(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130096
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】中皿および食品容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/32 20060101AFI20230912BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B65D81/32 K
B65D77/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034570
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】398005560
【氏名又は名称】タカギ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼波 昌和
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 雅之
【テーマコード(参考)】
3E013
3E067
【Fターム(参考)】
3E013AD22
3E013AE06
3E013BA11
3E013BB06
3E013BB08
3E013BC04
3E013BD01
3E013BE02
3E013BH65
3E013BH66
3E013BH69
3E067AA11
3E067AB01
3E067AC01
3E067BA07A
3E067BB14A
3E067BC02A
3E067CA10
(57)【要約】
【課題】食品の乾燥と伸びを抑制できる中皿を提供する。
【解決手段】容器本体と蓋体との間に挟まれて固定される樹脂製の中皿である。中皿は、底部と、底部の外周から上側に伸びる壁部とを有する。底部は、複数の孔を有し、平面視において、孔における最大の内接円が底部と内接する点同士を結んだ方向と直交する方向の最大距離が1.0mmを超えたときに、最大の内接円の直径は、0.3mm以上、0.9mm以下であり、最大距離が1.0mm以下のときに、最大の内接円の直径は、0.3mm以上、1.0mm以下である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と蓋体との間に挟まれて固定される樹脂製の中皿であって、
前記中皿は、底部と、前記底部の外周から上側に伸びる壁部とを有し、
前記底部は、複数の孔を有し、
平面視において、前記孔における最大の内接円が前記底部と内接する点同士を結んだ方向と直交する方向の最大距離が1.0mmを超えたときに、最大の前記内接円の直径は、0.3mm以上、0.9mm以下であり、
前記最大距離が1.0mm以下のときに、最大の前記内接円の直径は、0.3mm以上、1.0mm以下である中皿。
【請求項2】
前記中皿の前記孔の開口部下側に沿って突起部が形成されており、
前記突起部の前記中皿の前記底部からの高さが、複数の前記孔における最大の前記内接円の直径の平均の10%以上、30%以下である、
請求項1に記載の中皿。
【請求項3】
前記突起部は、前記孔の内側から外側に向かう方向における幅が0.1mm以上、0.5mmである、
請求項2に記載の中皿。
【請求項4】
容器本体と蓋体との間に挟まれて固定される請求項1から3のいずれか一項に記載の中皿を有する食品容器。
【請求項5】
前記蓋体は、空気抜開口部を有し、
前記空気抜開口部の開口総面積は、複数の前記孔の開口総面積の1000分の1以上、1分の3以下である、
請求項4に記載の食品容器。
【請求項6】
前記蓋体と前記中皿によって囲まれる空間体積は、140cm3以上、2400cm3以下である請求項4または5に記載の食品容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中皿および食品容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
調理済みの麺と麺つゆを分離して収納するテイクアウト用容器が食品容器として市販されている。例えば、特許文献1には、丼鉢状の容器本体、蓋体および中皿から構成される食品容器が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された中皿は、孔部が形成された底壁と、底壁の縁部から上側に延びる外縁部を有し、外縁部が容器本体に接して宙吊り状態で支持されている。特許文献1に開示された食品容器は、持ち帰る間に麺が伸びることを防ぐために、中皿上にゆでられた麺、容器本体に温められた麺つゆを入れた状態でテイクアウトされ、食する直前に、中皿上の麺を容器の中の麺つゆに落として食する。
【0004】
特許文献1において、麺および麺つゆは、双方が中皿に投入される。麺つゆは、中皿に形成された孔部を通して容器本体に落とし、麺は中皿に残ることで麺と麺つゆが分離される。麺および麺つゆ中皿に投入された後には、容器本体の開口部を蓋体で閉塞する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
容器本体に対して蓋体を開閉する際の作業性を向上させるためには、蓋体に空気抜きの孔が必要である。蓋体に空気抜きの孔が設けられていない場合、冷却により食品容器内の空気体積収縮により容器内が負圧となり蓋体が開けにくくなる。
一方、蓋体に空気抜きの孔が設けられた場合は、中皿上の麺が乾燥するという問題が生じる。
【0007】
上述した麺つゆを落とすための孔部は、麺つゆからの水蒸気が通過可能である点で中皿上の麺の乾燥を抑制できるが、運搬時に容器本体に貯留された麺つゆが飛び跳ねて孔部を介して中皿に流入し、麺が伸びるという問題が生じる。
【0008】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、食品の乾燥と伸びを抑制できる中皿および食品容器を提供することを目的とする。
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、中皿における孔の開口寸法を所定の数値の範囲内とすることで、食品の乾燥抑制と伸びの抑制を両立できることを見出し、本発明の中皿および食品容器を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は下記の態様を有する。
[1]容器本体と蓋体との間に挟まれて固定される樹脂製の中皿であって、前記中皿は、底部と、前記底部の外周から上側に伸びる壁部とを有し、前記底部は、複数の孔を有し、平面視において、前記孔における最大の内接円が前記底部と内接する点同士を結んだ方向と直交する方向の最大距離が1.0mmを超えたときに、最大の前記内接円の直径は、0.3mm以上、0.9mm以下であり、前記最大距離が1.0mm以下のときに、最大の前記内接円の直径は、0.3mm以上、1.0mm以下である中皿。
[2]前記中皿の前記孔の開口部下側に沿って突起部が形成されており、前記突起部の前記中皿の前記底部からの高さが、複数の前記孔における最大の前記内接円の直径の平均の10%以上、30%以下である、[1]に記載の中皿。
[3]前記突起部は、前記孔の内側から外側に向かう方向における幅が0.1mm以上、0.5mmである、[2]に記載の中皿。
[4]容器本体と蓋体との間に挟まれて固定される[1]から[3]のいずれか一項に記載の中皿を有する食品容器。
[5]前記蓋体は、空気抜開口部を有し、前記空気抜開口部の開口総面積は、前記複数の孔の開口総面積の1000分の1以上、1分の3以下である、[4]に記載の食品容器。
[6]前記蓋体と前記中皿によって囲まれる空間体積は、140cm3以上、2400cm3以下である[4]または[5]に記載の食品容器。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、食品の乾燥と伸びを抑制できる中皿および食品容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態を示す図であって、食品容器100の組立断面略図である。
【
図2】
図1における容器本体1の左側上端部を拡大した断面図である。
【
図5】平面視形状が楕円状の孔33を例示した平面図である。
【
図7】最大距離Lと最大の内接円の直径Dとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の中皿および食品容器の実施の形態を、
図1から
図7を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0014】
図1は、食品容器100の組立断面略図である。
食品容器100の平面視における形状は任意であって、丸形の他、多角形や楕円形、小判形、長円形等であってもよい。また、食品容器100が多角形の場合において、各辺部は、直線状であってもよいし、外側に弧状に膨出する構成であってよい。各角部は円弧状であってよく、即ち角丸形状であってよい。
【0015】
食品容器100は、高さ方向で下側から順次配置された容器本体1と中皿3と蓋体5とを有する。食品容器100は、種々の食品(食材)を収容することができるものであって、食品を上下に分離した状態で収容して販売する用途に適している。食品容器100は、容器本体1と中皿3にそれぞれ独立して異なる種類の食品を収容することができる。
【0016】
より詳細には、食品容器100は、容器本体1に蓋体5を装着することによって容器本体1と蓋体5とによって収容空間が区画形成される。収容空間は中皿3によって上下二つの領域に区分され、中皿3よりも上側の上部収容空間6と、中皿3よりも下側の下部収容空間7に区分される。従って、下部収容空間7(下段)と上部収容空間6(上段)にそれぞれ第一の食品と第二の食品を分離した状態で収容できる。
【0017】
例えば、麺類の場合には、下部収容空間7にはダシやスープ等の汁類(液体)を入れ、上部収容空間6には麺や具の麺類(固体)を入れておくことができる。このように食材は種々のものであってよいが、特に、密封性が高い容器であることから水分や液体を含む食品、特に水分や液体の多い食品を収容するのに適している。
【0018】
これらの容器本体1と中皿3と蓋体5は、一例として、何れも真空成形や圧空成形等の各種の熱成形(シート成形)によって形成されている。
以下、容器本体1、蓋体5、中皿3の順に、具体的な構成の一例について説明する。
【0019】
[容器本体1]
容器本体1は、底面部10と周壁部11とフランジ部12とを備えている。容器本体1は、一例として、上側に開口し、高さ方向に延びる中心軸Jを中心とする平面視円形の丼型のものである。底面部10は平面視円形であって、その下面には種々の形状の脚部が突設されていてよい。
【0020】
周壁部11は、全体として中心軸Jを中心とする筒状であって、底面部10の周縁から上方に向けて全体として拡開しつつ立ち上がっている。詳細には、周壁部11は、底面部10の周縁から上方に向けて広がりつつ延びている。
【0021】
図2は、
図1における容器本体1の左側上端部を拡大した断面図である。
図2に示すように、周壁部11は、周壁主部110と、段差部111と、嵌合部112と、拡径部113とを備えている。周壁主部110は、底面部10の周縁から上方に延びる周壁部11の大部分を占める領域である。
【0022】
段差部111は、周壁主部110の上端から中心軸Jを中心とする径方向(以下、単に径方向と称する)の外側に延びる平面である。段差部111は、水平面である。嵌合部112は、段差部111における径方向の外側から上側に延びている。嵌合部112の内周面112aは、上側に向かうにつれて径方向の内側に向かう方向に傾斜している。内周面112aは、上側に向かうにつれて縮径している。拡径部113は、嵌合部112の上端から上側に向かうにつれて径方向の外側に向かう方向に傾斜している。拡径部113は、上側に向かうにつれて拡径している。
【0023】
フランジ部12は、拡径部113の上端から径方向の外側に延びている。フランジ部12は平面視円形の環状である。フランジ部12は、拡径部113から外側に向けて連続的に延びており、外側に向けて略水平に延びている。フランジ部12は、好ましくは、上面が上側凸の円弧状とすることが好ましい。
【0024】
[蓋体5]
図3は、蓋体5の平面図である。
図1および
図3に示すように、蓋体5は、天面部50と内側周壁部51と底面部52と外側周壁部53とフランジ部54と摘まみ部55を備えている。蓋体5は、容器本体1の開口部を閉塞する。蓋体5の平面視における形状は容器本体1のそれに対応したものであり、従って、蓋体5も平面視円形であり、蓋体5の天面部50や内側周壁部51、底面部52、外側周壁部53、フランジ部54は何れも円形の環状である。
【0025】
図3に示すように、天面部50は全領域に亘って平坦である。
図1および
図3に示すように、天面部50は、中心軸Jと同軸で貫通する空気抜開口部50aを有している。天面部50に空気抜開口部50aが設けられることで、容器内が負圧となり容器本体1に対して蓋体5が開けにくくなる等の不都合を抑制して作業性を向上できる。
【0026】
空気抜開口部50aの面積が大きい場合、容器内部が乾燥する。そのため、空気抜開口部50aの面積は小さいことが好ましいが、嵌合時に空気抜開口部50aからの空気の抜けを確保し、蓋体5と容器本体1の嵌合しやすさを確保するためには空気抜開口部50aの面積は0.7mm2以上であることが好ましく、3.0mm2以上であることがより好ましい、空気抜開口部50aが単一の丸孔である場合は、直径1.0mm以上であることが好ましく、直径2.0mm以上であることがより好ましい。
【0027】
内側周壁部51は、天面部50の周縁から下側に向かうにつれて径方向の内側に向かう方向に傾斜して延びている。内側周壁部51は、下側に向かうにつれて拡径している。底面部52は、内側周壁部51の下端から径方向の外側に向けて延びている。
【0028】
外側周壁部53は、底面部52における径方向の外側端部から上側に延びている。すなわち、底面部52は、内側周壁部51と外側周壁部53の下端同士を連結している。
図2には、内側周壁部51、底面部52および外側周壁部53の断面輪郭が二点鎖線で示されている。
【0029】
外側周壁部53は、第1周壁部53aと第2周壁部53bと拡径部53cを有している。第1周壁部53aは、底面部52における径方向の外側端部から上側に向かうにつれて径方向の外側に向かう方向に傾斜して延びている。第1周壁部53aは、上側に向かうにつれて拡径している。第2周壁部53bは、第1周壁部53aの上端から上側に向かうにつれて径方向の内側に向かう方向に傾斜して延びている。第2周壁部53bは、上側に向かうにつれて縮径している。第1周壁部53aと第2周壁部53bの交差部における径方向の位置は、嵌合部112における内周面112aよりも径方向の外側である。拡径部53cは、第2周壁部53bの上端から上側に向かうにつれて径方向の外側に向かう方向に傾斜して延びている。
【0030】
フランジ部54は、拡径部53cの上端から径方向の外側に延びている。フランジ部54は、全周に亘って形成されている。フランジ部54の形状は任意であるが、容器本体1を閉じた状態において容器本体1のフランジ部12を上方から覆う。フランジ部54は、好ましくは、容器本体1のフランジ部12の上面に接する。
フランジ部54と底面部52の高さ方向の距離は、容器本体1におけるフランジ部12の上面と段差部111の高さ方向の距離よりも短い。
従って、容器本体1の閉塞時に、フランジ部54がフランジ部12の上面に係合した際にも底面部52と段差部111は干渉しない。
【0031】
また、第1周壁部53aと第2周壁部53bの交差部における径方向の位置が、嵌合部112における内周面112aよりも径方向の外側であるため、容器本体1の閉塞時に容器本体1の内部に挿入された第1周壁部53aおよび第2周壁部53bは、嵌合部112に倣って周方向の内側に弾性変形する。すなわち、容器本体1の閉塞時に容器本体1の内部に挿入された第1周壁部53aおよび第2周壁部53bは、圧入される。
【0032】
嵌合部112における内周面112aは、上側に向かうにつれて径方向の内側に向かう方向に傾斜しているため、第1周壁部53aおよび第2周壁部53bの弾性復元力による垂直抗力は、下向きの成分を含んでいる。従って、第1周壁部53aおよび第2周壁部53bには、下向きの力が作用することになり、蓋体5を容器本体1から外れにくくすることができる。
【0033】
摘まみ部55は、フランジ部54の端縁から径方向の外側に突出している。摘まみ部55は、平面視半円状である。摘まみ部55は、中心軸Jを中心とする周方向における特定の箇所に一つ設けられている。摘まみ部55は、蓋体5が容器本体1を閉塞した際に、容器本体1のフランジ部12よりも径方向の外側に突出している。従って、摘まみ部55を摘まんで上側に引き上げることで、蓋体5を容器本体1から容易に外すことが可能になる。
【0034】
[中皿3]
中皿3は、底部30と突壁部31とフランジ部32とを備えている。
図1のように中皿3の平面視における形状は容器本体1のそれに対応したものであって、上述のように容器本体1が平面視円形であるので、それに対応して中皿3も平面視円形である。
【0035】
従って、底部30は平面視円形である。突壁部31は断面が山形の筒状である。フランジ部32は円形の環状である。中皿3は、容器本体1よりも浅い形状であって、容器本体1に収容される。中皿3はその全体が容器本体1内に入り込んだ状態となるが、中皿3が容器本体1に収容された状態において、中皿3の底部30は容器本体1の底面部10から上方に浮いた状態となる。すなわち、中皿3は、容器本体1と蓋体5との間に位置し、宙づり状態で固定される。
【0036】
図4は、中皿3の平面図である。
図4に示すように、中皿3は、底部30に複数の孔33と、複数のリブ(突部)34と、複数の突起(突部)35を備えている。複数の孔33は、径方向の内側に位置する孔領域33Aに配置されている。孔領域33Aは、径方向で最も外側に位置する孔における外側の縁同士を結んだ領域である。
図4においては、理解を容易にするために、二点鎖線で示される孔領域33Aの境界線は、孔33の外側に離れて図示されている。
【0037】
孔33は、底部30を高さ方向に貫通する。孔33は、一例として、底部30に対してレーザー光を相対的に走査(スキャン)することで形成される。底部30に対しレーザー光を相対移動させながらレーザー光を断続的に照射することで、複数の孔33を形成できる。この場合、孔33の平面視形状は、円形、長円、楕円、略矩形等となる。
【0038】
図5は、平面視形状が楕円状の孔33を例示した平面図である。
図5に示すように、平面視において、孔33における最大の内接円Cの直径をDとする。内接円Cが底部30と内接する点同士を結んだ方向と直交する方向の最大距離をLとする。最大距離Lが1.0mmを超えたときに、内接円Cの直径Dは、0.3mm以上、0.9mm以下であることが好ましい。最大距離Lが1.0mm以下のときに、内接円Cの直径Dは、0.3mm以上、1.0mm以下であることが好ましい。
【0039】
内接円Cの直径Dが上記の下限値未満の場合、下部収容空間7に収容された汁類からの水蒸気が孔33を介して上部収容空間6に十分に供給されず、上部収容空間6に収容された麺類の保湿効果が十分に得られず乾燥する可能性がある。
内接円Cの直径Dが上記の上限値を超えた場合、食品容器100の運搬時に容器本体1に貯留された汁類が飛び跳ねて孔33を介して中皿3に流入し、麺が伸びるという問題が生じる。
内接円Cの直径Dを上記の下限値以上とし、上記の上限値以下とすることで、上部収容空間6に収容された麺類の延びを抑制しつつ保湿効果を得ることができる。
【0040】
底部30の面積は、7000mm2以上、40000mm2以下であることが好ましい。
孔33の開口総面積は、2mm2以上、350mm2以下であることが好ましい。
この場合、(複数の孔33の開口総面積/底部30の面積)で表される底部30の開口率は、0.005 %以上、5%以下であることが好ましい。
孔33の開口総面積および底部30の開口率を上記の範囲とすることで、中皿3が直径100mm~200mmの円形状である場合、および一辺が100mm~200mmの矩形である場合に、麺類の延びを抑制しつつ保湿効果および中皿3の強度を保つことができる。
【0041】
上述した空気抜開口部50aの開口総面積は、複数の孔33の開口総面積の1000分の1以上、100分の1以下であることが好ましい。
空気抜開口部50aの開口総面積が複数の孔33の開口総面積の1000分の1未満の場合、容器本体1に対して蓋体5を開ける際の負圧解消が十分でなくなる可能性がある。
空気抜開口部50aの開口総面積が複数の孔33の開口総面積の100分の1を超えた場合、中皿3上の麺類が乾燥しやすくなる。
空気抜開口部50aの開口総面積を複数の孔33の開口総面積の1000分の1以上、100分の1以下とすることで、中皿3上の麺類の乾燥を抑制しつつ、容器本体1に対して蓋体5が開けやすくなる。
【0042】
また、孔領域33Aの面積が底部30の面積に占める割合としては、25%以上、90%以下であることが好ましい。
孔領域33Aが占める割合が25%未満の場合、底部30に載置された麺類に対して孔33を介して水蒸気を供給できる領域が狭くなり、麺類全体を保湿することが困難になる。孔領域33Aが占める割合が、90%を超えた場合、レーザー光を照射する際の加工限界によって孔領域33A全体に孔33を形成することが困難になる。
孔領域33Aが占める割合を25%以上、90%以下とすることで、孔33の形成に支障を来すことなく、麺類全体を保湿することが可能になる。
【0043】
図6は、
図5におけるA-A断面図である。
図6に示すように、レーザー光の照射により、底部30に孔33を形成した場合には、底部30の一部が溶融後に硬化することで、孔33の開口部下側に沿って突起部36Aが形成され、孔33の開口部上側に沿って第2突起部36Bが形成される。
【0044】
孔33の開口部下側に沿って突起部36Aが形成されることで、食品容器100の運搬時に容器本体1に貯留された汁類が下側から斜め方向に飛び跳ねた際に、突起部36Aが障壁となって、飛び跳ねた汁類が孔33を通過することを抑制できる。
孔33の開口部上側に沿って第2突起部36Bが形成されることで、上部収容空間6において水蒸気が結露して生じた水が孔33を介して下部収容空間7に落下することを抑制できる。そのため、本実施形態の中皿3では、結露に起因して汁類が薄くなることを抑制できる。
【0045】
突起部36Aの中皿3における底部30からの高さをh1(mm)とする。突起部36Aの孔33の内側から外側に向かう方向における幅をW1(mm)とする。第2突起部36Bの中皿3における底部30からの高さをh2(mm)とする。第2突起部36Bの孔33の内側から外側に向かう方向における幅をW2(mm)とする。
【0046】
幅W1は、0.1mm以上、0.5mm以下であることが好ましい。
幅W1が0.1mm未満の場合、飛び跳ねた汁類に対して障壁となりづらくなる。幅W1が0.5mmを超えた場合、レーザー光の照射時に突起部36Aを形成することが困難である。幅W1を0.1mm以上、0.5mm以下とすることで、飛び跳ねた汁類に対する障壁を容易に形成することが可能になる。
【0047】
高さh1は、複数の孔33における内接円Cの直径Dの平均の10%以上、30%以下であることが好ましい。
高さh1が、上記内接円Cの直径Dの平均の10%未満の場合、下側から斜め方向に飛び跳ねた汁類に対して障壁となりづらくなる。高さh1が、上記内接円Cの直径Dの平均の30%を超えた場合、レーザー光の照射時に突起部36Aを形成することが困難である。
高さh1を複数の孔33における内接円Cの直径Dの平均の10%以上、30%以下とすることで、飛び跳ねた汁類に対する障壁を容易に形成することが可能になる。
【0048】
幅W2は、0.1mm以上、0.5mm以下であることが好ましい。
幅W2が0.1mm未満の場合、水蒸気が結露して生じた水に対する隔壁となりづらくなる。幅W2が0.5mmを超えた場合、レーザー光の照射時に第2突起部36Bを形成することが困難である。幅W2を0.1mm以上、0.5mm以下とすることで、水蒸気が結露して生じた水に対する隔壁を容易に形成することが可能になる。
【0049】
高さh2は、複数の孔33における内接円Cの直径Dの平均の10%以上、30%以下であることが好ましい。
高さh2が、上記内接円Cの直径Dの平均の10%未満の場合、水蒸気が結露して生じた水に対する隔壁となりづらくなる。高さh2が、上記内接円Cの直径Dの平均の30%を超えた場合、レーザー光の照射時に第2突起部36Bを形成することが困難である。
高さh2を複数の孔33における内接円Cの直径Dの平均の10%以上、30%以下とすることで、水蒸気が結露して生じた水に対する隔壁を容易に形成することが可能になる。
【0050】
図4に戻り、複数のリブ34は、孔領域33Aよりも径方向の外側に配置されている。複数のリブ34のそれぞれは、孔領域33Aよりも径方向の外側の位置から径方向の外側に延びている。複数のリブ34のそれぞれは、底部30における周縁の端部まで延びている。複数のリブ34は、中心軸Jを中心とする周方向に間隔をあけて全周に亘って配置されている。リブ34の径方向と直交する断面形状は、上側に凸となる半円状である。
従って、複数のリブ34のそれぞれは、中皿3における底部30に収容された麺類に対して径方向に延びる直線で線接触した状態で下側から支持する。これにより、中皿3における底部30に収容された麺類は、リブ34に付着しづらくなり、中皿3から容易に取り出すことができる。
【0051】
複数の突起35は、孔領域33Aよりも径方向の外側に配置されている。複数の突起35のそれぞれは、平面視で点状に配置されている。突起35は、径方向に沿って複数配列されている。突起35は、周方向に間隔をあけて配置されたリブ34同士の間に配列されている。複数の突起35のそれぞれは、上側に突出する角錐状である。複数の突起35のそれぞれは、四角錐状である。従って、複数の突起35のそれぞれは、中皿3における底部30に収容された麺類に対して点接触した状態で下側から支持する。これにより、中皿3における底部30に収容された麺類は、突起35に付着しづらくなり、中皿3から容易に取り出すことができる。
【0052】
図1に戻り、突壁部31は、内側突壁部31Aと外側突壁部31Bとを有する。
内側突壁部31Aは、底部30における周方向の端部から上側に延びる。内側突壁部31Aは、上側に向かうにつれて径方向の外側に向かう方向に傾斜している。内側突壁部31Aには、リブ34が延びている。外側突壁部31Bは、内側突壁部31Aの上端から下側に延びる。外側突壁部31Bは、下側に向かうにつれて径方向の外側に向かう方向に傾斜している。
【0053】
フランジ部32は、外側突壁部31Bの下端から径方向の外側に延びる。フランジ部32は、切欠部32Aを除いて全周に亘って形成されている。フランジ部32は、水平面である。
図4に示すように、フランジ部32には、切欠部32Aが形成されている。切欠部32Aは、周方向に間隔をあけて複数配置されている。切欠部32Aは、90°間隔で4箇所に配置されている。切欠部32Aにおいて、最も径方向の内側の位置は、容器本体1の段差部111における最も径方向の内側の位置よりもさらに径方向の内側である。
【0054】
容器本体1に中皿3を装着した状態において、中皿3のフランジ部32は、容器本体1の段差部111の上に係合して載置された状態となる。このとき、切欠部32Aにおいて、最も径方向の内側の位置は、容器本体1の段差部111における最も径方向の内側の位置よりもさらに径方向の内側であるため、中皿3よりも上側の上部収容空間6と、中皿3よりも下側の下部収容空間7は、切欠部32Aを介して連通する。
【0055】
なお、中皿3は、容器本体1に対して係合して載置される構成の他に、容器本体1に対して嵌合して保持される構成であってもよい。中皿3がこの構成を採る場合には、例えば、蓋体5における外側周壁部53と同様に、容器本体1の嵌合部112に嵌合する嵌合壁をフランジ部32の径方向の外側に設ければよい。中皿3に嵌合壁を設ける場合、嵌合部112に嵌合する蓋体5と干渉しないように、外側周壁部53よりも下側の位置で容器本体1の嵌合部112に嵌合することが好ましい。
【0056】
蓋体5と中皿3によって囲まれる上部収容空間6の空間体積は、140cm3以上、2400cm3以下であることが好ましい。
【0057】
容器本体1、中皿3及び蓋体5は、何れも合成樹脂シート製(樹脂製)であって、いわゆるシート成形により形成されたものである。シート成形としては例えば真空成形、圧空成形、真空圧空成形、両面真空成形、熱板成形等があり、何れにしても合成樹脂シートを熱成形することにより形成される。従って、容器本体1等において外面と内面は原則として凹凸が逆の形状となる。
【0058】
ここで、合成樹脂シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン等、各種の合成樹脂からなるシート、これらのシート素材として無機物を充填したシート、これらをシート素材として発泡させた発泡シート、更には、これらのシートを延伸させた延伸シートなどを使用できる。
これらの中でもポリプロピレンやポリスチレンを発泡させた発泡樹脂シートは食品の保温効果が高く、容器本体1を構成する材料として好ましい。
前記発泡樹脂シートは、耐油性、耐熱性、意匠性を付加する目的で無発泡の樹脂シートやフィルムを積層することもできる。
【0059】
上記構成の食品容器100においては、 容器本体1に中皿3が上側から装着され、更に、容器本体1に蓋体5が装着される。容器本体1に、例えば、汁類を入れておき、そのうえで中皿3を装着する。中皿3には予め、例えば、麺類を入れておくことが好ましいが、容器本体1に中皿3を装着した後に中皿3に麺類を載せるようにしてもよい。そして、最後に容器本体1に蓋体5を装着して包装作業が完了する。
【0060】
以上のように、本実施形態の中皿および食品容器100においては、最大距離Lが1.0mmを超えたときに、内接円Cの直径Dが0.3mm以上、0.9mm以下であり、最大距離Lが1.0mm以下のときに、内接円Cの直径Dが0.3mm以上、1.0mm以下であるため、下部収容空間7に収容された汁類からの水蒸気が孔33を介して上部収容空間6に十分に供給されるとともに、運搬時に容器本体1に貯留された汁類が飛び跳ねて、孔33を介して上部収容空間6に流入することを抑制できる。そのため、本実施形態の中皿および食品容器100においては、上部収容空間6に収容された麺類の延びを抑制しつつ保湿効果を得ることができる。
【実施例0061】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0062】
(実施例1~11、比較例1~6)
本実施例では、下記[表1]~[表3]に示す仕様に従い中皿サンプルを作製した。
各例の中皿サンプルを用い、上記実施形態の食品容器と同様の実施例1~11、比較例1~6のサンプルを作製した。比較例4は、中皿が孔を有さないサンプルである。孔が長孔である場合の面積は、最大距離Lとなる方向の端部を半円形と想定して算出した。中皿は、円形であり底部の直径を150mmとした。
実施例1~11、比較例1~6のサンプルに対して、孔を介して上部収容空間から下部収容空間への水漏れと、中皿に収容された麺の保湿効果について官能評価した。
【0063】
[水漏れの評価方法]
実施例1~11、比較例1~6の中皿サンプルに対して以下の方法で水漏れ試験を行った。
中皿サンプルの端部数か所を治具で固定して中皿サンプルを宙づり状態にした。次に、中皿サンプルの外側周壁部付近の底面部に対して、水200mlを徐々に注いだ。水を注ぎ終わってから10秒間静置し、その後の5分間、中皿サンプルの孔部からの水漏れを目視観察し、以下の基準で評価した。
〇:中皿サンプルの孔から水漏れが観察されず、麺類用テイクアウト容器として使用できる。
×:中皿サンプルの孔から水漏れが観察され、麺類用テイクアウト容器として使用に問題がある。
【0064】
[評価内容]
目視観察の結果から以下の基準で水漏れ評価を行った。
〇:中皿サンプル上に水が殆ど移動しておらず、麺類用テイクアウト容器として使用できる。
×:中皿サンプル上に水の移動が観察され、麺類用テイクアウト容器として使用に問題がある。
【0065】
[保湿効果の評価方法]
容器本体に水面の高さが底面部から2.5cmとなるように70℃の水を入れ、中皿サンプルを容器本体の段差部に係合して配置した。
このとき、容器本体の底面部から中皿サンプルの底部までの高さは、3.3cmであった。
中皿サンプルの上に茹でた中華麺200gを入れて蓋体を容器に嵌合させ、15分間静置した。
中皿サンプルの上の中華麺を容器の中のお湯に投入し、麺のほぐれ具合を目視観察した。
【0066】
[評価内容]
目視観察の結果から以下の基準で麺の保湿状態の評価を行った。
〇:中華麺がお湯の中でほぐれ、問題がない。
×:中華麺同士がくっついてほぐれず、麺の保湿状態に問題がある。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
表1および表2に示されるように、最大距離Lが1.0mmを超えたときに、孔における最大の内接円の直径Dが0.3mm以上、0.9mm以下であり、最大距離Lが1.0mm以下のときに、孔における最大の内接円の直径Dが0.3mm以上、1.0mm以下である実施例1~11のサンプルでは、上部収容空間から下部収容空間への水漏れと、中皿に収容された麺の保湿効果について、いずれも良好な評価が得られた。
【0071】
一方、表3に示されるように、最大距離Lが1.0mmを超えたときに、孔における最大の内接円の直径Dが0.9mmを超える比較例1~3のサンプルでは、上部収容空間から下部収容空間への水漏れについて、良好な評価が得られなかった。
【0072】
具体的には、最大距離Lおよび最大の内接円の直径Dがそれぞれ1.0mm以下であれば水漏れは観察されなかったが、両方が1.0mm以上の場合、一方が1.0mmを超えると水漏れが観察された。
【0073】
また、最大の内接円の直径Dが0.3mm未満である比較例4~6のサンプルでは、中皿に収容されたうどん麺の保湿効果について、良好な評価が得られなかった。
【0074】
具体的には、最大の内接円の直径Dが0.3mm以上である実施例1~11、比較例1~3のサンプルでは、最大の内接円の直径Dの大きさに比例して、うどん麺同士のくっつきが緩和される効果が観察された。また、最大距離Lおよび最大の内接円の直径Dがそれぞれ0.3mm以上のサンプルでは、うどん麺をお湯に入れた際に抵抗感無くほぐすことができた。
【0075】
図7は、最大距離Lと最大の内接円の直径Dとの関係を示す図である。
図7において、領域NG1は、水漏れが観察される領域である。領域NG2は、うどん麺のほぐれ効果が得られない領域である。領域NG1および領域NG2から外れた領域の最大距離Lと最大の内接円の直径Dとを選択することで、上部収容空間から下部収容空間への水漏れと、中皿に収容された麺の保湿効果について、いずれも良好な評価が得られることが想定される。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0077】
本発明は、以下の態様を含む。
[7]前記底部の面積は、7000mm2以上、40000mm2以下であり、複数の前記孔の開口総面積は、2mm2以上、350mm2以下である、[1]から[3]のいずれか一項に記載の中皿。
[8](複数の前記孔の開口総面積/前記底部の面積)で表される前記底部の開口率は、0.005%以上、5%以下である、[7]に記載の中皿。
[9]前記底部における前記孔よりも外周側に、前記底部から上側に突出する複数の突部が間隔をあけて設けられる[1]から[3]のいずれか一項に記載の中皿。
[10]前記突部は、径方向に延びるリブと、平面視で点状に配置された突起の少なくとも一方を含む、[9]に記載の中皿。
1…容器本体、 3…中皿、 5…蓋体、 30…底部、 33…孔、 34…リブ(突部)、 35…突起(突部)、 36A…突起部、 50a…空気抜開口部、 100…食品容器