(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130088
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/21 20060101AFI20230912BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230912BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20230912BHJP
B05C 9/10 20060101ALI20230912BHJP
B05B 7/02 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/01 123
B41J2/01 401
B05C5/00 101
B05C9/10
B05B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034546
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】千田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】上田 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】四ノ宮 文二
(72)【発明者】
【氏名】塚本 紫門
(72)【発明者】
【氏名】萩森 普
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】両角 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 忠
【テーマコード(参考)】
2C056
4F033
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EA30
2C056EB07
2C056EB38
2C056EC11
2C056EC31
2C056EC39
2C056EE18
2C056FA10
2C056HA42
2C056KA08
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2C056KD10
4F033QA01
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB18
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4F041BA13
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4F041BA34
4F042AA02
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4F042BA08
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4F042CA06
4F042CB03
4F042CB08
4F042DA03
(57)【要約】
【課題】スプレー装置によって液剤を噴霧したときに、被印刷物における噴霧された部分に色ムラが発生し難い。
【解決手段】プリンタ10は、被印刷物5を支持する支持台12と、被印刷物5に向かってインクを吐出するプリントヘッド20と、被印刷物5に噴霧される液剤を貯留する液剤タンク32と、液剤タンク32に接続され、圧縮空気によって液剤を微粒化して、支持台12に支持された被印刷物5に向かって液剤を噴霧するスプレー装置31と、液剤タンク32およびスプレー装置31が設けられたスプレーキャリッジ40と、制御装置120とを備える。制御装置120は、被印刷物5に印刷しない非印刷時、スプレー装置31から液剤を噴霧させずに、スプレーキャリッジ40を主走査方向Yに往復移動させて、液剤タンク32に貯留された液剤を攪拌させる攪拌制御部123を備えている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物を支持する支持台と、
前記支持台に支持された前記被印刷物に向かってインクを吐出するプリントヘッドと、
前記被印刷物に噴霧される液剤を貯留する液剤タンクと、
圧縮空気を発生させる圧縮装置に接続されたエア供給路と、
前記液剤タンクおよび前記エア供給路に接続され、前記圧縮空気によって前記液剤を微粒化して、前記支持台に支持された前記被印刷物に向かって前記液剤を噴霧するスプレー装置と、
前記液剤タンクおよび前記スプレー装置が設けられたスプレーキャリッジと、
前記スプレーキャリッジを主走査方向に移動させる主走査方向移動装置と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記被印刷物に印刷しない非印刷時、前記スプレー装置から前記液剤を噴霧させずに、前記スプレーキャリッジを前記主走査方向に往復移動させて、前記液剤タンクに貯留された前記液剤を攪拌させる攪拌制御部を備えた、プリンタ。
【請求項2】
前記支持台における前記主走査方向の長さは、支持台長さであり、
前記攪拌制御部は、前記支持台長さよりも短い距離、前記スプレーキャリッジを前記主走査方向に往復移動させる、請求項1に記載されたプリンタ。
【請求項3】
前記攪拌制御部によって前記スプレーキャリッジが前記主走査方向に1往復する際の全時間範囲は、
前記スプレーキャリッジが加速する加速範囲と、
前記スプレーキャリッジが減速する減速範囲と、
を有し、
前記加速範囲と前記減速範囲は連続している、請求項1または2に記載されたプリンタ。
【請求項4】
前記制御装置は、前記スプレーキャリッジを前記主走査方向に移動させつつ、前記支持台に支持された前記被印刷物に対して、前記スプレー装置から前記液剤を噴霧して液剤層を形成する噴霧制御部を備えた、請求項1から3までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項5】
前記噴霧制御部は、第1の平均速度で前記スプレーキャリッジを前記主走査方向に移動させ、
前記攪拌制御部は、前記第1の平均速度よりも速い第2の平均速度で前記スプレーキャリッジを前記主走査方向に移動させる、請求項4に記載されたプリンタ。
【請求項6】
前記プリントヘッドが設けられたプリントキャリッジを備え、
前記主走査方向移動装置は、前記プリントキャリッジを前記主走査方向に移動させ、
前記制御装置は、前記プリントキャリッジを前記主走査方向に移動させつつ、前記支持台に支持された前記被印刷物に対して、前記プリントヘッドからインクを吐出して印刷層を形成する印刷制御部を備えた、請求項1から5までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【請求項7】
前記印刷制御部は、第3の平均速度で前記プリントキャリッジを前記主走査方向に移動させ、
前記攪拌制御部は、前記第3の平均速度よりも速い第2の平均速度で前記スプレーキャリッジを前記主走査方向に移動させる、請求項6に記載されたプリンタ。
【請求項8】
前記スプレーキャリッジと前記プリントキャリッジとを連結したり分離したりする連結機構を備えた、請求項6または7に記載されたプリンタ。
【請求項9】
前記液剤タンクに貯留されている前記液剤は、ホワイトインクである、請求項1から8までの何れか1つに記載されたプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被印刷物にインクを吐出して画像を印刷するインクヘッドと、他の用途のための液剤を吐出するディスペンサと、を備えたプリンタが知られている。例えば特許文献1には、インクを吐出するインクヘッドと、粒径の大きな顔料を含む非ニュートン流体の加飾インクを吐出するディスペンサと、を備え、意匠性の高い加飾が可能なプリンタが開示されている。
【0003】
ところで、プリンタでは、例えば被印刷物に下地層を形成するための液剤や、トップコート層を形成するための液剤を塗布する場合がある。このような液剤は、被印刷物の広い範囲に亘って塗布されることが多い。しかしながら、特許文献1に記載されたようなインクヘッドやディスペンサでは、被印刷物の広範囲に迅速に液剤を塗布することが難しい。
【0004】
特許文献2には、上記の下地層を形成するための液剤などをスプレー塗装する技術が開示されている。スプレー塗装することで、被印刷物の広範囲に迅速に液剤を塗布することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-104334号公報
【特許文献2】特開2004-34675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、被印刷物の広範囲に液剤を塗布するために、スプレー塗装を行うスプレー装置を用いることがあり得る。スプレー装置は、例えば液剤を貯留する液剤タンクを備えている。液剤は、長時間使用されないことで沈殿することがあり得る。そのため、液剤タンク内の液剤が沈殿した状態で、スプレー装置による液剤の噴霧が行われると、被印刷物における液剤が噴霧された部分に色ムラが発生するおそれがあった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、スプレー装置によって液剤を噴霧したときに、被印刷物における噴霧された部分に色ムラが発生し難いプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプリンタは、支持台と、プリントヘッドと、液剤タンクと、エア供給路と、スプレー装置と、スプレーキャリッジと、主走査方向移動装置と、制御装置とを備えている。前記支持台は、被印刷物を支持する。前記プリントヘッドは、前記支持台に支持された前記被印刷物に向かってインクを吐出する。前記液剤タンクは、前記被印刷物に噴霧される液剤を貯留する。前記エア供給路は、圧縮空気を発生させる圧縮装置に接続されている。前記スプレー装置は、前記液剤タンクおよび前記エア供給路に接続され、前記圧縮空気によって前記液剤を微粒化して、前記支持台に支持された前記被印刷物に向かって前記液剤を噴霧する。前記スプレーキャリッジには、前記液剤タンクおよび前記スプレー装置が設けられている。前記主走査方向移動装置は、前記スプレーキャリッジを主走査方向に移動させる。前記制御装置は、前記被印刷物に印刷しない非印刷時、前記スプレー装置から前記液剤を噴霧させずに、前記スプレーキャリッジを前記主走査方向に往復移動させて、前記液剤タンクに貯留された前記液剤を攪拌させる攪拌制御部を備えている。
【0009】
上記プリンタによれば、非印刷時において、攪拌制御部によってスプレーキャリッジと共に液剤タンクが主走査方向に往復移動される。そのため、液剤タンクに貯留された液剤が沈殿している場合であっても、液剤タンクが主走査方向に往復移動することで、液剤が揺れ動いて攪拌される。よって、液剤が攪拌された状態で、スプレー装置から被印刷物に向かって液剤が噴霧されることができるため、被印刷物における噴霧された部分に色ムラが発生し難くすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スプレー装置によって液剤を噴霧したときに、被印刷物における噴霧された部分に色ムラが発生し難いプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】プリントキャリッジおよびスプレーキャリッジの正面図である。
【
図3】プリントヘッドのインク供給系統の模式図である。
【
図5】スプレーユニットの液剤供給系統の模式図である。
【
図7】実施形態に係るプリンタのブロック図である。
【
図8】プリンタによって印刷された後の被印刷物を模式的に示した断面図である。
【
図9】攪拌制御部による攪拌制御の状態を示した模式図である。
【
図10】攪拌制御部による攪拌制御において、主走査方向を1往復する際のスプレーキャリッジの移動速度を示したグラフである。
【
図11】噴霧制御部によるスプレーキャリッジの第1の平均速度、攪拌制御部によるスプレーキャリッジの第2の平均速度、および、印刷制御部によるプリントキャリッジの第3の平均速度の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るプリンタの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の斜視図である。以下の説明では、プリンタ10を正面から見たときに、プリンタ10から遠ざかる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。左右方向はプリンタ10の主走査方向である。前後方向はプリンタ10の副走査方向である。図面中、主走査方向は、符号Yで表す。副走査方向は、符号Xで表す。主走査方向Yと副走査方向Xとは、互いに交差(ここでは直交)している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様などを限定するものではない。
【0014】
プリンタ10は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動するプリントヘッド20からインクを吐出することによって、支持台12上の被印刷物5に画像を印刷する。また、プリンタ10は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動するスプレーユニット30から印刷の前処理用または後処理用の液剤を噴霧する。これにより、プリンタ10は、支持台12上の被印刷物5に対して印刷の前処理または後処理を行う。
【0015】
スプレーユニット30(ここではスプレー装置31)から噴霧される液剤は、沈殿し易い成分を含むインクである。被印刷物5の下地処理用の処理液、例えば、プライマーインクやホワイトインクであってもよいし、メタリックインク(例えばシルバーインク)であってもよい。スプレーユニット30から噴霧される液剤は、インクの上にトップコート層を形成するトップコート液、例えば、透明インクであってもよい。スプレーユニット30から噴霧される液剤の種類は、特に限定されない。
【0016】
本実施形態では、プリントヘッド20から吐出されるインクは、光硬化性のインクである。インクは、特定の波長帯の紫外線を受けると硬化するUV硬化性の樹脂を含んでいてもよい。ただし、インクの成分、色などは特に限定されない。インクは、例えばCMYKのようなプロセスカラーインクであってもよく、例えばホワイトインクやメタリックインクのような特色インクであってもよい。
【0017】
被印刷物5は、画像が印刷されるとともに、画像印刷の前処理または後処理が行われる対象物である。被印刷物5は、例えば、記録紙や樹脂シートなどであってもよい。ただし、被印刷物5の素材、形状などは特に限定されない。被印刷物5は、立体的な形状を有するものであってもよい。被印刷物5の数量は、2つ以上であってもよい。被印刷物5の素材は、例えば、紙、樹脂、金属、木、布帛、ガラスなどであってもよい。
【0018】
図1に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体11と、被印刷物5を支持する支持台12と、プリントヘッド20と、光照射装置21と、プリントヘッド20および光照射装置21を保持するプリントキャリッジ22と、スプレー装置31を備えたスプレーユニット30と、スプレーユニット30を保持するスプレーキャリッジ40と、移動装置65と、制御装置120と、を備えている。
【0019】
プリンタ本体11は、プリンタ10の要部を支持する箱状の部材である。プリンタ本体11は、支持台12、プリントヘッド20、光照射装置21、プリントキャリッジ22、スプレーユニット30、スプレーキャリッジ40、移動装置65、および制御装置120を直接または間接的に支持している。
【0020】
支持台12は、プリンタ本体11上に露出している。支持台12は、平板状の部材である。支持台12の上面は、被印刷物5が載置される載置面12aを構成している。載置面12aは、水平面に沿って広がっている。主走査方向Yおよび副走査方向Xは、載置面12aに略平行な方向である。
【0021】
移動装置65は、プリントヘッド20またはスプレー装置31を支持台12に対して相対的に移動させる装置である。ここでは、移動装置65は、プリントキャリッジ22およびスプレーキャリッジ40を主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動させることで、プリントヘッド20およびスプレー装置31を主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動させる。本実施形態では、移動装置65は、主走査方向移動装置50と、副走査方向移動装置60と、を備えている。
【0022】
主走査方向移動装置50は、プリントキャリッジ22およびスプレーキャリッジ40を主走査方向Yに移動させる。詳しくは後述するが、プリントキャリッジ22とスプレーキャリッジ40とは、連結または切り離し可能に構成されている。主走査方向移動装置50は、プリントキャリッジ22とスプレーキャリッジ40とが連結された状態では、両者を一体で移動させる。また、主走査方向移動装置50は、プリントキャリッジ22とスプレーキャリッジ40とが分離された状態では、スプレーキャリッジ40だけを単独で移動させる。
【0023】
主走査方向移動装置50は、ガイドレール51と、ベルト52と、キャリッジモータ53(
図7参照)と、を備えている。ガイドレール51は、支持台12よりも上方に設けられている。ガイドレール51は主走査方向Yに延びている。ガイドレール51には、プリントキャリッジ22およびスプレーキャリッジ40が主走査方向Yに移動可能に係合している。プリントキャリッジ22およびスプレーキャリッジ40は、ガイドレール51に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0024】
本実施形態では、スプレーキャリッジ40は、プリントキャリッジ22よりも左方に配置されている。主走査方向移動装置50は、ガイドレール51に沿ってスプレーキャリッジ40を主走査方向Yに移動させる。スプレーキャリッジ40の背面上部には、主走査方向Yに延びるベルト52が固定されている。ベルト52は、キャリッジモータ53に接続されている。キャリッジモータ53が駆動して回転すると、ベルト52が主走査方向Yに走行する。これにより、スプレーキャリッジ40は、ガイドレール51に沿って主走査方向Yに移動する。
【0025】
図2は、プリントキャリッジ22およびスプレーキャリッジ40の正面図である。
図2に示すように、プリンタ10は、プリントキャリッジ22とスプレーキャリッジ40とを連結したり分離したりする連結機構70を備えている。連結機構70は、プリントキャリッジ22に設けられた右側連結部材71と、スプレーキャリッジ40に設けられた左側連結部材72とを有している。右側連結部材71は、プリントキャリッジ22の左側部分に設けられている。左側連結部材72は、スプレーキャリッジ40の右側部分に設けられている。本実施形態では、連結機構70は、磁力を利用してプリントキャリッジ22とスプレーキャリッジ40とを連結する。右側連結部材71と左側連結部材72のうちの一方は磁石を備え、他方は磁石に吸着する磁性体を備えている。ただし、連結機構70は磁力を利用するものに限られず、係合部材などの他の構成を備えたものであってもよい。プリントキャリッジ22とスプレーキャリッジ40とは、右側連結部材71と左側連結部材72とが接触することにより連結される。
【0026】
図1に示すように、ガイドレール51は、門型のガントリー80に支持されている。ガントリー80は、プリンタ本体11の上面に設けられた図示しないレールに係合している。図示しないレールは、副走査方向Xに延びている。ガントリー80は、レールに沿って副走査方向Xに移動可能である。ガントリー80は、プリンタ本体11の主走査方向Yの中央部に設けられ、主走査方向Yに延びる中央部分81と、中央部分81よりも右方に設けられた右側部分82と、中央部分81よりも左方に設けられた左側部分83と、を含んでいる。中央部分81は、支持台12の上方に配置されている。中央部分81の前面には、ガイドレール51が固定されている。右側部分82は、プリントキャリッジ22を収容可能な箱状に構成されている。左側部分83は、プリントキャリッジ22およびスプレーキャリッジ40を収容可能な箱状に構成されている。
【0027】
ガントリー80の右側部分82の内部には、プリントヘッド20に装着される図示しないキャップが設けられている。印刷待機時、プリントヘッド20にはキャップが装着される。以下、プリントヘッド20にキャップを装着可能なプリントキャリッジ22の位置をホームポジションと呼ぶ。ホームポジションは、ガントリー80の右側部分82の内部に設定されている。
【0028】
また、ガントリー80の右側部分82の内部には、プリントキャリッジ22を移動不能に固定する、図示しないロック装置が設けられている。ロック装置は、プリントキャリッジ22を移動不能に固定した状態と、移動可能に解放した状態と、を切り替えるロック用アクチュエータ73(
図7参照)を備えている。プリントキャリッジ22をスプレーキャリッジ40から切り離す際には、プリントキャリッジ22がホームポジションに位置付けられ、ロック装置によりプリントキャリッジ22が固定される。この状態でスプレーキャリッジ40が左方へ移動すると、右側連結部材71と左側連結部材72(
図2参照)とが離反し、スプレーキャリッジ40とプリントキャリッジ22との連結が解除される。その結果、主走査方向移動装置50がスプレーキャリッジ40を独立に移動させることが可能となる。
【0029】
図1に示すように、副走査方向移動装置60は、ガントリー80を副走査方向Xに移動させる。これにより、ガイドレール51が副走査方向Xに移動し、ガイドレール51に係合したプリントキャリッジ22およびスプレーキャリッジ40が副走査方向Xに移動する。副走査方向移動装置60は、ガントリー80を移動させるガントリーモータ61(
図7参照)を備えている。
【0030】
プリントヘッド20は、支持台12に支持された被印刷物5に向かってインクを吐出する。本実施形態では、プリントヘッド20は、インクジェット方式のプリントヘッドである。本実施形態において、「インクジェット方式」とは、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式または圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む従来公知の各種の手法によるインクジェット式のことをいう。ただし、プリントヘッドの方式はインクジェット方式に限定されない。プリントヘッド20は、支持台12よりも上方に設けられている。プリントヘッド20の下面には、インクが吐出される複数のノズル(図示せず)が形成されている。
【0031】
図3は、プリントヘッド20のインク供給系統の模式図である。
図3に示すように、プリントヘッド20には、複数のインクカートリッジ23がインク流路24を介して接続されている(ただし、
図3では、2つの系統以外は図示省略)。インクカートリッジ23には、インクが収容されている。インクカートリッジ23は、
図1に示すように、ガントリー80の左側部分83の上部に設けられたインクカートリッジ装着部84に装着される。
図3に示すように、各インク流路24には、インクカートリッジ23内のインクをプリントヘッド20に送給するインクポンプ25が設けられている。
【0032】
図2に示すように、プリントキャリッジ22の右側面および左側面には、光照射装置21が設けられている。光照射装置21は、プリントヘッド20から吐出され被印刷物5に着弾したインクを硬化させる光を照射する。ただし、光照射装置21は、スプレー装置31から被印刷物5に噴霧された液剤に対して光を照射させて、液剤を硬化させるように構成されてもよい。
【0033】
スプレーユニット30は、支持台12に支持された被印刷物5に向かって微粒化した液剤を噴霧するユニットである。
図4は、スプレーキャリッジ40の斜視図である。
図4に示すように、スプレーユニット30は、スプレー装置31と、スプレー装置31に接続された液剤タンク32と、ミストキャッチャ33と、を備えている。なお、
図4では、プリントキャリッジ22やガイドレール51などの一部の部材の図示を省略している。
図4に示すように、スプレー装置31は、液剤が噴霧されるスプレーノズル31aと、液剤供給口31cと、バルブ制御エア供給口31dと、霧化用エア供給口31eと、を備えている。
【0034】
液剤タンク32は、被印刷物5に噴霧される液剤を貯留するタンクであり、スプレー装置31の液剤供給口31cに接続されている。液剤タンク32は、液剤が貯留される筒状の貯留部32aと、液剤タンク32の上部に設けられた液圧制御エア供給口32bと、を備えている。
【0035】
図5は、スプレーユニット30の液剤供給系統の模式図である。
図5に示すように、スプレーユニット30の液剤供給系統は、エアコンプレッサ91と、エアコンプレッサ91に接続されたエア供給路92と、を備えている。エアコンプレッサ91は、圧縮空気を発生させる圧縮装置の一例である。本実施形態では、エアコンプレッサ91は、プリンタ10に内蔵されており、プリンタ10に備えられている。ただし、プリンタ10は、エアコンプレッサ91を備えていなくてもよく、圧縮空気は、例えば、外部の圧縮装置から供給されてもよい。
【0036】
エアコンプレッサ91は、スプレーキャリッジ40とは別の場所に、スプレーキャリッジ40とは離間して設けられている。これにより、スプレーキャリッジ40が小型化、軽量化されている。
図1に示すように、本実施形態では、エアコンプレッサ91は、プリンタ本体11の内部に設けられた収容空間11aに収容されている。収容空間11aは、支持台12の載置面12aよりも下方に設けられている。
【0037】
図5に示すように、エア供給路92は、エアコンプレッサ91に接続された共通流路92aと、そこから分岐した3つの流路92b、92c、および92dと、を含んでいる。液圧制御エア流路92bは、液剤タンク32の液圧制御エア供給口32bに接続され、スプレー装置31に液剤を供給するための空気を供給する。バルブ制御エア供給路92cは、スプレー装置31のバルブ制御エア供給口31dに接続され、後述する開閉部材31b(
図6参照)が噴霧口115(
図6参照)を開閉するための空気を供給する。霧化用エア供給路92dは、スプレー装置31の霧化用エア供給口31eに接続され、液剤を霧化するための空気を供給する。
【0038】
図6は、スプレー装置31の断面図である。本実施形態では、
図6に示すように、スプレー装置31は、液剤室111と、空気室112とを備えている。液剤室111および空気室112は、スプレー装置31の内部に形成されている。液剤室111は、液剤タンク32から供給された液剤が一時的に貯留されるものである。液剤室111には、液剤供給口31c、および、バルブ制御エア供給口31dが形成されている。液剤室111は、液剤供給口31cを介して液剤タンク32に接続されている。液剤室111は、バルブ制御エア供給口31dを介してエア供給路92のバルブ制御エア供給路92cに接続されている。また、液剤室111には、液剤が噴霧する噴霧口115が形成されている。噴霧口115は、スプレーノズル31aと連通している。液剤室111内の液剤は、噴霧口115を介してスプレーノズル31aから噴霧される。
【0039】
本実施形態では、スプレー装置31は、噴霧口115を開閉可能な開閉部材31bを備えている。開閉部材31bは、液剤室111内に配置されており、液剤室111内で噴霧口115を開閉するように構成されている。本実施形態では、開閉部材31bは、棒状のものであり、いわゆるニードルである。開閉部材31bの先端で噴霧口115を閉鎖する。ここでは、開閉部材31bは、矢印A1に示すように、上下方向に移動する。開閉部材31bが下方に移動したとき、噴霧口115は開閉部材31bによって閉鎖される。開閉部材31bが上方に移動したとき、噴霧口115は開放される。
【0040】
開閉部材31bが噴霧口115を開放することで、液剤供給口31cとスプレーノズル31aとが連通される。開閉部材31bは、バルブ制御エア供給口31dに圧縮空気が供給されると、
図6に示すように、噴霧口115を開放し、圧縮空気の供給が途絶えると、噴霧口115を閉鎖するように構成されている。液剤タンク32の液圧制御エア供給口32b(
図5参照)に圧縮空気が供給されるとともに、開閉部材31bによって噴霧口115が開放されると、スプレーノズル31aに液剤が供給される。
【0041】
図6に示すように、空気室112は、液剤室111の周囲に配置されている。空気室112には、霧化用エア供給口31eが形成されている。空気室112は、霧化用エア供給口31eを介して霧化用エア供給路92dに接続されている。空気室112には、エアコンプレッサ91(
図5参照)からの空気が一時的に貯留される。本実施形態では、空気室112には、空気口116が形成されている。空気口116には、スプレーノズル31aが挿通されている。空気室112内の空気は、空気口116から吹き付けられる。
【0042】
本実施形態では、液剤は、空気口116から吹き付けられた空気、ここでは霧化用エア供給口31eに供給された圧縮空気によって微粒化(霧化とも言う)され、スプレーノズル31aから噴霧される。なお、スプレーユニット30の構成は特に限定されない。スプレーユニット30は、例えば、電気駆動のスプレーバルブを備えていてもよい。
【0043】
図5に示すように、共通流路92aには、エアコンプレッサ91で発生させた圧縮空気の圧力を調整するとともにオイルミストなどを除去するフィルタレギュレータ93が設けられている。液圧制御エア流路92bには、下流側の圧縮空気の圧力を調整するレギュレータ94と、流路を開閉する電磁弁95と、が設けられている。
【0044】
バルブ制御エア供給路92cには、流路を開閉する電磁弁98が設けられている。霧化用エア供給路92dには、下流側の圧縮空気の圧力を調整するレギュレータ99と、流路を開閉する電磁弁100と、が設けられている。ただし、エア供給路92の構成は、上記したものには限定されない。例えば、各電磁弁95、98、または100は、他の方式のバルブ、例えば、エア駆動式のバルブに置き換えられてもよい。
【0045】
エア供給路92のうち、少なくとも、スプレーユニット30に接続される部分は、可撓性を有するチューブによって構成される。かかる部分は、プリンタ本体11とスプレーキャリッジ40との間に渡された部分である。本実施形態では、エア供給路92の全部が可撓性を有するチューブからなっている。ただし、エア供給路92のスプレーユニット30から離れた一部は、可撓性を有するチューブによって構成されず、例えば、定型性を有する素材によって形成されていてもよい。本実施形態の場合には、エア供給路92のうち、液圧制御エア流路92b、バルブ制御エア供給路92c、および霧化用エア供給路92dの各電磁弁95、98、および100よりも下流部分92b1、92c1、および92d1が、可撓性を有するチューブによって構成される。ただし、エア供給路92の電磁弁95、98、または100よりも下流に他の部材が設けられている場合は、当該部材よりも下流部分だけが可撓性を有するチューブによって構成されていてもよい。以下、スプレーユニット30に接続されたチューブにも、92b1、92c1、および92d1の符号を使用する。
【0046】
スプレー装置31には、液剤タンク32およびエア供給路92のチューブ92c1、92d1が接続されている。スプレー装置31は、エアコンプレッサ91が発生させた圧縮空気によって液剤を微粒化して、被印刷物5に向かって噴霧する。
図4に示すように、液剤が噴霧されるスプレーノズル31aは、スプレー装置31の下端に設けられている。スプレーノズル31aから噴霧される液剤は、下方に向かって広がるように飛翔する。そのため、スプレーノズル31aは、広い範囲に一度に液剤を塗布することができる。ミストキャッチャ33は、液剤の噴霧時に発生する液剤のミストを回収するためのものである。ミストキャッチャ33は、スプレーノズル31aの周囲を囲むように、スプレーキャリッジ40に取り付けられている。ミストキャッチャ33内のミストは、ミスト回収口33aに吸い込まれて回収される。図示は省略するが、ミスト回収口33aにも可撓性を有するチューブが接続されている。
【0047】
本実施形態では、
図4に示すように、スプレーキャリッジ40は、スプレー装置31を支持するスプレー装置支持部41と、チューブ類を保持するチューブ保持部42と、を備えている。スプレー装置支持部41は、上下方向および主走査方向Yに広がる平板状の部材である。スプレー装置支持部41の背面には、図示しない直動ブロックが固定されている。直動ブロックは、ガイドレール51に摺動可能に係合している。スプレー装置支持部41の背面には、ベルト52(
図1参照)も固定されている。スプレー装置支持部41の前面には、スプレーユニット30が固定されている。
【0048】
チューブ保持部42は、スプレー装置支持部41の上端部から後方(ガイドレール51の側)に向かって延びている。チューブ保持部42は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がっている。チューブ保持部42は、複数の保持リング42aを備えている。各保持リング42aは、環状に構成され、チューブ類を挿通可能である。保持リング42aには、液圧制御エア流路92b、バルブ制御エア供給路92c、および霧化用エア供給路92dの各チューブ92b1、92c1、92d1と、ミスト回収用のチューブとが挿通されている。
【0049】
チューブ92b1、92c1、92d1、およびミスト回収用のチューブは、チューブ保持部42の後方でケーブル類保護案内装置101に収容されている。ケーブル類保護案内装置101は、ガントリー80の中央部分81(
図1参照)に沿って設けられている。ケーブル類保護案内装置101は、スプレーキャリッジ40の主走査方向Yの位置に応じて屈曲位置が変化する管状の部材である。ケーブル類保護案内装置101は、スプレーキャリッジ40の移動によってチューブ92b1、92c1、92d1、およびミスト回収用のチューブが引っ張られたり、他の部材と摩擦したりすることを防止している。
【0050】
図1に示すように、制御装置120は、ガントリー80の右側部分82内に収容されている。
図7は、プリンタ10のブロック図である。
図7に示すように、制御装置120は、プリントヘッド20、光照射装置21、インクポンプ25、キャリッジモータ53、ガントリーモータ61、ロック用アクチュエータ73、液圧制御エア流路92bの電磁弁95、バルブ制御エア供給路92cの電磁弁98、および霧化用エア供給路92dの電磁弁100にそれぞれ電気的に接続されており、それらを制御可能に構成されている。
図5に示すエアコンプレッサ91は、圧縮空気の圧力を一定に保つように自律的に駆動していてもよく、制御装置120によって制御されていてもよい。制御装置120の構成は特に限定されない。制御装置120は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。なお、制御装置120は必ずしもプリンタ10の内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ10の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されたコンピューなどであってもよい。
【0051】
制御装置120は、液圧制御エア流路92bの電磁弁95、バルブ制御エア供給路92cの電磁弁98、および霧化用エア供給路92dの電磁弁100を制御してスプレー装置31から液剤を噴霧するとともに、キャリッジモータ53を制御してスプレーキャリッジ40を主走査方向Yに移動させる。これにより、スプレーキャリッジ40の移動経路下方に液剤が塗布される。制御装置120は、ガントリー80の副走査方向Xの位置を移動させながら上記動作を繰り返すことにより、画像印刷の前処理または後処理用の液剤を被印刷物5上の所望の位置に塗布する。
【0052】
本実施形態では、
図7に示すように、制御装置120は、記憶部121と、攪拌制御部123と、噴霧制御部125と、印刷制御部127とを備えている。制御装置120の各部121~127は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。制御装置120の各部121~127は、1つまたは複数のプロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
【0053】
次に、プリンタ10によって被印刷物5に印刷する制御について説明する。以下の説明では、スプレー装置31から噴霧される液剤は、被印刷物5の下地処理用の処理液である。詳しくは、処理液としてホワイトインクを使用する。ただし、処理液として、プライマーインクを使用することも可能である。ここでは、スプレー装置31からの液剤の噴霧が、プリントヘッド20による画像の印刷に先立って行われる。
【0054】
図8は、プリンタ10によって印刷された後の被印刷物5を模式的に示した断面図である。
図8に示すように、本実施形態では、被印刷物5上に、印刷の前処理として、スプレー装置31から噴霧された液剤としてのホワイトインクによって形成された液剤層L1が形成される。そして、液剤層L1の上に、プリントヘッド20から吐出されたインクによって形成された印刷層L2が形成される。
【0055】
本実施形態では、液剤層L1の形成は、
図7の噴霧制御部125による噴霧制御によって行われる。噴霧制御部125は、支持台12に支持された被印刷物5に対してスプレー装置31から液剤を噴霧して液剤層L1を形成する。ここでは、噴霧制御部125は、
図5に示すように、液圧制御エア流路92bの電磁弁95、バルブ制御エア供給路92cの電磁弁98、および、霧化用エア供給路92dの電磁弁100を開放した状態にして、
図6に示すように、噴霧口115が開閉部材31bによって開放された状態にする。
【0056】
液剤層L1の形成では、
図1の破線で示すように、プリントキャリッジ22がホームポジションに移動される。この移動は、プリントキャリッジ22とスプレーキャリッジ40とが連結された状態で、噴霧制御部125によってスプレーキャリッジ40が移動されることによって行われる。次に、プリントキャリッジ22がロック装置によって移動不能に固定される。この状態で、噴霧制御部125は、主走査方向移動装置50を制御して、スプレーキャリッジ40を左方に動かして、スプレーキャリッジ40とプリントキャリッジ22とを分離する。これにより、スプレーキャリッジ40を、プリントキャリッジ22とは独立して移動させることが可能となる。ホームポジションに残ったプリントヘッド20には、キャップが装着される。これにより、スプレー装置31から噴霧された液剤がプリントヘッド20に付着することが防止される。
【0057】
次に、
図7の噴霧制御部125は、スプレーキャリッジ40だけを主走査方向Yに移動させながら、スプレー装置31から液剤を噴霧する。ここでは、液剤は、液剤を塗布するように設定されている主走査方向Yの領域にだけ噴霧される。この液剤を塗布するように設定されている主走査方向Yの領域は、
図7の記憶部121に予め記憶された印刷データ(図示せず)に記されている。本実施形態では、噴霧制御部125は、スプレーキャリッジ40を主走査方向Yに移動させる。そのため、主走査方向Yの所望の領域にだけ液剤を噴霧することができる。その後、噴霧制御部125は、ガントリー80を副走査方向X(例えば前方)に所定の距離、移動させることで、副走査方向Xに関する液剤の噴霧位置が変更される。プリンタ10は、ガントリー80の副走査方向Xの位置を順次変えながら、液剤を噴霧する動作を繰り返すことにより、液剤を被印刷物5上の所望の位置に噴霧することで、
図8に示すように、被印刷物5上に液剤層L1を形成することができる。
【0058】
被印刷物5上に液剤層L1が形成された後、液剤層L1上に印刷層L2が形成される。印刷層L2の形成は、
図7の印刷制御部127による印刷制御によって行われる。印刷制御部127は、支持台12に支持された被印刷物5に対してプリントヘッド20からインクを吐出して印刷層L2を形成する。ここでは、印刷層L2は、記憶部121に記憶された印刷データに記された画像が印刷されることで形成される。印刷層L2の形成では、まずスプレーキャリッジ40がホームポジションに移動する。ホームポジションにおいて、スプレーキャリッジ40がプリントキャリッジ22に連結される。その後、プリントキャリッジ22に対するロック装置のロックが解除される。この状態で、印刷制御部127は、主走査方向移動装置50を制御して、スプレーキャリッジ40と共にプリントキャリッジ22を主走査方向Yに移動させることができる。
【0059】
印刷制御部127は、ガントリー80を副走査方向X(例えば後方)に移動させることで、プリントキャリッジ22を副走査方向Xへ引き戻す。その後、印刷制御部127は、プリントキャリッジ22を主走査方向Yに移動させつつ、プリントヘッド20からインクを被印刷物5に吐出する。ここでは、
図7の記憶部121に記憶された印刷データに基づいて、印刷制御部127は、主走査方向Yの所望の領域にだけインクを吐出する。その後、印刷制御部127は、ガントリー80を副走査方向X(例えば前方)に所定の距離、移動させることで、副走査方向Xに関する印刷層L2を形成する位置が変更される。プリンタ10は、ガントリー80の副走査方向Xの位置を順次変えながら、プリントヘッド20からインクを吐出する動作を繰り返すことにより、被印刷物5の上(詳しくは液剤層L1の上)に印刷層L2を形成することができる。
【0060】
ところで、本実施形態では、液剤タンク32に貯留された液剤は、長時間使用されないことで沈殿することがあり得る。そのため、液剤タンク32内の液剤が沈殿した状態で、スプレー装置31による液剤の噴霧が行われて液剤層L1が形成されると、液剤層L1において色ムラが発生するおそれがあった。特に、本実施形態のように液剤がホワイトインクの場合、ホワイトインクには、沈殿し易い成分が含まれているため、沈殿し易いと考えられている。
【0061】
そこで、本実施形態では、
図7の攪拌制御部123によって液剤タンク32に貯留された液剤が攪拌される。このことで、印刷時において、液剤タンク32内の液剤が沈殿していない状態で、液剤の噴霧を行うことができる。
図9は、攪拌制御部123による攪拌制御の状態を示した模式図である。ここでは、攪拌制御部123は、
図9に示すように、被印刷物5に印刷しない非印刷時、スプレー装置31から液剤を噴霧させずに、矢印A2のように、スプレーキャリッジ40を主走査方向Yに往復移動させる。このことで、スプレーキャリッジ40に設けられた液剤タンク32は、主走査方向Yに移動するため、液剤タンク32に貯留された液剤は、揺れ動くことで攪拌される。
【0062】
ここで、非印刷時とは、噴霧制御部125による液剤層L1の形成や、印刷制御部127による印刷層L2の形成が行われていないときのことをいう。攪拌制御部123による攪拌制御は、印刷前(例えば液剤層L1の形成の直前)に行われる制御である。また、上記攪拌制御は、非印刷時において、定期的(例えば所定の時間が経過する毎)に行われる制御であってもよい。
【0063】
噴霧制御部125による攪拌制御が行われているとき、スプレーキャリッジ40は、プリントキャリッジ22(
図2参照)から切り離された状態で、単独で主走査方向Yに移動する。ただし、攪拌制御が行われているとき、スプレーキャリッジ40には、プリントキャリッジ22が連結されており、スプレーキャリッジ40とプリントキャリッジ22とが連結して主走査方向Yに移動してもよい。
【0064】
攪拌制御部123は、攪拌制御を行うとき、
図5に示すように、液圧制御エア流路92bの電磁弁95、バルブ制御エア供給路92cの電磁弁98、および、霧化用エア供給路92dの電磁弁100を閉鎖した状態にする。このことによって、
図6に示すように、スプレー装置31の液剤室111に液剤タンク32から液剤が供給されず、噴霧口115が開閉部材31bによって閉鎖された状態になる。また、スプレー装置31の空気室112には、エアコンプレッサ91(
図5参照)からの空気が供給されない。そのため、攪拌制御のとき、スプレー装置31のスプレーノズル31aから液剤が噴霧されなくすることができる。
【0065】
本実施形態では、攪拌制御部123は、
図9に示すように、スプレーキャリッジ40を主走査方向Yに所定の往復回数、往復移動させる。ここで、所定の往復回数の具体的な数値は特に限定されるものではなく、液剤の種類によって適宜に設定される回数である。所定の往復回数は、例えば5回~30回、好ましくは8回~25回、特に好ましくは10回~20回である。なお、この往復回数は、
図7の記憶部121に予め記憶されている。
【0066】
攪拌制御のとき、攪拌制御部123は、スプレーキャリッジ40を、主走査方向Yに短い距離を往復移動させる。ここでは、
図9に示すように、支持台12の主走査方向Yの長さは、支持台長さL11である。攪拌制御部123は、支持台長さL11よりも短い距離、スプレーキャリッジ40を主走査方向Yに往復移動させる。例えば攪拌制御部123によるスプレーキャリッジ40が主走査方向Yに移動する距離を、攪拌距離L12とする。攪拌距離L12は、支持台長さL11よりも短い。例えば攪拌距離L12は、支持台長さL11の2/3以下であってもよいし、1/2以下であってもよい。また、攪拌距離L12は、支持台長さL11の1/3以下であってもよいし、1/4以下であってもよい。また、攪拌距離L12は、例えばガイドレール51(
図1参照)の主走査方向Yの長さよりも短く、例えば2/3以下であってもよいし、1/2以下であってもよい。攪拌距離L12は、ガイドレール51の主走査方向Yの長さの1/3以下であってもよいし、1/4以下であってもよい。
【0067】
図10は、攪拌制御部123による攪拌制御において、主走査方向Yを1往復する際のスプレーキャリッジ40の移動速度を示したグラフである。
図10において横軸は時間を示し、縦軸は速度を示している。
図10に示すように、攪拌制御部123によってスプレーキャリッジ40が主走査方向Yに1往復する際の全時間範囲TR1は、加速範囲TR11と、減速範囲TR12とを有している。加速範囲TR11とは、スプレーキャリッジ40が加速する範囲のことをいう。減速範囲TR12とは、スプレーキャリッジ40が減速する範囲のことをいう。
【0068】
図10の一例では、時間T11から時間T12までの間、スプレーキャリッジ40が主走査方向Yの右から左へ移動している。時間T12から時間T13までの間、スプレーキャリッジ40が主走査方向Yの左から右へ移動している。本実施形態では、加速範囲TR11と減速範囲TR12とは同じ時間であるが、異なっていてもよい。
【0069】
本実施形態では、加速範囲TR11と減速範囲TR12とは連続している。ここでは、加速範囲TR11と減速範囲TR12とが交互に繰り返されている。加速範囲TR11と減速範囲TR12との間には、スプレーキャリッジ40が等速、すなわち一定の速度で移動する等速範囲が存在しない。
【0070】
図11は、噴霧制御部125によるスプレーキャリッジ40の第1の平均速度S1、攪拌制御部123によるスプレーキャリッジ40の第2の平均速度S2、および、印刷制御部127によるプリントキャリッジ22の第3の平均速度S3の関係を示した図である。
図11に示すように、ここでは、噴霧制御部125は、液剤層L1を形成する際、第1の平均速度S1でスプレーキャリッジ40を主走査方向Yに移動させる。攪拌制御部123は、液剤タンク32内の液剤を攪拌する際、第2の平均速度S2でスプレーキャリッジ40を主走査方向Yに移動させる。また、印刷制御部127は、印刷層L2を形成する際、第3の平均速度S3でプリントキャリッジ22を主走査方向Yに移動させる。
【0071】
ここで、第2の平均速度S2は、第1の平均速度S1よりも速い。第2の平均速度S2は、第3の平均速度S3よりも速い。すなわち、攪拌制御部123は、噴霧制御部125による液剤層L1を形成する際のスプレーキャリッジ40の移動速度よりも速い移動速度で、スプレーキャリッジ40を主走査方向Yに移動させる。また、攪拌制御部123は、印刷制御部127による印刷層L2を形成する際のプリントキャリッジ22の移動速度よりも速い移動速度で、スプレーキャリッジ40を主走査方向Yに移動させる。
【0072】
本実施形態では、第1の平均速度S1と、第3の平均速度S3は同じであるが、異なっていてもよい。すなわち、噴霧制御部125は、印刷制御部127による印刷層L2を形成する際のプリントキャリッジ22の移動速度と同じ移動速度で、スプレーキャリッジ40を主走査方向Yに移動させてもよいし、印刷制御部127によるプリントキャリッジ22の移動速度と異なる移動速度で、スプレーキャリッジ40を移動させてもよい。
【0073】
詳しい図示は省略するが、攪拌制御部123は、噴霧制御部125によるスプレーキャリッジ40の最大速度よりも速い最大速度で、スプレーキャリッジ40を主走査方向Yに移動させてもよい。また、攪拌制御部123は、印刷制御部127によるプリントキャリッジ22の最大速度よりも速い最大速度で、スプレーキャリッジ40を主走査方向Yに移動させてもよい。
【0074】
以上、本実施形態では、
図1に示すように、プリンタ10は、被印刷物5を支持する支持台12と、プリントヘッド20と、液剤タンク32と、エア供給路(
図5参照)と、スプレー装置31と、スプレーキャリッジ40と、主走査方向移動装置50と、制御装置120とを備えている。プリントヘッド20は、支持台12に支持された被印刷物5に向かってインクを吐出する。液剤タンク32は、被印刷物5に噴霧される液剤を貯留する。
図5に示すように、エア供給路92は、圧縮空気を発生させるエアコンプレッサ91に接続されている。スプレー装置31は、液剤タンク32およびエア供給路92に接続され、圧縮空気によって液剤を微粒化して、支持台12に支持された被印刷物5に向かって液剤を噴霧する。
図4に示すように、スプレーキャリッジ40には、液剤タンク32およびスプレー装置31が設けられている。
図1に示すように、主走査方向移動装置50は、スプレーキャリッジ40を主走査方向Yに移動させる。制御装置120は、被印刷物5に印刷しない非印刷時、スプレー装置31から液剤を噴霧させずに、スプレーキャリッジ40を主走査方向Yに往復移動させて、液剤タンク32に貯留された液剤を攪拌させる攪拌制御部123(
図7参照)を備えている。
【0075】
このことによって、非印刷時において、攪拌制御部123によってスプレーキャリッジ40と共に液剤タンク32が主走査方向Yに往復移動される。そのため、液剤タンク32に貯留された液剤が沈殿している場合であっても、液剤タンク32が主走査方向Yに往復移動することで、液剤が揺れ動いて攪拌される。よって、液剤が攪拌された状態で、スプレー装置31から被印刷物5に向かって液剤が噴霧されることができるため、被印刷物5における噴霧された部分に色ムラが発生し難くすることができる。
【0076】
本実施形態では、
図9に示すように、支持台12における主走査方向Yの長さは、支持台長さL11である。攪拌制御部123は、支持台長さL11よりも短い距離(ここでは攪拌距離L12)、スプレーキャリッジ40を主走査方向Yに往復移動させる。このことによって、攪拌制御部123による攪拌制御のとき、液剤タンク32は、短い距離を主走査方向Yに往復移動するため、液剤タンク32内の液剤は、揺れ動き易い。よって、液剤タンク32に貯留された液剤を攪拌させ易くすることができる。
【0077】
本実施形態では、
図10に示すように、攪拌制御部123によってスプレーキャリッジ40が主走査方向Yに1往復する際の全時間範囲TR1は、スプレーキャリッジ40が加速する加速範囲TR11と、スプレーキャリッジ40が減速する減速範囲TR12と、を有している。加速範囲TR11と減速範囲TR12は連続している。このように、加速範囲TR11と減速範囲TR12とが連続することで、加速範囲TR11と減速範囲TR12との間に、スプレーキャリッジ40が等速で移動する等速範囲が存在しない。ここで、加速範囲TR11と減速範囲TR12とでは、液剤タンク32内の液剤は、揺れ動き易い。よって、液剤タンク32に貯留された液剤を攪拌させ易くすることができる。
【0078】
本実施形態では、制御装置120は、スプレーキャリッジ40を主走査方向Yに移動させつつ、支持台12に支持された被印刷物5に対して、スプレー装置31から液剤を噴霧して液剤層L1(
図8参照)を形成する噴霧制御部125(
図7参照)を備えている。ここでは、攪拌制御部123によって液剤タンク32内の液剤が攪拌された後に、液剤層L1の形成が行われるため、液剤層L1に色ムラが発生し難くすることができる。
【0079】
本実施形態では、噴霧制御部125は、
図11に示すように、第1の平均速度S1でスプレーキャリッジ40を主走査方向Yに移動させる。攪拌制御部123は、第1の平均速度S1よりも速い第2の平均速度S2でスプレーキャリッジ40を主走査方向Yに移動させる。このことによって、攪拌制御のとき、液剤タンク32を主走査方向Yに速く移動させることができる。よって、液剤タンク32内の液剤は、揺れ動き易い。したがって、液剤タンク32に貯留された液剤を攪拌させ易くすることができる。
【0080】
本実施形態では、
図1に示すように、プリンタ10は、プリントヘッド20が設けられたプリントキャリッジ22を備えている。主走査方向移動装置50は、プリントキャリッジ22を主走査方向Yに移動させる。制御装置120は、プリントキャリッジ22を主走査方向Yに移動させつつ、支持台12に支持された被印刷物5に対して、プリントヘッド20からインクを吐出して印刷層L2(
図8参照)を形成する印刷制御部127(
図7参照)を備えている。印刷制御部127は、
図11に示すように、第3の平均速度S3でプリントキャリッジ22を主走査方向Yに移動させる。攪拌制御部123は、第3の平均速度S3よりも速い第2の平均速度S2でスプレーキャリッジ40を主走査方向Yに移動させる。このことによって、攪拌制御のとき、液剤タンク32を主走査方向Yに速く移動させることができる。よって、液剤タンク32内の液剤は、揺れ動き易い。したがって、液剤タンク32に貯留された液剤を攪拌させ易くすることができる。
【0081】
本実施形態では。プリンタ10は、
図2に示すように、スプレーキャリッジ40とプリントキャリッジ22とを連結したり分離したりする連結機構70を備えている。このことによって、攪拌制御部123による攪拌制御のとき、スプレーキャリッジ40からプリントキャリッジ22を切り離した状態で、スプレーキャリッジ40を単独で主走査方向Yに移動させることができる。よって、より小さい電力で攪拌制御を行うことができる。
【0082】
本実施形態では。液剤タンク32に貯留されている液剤は、ホワイトインクである。ホワイトインクは、比較的に沈殿し易いインクである。よって、ホワイトインクが貯留されている液剤タンク32に対して、攪拌制御部123による攪拌制御を行うことで、ホワイトインクに対して攪拌することができる。したがって、攪拌制御は、ホワイトインクが貯留されている液剤タンク32に対して特に有用である。
【0083】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上記した実施形態の他にも、ここに開示する技術は種々の態様で実施できる。例えば、上記した実施形態では、スプレーユニット30(例えばスプレー装置31および液剤タンク32)の数量は1つであり、プリントヘッド20以外の部材から塗布できる液剤の種類は1種類であった。しかし、プリンタは複数のスプレー装置、および、複数の液剤タンクを備えていてもよく、複数種類の液剤を噴霧できてもよい。複数のスプレー装置、および、複数の液剤タンクは、それぞれ別のスプレーキャリッジに保持されていてもよく、その一部または全部が同じスプレーキャリッジに保持されていてもよい。
【0084】
上記した実施形態では、エアコンプレッサ91は、スプレーキャリッジ40以外の場所に設けられていた。しかし、エアコンプレッサは、スプレーキャリッジに設けられていてもよい。
【0085】
上記した実施形態では、
図11に示すように、被印刷物5の上に液剤層L1を形成し、液剤層L1の上に印刷層L2を形成していた。しかしながら、被印刷物5の上に印刷層L2を形成し、印刷層L2の上に液剤層L1を形成してもよい。この場合、液剤は、印刷の後処理用のトップコート液(例えば透明インク)であってもよい。
【0086】
その他、プリンタの構成は、特に言及がない限り、限定されない。例えば、ここに開示する技術は、フラットベッドタイプの小型プリンタや、ロールメディアに印刷するプリンタなどに対しても利用できる。印刷方式も特に限定されない。インクは光硬化性インクの他、例えば、溶剤インクや水性インクなどであってもよい。
【符号の説明】
【0087】
5 被印刷物
10 プリンタ
12 支持台
20 プリントヘッド
22 プリントキャリッジ
31 スプレー装置
32 液剤タンク
40 スプレーキャリッジ
50 主走査方向移動装置
70 連結機構
91 エアコンプレッサ(圧縮装置)
92 エア供給路
120 制御装置
123 攪拌制御部
125 噴霧制御部
127 印刷制御部