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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130001
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】衝撃吸収構造
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/06 20060101AFI20230912BHJP
   A41D 13/015 20060101ALI20230912BHJP
   A43B 13/20 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
A42B3/06
A41D13/015 106
A43B13/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034410
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】515186253
【氏名又は名称】オーシャンビートル有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】野崎 龍一郎
【テーマコード(参考)】
3B011
3B107
4F050
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AA05
3B011AA12
3B011AA13
3B011AC04
3B107AA01
3B107DA03
4F050BA40
4F050HA57
4F050HA59
4F050HA63
(57)【要約】
【課題】より優れた衝撃吸収性能を発揮できる薄型の衝撃吸収構造を提供する。
【解決手段】衝撃吸収構造10は、人体に装着可能なヘルメット1等の装着具に取り付けられる。衝撃吸収構造10は、シート状部材12と、複数のチューブ11と、を備えている。シート状部材12は、第1面12Aと該第1面12Aとは反対側の第2面12Bとを有し、第1面12A及び第2面12Bの各々に複数の凹条13Aと凸条14Aとが交互に連続して設けられている。複数のチューブ11は、シート状部材12の第1面12A及び第2面12Bの複数の凹条13A,14Bの各々に少なくとも一つが位置決めされている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に装着可能な装着具に取り付けられる衝撃吸収構造であって、
第1面と該第1面とは反対側の第2面とを有し、前記第1面及び前記第2面の各々に複数の凹条と凸条とが交互に連続して設けられたシート状部材と、
前記シート状部材の前記第1面及び前記第2面の前記複数の凹条の各々に少なくとも一つが位置決めされた複数のチューブと、
を備えた、
衝撃吸収構造。
【請求項2】
前記複数のチューブよりも人体から遠い位置に配置されたアウターパネルを更に備えた、
請求項1に記載の衝撃吸収構造。
【請求項3】
前記複数のチューブよりも人体から近い位置に配置されたインナーパネルを更に備えた、
請求項1又は2に記載の衝撃吸収構造。
【請求項4】
前記装着具がヘルメットであり、該ヘルメットの外殻が前記アウターパネルとして構成されている、
請求項2に記載の衝撃吸収構造。
【請求項5】
ヘルメットの頭頂部及び後頭部において、前記複数のチューブの各々は、前後方向及び上下方向に広がる鉛直面に沿って湾曲し、
ヘルメットの側頭部において、前記複数のチューブの各々は、左右方向及び上下方向に広がる鉛直面に沿って湾曲している、
請求項4に記載の衝撃吸収構造。
【請求項6】
前記装着具がシューズであり、ソールに内蔵された前記衝撃吸収構造において、前記複数のチューブの各々は、軸方向が左右方向に沿って配置されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の衝撃吸収構造。
【請求項7】
前記装着具がジャケット又はパンツであり、肩、肘、胸部、脊椎、膝、脛及び腰部の少なくとも一部を覆う保護パッドに前記衝撃吸収構造が内蔵されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の衝撃吸収構造。
【請求項8】
外殻と、内装材と、前記外殻及び前記内装材の間に配置された衝撃吸収構造と、を備え、
前記衝撃吸収構造は、前記外殻の内周面に沿って延在する凹条と凸条とが交互に連続するシート状部材である、
ヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に装着可能な装着具に取り付けられる衝撃吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
人体に装着するヘルメット等の保護具は、衝撃を吸収する衝撃吸収構造を備えている。ヘルメットの場合、衝撃吸収構造の厚みが大きいと、帽体(外殻)のサイズが大きくなる。帽体のサイズが大きいと、頭でっかちに見えて着用者の満足度が下がる。風圧を受けやすいため走行中に疲れる。ヘルメットの重量が増して頭部に作用する慣性力が大きくなる。慣性力が大きいと、事故等で急減速した際に、頭部を支える頸部が頸椎捻挫(むち打ち症)になりやすい。
【0003】
発明者は、これまでも特許文献1が参照されるように、発泡スチロール製の衝撃吸収ライナよりも衝撃吸収部を薄くすることができるヘルメットを提案している。特許文献1に記載のヘルメットは、帽体の内側面に線接触するように並べられた複数のチューブが衝撃を吸収する。チューブは、円筒形から変形するに従って弾性率が大きくなる非線形の荷重特性を有している。衝突直後は弱く、押し潰されるに従って累進的に強くなるようにチューブが反発するため、衝撃吸収部の厚みが小さくても優れた衝撃吸収性能を発揮できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-190055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1に記載のヘルメットでは、衝撃の入力方向に略直交するチューブの配列方向(並び方向)において各々のチューブが位置決めされていない。衝突時において、衝撃の入力方向にチューブが変形するだけでなく、衝撃を受けたチューブが潰れて隣接するチューブを押し出すため、衝突面の中心から外へ逃げるようにチューブが横滑りする。衝突面に隣接するエリアとの境界で衝突面の直下から外れるチューブが発生し、衝撃の吸収に寄与するチューブの数が僅かにばらついてしまう。チューブが横滑りしても十分な衝撃吸収性能を確保できるように安全マージンを大きくとらなければならなかった。安全マージンの分だけチューブが太くなり、衝撃吸収部の厚みが大きくなる。
【0006】
本発明は、より優れた衝撃吸収性能を発揮できる薄型の衝撃吸収構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る衝撃吸収構造は、人体に装着可能な装着具に取り付けられる。衝撃吸収構造は、シート状部材と、複数のチューブと、を備えている。シート状部材は、第1面と該第1面とは反対側の第2面とを有し、第1面及び第2面の各々に複数の凹条と凸条とが交互に連続して設けられている。複数のチューブは、シート状部材の第1面及び第2面の複数の凹条の各々に少なくとも一つが位置決めされている。
【0008】
この態様によれば、シート状部材がチューブの横滑りを防止して衝突面から逃がさないため、衝突面の直下にある全てのチューブがバランスよく変形して衝撃を吸収する。衝撃の吸収に寄与するチューブの数が安定する。衝突面と隣接するエリアとの境界において、配列方向に広がるように変形したチューブが衝突面の範囲外のチューブまで撓み変形させる。衝突面の局所的な変形が周囲のチューブに伝播し、より広い範囲で衝撃を吸収するため、衝撃吸収構造の厚みと比べて極めて高い衝撃吸収性能を得ることができる。
【0009】
上記態様において、複数のチューブよりも人体から遠い位置に配置されたアウターパネルを更に備えていてもよい。
【0010】
この態様によれば、アウターパネルを介して複数のチューブにバランスよく衝撃を分散させることができる。
【0011】
上記態様において、複数のチューブよりも人体から近い位置に配置されたインナーパネルを更に備えていてもよい。
【0012】
この態様によれば、インナーパネルを介して複数のチューブをバランスよく支えることができる。
【0013】
上記態様において、保護具がヘルメットであり、該ヘルメットの外殻がアウターパネルとして構成されていてもよい。
【0014】
この態様によれば、薄型でも衝撃吸収性能に優れた衝撃吸収構造によって、外殻(帽体)のサイズが小さいヘルメットを構成できる。
【0015】
上記態様において、ヘルメットの頭頂部及び後頭部において、複数のチューブの各々は、軸方向が前後方向に略平行な向きに配置され、ヘルメットの側頭部において、複数のチューブの各々は、軸方向が上下方向に略平行な向きに配置されていてもよい。
【0016】
この態様によれば、頭部の形状にフィットするように複数のチューブを湾曲させることができ、かつチューブの隙間を縫うように配置されるシート状部材の成形型に自然な抜き勾配をつけることができる。
【0017】
上記態様において、装着具がシューズであり、ソールに内蔵された衝撃吸収構造において、複数のチューブの各々は、軸方向が左右方向に沿って配置されていてもよい。
【0018】
この態様によれば、地面を蹴って前に進む力が含んでいる下方への力及び後方への力の双方により蓄勢して強い反発力を生じさせることができる。
【0019】
上記態様において、装着具がジャケット又はパンツであり、肩、肘、胸部、脊椎、膝、脛及び腰部の少なくとも一部を覆う保護パッドに衝撃吸収構造が内蔵されていてもよい。
【0020】
この態様によれば、保護パッドを薄型化できるため、衝撃吸収性能に優れた細身のジャケットやパンツを構成できる。
【0021】
本発明の一態様に係るヘルメットは、外殻と、内装材と、外殻及び内装材の間に配置された衝撃吸収構造と、を備えている。衝撃吸収構造は、外殻の内周面に沿って延在する凹条と凸条とが交互に連続するシート状部材である。
【0022】
この態様によれば、凹条と凸条とが交互に連続するシート状部材が撓んで衝撃吸収性能を発揮することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、より優れた衝撃吸収性能を発揮できる薄型の衝撃吸収構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の第1実施形態の衝撃吸収構造を内蔵したヘルメットの一例を示す断面図である。
図2図2は、図1に示された衝撃吸収構造を外殻から取り外して示す斜視図である。
図3図3は、チューブの配列方向に沿って切断された衝撃吸収構造の一例を示す断面図である。
図4図4は、図3に示された衝撃吸収構造の第1変形例を示す断面図である。
図5図5は、図3に示された衝撃吸収構造の第2変形例を示す断面図である。
図6図6は、図3に示された衝撃吸収構造の第3変形例を示す断面図である。
図7図7は、図3に示された衝撃吸収構造の第4変形例を示す断面図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態の衝撃吸収構造を内蔵したランニングシューズのソールの一例を示す斜視図である。
図9図9は、本発明の第3実施形態の衝撃吸収構造を内蔵したライディングジャケット及びライディングパンツの一例を示す正面図である。
図10図10は、本発明の第4実施形態の衝撃吸収構造を内蔵したヘルメットの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。本発明の第1乃至第3実施形態の衝撃吸収構造10等は、互いに平行に並べられた複数のチューブ11等に加え、それらチューブ11等の隙間を縫うように配置されたシート状部材12等を備えていることが特徴の一つである。
【0026】
このような衝撃吸収構造10によれば、複数の凹条13Aと凸条14Aとが連続したシート状部材12が、チューブ11の横滑りを防止するため、全てのチューブ11がバランスよく変形して衝撃を吸収することができる。ヘルメット1、ライディングジャケット3、ライディングパンツ4等の保護具やランニングシューズ2等のスポーツウェアを含む装着具に好適である。
【0027】
本発明の第4実施形態の衝撃吸収構造50は、複数の凹条53Aと凸条54Aとが連続したシート状部材52を備えていることが特徴の一つである。シート状部材52が変形して衝撃を吸収することができるため、厳しい衝撃吸収性能を求められない簡易な保護具等に好適である。以下、図面を参照して各構成について詳しく説明する。
【0028】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の衝撃吸収構造10を内蔵したヘルメット1の一例を示す断面図である。ヘルメット1は、人体の頭部を保護する保護具の一例である。図1に示すように、ヘルメット1は、前方及び下方に開口した略球形の外殻8と、外殻8の内面に取り付けられた衝撃吸収構造10及び内装材9と、を備えている。図示しないが、外殻8には、着用者がヘルメット1を固定するためのあごひも等が取り付けられている。ヘルメット1は、着用者の顔面を保護する透光性のシールド等を更に備えていてもよい。
【0029】
本明細書において、帽体とは、外殻8を指し、衝撃吸収構造10及び内装材9を含まない。外殻8は、例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)、ABS樹脂等のポリマーアロイ、ABS樹脂にポリカーボネート樹脂(PC)やナイロン樹脂(PA)を更にブレンドしたポリマーアロイ、繊維強化プラスチック(FRP)等の樹脂材料から形成されている。外殻8の板厚の一例は、3~4mmである。図示した例では、外殻8が、繊維強化プラスチック製であり、グラスファイバー等の繊維に熱硬化性樹脂を含侵させて略球形に賦形して製造されている。
【0030】
内装材9は、例えばウレタン樹脂等の肌触りのよい材料で形成され、人体の頭部に接触する。内装材9は、反発力が異なる複数のウレタン層を組み合わせた積層構造であってもよい。衝撃吸収構造10は、外殻8と内装材9との間に配置される。衝撃吸収構造10と内装材9との間にインナーパネル19(図3に示す)を更に備えていてもよい。インナーパネル19は、板厚が例えば0.5~1mmであり、後述するシート状部材12と同様の樹脂材料から形成されている。
【0031】
衝撃吸収構造10は、複数のチューブ11と、複数のチューブ11の各々を位置決めするシート状部材12と、を備えている。衝撃吸収構造10の厚みは、例えば9~15mm程度である。各々のチューブ11は、例えば、塩化ビニル樹脂(PVC)、シリコーン樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPE)、低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE,LDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)等を主成分とする樹脂材料から形成されている。これらの樹脂材料に加えて、補強材(ブレード)等を含んでいてもよい。
【0032】
チューブ11は、外径が例えば6~8mmであり、内径が例えば2~6mmである。複数のチューブ11は、互いに平行に並べられ、外殻8の内面に沿って湾曲している。外殻8は着用者の頭部に近似した形状で頭部よりも一回り大きい。複数のチューブ11は、人体の頭部に沿って湾曲しているともいえる。
【0033】
シート状部材12は、第1面12Aと該第1面12Aとは反対側の第2面12Bとを有する板厚2~5mmのシート状に形成されている。シート状部材12は、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE,LDPE)等の樹脂材料から形成されている。
【0034】
シート状部材12は、複数の凹条13Aと凸条14Aとが交互に連続するように賦形され、並べられたチューブ11の複数の隙間を縫うように配置されている。シート状部材12は、シート状部材12及び複数のチューブ11の配置のバリエーションについては、図4乃至図7を参照して後で詳しく説明する。
【0035】
図2は、図1に示された衝撃吸収構造10を外殻8から取り外して示す斜視図である。各々のチューブ11は、シート状部材12とは反対側から貼着された図示しない粘着テープによってシート状部材12の所定の位置に弱く固定されている。図2に示すように、ヘルメット1の頭頂部及び後頭部において、複数のチューブ11の各々は、チューブ11の軸方向(チューブ11の長手方向)X1が前後方向及び上下方向に広がる鉛直面に沿って湾曲している。ヘルメット1の左右の側頭部において、複数のチューブ11の各々は、チューブ11の軸方向X2が左右方向及び上下方向に広がる鉛直面に沿って湾曲している。
【0036】
図3は、チューブ11の配列方向Yに沿って切断された衝撃吸収構造10の一例を示す断面図である。衝撃吸収構造10は、前述した複数のチューブ11、シート状部材12に加えて、それらを挟むように配置されたアウターパネル18及びインナーパネル19を更に備えていてもよい。装着具がヘルメット1の場合、アウターパネル18は、例えば外殻8である。
【0037】
アウターパネル18は、複数のチューブ11の全てよりも人体から遠い位置に配置される。インナーパネル19は、複数のチューブ11の全てよりも人体から近い位置に配置される。図示した例では、アウターパネル18が複数のチューブ11の略半数に対向し、インナーパネル19が残り略半数に対向している。
【0038】
シート状部材12の第1面12Aには、複数の凹条13Aと凸条14Aとが交互に連続して設けられている。同様にシート状部材12の第2面12Bには、複数の凹条14Bと凸条13Bとが交互に連続して設けられている。第2面12Bにおける凸条13Bは、第1面12Aにおいては凹条13Aであり、第1面12Aにおける凸条14Aは、第2面12Bにおいては凹条14Bである。つまり、シート状部材12は、所定のパターンで内向き(例えば、図1に示された外殻8から内装材9への向き)と外向き(例えば、示された内装材9から外殻8への向き)と交互に向きを変える凹凸した形状に成形されている。
【0039】
図示した例では、シート状部材12が、内向きと、外向きと、交互に向きを変えて湾曲する波板状に形成されている。シート状部材12の形状は、波板状に限定されず、蛇腹状であってもよいし、他の形状であってもよい。各々の凹条13A,14Bには、チューブ11が少なくとも一本ずつ配置されている。図示した例では、シート状部材12の表裏すなわち第1面12Aと第2面12Bとに一本ずつ交互にチューブ11が配置されている。シート状部材12の曲率半径は、例えば、チューブ11の外径と略同一である。凹条13A,14Bに収容されたチューブ11は、配列方向Yの移動を規制される。配列方向Yに沿って並べられた複数のチューブ11は、チューブ11の軸方向X及び配列方向Yの双方に直交する衝撃吸収構造10の厚み方向Zにおいて隣り合うチューブ11の高さがずれていてもよい。
【0040】
図4乃至図7は、図3に示された衝撃吸収構造の変形例を示す断面図である。図4に示された第1変形例は、シート状部材12の表裏の凹条13A,14Bに二本ずつ交互にチューブ11が保持されている点が図3に示された例と異なる。図5に示された第2変形例は、シート状部材12の一方の面(図示した例では、アウターパネル18側の第1面12A)と該一方の面とは反対側の他方の面(図示した例では、インナーパネル19側の第2面12B)とでチューブ11を保持する凹条13A,14Bの大きさが互いに異なる点が図3に示された例と異なる。第1及び第2変形例は、所定のパターンで交互に向きを変える凹凸した形状である点において、図3に示された例と共通している。
【0041】
図6に示された第3変形例は、チューブ11を保持する凹条13A,14Bが滑らかな湾曲面ではなく、山折り谷折りをジグザグと繰り返した蛇腹状にシート状部材12が形成されている点において図3に示された例と異なる。図3に示すように、衝撃吸収構造10の厚み方向Zにおいて隣り合うチューブ11の高さがずれていてもよい。
【0042】
図7に示された第4変形例は、配列方向Yに並べられた複数のチューブ11と、その隙間を縫うように配置されたシート状部材12との組合せ11,12が中間パネル17を挟んで積層されている点が図3に示された例と異なる。図示した例では、衝撃吸収構造10の厚み方向Zにおいて、上段のシート状部材12と下段のシート状部材12との間隔が略一定になるように、配列方向Yにおいてシート状部材12の位置が調整されている。
【0043】
換言すると、衝撃吸収構造10の厚み方向Zにおいて、上段の凹条13Aと下段の凹条13Aとが重畳し、かつ上段の凸条14Aと下段の凸条14Aとが重畳している。図3に示された例だけでなく、図4乃至図7に示された変形例であっても、シート状部材12がチューブ11の配列方向Yに横滑りすることを抑制できる。
【0044】
以上のように構成された本実施形態の衝撃吸収構造10によれば、シート状部材12の凹条13A,14Bが、チューブ11を保持するポケットとして機能し、配列方向Yにチューブ11が横滑りすることを防止するため、全てのチューブ11がバランスよく変形して衝撃を吸収することができる。さらに、シート状部材12を介して衝突面の局所的な変形が周囲のチューブ11に伝播するため、広い範囲で衝撃を吸収できる。そのため、衝撃吸収構造10の厚みと比べて極めて高い衝撃吸収性能を得ることができる。
【0045】
[第2実施形態]
本発明の衝撃吸収構造を適用できる装着具は、図1に示されたヘルメット1等の保護具に限定されない。図8は、本発明の第2実施形態の衝撃吸収構造20を内蔵したランニングシューズ2のソールの一例を示す斜視図である。ランニングシューズ2等のスポーツウェアは、装着具の他の一例である。
【0046】
衝撃吸収構造20は、ヘルメット1用のチューブ11よりもロックウェル硬度が小さい複数のチューブ21と、複数のチューブ21の隙間を縫うように配置されたシート状部材22と、を備えている。シューズ用のチューブ21は、例えばゴム材料で形成されている。
【0047】
図8中の前後方向が着用者の走行方向であり、左右方向が走行方向に直交する方向である。着用者が地面を蹴って前に進む力は、下方への力と後方への力と双方の力を含んでいる。図示した例では、ソールに内蔵された衝撃吸収構造20において、チューブ21の軸方向X3が左右方向に略平行になるように配置されている。このようにチューブ21が配置された衝撃吸収構造20によれば、下方への力及び後方への力の双方の力によって強い反発力を生じさせることができる。
【0048】
[第3実施形態]
図9は、本発明の第3実施形態の衝撃吸収構造30A~30Dを内蔵したライディングジャケット3の一例と、本発明の一実施形態の衝撃吸収構造40E~40Gを内蔵したライディングパンツ4の一例と、を示す正面図である。
【0049】
着用者の上半身を保護するライディングジャケット3は、肩、肘、胸部及び脊椎の少なくとも一部を覆う保護パッドを備えている。着用者の下半身を保護するライディングパンツ4は、膝、脛及び腰部の少なくとも一部を覆う保護パッドを備えている。ライディングジャケット3及びライディングパンツ4はいずれも、人体を保護する保護具の一例である。
【0050】
図示した例では、着用者の肩を保護する保護パッド(ショルダーパッド)において、その部位に内蔵された衝撃吸収構造30Aは、チューブ31の軸方向が着用者の前後方向に略平行になるように配置されている。同様に、着用者の肘を保護する保護パッド(エルボーパッド)において、その部位に内蔵される衝撃吸収構造30Bは、チューブ31の軸方向が着用者の前後方向に略平行になるように配置されている。
【0051】
着用者の膝を保護する保護パッド(ニーパッド)において、その部位に内蔵された衝撃吸収構造40Eは、チューブ41の軸方向が着用者の左右方向に略平行になるように配置されている。このようにチューブ31,41が配置された衝撃吸収構造30A,30B,40Eでは、肩、肘及び膝を曲げるとき、チューブを屈曲させる必要がないため関節を動かしやすい。
【0052】
図示した例では、着用者の胸部を保護する保護パッド、脊椎を保護する保護パッド及び腰部を保護する保護パッドにおいて、その部位に内蔵された衝撃吸収構造30C,30D,40Gは、チューブ31,41の軸方向が着用者の上下方向に略平行になるように配置されている。各々のチューブ31,41が複数の肋骨や脊椎に跨って配置されるため、大きな負荷がかかったとき複数の骨に力を分散させることができる。
【0053】
同様に、脛を保護する保護パッドにおいて、その部位に内蔵された衝撃吸収構造40Fは、チューブ41の軸方向が着用者の上下方向に略平行になるように配置されている。脛が衝突したとき、衝撃吸収構造40Fがチューブを屈曲させようとする力に抗するため、脛骨が骨折しにくい。
【0054】
[第4実施形態]
図10は、本発明の第4実施形態の衝撃吸収構造50を内蔵したヘルメット5の一例を示す断面図である。図4に示すように、衝撃吸収構造50は、外殻58と、内装材59と、それらの間に配置された衝撃吸収構造50と、を備えている。第4実施形態は、衝撃吸収構造50が、凹条53Aと凸条54Aとが交互に連続するシート状部材52のみで構成され、チューブを含まない点において第1実施形態と異なる。凹条53A及び凸条54Aは、人体の頭部よりも一回り大きい外殻58の内周面に沿って延在している。
【0055】
シート状部材52のみの衝撃吸収構造50であっても、凹条53A及び凸条54Aが潰れるようにシート状部材52が変形し、ある程度の衝撃を吸収することができる。チューブを省略した分だけ衝撃吸収構造50を軽量で薄型に構成できるため、厳しい衝撃吸収性能を求められない簡易な保護具等に好適である。
【0056】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。例えば、スノーボード等のスポーツウェアに内蔵されるヒップガードとして本発明の衝撃吸収構造を適用してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,5…ヘルメット、2…ランニングシューズ(シューズの一例)、3…ライディングジャケット(ジャケットの一例)、4…ライディングパンツ(パンツの一例)、8,58…外殻、9,59…内装材、10,20,30A~30D,40E~40G,50…衝撃吸収構造、11,21,31、41…チューブ、12,22,52…シート状部材、12A…第1面、12B…第2面、13A,14B,53A…凹条、13B,14A,54A…凸条、17…中間パネル、18…アウターパネル、19…インナーパネル、X…チューブの軸方向、Y…チューブの配列方向、Z…衝撃吸収構造の厚み方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10