(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023129990
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】キャリアおよび熱処理装置
(51)【国際特許分類】
C08J 11/12 20060101AFI20230912BHJP
F27D 3/12 20060101ALI20230912BHJP
F27B 9/26 20060101ALI20230912BHJP
F27B 9/10 20060101ALI20230912BHJP
D01F 9/12 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C08J11/12
F27D3/12 Z
F27B9/26
F27B9/10
D01F9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034388
(22)【出願日】2022-03-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的新構造材料等研究開発のうち熱可塑性CFRPの開発及び構造設計・応用加工技術の開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】390008431
【氏名又は名称】高砂工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504180169
【氏名又は名称】株式会社KADO
(71)【出願人】
【識別番号】000173522
【氏名又は名称】一般財団法人ファインセラミックスセンター
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】大島 士月
(72)【発明者】
【氏名】和田 匡史
【テーマコード(参考)】
4F401
4K050
4K055
4L037
【Fターム(参考)】
4F401AA21
4F401AA24
4F401AB06
4F401AC10
4F401AD01
4F401BA06
4F401CA73
4F401CB06
4F401CB16
4F401CB33
4F401DA16
4K050AA02
4K050BA09
4K050CC07
4K050CD02
4K050CD10
4K050CG04
4K050CG29
4K055AA06
4K055HA01
4K055HA15
4K055HA18
4K055HA19
4L037CS03
4L037FA02
4L037UA20
(57)【要約】
【課題】処理能力を向上させやすく、熱処理の不均質化を抑制可能なキャリアおよび熱処理装置を提供することを課題とする。
【解決手段】キャリア3は、直接被処理物9または間接被処理物94から炭素繊維を回収する連続式熱処理炉2において、直接被処理物9または間接被処理物94を搬送するのに用いられる。連続式熱処理炉2は、炭素繊維強化樹脂製の直接被処理物9または間接被処理物94に熱処理を施す炉内空間Rを有する。キャリア3は、直接被処理物9、または間接被処理物94が収容されたケース93が回転可能に載置される台座部30と、炉内空間Rをキャリア3自身が移動する際の推進力の一部を、直接被処理物9またはケース93の回転力に、変換する動力変換部31と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維強化樹脂製の被処理物に熱処理を施す炉内空間を有し、前記被処理物から炭素繊維を回収する連続式熱処理炉において、前記被処理物を搬送するのに用いられ、前記被処理物が直接あるいは間接的に載置される台座部を備えるキャリアであって、
前記被処理物は、前記台座部に直接載置される直接被処理物、またはケースに収容された状態で前記台座部に間接的に載置される間接被処理物であり、
前記直接被処理物または前記ケースは、前記台座部に回転可能に載置され、
前記炉内空間を前記キャリア自身が移動する際の推進力の一部を、前記直接被処理物または前記ケースの回転力に、変換する動力変換部を備えることを特徴とするキャリア。
【請求項2】
前記台座部は、自身の回転軸周りに回転可能であって前記直接被処理物または前記ケースが載置される一対のローラーを有し、
一対の前記ローラーのうち、少なくとも一つの前記ローラーは、前記動力変換部に連動して回転し、前記ローラーが回転することにより前記直接被処理物または前記ケースが回転する請求項1に記載のキャリア。
【請求項3】
前記台座部は、前記直接被処理物または前記ケースが前記回転軸の軸方向に移動するのを規制するストッパーを有する請求項2に記載のキャリア。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のキャリアおよび連続式熱処理炉を備える熱処理装置であって、
前記連続式熱処理炉は、前記キャリアが前記炉内空間を移動する際、前記動力変換部が当接する当接部を有し、
前記動力変換部は、前記当接部に当接することにより、前記推進力の一部を前記回転力に変換する熱処理装置。
【請求項5】
複数の前記キャリアが前記炉内空間を連続的に通過することにより、前記連続式熱処理炉は、複数の前記直接被処理物または前記間接被処理物を連続的に熱処理可能である請求項4に記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記炉内空間には過熱水蒸気が供給される請求項4または請求項5に記載の熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物から炭素繊維を回収する連続式熱処理炉に用いられるキャリア、および連続式熱処理炉とキャリアとを備える熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッチ式の炭化乾留炉と、連続式炉と、を備える再生炭素繊維の製造装置が開示されている。炭化乾留炉は、炭素繊維強化樹脂のマトリックス成分の一部を、固定炭素に転換して、炭素繊維の表面に付着させる。連続式炉は、固定炭素が付着した炭素繊維を、メッシュベルトにより搬送しながら加熱する。連続式炉は、炭素繊維から、付着した固定炭素の一部を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同文献の製造装置によると、炭化乾留炉と連続式炉を用いて、炭素繊維強化樹脂に二段階の熱処理を施すことができる。しかし、炭化乾留炉はバッチ式である。このため、炭化乾留炉は、処理工程においてボトルネックとなりやすい。したがって、同文献の製造装置によると、処理能力を向上させにくい。また、連続式炉において、被処理物(固定炭素が付着した炭素繊維)は、メッシュベルトに静置された状態で搬送されながら、加熱される。この際、被処理物の姿勢は変わらない。このため、被処理物に加熱むらが発生しやすい。つまり、熱処理が不均質になりやすい。そこで、本発明は、処理能力を向上させやすく、熱処理の不均質化を抑制可能なキャリアおよび熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のキャリアは、炭素繊維強化樹脂製の被処理物に熱処理を施す炉内空間を有し、前記被処理物から炭素繊維を回収する連続式熱処理炉において、前記被処理物を搬送するのに用いられ、前記被処理物が直接あるいは間接的に載置される台座部を備えるキャリアであって、前記被処理物は、前記台座部に直接載置される直接被処理物、またはケースに収容された状態で前記台座部に間接的に載置される間接被処理物であり、前記直接被処理物または前記ケースは、前記台座部に回転可能に載置され、前記炉内空間を前記キャリア自身が移動する際の推進力の一部を、前記直接被処理物または前記ケースの回転力に、変換する動力変換部を備えることを特徴とする。ここで、「炭素繊維強化樹脂製」とは、マトリックス樹脂の中に炭素繊維(強化材)を加えた、少なくとも炭素繊維と樹脂とを含む材料製であることをいう。
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の熱処理装置は、前記キャリアおよび前記連続式熱処理炉を備える熱処理装置であって、前記連続式熱処理炉は、前記キャリアが前記炉内空間を移動する際、前記動力変換部が当接する当接部を有し、前記動力変換部は、前記当接部に当接することにより、前記推進力の一部を前記回転力に変換することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のキャリアは、連続式熱処理炉において、被処理物(直接被処理物または間接被処理物)を搬送するのに用いられる。このため、バッチ式熱処理炉と比較して、処理能力を向上させやすい。また、本発明のキャリアは、動力変換部を備えている。このため、キャリア自身の推進力の一部を直接被処理物またはケースの回転力に変換することができる。すなわち、連続式熱処理炉の炉内空間において、直接被処理物またはケースを回転させながら、被処理物に熱処理を施すことができる。よって、被処理物の熱処理を促進することができる。また、熱処理の不均質化を抑制することができる。
【0008】
本発明の熱処理装置は、連続式熱処理炉を備えている。このため、熱処理装置がバッチ式熱処理炉を備えている場合と比較して、処理能力を向上させやすい。また、本発明の熱処理装置の連続式熱処理炉は、当接部を備えている。このため、キャリア移動時に、キャリアの動力変換部を当接部に当接させることにより、キャリアの推進力の一部を直接被処理物またはケースの回転力に変換することができる。すなわち、連続式熱処理炉の炉内空間において、直接被処理物またはケースを回転させながら、被処理物(直接被処理物または間接被処理物)に熱処理を施すことができる。よって、被処理物の熱処理を促進することができる。また、熱処理の不均質化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第一実施形態の熱処理装置の上側から見た左右方向(炉長方向)断面図である。
【
図4】
図4は、第一実施形態のキャリアの斜視図である。
【
図6】
図6(A)は、搬送第一段階における、同キャリアの前面図である。
図6(B)は、搬送第二段階における、同キャリアの前面図である。
図6(C)は、搬送第三段階における、同キャリアの前面図である。
【
図8】
図8は、第二実施形態のキャリアの前側から見た左右方向断面図である。
【
図9】
図9は、第三実施形態のキャリアの前側から見た左右方向断面図である。
【
図10】
図10は、第四実施形態のキャリアの前部の斜視図である。
【
図11】
図11(A)は、その他の実施形態(その1)のキャリアの前側から見た左右方向断面図である。
図11(B)は、その他の実施形態(その2)のキャリアの前側から見た左右方向断面図である。
図11(C)は、その他の実施形態(その3)のキャリアの前側から見た左右方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のキャリアおよび熱処理装置の実施の形態について説明する。
【0011】
<第一実施形態>
図1に、本実施形態の熱処理装置の上側から見た左右方向(炉長方向)断面図を示す。
図2に、
図1のII-II方向断面図を示す。
図3に、
図1のIII-III方向断面図を示す。
図4に、本実施形態のキャリアの斜視図を示す。
図5に、同キャリアの分解斜視図を示す。なお、
図1は、
図2のI-I方向断面図に相当する。また、説明の便宜上、
図3においては、直接被処理物9を前後方向(炉幅方向。炉長方向に対して直交する方向)断面図で示す。
【0012】
[直接被処理物の構成]
まず、本実施形態の熱処理装置の処理対象である直接被処理物の構成について説明する。直接被処理物9は、燃料電池車に搭載される高圧(例えば70MPa程度)水素用タンクである。直接被処理物9は、炭素繊維強化樹脂(以下、「CFRP」と称する)製であって筒状を呈している。
図3~
図5に示すように、直接被処理物9は、筒壁部90と、第一端壁部91と、第二端壁部92と、を備えている。筒壁部90は、前後方向に延在する円筒状(真円形筒状)を呈している。第一端壁部91は、筒壁部90の前端(炉幅方向一端)開口を封止している。第一端壁部91の径方向中心には、第一開口部910が開設されている。第二端壁部92は、筒壁部90の後端(炉幅方向他端)開口を封止している。第二端壁部92の径方向中心には、第二開口部920が開設されている。
【0013】
直接被処理物9は、図示しない内層と外層とを備えている。内層は、直接被処理物9の内部空間に露出している。内層は樹脂(例えばポリアミド)製である。外層は、内層の外側に積層されている。外層はCFRP製である。外層は、マトリックス樹脂(例えばエポキシ樹脂)と、炭素繊維と、を含んでいる。
【0014】
[熱処理装置の構成]
次に、本実施形態の熱処理装置の構成について説明する。
図1~
図3に示すように、熱処理装置1は、ローラーハースキルン2と、複数のキャリア3と、を備えている。ローラーハースキルン2は、本発明の「連続式熱処理炉」の概念に含まれる。
【0015】
(ローラーハースキルン2)
ローラーハースキルン2は、直接被処理物9に所定の熱処理を施し、直接被処理物9から炭素繊維を回収する。ローラーハースキルン2は、複数のキャリア3つまり直接被処理物9を、連続的に熱処理可能である。ローラーハースキルン2は、ハウジング20と、複数のバーナー21と、複数の混合ガス供給管22と、複数の排気管23と、複数の搬送ローラー24と、前後一対の搬送ローラー支持部材25と、を備えている。搬送ローラー24は、本発明の「当接部」の概念に含まれる。
【0016】
ハウジング20は、ローラーハースキルン2の外殻を構成している。ハウジング20は、左右方向に延在する角筒状を呈している。ハウジング20は、図示しない炉殻と断熱材とを備えている。断熱材は、炉殻の内側に配置されている。ハウジング20の内側には、炉内空間Rが区画されている。炉内空間Rは、左右方向に延在している。
【0017】
図3に示すように、バーナー21には、燃料ガス(例えばプロパンガス)、空気が供給されている。バーナー21の下流端は、炉内空間Rに開口している。バーナー21は、炉内空間Rを加熱可能である。混合ガス供給管22には、過熱水蒸気、雰囲気ガス(例えば窒素)が供給されている。混合ガス供給管22の下流端は、炉内空間Rに開口している。混合ガス供給管22は、炉内空間Rに混合ガス(過熱水蒸気と雰囲気ガスとを含むガス)を供給可能である。排気管23の上流端は、炉内空間Rに開口している。排気管23の下流端は、図示しない炉外設備(バーナー、集塵機、ファン)に連通している。ファンにより、炉内空間Rと炉外設備との間には、圧力勾配(詳しくは、上流側(炉内空間R側)から下流側(炉外設備側)に向かって圧力が降下する圧力勾配)が設定されている。排気管23は、炉内空間Rから排気ガスを排出可能である。
【0018】
搬送ローラー24は、炉内空間Rに、左右方向全長に亘って敷設されている。搬送ローラー24は前後方向に延在している。搬送ローラー24の軸直方向(径方向)の断面は、真円形を呈している。
図4に示すように、搬送ローラー24は、炉外の駆動装置(例えばモーター)により、自身の回転軸A1周りに回転可能である。
図1~
図3に示すように、左右方向に並ぶ複数の搬送ローラー24により、左右方向に延在する搬送路Lが構成されている。
【0019】
図1、
図3に示すように、前後一対の搬送ローラー支持部材25は、ハウジング20の前壁(炉幅方向一端壁)外面、後壁(炉幅方向他端壁)外面に配置されている。一対の搬送ローラー支持部材25は、複数の搬送ローラー24の前後両端を、回転可能に支持している。
【0020】
(キャリア3)
キャリア3は、ローラーハースキルン2において、直接被処理物9を搬送するのに用いられる。
図3~
図5に示すように、キャリア3は、台座部30と、ギヤ31と、を備えている。ギヤ31は、本発明の「動力変換部」の概念に含まれる。
【0021】
台座部30は、台板300と、四つのローラー支持片301と、左右一対のローラー302と、前後一対のストッパー303と、を備えている。台板300は、複数の搬送ローラー24(つまり搬送路L)に載置されている。四つのローラー支持片301は、台板300の上面に配置されている。四つのローラー支持片301は、台板300の上面において、左側に前後一対、右側に前後一対配置されている。
【0022】
左右一対のローラー302は、各々、前後方向に延在している。ローラー302の軸直方向の断面は、真円形を呈している。直接被処理物9は、左右一対のローラー302に載置されている。
図5に示すように、ローラー302は、ローラー本体302aと、複数の大径部302bと、を備えている。複数の大径部302bは、前後方向に所定間隔ずつ離間して、ローラー本体302aに環装されている。大径部302bは、ローラー本体302aよりも、外径が大きい。直接被処理物9は、複数の大径部302bに回転可能に載置されている。
【0023】
左側のローラー302は、左側の前後一対のローラー支持片301に、回転可能に支持されている。右側のローラー302は、右側の前後一対のローラー支持片301に、回転可能に支持されている。
図4に示すように、ローラー302は、自身の回転軸A2周りに回転可能である。ローラー302の回転に伴って、直接被処理物9は、自身の回転軸A3周りに回転可能である。
【0024】
図5に示すように、前後一対のストッパー303は、台板300の上面に配置されている。直接被処理物9は、前後一対のストッパー303の間に配置されている。前後一対のストッパー303は、直接被処理物9が前後方向(
図4に示す回転軸A2、A3の軸方向)に移動する(がたつく)のを規制可能である。
【0025】
図4に示すように、ギヤ31は、左右一対のローラー302のうち、左側のローラー302の前端(軸方向一端)に配置されている。ギヤ31は、回転軸A2上に配置されている。左側のローラー302は、ギヤ31に連動して回転可能である。ギヤ31は、複数の歯部310を備えている。複数の歯部310は、周方向に並んでいる。
図3、
図4に示すように、複数の歯部310のうち、下向きの歯部310は、台板300から下側に突出している。
図3に示すように、左側から見て、下向きの歯部310と搬送ローラー24とは、重複している。
【0026】
[熱処理装置の動き]
次に、直接被処理物から炭素繊維を回収する際の、本実施形態の熱処理装置の動きについて説明する。
【0027】
(ローラーハースキルン2の動き)
まず、ローラーハースキルン2の動きについて説明する。
図2、
図4に示すように、ローラーハースキルン2の制御装置(図略)は、駆動装置により、複数の搬送ローラー24を、各々の回転軸A1周りに、回転駆動する。次に、制御装置は、ハウジング20の左側に配置された搬入台(図略)から炉内空間Rに、複数のキャリア3を一つずつ連続的に搬入する。キャリア3は、複数の搬送ローラー24を、左側(上流側)から右側(下流側)に向かって、順次乗り継ぎながら移動する。すなわち、キャリア3は、左側から右側に向かって、搬送路Lを搬送される。なお、
図4に示すように、搬送中、キャリア3上の直接被処理物9は、自身の回転軸A3周りに回転している。キャリア3の動きについては後述する。
【0028】
図3に示すように、制御装置は、混合ガス供給管22を介して、炉内空間Rに混合ガス(過熱水蒸気と雰囲気ガスとを含むガス)を供給する。直接被処理物9の外面900は、混合ガス供給管22から供給された混合ガスに、全面的に曝される。他方、直接被処理物9の内部は、第一開口部910、第二開口部920を介して、直接被処理物9の外部(炉内空間R)に連通している。直接被処理物9の内部には、主に第一開口部910を介して、混合ガスが流入する。このため、直接被処理物9の内面901は、全面的に混合ガスに曝される。また、制御装置は、バーナー21により、炉内空間Rを所定の加熱プログラム(加熱温度パターンなど)に従って加熱する。
【0029】
直接被処理物9の樹脂(内層、外層の樹脂)は、過熱水蒸気の水分および熱と、炉内空間Rの熱と、により、加水分解、熱分解(以下、「分解」と総称する)する。分解により、樹脂は、低分子化し、ガス化する。すなわち、炉内空間Rにおいて、直接被処理物9の外層のCFRPは、可燃性ガス(排気ガス)Gと炭素繊維とに分離する。
【0030】
このうち、可燃性ガスGは、排気管23を介して、炉外設備に移送される。なお、直接被処理物9の内面901から発生した可燃性ガスGは、主に第二開口部920を介して、排気管23に流動する。他方、炭素繊維は、キャリア3上に残留する。炭素繊維が載置されたキャリア3は、ハウジング20の右側に配置された搬出台(図略)に搬出される。
【0031】
このように、ローラーハースキルン2においては、キャリア3に載置された直接被処理物9に所定の雰囲気(過熱水蒸気と雰囲気ガスとを含むガス雰囲気)下で熱処理を施すことにより、直接被処理物9から炭素繊維を回収する。
【0032】
(キャリア3の動き)
次に、キャリア3の動きについて説明する。搬送路Lを移動する際、キャリア3は直接被処理物9を回転させている。
図6(A)に、搬送第一段階における、本実施形態のキャリアの前面図を示す。
図6(B)に、搬送第二段階における、同キャリアの前面図を示す。
図6(C)に、搬送第三段階における、同キャリアの前面図を示す。なお、
図6(A)~
図6(C)においては、説明の便宜上、複数の搬送ローラー24のうち、任意の三つの搬送ローラー24を、左側から右側に向かって、搬送ローラー24a、24b、24cと定義する。同様に、複数の歯部310のうち、任意の三つの歯部310を、ギヤ31の回転方向(
図6(A)~
図6(C)における時計回り方向)前側から回転方向後側に向かって、歯部310a、310b、310cと定義する。
【0033】
図6(A)に示すように、歯部310aは、台板300から下側に突出している。このため、キャリア3の移動に伴い、歯部310aは左側から搬送ローラー24aに当接する。ここで、搬送ローラー24aは左右方向に不動である。したがって、
図6(B)に示すように、キャリア3が移動し、搬送ローラー24aをギヤ31が乗り越える際、歯部310aは搬送ローラー24aに係止される。よって、ギヤ31は、所定角度だけ、回転軸A2周りに回転する。ギヤ31の回転に伴い、左側のローラー302は、所定角度だけ、回転軸A2周りに回転する。左側のローラー302の回転に伴い、直接被処理物9は、所定角度だけ、自身の回転軸A3周りに回転する。また、ギヤ31の回転に伴い、歯部310bは、搬送ローラー24aと搬送ローラー24bとの隙間に進入する。
【0034】
続いてキャリア3が移動すると、
図6(C)に示すように、歯部310bが搬送ローラー24bに衝突し、ギヤ31および左側のローラー302が回転し、直接被処理物9が所定角度だけ回転する。同様に、さらにキャリア3が移動すると、歯部310cが搬送ローラー24cに衝突し、ギヤ31および左側のローラー302が回転し、直接被処理物9が所定角度だけ回転する。
【0035】
このように、キャリア3の移動に伴い、歯部310a~310cが、順次、搬送ローラー24a~25cに衝突することにより、ギヤ31および左側のローラー302を介して、直接被処理物9に回転駆動力が伝達される。
【0036】
[作用効果]
次に、本実施形態のキャリアおよび熱処理装置の作用効果について説明する。
図1~
図3に示すように、本実施形態のキャリア3は、ローラーハースキルン2つまり連続式熱処理炉において、直接被処理物9を搬送するのに用いられる。このため、キャリア3がバッチ式熱処理炉において用いられる場合と比較して、処理能力(例えば、単位時間(1秒、1分、1時間、1日など)あたりの処理量)を向上させやすい。また、
図6(A)~
図6(C)に示すように、本実施形態のキャリア3は、ギヤ31を備えている。このため、キャリア3自身の推進力(左側から右側に向かう直進力)の一部を、直接被処理物9の回転力に、変換することができる。すなわち、直接被処理物9を回転させながら、直接被処理物9に熱処理を施すことができる。よって、直接被処理物9の熱処理を促進することができる。また、熱処理の不均質化を抑制することができる。
【0037】
図1~
図3に示すように、本実施形態の熱処理装置1は、ローラーハースキルン2つまり連続式熱処理炉を備えている。このため、熱処理装置がバッチ式熱処理炉を備えている場合と比較して、処理能力を向上させやすい。また、
図6(A)~
図6(C)に示すように、ローラーハースキルン2は、搬送ローラー24を備えている。このため、キャリア3移動時に、ギヤ31の歯部310を搬送ローラー24に当接させることにより、言い換えるとギヤ31と搬送路Lとを噛合させることにより、キャリア3の推進力の一部を、ギヤ31延いては直接被処理物9の回転力に、変換することができる。すなわち、直接被処理物9を回転させながら、直接被処理物9に熱処理を施すことができる。よって、直接被処理物9の熱処理を促進することができる。また、熱処理の不均質化を抑制することができる。
【0038】
図6(A)~
図6(C)に示すように、直接被処理物9は、左右一対のローラー302に載置されている。このため、直接被処理物9の自重を利用して、直接被処理物9を回転可能に支持することができる。また、大きさの異なる複数種類の直接被処理物9(ただし、左右一対のローラー302に載置可能であって、台板300に当接しない直接被処理物9)に対して、キャリアを共用化することができる。
【0039】
図5に示すように、台座部30は、前後一対のストッパー303を備えている。このため、直接被処理物9を回転させながらキャリア3が移動する際に、直接被処理物9が前後方向(
図4に示す回転軸A2、A3の軸方向)にずれるのを、抑制することができる。
【0040】
図5に示すように、直接被処理物9は、CFRP製であって筒状を呈している。また、直接被処理物9は、高圧水素用タンクであるため、肉厚が大きく、樹脂製の内層を備えている。仮に、このような直接被処理物9をキャリア3に静置して搬送する場合(直接被処理物9を回転させないで搬送する場合)、特に熱処理が不均質になりやすい。以下、その理由について説明する。
【0041】
図7に、
図3のVII-VII方向断面図を示す。
図3、
図7に示すように、直接被処理物9において、第一開口部910および第二開口部920は、内面901の下端よりも、上側に配置されている。このため、直接被処理物9をキャリア3に静置して搬送する場合、直接被処理物9の内側に、内層や外層(主に内層)の樹脂の溶融、分解により、液体O(例えば油など。
図3、
図7に誇張して示す)が溜まってしまう。したがって、直接被処理物9の内面901の下部には、液体Oに浸漬した浸漬部901aが発現してしまう。
【0042】
ここで、直接被処理物9がキャリア3に静置されている場合、直接被処理物9の内面901において、浸漬部901a(内面901の下部)は不変である。このため、浸漬部901a付近の樹脂だけが、局所的に分解しにくくなる。したがって、熱処理にばらつきが発生してしまう。当該理由により、上述の直接被処理物9をキャリア3に静置して搬送する場合、特に熱処理が不均質になりやすい。
【0043】
この点、本実施形態のキャリア3によると、熱処理の際、直接被処理物9を回転させることができる。直接被処理物9が回転すると、当然、直接被処理物9の内面901も回転する。他方、液体Oは、自重により、直接被処理物9内側の下部に留まる。すなわち、浸漬部901aは、直接被処理物9内側の下部に留まる。このため、直接被処理物9の回転に伴って、相対的に、内面901における浸漬部901aの位置が変化することになる。つまり、直接被処理物9の回転に伴い、内面901の任意の部位が、液体Oに対して、周期的に出入りを繰り返すことになる。したがって、内面901の全面に亘って、熱処理にばらつきが発生するのを、抑制することができる。よって、直接被処理物9の熱処理の不均質化を抑制することができる。このように、本実施形態のキャリア3によると、熱処理が不均質化しやすい被処理物(例えば、CFRP製であって、筒状を呈しており、樹脂製の内層を備える被処理物)9であっても、熱処理の不均質化を抑制することができる。
【0044】
図1~
図3に示すように、複数のキャリア3は、左右方向に連なって、炉内空間Rを連続的に通過している。このため、ローラーハースキルン2は、複数の直接被処理物9を連続的かつ大量に熱処理可能である。したがって、処理能力を向上させることができる。
【0045】
図3に示すように、炉内空間Rには、混合ガス供給管22を介して、過熱水蒸気が供給されている。このため、直接被処理物9中の樹脂の分解を促進することができる。
【0046】
図4に示すように、キャリア3には、一つの直接被処理物9を丸ごと載置することができる。このため、熱処理前に直接被処理物9を裁断することなく、直接被処理物9に熱処理を施すことができる。したがって、直接被処理物9における炭素繊維の繊維配向を維持した状態で、炭素繊維を回収することができる。また、繊維長が長い炭素繊維を回収することができる。特に、直接被処理物9は高圧水素用タンクであるため、頑丈で裁断しにくい。したがって、本実施形態のキャリア3および熱処理装置1を用いて熱処理するのに好適である。
【0047】
図3に示すように、過熱水蒸気と雰囲気ガスとは、混合ガスとして、混合ガス供給管22から、炉内空間Rに供給される。すなわち、過熱水蒸気と雰囲気ガスとは、同方向から炉内空間Rに供給される。このため、過熱水蒸気と雰囲気ガスとが互いに気流を妨げにくい。
【0048】
図6(A)~
図6(C)に示すように、ローラーハースキルン2の搬送ローラー24は、「キャリア3の搬送」という本来の用途に加えて、「ギヤ31の回転駆動」という用途を有している。このため、搬送ローラー24とは別に「ギヤ31の回転駆動」用の部材を配置する場合と比較して、部品点数が少なくなる。また、熱処理装置1の構造が簡単になる。また、既設のローラーハースキルン2を、簡単に、本発明の「連続式熱処理炉」として転用することができる。
【0049】
図4~
図5に示すように、直接被処理物9は、ローラー本体302aではなく、複数の大径部302bに載置されている。このため、直接被処理物9の外面900とローラー302との接触面積を小さくすることができる。よって、外面900からの樹脂の分解を促進することができる。
【0050】
図3に示すように、第二開口部920に対して、第一開口部910は、混合ガス供給管22に近接している。このため、優先的に、第一開口部910を介して、直接被処理物9の内部に混合ガスを導入することができる。また、第一開口部910に対して、第二開口部920は、排気管23に近接している。このため、優先的に、第二開口部920を介して、直接被処理物9の内部から可燃性ガスGを排出することができる。また、混合ガス供給管22および第一開口部910と、排気管23および第二開口部920と、は前後方向に対向して配置されている。このため、直接被処理物9内に、第一開口部910から第二開口部920に向かって、ガス(混合ガス、可燃性ガスG)の流動方向を設定することができる。また、炉内空間Rにおいては、低酸素雰囲気下で、直接被処理物9に熱処理が施される。このため、炭素繊維が酸化しにくい。
【0051】
<第二実施形態>
本実施形態のキャリアおよび熱処理装置と、第一実施形態のキャリアおよび熱処理装置との相違点は、直接被処理物ではなく端材がキャリアにより搬送される点である。ここでは、主に相違点について説明する。
図8に、本実施形態のキャリアの前側から見た左右方向断面図を示す。なお、
図7と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0052】
図8に示すように、被搬送物8は、ケース93と、複数の端材94と、を備えている。端材94は、本発明の「間接被処理物」の概念に含まれる。ケース93は、左右一対のローラー302に載置されている。ケース93は、ギヤ31により、回転駆動される。ケース93は、金属製である。ケース93は、筒壁部930と、第一端壁部(図略)と、第二端壁部932と、を備えている。筒壁部930は、前後方向に延在する円筒状を呈している。第一端壁部は、筒壁部930の前端開口を封止している。第一端壁部の径方向中心には、第一開口部が開設されている。第二端壁部932は、筒壁部930の後端開口を封止している。第二端壁部932の径方向中心には、第二開口部932aが開設されている。端材94は、CFRP製である。端材94は、ケース93の内部に収容されている。
【0053】
熱処理時においては、キャリア3は、炉内空間Rを、搬送ローラー24により搬送される。キャリア3の推進力の一部は、ギヤ31を介して、回転力に変換される。当該回転力により、左側のローラー302が回転駆動される。ケース93および右側のローラー302は、左側のローラー302の回転に連動して、回転する。ケース93内の端材94は、ケース93の回転に応じて、ケース93内を揺動する。
【0054】
本実施形態のキャリアおよび熱処理装置と、第一実施形態のキャリアおよび熱処理装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の被搬送物8によると、端材94の処理後に、ケース93を再利用することができる。本実施形態の被搬送物8のように、ケース93だけが、ローラー302に連動して、回転してもよい。
【0055】
本実施形態のキャリア3および熱処理装置1によると、ケース93およびキャリア3は、あたかもバッチ式ロータリーキルンのように、回転するケース93内で端材94を揺動させながら、端材94に熱処理を施すことができる。よって、任意のケース93内において、熱処理の不均質化を抑制することができる。また、ローラーハースキルン2は、複数の被搬送物8つまり端材94を連続的かつ大量に熱処理可能である。このように、本実施形態の熱処理装置1は、バッチ式ロータリーキルン(ケース93およびキャリア3)と、ローラーハースキルン2と、の効果を併有している。
【0056】
また、ケース93の回転性能(回転速度、炉内空間Rにおける総回転数など)は、キャリア3の形状(例えばギヤ31の形状)、ローラーハースキルン2の搬送ローラー24の形状、配置数などにより決定される。この点、全てのキャリア3の形状は同一である。また、全てのキャリア3は、同一のローラーハースキルン2を通過する。このため、全てのケース93間において、ケース93の回転性能を一致させることができる。したがって、全てのケース93において、熱処理の不均質化を抑制することができる。
【0057】
<第三実施形態>
本実施形態のキャリアおよび熱処理装置と、第二実施形態のキャリアおよび熱処理装置との相違点は、ケース、ローラーの構成等である。ここでは、主に相違点について説明する。
【0058】
図9に、本実施形態のキャリアの前側から見た左右方向断面図を示す。なお、
図8と対応する部位については、同じ符号で示す。ケース93は、筒壁部930と、第一端壁部(図略)と、第二端壁部932と、前後一対のフランジ部933と、を備えている。筒壁部930は、前後方向に延在する六角形筒状を呈している。前後一対のフランジ部933は、筒壁部930の前後両端から、径方向外側に張り出している。フランジ部933の外周面は、前側から見て真円形を呈している。台座部30には、前後一対のストッパー303(
図4参照)が配置されていない。
【0059】
本実施形態のキャリアおよび熱処理装置と、第二実施形態のキャリアおよび熱処理装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。被搬送物8の前後方向のがたつきが許容範囲内であれば、本実施形態のキャリア3のように、ストッパーは不要である。ストッパーの配置数は限定しない。単一(前側または後側のみ)でも、複数(前側および後側)でもよい。同様に、直接被処理物9用のキャリア3についても、ストッパーは不要である。また、ストッパーの配置数は特に限定しない。
【0060】
ケース93の筒壁部930の形状は特に限定しない。円形(真円形、楕円形)筒状、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形など)筒状、あるいはこれらの形状を適宜組み合わせた形状であってもよい。同様に、直接被処理物9についても、筒壁部の形状は特に限定しない。
【0061】
本実施形態の被搬送物8のように、ケース93は、真円形のフランジ部933を備えていてもよい。こうすると、ケース93の筒壁部930の形状によらず、ケース93(具体的には前後一対のフランジ部933)を回転可能に左右一対のローラー302に載置することができる。同様に、直接被処理物9についても、フランジ部を備えていてもよい。
【0062】
本実施形態のキャリア3のように、ローラー302は、大径部302b(
図4参照)を備えていなくてもよい。すなわち、ケース93が左右一対のローラー本体302aに載置されていてもよい。同様に、直接被処理物9についても、左右一対のローラー本体302aに載置されていてもよい。
【0063】
<第四実施形態>
本実施形態のキャリアおよび熱処理装置と、第一実施形態のキャリアおよび熱処理装置との相違点は、ストッパーの位置が切換可能な点である。ここでは、主に相違点について説明する。
【0064】
図10に、本実施形態のキャリアの前部の斜視図を示す。なお、
図5と対応する部位については、同じ符号で示す。
図10に示すように、ストッパー303の下面には、左右一対の取付部(ボス)303aが突設されている。他方、台板300の前端には、前側から後側に向かって、左右一対の被取付部(凹部)300a、左右一対の被取付部(凹部)300b、左右一対の被取付部(凹部)300cが凹設されている。左右一対の取付部303aは、左右一対の被取付部300a~300cに対して、選択的に挿入可能である。
【0065】
本実施形態のキャリアおよび熱処理装置と、第一実施形態のキャリアおよび熱処理装置とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態のキャリア3によると、取付部303aの挿入先(被取付部300a~300c)を切り換えることにより、直接被処理物9の大きさ(前後方向長さなど)や形状に応じて、ストッパー303の前後方向位置を切り換えることができる。このように、ストッパー303の位置は、台板300に対して、切換可能であってもよい。また、ストッパー303は、台板300に固定されていてもよい(
図5参照)。同様に、被搬送物8用のキャリア3についても、ストッパーの位置は、台板に対して、切換可能であってもよい。また、ストッパーは、台板に固定されていてもよい。
【0066】
<その他>
以上、本発明のキャリアおよび熱処理装置の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0067】
図11(A)~
図11(C)に、その他の実施形態(その1~その3)のキャリアの前側から見た左右方向断面図を示す。なお、
図4と対応する部位については、同じ符号で示す。また、
図11(A)~
図11(C)に示すキャリアにより、被搬送物8(端材94入りのケース93)を搬送してもよい。
【0068】
図11(A)に示すように、左右一対のローラー302の前端に、各々、ギヤ31を取り付けてもよい。左側のギヤ31が搬送ローラー24に当接すると、左側のローラー302を介して、直接被処理物9に回転力が伝達される。同様に、右側のギヤ31が搬送ローラー24に当接すると、右側のローラー302を介して、直接被処理物9に回転力が伝達される。ここで、左右一対のギヤ31は、キャリア3の移動に伴って、交互に搬送ローラー24に当接する。このため、直接被処理物9には、左右一対のギヤ31から、交互に回転力が伝達される。このように、本実施形態のキャリア3によると、左右一対のギヤ31を用いることにより、直接被処理物9を回転させることができる。
【0069】
なお、左側または右側のローラー302の前後両端に、各々、ギヤ31を取り付けてもよい(ギヤ31の配置数は二つ)。勿論、左側および右側のローラー302の前後両端に、各々、ギヤ31を取り付けてもよい(ギヤ31の配置数は四つ)。このように、ギヤ31の位置、配置数は特に限定しない。また、ギヤ31の形状(歯部310の配置数、歯たけ、歯先円直径、歯底円直径、ピッチ、モジュールなど)は特に限定しない。
【0070】
図11(B)に示すように、熱処理装置1は、キャリア3と、メッシュベルトキルン4と、を備えていてもよい。メッシュベルトキルン4は、本発明の「連続式熱処理炉」の概念に含まれる。メッシュベルトキルン4は、メッシュベルト40と、ラック41と、を備えている。
【0071】
メッシュベルト40は、左側(上流側)から右側(下流側)に向かって、移動する。キャリア3は、メッシュベルト40に載置されている。このため、メッシュベルト40と共にキャリア3も移動する。
【0072】
ラック41は、ハウジング20の前壁内面(
図1参照)に、取り付けられている。ラック41は、左右方向に延在する板状を呈している。ラック41は、ギヤ31の上側に配置されている。ラック41の下縁には、複数の歯部410が形成されている。歯部410は、本発明の「当接部」の概念に含まれる。複数の歯部410は、キャリア3移動時の、ギヤ31の歯部310の軌道上に配置されている。
【0073】
熱処理時において、メッシュベルト40つまりキャリア3が左側から右側に向かって移動すると、ラック41に対してギヤ31が左側から右側に向かって移動する。ここで、ラック41の歯部410と、ギヤ31の歯部310とは、互いに噛合している。このため、キャリア3の移動に伴い、ギヤ31が回転する。したがって、ギヤ31に連動して左側のローラー302が回転し、左側のローラー302に連動して直接被処理物9、右側のローラー302が回転する。
【0074】
本実施形態の熱処理装置1のように、連続式熱処理炉としてメッシュベルトキルン4を採用してもよい。また、搬送路(メッシュベルト40)から独立して、当接部(歯部410)を配置してもよい。
【0075】
図11(C)に示すように、熱処理装置1は、キャリア3と、プッシャーキルン5と、を備えていてもよい。プッシャーキルン5は、本発明の「連続式熱処理炉」の概念に含まれる。プッシャーキルン5は、スキッドレール50と、プッシャー51と、を備えている。
【0076】
スキッドレール50は、左右方向に延在する板状を呈している。スキッドレール50には、キャリア3が、左右方向に摺動可能に載置されている。スキッドレール50には、複数の係合孔500が開設されている。係合孔500は、本発明の「当接部」の概念に含まれる。複数の係合孔500は、ギヤ31の下側に配置されている。複数の係合孔500は、キャリア3移動時の、ギヤ31の歯部310の軌道上に配置されている。プッシャー51は、キャリア3の左側(上流側)に配置されている。プッシャー51は、左側からキャリア3を押圧可能である。
【0077】
熱処理時において、プッシャー51がキャリア3を炉内空間Rに押し込むと、スキッドレール50に対してギヤ31が左側から右側に向かって移動する。ここで、スキッドレール50の係合孔500と、ギヤ31の歯部310とは、互いに噛合している。このため、キャリア3の移動に伴い、ギヤ31が回転する。したがって、ギヤ31に連動して左側のローラー302が回転し、左側のローラー302に連動して直接被処理物9、右側のローラー302が回転する。本実施形態の熱処理装置1のように、連続式熱処理炉としてプッシャーキルン5を採用してもよい。
【0078】
図3に示す、配管(バーナー21、混合ガス供給管22、排気管23)の位置、配置数は特に限定しない。例えば、
図3においては、混合ガス供給管22と排気管23とが、反対方向から炉内空間Rに開口している。しかしながら、混合ガス供給管22と排気管23とが、同方向から炉内空間Rに開口していてもよい。また、
図3においては、過熱水蒸気と雰囲気ガスとを混合して(混合ガス)、混合ガス供給管22から炉内空間Rに供給している。しかしながら、過熱水蒸気と雰囲気ガスとを、別々に炉内空間Rに供給してもよい。また、炉内空間Rに、微量の酸素を供給してもよい。あるいは、炉内空間Rに酸素を供給しなくてもよい。また、炉内空間Rを低酸素雰囲気に設定する場合の、炉内空間Rの酸素濃度は特に限定しない。例えば、酸素濃度は4体積%以下であればよい。
図3におけるバーナー21の燃料ガスの種類は特に限定しない。例えば、都市ガス、液化石油ガス、COG(コークス炉ガス)などを用いてもよい。炉内空間Rの熱源は、バーナー21に限定しない。電熱ヒーターなどであってもよい。すなわち、ローラーハースキルン2(連続式熱処理炉)は、内熱式であっても外熱式であってもよい。
【0079】
単一のキャリア3における、直接被処理物9またはケース93の搭載数は特に限定しない。単一でも複数であってもよい。例えば、
図5に示す台座部30を前後方向に伸張し、左右一対のローラー302に、複数の直接被処理物9を前後方向に並置してもよい。同様に、左右一対のローラー302に、複数のケース93を前後方向に並置してもよい。また、左右一対のローラー302に、直接被処理物9とケース93とを混載してもよい。
【0080】
キャリア3移動用の駆動源は特に限定しない。例えば、ローラーハースキルン2の搬送ローラー24(
図7参照)、メッシュベルト40(
図11(B)参照)、プッシャー51(
図11(C)参照)などであってもよい。また、キャリア3は自走式であってもよい。
【0081】
雰囲気ガスの種類は特に限定しない。例えば、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス、窒素、二酸化炭素などの表面改質ガスを雰囲気ガスとして用いることができる。雰囲気ガスとして表面改質ガスを用いると、回収後の炭素繊維を再利用する際、マトリックス樹脂に対する炭素繊維の密着性を向上させることができる。雰囲気ガスが、複数の気体(例えば、窒素と酸素)を含有していてもよい。
【0082】
被処理物の種類は特に限定しない。被処理物は、CFRP製であればよい。直接被処理物9全体がCFRP製の場合(
図7参照)、直接被処理物9は、水素用タンクに限定しない。例えば、水素用タンク以外の、内部空間を有する中空物(筒状物、箱状物など)であってもよい。また、直接被処理物9は、内部空間を有する網状物であってもよい。また、直接被処理物9は、内部空間を有しない中実物であってもよい。熱処理前において、直接被処理物9が裁断されていてもよい。直接被処理物9には、少なくともマトリックス樹脂と炭素繊維とが含まれていればよい。その他の成分(例えば金属など)が含まれていてもよい。例えば、CFRPで補強された鋼材なども、本発明の「炭素繊維強化樹脂」の概念に含まれる。マトリックス樹脂は、特にエポキシ樹脂に限定しない。フェノールなどの熱硬化性樹脂、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂であってもよい。直接被処理物9の内層用の樹脂は、特にポリアミドに限定しない。
【0083】
図9のケース93に収容される間接被処理物の種類は特に限定しない。端材94以外であってもよい。例えば、CFRP製の製品、部品、廃品などであってもよい。また、間接被処理物の形状は特に限定しない。例えば、板状、柱状、塊状などであってもよい。また、間接被処理物は、中実物であっても、中空物であってもよい。熱処理前において、間接被処理物が裁断されていてもよい。ケース93に複数の間接被処理物が収容される場合、複数の間接被処理物の形状は同一であっても、異なっていてもよい。また、ケース93は、内部空間を有する網状物であってもよい。ケース93の材質は特に限定しない。ケース93は、金属製、セラミック製、CFRP製などであってもよい。ケース93自体をCFRP製とすると、間接被処理物およびケース93から炭素繊維を回収することができる。
【0084】
図2においては、同形状の複数の直接被処理物9に対して、連続的に熱処理を施した。しかしながら、複数の直接被処理物9の形状は、互いに異なっていてもよい。ケース93についても同様である。また、
図2においては、複数のキャリア3を、左右方向に隙間無く連続して配置した。しかしながら、左右方向に隣り合う一対のキャリア3間に、隙間があってもよい。
【0085】
本発明のキャリアは、連続式熱処理炉から独立して用いることができる。例えば、本発明のキャリアは、熱処理を施さずに、対象物(直接被処理物9、間接被処理物に対応)を回転させながら搬送するのに用いることができる。例えば、対象物が、静置すると固化する性質の液体(生コンクリートなど)の場合、対象物をケースに入れて、キャリアにより搬送すると、固化を抑制しながら、対象物を搬送することができる。同様に、対象物が、静置すると分離する性質の液体の場合、対象物をケースに入れて、キャリアにより搬送すると、分離を抑制しながら、対象物を搬送することができる。
【符号の説明】
【0086】
1:熱処理装置、2:ローラーハースキルン(連続式熱処理炉)、20:ハウジング、21:バーナー、22:混合ガス供給管、23:排気管、24:搬送ローラー(当接部)、24a~24c:搬送ローラー(当接部)、25:搬送ローラー支持部材、3:キャリア、30:台座部、300:台板、300a~300c:被取付部、301:ローラー支持片、302:ローラー、302a:ローラー本体、302b:大径部、303:ストッパー、303a:取付部、31:ギヤ(動力変換部)、310:歯部、310a~310c:歯部、4:メッシュベルトキルン(連続式熱処理炉)、40:メッシュベルト、41:ラック、410:歯部(当接部)、5:プッシャーキルン(連続式熱処理炉)、50:スキッドレール、500:係合孔(当接部)、51:プッシャー、8:被搬送物、9:直接被処理物、90:筒壁部、900:外面、901:内面、901a:浸漬部、91:第一端壁部、910:第一開口部、92:第二端壁部、920:第二開口部、93:ケース、930:筒壁部、932:第二端壁部、932a:第二開口部、933:フランジ部、94:端材(間接被処理物)、A1~A3:回転軸、G:可燃性ガス、L:搬送路、O:液体、R:炉内空間