支柱6、後方支柱7、及び水平梁8で囲まれる空間は、搬器2と車両1を収容できる大きさに設定されている。
車両1は、例えば車高の低い乗用車1aと車高の高いハイルーフ車1bである。
【0019】
図1に示す二多段式駐車装置100は、ピット式であり、車両1の乗込高さFLに位置する搬器上に前側から車両1が入出庫し、乗込高さFLとその下方に設けられたピットPとの間で搬器2を昇降させるようになっている。
なおこの例において、二多段式駐車装置100は、同一の設置スペースに3段(B1,1F,2F)の車両の格納位置が設けられた地下1段地上2段の昇降横行式である。
【0020】
この例において、3段のうちB1(地下)に位置する3つの搬器2は、昇降のみが可能になっており、1Fに位置する2つの搬器2は、水平に横行可能であり、2Fに位置する3つの搬器2は、昇降のみが可能になっている。
したがって、この例において、車両1の収容台数は、3×3-1=8台である。
【0021】
この例で3連式の二多段式駐車装置は、乗込高さFLに3つの入出庫部を有する。搬器2の全幅は好ましくは同一であるが相違してもよい。なお各入出庫部は、3つの搬器2が必要な隙間(例えば40mm以下)を隔てて互いに隣接して位置するようになっている。
【0022】
1Fに位置する2つの搬器2は、その長さ方向両端部に車輪3を有し、1Fに設けられた2本の水平レール4に沿って図示しない水平駆動装置により水平に横行し、3つの入出庫部のいずれかにおいて、車両1を直接入出庫させるようになっている。以下、入出庫とは、入庫と出庫を意味する。
【0023】
2Fに位置する3つの搬器2は、図示しない昇降駆動装置により昇降するようになっている。昇降駆動装置は、例えば、車両1と干渉しない位置で鉛直に延びる可撓性のある紐部材(チェーン又はワイヤ)を巻上げ又は巻戻しして、その下端を昇降させる装置である。
【0024】
B1(地下)に位置する搬器2の昇降機構は後述する。
【0025】
なお、本発明は上述した二多段式駐車装置100に限定されず、複数の搬器2を有する限りで、それ以外の駐車装置であってもよい。
【0026】
図2は、図1(B)の拡大図である。また、図3は、図2の前部(A)と後部(B)の拡大図である。
図2において、本発明の二多段式駐車装置100は、昇降駆動装置10、バランス機構20、及び固定部材30を備える。
【0027】
昇降駆動装置10は、搬器2の後側に設置され上限と下限との間で搬器2の後端部2bを昇降させる。
図3(B)において、昇降駆動装置10は、昇降用チェーン12、吊りスプロケット14、及びスプロケット駆動装置16を有する。
昇降用チェーン12は、好ましくは2本であり、搬器2の後端部2bの幅方向両端部に一端が固定され乗込高さFLより上方まで延びる。この例で搬器2は、後端部2bからさらに後方に延びる張出部2cを有し、張出部2cの後端部の幅方向両端部に昇降用チェーン12の下端12aが固定されている。
吊りスプロケット14は、好ましくは2つであり、後方支柱7の乗込高さFLより上方に設けられ、2本の昇降用チェーン12を同期して吊下げる。
スプロケット駆動装置16は、2つの吊りスプロケット14を同期して回転駆動する。
この構成により、スプロケット駆動装置16により吊りスプロケット14を回転駆動することで、搬器2の後端部2bの幅方向両端部を予め設定した上限と下限との間で同期して昇降することができる。
【0028】
バランス機構20は、乗込高さFLより下方に位置し、搬器2の前側と後側の昇降を同期する。
図2図3において、バランス機構20は、前部スプロケット22、後部スプロケット24、及び同期用チェーン(以下、バランスチェーン26)を有する。
前部スプロケット22は、搬器2の前端部2aに設けられ幅方向水平軸を中心に空転してバランスチェーン26を案内する。
後部スプロケット24は、搬器2の後端部2bに設けられ幅方向水平軸を中心に空転してバランスチェーン26を案内する。
バランスチェーン26は、一端26aが固定部材30に固定され、固定部材30の水平下面30aより上方から下方に延び、前部スプロケット22の下側と後部スプロケット24の上側を介して、さらに下方に延び、他端26bがピット底部の後方支柱下端に固定されている。
バランス機構20は、搬器2の幅方向両側に設けることが好ましい。
【0029】
上述したバランス機構20の構成により、昇降駆動装置10により搬器2の後端部2bを上昇させると、上昇分だけ後部スプロケット24から下端までのバランスチェーン26の長さが増え、前部スプロケット22から上端までの長さが減る。下降の場合も同様である。
従って、昇降駆動装置10により搬器2の後端部2bを昇降させることで、バランス機構20により、搬器2の前側と後側の昇降を同期することができる。
【0030】
図3において、固定部材30は、ピット内の搬器2から前方隙間を隔てて乗込高さFLより下方に設けられ、水平下面30aを有する。
この例で、固定部材30は、搬器2から前方隙間を隔てて上方まで延びる前方支柱6に固定されている。またこの例で、固定部材30の水平上面30bは、乗込高さFLに位置し、上述した水平レール4として機能するようになっている。
【0031】
図3において、搬器2は、さらに、フロントアップ機構40を有する。
図4は、フロントアップ機構40の説明図である。この図において、(A)は、搬器2の上限停止時、(B)は上昇中に後述するフック部材42の先端部42aが水平下面30aに接触した状態、(C)はフック部材42の先端部42aが水平下面30aが離れて上昇又は下降している状態を示している。
【0032】
図4において、フロントアップ機構40は、フック部材42を有する。フック部材42は、搬器2の前端部2aに設けられ幅方向水平軸41を中心に揺動可能であり、先端部42aが固定部材30の水平下面30aに達する長さを有する。
なお、図中の43は、フック部材42の揺動を制限するストッパである。
上述した前部スプロケット22は、フック部材42の揺動中心O1と先端部42aとの中間に設けられている。
【0033】
図4(C)の上昇中又は下降中において、搬器2の重量によりフック部材42は図で右回転し、ストッパ43で制限された位置を保持する。従ってこの状態で、上述した昇降駆動装置10により搬器2の後端部2bを昇降させることで、バランス機構20により、搬器2の前側と後側の昇降を同期させて昇降することができる。
【0034】
図4(B)において、上限近傍においてフック部材42の先端部42aが、水平下面30aに当接すると、搬器2の上昇力により、先端部42aが水平下面30aに当接したままでフック部材42が下方に揺動する。従って、先端部42aが水平下面30aに接触したまま、前部スプロケット22と揺動中心O1(幅方向水平軸41)が上昇する。
この場合、前部スプロケット22は後部スプロケット24と同期して上昇するので、揺動中心O1(幅方向水平軸41)の上昇量は後部スプロケット24より大きく(例えば約2倍)なり、上限までの上昇時に搬器2の前端部2aを相対的に上方に持ち上げることができる。
【0035】
図4(A)の上限停止時において、搬器2の車両支持面5は、車両1の乗込高さFLに設定されている。
すなわちフロントアップ機構40は、上限近傍において水平下面30aに当接し、上限までの上昇により前端部の高さを乗込高さFLまで持ち上げる。
【0036】
図4(C)から図4(B)までの上昇中(又は下降中)において、上述したようにバランス機構20により、搬器2の前側と後側の昇降は同期している。従って、この間の上昇量(又は下降量)は、搬器2の前側と後側で同一である。
図4(B)から図4(A)までの上昇中(又は下降中)において、上述したようにフロントアップ機構40により、搬器2の前側の上昇量(又は下降量)は後側より大きなる(例えば約2倍)。
【0037】
図4(A)の上限停止時において、搬器2の前側と後側の車両支持面5が、車両1の乗込高さFLに一致する場合、フロントアップ機構40により、図4(C)から図4(B)までの上昇中(又は下降中)では、搬器2の前側より後側の方が高い位置となる。しかし、この差は、フロントアップ機構40によるフロントアップ量の例えば約半分(例えば約100mm)であり、搬器2の昇降に影響は生じない。
また、この場合、搬器2の下限、すなわちピット底面において、図2に示すように、搬器2の前端部2aよりも後端部2bのほうが高くなる。
【0038】
なお、この構成は必須ではなく、搬器2の下限において前端部2aと後端部2bの高さを同じにしてもよい。
例えば、図2の状態から、さらに昇降用チェーン12を締めることで、搬器2の下限において前端部2aと後端部2bの高さを同じにすることもできる。
【0039】
また、図4(A)の上限停止時において、搬器2の後側の車両支持面5を、車両1の入出庫に支障が無い範囲で乗込高さFLより高く設定してもよい。
またこの場合、図2に示すように乗込高さFLで横行する搬器2の後側を前側より高く設定することで、ピット内の車両の高さを確保することができる。
この構成により、図4(C)から図4(B)までの上昇中(又は下降中)において、搬器2の前側と後側を同一高さにすることができる。
【0040】
図4において、フック部材42の揺動中心O1は、搬器2の車両支持面5の近傍に位置している。
また、図4(A)の上限(上限停止時)において前部スプロケット22の回転中心O2は、車両支持面5より下方に位置し、図4(C)の先端部42aが水平下面30aに当接しないとき、前部スプロケット22の回転中心O2は、車両支持面5より上方に位置する。
この構成により、図4(C)の状態における搬器2の車両支持面5から搬器2の最下端までの距離(高さの差)は、従来の搬器よりも小さくできる(例えば、20~50mm)。
従って、後部スプロケット24の中心位置(車両支持面5からの高さ)を、図4(C)の状態における前部スプロケット22の中心位置と実質的に同一に設定することにより、搬器2の必要厚(車両支持面から下端まで)を従来(例えば100~150mm)より小さくできる。
これにより、既設のピット深さに余裕がない場合でも、搬器の昇降ストロークを従来よりも大きくできる。
【0041】
図2は、車高が1750mmのハイルーフ車1bをピット内に収容した状態を示している。従来の構造の場合、同じピット内に収容可能な車両は、車高が1550mmの乗用車1aであった。従ってこの例でピットPに収容できる車両1の車高を200mm増やすことができる。
【0042】
上述した本発明の実施形態によれば、上限と下限との間で搬器2の後端部2bを昇降させる昇降駆動装置10が、搬器2の後側に設置されているので、昇降駆動装置10が乗込高さFLより上方に位置していても、搬器2の前側から自由に車両が入出庫できる。
従って、搬器2の上限位置を乗込高さ(地表面)に維持したまま、下限位置をピット内でより下方に設定して、搬器2の後端部2bの上限と下限との差(昇降ストローク)を増やすことができる。
【0043】
また、乗込高さFLより下方に位置するバランス機構20が、搬器2の前側と後側の昇降を同期するので、搬器2の前端部を後端部2bと同期させて昇降することができる。
また、バランス機構は、動力源を持たず、チェーンとスプロケットのみで構成されているので、幅方向に隣接する搬器間の隙間を小さくできる。
【0044】
さらに、水平下面30aを有する固定部材30が、ピット内の搬器2から前方隙間を隔てて乗込高さFLより下方に設けられている。また、搬器2に設けられたフロントアップ機構40が、上限近傍において固定部材30の水平下面30aに当接し、上限までの上昇により前端部の高さを乗込高さFLまで持ち上げるので、乗込高さ(地表面)で前側から車両1が入出庫することができる。
【0045】
従って、搬器2が乗込高さFL(地表面)で横行でき、幅方向に隣接する搬器間の隙間を小さくでき、かつ、ピットPの深さを維持したまま、ピットPに収容できる車両1の車高を大幅に増やすことができる。
【0046】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
FL 乗込高さ、O1 揺動中心、O2 回転中心、P ピット、
1 車両、1a 乗用車、1b ハイルーフ車、2 搬器、2a 前端部、
2b 後端部、2c 張出部、3 車輪、4 水平レール、5 車両支持面、
6 前方支柱、7 後方支柱、8 水平梁、10 昇降駆動装置、
12 昇降用チェーン、12a 下端、14 吊りスプロケット、
16 スプロケット駆動装置、20 バランス機構、22 前部スプロケット、
24 後部スプロケット、26 バランスチェーン、26a 一端、
26b 他端、30 固定部材、30a 水平下面、30b 水平上面、
40 フロントアップ機構、42 フック部材、42a 先端部、
100 二多段式駐車装置
図1
図2
図3
図4