(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130004
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】防護柵
(51)【国際特許分類】
E01F 7/04 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
E01F7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034418
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000219358
【氏名又は名称】東亜グラウト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】桜井 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】張 満良
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 広幸
【テーマコード(参考)】
2D001
【Fターム(参考)】
2D001PA06
2D001PB04
2D001PD05
(57)【要約】
【課題】支柱間に懸架された複数のロープによって落石等を捕獲する防護柵において、高い衝撃吸収性能を得ながら、設置時やメンテナンス時に掛かるコストや手間を低減することができる防護柵を提供する。
【解決手段】複数の支柱20が所定の間隔をおいて立設された支柱列12と、前記支柱列に、上下方向に所定間隔をおいて多段に懸架された複数本のロープ30と、前記ロープに取付けられて衝撃力を吸収する緩衝手段50と、を備えた防護柵10。各ロープ30は、少なくとも一方の端部が、前記支柱列12の最端に位置する末端支柱20-1,20-4にて折り返され、その先端が、該末端支柱20-1,20-4よりも前記支柱列の内側の支柱20-2,20-3に係止されており、前記各ロープの折り返された少なくとも一方の端部には、他の1本以上の前記ロープ30と兼用された前記緩衝手段50が取付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支柱が所定の間隔をおいて立設された支柱列と、
前記支柱列に、上下方向に所定間隔をおいて多段に懸架された複数本のロープと、
前記ロープに取付けられ、所定値以上の引張力が付与された際に該ロープの懸架長さを大きくして衝撃力を吸収する緩衝手段と、を備えた防護柵において、
各ロープは、少なくとも一方の端部が、前記支柱列の最端に位置する末端支柱にて折り返され、その先端が、該末端支柱よりも前記支柱列の内側の支柱に係止されており、
前記各ロープの折り返された少なくとも一方の端部には、他の1本以上の前記ロープと兼用された前記緩衝手段が取付けられていることを特徴とする防護柵。
【請求項2】
前記各ロープは、前記支柱列の斜面山側の面に懸架され、前記各ロープの両端部が、前記支柱列の最端に位置する末端支柱にて山側から谷側に折り返されて、その先端が、前記末端支柱よりも前記支柱列の内側の支柱に係止されていることを特徴とする請求項1に記載の防護柵。
【請求項3】
前記緩衝手段と各ロープの設置は、
最上段のロープの先端が前記支柱列の左右何れか側の前記支柱に直接又は前記緩衝手段を介して係止され、末端が左右反対側で前記支柱に前記緩衝手段を介して係止され、
次段の上からの2番目以降の各ロープは、順次先端が一つ前段のロープの末端と前記緩衝手段を共有して前記支柱に係止され、末端が、次段のロープの先端と前記緩衝手段を共有して前記支柱に係止され、
最下段のロープの末端は、前記支柱に直接又は前記緩衝手段を介して係止されたことを特徴とする請求項2に記載の防護柵。
【請求項4】
前記緩衝手段又は前記支柱に対して2本のロープを連結する連結具を備え、
前記連結具は、略三角形に形成され、3つの角部のうちの2つに前記2本のロープの一端がそれぞれ連結され、残りの1つが前記緩衝手段又は前記支柱の取付け部に連結されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の防護柵。
【請求項5】
前記緩衝手段は、前記ロープに対して着脱可能な構成とされており、
前記ロープに連結されて該ロープから所定値以上の引張力を受けた際に該ロープの長さ方向に伸長する変形部と、
前記変形部と当接して該変形部の伸長時に摩擦力を発生させる摩擦抵抗部と、を備えたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の防護柵。
【請求項6】
前記末端支柱と前記ロープとの間に介在するように、前記末端支柱の外周面に取付けられ、該末端支柱よりも軟らかい材料で形成された摩耗部材を備えたことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜面において落石や崩落土砂等を捕獲して災害を防止する防護柵に関し、特に、支柱間に複数のロープを懸架して構成された防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、山などの斜面には、土砂崩れ、落石、雪崩などの自然災害から隣接する道路、鉄道や住居を保護するために、防護柵が設置されている。特に、地震や豪雨の被害の多い日本では、斜面等に防護柵を設置して災害への対策を講じることが重要となっている。
【0003】
防護柵は、一般的に、間隔をおいて立設された複数の支柱の間に、ロープやネットを懸架して構成されている。このような防護柵では、落石等を受け止めることによる衝撃荷重を受けた際に、ロープやネットの伸長によって衝撃を緩和している。
【0004】
ロープを用いた防護柵では、支柱を複数立設した支柱列の両端の支柱、すなわち末端支柱に、ロープの両端部を係止させて、ロープを懸架する構造が一般に用いられている。また、衝撃吸収効果を高めるために、ロープの端部に、ロープに所定値以上の引張力が作用した際に、衝撃力を吸収してロープに作用する衝撃荷重を緩和する緩衝装置を設けている。
【0005】
例えば、特許文献1には、隣接する支柱間にループ状に巻き掛けたロープを支柱の上下方向に多段に設けた防護柵が記載されている。この防護柵では、ロープの両端部近くを重ね合わせて緩衝装置を用いて把持することで、ロープをループ状に形成している。この緩衝装置は、ロープに所定値以上の引張力が作用すると、ロープの摺動を許容する。ロープの両端には、ロープの摺動を停止するためのストッパが設けられている。
【0006】
特許文献1に記載の防護柵では、落石がロープに当たってロープに所定値以上の引張力が作用すると、ロープが緩衝装置による把持力に抗してロープが摺動し、これにより、ロープと緩衝装置との間に摩擦力が生じて落石による衝撃力が吸収される。また、このとき、ロープが巻き掛けられた支柱との間にも摩擦力が生じて衝撃力が吸収されるので、各ロープの衝撃力吸収性能を高く保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
緩衝装置が装着された防護柵では、落石を受けてロープが伸長し、緩衝装置が作動すると、メンテナンス時に緩衝装置を交換する作業が必要となる。
【0009】
特許文献1に記載の防護柵では、ループ状に形成された各ロープに対して緩衝装置を装着する構造であるため、緩衝装置の設置数が多くなる。それ故、設置コストやメンテナンスコストが増大化するという問題があった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、支柱間に懸架された複数のロープによって落石等を捕獲する防護柵において、高い衝撃吸収性能を得ながら、設置時やメンテナンス時に掛かるコストや手間を低減することができる防護柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の防護柵は、
複数の支柱が所定の間隔をおいて立設された支柱列と、
前記支柱列に、上下方向に所定間隔をおいて多段に懸架された複数本のロープと、
前記ロープに取付けられ、所定値以上の引張力が付与された際に該ロープの懸架長さを大きくして衝撃力を吸収する緩衝手段と、を備えた防護柵において、
前記緩衝手段は、少なくとも2本の前記ロープの端部に対して1つ取付けられ、
各ロープは、少なくとも一方の端部が、前記支柱列の最端に位置する末端支柱にて折り返され、その先端が、該末端支柱よりも前記支柱列の内側の支柱に係止されており、
前記各ロープの折り返された少なくとも一方の端部には、他の1本以上の前記ロープと兼用された前記緩衝手段が取付けられていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、落石がロープに当たってロープに所定値以上の引張力が作用した際に、ロープの端部に取付けられた緩衝手段によって衝撃力を吸収することができるとともに、ロープと末端支柱との間に摩擦力を発生させて衝撃力を吸収することができる。さらに、1本のロープに落石が当たって緩衝手段が作動した場合に、この緩衝手段を共用している他のロープと末端支柱との間にも摩擦力を発生させて衝撃力を吸収することができるので、高い衝撃吸収能性能を得ることができる。
また、1つの緩衝手段が2本以上のロープに共用されることで、防護柵における緩衝手段の設置数を低減することができ、防護柵の設置時やメンテナンス時に掛かるコストや手間を低減することができる。
【0013】
また、請求項2に記載の防護柵は、請求項1に記載の防護柵において、
前記各ロープは、前記支柱列の斜面山側の面に懸架され、前記各ロープの両端部が、前記支柱列の最端に位置する末端支柱にて山側から谷側に折り返されて、その先端が、前記末端支柱よりも前記支柱列の内側の支柱に係止されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、支柱列の斜面山側に懸架された各ロープにより落石捕獲面が形成される。緩衝手段は、この落石捕獲面よりも斜面谷側に配置された各ロープの端部に取付けられているので、落石は、緩衝手段に当たる前に落石捕獲面で捕獲される。これにより、落石が緩衝手段に直に当たって緩衝手段が破損することが防止され、緩衝手段を適切に作動させて、緩衝手段の破損によるメンテナンスコストを低減することができる。また、各ロープを支柱列の範囲内に収めて防護柵の省スペース化を図ることができる。
【0015】
また、請求項3に記載の防護柵は、請求項2に記載の防護柵において、
前記緩衝手段と各ロープの設置は、
最上段のロープの先端が前記支柱列の左右何れか側の前記支柱に直接又は前記緩衝手段を介して係止され、末端が左右反対側で前記支柱に前記緩衝手段を介して係止され、
次段の上からの2番目以降の各ロープは、順次先端が一つ上段のロープの末端と前記緩衝手段を共有して前記支柱に係止され、末端が、次段のロープの先端と前記緩衝手段を共有して前記支柱に係止され、
最下段のロープの末端は、前記支柱に直接又は前記緩衝手段を介して係止されたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、上から2番目以降の各ロープは、先端側で上段のロープと共通の緩衝手段を介して同じ支柱に係止され、末端側で次段のロープと共通の緩衝手段を介して同じ支柱に係止されることとなる。これにより、上下に複数懸架された各ロープは、全体として緩衝手段が介在した連続性の有る構成体となっている。したがって、ロープに衝撃が加わったときに、衝撃力の分散が効果的に行われ、エネルギー吸収性能を向上させることができる。
【0017】
また、請求項4に記載の防護柵は、請求項1~3のいずれか1項に記載の防護柵において、
前記緩衝手段又は前記支柱に対して2本のロープを連結する連結具を備え、
前記連結具は、略三角形に形成され、3つの角部のうちの2つに前記2本のロープの一端がそれぞれ連結され、残りの1つが前記緩衝手段又は前記支柱の取付け部に連結されることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、落石による衝撃力を受けて、連結具の2つの角部に連結された2本のロープ材のうち、一方のロープ材に他方のロープ材よりも大きな引張力が作用した場合に、連結具は、緩衝手段又は支柱に連結されている角部を略中心として残り2つの角部が旋回するように回転する。これにより、他方のロープ材には、一方のロープ材の伸長を抑制する方向の引張力が作用する。このように、連結具を介して、2本のロープのそれぞれに作用する引張力が均一になるように力を自動調整することで、衝撃力に対する各ロープの耐久性やエネルギー吸収性能を向上することができる。
【0019】
また、請求項5に記載の防護柵は、請求項1~4のいずれか1項に記載の防護柵において、
前記緩衝手段は、前記ロープに対して着脱可能な構成とされており、
前記ロープに連結続されて該ロープから所定値以上の引張力を受けた際に該ロープの長さ方向に伸長する変形部と、
前記変形部と当接して該変形部の伸長時に摩擦力を発生させる摩擦抵抗部と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、緩衝手段の変形部が、ロープからの引張力を受けて変形するとともに、変形時に摩擦抵抗部との間で摩擦力を発生させることで、ロープから伝達された衝撃力を吸収する構造であって、緩衝手段の作動によりロープの損傷を回避することができる。また、緩衝手段が作動した後のメンテナンス時に、ロープから緩衝手段を取外して、緩衝手段のみを交換し、既設ロープを継続使用することができるので、メンテナンスの手間とコストを低減することができる。
【0021】
請求項6に記載の防護柵は、請求項1~5のいずれか1項に記載の防護柵において、
前記末端支柱と前記ロープとの間に介在するように、前記末端支柱の外周面に取付けられ、該末端支柱よりも軟らかい材料で形成された摩耗部材を備えたことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、ロープは末端支柱にて折り返されている、すなわち末端支柱にロープの一部が巻き付いた状態であり、落石によってロープに引張力が作用すると、末端支柱に巻き付いているロープの一部が末端支柱の外周面上を摺動する。この際、ロープは末端支柱の外周面に取付けられた摩耗部材との間で摩擦力を発生させながら摺動し、この摩擦力によって摩耗部材を摩耗させることで衝撃エネルギーを効率よく吸収することができる。また、摩耗部材を介材させることで、支柱自体が損傷することを防止することができるので、支柱の交換頻度を低減して、メンテナンスの手間やコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る防護柵の支柱構造によれば、落石がロープに当たってロープに所定値以上の引張力が作用した際に、このロープに装着された緩衝手段によって衝撃力を吸収することができるとともに、この緩衝手段に接続された2本以上のロープと末端支柱との間に摩擦力を発生させて衝撃力を吸収することができるので、高い衝撃吸収能性能を得ることができる。また、防護柵における緩衝手段の設置数を低減することができるので、防護柵の設置時やメンテナンス時に掛かるコストや手間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施の形態である防護柵を斜面谷側から見た斜視図である。
【
図4】末端支柱の断面図であって摩耗部材の取付け状態を示す図である。
【
図5A】末端支柱に取付けられる摩耗部材の別の実施例を示す側面図である。
【
図9】防護柵の他の実施例を示す
図3と同様の要部拡大図である。
【
図11】防護柵の第2の実施形態を斜面谷側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態である防護柵10を斜面谷側から見た正面図であり、
図2は防護柵を上方から見た図である。なお、本発明の説明に用いる各図面は模式図であって、各構成の要部を誇張して記載したものであり、各構成部材の寸法等を厳密に示したものではない。防護柵10は、斜面下方の構築地面Gに設置され、複数の支柱20-1~20-4に懸架された複数本のロープ30-1~30-8で落石や崩落土砂等を補足することで被害を防止するものである。ここで、構築地面Gとは、地山斜面や法面を含む概念であり、さらに、防護柵10の設置用に形成された斜面近傍の平地面をも含む概念である。以下の説明では、構築地面Gを単に「地面G」とも称する。
【0026】
本実施形態の防護柵10は、複数の支柱20-1~20-4からなる支柱列12と、支柱列12に、上下方向に所定間隔をおいて多段に懸架された複数本のロープ30-1~30-8と、ロープ30に取付けられた緩衝手段である緩衝装置50と、各ロープ30の上下方向の間隔を保持する間隔保持部材60と、ネット70と、を備える。ネット70はオプションであり、
図1及び
図2では本発明を理解しやすいようにネット70の記載を省略し、
図3にて、防護柵10にネット70を張設した例を記載している。
【0027】
支柱20は、一端が地面Gに埋め込まれた態様で、山の斜面の横方向(左右方向)に所定の間隔をおいて複数立設され、1つの支柱列12を構成している。支柱列12は、ロープ30の両端部を支柱列12の内側の支柱20-2,20-3に係止させるために、4本以上の支柱20で構成されることが好ましい。各ロープ30は、この支柱列21に一連に懸架される。
図1では一例として、4本の支柱20-1~20-4からなる支柱列21を示している。以下の説明では、支柱列21の最端に位置する2本の支柱20-1,20-4を末端支柱、2本の末端支柱20-1,20-4の間に立設された支柱20-2,20-3を中間支柱とも称する。
【0028】
図4は、末端支柱20-4の断面図である。本実施形態において、各支柱20-1~20-4は、断面円形の鋼管22と、鋼管22の内部に挿入されたH形鋼21と、鋼管22の外周面に上下方向に間隔をおいて複数取付けられたロープ用の保持具24とを備えている。さらに、末端支柱20-1,20-4は、鋼管22の外周面に摩耗部材26を備えている。
【0029】
H形鋼21は、板状のウェブ部21Aと、ウェブ部21Aの両端に設けられた一対のフランジ部21B,21Cとを有し、各フランジ部21B,21Cの両側辺が溶接により鋼管22の内面に結合されている。各支柱20-1~20-4において、H形鋼21は、鋼管22内でフランジ部21B,21Cが山の斜面の横方向(左右方向)に延びるように配置される。本実施形態では、鋼管22とH形鋼21とがほぼ同じ長さに設定され、H形鋼21の長さ方向の全部が鋼管22内に挿入された状態となっているが、H形鋼21は、鋼管22よりも長く、H形鋼21の下部が鋼管22よりも下方に延出していてもよい。なお、支柱20はこれに限らず、例えば、樹脂製又は金属製の中空管の内部に、コンクリート等の充填材を充填したものであってもよい。
【0030】
保持具24は、各ロープ30の上下方向の間隔を保持するものである。保持具24は、例えば、U字金具の両端部を鋼管22に溶接して形成することができる。このU字形状の保持具24を支柱20の長さ方向に所定間隔をおいて複数配置して、その内部にロープ30を挿通することで、支柱列12における複数本のロープ30の間隔を保持することができる。なお、保持具24は図示例のものに限らず、例えば、長板に、長さ方向に所定の間隔をおいて複数の孔を形成したものであってもよい。かかる場合、鋼管22の長さ方向に沿って長板を取付け、長板の各孔にロープ30を通す構造とすることができる。
【0031】
摩耗部材26は、末端支柱20-1,20-4よりも軟らかい材料で形成され、末端支柱20-1,20-4と各ロープ30との間に介在するように、末端支柱20-1,20-4の外周面に取付けられる。摩耗部材26は、支柱本体である鋼管22よりも軟らかく所定の硬さ有する硬質ウレタン樹脂、硬質ゴム、その他の樹脂材料、又はアルミニウム等の鋼よりも軟らかい金属材料などによって形成することができる。この摩耗部材26は、少なくともロープ30が巻き掛けられる領域に設けられ、本実施形態では、鋼管22の外周面を全周に亘って覆う層状に形成されている。例えば、摩耗部材26を硬質ウレタン樹脂で形成される場合、鋼管22の外周面に硬質ウレタン樹脂塗料を所定の厚みを有するように塗布することで形成することができる。
【0032】
この摩耗部材26は、落石による引張力を受けてロープ30が末端支柱20-1,20-4の外周面上を摺動した際に、末端支柱20-1,20-4の損傷を防ぎながら、ロープ30の摩擦力によって摩耗することで、衝撃エネルギーを吸収することができる。摩耗部材26は、摩擦力によるエネルギー吸収性能によって支柱本体へ力学的な負担が軽減されるように、支柱本体である鋼管22よりも摩擦係数の高い材料で形成されていることが好ましい。
【0033】
図5A及び
図5Bは、摩耗部材26の別の実施例を示す図である。本実施例の摩耗部材26は、
図4に示す摩耗部材26と形状が異なっており、鋼管22の外周に沿って略U字状に曲げられた管状体で形成され、U字の両端が支柱列12の横方向内側を向くように配置されており、この管状体の内部にロープ30が挿通されている。このように、摩耗部材26の内部にロープ30を挿通する場合には、この摩耗部材26をロープ30の保持具としても利用することができ、
図4に示す保持具24を省くことができる。
【0034】
図1及び
図2に示すように、中間支柱20-2,20-3の外周面には、ロープ30の端部を係止するための係止部25が設けられている。本実施形態において係止部25は、両端が通関支柱20-2,20-3の外周面に溶接されたU字状の金具で形成されている。
【0035】
各支柱20の地面Gからの高さは、例えば2m~5m、各支柱20の地中の深さは、例えば1m~4m、支柱20の間の間隔は、例えば2m~10mとすることができ、これらは、斜面の規模や状況に応じて適宜選択することができる。
【0036】
図1に示すように、本実施形態では、各支柱20の間にオプションである間隔保持部材60-1~60-3を設置している。各間隔保持部材60は、上下方向(縦方向)に長い棒状の部材であって、長さ方向に所定の間隔をおいて各ロープ30が挿通されるロープ保持孔62を有している。図示例では、断面四角形の角筒の外周面に、所定の間隔をおいて複数のU字金具を溶接しており、このU字金具で形成されたロープ保持孔62にロープ30が挿通される。間隔保持部材60の剛性は、ロープ30よりも大きく、支柱20よりも小さいことが望ましい。図示例の間隔保持部材60は、下端が台座66を用いて地面Gに固定されているが、これに限らず、間隔保持部材60の下端は、地面Gから離間して浮いた状態であってもよい。この間隔保持部60はオプションであり、隣接する支柱20間に配置される間隔保持部60の数は、適宜設定することが可能である。
【0037】
複数のロープ30は、支柱列21に上下方向に所定間隔をおいて多段に配置される。各ロープ30は、少なくとも一方の端部30a及び/又は30bが、末端支柱20-1又は20-4にて折り返され、その先端が、支柱列12の内側の支柱20-2及び/又は20-3に係止される。また、各ロープ30の折り返された少なくとも一方の端部30a及び/又は30bには、他の1本以上のロープ30と兼用された緩衝装置50が取付けられており、この緩衝装置50を介して先端が内側の支柱20-2及び/又は20-3に係止される。本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、各ロープ30は、支柱列12の斜面山側の面に懸架され、各ロープ30の両端部30a,30bが末端支柱20-1,20-4にて山側から谷側に折り返されて、その先端が、係止用金具38を用いて、末端支柱20-1,20-4に隣接する中間支柱20-2,20-3の係止部25に係止されている。なお、
図2では、緩衝装置50-1に接続される最上段のロープ30-1の懸架状態を示し、その下段のロープ30-2の記載を省略している。図示例では、防護柵10を斜面谷側から見た状態で、ロープ30の左端部を端部30a、右端部を端部30bとしている。
図1及び
図2に示すように、ロープ30にて折り返された一方の端部30a又は30bは、緩衝装置50を介して係止部25に係止される。なお、ロープ30の一方の端部30a又は30bのみを折り返して中間支柱20-2,20-3に係止させた場合、他方の端部30b又は30aは末端支柱20-1又は20-4に係止させる構造とすることができる。
【0038】
ロープ30としては、例えばJIS G 3506に規定された硬鋼線材から製造された線材等をより合わせて形成された高強度のワイヤロープ等を使用することができる。硬鋼線材から制作されたワイヤは、JIS G 3505に規定された軟鋼線材から制作されたワイヤと比較して塑性変形し難く、高い引張強度及びバネ性を有する。ロープ30の線径は、例えば10~25mm程度、好ましくは18mm以上とすることができ、ロープ30の引張強度は、例えば500~2000N/mm2とすることができる。各ロープ30は、支柱列21に懸架された状態で、支柱20の保持具24と間隔保持部材60のロープ保持孔62に挿通されることにより上下方向の間隔が保たれることで、左右方向(横方向)にほぼ平行に伸びている。各ロープ30の上下方向の間隔は、例えば100mm~300mmであり、本実施形態のようにネット70を張設する場合には、200mm~400mmとすることができる。
【0039】
ネット70は、金属製のワイヤを編み込んで形成されている。ネット70は、ロープ30が懸架されている領域全体に設置され、本実施形態では、ロープ30の斜面山側に配置されている。ネット70の上辺部及び下辺部は、ワイヤを用いて最上段及び最下段のロープ30に連結されている。
図3に示す例では、ネット70の網目は菱形状に形成されているが、円形等、他の網目形状であってもよい。ネット70を形成しているワイヤには、軟鋼、硬鋼、ばね鋼、ステンレス鋼等を用いることができ、JIS G 3506に規定された硬鋼線材から制作されたワイヤを用いることも可能である。ネット70を構成しているワイヤの直径は、ロープ30の直径よりも小さいものである。ネット70を形成するワイヤは、金属製のものに限らず、例えば、カーボン繊維、ガラス繊維又はアラミド繊維等によって形成されたワイヤや、防食性の高い樹脂製ワイヤを用いることができる。さらに、ネット70として、ジオグリッドを使用してもよい。本実施形態のように、ロープ30とともにネット70を張設することで、1本のロープ30に落石が当たった場合であっても、ネット70を介して他のロープ30に引張力を作用させることができる。
【0040】
図1に示すように、本実施形態では、複数のロープ30からなる落石捕獲面より下方側の領域に、緩衝装置50が取付けられていない補助ロープ68が懸架されている。ネット70は、この補助ロープ68の懸架領域まで広がっている。なお、防護柵10は、補助ロープ68を用いることなく、全てロープ30で構成されていてもよい。
【0041】
緩衝装置50は、ロープ30の折り返された端部30a又は30bに取付けられており、ロープ30から所定値以上の引張力が付与された際にロープ30の懸架長さを大きくして衝撃力を吸収する。緩衝装置50は、少なくとも2本のロープ30の端部に対して1つ取付けられる。本実施形態では、2本のロープ30に対して緩衝装置50を1つ取付けた例を示しているが、例えば、折り返された3本のロープ30の端部に対し、1つの緩衝装置50を取付ける構造であってもよい。
図6A及び
図6Bは、緩衝装置50-1と、これに接続されるロープ30-1,30-2を示す側面図及び平面図である。この緩衝装置50は、ロープ30に対して着脱可能な構成とされており、シャックル等の連結用金具57を介して、ロープ30に接続される変形部54と、変形部54と当接する摩擦抵抗部52と、摩擦抵抗部52が取付けられるハウジング部51と、を備える。
【0042】
ハウジング部51は、略四角形の中空筒状又は箱状に形成されており、その内部を径方向に円柱状の摩擦抵抗部52が貫通している。ハウジング部51の端部には、支柱20の係止部25に緩衝装置50を係止するための係止用金具38が取付けられている。変形部54は、金属製の帯状部材で形成されており、円柱状の摩擦抵抗部52の周面に巻き掛けられてU字状に曲げられている。ハウジング部51は、この変形部54のU字状の湾曲部を取り囲んでいる。変形部54の一方の端部54a(摩擦抵抗部52からの距離が短い方の端部)には、連結用金具57を介して2本のロープ30-1,30-2の先端部が接続される。変形部54の他方の端部54b(摩擦抵抗部52からの距離が長い方の端部)には、ストッパ55が設けられる。
【0043】
この緩衝装置50にて、変形部54は、ロープ30-1,30-2から所定値以上の引張力を受けると、ロープ30-1,30-2の長さ方向に伸長し、摩擦抵抗部52は、変形部54の伸長時に摩擦力を発生させる。具体的には、ロープ30に引張力が作用して、ロープ30が
図6Aの矢印Fの方向に引っ張られると、変形部54の一端部54aも同方向に引っ張られる。これにより、変形部54は、ハウジング部51と摩擦抵抗部52との間を通って移動し、これに伴い、摩擦抵抗部52に巻き掛かけられた変形部54の湾曲部が、ストッパ55が設けられている他方の端部54b側に移動して、変形部54に塑性変形が連続して発生する。この変形部54の変形により、ロープ30の引っ張りに対する抵抗力が発生し、ロープ30に対するブレーキング作用、すなわち制動力が生じて、落石を受けた際の運動エネルギーが大きく吸収される。なお、ロープ30の伸び量は、ストッパ55が摩擦抵抗部52及びハウジング部51に当接して変形部54の引っ張りが止まる位置で、規制される。本実施形態の変形部54は、長さ方向において厚さ及び幅が一定に形成されており、作動時に、実質的に一定の制動力を付与することができる。
【0044】
図1に示すように、緩衝装置50は、隣接する2本のロープ30のセットに対して1つずつ設けられ、防護柵10にて上下段に並ぶ緩衝装置50は、各ロープ30のセットの左右の端部30a,30bに交互に配置される。すなわち、奇数段目(nを自然数として2n-1段目)の緩衝装置50-1,50-3は、2本のロープのセットの右端部30b(又は左端部30a)に設けられ、偶数段目(nを自然数として2n段目)の緩衝装置50-2,50-4は、2本のロープのセットの左端部30a(又は右端部30b)に設けられる。
【0045】
上述した防護柵10では、落石がロープ30に当たってロープ30に所定値以上の引張力が作用した際に、ロープ30自身の塑性変形や弾性変形による伸長による衝撃力吸収性能とともに、ロープ30の端部に取付けられた緩衝装置50によって衝撃力を吸収することができる。さらに、ロープ30と末端支柱20-1,20-4との間に摩擦力を発生させて衝撃力を吸収することができる。また、同一の緩衝装置50が取付けられた2本のロープ30、例えば、緩衝装置50-1が取付けられたロープ30-1及び30-2のうち、1本のロープ30-2に落石が当たって緩衝装置50-1が作動した場合に、この緩衝装置50-1に接続された他のロープ50-1と末端支柱20-4との間にも摩擦力を発生させて衝撃力を吸収することができる。これにより、高い衝撃吸収能性能を得ることができる。
【0046】
また、上述した防護柵10では、緩衝装置50が、2本のロープ30に対して1つ取付けられる構造であるため、防護柵10における緩衝装置50の設置数を低減することができる。これにより、防護柵10の設置時やメンテナンス時に掛かるコストや手間を低減することができる。
【0047】
落石時にロープ30を介して緩衝装置50を効果的に作動させるためには、ロープ30において落石が当たった部位から緩衝装置50までの距離を所定範囲内にして、ロープ30が伸びきる前に緩衝装置50を作動させることが好ましい。それ故、上下の各段のロープ30に対して少なくとも1つの緩衝装置50が取付けられることが好ましい。本実施形態では、2本のロープが1つの緩衝装置50を共用しているので、緩衝装置50の設置数を低減しながら、各ロープ30に接続された緩衝装置50を効果的に作動させることができる。
【0048】
また、本実施形態の緩衝装置50は、ロープ30と分離可能に構成されており、ロープ30からの引張力を受けて変形部54が変形し、摩擦抵抗部52との間で摩擦力を発生させることで、ロープ30から伝達された衝撃力を吸収する構造であるため、緩衝装置50の作動によるロープ30の損傷を回避することができる。また、緩衝装置50が作動した後のメンテナンス時に、ロープ30から緩衝装置を取外して、緩衝装置50のみを交換し、既設のロープ30を継続使用することができるので、メンテナンスの手間とコストを低減することができる。
【0049】
さらに、本実施形態の防護柵10では、落石によってロープ30に引張力が作用し、ロープ30が末端支柱20-1,20-4の外周面上を摺動する際に、ロープ30が摩耗部材26上を摺動することで、支柱本体である鋼管22の損傷を防ぎながら、大きな摩擦力で衝撃エネルギーを効率よく吸収することができる。鋼管22が損傷すると、支柱20全体を交換して新たに地面Gに打設する必要があり、手間やコストがかかるが、本実施形態の防護柵10では、損傷した摩耗部材26のみを交換することも可能である。このように、本実施形態の防護柵10では、衝撃力吸収性能を向上しながら、支柱20の交換の頻度を低減し、メンテナンス時の手間やコストを低減することができる。
【0050】
また、上述した防護柵10では、各ロープ30の両端部が、末端支柱20-1,20-4にて折り返されて、末端支柱20-1,20-4よりも内側の支柱20-2,20-3に係止されているため、各ロープ30を支柱列12内に収めることができ、設置スペースを小さくすることができる。また、各ロープ30は、支柱列12の斜面山側の面に懸架されており、緩衝装置50は末端支柱20-1,20-4にて斜面山側から斜面谷側に折り返されたロープ30の端部に取付けられるので、緩衝装置50に落石が直接当たることを防いで緩衝装置50の破損を防止することができる。本実施形態では、緩衝装置50よりも斜面山側にネット70が張設されているため、より緩衝装置50に落石が当たり難い構造となっている。
【0051】
なお、緩衝装置50は上述したものに限らない。例えば、
図7に示す緩衝装置50のように、ロープ30と一体に構成されるものであってもよい。
図7に示す緩衝装置50は、ロープ30が4本挿通可能な孔部58aを有する金属製の緊締部材58で構成されている。緊締部材58には、例えば圧縮スリーブを用いることができる。この緩衝装置50では、2本のロープ30-1,30-2を挿通させ、各ロープ30を環状に一巻きした後、再度、同じ方向から孔部58aにロープ30-1,30-2を挿通させ、緊締部材58をかしめることにより、挿通させた2本のロープ30-1,30-2に固着させた構造となっている。この緩衝装置50では、ロープ30-1及び/又はロープ30-2が引っ張られると、緊締部材58の孔部58a内でロープ30-1,30-2が相互に摩擦接触するとともに、各ロープ30-1,30-2と緊締部材58とが摩擦接触して、衝撃力を吸収する構成となっている。
【0052】
図8は、緩衝装置50の更に別の実施例を示す図である。この緩衝装置50は、ロープ30と分離可能に構成されており、変形部であるループ状に形成された2つの管状体59A,59Bと、管状体59A,59Bの両端部を把持してループ形状を保持する緊締部材58とを備えている。緊締部材58は、管状体59A,59Bとの間に摩擦力を発生させる摩擦抵抗部を構成している。管状体59A,59Bは鋼製であることが好ましいが、他の金属材料や樹脂材料であってもよい。2つの管状体59A,59Bには、それぞれ、ロープ30-1,30-2が挿通されている。各管状体59A,59Bの両端部は、緊締部材58の孔部58a内で並列して重ね合わされており、この重畳部は、緊締部材58で締め付けられている。この緩衝装置50では、ロープ30-1及び/又はロープ30-2が引っ張られると、緊締部材58の孔部58a内で管状体59A,59Bが相互に摩擦接触するとともに、各管状体59A,59Bと緊締部材58とが摩擦接触して、衝撃力を吸収する。この緩衝装置50では、緩衝装置50の作動時にロープ30が損傷することを防止することができる。
【0053】
図7及び
図8に示す緩衝装置50では、緩衝装置50の環状部分が縮径し、縮径した分のロープ30が防護柵10の中央方向にずれ込むことにより、落石に対する抵抗力が上昇する。環状部分の大きさは、所望とする緩衝作用を得るために適宜変更可能であり、大きな緩衝作用を必要とする場合には環状部分を大きくすればよい。
図7及び
図8の緩衝装置50では、
図6Aに示した緩衝装置50に比べて簡易かつ安価な構成とすることが可能である。
【0054】
図9は、防護柵10の他の実施例を示す図である。この防護柵10は、緩衝装置50又は支柱20に対して2本のロープ30を連結する連結具80を備えている。
図10Aは、連結具80の拡大図である。連結具80は、略三角形の板状に形成された本体部82と、本体部82の3つの角部に設けられた第1の接続金具84、第2の接続金具85及び第3の接続金具86とを備えている。この連結具80の3つの角部のうちの2つには、2本のロープ30の一端がそれぞれ連結され、残り1つは緩衝装置50又は支柱20の取付け部に連結される。本体部82は、略正三角形状、又は第1の接続金具84の角部を頂角とする略二等辺三角形状であることが好ましい。
図10Aでは、連結具80の2つの接続金具85,86に2本のロープ30-1,30-2の一端(ロープ30-1,30-2の右側の端部30bの先端)が連結され、残り1つの接続金具84に、緩衝装置50の変形部54の一端に取付けられた連結用金具57(緩衝装置50の取付け部)が連結されている例を示している。
【0055】
図10Bは、連結具80の動作を説明する図である。落石による衝撃力を受けて、連結具80に連結された2本のロープ、例えばロープ30-1,30-2のうち、一方である第1のロープ30-2に、他方である第2のロープ30-1よりも大きな引張力Fが作用した場合、この連結具80は、緩衝装置50が連結されている角部(すなわち第1の接続金具84が装着された角部)を略中心として残り2つの角部(すなわち第2及び第3の接続金具85,86の角部)が
図10Aに示す初期位置から
図10Bに示す回転位置へ反時計回り方向に回転移動する。この回転運動が生じると、第2のロープ30-1に引っ張られて、第2の接続金具85には回転動作を抑制する力f1が作用し、これに伴い第3の接続金具86には、第1のロープ30-2の引張力Fに抗する力f2が作用する。このように、連結具80を介して、2本のロープ30-1,30-2のそれぞれに作用する引張力が均一になるように力を自動調整することで、衝撃力に対する各ロープ30-1,30-2の耐久性やエネルギー吸収性能を向上することができる。
【0056】
図示していないが、第1のロープ30-2及び第2のロープ30-2の左端部30a(緩衝装置50が取付けられていない方の端部)は、連結具80を介して中間支柱20-2の係止部25に連結・係止されている。連結具80と係止部25との間には、必要に応じて係止用金具38を用いることができる。
図9では、2本のロープ30-3,30-4の右端部30bが連結具80及び係止金具38を介して中間支柱20-3に連結されている例が示されている。このように、緩衝装置50が取付けられていない方の端部においても、連結具80を介して支柱20に係止させることで、落石による衝撃力が作用した際に、連結具80によって2本のロープに作用する力が均一になるように自動調整する効果を得ることができる。このように、緩衝装置50が取付けられていない方の端部においても、連結具80を介して支柱に係止させることで、落石による衝撃力が作用した際に、連結具80によって2本のロープ30に作用する力が均一になるように自動調整する効果を得ることができる。
【0057】
[第2の実施の形態]
図11は、防護柵の第2の実施の形態を斜面谷側から見た正面図である。
図11において、第1の実施の形態と対応する部位には同一符号を付している。以下に説明する第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0058】
第2の実施の形態では、1つの緩衝装置50に対して、上下に隣り合う2本のロープ30のセットが取付けられている。また、緩衝装置50と各ロープ30の配置は、最上段のロープ30-1の先端が、支柱列12の左右何れか側の支柱20-2又は20-3に、直接又は緩衝装置50を介して係止され、このロープ30-1末端が、左右反対側で支柱20-3又は20-2に緩衝装置50を介して係止される。また、次段の上からの2番目以降の各ロープ30は、順次、先端が一つ上段のロープの末端と緩衝装置50を共有して支柱20-2又は20-3に係止され、末端が、次段のロープの先端と緩衝装置50を共有して支柱20-3又は20-2に係止される。最下段のロープ30-10の末端は、支柱20-2又は20-3に直接又は緩衝装置50を介して係止される。
【0059】
図11に示す例では、最上段のロープ30-1の先端が支柱列12の左側の支柱20-2に直接係止され、ロープ30-1の末端が支柱列12の右側の支柱20-3に緩衝装置50-1を介して係止されている。また、上から2番目のロープ30-2は、先端が上段のロープ30-1の末端と緩衝装置50-1を共有して中間支柱20-3に係止され、末端が、次段のロープ30-3の先端と緩衝装置50-2を共有して支柱20-2に係止される。このように、上から2番目以降のロープ30は、順次、先端が、一つ上段のロープ30の末端と緩衝装置50を共有して支柱列12の左側又は右側の中間支柱20-2又は20-3に係止され、末端が、次段のロープ30の先端と緩衝装置50を共有して先端とは左右反対側の中間支柱20-3又は20-2に係止される。最下段のロープ30-10の末端は、中間支柱20-2に直接係止されている。
【0060】
本実施形態では、上から2番目以降の各ロープ30は、先端側で上段のロープ30と共通の緩衝装置50を介して同じ支柱に係止され、末端側で次段のロープ30と共通の緩衝装置50を介して同じ支柱20に係止されることとなる。これにより、上下に複数懸架された各ロープ30は、全体として緩衝装置50が介在した連続性の有る構成体となっている。したがって、ロープ30に衝撃が加わったときに、衝撃力の分散が効果的に行われ、エネルギー吸収性能を向上させることができる。
【0061】
なお、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0062】
例えば、各ロープ30は、支柱列12の谷側の面に懸架されており、各ロープ30の両端部が末端支柱20-1,20-4で斜面山側に折り返されて、その先端が地面Gに打設されたアンカーに係止される構造であってもよい。なお、ロープ30は、一方の端部を一方の末端支柱20―1又は20-4に固定し、他方の端部を他方の末端支柱20-4又は20-1で折り返し、折り返された先端をアンカーを用いて地面Gに固定してもよい。かかる場合にも、緩衝装置50は、ロープ30の折り返された端部に取付けられ、第1又は第2の実施の形態と同様に、少なくとも2本のロープの端部に対して1つ取付けられる。
【符号の説明】
【0063】
10 防護柵
12 支柱列
20 支柱
20-1,20-4 末端支柱
26 摩耗部材
30 ロープ
50 緩衝装置
52 摩擦抵抗部
54 変形部
60 間隔保持部材
70 ネット
80 連結具
G 地面