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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130130
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】MEMSチップ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20230912BHJP
   G01L 7/08 20060101ALI20230912BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G01L9/00 303D
G01L7/08
H01L29/84 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034626
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 正広
【テーマコード(参考)】
2F055
4M112
【Fターム(参考)】
2F055CC02
2F055DD05
2F055EE14
2F055FF23
4M112AA01
4M112BA01
4M112CA01
4M112CA03
4M112CA04
4M112CA09
4M112DA03
4M112EA03
4M112EA06
4M112EA07
4M112EA11
4M112FA01
(57)【要約】
【課題】MEMSセンサに、外部において生じる歪が伝達されることを抑制できるMEMSチップを提供する。
【解決手段】MEMSチップ1は、MEMS基板10と、MEMS基板10に設けられており自らの変位及び/又は変形を電気信号として検出するMEMSセンサ7と、MEMS基板10のうちMEMSセンサ7の周囲に設けられており剛性がMEMS基板10の残余の部分に比して弱い脆弱部70とを有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に設けられており、自らの変位及び/又は変形を電気信号として検出する、MEMSセンサと、
前記基板のうち前記MEMSセンサの周囲に設けられており、剛性が前記基板の残余の部分に比して弱い、脆弱部と
を有するMEMSチップ。
【請求項2】
前記基板は、第1面と、前記第1面に対向する第2面とを有しており、
前記MEMSセンサは、前記第1面側に設けられており、
前記脆弱部は、前記第1面に開口した脆弱開口部と、該脆弱開口部から第2面側に延びる脆弱底部とを有している、
請求項1に記載のMEMSチップ。
【請求項3】
前記脆弱部は、前記MEMSセンサの外周に沿って延びる溝である、
請求項2に記載のMEMSチップ。
【請求項4】
前記溝は、断続的に延びている、
請求項3に記載のMEMSチップ。
【請求項5】
前記溝は、互いに平行に延びる複数条の溝要素によって構成されている、
請求項3又は4に記載のMEMSチップ。
【請求項6】
前記基板の前記第1面側に設けられており、前記MEMSチップと外部との間っで電気信号が入力され又は出力される、電極パッドをさらに備えており、
前記脆弱部は、前記電極パッドの周囲に設けられている、
請求項2~5のいずれか1つに記載のMEMSチップ。
【請求項7】
前記基板の前記第1面上に設けられており、前記MEMSセンサと前記電極パッドとを電気的に接続する、配線をさらに備えており、
前記脆弱部は、前記配線の周囲に設けられている、
請求項6に記載のMEMSチップ。
【請求項8】
前記脆弱部は、前記電極パッド及び/又は前記配線と、前記MEMSセンサとの間に位置している、
請求項7に記載のMEMSチップ。
【請求項9】
前記基板は、前記第1面に前記第2面側に凹設されたキャビティを有し、
前記MEMSチップは、
前記キャビティの前記第1面側の口元を覆うメンブレンと、
前記メンブレンの周縁部に設けられた抵抗と
をさらに備えており、
前記MEMSセンサは、前記キャビティ、前記メンブレン及び前記抵抗によって少なくとも構成されている、
請求項2~8のいずれか1つに記載のMEMSチップ。
【請求項10】
前記脆弱底部は、前記第1面側から前記第2面側に向かう方向において、前記キャビティの底と同じ位置か若しくは前記第2面側に位置している、
請求項9に記載のMEMSチップ。
【請求項11】
前記脆弱部は、前記キャビティの周縁部に対して平行に延びている、
請求項9又は10に記載のMEMSチップ。
【請求項12】
前記脆弱部は、前記キャビティの周縁部と該周縁部に対向する前記基板の周縁部との間のうち、前記キャビティの周縁部と前記基板の周縁部との中間位置か若しくは該中間位置よりも前記キャビティ側に位置している、
請求項9~11のいずれか1つに記載のMEMSチップ。
【請求項13】
前記脆弱部は、前記キャビティの縁部に対向する範囲において少なくとも延びている、
請求項9~12のいずれか1つに記載のMEMSチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、MEMSチップに関する。
【背景技術】
【0002】
MEMSチップは、基板に設けられたMEMSセンサを有し、MEMSセンサの変位、抵抗値の変化等を電気信号として検出する。例えば、特許文献1は、キャビティを密封するメンブレンの周囲に抵抗を形成し、メンブレンが変形したときの抵抗値の変化を検出することによって、周囲の圧力を計測する圧力センサを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-025966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MEMSチップは、例えば組立工程においてダイボンド材により実装基板又はパッケージ(以下、実装基板等と称する場合がある)に固定される。上記組立工程では、ダイボンド材を硬化させるためにダイボンド材に加熱し冷却する場合があり、この熱履歴によって実装基板等及び/又はダイボンド材に熱変形が生じることがある。このほか、製品への組み付け等様々な要因によっても実装基板等には歪が生じ得る。その結果、実装基板等に生じた歪がMEMSチップに伝達されることによってMEMSチップに歪が生じ、MEMSセンサの特性が変化し得る。
【0005】
本開示は、MEMSセンサに、外部において生じる歪が伝達されることを抑制できるMEMSチップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、
基板と、
前記基板に設けられており、自らの変位及び/又は変形を電気信号として検出する、MEMSセンサと、
前記基板のうち前記MEMSセンサの周囲に設けられており、剛性が前記基板の残余の部分に比して弱い、脆弱部と
を有するMEMSチップを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、MEMSセンサの周囲に脆弱部が設けられているので、MEMSセンサが実装基板等に実装された場合に実装基板等に生じ得る歪のMEMSセンサへの伝達が、脆弱部によって抑制又は防止される。これによって、歪に起因したMEMSセンサの検出精度の悪化が抑制されるので、MEMSセンサの特性が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本開示の第1実施形態に係るMEMSチップの平面図である。
図2図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3図1のIII-III線に沿った断面図である。
図4A図4AはMEMSチップが実装された基板の概略図である。
図4B図4B図4Aの基板が下方に凸に変形した状態を示す概略図である。
図4C図4C図4Aの基板が上方に凸に変形した状態を示す概略図である。
図5図5は第1変形例に係る脆弱部を有するMEMSチップの平面図である。
図6図6図5のVI-VI線に沿った断面図である。
図7図7は第2変形例に係る脆弱部を有するMEMSチップの平面図である。
図8図8図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。
図9図9は第3変形例に係る脆弱部を有するMEMSチップの平面図である。
図10図10は第4変形例に係る脆弱部を有するMEMSチップの平面図である。
図11図11は第5変形例に係る脆弱部を有するMEMSチップの平面図である。
図12図12は第2実施形態に係るMEMSチップの平面図である。
図13図13図12のXIII-XIII線に沿った断面図である。
図14図14図12のXIV-XIV線に沿った断面図である。
図15図15は第3実施形態に係るMEMSチップの平面図である。
図16A図16Aは比較例のMEMSチップが実装された基板の概略図である。
図16B図16B図16Aの基板が下方に凸に変形した状態の概略図である。
図16C図16C図16Aの基板が上方に凸に変形した状態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態に係るMEMSチップを添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、本開示の第1実施形態に係るMEMSチップ1の平面図である。図1において、後述する絶縁層3及び保護膜4は省略されている。図2は、図1のII-II線におけるMEMSチップ1の後述する脆弱部70に沿った断面図である。図3は、図1のIII-III線におけるMEMSチップ1の脆弱部70に直交する断面図である。本実施形態のMEMSチップ1は圧力センサである。図1図3に示されるように、MEMSチップ1は、直方体に形成されており、図1に示す平面視では略正方形状である。図2に示されるように、MEMSチップ1は、MEMS基板10と、MEMS基板10に積層されたメンブレン30とを有している。
【0011】
以下の説明では、便宜上、図1に示す平面視においてMEMSチップ1の各辺に沿った方向のうち図1の左右方向をX方向、図1の上下方向をY方向と称し、図2及び図3に示す断面視においてMEMSチップ1の厚み方向(図2及び図3における上下方向)をZ方向とそれぞれ称する。特に、図1における、右側を+X方向、左側を-X方向、上側を+Y方向、下型を-Y方向とそれぞれ称する。図2及び図3における、上側を+Z方向、下側を-Z方向と称する。
【0012】
図1図3に示されるように、MEMS基板10は、MEMSチップ1の本体を構成しており、シリコン製の直方体状部材である。MEMS基板10は、+Z側に位置する第1面11と-Z側に位置しており第1面11に対向する第2面12とを有している。第1面11及び第2面12は、X方向及びY方向に平行に延びている。第1面11には、-Z側に窪んだキャビティ20が形成されている。
【0013】
図1に示す平面視において、キャビティ20は、MEMS基板10の外周面10aから内側に離間しており、外周面10aに沿った略正方形状である。具体的には、キャビティ20は、底面25と、底面25の+Y側の周縁部から+Z側に延びる第1面21と、底面25の-Y側の周縁部から+Z側に延びる第2面22と、底面25の+X側の周縁部から+Z側に延びる第3面23と、底面25の-X側の周縁部から+Z側に延びる第4面24とを有している。
【0014】
第1面21と第3面23の間、第3面23と第2面22の間、第2面22と第4面24との間及び第4面24と第1面21との間には、丸み付けられた第1角部26、第2角部27、第3角部28及び第4角部29がそれぞれ形成されている。図3に示されるように、底面25は第1面11に対して平行に延びており、第1面11から底面25までの距離であるキャビティ深さ20Dが略一定である。本実施形態では例えばキャビティ深さ20Dは5μm以上30μm以下である。
【0015】
メンブレン30は、MEMS基板10よりも薄いシリコン製の薄膜状部材である。メンブレン30は、+Z側に位置する第1面31と-Z側に位置しており第1面31に対向する第2面32とを有している。第1面31及び第2面32は、X方向及びY方向に平行に延びている。メンブレン30は、第1面31と第2面32との間の寸法であるメンブレン厚み30Tが略一定である。本実施形態では例えばメンブレン厚み30Tは5μm以上30μm以下である。
【0016】
メンブレン30は、MEMS基板10に直接に接合されている。具体的には、MEMS基板10の第1面11に、メンブレン30の第2面32が直接接合されている。これにより、MEMS基板10とメンブレン30との間には、Si-Si接合による接合界面2が形成されている。図1に示されるように、接合界面2は、本実施形態では、キャビティ20を取り囲む閉環状に形成されており、その結果、キャビティ20はメンブレン30によって密閉されている。
【0017】
メンブレン30は、キャビティ20に対向しておりキャビティ20の内部の圧力とキャビティ20の外部の圧力との圧力差に応じてZ方向に変形する可動部33と、MEMS基板10に接合された固定部34とを含んでいる。可動部33はキャビティ20の開口形状に対応する平面視略四角形状である。
【0018】
MEMSチップ1は、さらに、電気抵抗である抵抗40と、MEMSチップ1と外部との間で電気信号が入力され又は出力される電極パッド50と、抵抗40と電極パッド50とを電気的に接続する配線60とを有している。
【0019】
抵抗40は、本実施形態では、メンブレン30の第1面31にボロン(B)等の不純物を注入することにより形成された拡散抵抗である。抵抗40は、メンブレン30の可動部33の4辺それぞれに対応して配置された第1抵抗41、第2抵抗42、第3抵抗43及び第4抵抗44を含んでいる。平面視において、第1~第4抵抗41~44はそれぞれ、キャビティ20の第1~第4面21~24それぞれに対応して配置されている。
【0020】
より具体的には、第1及び第2抵抗41,42は、平面視において可動部33の中心を挟んでY方向に対向しており、Y方向に延びる長手形状に形成されている。第1及び第2抵抗41,42は、可動部33及び固定部34に跨っており、換言すればキャビティ20の内外に亘って配置されている。第1及び第2抵抗41,42は、本実施形態では、それぞれ4つずつ形成されている。4つの第1抵抗41は、X方向に互いに間隔を空けて配置されており、平面視においてそれぞれ、キャビティ20の第1面21をY方向に横断している。
【0021】
X方向に隣り合う第1抵抗41は、第1中継配線41aによって互いに電気的に接続されている。第1中継配線41aは、4つの第1抵抗41を直列に接続している。第1中継配線41aは、各第1抵抗41の長手方向の端部に接続されている。第1抵抗41の-Y側の端部に接続された第1中継配線41aは可動部33上に形成されており、+Y側の端部に接続された第1中継配線41aは固定部34上に形成されている。
【0022】
同様に、4つの第2抵抗42は、X方向に互いに間隔を空けて配置されており、平面視においてそれぞれ、キャビティ20の第2面22をY方向に横断している。互いに隣り合う第2抵抗42は、第2中継配線42aによって互いに電気的に接続されている。第2中継配線42aは、4つの第2抵抗42を直列に接続している。第2中継配線42aは、各第2抵抗42の長手方向の端部に接続されている。第2抵抗42の+Y側の端部に接続された第2中継配線42aは可動部33上に形成されており、-Y側の端部に接続された第2中継配線42aは固定部34上に形成されている。
【0023】
一方、第3及び第4抵抗43,44は、平面視において可動部33の中心を挟んでX方向に対向しておりY方向に延びる長手形状に形成されている。第3及び第4抵抗43,44は、平面視において、可動部33に位置しており、固定部34には位置していない。
【0024】
第3及び第4抵抗43,44は、本実施形態では、それぞれ4つずつ形成されている。4つの第3抵抗43は、X方向及びY方向に互いに間隔を空けて2×2の行列状に配置されている。互いに隣り合う第3抵抗43は、第3中継配線43aによって互いに電気的に接続されている。第3中継配線43aは、4つの第3抵抗43を直列に接続している。第3中継配線43aは、各第3抵抗43の長手方向の端部に接続されている。第3中継配線43aは全て、可動部33上に形成されている。
【0025】
同様に、4つの第4抵抗44は、X方向及びY方向に互いに間隔を空けて2×2の行列状に配置されている。互いに隣り合う第4抵抗44は、第4中継配線44aによって互いに電気的に接続されている。第4中継配線44aは、4つの第4抵抗44を直列に接続している。第4中継配線44aは、各第4抵抗44の長手方向の端部に接続されている。第4中継配線44aは全て、可動部33上に形成されている。
【0026】
4つの第1抵抗41のうちX方向の両端部に位置する一対の第1抵抗41にはそれぞれ、+Y側の端部に第1コンタクト配線41bが接続されている。一対の第1コンタクト配線41bは、固定部34において、第1抵抗41に接続された端部からそれぞれ第1抵抗41から離れるように+X側又は-X側に延びている。
【0027】
同様に、4つの第2抵抗42のうちX方向の両端部に位置する一対の第2抵抗42にはそれぞれ、-Y側の端部に第2コンタクト配線42bが接続されている。一対の第2コンタクト配線42bはそれぞれ、固定部34において第2抵抗42に接続された端部から第2抵抗42から離れるように+X側又は-X側に延びている。
【0028】
4つの第3抵抗43のうち+X側に位置する一対の第3抵抗43にはそれぞれ、Y方向に互いに対向する端部に一対の第3コンタクト配線43bがそれぞれ接続されている。一対の第3コンタクト配線43bはそれぞれ、可動部33において第3抵抗43に接続された端部から+X側に延びて、平面視においてキャビティ20の第3面23を横断して固定部34に至っている。
【0029】
同様に、4つの第4抵抗44のうち-X側に位置する一対の第4抵抗44にはそれぞれ、Y方向に互いに対向する端部に一対の第4コンタクト配線44bがそれぞれ接続されている。一対の第4コンタクト配線44bはそれぞれ、可動部33において第4抵抗44に接続された端部から-X側に延びて、平面視においてキャビティ20の第4面24を横断して固定部34に至っている。
【0030】
第1~第4中継配線41a~44a及び第1~第4コンタクト配線41b~44bは、メンブレン30の第1面31にボロン(B)等の不純物を高濃度に注入することにより形成された拡散配線(p型領域)である。
【0031】
図3に示されるように、メンブレン30の第1面31には、絶縁層3が形成されている。絶縁層3は、例えば、酸化シリコン(SiO)であってもよい。絶縁層3は、メンブレン30の第1面31全面にわたって形成されている。本実施形態では絶縁層3の厚み3Tは例えば0.05μm以上1μm以下である。
【0032】
図1に示されるように、電極パッド50は、MEMSチップ1の4つの角それぞれに対応して形成されており、具体的には、キャビティ20に対して+X側且つ+Y側に位置する第1電極パッド51と、キャビティ20に対して+X側且つ-Y側に位置する第2電極パッド52と、キャビティ20に対して-X側且つ-Y側に位置する第3電極パッド53と、キャビティ20に対して-X側且つ+Y側に位置する第4電極パッド54とを含んでいる。
【0033】
図3に示されるように、第1~第4電極パッド51~54は絶縁層3に対して+Z側に積層されている。本実施形態では、第1~第4電極パッド51~54はそれぞれ、導電性金属製、例えばアルミニウム(Al)製である。図1に示されるように、第1~第4電極パッド51~54はそれぞれ、接地端子(GND)、負側電圧出力端子(Vout)、電圧印加用端子(Vdd)および正側電圧出力端子(Vout)である。
【0034】
配線60は、固定部34において、第1~第4抵抗41~44をブリッジ接続すると共に電極パッド50のそれぞれに接続されて、ブリッジ回路(ホイートストンブリッジ)を形成する、第1~第4配線61~64を含んでいる。各配線61~64は、例えばアルミニウム(Al)製である。図2に示されるように、各配線61~64は絶縁層3に対して+Z側に積層されている。
【0035】
第1配線61は、平面視において、+X側の第1コンタクト配線41bと+Y側の第3コンタクト配線43bとの間をキャビティ20の第1面21及び第3面23に沿って略直角に屈曲するように延びて、これらを接続している。第1配線61は、第1コンタクト配線41bと第3コンタクト配線43bとの間の途中で分岐して、第1電極パッド51に接続された第1分岐配線61aを有している。
【0036】
第2配線62は、平面視において、-Y側の第3コンタクト配線43bと+X側の第2コンタクト配線42bとの間をキャビティ20の第3面23及び第2面22に沿って略直角に屈曲するように延びて、これらを接続している。第2配線62は、第3コンタクト配線43bと第2コンタクト配線42bとの間の途中で分岐して、第2電極パッド52に接続された第2分岐配線62aを有している。
【0037】
第3配線63は、平面視において、-X側の第2コンタクト配線42bと-Y側の第4コンタクト配線44bとの間をキャビティ20の第2面22及び第4面24に沿って略直角に屈曲するように延びて、これらを接続している。第3配線63は、第2コンタクト配線42bと第4コンタクト配線44bとの間の途中で分岐して、第3電極パッド53に接続された第3分岐配線63aを有している。
【0038】
第4配線64は、平面視において、+Y側の第4コンタクト配線44bと-X側の第1コンタクト配線41bとの間をキャビティ20の第4面24及び第1面21に沿って略直角に屈曲するように延びて、これらを接続している。第4配線64は、第4コンタクト配線44bと第1コンタクト配線41bとの間の途中で分岐して、第4電極パッド54に接続された第4分岐配線64aを有している。
【0039】
上述した、各配線60と第1~第4コンタクト配線41b~44bとの接続は、絶縁層3をZ方向に貫通する導電性のコンタクト65を介して接続されている。
【0040】
図3に示されるように、絶縁層3の+Z側には保護膜4がさらに積層されている。保護膜4によって、各配線60が覆われると共に、各電極パッド50が中央部を除いて覆われている。保護膜4は、例えば窒化シリコン(SiN)であってもよい。各電極パッド50には、図3において二点鎖線で示す導電性のワイヤ5が接合されている。本実施形態では、ワイヤ5は例えば金(Au)製である。
【0041】
MEMSチップ1は、メンブレン30の可動部33が、キャビティ20の内部の圧力と外部の圧力とに差圧が生じたとき、該差圧によってZ方向に変位する。例えば、キャビティ20の外部の圧力が内部の圧力よりも低い場合には可動部33は+Z側に変位し、キャビティ20の外部の圧力が内部の圧力よりも高い場合には可動部33は-Z側に変位する。その結果、第1~第4抵抗41~44が歪んで、第1~第4抵抗41~44の抵抗値が変化する。
【0042】
上述したように、第1及び第2抵抗41,42はキャビティ20の周縁部に直交するように配置されている一方で、第3及び第4抵抗43,44はキャビティ20の周縁部に平行に配置されている。その結果、メンブレン30がZ方向に変位すると、第1及び第2抵抗41,42は長手方向に引き伸ばされるため抵抗値が増大する一方で、第3及び第4抵抗43,44は短手方向に引き伸ばされて断面積が増大するため抵抗値が減少する。
【0043】
第1電極パッド51を接地端子GNDとして第3電極パッド53を電圧印加用端子Vddとして一定のバイアス電圧を与えた状態で、メンブレン30がZ方向に変位すると、第1及び第2抵抗41,42と第3及び第4抵抗43,44との抵抗値の変化が異なり、正側電圧出力端子Vout(第4電極パッド54)と負側電圧出力端子Vout(第2電極パッド52)と間の電圧が変化する。したがって、出力端子としての第2電極パッド52及び第4電極パッド54間の電圧変化に基づいてMEMSチップ1に生じた圧力を検出できる。よって、第1~第4抵抗41~44、可動部33及びキャビティ20は、自らの変位及び/又は変形を電気信号として検出する本開示に係るMEMSセンサ7を構成している。
【0044】
ここで、図1に示されるように、本開示に係るMEMSチップ1は、キャビティ20の周囲すなわちMEMSセンサ7の周囲に脆弱部70をさらに備えている。本明細書では、脆弱部70とは、MEMSチップ1のうち、脆弱部70が設けられていない残余の部分に比して、剛性が弱められた部分を意味している。
【0045】
本実施形態では、脆弱部70は、MEMSチップ1に対して-Z側に凹設された溝として構成されている。図3に示されるように、脆弱部70は、保護膜4、絶縁層3、メンブレン30の固定部34をZ方向に貫通しており、MEMS基板10に対して第1面21側から第2面22側へ凹設されている。MEMSチップ1を、例えばフォトレジストをマスクとした各層に対応したエッチングガスを使用した異方性エッチングにより加工することによって、脆弱部70を形成できる。
【0046】
図1に示されるように、脆弱部70は、平面視において、キャビティ20の第1面21に沿って平行に延びる第1脆弱部71と、第2面22に沿って平行に延びる第2脆弱部72と、第3面23に沿って平行に延びる第3脆弱部73と、第4面24に沿って平行に延びる第4脆弱部74とを有している。
【0047】
図3に示されるように、本実施形態では、各脆弱部70の溝幅70Wは0.5μm以上10μm以下の略一定幅に構成されている。各脆弱部70は、MEMSチップ1の+Z側の表面に開口した脆弱開口部70aと、-Z側に延びた端部である脆弱底部70bとを有している。
【0048】
図4A図4C及び図16A図16Cを参照して、脆弱部70による作用を説明する。図4A図4Cは本実施形態に係るMEMSチップ1が実装された実装基板8が開示されている。図16A図16Cは比較例としてのMEMSチップ80が実装された実装基板8を示している。まず、図16Aを参照して、MEMSチップ80は、本実施形態に係るMEMSチップ1に対して脆弱部70が設けられていない点を除いて同様に構成されている。MEMSチップ80は、第2面12においてダイボンド材9を介して実装基板8に固定されている。ダイボンド材9として例えばハンダを使用できる。
【0049】
ダイボンド材9を加熱により溶融させた状態でMEMSチップ80を実装基板8に対して接合し、その後、冷却させることによってダイボンド材9を硬化させる。この他、ダイボンド材9として、加熱により硬化させるものも使用できる。したがって、MEMSチップ80を実装基板8にダイボンド材9を介して固定する組立工程において、加熱及び冷却を含む熱履歴によって、実装基板8及び/ダイボンド材9に歪が生じ得る。
【0050】
その結果、図16Bに示されるように、実装基板8が下方に凸に反るように変形した場合、MEMSチップ80も同様に下方に反るように変形してしまい、各抵抗40に歪が生じ得る。同様に、図16Cに示されるように、実装基板8が上方に反るように変形した場合、MEMSチップ80も同様に上方に反るように変形してしまい、各抵抗40に歪が生じる得る。いずれの場合でも、該歪に起因して各抵抗40の抵抗値が変化するためMEMSセンサ7の特性が変化し計測精度が悪化する。
【0051】
これに対して、本実施形態では、図4Aに示されるように、MEMSチップ1に脆弱部70が設けられている。その結果、図4Bに示されるように、実装基板8が下方に凸に反るように変形した場合でも、MEMSチップ1は脆弱部70において積極的に歪を吸収するように変形し、脆弱部70よりも内側への歪の伝達が抑制若しくは防止される。同様に、図4Cに示されるように、実装基板8が上方に凸に反るように変形した場合でも、MEMSチップ1は脆弱部70において積極的に歪を吸収するように変形し、脆弱部70よりも内側への歪の伝達が抑制若しくは防止される。
【0052】
したがって、本実施形態に係るMEMSチップ1によれば次の効果を奏する。
【0053】
MEMSセンサ7の周囲に脆弱部70が設けられているので、MEMSチップ1のうちMEMSセンサ7の周囲に生じる歪のMEMSセンサ7への伝達が、脆弱部70によって抑制又は防止される。これによって、MEMSチップ1の製造のとき、又は実装基板8若しくはパッケージ等に実装するときに実装基板8等に生じ得る歪がMEMSセンサ7に伝達されることが抑制又は防止されるので、該歪に起因したMEMSセンサ7の検出精度の悪化が抑制され、MEMSセンサ7の特性を安定化させることができる。
【0054】
また、MEMS基板10は、第1面11と、第1面11に対向する第2面12とを有しており、MEMSセンサ7は、第1面11側に設けられており、脆弱部70は、第1面側に開口した脆弱開口部70aと、該脆弱開口部70aから第2面側に延びた端部である脆弱底部70bとを有している。
その結果、脆弱部70は、第1面11側に開口した脆弱開口部70aから第2面12側に延びているので、第1面11側に設けられたMEMSセンサ7への歪の伝達が効果的に抑制される。
【0055】
また、脆弱部70は、MEMSセンサ7の外周に沿って延びる溝であるので、脆弱部70を容易に構成できる。
【0056】
また、MEMS基板10は、第1面11に第2面12側に凹設されたキャビティ20を有し、MEMSチップ1は、キャビティ20の第1面11側の口元を覆うメンブレン30と、メンブレン30の可動部33の周縁部に設けられた抵抗40をさらに備えており、MEMSセンサ7は、キャビティ20、メンブレン30の可動部33及び抵抗40によって少なくとも構成されている。
その結果、MEMSチップ1が、メンブレン30の変位によって気圧を検出するような圧力センサである場合に、上記開示に係る効果が好適に発揮される。
【0057】
また、脆弱部70は、キャビティ20の周縁部に対して平行に延びている。
その結果、脆弱部70とキャビティ20の周縁部との間の間隔が略均一となるので、脆弱部70によって、キャビティ20側への歪の伝達がキャビティ20の周縁部に沿った方向において均一に抑制されるので、MEMSチップの特性を安定化させやすい。
【0058】
また、好ましくは、図3に示されるように、各脆弱部70は、脆弱底部70bが、Z方向において、キャビティ20の底面25と同じ位置か若しくは-Z側に位置している。第1脆弱部71を例にとって具体的に説明すると、保護膜4の外表面から脆弱底部70bまでの深さを71Dとして、保護膜4の外表面からキャビティ20の底面25の深さ位置を20Dとしたとき、第1脆弱部71は71D/20D≧1となる関係式を満たすように形成されている。
その結果、脆弱部70のキャビティ20側への歪の伝達がより確実に抑制される。
なお、脆弱部70の深さ70Dは、上記関係式を満たしていれば深いほど好ましく、MEMS基板10を貫通して第2主面12に連通していてもよい。
【0059】
また、好ましくは、各脆弱部70は、平面視においてキャビティ20に対向する範囲において少なくとも延びている。図2を参照して、第2脆弱部72を例にとって具体的に説明すると、第2脆弱部72は、キャビティ20を-Y側に投影した範囲の全てに少なくとも位置している。第2脆弱部72の長さを72Lとしてこれに対向する第2面22の長さを22Lとしたとき、第2脆弱部72は72L/22L≧1となる関係式を満たすように形成されている。
その結果、脆弱部70が、少なくともキャビティ20に対向する範囲に設けられているので、脆弱部70によってキャビティ20側への歪の伝達が確実に抑制される。
【0060】
また、好ましくは、各脆弱部70は、平面視においてMEMSチップ1の外周面1a(MEMS基板10の外周面10a)とキャビティ20との中間位置か若しくは該中間位置よりもキャビティ20側に位置している。図1を参照して第4脆弱部74を例にとって具体的に説明すると、第4脆弱部74に沿うMEMSチップ1の外周面1aからキャビティ20の第4面24までのY方向寸法をAとし、外周面1aから第4脆弱部74までのY方向寸法をBとしたとき、第4脆弱部74はB/A≧0.5となる関係式を満たすように形成されている。
その結果、MEMS基板10に生じる得る歪のキャビティ20側への伝達が、MEMS基板10のうちキャビティ20により近接した位置において脆弱部70によって抑制されるので、キャビティ20側への歪の伝達がより確実に抑制される。
【0061】
(第1変形例)
図5及び図6を参照して、第1変形例に係る脆弱部111を備えたMEMSチップ110について説明する。上記実施形態と共通する要素については同じ符号を付してその説明を省略する。図5はMEMSチップ110の平面図である。図6図5のVI-VI線における脆弱部111に沿った断面図である。図5に示されるように、脆弱部111は、平面視において直線状に構成された複数の脆弱要素111aが直線状に延びるように配列されている点で、上記実施形態に係る脆弱部70とは相違している。図6に示されるように、各脆弱要素111aのZ方向における深さ位置は、脆弱部70と同様に、キャビティ20の底面25と同じ位置か若しくは底面25よりも-Z側に位置している。
【0062】
脆弱部111は、平面視において、複数の脆弱要素111aによって断続的に延びるように構成されているので、脆弱部70のように連続的に延びている場合に比して、MEMS基板10の剛性が過度に低下することを抑制できる。
【0063】
(第2変形例)
図7及び図8を参照して、第2変形例に係る脆弱部121を備えたMEMSチップ120について説明する。上記実施形態と共通する要素については同じ符号を付してその説明を省略する。図7はMEMSチップ120の平面図である。図8図7のVIII-VIII線における脆弱部121に沿った断面図である。図7に示されるように、脆弱部121は、平面視において点状に構成された複数の脆弱要素121aが直線状に延びるように配列されている点で、上記実施形態に係る脆弱部70とは相違している。図8に示されるように、各脆弱要素121aのZ方向における深さ位置は、脆弱部70と同様に、キャビティ20の底面25と同じ位置か若しくは底面25よりも-Z側に位置している。
【0064】
脆弱部121は、平面視において、複数の脆弱要素121aによって点状に延びるように構成されているので、脆弱部70のように連続的に延びている場合に比して、MEMS基板10の剛性が過度に低下することを抑制できる。また、第1変形例に係る脆弱部111に比して、その延在方向においてより均一に剛性を低下させやすい。
【0065】
(第3変形例)
図9を参照して、第3変形例に係る脆弱部131を備えたMEMSチップ130について説明する。上記実施形態と共通する要素については同じ符号を付してその説明を省略する。図9はMEMSチップ130の平面図である。図9に示されるように、脆弱部131は、平面視において、キャビティ20の各周縁部に沿って蛇行して延びている。図示は省略するが、脆弱部131のZ方向における深さ位置は、脆弱部70と同様に、キャビティ20の底面25と同じ位置か若しくは底面25よりも-Z側に位置している。
【0066】
脆弱部131は蛇行するように延びているので、MEMS基板10のうち脆弱部131によって区画される部分の面剛性を高めることができるので、実装基板等から伝達される歪に対して抗しやすい。
【0067】
(第4変形例)
図10を参照して、第4変形例に係る脆弱部141を備えたMEMSチップ140について説明する。上記実施形態と共通する要素については同じ符号を付してその説明を省略する。図10はMEMSチップ140の平面図である。図10に示されるように、脆弱部141は、互いに平行に並んで延びる2条の溝要素141aによって構成されている。図示は省略するが、各溝要素141aのZ方向における深さ位置は、脆弱部70と同様に、キャビティ20の底面25と同じ位置か若しくは底面25よりも-Z側に位置している。
【0068】
脆弱部141は、複数条の溝要素141aによって構成されているので、MEMSセンサ7への歪の伝達がより確実に抑制される。
【0069】
(第5変形例)
図11を参照して、第5変形例に係る脆弱部151を備えたMEMSチップ150について説明する。上記実施形態と共通する要素については同じ符号を付してその説明を省略する。図11はMEMSチップ150の平面図である。図11に示されるように、脆弱部151は、平面視において、キャビティ20のみならず、各電極パッド50および各配線60をも含んで、これらを内側に囲むように閉環状に構成されている。図示は省略するが、脆弱部151の深さ位置は、脆弱部70と同様に、キャビティ20の底面25と同じ位置か若しくは底面25よりも-Z側に位置している。
【0070】
脆弱部151は、閉環状に構成されているので、MEMSセンサ7への歪の伝達が様々な方向において確実に抑制される。
【0071】
[第2実施形態]
図12図14を参照して、第2実施形態に係る脆弱部201を備えたMEMSチップ200について説明する。上記実施形態と共通する要素については同じ符号を付してその説明を省略する。図12はMEMSチップ200の平面図である。図13図12のXIII-XIII線に沿った断面図である。図14図12のXIV-XIV線に沿った断面図である。図12に示されるように、脆弱部201は、各電極パッド50の周囲に形成された複数の電極パッド脆弱部202と、各配線60に沿って形成された複数の配線脆弱部203とを有している。
【0072】
電極パッド脆弱部202は、第1~第4電極パッド51~54それぞれに対応して、第1~第4電極パッド脆弱部202a~202dを有している。各電極パッド脆弱部202は、平面視において、対応する電極パッド50を、対応する第1~第4分岐配線61a~64aに接続された部分を除いて内側に取り囲むように形成されている。
【0073】
配線脆弱部203は、第1~第4配線61~64それぞれに対応して、略直角に屈曲するように延びる第1~第4配線脆弱部203a~203dを有している。各配線脆弱部203は、平面視において、対応する配線60の内側(キャビティ20側)に形成されている。換言すれば、各配線脆弱部203は、平面視において対応する配線60とキャビティ20との間に位置している。
【0074】
図13及び図14に示されるように、各電極パッド脆弱部202及び各配線脆弱部203は、Z方向における深さ位置は、脆弱部70と同様に、キャビティ20の底面25と同じ位置か若しくは底面25よりも-Z側に位置している。
【0075】
図13を参照して、電極パッド脆弱部202による作用を第3電極パッド53を例にとって説明する。図13に二点鎖線で示すように、第3電極パッド53を形成するときの熱履歴及び/又はMEMSチップ200が実装された不図示の製品における使用時の雰囲気温度に起因して、第3電極パッド53及びMEMS基板10は熱膨張し得るが、アルミニウム製である第3電極パッド53は熱膨張量がシリコン製であるMEMS基板10よりも大きいため、該熱膨張量の差に起因して第3電極パッド53の周囲に歪が生じ得る。
【0076】
このほか、経時的に、第3電極パッド53に接合されるワイヤ5を介して伝達されるワイヤ張力が電極パッド50に生じる場合があり、さらにまた、アルミニウム製である第3電極パッド53と金製であるワイヤ5との間の接合部における合金化反応によっても、第3電極パッド53に歪が生じ得る。
【0077】
この場合であっても、第3電極パッド53の周囲には第3電極パッド脆弱部202cが形成されているので、第3電極パッド53の周囲に生じ得る歪のMEMSセンサ7への伝達が抑制される。
【0078】
同様に、図14を参照して、配線脆弱部203による作用効果を第4配線64を例にとって説明する。図14に二点鎖線で示すように、第4配線64を形成するときの熱履歴及び/又はMEMSチップ200が実装された不図示の製品における使用時の雰囲気温度に起因して、第4配線64及びMEMS基板10は熱膨張し得るが、アルミニウム製である第4配線64は熱膨張量がシリコン製であるMEMS基板10よりも大きいため、該熱膨張量の差に起因して第4配線64の周囲に歪が生じ得る。
【0079】
この場合であっても、第4配線64の周囲には第4配線脆弱部203dが形成されているので、第4配線64の周囲に生じ得る歪のMEMSセンサ7への伝達が抑制される。
【0080】
さらに、第4配線脆弱部203dは第4配線64とMEMSセンサ7との間に位置しているので、第4配線64に起因して生じる歪の、MEMSセンサ7への伝達がより確実に抑制される。
【0081】
[第3実施形態]
図15を参照して、第3実施形態に係る脆弱部301を備えたMEMSチップ300について説明する。上記実施形態と共通する要素については同じ符号を付してその説明を省略する。図15はMEMSチップ300の平面図である。図15に示されるように、MEMSチップ300は、第2実施形態に係るMEMSチップ200の電極パッド50及び配線60に対して、異なる電極パッド350及び配線360を有している。
【0082】
電極パッド350は、第1~第4電極パッド351~354を有しており、それぞれキャビティ20の-Y側においてX方向に並ぶように配置されている。また、配線360は、第1~第4配線361~364を有しており、それぞれ第1~第4抵抗41~44をブリッジ接続すると共に分岐して対応する電極パッド350に接続されている。
【0083】
本実施形態では、脆弱部301は、平面視において、電極パッド350の周囲、より具体的には電極パッド350を+Y側、+X側及び-X側から覆うように逆U字状に配置された電極パッド脆弱部302と、各配線60とキャビティ20との間に配置された配線脆弱部303とを有している。
【0084】
したがって、第2変形例に係る脆弱部201と同様に、電極パッド脆弱部302及び配線脆弱部303によって、電極パッド350及び配線360に起因して生じる歪の、MEMSセンサ7への伝達がより確実に抑制される。なお、本実施形態では、各電極パッド350とキャビティ20との間に電極パッド脆弱部302が位置しているので、電極パッド350の周囲に生じ得る歪のMEMSセンサ7への伝達がより一層抑制又は防止される。
【0085】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0086】
上記各実施形態では、平面視においてキャビティ20がMEMSチップ1外形に沿っている場合を例にとって説明したがこれに限らない。平面視におけるキャビティの形状とMEMSチップの外形とが沿っていない場合、脆弱部はキャビティの形状に沿わして設ける方が好ましい。
【0087】
また、上記実施形態では、キャビティが平面視略四角形状の場合を例にとって説明したがこれに限らない。キャビティの形状は四角形以外の任意の形状を採用でき、脆弱部をキャビティに沿って設ければよい。
【0088】
上記各実施形態では、MEMSチップ1が圧力センサである場合を例にとって説明したが、MEMSセンサ7の変位及び/又は変形によって生じ得る電気信号の変化を検出するものであれば適宜、適用できる。例えば、MEMSチップが、加速度センサ、角加速度センサ、又は湿度センサである場合にも、上記開示に係る内容を好適に実施できる。
【符号の説明】
【0089】
1 MEMSチップ
3 絶縁層
4 保護膜
5 ワイヤ
7 MEMSセンサ
8 実装基板
9 ダイボンド材
10 MEMS基板
11 第1面
12 第2面
20 キャビティ
30 メンブレン
33 可動部
34 固定部
40 抵抗
41 第1抵抗
42 第2抵抗
43 第3抵抗
44 第4抵抗
50 電極パッド
51 第1電極パッド
52 第2電極パッド
53 第3電極パッド
54 第4電極パッド
60 配線
61 第1配線
62 第2配線
63 第3配線
64 第4配線
70 脆弱部
70b 脆弱底部
71 第1脆弱部
72 第2脆弱部
73 第3脆弱部
74 第4脆弱部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C