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特開2023-130134プログラム、情報処理方法及び情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130134
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/10 20160101AFI20230912BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20230912BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20230912BHJP
   A61B 6/12 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
A61B34/10
A61B6/03 360J
A61B6/03 360B
A61B34/20
A61B6/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034630
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】栗田 朋香
(72)【発明者】
【氏名】吉本 彩加
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA22
4C093AA25
4C093FF16
4C093FF21
(57)【要約】
【課題】血管内の閉塞部位を通過する経路を提示することが可能なプログラム等を提供する。
【解決手段】コンピュータは、プログラムに従って、血管内の閉塞部位を撮影した撮影画像を取得する。また、コンピュータは、取得した撮影画像に基づいて、前記撮影画像中の閉塞部位の性状を示す性状情報を取得する。そして、コンピュータは、前記撮影画像中の閉塞部位の性状を示す性状情報に基づいて、血管内治療に用いる医療器具が前記撮影画像中の閉塞部位を通過する経路を特定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内の閉塞部位を撮影した撮影画像を取得し、
取得した撮影画像に基づいて、前記閉塞部位の性状を示す性状情報を取得し、
取得した性状情報に基づいて、血管内治療に用いる医療器具が前記閉塞部位を通過する経路を特定する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
前記性状情報が示す前記閉塞部位における性状の分布に基づいて前記経路を特定する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記経路に採用する閉塞部位の性状を登録し、
前記性状情報が示す前記閉塞部位における性状の分布と、前記経路に採用する閉塞部位の性状とに基づいて、前記経路を特定する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記経路に採用する閉塞部位の性状の種類を示すCT値の範囲を登録し、
前記性状情報が示す前記閉塞部位における性状の分布と、前記経路に採用する閉塞部位の性状の種類を示すCT値の範囲とに基づいて、前記経路を特定する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項1~3のいずれかひとつに記載のプログラム。
【請求項5】
複数の前記経路を特定した場合に、各経路に対するスコアを算出し、
算出したスコアが高い経路を推奨経路に特定する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項1~4のいずれかひとつに記載のプログラム。
【請求項6】
前記血管内に挿入されたガイドワイヤを患者の体外から撮影した透視画像を取得し、
取得した透視画像上に、特定した前記経路を表示する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項1~5のいずれかひとつに記載のプログラム。
【請求項7】
特定した前記経路を前記撮影画像上に重ねて表示し、
前記血管内に挿入されたガイドワイヤを患者の体外から撮影した透視画像を取得し、
取得した透視画像に基づいて、前記血管内のガイドワイヤの位置を特定し、
前記撮影画像上に表示した前記経路上に、特定したガイドワイヤを表示する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項1~6のいずれかひとつに記載のプログラム。
【請求項8】
前記血管内に挿入されたガイドワイヤを患者の体外から撮影した透視画像を取得し、
取得した透視画像に基づいて、前記血管内のガイドワイヤの先端位置を特定し、
特定したガイドワイヤの先端位置と、特定した前記経路とに基づいて、前記ガイドワイヤの先端が前記経路から逸脱する可能性を特定し、
特定した可能性に応じてアラートを出力する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項1~7のいずれかひとつに記載のプログラム。
【請求項9】
前記血管内に挿入されたガイドワイヤを患者の体外から撮影した透視画像を取得し、
取得した透視画像に基づいて、前記血管内のガイドワイヤの先端位置を特定し、
特定したガイドワイヤの先端位置と、特定した前記経路とに基づいて、前記ガイドワイヤの先端が前記経路から逸脱したか否かを判定し、
前記経路から逸脱したと判定した場合、前記ガイドワイヤの先端を前記経路に誘導するための操作内容を特定し、
特定した操作内容を出力する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項1~8のいずれかひとつに記載のプログラム。
【請求項10】
前記血管内に挿入されたガイドワイヤの先端が、前記血管内の閉塞部位に当接した際に前記先端の荷重を検知し、
前記荷重が所定値以上となった場合、前記ガイドワイヤの移動を停止させる
処理を前記コンピュータに実行させる請求項1~9のいずれかひとつに記載のプログラム。
【請求項11】
血管内の閉塞部位を撮影した撮影画像を取得し、
取得した撮影画像に基づいて、前記閉塞部位の性状を示す性状情報を取得し、
取得した性状情報に基づいて、血管内治療に用いる医療器具が前記閉塞部位を通過する経路を特定する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項12】
血管内の閉塞部位を撮影した撮影画像を取得する画像取得部と、
取得した撮影画像に基づいて、前記閉塞部位の性状を示す性状情報を取得する性状取得部と、
取得した性状情報に基づいて、血管内治療に用いる医療器具が前記閉塞部位を通過する経路を特定する特定部と
を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理方法及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血管に生じた狭窄や閉塞等の病変に対する治療法として、バルーンカテーテルやステント等の治療用デバイスを経皮的に血管内に挿入し、病変を拡張する血管内治療が行われている。血管内治療において、術者は、まず、治療用デバイスを病変まで案内するガイドワイヤを血管内に挿入し、病変に通過させる。続いて、術者は、先行するガイドワイヤに沿わせて治療用デバイスを病変に通過させ、病変の治療を行う。特許文献1では、生体管腔を介して生体内の対象部位に医療器具を送達させるための経路を提示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/221508号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
病変が慢性完全閉塞病変である場合、血管は、完全に閉塞している。そのため、術者は、血管内の閉塞部位においてガイドワイヤが通過可能な経路を探索する必要がある。慢性完全閉塞病変は、石灰化の進行が高度な硬い部分と石灰化の進行が低度な柔らかい部分とを含むことが多い。したがって、術者は、ガイドワイヤの先端で閉塞部位の柔らかい部分を探りながら、ガイドワイヤを閉塞部位に通過させる。術者は、閉塞部位にガイドワイヤを通過させる経路の探索を、ガイドワイヤの先端を閉塞部位に押し当てた際に得られる触感に基づいて行っている。そのため、術者は、高い熟練度を必要とする。熟練度が高い術者であっても、ガイドワイヤが通過する経路の探索に時間を要する場合があり、手技時間の短縮や患者負担の軽減が難しい。また、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路が不適切であると、術者は、ガイドワイヤに過剰に押し込み力を加えてしまったり、必要以上に先端剛性の高いガイドワイヤを使用してしまったりすることがある。この場合、ガイドワイヤの先端が意図した進行方向から逸れ、血管穿孔を生じるリスクが高まる。
【0005】
一つの側面では、血管内治療に用いる医療器具が血管内の閉塞部位を通過する経路を提示することが可能なプログラム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの側面に係るプログラムは、血管内の閉塞部位を撮影した撮影画像を取得し、取得した撮影画像に基づいて、前記閉塞部位の性状を示す性状情報を取得し、取得した性状情報に基づいて、血管内治療に用いる医療器具が前記閉塞部位を通過する経路を特定する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面では、血管内治療に用いる医療器具が血管内の閉塞部位を通過する経路を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
図2】診療DBの構成例を示す説明図である。
図3】CT画像の例を示す説明図である。
図4】経路の探索処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5】画面例を示す説明図である。
図6】経路の探索処理の説明図である。
図7】ナビゲーション処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8】画面例を示す説明図である。
図9】ナビゲーションシステムの構成例を示す模式図である。
図10】実施形態2のナビゲーション処理手順の一例を示すフローチャートである。
図11】学習モデルの構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示のプログラム、情報処理方法及び情報処理装置について、その実施形態を示す図面に基づいて詳述する。以下の各実施形態では、血管内治療として、冠動脈に生じた慢性完全閉塞病変の閉塞部位に対する経皮的冠動脈形成術を一例に説明する。なお、各実施形態において治療の対象とする管腔器官は、血管に限定されず、胆管、膵管、気管支、腸等の他の管腔器官であってもよい。また、各実施形態において治療の対象とする閉塞部位は、慢性完全閉塞病変の閉塞部位に限定されず、血栓によって生じた塞栓や、血管が完全に閉塞してない狭窄であってもよい。
【0010】
(実施形態1)
血管内の閉塞部位を撮影した医用画像から閉塞部位の性状情報を取得し、取得した閉塞部位の性状情報に基づいて、血管内治療に用いる医療器具が閉塞部位を通過する経路を特定する情報処理装置について説明する。術者は、血管内治療を行う患者に対して、手技前に医用画像を撮影する。情報処理装置10(図1参照)は、血管内治療の手技前に撮影された閉塞部位を含む医用画像から閉塞部位の性状情報を取得し、血管内治療の手技においてガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を特定及び出力する処理を行う。術者は、情報処理装置10によって特定された経路を確認し、手技で採用する経路を決定する。そして、術者は、決定した経路に従って閉塞部位にガイドワイヤを通過させる。
【0011】
図1は、情報処理装置の構成例を示すブロック図である。情報処理装置10は、種々の情報処理及び情報の送受信が可能な装置であり、例えば、サーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ等である。情報処理装置10は、複数台設けられて分散処理する構成でもよく、1台の装置内に設けられた複数の仮想マシンによって実現されてもよい。情報処理装置10は、例えば、血管内治療を行う医療機関内に設置されて利用される。情報処理装置10をサーバコンピュータで構成する場合、情報処理装置10は、血管内治療を行う医療機関内に設置されたローカルサーバであってもよく、インターネット等のネットワークを介して通信接続されたクラウドサーバであってもよい。
【0012】
情報処理装置10は、制御部11、記憶部12、通信部13、入力部14、表示部15、読み取り部16、入出力I/F17等を含み、これらの各部はバスを介して相互に接続されている。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、又はGPU(Graphics Processing Unit)等の1又は複数のプロセッサを有する。制御部11は、記憶部12に記憶してあるプログラム12Pを適宜実行することにより、情報処理装置10が行うべき種々の情報処理、制御処理等を行う。
【0013】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等を含む。記憶部12は、制御部11が実行するプログラム12P(プログラム製品)及びプログラム12Pの実行に必要な各種のデータ等を予め記憶している。記憶部12は、制御部11がプログラム12Pを実行する際に発生するデータ等を一時的に記憶する。記憶部12は、後述する診療DB12aを記憶している。診療DB12aは、情報処理装置10に接続された他の記憶装置に記憶されてもよく、情報処理装置10が通信可能な他の記憶装置に記憶されてもよい。
【0014】
通信部13は、有線通信又は無線通信によって、インターネット又はLAN(Local Area Network)等のネットワークに接続するための通信モジュールであり、ネットワークを介して他の装置との間で情報の送受信を行う。入力部14は、ユーザによる操作入力を受け付け、操作内容に対応した制御信号を制御部11へ送出する。表示部15は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等であり、制御部11からの指示に従って各種の情報を表示する。入力部14及び表示部15は、一体として構成されたタッチパネルであってもよい。なお、入力部14及び表示部15は必須ではなく、情報処理装置10は、接続された端末装置を通じて操作を受け付け、表示すべき情報を外部の表示装置へ出力する構成でもよい。
【0015】
読み取り部16は、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード等を含む可搬型記憶媒体10aに記憶された情報を読み取る。記憶部12に記憶されるプログラム12P及び各種のデータは、制御部11が読み取り部16を介して可搬型記憶媒体10aから読み取って記憶部12に記憶してもよい。また、記憶部12に記憶されるプログラム12P及び各種のデータは、制御部11が通信部13を介して他の装置からダウンロードして記憶部12に記憶してもよい。
【0016】
入出力I/F17は、透視画像撮影装置20が接続されるインタフェースである。制御部11は、入出力I/F17を介して、透視画像撮影装置20からX線透視画像を取得する。入出力I/F17は、透視画像撮影装置20のほかに、血管内に挿入されたカテーテルによって血管内部から血管の断層像を得る血管内検査装置(図示せず)が接続されていてもよい。この場合、制御部11は、入出力I/F17を介して、血管内検査装置から血管の断層像を取得する。
【0017】
図2は、診療DB12aの構成例を示す説明図である。診療DB12aは、情報処理装置10が設置された医療機関を利用する患者の診療データ(電子カルテデータ)を格納するデータベースである。図2に示す診療DB12aは、患者ID列、患者情報列、治療情報列等を含む。患者ID列は、各患者を識別するための識別情報(患者ID)を記憶する。患者IDは、医療機関で発行された診察券の診察券番号であってもよい。患者情報列及び治療情報列は、それぞれ、患者に関する患者情報、及び、患者に実施済み又は実施予定の血管内治療に関する治療情報を患者IDに対応付けて記憶する。患者情報は、患者の年齢及び性別を含む属性情報、診断名、危険因子(生活習慣病の有無等)、既往歴等の症状に関する情報等を含む。また、患者情報は、患者の診療記録であり、治療歴、薬の服用歴、血液検査及び尿検査等の各種検査結果、X線透視画像、超音波画像、CT画像、MRI画像、PET(Positron Emission Tomography)画像等の医用画像等を含んでもよい。
【0018】
治療情報は、患者に実施済み又は実施予定の血管内治療に関する情報である。治療情報は、血管内治療の実施日(実施した日付又は実施予定日)、血管内治療の対象である閉塞部位が存在する位置(血管の名称)、閉塞部位の性状、血管内治療においてデバイスを血管に挿入するための穿刺部位等を含む。また、治療情報は、血管内治療を行う前に撮影されたCT画像、手技中に撮影されたX線透視画像等の医用画像を含む。治療情報は、血管内治療に関する情報として、X線透視画像を撮影する際に使用した又は使用予定の造影剤の投与量、X線透視画像の撮影時間等を含んでもよい。
【0019】
治療情報は、閉塞部位の長さや直径等、閉塞部位に関する情報を含んでもよい。また、治療情報は、ガイドワイヤ、各種カテーテル、ステント等の血管内治療で使用するデバイスに関する情報を含んでもよい。デバイスに関する情報は、各デバイスの製品名、形状、寸法(直径及び長さ)、使用本数、使用条件(バルーンカテーテル及びステントの拡張条件等)を含んでもよい。診療DB12aの記憶内容は、図2に示す例に限定されず、患者に関する各種の情報、患者に実施した治療及び実施予定の治療に関する各種の情報を記憶してもよい。
【0020】
本実施形態の情報処理装置10は、血管内治療の手技前に撮影された閉塞部位を含む医用画像から取得した閉塞部位の性状情報に基づいて、血管内治療の手技においてガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を探索する。本実施形態の情報処理装置10が経路の探索のために取得する医用画像は、コンピュータ断層撮影(CT:Computed Tomography)、磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)、血管内超音波、光干渉断層法、血管内視鏡等のモダリティで閉塞部位を撮影することによって得られる。以下では、情報処理装置10が取得する医用画像として、CTによって得られたCT画像を使用する実施形態を一例に説明する。なお、各実施形態において使用する医用画像は、CT画像に限定されず、閉塞部位の性状情報を含む画像を取得可能なモダリティで撮影された医用画像を使用してもよい。
【0021】
図3は、CT画像の例を示す説明図である。図3Aは、閉塞部位及びその周辺領域を含むCT画像である。なお、図3AのCT画像は、説明の簡略化のため、血管のみを示しており、閉塞部位近傍を矩形で示してある。図3Bは、CTが収集した生データを多断面再構成法(MPR:Multi Planer Reconstruction)で画像処理して生成した、閉塞部位を含む血管のCT画像を示す。図3Bに示すCT画像は、血管を直線状に伸ばした状態の縦断面像(ストレッチ画像)と、任意の位置の血管の横断面像とを含む。図3Bの各横断面像は、縦断面像に表示された各横線位置における血管の横断面像を示す。また、図3Cは、閉塞部位をCT画像のHU(Hounsfield units)で示されるCT値で複数種類のタイプ(性状)に分類し、色分けして表示した性状分布画像(プラークマップ)を示す。閉塞部位のタイプは、ソフトプラーク、繊維質プラーク、石灰化等があり、順にCT値が上昇する。図3Cに示す性状分布画像では、閉塞部位の任意の横断面における閉塞部位の性状の分布がハッチングで示されている。CT画像及び性状分布画像は、3次元画像として生成される。CT画像及び性状分布画像は、CTに搭載されたソフトウェアによって生成できる。また、CT画像及び性状分布画像は、CTが収集した生データを情報処理装置10で再構成することによっても生成できる。
【0022】
以下に、CT画像から取得した閉塞部位の性状情報に基づいて、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を探索する処理について説明する。図4は、経路の探索処理手順の一例を示すフローチャート、図5は、画面例を示す説明図、図6は、経路の探索処理の説明図である。以下の処理は、情報処理装置10の制御部11が、記憶部12に記憶してあるプログラム12Pに従って行う。
【0023】
血管内治療を実施予定の患者について、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を探索する場合、情報処理装置10の制御部11(画像取得部)は、閉塞部位を撮影したCT画像(撮影画像)を取得する(S11)。CT画像は、患者の治療情報として診療DB12aに記憶されている。CT画像と共に閉塞部位の性状分布画像が診療DB12aに記憶されている場合、制御部11(性状取得部)は、当該CT画像に対応する閉塞部位の性状分布画像を診療DB12aから読み出して取得する(S12)。閉塞部位の性状分布画像が診療DB12aに記憶されていない場合、制御部11は、CT画像をCTへ送信することにより、CTが生成する性状分布画像を取得できる。なお、制御部11は、CTから生データを取得し、再構成処理を行うことにより、CT画像及び性状分布画像を生成してもよい。
【0024】
制御部11は、取得した複数の性状分布画像から1枚を抽出する(S13)。例えば、制御部11は、図3Cに示すような、閉塞部位における血管の横断面の性状分布画像を抽出する。制御部11は、抽出した閉塞部位の性状分布画像に基づいて、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路として適した領域を特定する(S14)。情報処理装置10は、ガイドワイヤが通過する経路として適した閉塞部位のタイプを、経路に採用する性状情報として記憶部12に予め記憶(登録)している。具体的には、情報処理装置10は、ガイドワイヤが通過する経路として適した閉塞部位のタイプに対応するCT値の範囲を予め記憶部12に記憶(登録)している。したがって、制御部11は、性状分布画像に基づいて、閉塞部位のうち、CT値があらかじめ設定した値の範囲内である領域を抽出し、抽出した領域を、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路として適した領域に特定する。ガイドワイヤは、閉塞部位内の柔らかい部分を通過しやすい。したがって、ガイドワイヤが通過する経路として適した領域は、石灰化以外の閉塞部位のタイプに分類された領域であることが好ましい。制御部11がガイドワイヤが通過する経路として適した領域に特定するCT値の範囲は、例えば150HU以下に設定される。なお、制御部11がガイドワイヤが通過する経路として適した領域に特定するCT値の範囲は、入力部14を介した入力操作によって適宜変更できるように構成されていてもよい。
【0025】
制御部11は、ステップS13~S14の処理を、閉塞部位の一方の端面を含む性状分布画像から他方の端面を含む性状分布画像に向かって順に行う。制御部11は、ステップS13~S14の処理を閉塞部位の一方の端面を含む性状分布画像から開始した場合、ステップS13~S14における処理対象の性状分布画像が、閉塞部位の他方の端面を含む性状分布画像であるか否かを判断する(S15)。即ち、制御部11は、ステップS14で特定した領域によってガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路が特定されたか否かを判断する。制御部11は、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路が特定されていないと判断した場合(S15:NO)、ステップS13の処理に戻る。そして、制御部11は、ステップS12で取得した性状分布画像から他方の端面の方向に所定距離移動した位置での閉塞部位の横断面における性状分布画像を抽出し(S13)、抽出した性状分布画像に基づいて、ここでの閉塞部位の横断面においてガイドワイヤが通過する経路として適した領域を特定する(S14)。ここでは、制御部11は、直近のステップS14で特定したガイドワイヤが通過する経路として適した領域に連続する領域のうちで、CT値が予め設定した値の範囲内である領域を抽出し、抽出した領域を、ガイドワイヤが通過する経路として適した領域に特定する。
【0026】
制御部11は、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路が特定されたと判断するまでステップS13~S14の処理を繰り返し、閉塞部位の所定距離毎に、閉塞部位の各横断面においてガイドワイヤが通過する経路として適した領域を抽出する。制御部11(特定部)は、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路が特定されたと判断した場合(S15:YES)、ステップS14で特定した各横断面におけるガイドワイヤが通過する経路として適した領域を連結させて、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を特定する(S16)。これにより、制御部11は、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を特定できる。
【0027】
制御部11は、特定したガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路について、適正度を示す経路スコアを算出する(S17)。制御部11は、閉塞部位の各横断面に対して、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路に特定された領域に応じた横断面スコアを算出する。そして、制御部11は、閉塞部位の一方の端面から他方の端面までの経路全体に含まれる横断面スコアを加算することにより、特定した経路の適正度を示す経路スコアを算出する。閉塞部位の各横断面の横断面スコアは、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路に特定された領域の適正度に関連する1以上の要素に応じて算出される。要素は、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路に特定された領域の閉塞部位のタイプ、CT値、領域の大きさ(面積)、血管壁からの距離等であり、要素毎にガイドワイヤの通過に対する適正度を反映した要素スコアが設定される。例えば、ガイドワイヤは、閉塞部位の性状が柔らかい部分ほど通過しやすいため、閉塞部位のタイプに応じた要素スコアは、ソフトプラークタイプで大きい値が設定され、石灰化タイプで小さい値が設定される。CT値に応じた要素スコアは、閉塞部位のタイプがソフトプラーク、繊維質プラーク、石灰化の順にCT値が上昇するため、CT値が小さいほど大きい値が設定される。閉塞部位の横断面におけるガイドワイヤが通過する経路に特定された領域の大きさが大きいほど、ガイドワイヤ通過時のガイドワイヤの経路からの逸脱が生じにくくなるため、領域の大きさに応じた要素スコアは、領域の大きさが大きいほど大きい値が設定される。ガイドワイヤは、ガイドワイヤの先端が血管壁から遠いほど、ガイドワイヤ通過時のガイドワイヤによる血管の穿孔リスクが低くなるため、血管壁からの距離に応じた要素スコアは、血管壁から遠いほど大きい値が設定される。閉塞部位の横断面スコアは、横断面に含まれる各要素スコアを加算することにより算出される。なお、各要素スコアは、当該要素がガイドワイヤの通過に与える影響度に応じて重み付けされてもよい。横断面スコアを算出する各横断面は、ステップS13で抽出した性状分布画像と同一の横断面であってもよく、異なる横断面であってもよい。制御部11は、各横断面に対して算出した横断面スコアを加算して、特定したガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路の適正度を示す経路スコアとして算出する。
【0028】
なお、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路の適正度を示す経路スコアの算出方法は、上記のような横断面毎に横断面スコアを算出して加算する方法に限定されない。経路スコアは、経路上の、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路に特定された領域における一部の要素のみを用いて算出されてもよい。例えば、制御部11は、要素としてCT値を用い、特定した経路上のCT値の合計が小さいほど高い経路スコアを算出してもよい。また、制御部11は、要素として領域の大きさを用い、特定した経路上の領域の大きさの最小値、平均値等の値が大きいほど高い経路スコアを算出してもよい。また、制御部11は、要素として血管壁からの距離を用い、特定した経路上の血管壁からの距離の最小値、平均値等の値が大きいほど高い経路スコアを算出してもよい。また、制御部11は、要素として血管壁厚を用い、特定した経路上の血管壁厚の最大値、平均値等の値が大きいほど高い経路スコアを算出してもよい。
【0029】
制御部11は、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路の適正度を示す経路スコアの算出において、各横断面における閉塞部位の性状の分布だけでなく、経路の進行方向の延長線上に存在する閉塞部位の性状及び血管の走行も加味して、経路スコアを算出してもよい。図6は、探索中の経路の例を示す。図6において、ガイドワイヤは、経路を右側から左側に進行するものとし、太線は経路、破線は経路の進行方向の延長線を示している。図6Aは、経路の進行方向の延長線上に石灰化組織が存在する例を示す。図6Aに示すように、石灰化組織の上側を通る経路と、下側を通る経路とが候補として存在する場合、石灰化組織の上側を通る経路は、石灰化組織の下側を通る経路と比較して、ガイドワイヤの先端が血管壁により近づく方向に進行することとなるため、血管の穿孔リスクが高くなる。したがって、制御部11は、石灰化組織の下側を通る経路に、石灰化組織の上側を通る経路よりも高い経路スコアを算出する。また、図6Bは、経路の進行方向の延長線上に血管の湾曲部が存在する例を示す。図6Bに示すように、石灰化組織の上側を通る経路と、下側を通る経路とが候補としてある場合、石灰化組織の上側を通る経路は、ガイドワイヤがそのまま直進すると、ガイドワイヤの先端が血管の湾曲部に衝突して血管が穿孔する可能性が高い。したがって、制御部11は、石灰化組織の下側を通る経路に、石灰化組織の上側を通る経路よりも高い経路スコアを算出する。このように、制御部11は、経路の進行方向の延長線上に存在する閉塞部位の性状及び血管の走行に応じて、特定した経路に対する経路スコアを算出する。また、制御部11は、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路の適正度を示す経路スコアの算出において、経路の全長が短いほど高いスコアを算出してもよい。なお、制御部11が特定した経路の適正度を示すために算出するスコアは、経路スコアに限定されない。例えば、制御部11は、特定した経路の手技の難易度に応じたスコアを算出して、経路の適正度を示してもよい。
【0030】
制御部11は、ステップS16で特定したガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を示す経路情報と、ステップS17で算出した当該経路に対する経路スコアとを対応付けて記憶部12に記憶する(S18)。なお、経路情報は、閉塞部位の横断面において、経路の位置(領域)を血管の中心を原点とした2次元座標で表した情報である。
【0031】
制御部11は、ステップS16で特定した経路以外の他の経路候補があるか否かを判断する(S19)。制御部11は、ステップS16で経路を特定する際に、ステップS14で特定した各横断面における領域のうちで、経路に採用しなかった領域があるか否かを判断し、採用しなかった領域がある場合に、他の経路候補があると判断する。他の経路候補があると判断した場合(S19:YES)、制御部11は、ステップS16の処理に戻り、既に特定された経路に採用されていない領域を連結させて、他の経路を特定する(S16)。制御部11は、特定した他の経路について、ステップS17~S18の処理を行い、新たに特定した他の経路についても、経路を示す経路情報と、当該経路に対して算出した経路スコアとを対応付けて記憶部12に記憶する。
【0032】
制御部11は、他の経路候補がないと判断するまで、ステップS16~S18の処理を繰り返す。なお、制御部11は、少なくとも1つの経路を特定し、特定した経路について経路情報及び経路スコアを記憶部12に記憶する。他の経路候補がないと判断した場合(S19:NO)、制御部11は、ステップS18で記憶部12に記憶した経路情報及び経路スコアを読み出して表示部15に表示する(S20)。図5Aは、閉塞部位を含む血管のCT画像と、閉塞部位を拡大したCT画像とを表示した画面の例を示す。閉塞部位を拡大したCT画像には、特定された経路及びそれを指す矢符と、特定された経路の適正度を示すための経路スコアとが表示されている。なお、表示部15に表示される特定された経路の適正度は、経路スコアを段階的に表したランク形式であってもよい。
【0033】
制御部11は、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路の候補として複数の経路を特定した場合、図5Bに示すように、特定された複数の経路が表示されたCT画像を表示部15に表示する。図5Bは、特定された2つの経路について、特定された経路及びそれを指す矢符が表示されたCT画像と、特定された経路の適正度を示すための経路スコアとを表示した画面の例を示す。術者は、図5に示す表示部15の画面表示を確認することにより、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を容易に決定できる。なお、制御部11は、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路の候補として複数の経路を特定した場合、候補の経路の経路スコアが最も高い経路を推奨経路として提示するように構成されてもよい。制御部11は、術者から他の経路への切り替え指示を受け付けた場合に、CT画像上に表示する経路を他の経路に切り替えるように構成されてもよい。制御部11は、各経路の経路スコアが所定値以上であるか否かを判断し、所定値以上の経路スコアを有する経路についてのみ、表示部15に表示してもよい。制御部11は、術者が採用した経路の経路情報を治療情報として診療DB12aに記憶する。
【0034】
上述した処理により、本実施形態の情報処理装置10では、血管内治療の手技前に閉塞部位を撮影したCT画像に基づいて、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を特定して術者に提示することができる。情報処理装置10は、血管内治療の手技前に撮影された閉塞部位を含む医用画像から閉塞部位の性状情報を取得し、血管内治療の手技においてガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を特定及び出力する処理を行う。術者は、情報処理装置10によって特定された経路を確認し、手技で採用する経路を決定する。そして、術者は、決定した経路に従って閉塞部位にガイドワイヤを通過させる。情報処理装置10は、医用画像から取得した閉塞部位の性状情報に基づいて、閉塞部位における石灰化の進行が高度な硬い部分を避け、石灰化の進行が低度な柔らかい部分を通過するような経路を特定する。これにより、術者は、ガイドワイヤの先端を閉塞部位に押し当てた際に得られる触感に基づいて経路を探索する必要がない。したがって、熟練度が低い術者でも、閉塞部位にガイドワイヤを容易に通過させることができる。また、術者は、触感に基づいてガイドワイヤを通過させる経路を探索する場合と比較して、短時間で経路を決定できる。このため、手技時間が短縮でき、患者の負担が軽減できる。また、術者は、ガイドワイヤに過剰な押し込み力を加えたり、先端の剛性が必要以上に高いガイドワイヤを使用したりすることがないため、血管穿孔を生じるリスクを低減できる。これにより、手技の安全性が向上する。また、情報処理装置10は、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路の候補として複数の経路を特定した場合、各経路を表示したCT画像と共に特定された経路の適正度を示すための経路スコアを表示する。術者は、各経路上の閉塞部位の性状及び各経路スコアに基づいて、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路の適正度を比較検討した上で、手技に採用する経路を決定できる。これにより、手技の安全性がさらに向上する。
【0035】
以下に、上述した処理によって特定されたガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路に従って、閉塞部位にガイドワイヤを通過させる操作をナビゲーションする処理について説明する。経路は、上述した処理によって特定されたガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路のうち、術者が採用した経路である。図7は、ナビゲーション処理手順の一例を示すフローチャート、図8は、画面例を示す説明図である。以下の処理は、情報処理装置10の制御部11が、記憶部12に記憶してあるプログラム12Pに従って行う。
【0036】
閉塞部位に対する血管内治療を開始するにあたり、情報処理装置10の制御部11は、患者のCT画像及び経路情報を診療DB12aから読み出す(S31)。制御部11は、図8Aの画面中の画像bに示すように、閉塞部位を含む血管の縦断面像と、任意の位置の血管の横断面像を含むCT画像とを表示部15に表示する(S32)。図8A中の画像bは、図3Bに示すCT画像と同様の、血管を直線状に伸ばした状態の縦断面像(ストレッチ画像)と、任意の位置の血管の横断面像とを含む画像である。
【0037】
術者は、血管造影により得られた透視画像で血管の走行や血管の状態を確認しながら、ガイドワイヤを血管内に挿入する。血管造影では、患者の血管内に造影剤を注入した後、透視画像撮影装置20(血管撮影装置)を用いて患者の体外からX線を照射し、血管の走行や血管の状態が描出されたX線透視画像を得る。血管内治療において血管内に挿入されるガイドワイヤは、長軸に沿って延びるコアと、コアの少なくとも一部を覆う被覆層を備えている。コアは、ニッケル・チタン合金等の超弾性合金、ステンレス鋼等の金属で形成される。被覆層は、タングステン粉末等のX線不透過性材料を含む樹脂で形成される。また、ガイドワイヤは、先端部のコアと被覆層との間に、X線不透過性材料を含むマーカが装着されてもよい。マーカは、金、白金等のX線不透過性の金属及びそれらを含む合金で形成されたコイルやパイプで形成される。ガイドワイヤは、X線不透過性材料を含むことにより、透視画像撮影装置20によって撮影されるX線透視画像上に描出される。
【0038】
情報処理装置10の制御部11は、入出力I/F17を介して、透視画像撮影装置20によって撮影されたX線透視画像を取得する(S33)。制御部11は、図8Aの画面中の画像aの位置に、取得したX線透視画像を表示する。制御部11は、X線透視画像中の血管の走行に基づいて、又は透視画像撮影装置20に対して設定された撮影方向に基づいて、患者に対する透視画像撮影装置20の撮影方向を特定する。
【0039】
制御部11は、特定された透視画像撮影装置20の撮影方向と同一の方向から見た経路を含むCT画像を特定する(S34)。即ち、制御部11は、図8Aの画像aの位置に表示中のX線透視画像と同一の方向から見たCT画像を、表示中のX線透視画像に対応するCT画像として特定する。そして、制御部11は、特定したCT画像と表示部15に表示中のX線透視画像とを重ね合わせる処理を実行することで、特定した経路を含むCT画像を、表示中のX線透視画像に重ね合わせた融合画像を生成する(S35)。制御部11は、図8Aの画像aに示すように、生成した融合画像を表示部15に表示する。制御部11は、CT画像を、透視画像撮影装置20の撮影方向や撮影位置、拡大率の変更にリアルタイムかつ自動的に追従させる。X線透視画像にはガイドワイヤが描出され、CT画像には経路が表示されているので、術者は、ガイドワイヤが経路に沿って通過しているか否かを把握できる。
【0040】
制御部11は、複数の撮影方向から撮影されたX線透視画像に基づいて、血管内におけるガイドワイヤの位置を3次元的に特定する(S36)。そして、制御部11は、図8Aの画像cに示すように、ガイドワイヤの先端位置における閉塞部位の縦断面像と経路とを含むCT画像上に、ガイドワイヤを重ね合わせて表示する(S37)。制御部11は、ガイドワイヤの先端位置における閉塞部位の縦断面像と経路とを含むCT画像上に、ガイドワイヤの先端位置を十字の交点で表示してもよい。また、制御部11は、図8Aの画像dに示すように、ガイドワイヤの先端位置における閉塞部位の横断面像と経路とを含むCT画像上に、ガイドワイヤの先端位置を十字の交点で示す。このとき、制御部11は、図8Aの画像bにおいて、図8Aの画像dに示す横断面像に対応する横断面像や縦断面像の横線を強調表示してもよい。これにより、術者は、閉塞部位の縦断面像と横断面像の両方を確認することができるため、閉塞部位にガイドワイヤを通過させる操作をより正確に行うことができる。
【0041】
制御部11が表示部15に表示するCT画像は、CT値で表示した画像であっても、閉塞部位のタイプ(性状)によって色分けして表示した性状分布画像であってもよい。CT値による表示と性状分布による表示とは、術者によって表示の切り替えが可能であってもよく、CT値による表示と性状分布による表示の両方が同時に表示部15に表示されてもよい。透視画像撮影装置20が、1度に2方向から撮影が可能なバイプレーンシステムである場合、制御部11は、手技中に血管及びガイドワイヤのX線透視画像を3次元的に取得することが可能である。これにより、制御部11は、CT画像とX線透視画像との重ね合わせ処理及びガイドワイヤの位置の特定をより正確に行うことができるので、ナビゲーションの精度が向上する。
【0042】
術者が閉塞部位にガイドワイヤを通過させる間、制御部11は、ステップS31で読み出した経路情報と、ステップS36で特定したガイドワイヤの先端位置とに基づいて、ガイドワイヤの先端が経路から逸脱する可能性を算出する(S38)。制御部11は、ガイドワイヤの先端位置と経路との一致度に基づいて、ガイドワイヤの先端が経路から逸脱する可能性を100点満点で算出する。制御部11は、経路の径方向の中心とガイドワイヤの先端との距離に応じて、ガイドワイヤが経路から逸脱する可能性を算出する。具体的には、制御部11は、経路の径方向の中心とガイドワイヤの先端との距離が小さいほど、経路から逸脱する可能性として小さい値を算出する。制御部11は、経路から逸脱する可能性を算出する際に、ガイドワイヤの先端の向きを加味してもよい。ガイドワイヤの先端が経路から逸脱する方向を向いている場合、制御部11は、ガイドワイヤが経路から逸脱する可能性として高い値を算出してもよい。また、制御部11は、ガイドワイヤの先端位置と経路との一致度に基づいて、ガイドワイヤの先端が経路から逸脱したことを検知した場合、経路から逸脱する可能性として100点を算出してもよい。これにより、制御部11は、ガイドワイヤが経路から逸脱した時点で、アラートを出力することが可能となる。
【0043】
制御部11は、ガイドワイヤの先端が経路から逸脱する可能性が所定閾値以上であるか否かを判断し(S39)、所定閾値以上であると判断した場合(S39:YES)、アラートを出力する(S40)。制御部11は、「経路から逸脱する可能性が高くなっています」のようなメッセージを、図8Aに示す画面に表示して術者に警告する。情報処理装置10がランプを備える場合、制御部11は、ランプを点灯又は点滅させることによってアラートを出力してもよい。また、情報処理装置10がブザーを備える場合、制御部11は、ブザーを鳴動させることによってアラートを出力してもよい。これにより、術者は、意図しない方向にガイドワイヤが進行して血管が穿孔するリスクを低減できる。
【0044】
制御部11は、アラートを出力した場合、ガイドワイヤを経路に誘導するためのリカバリ操作を特定する(S41)。制御部11は、3次元座標上において、ガイドワイヤの各位置の座標値と、経路の中央線上の各位置の座標値とを比較し、ガイドワイヤの先端を経路の中央線上に誘導するために術者がガイドワイヤに行うべきリカバリ操作を特定する。制御部11は、診療DB12aの治療情報から手技に使用中のガイドワイヤの先端形状の情報を読み出して、術者がガイドワイヤに行うべきリカバリ操作を特定してもよい。ガイドワイヤが経路から逸脱している場合、制御部11は、ガイドワイヤを最短で経路に誘導可能なリカバリ操作を特定する。なお、制御部11は、ガイドワイヤを所定距離だけ後退するリカバリ操作を特定してもよい。
【0045】
制御部11は、特定したリカバリ操作を表示部15に表示して術者に提示する(S42)。制御部11は、図8Bに示すような、リカバリ操作を含むメッセージを、図8Aに示す画面中に表示する。図8Bに示す例では、「経路から逸脱する可能性が高くなっています」のアラートメッセージと、「ガイドワイヤを右に45°回転させてください」のリカバリ操作を含むメッセージとが表示されている。術者は、提示されたリカバリ操作を実行する。これにより、術者は、ガイドワイヤが経路から逸脱する可能性が高い場合、又は逸脱した場合に、ガイドワイヤ先端の向きを修正してガイドワイヤを経路に誘導することができる。
【0046】
ガイドワイヤの先端が経路から逸脱する可能性が所定閾値未満であると判断した場合(S39:NO)、制御部11は、ステップS40~S42の処理をスキップしてステップS43の処理に移行する。制御部11は、ガイドワイヤの閉塞部位への通過が完了したか否かを判断する(S43)。ガイドワイヤの閉塞部位への通過が完了したか否かの判断は、入力部14を介した術者の操作入力に基づいて行われてもよく、予め閉塞部位に設定されていた領域をガイドワイヤの先端が通過したか否かに基づいて行われてもよい。
【0047】
ガイドワイヤの閉塞部位への通過が完了していないと判断した場合(S43:NO)、制御部11は、ステップS33の処理に戻り、ステップS33~S42の処理を繰り返す。ガイドワイヤの閉塞部位への通過が完了したと判断した場合(S43:YES)、制御部11は、閉塞部位にガイドワイヤを通過させる操作をナビゲーションする処理を終了する。
【0048】
本実施形態の情報処理装置10は、血管内の閉塞部位を撮影した医用画像から閉塞部位の性状情報を取得し、取得した閉塞部位の性状情報に基づいて、血管内治療においてガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を特定する構成を有する。術者は、血管内治療を行う患者に対して、手技前に医用画像を撮影する。情報処理装置10は、血管内治療の手技前に撮影された閉塞部位を含む医用画像から閉塞部位の性状情報を取得し、血管内治療の手技においてガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を特定及び出力する処理を行う。情報処理装置10は、血管内治療の手技前に撮影されたCT画像に基づいて、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を特定して術者に提示できる。これにより、術者は、情報処理装置10によって特定された経路を確認し、手技で採用する経路を決定することができる。また、本実施形態の情報処理装置10は、血管内治療の手技中に撮影されるX線透視画像に基づいて、血管内におけるガイドワイヤの先端位置を特定し、特定したガイドワイヤの先端位置に基づいて、ガイドワイヤが経路上を進行しているか否かを判定し、必要に応じてアラートを出力することにより、術者が経路に従って閉塞部位にガイドワイヤを通過させる操作をナビゲーションすることができる。これにより、術者は、ガイドワイヤの先端を閉塞部位に押し当てた際に得られる触感に基づいて経路を探索する必要がない。したがって、熟練度が低い術者でも、閉塞部位にガイドワイヤを容易に通過させることができる。また、術者は、触感に基づいてガイドワイヤを通過させる経路を探索する場合と比較して、短時間で経路を決定できるので、手技時間が短縮でき、患者の負担が軽減できる。さらに、術者は、ガイドワイヤに過剰な押し込み力を加えたり、先端の剛性が必要以上に高いガイドワイヤを使用したりすることがないため、血管穿孔を生じるリスクを低減できる。これにより、手技の安全性が向上する。
【0049】
本実施形態において、CT画像から経路を特定する処理、及び、経路に基づくナビゲーション処理は、情報処理装置10がローカルで行う構成に限定されない。例えば、本実施形態は、上述した各処理を実行する情報処理装置をそれぞれ設けてもよい。また、本実施形態は、CT画像から経路を特定する処理を実行するサーバを設けてもよい。この場合、情報処理装置10は、血管内治療を行う予定の患者のCT画像をサーバへ送信し、サーバでCT画像から特定した経路の情報を受信するように構成される。また、本実施形態は、経路に基づくナビゲーション処理を実行するサーバを設けてもよい。この場合、情報処理装置10は、手技前に撮影したCT画像と手技中に撮影したX線透視画像とをサーバへ送信し、サーバで判定したガイドワイヤが経路から逸脱するか否かの判定結果と、アラート及びリカバリ操作とを受信するように構成される。
【0050】
本実施形態では、血管内治療の手技前に撮影したCT画像からガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を探索する処理を行ったが、このような構成に限定されない。ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路は、血管内の閉塞部位における性状分布を3次元で把握できる画像であれば、MRI画像等の他の医用画像を用いて探索することができる。また、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路の探索は、CT画像、MRI画像、X線透視画像、超音波画像、PET画像等の各種の医用画像を併用してもよい。
【0051】
(実施形態2)
血管内に挿入したガイドワイヤの操作を、ガイドワイヤの基端に連結される補助装置によって自動で行うことが可能な構成について説明する。図9は、ナビゲーションシステムの構成例を示す模式図である。本実施形態の情報処理装置10は、図1に示す実施形態1の情報処理装置10と同様の構成を有するので、情報処理装置10についての詳細な説明は省略する。なお、本実施形態の情報処理装置10は、入出力I/F17を介して透視画像撮影装置20に加えて補助装置30が接続されている。
【0052】
補助装置30は、ガイドワイヤ31の基端部に接続され、情報処理装置10の入出力I/F17に接続されている。補助装置30は、血管内に挿入されるガイドワイヤ31の動作を制御する駆動装置であり、ガイドワイヤ31の長軸方向への移動とガイドワイヤ31の長軸周りの回転を行う機能を有する。
【0053】
補助装置30は、情報処理装置10からの指示に従ってガイドワイヤ31の動作を制御することができる。したがって、情報処理装置10は、ガイドワイヤ31が経路から逸脱する可能性が高い場合、又は逸脱した場合に、補助装置30を介してガイドワイヤ31の動作を制御することにより、ガイドワイヤ31を経路に誘導するためのリカバリ操作を行うことができる。
【0054】
本実施形態の情報処理装置10において、血管内治療の手技前に撮影されたCT画像に基づいて、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を探索する処理は、実施形態1と同様である。
【0055】
図10は、実施形態2における閉塞部位にガイドワイヤを通過させる操作のナビゲーション処理手順の一例を示すフローチャートである。図10に示す処理は、図7に示す処理において、ステップS40を削除し、ステップS42の代わりにステップS51を追加したものである。図7と同じステップについては、説明を省略する。
【0056】
本実施形態の情報処理装置10において、制御部11は、ガイドワイヤ31の先端が経路から逸脱する可能性が所定閾値以上であると判断した場合(S39:YES)、ガイドワイヤを経路に誘導するためのリカバリ操作を特定する(S41)。そして、制御部11は、特定したリカバリ操作の実行指示を補助装置30へ出力し、補助装置30によってリカバリ操作を実行させる(S51)。補助装置30は、情報処理装置10からの指示に従ってガイドワイヤ31の動作を制御することにより、適切なリカバリ操作を行うことができる。その後、制御部11は、ステップS43の処理に移行する。なお、制御部11は、図7に示す実施形態1の処理と同様に、ガイドワイヤ31の先端が経路から逸脱する可能性が所定閾値以上であると判断した場合(S39:YES)、アラートを出力してもよい。また、制御部11は、リカバリ操作を特定した場合、特定したリカバリ操作の内容を表示部15に表示し、術者からの実行指示を受け付けた後に、補助装置30に対してリカバリ操作の実行を指示するように構成されてもよい。
【0057】
本実施形態の情報処理装置10は、上述した処理により、手技中にガイドワイヤ31が経路から逸脱する可能性が高い場合、又は逸脱した場合に、補助装置30によってリカバリ操作が実行されてガイドワイヤ31が操作される。これにより、本実施形態の構成は、閉塞部位にガイドワイヤ31を通過させる操作をより正確にかつ短時間で行うことができる。また、本実施形態の補助装置30は、ガイドワイヤ31の先端の荷重を検知可能なフォースゲージを備えていてもよい。これにより、補助装置30は、検知したガイドワイヤ31の先端の荷重に応じてガイドワイヤ31の動作を自動制御する処理を行うことができる。具体的には、補助装置30は、ガイドワイヤ31の先端の荷重が所定値以上となった場合に、ガイドワイヤ31の操作を停止する。これにより、本実施形態の構成は、手技の安全性を向上させることができる。なお、補助装置30がガイドワイヤ31の先端の荷重に応じてガイドワイヤ31の動作を制御する処理は、情報処理装置10が行ってもよい。情報処理装置10は、補助装置30が検知したガイドワイヤ31の先端の荷重を補助装置30から取得し、取得した荷重に基づいてガイドワイヤ31の操作を停止すべきか否かを判断し、停止すべきと判断した場合に、補助装置30に対してガイドワイヤ31の停止を指示してもよい。
【0058】
本実施形態では、上述した実施形態1と同様の効果が得られる。また、本実施形態では、補助装置30を用いることにより、血管内でのガイドワイヤの操作を自動で行うことができるので、人為的なミスが抑制され、手技の安全性が向上する。なお、本実施形態においても、上述した実施形態1で適宜説明した変形例の適用が可能である。
【0059】
(実施形態3)
上述した実施形態1~2の情報処理装置10において、血管内治療の手技前に撮影されたCT画像に基づいて、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を探索する処理を、学習モデルを用いて行う情報処理装置について説明する。本実施形態の情報処理装置は、実施形態1の情報処理装置10と同様の構成を有するので、構成についての詳細な説明は省略する。本実施形態の情報処理装置10は、図1に示す実施形態1の情報処理装置10の構成に加えて、記憶部12に学習モデルを記憶している。学習モデルは、所定の訓練データを学習済みの機械学習モデルであり、人工知能ソフトウェアを構成するプログラムモジュールとしての利用が想定される。学習モデルは、入力値に対して所定の演算を行い、演算結果を出力するものであり、記憶部12には、学習モデルが備える層の情報、各層を構成するノードの情報、ノード間の重み(結合係数)等の情報が、学習モデルを定義する情報として記憶される。
【0060】
図11は、学習モデルの構成例を示す説明図である。図11Aに示す学習モデル12Mは、閉塞部位の横断面の性状分布画像を入力として、入力された性状分布画像中の、ガイドワイヤが通過する経路として適した領域を出力するモデルである。学習モデル12Mは、セマンティックセグメンテーションを用いた画像認識技術により、性状分布画像中のオブジェクト(経路として適した領域)を画素単位で分類することができるモデルである。本実施形態の学習モデル12Mは、1枚の性状分布画像を入力とし、性状分布画像に含まれるオブジェクトを認識するように学習済みの機械学習モデルであり、認識した結果を出力する。具体的には、学習モデル12Mは、入力された性状分布画像の各画素を、ガイドワイヤが通過する経路として適した領域とその他の領域とに分類し、各画素に領域毎のラベルを対応付けた分類済みの画像(以下ではラベル画像という)を出力する。学習モデル12Mは、U-Net、FCN(Fully Convolutional Network )、SegNet等で構成することができる。
【0061】
学習モデル12Mは、入力層、中間層及び出力層(図示せず)を有し、入力層には、処理対象の性状分布画像が入力される。中間層は、畳み込み層及びプーリング層と、逆畳み込み層とを有する。入力層を介して中間層に入力された性状分布画像は、畳み込み層でフィルタ処理等によって画像の特徴量が抽出されて特徴マップが生成され、生成された特徴量マップがプーリング層で圧縮される。逆畳み込み層は、畳み込み層及びプーリング層によって生成された特徴量マップを元の画像サイズに拡大(マッピング)する。なお、逆畳み込み層は、畳み込み層で抽出された特徴量に基づいて画像内にどのオブジェクトがどの位置に存在するかを画素単位で識別し、各画素がどのオブジェクトに対応するかを示したラベル画像を生成する。図11Aに示すように、学習モデル12Mから出力されるラベル画像は、性状分布画像の各画素が、ガイドワイヤが通過する経路として適した領域と、その他の領域とに分類され、各領域に応じた画素値が割り当てられた画像となる。図11Aの右側に示す画像では、ガイドワイヤが通過する経路として適した領域に分類された画素をハッチングで示している。
【0062】
学習モデル12Mは、訓練用の性状分布画像と、性状分布画像中の各画素に対して判別すべきオブジェクト(ここではガイドワイヤが通過する経路として適した領域及び他の領域)を示すデータがラベリングされたラベル画像とを含む訓練データを用いて、未学習の学習モデルを機械学習させることにより、生成される。訓練用のラベル画像は、訓練用の性状分布画像に対して、各オブジェクトの領域に対応する座標範囲と、各オブジェクトの種類とを表すラベルが付与されている。学習モデル12Mは、訓練データに含まれる性状分布画像が入力された場合に、訓練データに含まれるラベル画像を出力するように学習する。具体的には、学習モデル12Mは、入力された性状分布画像に基づいて中間層での演算を行い、性状分布画像中の各オブジェクト(ここではガイドワイヤが通過する経路として適した領域及び他の領域)を検出した検出結果を取得する。より具体的には、学習モデル12Mは、性状分布画像中の各画素に対して、分類されたオブジェクトの種類を示す値がラベリングされたラベル画像を出力として取得する。そして、学習モデル12Mは、取得した検出結果(ラベル画像)を、訓練データが示す正解のオブジェクト領域の座標範囲及びオブジェクトの種類と比較し、両者が近似するように、ノード間の重み(結合係数)等のパラメータを最適化する。パラメータの最適化の方法は、特に限定されないが、最急降下法、誤差逆伝播法等を用いることができる。これにより、性状分布画像が入力された場合に、性状分布画像中の、ガイドワイヤが通過する経路として適した領域及び他の領域を示すラベル画像を出力する学習モデル12Mが得られる。
【0063】
情報処理装置10は、このような学習モデル12Mを予め用意しておき、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を探索する際に、CT画像に基づいて生成された性状分布画像中の、ガイドワイヤが通過する経路として適した領域及び他の領域の検出に用いる。そして、情報処理装置10は、閉塞部位の複数箇所における性状分布画像から検出された、ガイドワイヤが通過する経路として適した領域を連結させることにより、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を特定できる。
【0064】
学習モデル12Mの学習は、他の学習装置で行われてもよい。他の学習装置で学習が行われて生成された学習済みの学習モデル12Mは、ネットワーク経由又は可搬型記憶媒体10a経由で学習装置から情報処理装置10にダウンロードされ、記憶部12に記憶される。
【0065】
本実施形態の情報処理装置10において、血管内治療の手技前に撮影されたCT画像に基づいてガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を探索する処理は、実施形態1と同様である。本実施形態では、図4中のステップS14において、制御部11は、ステップS13で抽出した1枚の性状分布画像を学習モデル12Mに入力し、学習モデル12Mからの出力情報(ラベル画像)に基づいて、ガイドワイヤが通過する経路として適した領域を特定する(S14)。具体的には、制御部11は、学習モデル12Mが出力したラベル画像中の、ガイドワイヤが通過する経路として適した領域に分類された領域を特定する。その他の処理は、実施形態1と同様である。
【0066】
本実施形態の情報処理装置10は、図11Aに示す学習モデル12Mの代わりに、図11Bに示す学習モデル12Maを用いて、血管内治療の手技前に撮影されたCT画像に基づいて、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を探索するように構成されていてもよい。図11Bに示す学習モデル12Maは、例えばDQN(Deep Q-Network)モデルで構成され、複数の性状分布画像が入力された場合に、所定の値以上のCT値を有する石灰化組織を回避して、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を出力するように学習してあるモデルである。学習モデル12Maは、強化学習によって学習され、複数の性状分布画像を入力とし、入力された性状分布画像に対して、所定の値未満のCT値を有する閉塞部位の領域を通って、閉塞部位の一方の端面から他方の端面まで通過可能な経路を出力するように学習する。具体的には、学習モデル12Maは、閉塞部位の一方の端面から他方の端面に向かって順に、複数の性状分布画像の所定の値未満のCT値を有する領域を連結して、閉塞部位の一方の端面から他方の端面まで到達できた場合に正の報酬を割り当て、到達できなかった場合に負の報酬を割り当てて、学習する。閉塞部位の一方の端面から他方の端面まで到達できなかった場合とは、閉塞部位の他方の端面に到達する前に、探索中の経路が、所定の値以上のCT値を有する領域に当接した場合や、血管壁に当接した場合等を含む。また、閉塞部位を通過する経路が生成できた場合であっても、経路の全長が所定値以上であった場合に負の報酬を割り当てるような学習を行ってもよい。このように学習した学習モデル12Maを用いることにより、情報処理装置10は、複数の性状分布画像を入力した場合に、それぞれの性状分布画像中の所定の値のCT値を有する領域を通る経路を特定できる。
【0067】
図11Bに示す学習モデル12Maは、複数の性状分布画像に加えて、手技に使用するガイドワイヤの情報を入力とし、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を出力するように構成されていてもよい。学習モデル12Maが、閉塞部位の性状分布に加えて、手技に使用するガイドワイヤの情報も加味して経路を特定することにより、情報処理装置10は、より適切な経路の提示が可能となる。
【0068】
本実施形態の情報処理装置10において、上述したように学習モデル12M,12Maを用いて特定したガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路に従って、閉塞部位にガイドワイヤを通過させる操作をナビゲーションする処理は、実施形態1と同様である。具体的には、制御部11は、図7に示す処理と同様の処理の実行が可能である。
【0069】
本実施形態の構成は、ガイドワイヤが閉塞部位を通過する経路を探索する際に学習モデルを用いることにより、経路の探索を高精度で行うことができる。本実施形態の構成は、実施形態1~2の情報処理装置10に適用可能であり、実施形態1~2の情報処理装置10に適用した場合であっても同様の効果が得られる。更に、本実施形態においても、上述した各実施形態で適宜説明した変形例の適用が可能である。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
10 情報処理装置
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
14 入力部
15 表示部
20 透視画像撮影装置
12a 診療DB
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