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特開2023-130046給電制御装置、給電制御システム及び給電制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130046
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】給電制御装置、給電制御システム及び給電制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 43/0823 20220101AFI20230912BHJP
   H04L 67/12 20220101ALI20230912BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20230912BHJP
   H04L 12/46 20060101ALI20230912BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H04L43/0823
H04L67/12
B60R16/02 645A
H04L12/46 Z
H04L12/28 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034489
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】和田 健冶
(72)【発明者】
【氏名】上口 翔悟
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA06
5K033BA06
5K033DB25
5K033EA02
5K033EA04
(57)【要約】
【課題】通信バスを介して送信されるデータに関して異常が発生した場合に異常の発生を停止させることができる給電制御装置、給電制御システム及び給電制御方法を提供する。
【解決手段】複数のECU(通信装置)1は、車両Cに搭載され、通信バスB1に接続されている。中継装置(給電制御装置)4は、複数のECU1への給電を制御する。中継装置4は、通信バスB1を介して受信するデータに関して異常が発生しているか否かを判定する。中継装置4は、異常が発生していると判定した場合、複数のECU1中の1つを選択し、選択したECU1への給電を停止させる。中継装置4は、給電を停止させた後、異常の発生が停止したか否かを判定する。中継装置4は、異常の発生が停止したと判定した場合、選択したECU1への給電の停止を維持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、通信バスに接続されている複数の通信装置への給電を制御する給電制御装置であって、
前記通信バスを介して送信されたデータを受信する受信部と、
処理を実行する処理部と
を備え、
前記処理部は、
前記受信部が受信するデータに関して異常が発生しているか否かを判定し、
前記異常が発生していると判定した場合、前記複数の通信装置中の1つを選択し、
選択した通信装置への給電の停止を指示し、
前記給電の停止を指示した後、前記異常の発生が停止したか否かを判定し、
前記異常の発生が停止したと判定した場合、選択した通信装置への給電の停止を維持する
給電制御装置。
【請求項2】
前記通信バスを介して送信されるデータには、データの送信元を識別するための識別情報が含まれ、
前記処理部は、共通の識別情報を含む共通データに関して、所定期間に前記受信部が受信した共通データのデータ量が閾値以上である場合、前記異常が発生していると判定する
請求項1に記載の給電制御装置。
【請求項3】
前記通信バスとは異なる第2の通信バスを介して送信されたデータを受信する第2の受信部を備え、
前記通信バスを介して送信されるデータには、予め決められている特定データが含まれ、
前記処理部は、
前記受信部が特定データを受信した場合、受信した特定データが異常であるか否かを、前記受信部又は第2の受信部によって受信され、前記特定データとは異なるデータに基づいて判定し、
前記受信部が異常な特定データを受信した場合、前記受信部が受信するデータに関して異常が発生していると判定する
請求項1又は請求項2に記載の給電制御装置。
【請求項4】
前記処理部は、
前記異常の発生が停止しなかったと判定した場合、選択した通信装置への給電を指示し、
前記複数の通信装置の中で選択されていない通信装置を選択する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の給電制御装置。
【請求項5】
前記複数の通信装置には、前記車両の走行制御に無関係な第2の通信装置が含まれ、
前記処理部は、
前記異常が発生していると判定した場合、前記複数の通信装置に含まれる1つの第2の通信装置を選択する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の給電制御装置。
【請求項6】
前記第2の通信装置は、ASIL(Automotive Safety Integrity Level)のレベルがQM(Quality Management)である装置である
請求項5に記載の給電制御装置。
【請求項7】
前記処理部は、
前記異常の発生が停止しなかったと判定した場合、選択した第2の通信装置への給電を指示し、
前記複数の通信装置に含まれる全ての第2の通信装置が選択されたか否かを判定し、
全ての第2の通信装置が選択されていないと判定した場合、選択されていない1つの第2の通信装置を選択する
請求項5又は請求項6に記載の給電制御装置。
【請求項8】
前記処理部は、
前記異常の発生が停止しなかったと判定した場合、選択した第2の通信装置への給電を指示し、
前記複数の通信装置に含まれる全ての第2の通信装置が選択されたか否かを判定し、
全ての第2の通信装置が選択されたと判定した場合にて、前記車両のイグニッションスイッチがオフであるとき、選択されていない前記複数の通信装置中の1つを選択する
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の給電制御装置。
【請求項9】
車両に搭載され、通信バスに接続されている複数の通信装置と、
前記複数の通信装置への給電を制御する給電制御装置と
を備え、
前記給電制御装置は、
前記通信バスを介して送信されたデータを受信する受信部と、
処理を実行する処理部と
を有し、
前記処理部は、
前記受信部が受信するデータに関して異常が発生しているか否かを判定し、
前記異常が発生していると判定した場合、前記複数の通信装置中の1つを選択し、
選択した通信装置への給電の停止を指示し、
前記給電の停止を指示した後、前記異常の発生が停止したか否かを判定し、
前記異常の発生が停止したと判定した場合、選択した通信装置への給電の停止を維持する
給電制御システム。
【請求項10】
車両に搭載され、通信バスに接続されている複数の通信装置への給電を制御する給電制御方法であって、
前記通信バスを介して送信されたデータに関して異常が発生しているか否かを判定するステップと、
前記異常が発生していると判定した場合、前記複数の通信装置中の1つを選択するステップと、
選択した通信装置への給電の停止を指示するステップと、
前記給電の停止を指示した後、前記異常の発生が停止したか否かを判定するステップと
をコンピュータが実行し、
前記異常の発生が停止したと判定した場合、選択した通信装置への給電の停止が維持される
給電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給電制御装置、給電制御システム及び給電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載された複数の通信装置が通信バスに接続されている通信システムが開示されている。各通信装置は、通信バスを介して他の通信装置と通信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-181677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、例えば、1つの通信装置が短い時間間隔で通信バスを介してデータを繰り返し送信した場合、通信バスを介して送信されるデータに関して異常が発生する。この異常が発生した場合、通信バスが1つの通信装置に占有され、他の通信装置は通信を行うことができない。特許文献1では、通信バスを介して送信されるデータに関して異常が発生した場合において、異常の発生を停止させる方法について考慮されていない。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、通信バスを介して送信されるデータに関して異常が発生した場合に異常の発生を停止させることができる給電制御装置、給電制御システム及び給電制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る給電制御装置は、車両に搭載され、通信バスに接続されている複数の通信装置への給電を制御する給電制御装置であって、前記通信バスを介して送信されたデータを受信する受信部と、処理を実行する処理部とを備え、前記処理部は、前記受信部が受信するデータに関して異常が発生しているか否かを判定し、前記異常が発生していると判定した場合、前記複数の通信装置中の1つを選択し、選択した通信装置への給電の停止を指示し、前記給電の停止を指示した後、前記異常の発生が停止したか否かを判定し、前記異常の発生が停止したと判定した場合、選択した通信装置への給電の停止を維持する。
【0007】
本開示の一態様に係る給電制御システムは、車両に搭載され、通信バスに接続されている複数の通信装置と、前記複数の通信装置への給電を制御する給電制御装置とを備え、前記給電制御装置は、前記通信バスを介して送信されたデータを受信する受信部と、処理を実行する処理部とを有し、前記処理部は、前記受信部が受信するデータに関して異常が発生しているか否かを判定し、前記異常が発生していると判定した場合、前記複数の通信装置中の1つを選択し、選択した通信装置への給電の停止を指示し、前記給電の停止を指示した後、前記異常の発生が停止したか否かを判定し、前記異常の発生が停止したと判定した場合、選択した通信装置への給電の停止を維持する。
【0008】
本開示の一態様に係る給電制御方法では、車両に搭載され、通信バスに接続されている複数の通信装置への給電を制御する給電制御方法であって、前記通信バスを介して送信されたデータに関して異常が発生しているか否かを判定するステップと、前記異常が発生していると判定した場合、前記複数の通信装置中の1つを選択するステップと、選択した通信装置への給電の停止を指示するステップと、前記給電の停止を指示した後、前記異常の発生が停止したか否かを判定するステップとをコンピュータが実行し、前記異常の発生が停止したと判定した場合、選択した通信装置への給電の停止が維持される。
【0009】
なお、本開示を、このような特徴的な処理部を備える給電制御装置として実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする給電制御方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして実現したりすることができる。また、本開示を、給電制御装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、給電制御装置を含む給電制御システムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0010】
上記の態様によれば、通信バスを介して送信されるデータに関して異常が発生した場合に異常の発生を停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1における通信システムの要部構成を示すブロック図である。
図2】中継装置の要部構成を示すブロック図である。
図3】状態テーブルの内容を示す図表である。
図4】通信バスに対応する給電停止処理の手順を示すフローチャートである。
図5】通信バスに対応する給電停止処理の手順を示すフローチャートである。
図6】異常の判定条件を示す図表である。
図7】実施形態2における中継装置の要部構成を示すブロック図である。
図8】中継処理の手順を示すフローチャートである。
図9】異常検知処理の手順を示すフローチャートである。
図10】異常の判定条件を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0013】
(1)本開示の一態様に係る給電制御装置は、車両に搭載され、通信バスに接続されている複数の通信装置への給電を制御する給電制御装置であって、前記通信バスを介して送信されたデータを受信する受信部と、処理を実行する処理部とを備え、前記処理部は、前記受信部が受信するデータに関して異常が発生しているか否かを判定し、前記異常が発生していると判定した場合、前記複数の通信装置中の1つを選択し、選択した通信装置への給電の停止を指示し、前記給電の停止を指示した後、前記異常の発生が停止したか否かを判定し、前記異常の発生が停止したと判定した場合、選択した通信装置への給電の停止を維持する。
【0014】
(2)本開示の一態様に係る給電制御装置では、前記通信バスを介して送信されるデータには、データの送信元を識別するための識別情報が含まれ、前記処理部は、共通の識別情報を含む共通データに関して、所定期間に前記受信部が受信した共通データのデータ量が閾値以上である場合、前記異常が発生していると判定する。
【0015】
(3)本開示の一態様に係る給電制御装置は、前記通信バスとは異なる第2の通信バスを介して送信されたデータを受信する第2の受信部を備え、前記通信バスを介して送信されるデータには、予め決められている特定データが含まれ、前記処理部は、前記受信部が特定データを受信した場合、受信した特定データが異常であるか否かを、前記受信部又は第2の受信部によって受信され、前記特定データとは異なるデータに基づいて判定し、前記受信部が異常な特定データを受信した場合、前記受信部が受信するデータに関して異常が発生していると判定する。
【0016】
(4)本開示の一態様に係る給電制御装置では、前記処理部は、前記異常の発生が停止しなかったと判定した場合、選択した通信装置への給電を指示し、前記複数の通信装置の中で選択されていない通信装置を選択する。
【0017】
(5)本開示の一態様に係る給電制御装置では、前記複数の通信装置には、前記車両の走行制御に無関係な第2の通信装置が含まれ、前記処理部は、前記異常が発生していると判定した場合、前記複数の通信装置に含まれる1つの第2の通信装置を選択する。
【0018】
(6)本開示の一態様に係る給電制御装置では、前記第2の通信装置は、ASIL(Automotive Safety Integrity Level)のレベルがQM(Quality Management)である装置である。
【0019】
(7)本開示の一態様に係る給電制御装置では、前記処理部は、前記異常の発生が停止しなかったと判定した場合、選択した第2の通信装置への給電を指示し、前記複数の通信装置に含まれる全ての第2の通信装置が選択されたか否かを判定し、全ての第2の通信装置が選択されていないと判定した場合、選択されていない1つの第2の通信装置を選択する。
【0020】
(8)本開示の一態様に係る給電制御装置では、前記処理部は、前記異常の発生が停止しなかったと判定した場合、選択した第2の通信装置への給電を指示し、前記複数の通信装置に含まれる全ての第2の通信装置が選択されたか否かを判定し、全ての第2の通信装置が選択されたと判定した場合にて、前記車両のイグニッションスイッチがオフであるとき、選択されていない前記複数の通信装置中の1つを選択する。
【0021】
(9)本開示の一態様に係る給電制御システムは、車両に搭載され、通信バスに接続されている複数の通信装置と、前記複数の通信装置への給電を制御する給電制御装置とを備え、前記給電制御装置は、前記通信バスを介して送信されたデータを受信する受信部と、処理を実行する処理部とを有し、前記処理部は、前記受信部が受信するデータに関して異常が発生しているか否かを判定し、前記異常が発生していると判定した場合、前記複数の通信装置中の1つを選択し、選択した通信装置への給電の停止を指示し、前記給電の停止を指示した後、前記異常の発生が停止したか否かを判定し、前記異常の発生が停止したと判定した場合、選択した通信装置への給電の停止を維持する。
【0022】
(10)本開示の一態様に係る給電制御方法では、車両に搭載され、通信バスに接続されている複数の通信装置への給電を制御する給電制御方法であって、前記通信バスを介して送信されたデータに関して異常が発生しているか否かを判定するステップと、前記異常が発生していると判定した場合、前記複数の通信装置中の1つを選択するステップと、選択した通信装置への給電の停止を指示するステップと、前記給電の停止を指示した後、前記異常の発生が停止したか否かを判定するステップとをコンピュータが実行し、前記異常の発生が停止したと判定した場合、選択した通信装置への給電の停止が維持される。
【0023】
上記の態様に係る給電制御装置、給電制御システム及び給電制御方法にあっては、通信バスを介して受信されたデータに関して異常が発生した場合、1つの通信装置への給電を停止する。これにより、異常の発生が停止した場合、給電の停止が維持される。結果、異常の発生を停止させることができる。
【0024】
上記の態様に係る給電制御装置にあっては、所定期間に受信された共通データのデータ量が多い場合、異常の発生が検知される。
【0025】
上記の態様に係る給電制御装置にあっては、特定データとは異なるデータに基づいて、特定データが異常であるか否かを判定する。異常な特定データが受信された場合、異常の発生が検知される。
【0026】
上記の態様に係る給電制御装置にあっては、選択した通信装置への給電を停止したことによって異常の発生が停止しなかった場合、選択した通信装置への給電を再開する。選択されていない複数の通信装置中の1つを選択し、選択した通信装置への給電を停止する。これにより、異常の発生を確実に停止させることができる。
【0027】
上記の態様に係る給電制御装置にあっては、異常が発生した場合、車両の走行制御に無関係な第2の通信装置を選択し、選択した第2の通信装置への給電を停止させる。
【0028】
上記の態様に係る給電制御装置にあっては、第2の通信装置は、ASILのレベルがQMである装置である。
【0029】
上記の態様に係る給電制御装置にあっては、選択した第2の通信装置への給電を停止するによって、異常の発生が停止しなかった場合、選択した第2の通信装置への給電を再開する。全ての第2の通信装置が選択されていない場合、選択されてない第2の通信装置を選択し、選択した第2の通信装置への給電を停止させる。
【0030】
上記の態様に係る給電制御装置にあっては、選択した第2の通信装置への給電を停止するによって、異常の発生が停止しなかった場合、選択した第2の通信装置への給電を再開する。全ての第2の通信装置が選択されている場合、処理部は、車両のイグニッションスイッチがオフに切替わるまで待機する。イグニッションスイッチがオフである場合、複数の通信装置の中で第2の通信装置とは異なる1つの通信装置を選択し、選択した通信装置への給電を停止させる。
【0031】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る通信システム(給電制御システム)の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0032】
(実施形態1)
<通信システムの構成>
図1は、実施形態1における通信システム100の要部構成を示すブロック図である。通信システム100は車両Cに搭載されている。通信システム100は、複数のECU(Electronic Control Unit)1、複数のECU2、複数のECU3、中継装置4及び直流電源5を備える。図1では、給電に関する接続線は太線で示されている。給電に無関係な接続線は細線で示されている。
【0033】
中継装置4には、3つの通信バスB1,B2,B3が各別に接続されている。通信バスB1には、複数のECU1が接続されている。通信バスB2には、複数のECU2が接続されている。通信バスB3には、複数のECU3が接続されている。ECU1,2,3それぞれは、接地されている。ECU1,2,3それぞれは中継装置4に接続されている。中継装置4は直流電源5の正極に接続されている。直流電源5の負極は接地されている。接地は、例えば、車両Cのボディへの接続によって実現される。
【0034】
ECU1,2,3それぞれには、センサ及び電気機器の一方又は両方が接続されている。センサは、車両Cに関する車両値、例えば、車両Cの速度を検出し、検出した車両値をセンサに接続されているECUに通知する。電気機器には、ECUから、実行されるべき動作を示す動作信号が入力される。電気機器に動作信号が入力された場合、電気機器は、入力された動作信号が示す動作を実行する。
【0035】
複数のECU1には、車両Cの走行制御に無関係なECU1aと、車両Cの走行制御に関係するECU1bとが含まれている。同様に、複数のECU2には、車両Cの走行制御に無関係なECU2aと、車両Cの走行制御に関係するECU2bとが含まれている。複数のECU3には、車両Cの走行制御に無関係なECU3aと、車両Cの走行制御に関係するECU3bとが含まれている。
【0036】
ECU1a,1b,2a,2b,3a,3bそれぞれの数は、1であってもよいし、2以上であってもよい。以下では、ECU1a,1b,2a,2b,3a,3bそれぞれの数が2以上である例を説明する。
【0037】
センサが接続されているECU1a,2a,3aそれぞれに関して、センサは、車両Cの走行制御に無関係な値を検出する。電気機器が接続されているECU1a,2a,3aそれぞれに関して、電気機器の動作は、車両Cの走行制御に無関係である。ECU1b,2b,3bそれぞれには、車両Cの走行制御に関係する値を検出するセンサ、又は、車両Cの走行制御に関係する電気機器が接続されている。
【0038】
直流電源5は、中継装置4を介して、ECU1,2,3に電力を供給する。電流は、直流電源5の正極から中継装置4を介してECU1,2,3それぞれに流れる。ECU1,2,3それぞれから出力された電流は直流電源5の負極に流れる。中継装置4は、直流電源5から複数のECU1,2,3への給電を各別に制御する。中継装置4は給電制御装置として機能する。ECU1,2,3それぞれは、直流電源5から供給された電力を用いて動作する。複数のECU1,2,3の中で、直流電源5から電力が供給されていないECUは動作を停止している。
【0039】
ECU1及び中継装置4は通信バスB1を介してデータを送信する。ECU2及び中継装置4は通信バスB2を介してデータを送信する。ECU3及び中継装置4は通信バスB3を介してデータを送信する。通信バスB1を介して送信されたデータは、通信バスB1に接続されている全ての装置によって受信される。同様に、通信バスB2を介して送信されたデータは、通信バスB2に接続されている全ての装置によって受信される。通信バスB3を介して送信されたデータは、通信バスB3に接続されている全ての装置によって受信される。
【0040】
通信バスB1,B2,B3それぞれを介したデータの送受信は、CAN(Controller Area Network)、CAN-FD(Controller Area Network with Flexible Data rate)、イーサネット(登録商標)、LIN(Local Interconnect Network)、CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)等の通信プロトコルに従って行われる。なお、通信バスB1,B2,B3それぞれを介したデータの送受信で用いられる通信プロトコルは、他の通信バスを介したデータの送受信で用いられる通信プロトコルとは異なっていてもよい。
【0041】
ECU1,2,3それぞれは通信装置として機能する。ECU1a,2a,3aそれぞれは第2の通信装置として機能する。通信システム100は給電制御システムとして機能する。
【0042】
複数のECU1,2,3それぞれには識別情報が予め割り当てられている。識別情報は、ID(Identification Data)である。ECU1,2,3それぞれが通信バスB1,B2,B3を介して送信するデータには、識別情報が含まれている。識別情報に基づいて、識別情報を含むデータの送信元を識別することができる。
【0043】
ECU1,2,3それぞれは、例えば、センサが検出した車両値を示すデータを送信する。ECU1,2,3それぞれは、データを受信した場合、受信したデータの識別情報に基づいて、受信したデータを図示しない記憶部に書き込むか否かを判定する。ECU1,2,3それぞれは、データを書き込むと判定した場合、受信したデータを記憶部に書き込む。ECU1,2,3それぞれは、例えば、記憶部に記憶されているデータに基づいて、自身に接続されている電気機器の動作を制御する。ECU1,2,3それぞれは、データを書き込まないと判定した場合、受信したデータを破棄する。
【0044】
複数のECU1,2,3には、周期的にデータを送信するECUが含まれている。中継装置4は、通信バスB1,B2,B3中の1つからデータを受信した場合、中継を必要であるか否かを判定する。中継装置4は、中継が必要ではないと判定した場合、受信したデータを破棄する。中継装置4は、中継が必要であると判定した場合、3つの通信バスB1,B2,B3の中で、受信したデータの送信に用いられた通信バスとは異なる通信バスを介してデータを送信する。中継装置4が中継を行った場合、2つの通信バスそれぞれに接続されている2つのECUが相互に通信する。例えば、ECU1がECU2と通信する。
【0045】
車両Cのイグニッションスイッチのオン又はオフを示すイグニッション情報が中継装置4に周期的に入力される。イグニッション情報は、イグニッション情報が送信された時点におけるイグニッションスイッチの状態を示す。
【0046】
<中継装置4の構成>
図2は中継装置4の要部構成を示すブロック図である。中継装置4は、複数の電源スイッチ40、駆動回路41及びマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)42を有している。図2でも、給電に関する接続線は太線で示されている。給電に無関係な接続線は細線で示されている。
【0047】
複数のECU1,2,3それぞれは、電源スイッチ40の一端に接続されている。電源スイッチ40の数はECU1,2,3の総数と一致する。各電源スイッチ40の他端は直流電源5の正極に接続されている。
【0048】
マイコン42は、出力部60、3つの通信部61,62,63、入力部64、記憶部65及び制御部66を有する。これらは内部バス67に接続されている。出力部60は、更に、駆動回路41に接続されている。通信部61,62,63それぞれは、更に、通信バスB1,B2,B3に接続されている。
【0049】
駆動回路41は、複数の電源スイッチ40それぞれをオン又はオフに切替える。駆動回路41が電源スイッチ40をオンに切替えた場合、直流電源5は、オンである電源スイッチ40を介してECUに電力を供給する。駆動回路41が電源スイッチ40をオフに切替えた場合、直流電源5からECUへの給電は停止する。
【0050】
複数のECU1,2,3の中で、オンである電源スイッチ40に接続されている一又は複数のECUには、直流電源5から電力が供給されている。複数のECU1,2,3の中で、オフである電源スイッチ40に接続されている一又は複数のECUには、電力は供給されない。前述したように、電力が供給されていないECUは動作を停止している。
【0051】
制御部66は、出力部60に、複数のECU1,2,3に含まれる少なくとも1つのECUへの給電を指示する。制御部66が、複数のECU1,2,3に含まれる少なくとも1つのECUへの給電を指示した場合、出力部60は、給電が指示された一又は複数のECUに対する一又は複数の電源スイッチ40のオンへの切替えを駆動回路41に指示する。駆動回路41は、出力部60の指示に従って、一又は複数の電源スイッチ40をオンに切替える。
【0052】
制御部66は、出力部60に、複数のECU1,2,3に含まれる少なくとも1つのECUへの給電の停止を指示する。制御部66が、複数のECU1,2,3に含まれる少なくとも1つのECUへの給電の停止を指示した場合、出力部60は、給電の停止が指示された一又は複数のECUに対応する一又は複数の電源スイッチ40のオフへの切替えを駆動回路41に指示する。駆動回路41は、出力部60の指示に従って、一又は複数の電源スイッチ40をオフに切替える。
【0053】
通信部61は、複数のECU1それぞれが通信バスB1を介して送信したデータを受信する。同様に、通信部62は、複数のECU2それぞれが通信バスB2を介して送信したデータを受信する。通信部63は、複数のECU3それぞれが通信バスB3を介して送信したデータを受信する。通信部61,62,63それぞれは受信部として機能する。通信部61,62,63それぞれは、制御部66の指示に従って、通信バスB1,B2,B3を介してデータを送信する。入力部64には、イグニッション情報が周期的に入力される。
【0054】
記憶部65は、例えば、揮発性メモリ及び不揮発性メモリによって構成される。記憶部65には、3つの状態テーブルT1,T2,T3が記憶されている。図3は状態テーブルT1の内容を示す図表である。状態テーブルT1には、複数のECU1それぞれの識別情報が示されている。複数の識別情報それぞれに対応付けて、異常フラグの値が示されている。異常フラグの値は、ECU1において異常が発生しているか否かを示す。異常フラグの値は0又は1である。異常フラグの値に関して、0は異常が発生していないことを意味する。1は異常が発生していることを意味する。
【0055】
状態テーブルT1では、複数の識別情報それぞれに対応付けて、ASIL(Automotive Safety Integrity Level)のレベルが示されている。ASILのレベルとして、A、B、C、D及びQM(Quality Management)が定義されている。レベルがA、B、C及びD中の1つであるECUは、車両Cの走行制御に関係があるECUである。走行制御に関係する度合は、A、B、C及びDの順に上昇する。レベルがQMであるECUは車両Cの走行制御に無関係なECUである。図3の例では、001~004に対応する4つのECU1はECU1bである。005及び006に対応する2つのECU1はECU1aである。
【0056】
以上のように、状態テーブルT1は、ECU1の識別情報に対応する異常フラグの値及びASILのレベルを示している。状態テーブルT2は、状態テーブルT1と同様に、ECU2の識別情報に対応する異常フラグの値及びASILのレベルを示している。状態テーブルT3は、状態テーブルT1と同様に、ECU3の識別情報に対応する異常フラグの値及びASILのレベルを示している。
【0057】
ECU1a,2a,3aそれぞれは、ASILのレベルがQMであるECUである。ECU1b,2b,3bそれぞれは、ASILのレベルがA、B、C又はDであるECUである。状態テーブルT1,T2,T3それぞれに関して、異常フラグの値は制御部66によって0又は1に変更される。
【0058】
図2に示す記憶部65には、コンピュータプログラムPが記憶されている。制御部66は、処理を実行する処理素子、例えばCPU(Central Processing Unit)を有する。制御部66は処理部として機能する。制御部66の処理素子(コンピュータ)は、コンピュータプログラムPを実行することによって、中継処理及び3つの給電停止処理等を実行する。中継処理は、3つの通信バスB1,B2,B3中の2つの通信バスに接続されている2つのECU間の通信を中継する処理である。3つの給電停止処理それぞれは、3つの通信バスB1,B2,B3に対応する。通信バスB1に対応する給電停止処理はECU1への給電を停止する処理である。同様に、通信バスB2に対応する給電停止処理はECU2への給電を停止する処理である。通信バスB3に対応する給電停止処理はECU3への給電を停止する処理である。
【0059】
なお、コンピュータプログラムPは、コンピュータプログラムPを読み取り可能に記憶した非一時的な記憶媒体Aを用いて、マイコン42に提供されてもよい。記憶媒体Aは、例えば可搬型メモリである。可搬型メモリの例として、CD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SDカード、マイクロSDカード又はコンパクトフラッシュ(登録商標)等が挙げられる。記憶媒体Aが可搬型メモリである場合、制御部66の処理素子は、図示しない読取装置を用いて記憶媒体AからコンピュータプログラムPを読み取ってもよい。読み取ったコンピュータプログラムPは記憶部65に書き込まれる。更に、コンピュータプログラムPは、マイコン42の図示しない通信部が外部装置と通信することによって、マイコン42に提供されてもよい。この場合、制御部66の処理素子は、通信部を通じてコンピュータプログラムPを取得する。取得したコンピュータプログラムPは記憶部65に書き込まれる。
【0060】
また、制御部66が有する処理素子の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。制御部66が複数の処理素子を有する場合、複数の処理素子が協同して、中継処理及び3つの給電停止処理等を実行してもよい。
【0061】
<中継処理>
中継処理では、制御部66は、3つの通信部61,62,63中の1つがデータを受信するまで待機する。制御部66は、3つの通信部61,62,63中の1つがデータを受信した場合、受信されたデータの識別情報に基づいて、中継が必要であるか否かを判定する。制御部66は、中継が必要ではないと判定した場合、中継処理を終了する。制御部66は、中継が必要であると判定した場合、3つの通信部61,62,63の中から、受信されたデータを送信する通信部を選択する。制御部66は、選択した通信部に、受信されたデータを送信させる。これにより、3つの通信バスB1,B2,B3中の2つの通信バスそれぞれに接続されている2つのECUが相互に通信する。制御部66は、中継処理を終了した後、中継処理を再び実行する。
【0062】
<通信バスB1に対応する給電停止処理>
図4及び図5は、通信バスB1に対応する給電停止処理の手順を示すフローチャートである。状態テーブルT1において、異常フラグの値が0であるECU1に接続されている電源スイッチ40はオンである。異常フラグの値が0であるECU1には、電力が供給されている。異常フラグの値が1であるECU1に接続されている電源スイッチ40はオフである。異常フラグの値が1であるECU1への給電は停止している。以下では、状態テーブルT1の全ての異常フラグの値が0である場合における通信バスB1に対応する給電停止処理を説明する。通信バスB1に対応する給電停止処理では、制御部66は、通信部61が受信するデータに関して異常が発生しているか否かを判定する(ステップS1)。
【0063】
図6は異常の判定条件を示す図表である。図6に示す条件1,2中の1つが満たされた場合、制御部66は、ステップS1において異常が発生していると判定する。条件1は、共通の識別情報を含む共通データに関して、通信部61が所定期間内に受信した共通データのデータ量が閾値以上であることである。所定期間は、一定値であり、予め設定されている。所定期間の開始時点は、ステップS1が実行された時点から所定期間、遡った時点である。所定期間の終了時点は、ステップS1が実行された時点である。
【0064】
条件2は、共通の識別情報を含む共通データに関して、共通データを受信する時間間隔が所定間隔未満であることである。所定間隔は、一定値であり、予め設定されている。
【0065】
以上のように、所定期間に受信された共通データのデータ量が多い場合、又は、通信部61が共通データを受信する時間間隔が短い場合、制御部66は、ステップS1において異常の発生を検知する。
【0066】
制御部66は、異常が発生していないと判定した場合(S1:NO)、ステップS1を再び実行する。制御部66は、通信バスB1を介して受信するデータに関して異常が発生するまで待機する。制御部66は、異常が発生していると判定した場合(S1:YES)、通信バスB1に接続されている複数のECU1の中から、給電を停止させる1つのECU1aを選択する(ステップS2)。ステップS1において異常が発生していると判定された場合において、共通データの識別情報が示すECU1のレベルがQMであるとき、ステップS2では、制御部66は、例えば、共通データの識別情報が示すECU1aを選択する。
【0067】
次に、制御部66は、出力部60に、ステップS2で選択したECU1aへの給電の停止を指示する(ステップS3)。これにより、駆動回路41は、ステップS2で選択されたECU1aに接続されている電源スイッチ40をオフに切替える。結果、ステップS2で選択されたECU1aは動作を停止する。
【0068】
制御部66は、ステップS3を実行した後、異常の発生が停止したか否かを判定する(ステップS4)。ステップS1で条件1が満たされている場合、ステップS4では、制御部66は、通信部61が所定期間内に受信した共通データのデータ量が閾値未満になったか否かを判定する。ステップS1で条件2が満たされている場合、ステップS4では、制御部66は、通信部61が共通データを受信する間隔が所定間隔以上となったか否かを判定する。
【0069】
制御部66は、異常の発生が停止したと判定した場合(S4:YES)、状態テーブルT1において、ステップS2で選択したECU1aの識別情報に対応する異常フラグの値を1に変更する(ステップS5)。制御部66は、ステップS2で選択したECU1aへの給電が停止している状態で給電停止処理を終了する。制御部66は、給電停止処理を終了した後、通信バスB1に対応する給電停止処理を再び実行する。異常フラグの値が1であるECU1への給電の停止は維持される。このため、ステップS2で選択したECU1aへの給電の停止は維持される。
【0070】
制御部66は、異常の発生が停止しなかったと判定した場合(S4:NO)、出力部60に、ステップS2で選択したECU1aへの給電を指示する(ステップS6)。これにより、駆動回路41は、ステップS2で選択したECU1aに接続されている電源スイッチ40をオンに切替える。結果、ステップS2で選択されたECU1aは再び作動する。
【0071】
制御部66は、ステップS6を実行した後、実行中の給電停止処理が開始されてから、全てのECU1aを選択したか否かを判定する(ステップS7)。制御部66は、全てのECU1aが選択されていないと判定した場合(S7:NO)、ステップS2を再び実行する。2回目以降のステップS2では、制御部66は、複数のECU1の中で選択されていないECU1aを選択する。全てのECU1aが選択されている場合、異常が発生している原因はECU1bにある。
【0072】
制御部66は、全てのECU1aが選択されたと判定した場合(S7:YES)、入力部64に入力されたイグニッション情報に基づいて、車両Cのイグニッションスイッチがオフであるか否かを判定する(ステップS8)。制御部66は、イグニッションスイッチがオフではないと判定した場合(S8:NO)、ステップS8を再び実行する。制御部66は、イグニッションスイッチがオンに切替わるまで待機する。
【0073】
制御部66は、イグニッションスイッチがオフであると判定した場合(S8:YES)、通信バスB1に接続されている複数のECU1の中から、給電を停止させるECU1bを選択する(ステップS9)。ステップS9では、制御部66は、選択されていないECU1bの中で、ASILのレベル、即ち、走行制御に関する度合が最も低いECU1bを選択してもよい。
【0074】
次に、制御部66は、出力部60に、ステップS9で選択したECU1bへの給電の停止を指示する(ステップS10)。これにより、駆動回路41は、ステップS9で選択されたECU1bに接続されている電源スイッチ40をオフに切替える。結果、ステップS9で選択されたECU1bは動作を停止する。
【0075】
制御部66は、ステップS10を実行した後、ステップS4と同様に、異常の発生が停止したか否かを判定する(ステップS11)。制御部66は、異常の発生が停止したと判定した場合(S11:YES)、状態テーブルT1において、ステップS9で選択したECU1bの識別情報に対応する異常フラグの値を1に変更する(ステップS12)。制御部66は、ステップS9で選択したECU1bへの給電が停止している状態で給電停止処理を終了する。この場合においては、制御部66は、例えば、イグニッションスイッチがオンに切替わった後、給電停止処理を再び実行する。
【0076】
ECU1bは車両Cの走行を制御するために必要である。従って、イグニッションスイッチがオンに切替わった場合、制御部66は、出力部60に、全てのECU1bに接続されている電源スイッチ40の給電を指示し、全てのECU1bの識別情報に対応する異常フラグの値を0に変更する。制御部66がECU1bの識別情報に対応する異常フラグの値を1に変更した場合、ランプの点灯、又は、メッセージの表示等により、ECU1bの異常が車両Cの乗員に報知されてもよい。
【0077】
制御部66は、異常の発生が停止していないと判定した場合(S11:NO)、出力部60に、ステップS9で選択したECU1bへの給電を指示する(ステップS13)。これにより、駆動回路41は、ステップS9で選択したECU1bに接続されている電源スイッチ40をオンに切替える。結果、ステップS9で選択されたECU1bは再び作動する。
【0078】
制御部66は、ステップS13を実行した後、実行中の給電停止処理が開始されてから、全てのECU1bを選択したか否かを判定する(ステップS14)。制御部66は、全てのECU1bが選択されていないと判定した場合(S14:NO)、ステップS9を再び実行する。2回目以降のステップS9では、制御部66は、選択されていないECU1bを選択する。全てのECU1bが選択されている場合、異常が発生している原因は不明である。
【0079】
制御部66は、全てのECU1bを選択したと判定した場合(S14:YES)、給電停止処理を終了する。この場合においては、制御部66は、例えば、イグニッションスイッチがオンに切替わった後、給電停止処理を再び実行する。
【0080】
以上のように、通信バスB1を介して通信部61が受信したデータに関して異常が発生した場合、1つのECU1aへの給電を停止する。これにより、異常の発生が停止した場合、給電の停止が維持される。結果、中継装置4は、異常の発生を停止させることができる。
【0081】
制御部66が選択したECU1aへの給電を駆動回路41が停止したことによって異常の発生が停止しなかった場合、駆動回路41は、制御部66が選択したECU1aへの給電を再開する。制御部66は選択されていないECU1aを選択する。駆動回路41は、制御部66が選択したECU1aへの給電を停止する。これにより、中継装置4は、異常の発生を確実に停止させることができる。
【0082】
全てのECU1aの給電が停止された場合であっても、異常の発生が停止しなかったとき、制御部66は、イグニッションスイッチがオフである状態、即ち、走行制御が不要である状態でECU1bの給電を停止する。その後、制御部66は、異常の発生が停止したか否かを判定する。
【0083】
状態テーブルT1の全ての異常フラグの値が0ではない場合、ステップS2では、制御部66は、電力が供給されている複数のECU1の中から、給電を停止させる1つのECU1aを選択する。ステップS7では、制御部66は、給電停止処理が開始された時点において、電力が供給されていた全てのECU1aを選択したか否かを判定する。
【0084】
<通信バスB2に対応する給電停止処理>
制御部66は、通信バスB2に対応する給電停止処理を、通信バスB1に対応する給電停止処理と同様に実行する。ECU1,1a,1b、通信バスB1及び状態テーブルT1それぞれは、ECU2,2a,2b、通信バスB2及び状態テーブルT2に対応する。
【0085】
<通信バスB3に対応する給電停止処理>
制御部66は、通信バスB3に対応する給電停止処理を、通信バスB1に対応する給電停止処理と同様に実行する。ECU1,1a,1b、通信バスB1及び状態テーブルT1それぞれは、ECU3,3a,3b、通信バスB3及び状態テーブルT3に対応する。
【0086】
(実施形態2)
実施形態1では、図6の条件1,2中の1つが満たされた場合、制御部66は異常の発生を検知する。制御部66は、条件1,2とは異なる他の条件が満たされた場合に異常の発生を検知してもよい。
以下では、実施形態2について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態1と共通しているため、実施形態1と共通する構成部には実施形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0087】
<中継装置4の構成>
図7は、実施形態2における中継装置4の要部構成を示すブロック図である。図7でも、給電に関する接続線は太線で示されている。給電に無関係な接続線は細線で示されている。実施形態2では、マイコン42の記憶部65にデータベースDBが設けられている。通信バスB1を介して送信されるデータには特定データが含まれる。特定データは予め決められている。マイコン42の通信部61は、通信バスB1を介して特定データを繰り返し受信する。実施形態1の説明で述べたように、通信部62,63それぞれは、通信バスB2,B3を介して送信されたデータを受信する。実施形態2では、通信部61は受信部として機能する。通信部62,63それぞれは第2の受信部として機能する。
【0088】
特定データは、予め決められているデータである。特定データは、例えば、車両Cの位置を示す位置データである。マイコン42の制御部66は、特定データとは異なる判定用データに基づいて、特定データが異常であるか否かを判定する。
【0089】
特定データが位置データである場合、判定用データとして、速度データ、加速度データ及びハンドルデータ等が挙げられる。速度データは車両Cの速度を示す。加速度データは車両Cの加速度を示す。ハンドルデータは、車両Cのハンドルの回転に関するデータである。判定用データは、3つの通信部61,62,63中の少なくとも1つによって受信される。制御部66は、位置データが示す車両Cの位置が、判定用データに基づいて推定された車両Cの位置と大きく異なる場合、特定データ(位置データ)の異常を検知する。
【0090】
マイコン42の制御部66は、コンピュータプログラムPを実行することによって、中継処理及び3つの給電停止処理に加えて、異常検知処理を実行する。異常検知処理は、特定データの異常を検知する処理である。
【0091】
<中継処理>
図8は中継処理の手順を示すフローチャートである。中継処理では、制御部66は、3つの通信部61,62,63中の1つがデータを受信したか否かを判定する(ステップS21)。制御部66は、3つの通信部61,62,63中の1つがデータを受信していないと判定した場合(S21:NO)、ステップS21を再び実行する。制御部66は、3つの通信部61,62,63中の1つがデータを受信するまで待機する。
【0092】
制御部66は、3つの通信部61,62,63中の1つがデータを受信したと判定した場合(S21:YES)、受信されたデータが、判定用データであるか否かを判定する(ステップS22)。制御部66は、受信されたデータが判定用データであると判定した場合(S22:YES)、受信されたデータをデータベースDBに書き込む(ステップS23)。制御部66は、受信されたデータが判定用データではないと判定した場合(S22:NO)、又は、ステップS23を実行した後、受信されたデータの識別情報に基づいて、中継が必要であるか否かを判定する(ステップS24)。
【0093】
制御部66は、中継が必要であると判定した場合(S24:YES)、3つの通信部61,62,63の中で、受信されたデータを送信する通信部を選択する(ステップS25)。ステップS25で選択される通信部は、データを受信した通信部とは異なる。次に、制御部66は、ステップS25で選択した通信部に、受信されたデータの送信を指示する(ステップS26)。制御部66は、中継が必要ではないと判定した場合(S24:NO)、又は、ステップS26を実行した後、中継処理を終了する。制御部66は、中継処理を終了した後、中継処理を再び実行する。
以上のように、中継処理では、制御部66は、判定用データをデータベースDBに書き込む。
【0094】
<異常検知処理>
図9は異常検知処理の手順を示すフローチャートである。異常検知処理では、制御部66は、通信部61が特定データを受信したか否かを判定する(ステップS31)。制御部66は、通信部61が特定データを受信していないと判定した場合(S31:NO)、ステップS31を再び実行する。制御部66は、通信部61が特定データを受信するまで待機する。
【0095】
制御部66は、通信部61が特定データを受信したと判定した場合(S31:YES)、データベースDBに記憶されている一又は複数の判定用データに基づいて、通信部61が受信した特定データが異常であるか否かを判定する(ステップS32)。前述したように、特定データが示す内容が、一又は複数の判定用データに基づいて推定された内容と大きく異なる場合、制御部66は、特定データが異常であると判定する。他の場合、制御部66は、特定データが異常ではないと判定する。
【0096】
制御部66は、特定データが異常であると判定した場合(S32:YES)、通信部61が受信した特定データを破棄する(ステップS33)。制御部66は、特定データが異常ではないと判定した場合(S32:NO)、又は、ステップS33を実行した後、異常検知処理を終了する。制御部66は、異常検知処理を終了した後、再び異常検知処理を実行する。
【0097】
例えば、通信部61が受信した特定データは、中継処理において通信部62によってECU2に送信されるように構成されている。この構成では、通信部61が受信した特定データが異常である場合、中継処理において、特定データは通信部62によって送信されることはない。通信部61が受信した特定データが異常ではない場合、中継処理において、特定データは通信部62によって送信される。
【0098】
<通信バスB1に対応する給電停止処理>
制御部66は、実施形態1と同様に、通信バスB1に対応する給電停止処理を実行する。実施形態2における給電停止処理のステップS1では、制御部66は、条件1~3中の1つが満たされた場合、制御部66は、通信部61が受信するデータに関して異常が発生していると判定する。
【0099】
図10は異常の判定条件を示す図表である。図10に示すように、条件3は、通信部61が異常な特定データを受信することである。従って、異常検知処理において通信部61が受信した特定データが異常であると判定された場合、制御部66は、ステップS1において異常が発生したと判定する。従って、通信部61が異常な特定データを受信した場合、制御部66は異常の発生を検知する。
【0100】
ステップS1で条件3が満たされている場合、給電停止処理のステップS4,S11それぞれでは、制御部66は、通信部61が特定データを繰り返し受信しており、かつ、異常な特定データの受信が停止したか否かを判定する。制御部66は、通信部61が特定データを繰り返し受信しており、かつ、異常な特定データの受信が停止したと判定した場合、異常の発生が停止したと判定する。
【0101】
<通信バスB2,B3に対応する給電停止処理>
通信部62,63は特定データを受信しない。このため、制御部66は、通信バスB2,B3それぞれに対応する給電停止処理を、実施形態1と同様に実行する。
【0102】
<中継装置4の効果>
実施形態2における中継装置4は実施形態1における中継装置4が奏する効果を同様に奏する。
【0103】
<変形例>
実施形態1,2において、全てのECU1はECU1aであってもよい。この場合、ECU1bが存在しないので、通信バスB1に対応する給電停止処理のステップS8~S14を制御部66が実行する必要はない。制御部66は、全てのECU1aを選択したと判定した場合(S7:YES)、給電停止処理を終了する。同様に、全てのECU2はECU2aであってもよい。全てのECU3はECU3aであってもよい。通信バスB2,B3に対応する給電停止処理それぞれの内容は、通信バスB1に対応する給電停止処理と同様に適宜変更される。
【0104】
実施形態1,2において、中継装置4に接続される通信バスの数は、2以上であれば問題はない。従って、中継装置4に接続される通信バスの数は3に限定されない。給電停止処理の数は通信バスの数と一致する。実施形態1において、中継装置4に接続される通信バスの数は1であってもよい。この場合、中継装置4の制御部66は、中継処理を実行せず、複数のECUへの給電を各別に制御する。中継装置4は、中継機能を有しない給電制御装置として機能する。
【0105】
実施形態1,2において、制御部66が車両Cの走行制御に関係するECUへの給電を停止するタイミングは、イグニッションスイッチがオフであるタイミングに限定されず、例えば、車両Cが駐車したタイミングであってもよい。
【0106】
実施形態1,2で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
開示された実施形態1,2はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0107】
C 車両
1,1b,2,2b,3,3b ECU(通信装置)
1a,2a,3a ECU(通信装置、第2の通信装置)
4 中継装置(給電制御装置)
5 直流電源
40 電源スイッチ
41 駆動回路
42 マイコン
60 出力部
61 通信部(受信部)
62,63 通信部(受信部、第2の受信部)
64 入力部
65 記憶部
66 制御部(処理部)
67 内部バス
100 通信システム(給電制御システム)
A 記憶媒体
B1,B2,B3 通信バス
C 車両
DB データベース
P コンピュータプログラム
T1,T2,T3 状態テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10