(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130114
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】フリーハブ内臓ペダル桿
(51)【国際特許分類】
F16H 29/00 20060101AFI20230912BHJP
F16H 35/00 20060101ALI20230912BHJP
B62M 1/28 20130101ALI20230912BHJP
F03B 13/14 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
F16H29/00
F16H35/00 G
B62M1/28
F03B13/14
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034600
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】592024147
【氏名又は名称】矢継 正信
(72)【発明者】
【氏名】矢継正信
【テーマコード(参考)】
3H074
3J062
【Fターム(参考)】
3H074AA02
3H074BB10
3J062AA60
3J062AB36
3J062AC07
3J062BA11
3J062CG84
(57)【要約】 (修正有)
【課題】風力や波力のような、媒質の不規則ベクトル変位を捕らえて連続回転に変換する事は、従来のクランク機構では不可能に近く、可能であっても非常に効率が悪いので、効率的に往復回転変換する簡素な機構が求められていた。
【解決手段】一方向回転伝達機構を具備する往復桿を左右に並列配置して、両者の一方向回転出力軸を回転軸で結合する。両往復桿を相互反対円弧運動させて、回転軸から連続一方向回転を出力する。更に一方の往復桿の踏み込み力により、他方の往復桿が自動的に引き上げられる手段を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリーホイールの一方を入力側として固定した往復桿を、他方を伝達側として同一伝達方向にして左右に並列配置し、この伝達側両者を回転軸で結合してなる円弧運動の一方向回転運動変換機構
【請求項2】
フリーホイールの一方を入力側として固定した往復桿を、他方を伝達側として同一伝達方向にして左右に並列配置し、この伝達側両者を回転軸で結合し、この回転軸内を回転自在に貫通してなる固定軸を有する円弧運動の一方向回転運動変換機構
【請求項3】
固定軸に有する支点軸に、シーソー動作するよう支承されたシーソー桿の両端部と、両往復桿の後端部の支点軸とが、可動結合桿を介して接合する事を特徴とする、往復桿相互反対往復手段を有する請求項2記載の円弧運動の一方向回転運動変換機構
【請求項4】
往復桿のフリーハブと同心軸に固着した双方のプーリーに、ワイヤーを相互に巻き付けし、このワイヤーを固定軸に具備する中継滑車を経由し結合してなる、往復桿相互反対往復手段を有する請求項2記載の円弧運動の一方向回転運動変換機構
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不規則振幅の往復運動又は円弧運動をフリーハブ等の一方向回転伝達機構を使って連続回転に変換するものであり、自転車に於いては足回転させるのではなく、上下に反復往復させてこれを回転運動にして推進する。また、自然界の不規則波動エネルギーを高効率に回転力に変換して発電等に利用可能にするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自転車を製造するには、各車種毎に、設計仕様に応じて多数の部品を集め、様組み立てていたため、時間、費用が相当必要であった。又、波力発電や風力発電に於いても同様であった。
【0003】
本発明は、出来得る限り最低数の部材を使い、簡単で且つ最低限の組み立て行程で、自転車や自然エネルギー利用の発電機を製造するものである。自転車に於いては、従来の様に足を回転させて漕ぐのではなく、上下に円弧運動させて漕ぐ事が特徴である。そしてこの様に上下に円弧運動させて漕ぐ自転車は、特許文献1に存在するが、これを新たに製造するには多くの部品が必要で、且つ多大な組み立て時間を必要としていたため、普及するに至っていない。
【0004】
風力や波力のような、媒質の不規則ベクトル変位を捕らえて連続回転に変換する事は、従来のクランク機構では不可能に近く、可能であっても非常に効率が悪いので、効率的に往復回転変換する簡素な機構が求められていた。
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の自転車に於いては足を回転させるのではなく、上下に往復円弧運動させて漕ぐ自転車を安価に普及させる目的のものである。そしてこの往復・回転変換機構に於いて、汎用的部材を最小数使い、最小限の組み立作業で、製造する事が出来るようにするものである。
【0007】
また自然エネルギーの獲得して発電等に利用する際に於いても同様に最小部品数、最小作業数で波力発電機や風力発電機を製造する事が出来るようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一方向回転伝達機構を具備する左右の桿を並列配置し、この桿のそれぞれに一方向回転伝達機構の伝達側を固着する。そして被伝達側は回転軸で双方を結合する。
【0009】
この両桿を上下に反復円弧運動させる事により、この相互反復円弧運動がフリーハブを介して一方向連続回転に変換され回転軸に伝達する。
【0010】
自転車に於いては両桿のペダルを取り付けして、両足で相互反対往復させる。自然エネルギーの獲得利用に際して、波力利用では、一方の桿にフロートを、他方の桿には海中錘を結合して相互反対円弧運動させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイヤやハンドルを取り付けるだけ自転車として機能する駆動モジュールとし利用する。また、近年普及しているキックボードの様な形態の自転車に取り付ける事で、多用途、多形態な移動具、遊具として利用出来る。また、波力発電に於いても発電機に取り付ける不規則ベクトル振動の獲得モジュールとして機能する。
【0012】
特に本発明の自転車は足を適切なストロークで反復往復させると云う特徴により、人間工学的観点から、従来の自転車より高効率に推進力を得ることが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の正面図及び組み立て状況を説明する斜視図
【
図3】固定軸が回転軸の中を回転自在に貫通する説明図
【
図4】往復桿の相互反対往復手段がシーソー桿により行われる説明図
【
図5】往復桿の相互反対往復手段がプーリーとワイヤーにより行われる説明図
【
図6】往復桿が角パイプでありこの中にフリーハブと回転軸を溶接で固着して いる事を示した図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下
図1~
図3に於いて、金属の平板の往復桿に一方向回転伝達機構として、市販のフリーハブ(歯のないタイプ)を取り付けしてなる本発明について説明する。本発明の説明に於いては、自転車の進行方向が図面の左方向として描画しているので、タイヤの前進回転は反時計回りであり、往復桿の下向き円弧運動が有効となって回転軸に伝達される。
【0015】
図1は本発明の基本構成である。
図1Aに示す様に、左往復桿100には左フリーハブ150の一方側を回転伝達側156として固定し、右往復桿200には、右フリーハブ250の一方側を回転伝達側256として固定する。そして両フリーハブの他方側を被回転伝達側154、254として回転軸300に固着する。これにより、両フリーハブハブ150、250はいずれも、両往復桿100,200の押し下げ力が有効に伝達され回転軸が前進回転(FR)に回転し、上向きの押し上げら力はフリーハブの空転により非伝達となる。
【0016】
図1Bは左往復桿の組み立て状況を示した図であり、左往復桿100に左フリーハブ150をボルトナットBNで固定し、この左フリーハブの被回転伝達側154に全ネジ棒の回転軸300をナットNで固定した例である。これは本発明が市販の部材をネジで固定するだけで完成する事を示したものであり、後述する
図5、6では、往復桿が角パイプであり、この内部にフリーハブの回転伝達側を溶接し、被回転伝達側にパイプ状の回転軸を溶接しているが、その様な構成でもよい。
【0017】
図2は、
図1に示す本発明を固定フレームFにベアリングBGで回転自在に取り付けして、動作させた図である。以下本発明の動作経緯について説明する。
図2-Aに示す様に、左往復桿100の先端部101が下方向(矢印D)に押し下げられるとすると、左フリーハブ150の左回転伝達側156が反時計回りに円弧回転運動する。この円弧回転運動は被回転伝達側154に伝達して、回転軸300を、反時計回りに回転させる(前進回転FR)。
【0018】
この時、
図2-Bに示すように、右往復桿200の先端部201も下方向(矢印D)に円弧運動したとすると、両往復桿共に下方向に円弧運動するのであるが、この円弧運動の速度の差異により、いずれか一方の往復桿の高速円弧運動だけが回転伝達される。つまり、両往復桿のうち、より高速に円弧運動した方が回転軸300の回転に寄与する。もし双方が同一速度であれば、両往復桿から印加された円弧運動が同時に回転軸300に伝達される。
【0019】
図2-Cに示す様に、右往復桿200の先端部201が上向きに押し上げられると、右フリーハブ250の回転伝達側256は時計回り円弧運動するのであるが、右被回転伝達側254は空転するので非伝達となり、回転軸300には伝達されず、回転軸300の回転は時計回りを継続する。
上記した様な経緯により、両往復桿の先端部への押し下げ力がフリーハブを経由して反時計回りの回転力として回転軸300に伝達され、これに取り付けしたドライブスプロケットDSでタイヤを前進回転させるのである。
【0020】
以上は、左往復回転100の押し下げによる回転伝達についての説明であるが、右往復桿200の押し下げによる回転伝達は、上記説明と反対方向に各部分が同様経緯で動作し、右フリーハブ250の被回転伝達側254が引き続き回転軸300を反時計回りに回転させ、ドライブスプロケットDSの前進回転が継続するのである。
【0021】
図3は、固定軸が回転軸の中を回転自在に貫通する請求項2の説明図である。
回転軸300の中を固定軸400が回転自在に貫通している。これにより、外部部材としてのベアリング等の回転支承部材を用いる事無く、固定軸400を固定フレームFにで固定するだけで自転車駆動モジュールとしての機能が発揮出来るのである。
【0022】
ところで、本発明を自転車の駆動モジュールとして利用する際には、両往復桿を相互に反対円弧往復させる必要がある。つまり、一方の足による往復桿の踏み込みに伴って、他方の往復桿を引き上げて、他方の足が次なる踏み込みを行える様にしなければならな。
これは、両足で「漕ぐ」動作であるが、本発明の「漕ぐ」動作は従来の自転車の様に脚を回転させるのではなく、縷々説明した様に相互反復円弧運動である事が特徴である。
【0023】
図4は、上記した両往復桿を漕ぐための相互反対往復手段を、シーソー動作桿と後端突起により行う例である。両往復桿100、200のそれぞれの後端部には左後端突起110、右後端突起210を有する。シーソー動作桿500の中央部には軸支環505を有し、固定軸に400に固定された軸支突起405に可動自在に嵌合していて、左端部510と右端部520は一方が上昇すると他方が下降する様なシーソー動作する。
【0024】
この両端部510,520は可動結合桿600の下接合穴620に嵌合し、可動結合桿600の上嵌合穴610は両往復桿の後端突起110、210に嵌合していて、これによりシーソー動作桿500のシーソー動作が、可動結合桿600を経由して、両往復桿を相互反対円弧運動として動作させるので、右先端部101が押し下げられると左先端部201が引き上げられ、右先端部210が押し下げられると左先端部101が引き上げられるのである。
【0025】
図5は、両往復桿の相互反対往復手段を、プーリーとワイヤーと中継滑車により行う例であり、以下この動作について説明する。両往復桿100、200にはフリーハブと同心軸にプーリー710、720がそれぞれ固着されていて、これにワイヤー800が相互に巻付けされている。
【0026】
左プーリー710は左往復桿100の押し下げによって反時計回り(矢印L)に回転するので、ワイヤー800は下向きに引っ張られて、更にプーリー710巻付けられる。この更なる巻付けによりよりワイヤー800更に引っ張られ、中継結社滑車910の働きで左方向(矢印P)に引っ張られ、更に中継滑車920を経由して上向きの引っ張力となり、右プーリー720の巻付けが解ける様に働き、時計回りに(矢印R)回転するので、これに追従して右往復桿200が円弧回転し、先端部201が上昇し、次なる押し下げ動作を行う事が出来る状態となる。この右往復桿200の上向き円弧回転は先述したように右フリーハブ250の空転により回転軸300には非伝達となる。
【0027】
この後、右往復桿200が押し下げられると、上記した説明と反対動作が行われ、左往復桿100が引き上がる。 以上説明した通りの経緯で左右往復桿100、200の相互反復円弧運動を繰り返す事により、回転軸の回転が継続するのである。
【0028】
因みに
図5に於いては、往復桿の形状が角パイプ状でこの内部にフリーハブを具備し、回転伝達側が溶接によりこの往復桿に固着され、フリーハブの被桿伝達側がパイプである回転軸に溶着された構造となっているが、これは各部材をネジ等で固定するのではなく、
図6に示す様に、溶接により各部材を固定する例として示したものであり、その動作、機能は
図1~
図4に示すものと全く同じである。
【0029】
図7は本発明の利用例である。各部材を具備する自転車フレームFに、回転軸にドライブスプロケットDSを取り付け、これにチェーンを掛けてドリブンスプロケットを駆動する事により、本発明が駆動モジュールとしての機能を発揮する自転車が簡単に完成する。
【0030】
図8は本発明を補助推進具として車椅子に利用した例である。回転軸に直接車輪Wを取り付けして、固定具部TGで車椅子の適宜箇所に取り付けする。この車輪Wは一漕ぎで進む距離が小さいので、高齢者等には最適となる。
【符号の説明】
【0031】
100 左往復桿
101 左往復桿先端部
110 左後端突起
150 左フリーハブ
154 左フリーハブの被回転伝達側
156 左フリーハブの回転伝達側
170 左後端突起
200 右往復桿
201 右往復桿先端部
210 右後端突起
250 右フリーハブ
254 右フリーハブの被回転伝達側
256 右フリーハブの回転伝達側
270 右後端突起
300 回転軸
400 固定軸
405 軸支突起
500 シーソー動作桿
505 支軸環
510 左端部
520 右端部
600 可動結合桿
610 上嵌合穴
620 下嵌合穴
710 左プーリー
720 右プーリー
800 ワイヤー
910 左中継滑車
920 右中継滑車
BR ボールベアリング
DS ドライブスプロケット
FR 前進回転
P ペダル
CG ケーシング