(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129985
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】電源管理システム、燃料電池装置及び充放電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20230912BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20230912BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230912BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20230912BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J3/00 170
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J3/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034377
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山本 明日香
(72)【発明者】
【氏名】松原 未央
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064AC09
5G064AC11
5G064CB08
5G064CB12
5G064DA03
5G066AA03
5G066HA15
5G066HB01
5G066HB03
5G066HB07
5G066HB09
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】コストの増大を抑制しながら、実情に合った制御指令を送信できる電源管理システムを提供する。
【解決手段】電源管理システムであって、管理装置30は、制御対象期間の間、一以上の電源装置10で構成される複数の制御グループ毎に順に指令タイミングを設定し、制御グループ毎に順に、電源装置10から第1通信間隔毎に送信される電源装置10の出力電力を受信する出力情報受信処理を実行し、電力メーターから第1通信間隔よりも短い第2通信間隔毎に送信される受電点電力を受信する受電点情報受信処理を実行し、指令タイミングが到来した制御グループを構成する一以上の電源装置10のそれぞれについて、出力情報受信処理及び受電点情報受信処理で受信した情報に基づいて決定した目標個別出力電力を、その一以上の電源装置10のそれぞれに指令する制御指令送信処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の施設のそれぞれに設置される電源装置と、複数の前記施設のそれぞれに設置される、電力系統に接続される受電点での受電点電力を測定する電力メーターと、複数の前記電源装置及び複数の前記電力メーターとの間で前記施設の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置とを備える電源管理システムであって、
前記電源装置は、前記電力系統に連系される電源部を備え、上限出力電力と下限出力電力との範囲内で出力電力を調節でき、所定の制御対象期間の間、前記管理装置から指令される目標個別出力電力を供給するように構成され、
前記施設に設置される電力負荷装置は、当該施設に設置される前記電源装置及び前記電力系統の少なくとも一方から電力供給を受けるように構成され、
前記管理装置は、前記制御対象期間の間、複数の前記電源装置を一以上の前記電源装置で構成される複数の制御グループに分け、複数の前記制御グループ毎に順に指令タイミングを設定し、
前記制御グループ毎に順に、前記電源装置から第1通信間隔毎に送信される当該電源装置の出力電力を特定可能な情報を受信する出力情報受信処理を実行し、
前記電力メーターから、前記第1通信間隔よりも短い第2通信間隔毎に送信される、当該電力メーターで測定される受電点電力を特定可能な情報を受信する受電点情報受信処理を実行し、
前記指令タイミングが到来した前記制御グループを構成する一以上の前記電源装置のそれぞれについて、前記出力情報受信処理及び前記受電点情報受信処理で受信した情報に基づいて決定した前記目標個別出力電力を、その一以上の前記電源装置のそれぞれに指令する制御指令送信処理を実行する電源管理システム。
【請求項2】
前記管理装置は、前記制御指令送信処理において、
前記制御指令送信処理の開始時よりも所定時間だけ前の基準時刻での複数の前記施設による受電点電力の合計の目標値である目標合計受電点電力から、前記基準時刻での、前記受電点情報受信処理で受信した情報に基づいて決定される複数の前記施設による受電点電力の合計である受信合計受電点電力を減算して得られる乖離値を導出し、
前記基準時刻での複数の前記電源装置のそれぞれの出力電力の予測値である予測個別出力電力を決定し、
複数の前記電源装置の前記予測個別出力電力を合計して複数の前記電源装置による予測合計出力電力を決定し、
前記予測合計出力電力から前記乖離値を減算して得られる目標合計出力電力を決定し、
前記目標合計出力電力に基づいて、前記指令タイミングが到来した前記制御グループを構成する一以上の前記電源装置のそれぞれの前記目標個別出力電力を、前記上限出力電力と前記下限出力電力との範囲内で決定する請求項1に記載の電源管理システム。
【請求項3】
前記管理装置は、前記制御指令送信処理において、前記予測個別出力電力を、前記基準時刻より前の直近に行われた前記出力情報受信処理で受信した前記電源装置の実際の出力電力と、前記基準時刻より前の直近に行われた前記制御指令送信処理で指令された前記目標個別出力電力に応じて前記電源装置が動作することで前記基準時刻までの間に生じたと予測される当該電源装置の出力変化量とに基づいて決定する請求項2に記載の電源管理システム。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の電源管理システムで用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源部が燃料電池を備える燃料電池装置。
【請求項5】
請求項1~3の何れか一項に記載の電源管理システムで用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源部が充放電部を備える充放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の施設のそれぞれに設置される電源装置と、複数の施設のそれぞれに設置される、電力系統に接続される受電点での受電点電力を測定する電力メーターと、複数の電源装置及び複数の電力メーターとの間で施設の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置とを備える電源管理システム、その電源管理システムで用いられる電源装置としての燃料電池装置及び充放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2019-067286号公報)に記載のシステムでは、所定の時限内に、エネルギーリソースから実績を得、計画との差分に応じてエネルギーリソースに対して制御指令を与える制御を行っている。また、特許文献1の段落0056には、グループが一つしかない場合、所定の時限内に実績を取得しても、その時限の終了直後に始まる次の時限の計画量の調整は間に合わないので、次の次の時限の計画量の調整に実績を利用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、特許文献1に記載のシステムでは、実績取得から制御指令の送信までの間に大きなタイムラグが発生するという問題がある。この場合、エネルギーリソースに対して制御指令を与える時点では実績も既に変化しているはずであり、実情に合わない制御指令を送信している可能性がある。
【0005】
尚、実績取得と制御指令との実行頻度を高めれば、実績取得から制御指令の送信までの間のタイムラグも小さくなる。但し、実績取得及び制御指令送信の頻度を高めると、通信データ量や保存データ量が増加し、サーバー等の設備の増強が必要になるなど、コストの増大を招くという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、コストの増大を抑制しながら、実情に合った制御指令を送信できる電源管理システム、その電源管理システムで用いられる電源装置としての燃料電池装置及び充放電装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る電源管理システムの特徴構成は、複数の施設のそれぞれに設置される電源装置と、複数の前記施設のそれぞれに設置される、電力系統に接続される受電点での受電点電力を測定する電力メーターと、複数の前記電源装置及び複数の前記電力メーターとの間で前記施設の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置とを備える電源管理システムであって、
前記電源装置は、前記電力系統に連系される電源部を備え、上限出力電力と下限出力電力との範囲内で出力電力を調節でき、所定の制御対象期間の間、前記管理装置から指令される目標個別出力電力を供給するように構成され、
前記施設に設置される電力負荷装置は、当該施設に設置される前記電源装置及び前記電力系統の少なくとも一方から電力供給を受けるように構成され、
前記管理装置は、前記制御対象期間の間、複数の前記電源装置を一以上の前記電源装置で構成される複数の制御グループに分け、複数の前記制御グループ毎に順に指令タイミングを設定し、
前記制御グループ毎に順に、前記電源装置から第1通信間隔毎に送信される当該電源装置の出力電力を特定可能な情報を受信する出力情報受信処理を実行し、
前記電力メーターから、前記第1通信間隔よりも短い第2通信間隔毎に送信される、当該電力メーターで測定される受電点電力を特定可能な情報を受信する受電点情報受信処理を実行し、
前記指令タイミングが到来した前記制御グループを構成する一以上の前記電源装置のそれぞれについて、前記出力情報受信処理及び前記受電点情報受信処理で受信した情報に基づいて決定した前記目標個別出力電力を、その一以上の前記電源装置のそれぞれに指令する制御指令送信処理を実行する点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、管理装置が受電点情報受信処理において受電点電力を特定可能な情報を受信する第2通信間隔は、管理装置が出力情報受信処理において電源装置の出力電力を特定可能な情報を受信する第1通信間隔よりも短い。そのため、管理装置は、受電点情報受信処理によって、より実情に合った受電点電力を知ることができる。また、管理装置は、出力情報受信処理では、制御グループ毎に順に電源装置から第1通信間隔毎に送信される電源装置の出力電力を特定可能な情報を受信するため、通信データ量や保存データ量の増加を抑制できる。更に、管理装置は、制御対象期間の間、複数の制御グループ毎に順に指令タイミングを設定し、指令タイミングが到来した制御グループを構成する一以上の電源装置のそれぞれについて、出力情報受信処理及び受電点情報受信処理で受信した情報に基づいて決定した目標個別出力電力を、その一以上の電源装置のそれぞれに指令する制御指令送信処理を実行する。つまり、複数の制御グループの全体で見ると、各指令タイミングの時点での実情に合った制御指令送信処理が高頻度で行われる。
従って、コストの増大を抑制しながら、実情に合った制御指令を送信できる電源管理システムを提供できる。
【0009】
本発明に係る電源管理システムの別の特徴構成は、前記管理装置は、前記制御指令送信処理において、
前記制御指令送信処理の開始時よりも所定時間だけ前の基準時刻での複数の前記施設による受電点電力の合計の目標値である目標合計受電点電力から、前記基準時刻での、前記受電点情報受信処理で受信した情報に基づいて決定される複数の前記施設による受電点電力の合計である受信合計受電点電力を減算して得られる乖離値を導出し、
前記基準時刻での複数の前記電源装置のそれぞれの出力電力の予測値である予測個別出力電力を決定し、
複数の前記電源装置の前記予測個別出力電力を合計して複数の前記電源装置による予測合計出力電力を決定し、
前記予測合計出力電力から前記乖離値を減算して得られる目標合計出力電力を決定し、
前記目標合計出力電力に基づいて、前記指令タイミングが到来した前記制御グループを構成する一以上の前記電源装置のそれぞれの前記目標個別出力電力を、前記上限出力電力と前記下限出力電力との範囲内で決定する点にある。
【0010】
電源装置が制御指令送信処理で指令された目標個別出力電力を正常に出力したとしても、同じ施設に設けられた電力負荷装置の負荷電力が事前の想定と異なった場合、その施設の受電点電力も事前の想定とは乖離するという問題がある。
そこで本特徴構成では、管理装置は、制御指令送信処理において、制御指令送信処理の開始時よりも所定時間だけ前の基準時刻での複数の施設による受電点電力の合計の目標値である目標合計受電点電力から、基準時刻での、受電点情報受信処理で受信した情報に基づいて決定される複数の施設による受電点電力の合計である受信合計受電点電力を減算して得られる乖離値を決定する。そして、管理装置は、基準時刻での複数の電源装置のそれぞれの出力電力の予測値である予測個別出力電力を決定し、複数の電源装置の予測個別出力電力を合計して複数の電源装置による予測合計出力電力を決定し、予測合計出力電力から乖離値を減算して得られる目標合計出力電力を決定し、目標合計出力電力に基づいて、指令タイミングが到来した制御グループを構成する一以上の電源装置のそれぞれの目標個別出力電力を、上限出力電力と下限出力電力との範囲内で決定する。つまり、施設の受電点電力が事前の想定と乖離したとしても、実情に合った目標個別出力電力を決定して指令できる。
【0011】
本発明に係る電源管理システムの更に別の特徴構成は、前記管理装置は、前記制御指令送信処理において、前記予測個別出力電力を、前記基準時刻より前の直近に行われた前記出力情報受信処理で受信した前記電源装置の実際の出力電力と、前記基準時刻より前の直近に行われた前記制御指令送信処理で指令された前記目標個別出力電力に応じて前記電源装置が動作することで前記基準時刻までの間に生じたと予測される当該電源装置の出力変化量とに基づいて決定する点にある。
【0012】
管理装置は、出力情報受信処理では、制御グループ毎に順に電源装置から第1通信間隔毎に送信される電源装置の出力電力を特定可能な情報を受信するため、基準時刻での電源装置の出力電力が不明な場合が存在する。
ところが本特徴構成では、管理装置は、制御指令送信処理において、予測個別出力電力を、基準時刻より前の直近に行われた出力情報受信処理で受信した電源装置の実際の出力電力と、基準時刻より前の直近に行われた制御指令送信処理で指令された目標個別出力電力に応じて電源装置が動作することで基準時刻までの間に生じたと予測される電源装置の出力変化量とに基づいて決定する。その結果、基準時刻での複数の電源装置のそれぞれの出力電力の予測値である予測個別出力電力について、妥当な値を決定できる。
【0013】
上記目的を達成するための本発明に係る燃料電池装置の特徴構成は、上記電源管理システムで用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源部が燃料電池を備える点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、コストの増大を抑制しながら、実情に合った制御指令を送信できる電源管理システムで用いられる電源装置の機能を備える燃料電池装置を提供できる。
【0015】
上記目的を達成するための本発明に係る充放電装置の特徴構成は、上記電源管理システムで用いられる前記電源装置の機能を備え、前記電源部が充放電部を備える点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、コストの増大を抑制しながら、実情に合った制御指令を送信できる電源管理システムで用いられる電源装置の機能を備える充放電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】施設と、管理装置と、アグリゲーションコーディネーターとの関係を示した図である。
【
図3】制御対象期間と非制御対象期間とを模式的に描いた図である。
【
図4】出力情報受信処理と受電点情報受信処理と制御指令送信処理とが行われるタイミングを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、燃料電池装置10及び電力負荷装置4が設けられる施設20と、管理装置30と、アグリゲーションコーディネーター40との関係を示した図である。
図2は、施設20の構成例を示す図である。電源管理システムは、複数の施設20のそれぞれに設置される燃料電池装置10と、複数の施設20のそれぞれに設置される、電力系統1に接続される受電点での受電点電力を測定する電力メーター3と、複数の燃料電池装置10及び複数の電力メーター3との間で施設20の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置30とを備える。
燃料電池装置10は、本発明の「電源装置」に対応する。
【0019】
管理装置30は、リソースアグリゲーター等とも呼ばれ、VPP(Virtual Power Plant)サービス契約を締結した施設20に対して需要家側エネルギーリソースとしての燃料電池装置10及び電力負荷装置4への制御情報を伝達することで、その需要家側エネルギーリソースの制御を行う事業者である。アグリゲーションコーディネーター40は、各管理装置30が制御する電力量を束ね、電気の取引市場等において一般送配電事業者や小売電気事業者と電力取引を行う事業者である。
【0020】
管理装置30は、複数の施設20から、燃料電池装置10の出力電力、電力負荷装置4の負荷電力、施設20での受電点電力などの電力情報を逐次収集して記憶している。尚、本実施形態で「電力負荷装置4の負荷電力」と記載する場合、施設20に設けられている全ての電力負荷装置4の合計の負荷電力のことを意味する。そして、管理装置30は、将来の所定の時間帯に各施設20から供出可能な電力を予測し、アグリゲーションコーディネーター40に伝達する。この供出可能電力は、施設20の受電点電力を上げる能力又は下げる能力といった調整余力である。尚、本実施形態において「受電点電力を上げる」という場合、電力系統1から電力線2への受電電力を増加させる、又は、電力線2から電力系統1への逆潮流電力を減少させることを意味し、「受電点電力を下げる」という場合、電力系統1から電力線2への受電電力を減少させる、又は、電力線2から電力系統1への逆潮流電力を増加させることを意味する。
【0021】
例えば、施設20の受電点電力を上げるためには、燃料電池装置10の出力電力を下げること、及び、電力負荷装置4の負荷電力を上げることの少なくとも一方を行えばよいため、施設20の受電点電力を上げる場合の上げ側調整余力は、燃料電池装置10の出力電力を下げる余力がどの程度あるかを示し、電力負荷装置4の負荷電力を上げる余力がどの程度あるかを示す。また、施設20の受電点電力を下げるためには、燃料電池装置10の出力電力を上げること、及び、電力負荷装置4の負荷電力を下げることの少なくとも一方を行えばよいため、施設20の受電点電力を下げる場合の下げ側調整余力は、燃料電池装置10の出力電力を上げる余力がどの程度あるかを示し、電力負荷装置4の負荷電力を下げる余力がどの程度あるかを示す。
【0022】
また、管理装置30は、自身が管理する複数の施設20におけるベースライン受電点電力を決定する。このベースライン受電点電力は、各施設20から調整力等(即ち、送配電事業者に提供する調整力及び小売事業者等に提供する供給力等を含む)を供出させない場合に予測される、各施設20の受電点電力の合計に相当する。
【0023】
アグリゲーションコーディネーター40は、各管理装置30から受け取った供出可能電力を集計し、需給調整市場、卸電力市場、容量市場などの電力の取引市場への入札を行うなどして、一般送配電事業者や小売電気事業者と電力取引を行う。そして、アグリゲーションコーディネーター40は、取引を行った一般送配電事業者や小売電気事業者から、将来の所定の制御対象期間での調整力等の供出指令を受け取った場合、その供出指令で指定された調整力等を各管理装置30に対して分配して伝達する。
【0024】
管理装置30は、アグリゲーションコーディネーター40から供出指令を受け取った場合、その供出指令で指定された調整力等を各施設20に対して分配して伝達する。その結果、各施設20では、将来の所定の制御対象期間において需要家側エネルギーリソースとしての燃料電池装置10及び電力負荷装置4の制御が行われることで、その制御が行われなかった場合と比較して、施設20の受電点電力が増減するという調整力等の供出が行われる。
【0025】
施設20には、電源装置としての燃料電池装置10と、電力負荷装置4とが設けられている。燃料電池装置10及び電力負荷装置4は、電力系統1に連系される電力線2に接続される。電力線2には、施設20の受電点電力を測定する電力メーター3が設置されている。
【0026】
電力メーター3で測定された受電点電力に関する情報は、ゲートウェイ5及びルーター6を介して管理装置30に伝達される。例えば、受電点電力に関する情報は、10秒毎などの所定のタイミングで管理装置30に伝達される。
【0027】
電力負荷装置4は、例えば照明装置、空調装置などの様々な装置であり、施設20に設置される燃料電池装置10及び電力系統1の少なくとも一方から電力供給を受けることができる。
【0028】
燃料電池装置10は、電力系統1に連系される電源部としての燃料電池部12と、燃料電池部12の発電電力を所定の電圧、周波数、位相に変換して電力線2に供給する電力変換部11と、燃料電池部12及び電力変換部11の動作を制御する燃料電池制御部13と、燃料電池装置10で取り扱われる情報を記憶する記憶部14とを備える。また、燃料電池装置10は、燃料電池部12の燃料ガスである水素を生成する燃料改質装置を備えていてもよい。
【0029】
このように、電源管理システムで用いられる電源装置の機能を備え、電源部が燃料電池部12を備える燃料電池装置10を実現できる。
【0030】
燃料電池制御部13は、所定の上限出力電力と下限出力電力との間で、燃料電池装置10から電力線2への出力電力を調節できる。例えば、燃料電池制御部13は、燃料電池装置10の出力電力を上限出力電力に維持して連続運転させることができる。また、燃料電池制御部13は、燃料電池装置10の出力電力を、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行わせることもできる。例えば、燃料電池制御部13は、電力測定部8で計測される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)がゼロ又はゼロに近い電力になるように燃料電池装置10の出力電力を調節することで、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行わせることができる。
【0031】
燃料電池制御部13は、電力変換部11から電力線2に供給する出力電力についての情報及び電力測定部8での測定電力についての情報を有しているため、電力負荷装置4の負荷電力(=出力電力+測定電力)を導出できる。尚、電力測定部8での測定電力の符号がプラスの場合は負荷電力が燃料電池装置10の出力電力よりも大きい状態であることを意味し、電力測定部8での測定電力の符号がマイナスの場合は燃料電池装置10の出力電力が負荷電力よりも大きい状態であることを意味する。
【0032】
燃料電池装置10は、施設20の利用者が燃料電池装置10に対する指令を行う場合に操作するリモコン7と接続されている。そして、燃料電池装置10が有する出力電力についての情報及び負荷電力についての情報などは、リモコン7及びルーター6を介して管理装置30に伝達される。例えば、燃料電池装置10が有する出力電力についての情報及び負荷電力についての情報などは、1分毎などの所定のタイミングで管理装置30に伝達される。
【0033】
上述したように、管理装置30は、複数の燃料電池装置10に対して、燃料電池装置10の出力電力を定める出力制御指令を送信できる。そして、燃料電池装置10は、管理装置30から出力制御指令を受け取った場合、出力制御指令の対象となる制御対象期間の間、管理装置30から指令される目標個別出力電力を供給することを目標とする第1運転モードで動作し、制御対象期間から外れる非制御対象期間の間、第1運転モードとは別の第2運転モードで動作する。
【0034】
第2運転モードは、燃料電池装置10において予め設定されている運転モードである。或いは、管理装置30は、燃料電池装置10に対して、第2運転モードを定める運転モード制御指令を送信でき、燃料電池装置10は、管理装置30から受け取った運転モード制御指令に従って第2運転モードを決定する。
【0035】
例えば、燃料電池制御部13は、第2運転モードとして、燃料電池装置10の出力電力を上限出力電力に維持して連続運転させることができる。また、燃料電池制御部13は、第2運転モードとして、燃料電池装置10の出力電力を、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行わせることもできる。例えば、燃料電池制御部13は、電力測定部8で計測される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)がゼロ又はゼロに近い電力になるように燃料電池装置10の出力電力を調節することで、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行わせることができる。
【0036】
図3は、制御対象期間と非制御対象期間とを模式的に描いた図である。
図3に示した例では、制御情報(出力制御指令)において、12時~15時の間が制御対象期間に指定されている。そのため、この燃料電池装置10は、12時~15時の制御対象期間は、第1運転モードで動作し、それ以外の非制御対象期間は、第2運転モードで動作する。
【0037】
管理装置30は、複数の燃料電池装置10を一以上の燃料電池装置10で構成される複数の制御グループに分け、複数の制御グループ毎に順に指令タイミングを設定する。そして、管理装置30は、制御グループ毎に順に、燃料電池装置10から第1通信間隔毎に送信される燃料電池装置10の出力電力を特定可能な情報を受信する出力情報受信処理を実行する。加えて、管理装置30は、電力メーター3から、第1通信間隔よりも短い第2通信間隔毎に送信される、電力メーター3で測定される受電点電力を特定可能な情報を受信する受電点情報受信処理を実行する。
【0038】
管理装置30が上記出力情報受信処理で受信する、燃料電池装置10の出力電力を特定可能な情報は、例えば1分毎の燃料電池装置10の出力電力の情報である。管理装置30は、後述する
図4に示すように、例えば1分毎の燃料電池装置10の出力電力の情報を、複数の燃料電池装置10のそれぞれについて、制御グループ毎に時間差を設けて順に受信する。或いは、管理装置30は、1分間の燃料電池装置10の出力電力の平均値を受信し、その値に基づいて1分毎の燃料電池装置10の出力電力を導出してもよい。
【0039】
管理装置30が上記受電点情報受信処理で受信する、電力メーター3で測定される受電点電力を特定可能な情報は、例えば、10秒毎の受電点電力である。管理装置30は、全ての電力メーター3について、例えば10秒毎にその受電点電力を受信する。或いは、管理装置30は、電力メーター3で測定される10秒間の累計の受電点電力量の値を受信し、その値に基づいて10秒毎の受電点電力を導出してもよい。
【0040】
加えて、管理装置30は、制御対象期間において、指令タイミングが到来した制御グループを構成する一以上の燃料電池装置10のそれぞれについて、出力情報受信処理及び受電点情報受信処理で受信した情報に基づいて決定した目標個別出力電力を、その一以上の燃料電池装置10のそれぞれに指令する制御指令送信処理を実行する。
【0041】
図4は、出力情報受信処理と制御指令送信処理と受電点情報受信処理とが行われるタイミングを説明する図である。
図4に示す例では、複数の燃料電池装置10を、6つの制御グループA,B,C,D,E,Fに分けている。そして、制御グループAを構成する燃料電池装置10に対する出力情報受信処理を行うタイミング及び制御指令送信処理を行うタイミング(即ち、指令タイミング)を「〔n-1〕分0秒~〔n-1〕分10秒」や「n分0秒~n分10秒」などの間に設定し、制御グループBを構成する燃料電池装置10に対する出力情報受信処理を行うタイミング及び制御指令送信処理を行うタイミングを「〔n-1〕分10秒~〔n-1〕分20秒」の間に設定し、制御グループCを構成する燃料電池装置10に対する出力情報受信処理を行うタイミング及び制御指令送信処理を行うタイミングを「〔n-1〕分20秒~〔n-1〕分30秒」の間に設定し、制御グループDを構成する燃料電池装置10に対する出力情報受信処理を行うタイミング及び制御指令送信処理を行うタイミングを「〔n-1〕分30秒~〔n-1〕分40秒」の間に設定し、制御グループEを構成する燃料電池装置10に対する出力情報受信処理を行うタイミング及び制御指令送信処理を行うタイミングを「〔n-1〕分40秒~〔n-1〕分50秒」の間に設定し、制御グループFを構成する燃料電池装置10に対する出力情報受信処理を行うタイミング及び制御指令送信処理を行うタイミングを「〔n-1〕分50秒~n分0秒」の間に設定している。
【0042】
このように、
図4に示す例では、各制御グループに関して、出力情報受信処理を行うタイミング及び制御指令送信処理を行うタイミングは1分毎に設定されている。そして、出力情報受信処理を行うタイミング及び制御指令送信処理を行うタイミングが、6個の制御グループのそれぞれで10秒毎に順次ずらして設定されている。制御指令送信処理を行うタイミング、即ち、指令タイミングが「n分0秒~n分10秒」の場合、「n分0秒」が制御指令送信処理の開始時になる。
【0043】
また、
図4に示す例では、全ての施設20の電力メーター3から受電点電力に関する情報を受信する受電点情報受信処理が行われるタイミングは10秒毎に設定されている。このように、燃料電池装置10の出力電力を特定可能な情報がその燃料電池装置10から管理装置30に送信される上記第1通信間隔は1分間隔であり、電力メーター3で測定される受電点電力を特定可能な情報がその電力メーター3から管理装置30に送信される上記第2通信間隔は10秒間隔である。つまり、第2通信間隔は第1通信間隔よりも短く設定されている。
【0044】
そして、管理装置30は、制御指令送信処理において、制御指令送信処理の開始時よりも所定時間だけ前の基準時刻での複数の施設20による受電点電力の合計の目標値である目標合計受電点電力から、基準時刻での、受電点情報受信処理で受信した情報に基づいて決定される複数の施設20による受電点電力の合計である受信合計受電点電力を減算して得られる乖離値を導出し、基準時刻での複数の燃料電池装置10のそれぞれの出力電力の予測値である予測個別出力電力を決定し、複数の燃料電池装置10の予測個別出力電力を合計して複数の燃料電池装置10による予測合計出力電力を決定し、予測合計出力電力から乖離値を減算して得られる目標合計出力電力を決定し、目標合計出力電力に基づいて、指令タイミングが到来した制御グループを構成する一以上の燃料電池装置10のそれぞれの目標個別出力電力を、上限出力電力と下限出力電力との範囲内で決定する。
【0045】
以下に、現在時刻が制御指令送信処理の開始時であるn分0秒になった場合、即ち、制御グループAの指令タイミングになった場合、
図4で黒枠で囲っているn分0秒~n分10秒の間に行われる制御グループAの制御指令送信処理において、各制御グループの燃料電池装置10の予測個別出力電力を導出する手法例を記載する。
【0046】
先ず、管理装置30は、制御指令送信処理の開始時(n分0秒)よりも所定時間(10秒)だけ前の基準時刻での各制御グループの燃料電池装置10の出力電力の予測値である予測個別出力電力を決定する。
図4では、基準時刻は、この制御指令送信処理を行うタイミング(n分0秒~n分10秒)の開始時の10秒前の時刻である〔n-1〕分50秒になる。
【0047】
そして、管理装置30は、制御指令送信処理において、基準時刻での複数の燃料電池装置10のそれぞれの出力電力の予測値である予測個別出力電力を、基準時刻より前の直近に行われた出力情報受信処理で受信した燃料電池装置10の実際の出力電力と、基準時刻より前の直近に行われた制御指令送信処理で指令された目標個別出力電力に応じて燃料電池装置10が動作することで基準時刻までの間に生じたと予測される当該燃料電池装置10の出力変化量とに基づいて決定する。
【0048】
図4に示す例では、制御グループFの場合、基準時刻での制御グループFの燃料電池装置10の予測個別出力電力は、直近の〔n-2〕分50秒~〔n-1〕分0秒の間に行われた出力情報受信処理で受信した出力電力と、直近の〔n-2〕分50秒~〔n-1〕分0秒の間に行われた制御指令送信処理で指令された目標個別出力電力に応じて燃料電池装置10が動作することで〔n-1〕分0秒から基準時刻(〔n-1〕分50秒)までの間の50秒間に生じたと予測される出力変化量との和で決定される。
【0049】
50秒間で発生すると予測される出力変化量は、例えば燃料電池装置10の出力上昇速度及び出力減少速度を考慮して決定される。一例を挙げると、出力上昇速度が240W/分である場合、50秒間での上昇可能出力量は200Wになる。そのため、出力情報受信処理で受信した出力電力が400Wであり、制御指令送信処理の制御指令値である個別目標出力電力が700Wである場合、基準時刻までの50秒間で発生すると予測される燃料電池装置10の出力変化量は200Wになる。その結果、基準時刻での燃料電池装置10の予測個別出力電力は600W(=400W+200W)になる。尚、50秒間での上昇可能出力量は200Wであったとしても、例えば出力情報受信処理で受信した出力電力が600Wであり、制御指令送信処理の個別目標出力電力が700Wである場合、基準時刻までの50秒間で発生すると予測される燃料電池装置10の出力変化量100Wになる。その結果、基準時刻での燃料電池装置10の予測個別出力電力は700W(=600W+100W)になる。
【0050】
同様に、制御グループAの場合、基準時刻での制御グループAの燃料電池装置10の予測個別出力電力は、直近の〔n-1〕分0秒~〔n-1〕分10秒の間に行われた出力情報受信処理で受信した出力電力と、直近の〔n-1〕分0秒~〔n-1〕分10秒の間に行われた制御指令送信処理で指令された目標個別出力電力に応じて燃料電池装置10が動作することで〔n-1〕分10秒から基準時刻(〔n-1〕分50秒)までの間の40秒間に生じたと予測される燃料電池装置10の出力変化量との和で決定される。
【0051】
制御グループBの場合、基準時刻での制御グループBの燃料電池装置10の予測個別出力電力は、直近の〔n-1〕分10秒~〔n-1〕分20秒の間に行われた出力情報受信処理で受信した出力電力と、直近の〔n-1〕分10秒~〔n-1〕分20秒の間に行われた制御指令送信処理で指令された目標個別出力電力に応じて燃料電池装置10が動作することで〔n-1〕分20秒から基準時刻(〔n-1〕分50秒)までの間の30秒間に生じたと予測される燃料電池装置10の出力変化量との和で決定される。
【0052】
制御グループCの場合、基準時刻での制御グループCの燃料電池装置10の予測個別出力電力は、直近の〔n-1〕分20秒~〔n-1〕分30秒の間に行われた出力情報受信処理で受信した出力電力と、直近の〔n-1〕分20秒~〔n-1〕分30秒の間に行われた制御指令送信処理で指令された目標個別出力電力に応じて燃料電池装置10が動作することで〔n-1〕分30秒から基準時刻(〔n-1〕分50秒)までの間の20秒間に生じたと予測される燃料電池装置10の出力変化量との和で決定される。
【0053】
制御グループDの場合、基準時刻での制御グループDの燃料電池装置10の予測個別出力電力は、直近の〔n-1〕分30秒~〔n-1〕分40秒の間に行われた出力情報受信処理で受信した出力電力と、直近の〔n-1〕分30秒~〔n-1〕分40秒の間に行われた制御指令送信処理で指令された目標個別出力電力に応じて燃料電池装置10が動作することで〔n-1〕分40秒から基準時刻(〔n-1〕分50秒)までの間の10秒間に生じたと予測される燃料電池装置10の出力変化量との和で決定される。
【0054】
制御グループEの場合、基準時刻での制御グループDの燃料電池装置10の予測個別出力電力は、直近の〔n-1〕分40秒~〔n-1〕分50秒の間に行われた出力情報受信処理で受信した出力電力に決定される。この場合、上述したような燃料電池装置10の出力変化量はゼロと見なされる。
【0055】
以上のようにして、管理装置30は、基準時刻での複数の燃料電池装置10のそれぞれの出力電力の予測値である予測個別出力電力を決定する。そして、以下に説明するように、管理装置30は、決定した予測個別出力電力を用いて、指令タイミングが到来した制御グループを構成する一以上の燃料電池装置10のそれぞれの目標個別出力電力を決定し、その一以上の燃料電池装置10のそれぞれに指令する。
【0056】
次に、複数の燃料電池装置10が2つの制御グループに分けられた場合を例にして、一以上の燃料電池装置10のそれぞれの目標個別出力電力を決定して指令する制御指令送信処理を具体的に説明する。
図5は、一つの制御グループが、燃料電池装置10である装置Aで構成され、もう一つの制御グループが、燃料電池装置10である装置Bで構成されている場合の例である。そして、
図5には制御対象期間の開始時に装置A,Bの両方で行われる制御指令送信処理を説明する図を示し、
図6には装置Aで構成される制御グループへの指令タイミングに行われる制御指令送信処理を説明する図を示し、
図7には装置Bで構成される制御グループへの指令タイミングに行われる制御指令送信処理を説明する図を示す。
【0057】
図5に示すように、管理装置30は、各施設20に設けられている全ての電力負荷装置4で必要になると予測される負荷電力の合計、即ち、この例の場合は、装置Aが設けられている施設20の電力負荷装置4で必要になると予測される負荷電力と、装置Bが設けられている施設20の電力負荷装置4で必要になると予測される負荷電力との合計を、基準合計負荷電力(L1)として導出する。また、管理装置30は、制御指令送信処理に応じた出力制御が行われなかった場合に装置Aが設けられている施設20の燃料電池装置10が出力すると予測される出力電力と、制御指令送信処理に応じた出力制御が行われなかった場合に装置Bが設けられている施設20の燃料電池装置10が出力すると予測される出力電力との合計を、基準合計出力電力(L1-BL)として導出する。そして、管理装置30は、基準合計負荷電力(L1)と基準合計出力電力(L1-BL)とに基づいて、予め各施設20での受電点電力の基準値の合計である基準合計受電点電力(BL)を導出している。この基準合計受電点電力(BL)が、管理装置30が装置A,Bの出力電力制御を行わなかった場合のベースライン受電点電力となる。
【0058】
管理装置30が、アグリゲーションコーディネーター40から、受電点電力を「BL-L0」だけ低下させる供出指令を受け取った場合、装置A,Bが設けられている各施設20での受電点電力の合計を「BL-L0」だけ低下させるための制御指令、即ち、装置A,Bが設けられている各施設20の受電点電力の合計を目標合計受電点電力(L0)にさせるための制御指令を装置A,Bに送信する。つまり、管理装置30は、装置A,Bの出力電力の合計を目標合計出力電力(「L1-L0」)にさせるための制御指令を装置A,Bに送信することが必要である。この場合、管理装置30は、目標合計出力電力(「L1-L0」)を、装置A及び装置Bの出力可能な範囲で、装置Aの目標個別出力電力と装置Bの目標個別出力電力とに分配し、それぞれの目標個別出力電力を各装置A,Bに指令する。ここで、目標合計出力電力を、装置A,Bに対して均等に分配することで目標個別出力電力を導出する方法などがあるが、その分配方法については適宜決定可能である。
【0059】
装置A,Bが、
図5に示すような目標個別出力電力の出力を実際に行い、且つ、装置A,Bが設けられる各施設20での電力負荷装置4の負荷電力の合計が、
図5に示すような基準合計負荷電力(L1)に対応する値に実際になっていれば、装置A,Bが設けられる各施設20の受電点電力の合計は
図5に示す目標合計受電点電力(L0)になるはずである。
【0060】
但し、装置A,Bが設けられる各施設20の実際の負荷電力の合計(実合計負荷電力)が予測値である基準合計負荷電力(L1)から逸脱した場合、それに伴って、装置A,Bが設けられる各施設20の受電点電力の合計は
図5に示す目標合計受電点電力(L0)から逸脱する。例えば、
図6に示す場合、実合計負荷電力(L3)が予測値(L1)よりも大きくなっているため、上記受電点電力受信処理で受信した装置A,Bが設けられる各施設20の受電点電力の合計である受信合計受電点電力(L2)は当初の目標合計受電点電力(L0)よりも大きくなると考えられる。そのため、装置A,Bの目標個別出力電力を更新する必要が生じる。
【0061】
次に、
図6を参照して、装置Aで構成される制御グループの指令タイミングで管理装置30が行う制御指令送信処理について説明する。この場合、基準時刻は〔n-1〕分50秒になっているものとする。
【0062】
この制御指令送信処理は、
図4に示したように、制御グループ毎に順に行われる。管理装置30は、装置Aの制御指令送信処理を行うタイミングになった場合、複数の施設20の受電点電力の合計の目標値である目標合計受電点電力(L0)から、この場合の基準時刻(〔n-1〕分50秒)に受電点情報受信処理で受信した情報に基づいて決定される、複数の施設20の受電点電力の合計である受信合計受電点電力(L2)を減算して得られる乖離値を導出する。
図6の場合、乖離値は「L0-L2」になる。
【0063】
また、管理装置30は、この場合の基準時刻(〔n-1〕分50秒)において装置Aが出力していると予測される出力電力である予測個別出力電力と、この場合の基準時刻(〔n-1〕分50秒)において装置Bが出力していると予測される出力電力である予測個別出力電力とを決定する。この予測個別出力電力は、
図4を参照して上述した手法により決定される。そして、管理装置30は、複数の装置A,Bの予測個別出力電力を合計して複数の装置A,Bによる予測合計出力電力を決定する。
【0064】
次に、管理装置30は、上記予測合計出力電力から上記乖離値を減算して得られる目標合計出力電力を決定する。管理装置30は、この目標合計出力電力を、装置Aの目標個別出力電力と、装置Bの目標個別出力電力とに分配し、装置Aにのみ、その分配後の目標個別出力電力に対応する目標個別出力電力を指令(即ち、更新)する。
【0065】
従って、
図6に示した装置Aへの指令タイミングが終了した時点では、装置Aでは、
図6を用いて説明した目標個別出力電力に従った運転が行われており、装置Bでは、過去の直近の制御指令送信処理で送信された目標個別出力電力が維持されてそれに従った運転が行われている。
【0066】
次に、
図7を参照して、装置Bで構成される制御グループの指令タイミングで管理装置30が行う制御指令送信処理について説明する。この場合、基準時刻はn分0秒になっているものとする。また、
図7に示すように、装置A,Bが設けられる各施設20の実際の負荷電力の合計(実合計負荷電力(L3))が、
図6に示した時点よりも減少して基準合計負荷電力(L1)と同等になったため、過去の
図6に示した時点で決定された目標合計出力電力は過剰な値になっている。そして、装置A,Bに対して過剰な電力を出力させているため、受電点電力受信処理で受信した装置A,Bが設けられる各施設20の受電点電力の合計である受信合計受電点電力(L2)は目標合計受電点電力(L0)よりも小さくなっている。
【0067】
管理装置30は、複数の施設20による受電点電力の合計の目標値である目標合計受電点電力(L0)から、この場合の基準時刻(n分0秒)に受電点情報受信処理で受信した情報に基づいて決定される、複数の施設20の受電点電力の合計である受信合計受電点電力(L4)を減算して得られる乖離値を導出する。
図7の場合、乖離値は「L0-L4」になる。
【0068】
また、管理装置30は、
図6を参照して上述したのと同様に、この場合の基準時刻(n分0秒)において装置Aが出力していると予測される出力電力である予測個別出力電力と、この場合の基準時刻(n分0秒)において装置Bが出力していると予測される出力電力である予測個別出力電力とを決定する。そして、管理装置30は、複数の装置A,Bの予測個別出力電力を合計して複数の装置A,Bによる予測合計出力電力を決定する。
【0069】
次に、管理装置30は、上記予測合計出力電力から上記乖離値を減算して得られる目標合計出力電力を決定する。管理装置30は、この目標合計出力電力を、装置Aの目標個別出力電力と、制御対象期間における装置Bの目標個別出力電力とに分配し、装置Bにのみ、その分配後の目標個別出力電力に対応する目標個別出力電力を指令(即ち、更新)する。
【0070】
従って、
図7に示した装置Bへの指令タイミングが終了した時点では、装置Aでは、
図6を用いて説明した目標個別出力電力が維持されてそれに従った運転が行われており、装置Bでは、
図7を用いて説明した目標個別出力電力に従った運転が行われている。
【0071】
以上のように、管理装置30が受電点情報受信処理において受電点電力を特定可能な情報を受信する第2通信間隔は、管理装置30が出力情報受信処理において燃料電池装置10の出力電力を特定可能な情報を受信する第1通信間隔よりも短い。そのため、管理装置30は、受電点情報受信処理によって、より実情に合った受電点電力を知ることができる。また、管理装置30は、出力情報受信処理では、制御グループ毎に順に燃料電池装置10から第1通信間隔毎に送信される燃料電池装置10の出力電力を特定可能な情報を受信するため、通信データ量や保存データ量の増加を抑制できる。更に、管理装置30は、制御対象期間の間、複数の制御グループ毎に順に指令タイミングを設定し、指令タイミングが到来した制御グループを構成する一以上の燃料電池装置10のそれぞれについて、出力情報受信処理及び受電点情報受信処理で受信した情報に基づいて決定した目標個別出力電力を、その一以上の燃料電池装置10のそれぞれに指令する制御指令送信処理を実行する。つまり、複数の制御グループの全体で見ると、各指令タイミングの時点での実情に合った制御指令送信処理が高頻度で行われる。従って、コストの増大を抑制しながら、実情に合った制御指令を送信できる電源管理システムを提供できる。
【0072】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、本発明の電源管理システムの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、電源装置が備える電源部が燃料電池部12を備える例を説明したが、電源部は電力を出力できる他の装置であってもよい。例えば、電源部が、蓄電池などの充放電部を備える装置であってもよい。その場合、電源管理システムで用いられる電源装置の機能を備え、電源部が充放電部を備える充放電装置が実現される。
或いは、電源部は、エンジンとそのエンジンによって駆動される発電機とを備える装置などであってもよい。
【0073】
<2>
上記実施形態では、出力情報受信処理を行うタイミング及び制御指令送信処理を行うタイミングが1分毎に設定され、受電点情報受信処理が行われるタイミングが10秒毎に設定される例を説明したが、それらの数値は例示目的で記載したものであり、適宜変更可能である。また、制御グループの数も適宜変更可能である。
【0074】
<3>
上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用でき、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変できる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、コストの増大を抑制しながら、実情に合った制御指令を送信できる電源管理システム、その電源管理システムで用いられる電源装置としての燃料電池装置及び充放電装置に利用できる。
【符号の説明】
【0076】
1 電力系統
2 電力線
3 電力メーター
4 電力負荷装置
5 ゲートウェイ
6 ルーター
7 リモコン
8 電力測定部
10 燃料電池装置(電源装置)
11 電力変換部
12 燃料電池部(電源部)
13 燃料電池制御部
14 記憶部
20 施設
30 管理装置
40 アグリゲーションコーディネーター