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特開2023-130125環状ポリマーの製造方法及び環状ポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130125
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】環状ポリマーの製造方法及び環状ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/38 20060101AFI20230912BHJP
   C08F 4/00 20060101ALI20230912BHJP
   C08F 20/18 20060101ALI20230912BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C08F2/38
C08F4/00
C08F20/18
C08F2/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034618
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100151183
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】亀山 敦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 明
【テーマコード(参考)】
4J011
4J015
4J100
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011NA26
4J011NB04
4J011QA03
4J011QA08
4J011QA38
4J011QA39
4J011QA40
4J011QA45
4J011QA46
4J011SA63
4J011SA64
4J011TA07
4J011TA08
4J011UA01
4J011VA05
4J015EA02
4J015EA04
4J015EA05
4J100AL01P
4J100AL02P
4J100AL08P
4J100BC04P
4J100BC09P
4J100BC28P
4J100BC43P
4J100BC52P
4J100BC64P
4J100CA01
4J100CA03
4J100CA21
4J100DA01
4J100FA03
4J100FA06
4J100FA08
4J100FA19
4J100JA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】環状ポリマーの新規な製造方法及びそれにより得られる環状ポリマーを提供すること。
【解決手段】下記一般式(2)で表すモノマー化合物及び下記一般式(1)で表す化合物の存在下で光照射することにより環状ポリマーが得られる。下記一般式(1)中、Zは硫黄原子又は酸素原子であり、Arは置換基を有してもよい芳香環であり、その芳香環は縮合環であってもよい。また、下記一般式(2)中、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基、Xは、-(C=O)OR、-OR、カルボキシ基、水素原子、エテニル基、シアノ基、炭素数1~6のアルキル基、置換基を有するフェニル基、ハロゲン原子、アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はニトロ基であり、Rはそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子であり、Rは、一価の有機基である。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(2)で表すモノマー化合物及び下記一般式(1)で表す化合物の存在下で光照射することを特徴とし、前記モノマー化合物が繰り返し単位として組み込まれた環状ポリマーの製造方法。
【化1】
(上記一般式(1)中、Zは硫黄原子又は酸素原子であり、Arは置換基を有してもよい芳香環であり、その芳香環は縮合環であってもよい。)
【化2】
(上記一般式(2)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素数1~5のアルキル基であり、Xは、-(C=O)OR、-OR、カルボキシ基、水素原子、エテニル基、シアノ基、炭素数1~6のアルキル基、置換基を有するフェニル基、ハロゲン原子、アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はニトロ基であり、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子であり、Rは、一価の有機基である。)
【請求項2】
前記Zが硫黄原子である請求項1記載の環状ポリマーの製造方法。
【請求項3】
前記一般式(2)で表す化合物が(メタ)アクリル酸エステルである請求項1又は2菓子の環状ポリマーの製造方法。
【請求項4】
さらに、チオキサントン化合物、キサントン化合物、アントラセン化合物又はアントラキノン化合物の共存下で前記光照射を行う請求項1~3のいずれか1項記載の環状ポリマーの製造方法。
【請求項5】
前記チオキサントン化合物が2-イソプロピルチオキサントンである請求項4記載の環状ポリマーの製造方法。
【請求項6】
下記一般式(3)で表す環状ポリマー。
【化3】
(上記一般式(3)中、Zは硫黄原子又は酸素原子であり、Arは置換基を有してもよい芳香環であり、その芳香環は縮合環であってもよく、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素数1~5のアルキル基であり、Xは、-(C=O)OR、-OR、カルボキシ基、水素原子、エテニル基、シアノ基、炭素数1~6のアルキル基、置換基を有するフェニル基、ハロゲン原子、アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はニトロ基であり、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子であり、Rは、一価の有機基であり、nは1以上の整数である。)
【請求項7】
下記一般式(3a)で表す請求項6記載の環状ポリマー。
【化4】
(上記一般式(3a)中、Zは硫黄原子又は酸素原子であり、Arは置換基を有してもよい芳香環であり、その芳香環は縮合環であってもよく、Rは水素原子又はメチル基であり、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rは一価の有機基であり、nは1以上の整数である。)
【請求項8】
前記Zが硫黄原子である請求項6又は7記載の環状ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ポリマーの製造方法及び環状ポリマーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
環状ポリマーは、分子末端を持たない高分子化合物である。環状ポリマーは、直鎖状ポリマーと比べて高分子鎖間の絡み合いが少ないため、粘性、融点、ガラス転移点等の物理的性質が直鎖状ポリマーと異なることが知られている。環状ポリマーの備える特性を活用した一例として、例えば特許文献1には、炭化水素系環状ポリマーを配合したホットメルト型接着剤が開示されている。同文献によれば、直鎖状のα-オレフィン系ポリマーを用いたホットメルト型接着剤では、α-オレフィン系ポリマーの結晶性の高さや、融点の高さに起因して、接着剤を被着体へ塗布してから貼り合わせることができる時間が数秒以内と非常に短い時間となって用途が限定される場合があるが、炭化水素系環状ポリマーをこれに配合することで、高温時における耐クリープ性が向上するとされている。
【0003】
これら環状ポリマーの合成方法としては、末端連結法と環拡大重合法が開発されている。末端連結法は、反応性末端基を有する直鎖状ポリマーを合成してから、2つの反応性末端基を分子内環化反応により結合させる方法である。このような合成法の一例として、例えば特許文献2には、圧縮性流体中で、金属原子を含まない有機触媒を用いて開環重合性モノマーを重合させる方法が開示されている。
【0004】
環拡大重合法は、環状開始剤を用いてモノマーを逐次的に挿入することでポリマーを得る方法である。このような合成法の一例として、例えば特許文献3には、金属アルキリデン錯体を環状オレフィンモノマーの環挿入反応の触媒として用い、大環状ポリマーを合成する方法が開示されている。また、非特許文献1には、開始剤として環状アルコキシスズ
を用いた、環状γ-ブチロラクトンの環拡大重合による環状ポリエステルの合成が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/012593号
【特許文献2】特開2017-39863号公報
【特許文献3】特表2005-534777号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hans R. Kricheldop et. al., Macromol. Chem. Phys., 1998, 199, 273-282.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、環状ポリマーの新規な製造方法及びそれにより得られる環状ポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、3H-ベンゾチアゾール-2-チオン(BTT)若しくは2(3H)-ベンゾチアゾロン(BTO)又はそれらの骨格を備えた誘導体が、下記化学式(A)及び(B)に示すように、光照射によりジチオエステル部分又はチオエステル部分が均一開裂して分子内に一対のラジカルを生じ、エチレン性不飽和結合を備えたモノマー化合物の存在下でこのラジカルが作用すると、下記化学式(C)に示すように、一対のラジカルの間にモノマー化合物が挿入されて閉環することにより環状ポリマーが生成することを見出した。すなわち、下記化学式(A)及び(B)で示す化学種は、環状ポリマー合成のための光重合開始剤として作用する。この環状ポリマーは、光照射が続く限り均一開裂と閉環を繰り返しており、モノマー化合物の存在下でリビング的に重合反応を続ける。なお、下記化学式(A)~(C)では、光重合開始剤として3H-ベンゾチアゾール-2-チオン(BTT)又は2(3H)-ベンゾチアゾロン(BTO)を挙げ、モノマー化合物としてメタクリル酸メチル(MMA)を挙げたが、これらは説明のための一例であり、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0009】
【化1】
【0010】
具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0011】
(1)本発明は、下記一般式(2)で表すモノマー化合物及び下記一般式(1)で表す化合物の存在下で光照射することを特徴とし、上記モノマー化合物が繰り返し単位として組み込まれた環状ポリマーの製造方法である。
【化2】
(上記一般式(1)中、Zは硫黄原子又は酸素原子であり、Arは置換基を有してもよい芳香環であり、その芳香環は縮合環であってもよい。)
【化3】
(上記一般式(2)中、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素数1~5のアルキル基であり、Xは、-(C=O)OR、-OR、カルボキシ基、水素原子、エテニル基、シアノ基、炭素数1~6のアルキル基、置換基を有するフェニル基、ハロゲン原子、アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はニトロ基であり、Rはそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子であり、Rは、一価の有機基である。)
【0012】
(2)また本発明は、上記Zが硫黄原子である(1)項記載の環状ポリマーの製造方法である。
【0013】
(3)また本発明は、上記一般式(2)で表す化合物が(メタ)アクリル酸エステルである(1)項又は(2)項記載の環状ポリマーの製造方法である。
【0014】
(4)また本発明は、さらに、チオキサントン化合物、キサントン化合物、アントラセン化合物又はアントラキノン化合物の共存下で上記光照射を行う(1)項~(3)項のいずれか1項記載の環状ポリマーの製造方法である。
【0015】
(5)また本発明は、上記チオキサントン化合物が2-イソプロピルチオキサントンである(4)項記載の環状ポリマーの製造方法である。
【0016】
(6)本発明は、下記一般式(3)で表す環状ポリマーでもある。
【化4】
(上記一般式(3)中、Zは硫黄原子又は酸素原子であり、Arは置換基を有してもよい芳香環であり、その芳香環は縮合環であってもよく、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素数1~5のアルキル基であり、Xは、-(C=O)OR、-OR、カルボキシ基、水素原子、エテニル基、シアノ基、炭素数1~6のアルキル基、置換基を有するフェニル基、ハロゲン原子、アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はニトロ基であり、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子であり、Rは、一価の有機基であり、nは1以上の整数である。)
【0017】
(7)また本発明は、下記一般式(3a)で表す(6)項記載の環状ポリマーである。
【化5】
(上記一般式(3a)中、Zは硫黄原子又は酸素原子であり、Arは置換基を有してもよい芳香環であり、その芳香環は縮合環であってもよく、Rは水素原子又はメチル基であり、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rは一価の有機基であり、nは1以上の整数である。)
【0018】
(8)また本発明は、上記Zが硫黄原子である(6)項又は(7)項記載の環状ポリマーである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、環状ポリマーの新規な製造方法及びそれにより得られる環状ポリマーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施例で得た環状ポリマー(CP-MMA1)についてのMALDI-TOF MSのチャートである。
図2図2は、実施例で得た環状ポリマー(CP-MMA2)についてのMALDI-TOF MSのチャートである。
図3図3は、実施例で得た環状ポリマー(CP-CHMA)についてのMALDI-TOF MSのチャートである。
図4図4は、実施例で得た環状ポリマー(CP-BzMA)についてのMALDI-TOF MSのチャートである。
図5図5は、実施例で得た環状ポリマー(CP-MMA3)についてのMALDI-TOF MSのチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の環状ポリマーの製造方法の一実施態様、及び本発明の環状ポリマーの一実施形態のそれぞれについて説明する。なお、本発明は、以下の実施態様又は実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲において適宜変更を加えて実施することができる。
【0022】
<環状ポリマーの製造方法>
まずは、本発明の環状ポリマーの製造方法の一実施態様について説明する。本発明の環状ポリマーの製造方法は、下記一般式(2)で表すモノマー化合物及び下記一般式(1)で表す化合物の存在下で光照射することを特徴とする。この製造方法を実行することにより、上記モノマー化合物が繰り返し単位として組み込まれた環状ポリマーが得られる。下記一般式(1)で表す化合物は、既に説明した通り、光照射を受けることによりC-S結合間で均一開裂して、分子内に一対のラジカルを発生させる。このラジカルは、(メタ)アクリル酸エステルのエチレン性不飽和結合に作用してこれを付加重合させて分子量を増加させる一方で、分子内に存在する一対のラジカル同士が結合して分子を閉環させる。この均一開裂及び閉環は光照射下で平衡状態となっており、下記一般式(1)で表す化合物は、均一開裂後にモノマー化合物を付加重合させる過程と、閉環して環状ポリマーとなる過程とを繰り返しながら、徐々に分子量を上げていく。この重合過程はリビング的に進行し、系内のモノマー化合物を消費し尽くすまで続くことになる。光照射によりラジカルを発生させる下記一般式(1)の化合物は、本発明の系において、光重合開始剤として作用することになる。
【0023】
【化6】
【0024】
上記一般式(1)中、Zは硫黄原子又は酸素原子である。Zが硫黄原子のとき、一般式(1)で表す化合物は、3H-アリールチアゾール-2-チオンとなり、Zが酸素原子の
とき、一般式(1)で表す化合物は、2(3H)-アリールチアゾロンとなり、いずれの場合も一般式(1)で表す化合物は、光照射によりC-S結合間で均一開裂して分子内に一対のラジカルを生成させる。このラジカルがモノマー化合物を重合させることについては、既に説明した通りである。
【0025】
上記一般式(1)中、Arは、置換基を有してもよい芳香環である。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。それら芳香環が有してもよい置換基の一例としては、水酸基、アミノ基、ニトロ基、アジ基、ハロゲン原子、アリル基、カルボキシ基、アシル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、カルボキシアルキル基、アルキルオキシカルボニル基、1-ピペリジルカルボニル基、ヒドロキシアルキル基等を挙げることができる。これら置換基は、1つ又は複数存在してもよい。
【0026】
上記一般式(1)で表す化合物としては、3H-ベンゾチアゾール-2-チオン、4-ヒドロキシ-2(3H)-ベンゾチアゾールチオン、6-アミノ-2(3H)-ベンゾチアゾールチオン、ナフト[1,2-d]チアゾール-2(1H)-チオン、ナフト[2,1-d]チアゾール-2(3H)-チオン、6-ヒドロキシメチル-2(3H)-ベンゾチアゾールチオン、ナフト[2,3-d]チアゾール-2(3H)-チオン、6-エチニル-2(3H)-ベンゾチアゾールチオン、5-アミノ-2(3H)-ベンゾチアゾールチオン、5-ブロモ-2(3H)-ベンゾチアゾールチオン、5-フルオロ-2(3H)-ベンゾチアゾールチオン、2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-6-ベンゾチアゾールカルボニトリル、6-ヨード-2(3H)-ベンゾチアゾールチオン、5-ヒドロキシメチル-2(3H)-ベンゾチアゾールチオン、5-エテニル-2(3H)-ベンゾチアゾールチオン、7-アミノ-2(3H)-ベンゾチアゾールチオン、4-クロロ-2(3H)-ベンゾチアゾールチオン、4-メトキシ-2(3H)-ベンゾチアゾールチオン、4-ブロモ-2(3H)-ベンゾチアゾールチオン、7-ヒドロキシメチル-2(3H)-ベンゾチアゾールチオン、7-ブロモ-2(3H)-ベンゾチアゾールチオン、2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-6-ベンゾチアゾールカルボン酸、2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-6-ベンゾチアゾール酢酸、6-ニトロ-2(3H)-ベンゾチアゾールチオン、4-フェニル-2(3H)-ベンゾチアゾールチオン、2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-7-ベンゾチアゾールカルボン酸、2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-6-ベンゾチアゾールカルボン酸メチルエステル、(2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-5-ベンゾチアゾリル)-1-ピペリジニルメタノン、6-ヒドロキシ-2(3H)-ベンゾチアゾロン、5-ヒドロキシ-2(3H)-ベンゾチアゾロン、4-ヒドロキシ-2(3H)-ベンゾチアゾロン、6-アミノ-2(3H)-ベンゾチアゾロン、6-ブロモ-2(3H)-ベンゾチアゾロン、6-フルオロ-2(3H)-ベンゾチアゾロン、5-ブロモ-2(3H)-ベンゾチアゾロン、5-フルオロ-2(3H)-ベンゾチアゾロン、5-エテニル-2(3H)-ベンゾチアゾロン、2,3-ジヒドロ-2-オキソ-6-ベンゾチアゾールカルボン酸、5-アセチル-2(3H)-ベンゾチアゾロン、6-アジド-2(3H)-ベンゾチアゾロン、5-ニトロ-2(3H)-ベンゾチアゾロン等を挙げることができ、これらの中でも3H-ベンゾチアゾール-2-チオンを好ましく挙げることができる。
【0027】
上記一般式(1)で表す化合物の好ましい例として、下記一般式(1a)で表すものを挙げることができる。下記一般式(1a)で表す化合物は、上記一般式(1)で表す化合物のうち、Arがベンゼン環のものとなる。なお、下記一般式(1a)中、Zは硫黄原子又は酸素原子であり、これらの中でもZとしては硫黄原子を好ましく挙げることができる。
【0028】
【化7】
【0029】
モノマー化合物は、上記一般式(1)が均一開裂して生じたラジカルにより付加重合することで高分子量化するための成分であり、下記一般式(2)で表される。
【0030】
【化8】
【0031】
上記一般式(2)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素数1~5のアルキル基であり、これらの中でも水素原子又はメチル基を好ましく挙げることができる。上記一般式(2)において、2つのRは、それぞれ独立に、水素原子。炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子であり、これらの中でも2つのRがともに水素原子であることを好ましく挙げることができる。上記一般式(2)において、Xは、-(C=O)OR、-OR、カルボキシ基、水素原子、エテニル基、シアノ基、炭素数1~6のアルキル基、置換基を有するフェニル基、ハロゲン原子、アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はニトロ基である。Rは、一価の有機基であり、このような一価の有機基としては、分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、縮合環であってもよい炭素数1~18のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、フルオレニル基、カルバゾリル基、ポリシルセスキオキサニル基等が例示される。これらのモノマー化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
上記一般式(2)で表すモノマーとして、(メタ)アクリル酸エステルを好ましく例示できる。なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸エステル」の用語は、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリレートとも呼ばれる化合物である。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」の用語は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。このような化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フルオレニル(メタ)アクリレート、カルバゾリル(メタ)アクリレート、ポリシルセスキオキサニル(メタ)アクリレート等が好ましく例示される。これらの(メタ)アクリレートは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
なお、一般式(2)で表すモノマー化合物及び一般式(1)で表す化合物を光照射により重合させる際、増感剤を用いることが好ましい。このような増感剤としては、チオキサントン化合物、キサントン化合物、アントラセン化合物、アントラキノン化合物等を例示できる。こうした増感剤が存在することにより光照射による重合反応が促進され、増感剤を用いない場合と比べて、同じ反応時間であってもよりモノマー化合物の転化率を大きくすることができる。
【0034】
チオキサントン化合物としては、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン等が挙げられる。また、キサントン化合物としては、2-イソプロピルキサントン、4-イソプロピルキサントン、2,4-ジエチルキサントン、2,4-ジクロロキサントン、1-クロロ-4-プロポキシキサントン等が挙げられる。これらの中でも、2-イソプロピルチオキサントンが好ましく例示される。これらのチオキサントン化合物やキサントン化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
一般式(2)で表すモノマー化合物及び一般式(1)で表す化合物を含む溶液に対して光照射を行うことで、重合反応を生じて環状ポリマーが合成される。このときに用いる溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、N-メチルピロリドン等を挙げることができ、1つの環状モノマー中に複数の一般式(1)で表す化合物が取り込まれる副反応を抑制するとの観点からは、これらの中でも1,4-ジオキサンを好ましく挙げることができる。
【0036】
光照射に用いる光源としては、一般式(1)で表す化合物の吸収波長である約370nm以下の紫外線を含むものが挙げられる。このような光源としては、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、キセノンランプ、メタルハライドランプ、高圧水銀灯等を挙げることができる。
【0037】
一般式(2)で表すモノマー化合物及び一般式(1)で表す化合物のモル比は、得られる環状ポリマーの所望とする分子量に応じて適宜決定すればよい。また、上記一般式(1)で表す化合物が取り込まれた環状ポリマーは、光照射により再度の均一開裂を生じてラジカルとなるので、これを含む溶液中でモノマー化合物をさらに添加して光照射することで、さらなる高分子量化を図ることもできる。また、このような性質を利用し、1種のモノマーのみを用いて環状ポリマーとしてから一旦光照射を停止させ、さらに別のモノマーを添加してから再度光照射を行うことで環状ブロックコポリマーを調製することもできる。
【0038】
<環状ポリマー>
次に、上記本発明の環状ポリマーの製造方法で得られる環状ポリマーについて説明する。この環状ポリマーも本発明の一つである。本発明の環状ポリマーは、一般的なポリマーのような直鎖状でなく環状を呈する分子なので、その分子形状に基づく、直鎖状ポリマーにはない特異な特性を示す。具体的には、本発明の環状ポリマーは、粘性、融点、ガラス転移点等の物理的性質が直鎖状ポリマーと異なることを挙げることができる。
【0039】
本発明の環状ポリマーは、下記一般式(3)で表す化合物である。この環状ポリマーは、1つのモノマー化合物が重合してなる環状ポリマーであってもよいし、2以上のポリマーが重合してなる環状ランダムコポリマーや環状ブロックコポリマーであってもよい。なお、環状ブロックコポリマーを調製する方法は、既に述べた通りである。
【0040】
【化9】
【0041】
上記一般式(3)において、Arは、置換基を有してもよい芳香環である。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。それら芳香環が有してもよい置換基の一例としては、水酸基、アミノ基、ニトロ基、アジ基、ハロゲン原子、アリル基、カルボキシ基、アシル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、カルボキシアルキル基、アルキルオキシカルボニル基、1-ピペリジルカルボニル基、ヒドロキシアルキル基等を挙げることができる。これら置換基は、1つ又は複数存在してもよい。
【0042】
上記一般式(3)において、Zは硫黄原子又は酸素原子であり、これらの中でもZとしては硫黄原子を好ましく挙げることができる。また、上記一般式(3)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素数1~5のアルキル基であり、これらの中でも水素原子又はメチル基を好ましく挙げることができる。上記一般式(3)において、2つのRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子である。上記一般式(3)において、Xは、-(C=O)OR、-OR、カルボキシ基、水素原子、エテニル基、シアノ基、炭素数1~6のアルキル基、置換基を有するフェニル基、ハロゲン原子、アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基又はニトロ基である。Rは、一価の有機基であり、このような一価の有機基としては、分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、縮合環であってもよい炭素数1~18のシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基等が例示される。
【0043】
上記一般式(3)において、nは、繰り返し単位であるモノマー構造の繰り返しの数を表す。nは、1以上の整数であり、好ましくは5以上の整数である。
【0044】
上記一般式(3)で表す環状ポリマーの好ましい例として、下記一般式(3a)で表すものを挙げることができる。
【0045】
【化10】
【0046】
上記一般式(3a)において、R、Z及びnは、上記一般式(3)におけるものと同様であり、2つのRは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。また、一般式(3a)において、Rは、一価の有機基である。このような一価の有機基としては、上記一般式(3)におけるRと同様のものを挙げることができる。
【0047】
上記一般式(3)で表す環状ポリマーのより好ましい例として、下記一般式(3b)で表すものを挙げることができる。
【0048】
【化11】
【0049】
上記一般式(3b)で表す環状ポリマーは、3H-ベンゾチアゾール-2-チオンを光重合開始剤として、(メタ)アクリル酸エステルを重合させて得られるものである。上記一般式(3b)中、R、R及びnは、上記一般式(3a)におけるものと同様である。
【実施例0050】
以下、実施例を挙げることにより本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0051】
・光重合による環状ポリマーの合成1(CP-MMA1)
【化12】
【0052】
径5mmのスクリューサンプル管に3H-ベンゾチアゾール-2-チオン(BTT,0.167g,1.00mmol)、1,4-ジオキサン(1.00mL)及びメタクリル酸メチル(MMA,1.00g,10.0mmol)を加えて撹拌して均一溶液とした後、凍結脱気を4回行い、溶液から約1cmの間隔を空けて紫外線発光ダイオード(UV-LED、805mW/cm at 365nm)による光照射を室温で4時間行った。光照射終了後に反応溶液を減圧乾燥することで、生成物である環状ポリメチルメタクリレート(CP-MMA1)を透明な粘性固体として得た(転化率39%、収量0.267g、収率23%)。
【0053】
生成物の物性データは次の通りである。
FT-IR(KBr,cm-1):2995(νC-H芳香族),2950(νC-Hアルカン),1733(νC=Oカルボニル),1455(νC=Sチオアミド),731(νC-Sスルフィド).
H-NMR(500MHz,CDCl) δ(ppm):8.03(br,1.00H,H),7.88(br,0.994H,H),7.49(br,1.04H,H),7.40(br,1.11H,H),3.76-3.27(br,13.72H,H)1.88-1.56(br,32.46H,H)1.13-0.837(br,17.41H,H).
GPC(DMF,Polystyrene std,RI)Mn=1190,Mw/Mn=2.73
【0054】
【化13】
【0055】
上記の手順で得たCP-MMA1についてMALDI-TOF MS(イオン化剤:トリフルオロ酢酸銀)による質量分析を行った。その結果を図1に示す。図1は、実施例で得た環状ポリマー(CP-MMA1)についてのMALDI-TOF MSのチャートである。図1において、丸印を付したピークは、BTTの分子量+MMAの分子量×n+銀イオンの質量[(BTT+nMMA)+Ag]に対応する。
【0056】
図1に示すように、各ピーク間隔はMMAの分子量(MMMA=100.12)と一致し、それら各ピークがBTT1分子を含む環状CP-MMAの分子量(+銀イオンの質量)に対応することから生成物が環状構造を有することがわかる。表1に、図1における重合度28~32の環状ポリマーに対応する各ピークについて、重合度(n)、MSによる[(BTT+nMMA)+Ag]の実測値、及びその計算値をそれぞれ示す。
【0057】
【表1】
【0058】
・光重合による環状ポリマーの合成2(CP-MMA2)
【化14】
【0059】
径5mmのスクリューサンプル管にBTT(0.167g,1.00mmol)、1,4-ジオキサン(1.00mL)及びメタクリル酸メチル(MMA,1.00g,10.0mmol)を加えて撹拌して均一溶液とした後、凍結脱気を4回行い、溶液から約1cmの間隔を空けて紫外線発光ダイオード(UV-LED、919mW/cm at 365nm)による光照射を室温で6時間行った。光照射終了後に反応溶液を減圧乾燥することで、生成物である環状ポリメチルメタクリレート(CP-MMA2)を透明な粘性固体として得た(転化率65%、収量1.01g、収率86%)。
【0060】
生成物の物性データは次の通りである。
FT-IR(KBr,cm-1):2996(νC-H芳香族),2950(νC-Hアルカン),1733(νC=Oカルボニル),1486(νC-C芳香族),1456(νC=Sチオアミド),758(νC-Sスルフィド).
H-NMR(500MHz,CDCl) δ(ppm):8.03(br,1.00H,H),7.88(br,0.984H,H),7.49(br,1.02H,H),7.40(br,1.03H,H),3.76-3.27(br,22.50H,H)1.88-1.57(br,25.31H,H)1.02-0.837(br,11.54H,H).
GPC(DMF,Polystyrene std,RI)Mn=1360,Mw/Mn=2.36
【0061】
【化15】
【0062】
上記の手順で得たCP-MMA2についてMALDI-TOF MS(イオン化剤:トリフルオロ酢酸銀)による質量分析を行った。その結果を図2に示す。図2は、実施例で得た環状ポリマー(CP-MMA2)についてのMALDI-TOF MSのチャートである。図2において、丸印を付したピークは、BTTの分子量+MMAの分子量×n+銀イオンの質量[(BTT+nMMA)+Ag]に対応する。
【0063】
図2に示すように、各ピーク間隔はMMAの分子量(MMMA=100.12)と一致し、それら各ピークがBTT1分子を含む環状CP-MMAの分子量(+銀イオンの質量)に対応することから生成物が環状構造を有することがわかる。表2に、図2における重合度13~17の環状ポリマーに対応する各ピークについて、重合度(n)、MSによる[(BTT+nMMA)+Ag]の実測値、及びその計算値をそれぞれ示す。
【0064】
【表2】
【0065】
・光重合による環状ポリマーの合成3(CP-CHMA)
【化16】
【0066】
径5mmのスクリューサンプル管にBTT(0.167g,1.00mmol)、1,4-ジオキサン(1.00mL)及びメタクリル酸シクロヘキシル(CHMA,1.68g,10.0mmol)を加えて撹拌して均一溶液とした後、凍結脱気を4回行い、溶液から約1cmの間隔を空けて紫外線発光ダイオード(UV-LED、907mW/cm at 365nm)による光照射を室温で6時間行った。光照射終了後に反応溶液を減圧乾燥することで、生成物である環状ポリシクロヘキシルメタクリレート(CP-CHMA)を黄色粘性固体として得た(転化率92%、収量0.775g、収率66%)。
【0067】
生成物の物性データは次の通りである。
FT-IR(KBr,cm-1):2936(νC-H芳香族),2958(νC-Hアルカン),1725(νC=Oカルボニル),1450(νC=Sチオアミド),759(νC-Sスルフィド).
H-NMR(500MHz,CDCl) δ(ppm):8.01(br,1.00H,H),7.88(br,0.995H,H),7.47(br,1.07H,H),7.38(br,1.07H,H),4.87-3.27(br,8.76H,H),2.50-0.924(br,103.27H,Hg,h).
GPC(DMF,Polystyrene std,RI)Mn=1140,Mw/Mn=1.95
【0068】
【化17】
【0069】
上記の手順で得たCP-CHMAについてMALDI-TOF MS(イオン化剤:トリフルオロ酢酸銀)による質量分析を行った。その結果を図3に示す。図3は、実施例で得た環状ポリマー(CP-CHMA)についてのMALDI-TOF MSのチャートである。図3において、丸印を付したピークは、BTTの分子量+CHMAの分子量×n+銀イオンの質量[(BTT+nCHMA)+Ag]に対応する。
【0070】
図3に示すように、各ピーク間隔はCHMAの分子量(MCHMA=168.24)と一致し、それら各ピークがBTT1分子を含む環状CP-CHMAの分子量(+銀イオンの質量)に対応することから生成物が環状構造を有することがわかる。表3に、図3における重合度8~12の環状ポリマーに対応する各ピークについて、重合度(n)、MSによる[(BTT+nCHMA)+Ag]の実測値、及びその計算値をそれぞれ示す。
【0071】
【表3】
【0072】
・光重合による環状ポリマーの合成4(CP-BzMA)
【化18】
【0073】
径5mmのスクリューサンプル管にBTT(0.167g,1.00mmol)、1,4-ジオキサン(1.00mL)及びメタクリル酸ベンジル(BzMA,1.76g,10.0mmol)を加えて撹拌して均一溶液とした後、凍結脱気を4回行い、溶液から約1cmの間隔を空けて紫外線発光ダイオード(UV-LED、918mW/cm at 365nm)による光照射を室温で6時間行った。光照射終了後に反応溶液を減圧乾燥することで、生成物である環状ポリベンジルメタクリレート(CP-BzMA)を黄色粘性固体として得た(転化率81%、収量0.526g、収率27%)。
【0074】
生成物の物性データは次の通りである。
FT-IR(KBr,cm-1):2952(νC-H芳香族),1728(νC=Oカルボニル),1455(νC=Sチオアミド),751(νC-Sスルフィド).
H-NMR(500MHz,CDCl) δ(ppm):7.98(br,1.00H,H),7.83(br,1.30H,H),7.46(br,2.03H,Hc,b),7.28(br,46.93H,H),5.16-4.87(br,26.23H,H)1.89-1.40(br,34.39H,H)1.13-0.837(br,34.48H,H).
GPC(DMF,Polystyrene std,RI)Mn=3120,Mw/Mn=2.03
【0075】
【化19】
【0076】
上記の手順で得たCP-BzMAについてMALDI-TOF MS(イオン化剤:トリフルオロ酢酸銀)による質量分析を行った。その結果を図4に示す。図4は、実施例で得た環状ポリマー(CP-BzMA)についてのMALDI-TOF MSのチャートである。図4において、丸印を付したピークは、BTTの分子量+BzMAの分子量×n+銀イオンの質量[(BTT+nBzMA)+Ag]に対応する。
【0077】
図4に示すように、各ピーク間隔はBzMAの分子量(MBzMA=176.22)と一致し、それら各ピークがBTT1分子を含む環状CP-BzMAの分子量(+銀イオンの質量)に対応することから生成物が環状構造を有することがわかる。表4に、図4における重合度5~9の環状ポリマーに対応する各ピークについて、重合度(n)、MSによる[(BTT+nBzMA)+Ag]の実測値、及びその計算値をそれぞれ示す。
【0078】
【表4】
【0079】
・光重合による環状ポリマーの合成5(CP-MMA3)
【化20】
【0080】
径5mmのスクリューサンプル管にBTT(0.167g,1.00mmol)、1,4-ジオキサン(1.00mL)、2-イソプロピルチオキサントン(ITX,0.0128g,0.05mmol)及びメタクリル酸メチル(MMA,1.00g,10.0mmol)を加えて撹拌して均一溶液とした後、凍結脱気を4回行い、溶液から約1cmの間隔を空けて紫外線発光ダイオード(UV-LED、939mW/cm at 365nm)による光照射を室温で4時間行った。光照射終了後に反応溶液を減圧乾燥することで、生成物である環状ポリメチルメタクリレート(CP-MMA3)を透明な粘性固体として得た(転化率78%、収量0.407g、収率35%)。
【0081】
生成物の物性データは次の通りである。
FT-IR(KBr,cm-1):2995(νC-H芳香族),2950(νC-Hアルカン),1733(νC=Oカルボニル),1486(νC-C芳香族),1456(νC=Sチオアミド),758(νC-Sスルフィド).
H-NMR(500MHz,CDCl) δ(ppm):8.03(br,1.00H,H),7.88(br,1.14H,H),7.51(br,1.17H,H),7.41(br,1.53H,H),3.76-3.29(br,32.17H,H)2.18-1.56(br,20.45H,H)1.44-0.837(br,46.35H,H).
GPC(DMF,Polystyrene std,RI)Mn=1630,Mw/Mn=2.40
【0082】
【化21】
【0083】
上記の手順で得たCP-MMA3についてMALDI-TOF MS(イオン化剤:トリフルオロ酢酸銀)による質量分析を行った。その結果を図5に示す。図5は、実施例で得た環状ポリマー(CP-MMA3)についてのMALDI-TOF MSのチャートである。図5において、丸印を付したピークは、BTTの分子量+MMAの分子量×n+銀イオンの質量[(BTT+nMMA)+Ag]に対応する。
【0084】
図5に示すように、各ピーク間隔はMMAの分子量(MMMA=100.12)と一致し、それら各ピークがBTT1分子を含む環状CP-MMAの分子量(+銀イオンの質量)に対応することから生成物が環状構造を有することがわかる。表5に、図5における重合度5~9の環状ポリマーに対応する各ピークについて、重合度(n)、MSによる[(BTT+nMMA)+Ag]の実測値、及びその計算値をそれぞれ示す。
【0085】
【表5】
図1
図2
図3
図4
図5