(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130142
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】コンデンサ及びコンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
H01G4/32 511L
H01G4/32 511D
H01G4/32 511A
H01G4/32 551Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034644
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾関 一平
(72)【発明者】
【氏名】小川 昇吾
(72)【発明者】
【氏名】浅谷 良市
(72)【発明者】
【氏名】高常 陵
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AB03
5E082AB04
5E082EE07
5E082EE12
5E082EE23
5E082EE24
5E082EE37
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG06
5E082FG34
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG27
5E082JJ02
5E082JJ12
5E082JJ22
5E082PP10
(57)【要約】
【課題】静電容量の変化を低減しつつ、発熱を抑制することができるコンデンサを提供する。
【解決手段】コンデンサ1は、コンデンサ本体10と、第1端面電極101と、第2端面電極102と、を備える。第1有効電極部51よりも膜抵抗値が低い部分が第1低抵抗部61を構成する。第2有効電極部52よりも膜抵抗値が低い部分が第2低抵抗部62を構成する。第1金属化フィルム21を加熱処理したときの、第1低抵抗領域601の熱収縮率が、第1有効電極領域501の熱収縮率よりも小さく、第1低抵抗領域601の熱収縮率と第1有効電極領域501の熱収縮率との差の絶対値が2.0%以下である。第2金属化フィルム22を加熱処理したときの、第2低抵抗領域602の熱収縮率が、第2有効電極領域502の熱収縮率よりも小さく、第2低抵抗領域602の熱収縮率と第2有効電極領域502の熱収縮率との差の絶対値が2.0%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びるコンデンサ本体と、前記コンデンサ本体の前記第1方向一方側に形成された第1端面電極と、前記コンデンサ本体の前記第1方向他方側に形成された第2端面電極と、を備え、
前記コンデンサ本体は、第1金属化フィルムと、前記第1方向に垂直な第2方向に沿って前記第1金属化フィルムに重ねられた第2金属化フィルムと、を含み、
前記第1金属化フィルムは、第1誘電体フィルムと、前記第1誘電体フィルムの前記第1方向他方側の端部に存在する第1マージン部を除く箇所に形成され、前記第1端面電極に接触する第1金属層と、前記第1金属層に形成され、前記第1端面電極に接触し、前記第1方向における長さが前記第1金属層よりも短い第1端部金属層と、を含み、
前記第2金属化フィルムは、第2誘電体フィルムと、前記第2誘電体フィルムの前記第1方向一方側の端部に存在する第2マージン部を除く箇所に形成され、前記第2端面電極に接触する第2金属層と、前記第2金属層に形成され、前記第2端面電極に接触し、前記第1方向における長さが前記第2金属層よりも短い第2端部金属層と、を含み、
前記第1金属層のうち、前記第2方向に沿って前記第2金属層に対向する部分が第1有効電極部を構成し、
前記第1金属層と前記第1端部金属層とが重なり、前記第1有効電極部よりも膜抵抗値が低い部分が第1低抵抗部を構成し、
前記第2金属層のうち、前記第2方向に沿って前記第1金属層に対向する部分が第2有効電極部を構成し、
前記第2金属層と前記第2端部金属層とが重なり、前記第2有効電極部よりも膜抵抗値が低い部分が第2低抵抗部を構成し、
前記第1金属化フィルムを120℃で30分間加熱処理したときの、前記第1低抵抗部が存在する領域である第1低抵抗領域の熱収縮率が、前記第1有効電極部が存在する領域である第1有効電極領域の熱収縮率よりも小さく、かつ、前記第1低抵抗領域の熱収縮率と前記第1有効電極領域の熱収縮率との差の絶対値が2.0%以下であり、
前記第2金属化フィルムを120℃で30分間加熱処理したときの、前記第2低抵抗部が存在する領域である第2低抵抗領域の熱収縮率が、前記第2有効電極部が存在する領域である第2有効電極領域の熱収縮率よりも小さく、かつ、前記第2低抵抗領域の熱収縮率と前記第2有効電極領域の熱収縮率との差の絶対値が2.0%以下である、
コンデンサ。
【請求項2】
前記第1端面電極、前記第2端面電極、前記第1端部金属層、及び前記第2端部金属層が、同種の金属で形成されている、
請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
第1方向に延びるコンデンサを製造する方法であって、
第1誘電体フィルムの前記第1方向一方側から前記第1方向他方側までの部分のうち、前記第1方向他方側の端部を第1マージン部として残し、前記第1マージン部以外の部分に蒸着により第1金属層を形成し、前記第1金属層の前記第1方向一方側の端部に蒸着により第1端部金属層を形成することにより、第1金属化フィルムを作製する第1金属化フィルム作製工程と、
第2誘電体フィルムの前記第1方向一方側から前記第1方向他方側までの部分のうち、前記第1方向一方側の端部を第2マージン部として残し、前記第2マージン部以外の部分に蒸着により第2金属層を形成し、前記第2金属層の前記第1方向他方側の端部に蒸着により第2端部金属層を形成することにより、第2金属化フィルムを作製する第2金属化フィルム作製工程と、
前記第1金属化フィルムの前記第1端部金属層を前記第1方向一方側に配置し、前記第2金属化フィルムの前記第2端部金属層を前記第1方向他方側に配置し、前記第1誘電体フィルム又は前記第2誘電体フィルムを介して前記第1金属層と前記第2金属層とが対向するように、前記第1方向に垂直な第2方向に沿って前記第1金属化フィルムと前記第2金属化フィルムとを重ねることにより、コンデンサ本体を作製するコンデンサ本体作製工程と、
前記コンデンサ本体の前記第1方向一方側に第1端面電極を形成し、前記第1方向他方側に第2端面電極を形成する端面電極形成工程と、を備え、
前記第1金属層のうち、前記第2方向に沿って前記第2金属層に対向する部分が第1有効電極部を構成し、
前記第1金属層と前記第1端部金属層とが重なり、前記第1有効電極部よりも膜抵抗値が低い部分が第1低抵抗部を構成し、
前記第2金属層のうち、前記第2方向に沿って前記第1金属層に対向する部分が第2有効電極部を構成し、
前記第2金属層と前記第2端部金属層とが重なり、前記第2有効電極部よりも膜抵抗値が低い部分が第2低抵抗部を構成し、
前記第1金属化フィルムを120℃で30分間加熱処理したときの、前記第1低抵抗部が存在する領域である第1低抵抗領域の熱収縮率が、前記第1有効電極部が存在する領域である第1有効電極領域の熱収縮率よりも小さく、かつ、前記第1低抵抗領域の熱収縮率と前記第1有効電極領域の熱収縮率との差の絶対値が2.0%以下であり、
前記第2金属化フィルムを120℃で30分間加熱処理したときの、前記第2低抵抗部が存在する領域である第2低抵抗領域の熱収縮率が、前記第2有効電極部が存在する領域である第2有効電極領域の熱収縮率よりも小さく、かつ、前記第2低抵抗領域の熱収縮率と前記第2有効電極領域の熱収縮率との差の絶対値が2.0%以下である、
コンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記第1端面電極、前記第2端面電極、前記第1端部金属層、及び前記第2端部金属層が、同種の金属で形成されている、
請求項3に記載のコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にコンデンサ及びコンデンサの製造方法に関し、より詳細には金属化フィルムを含むコンデンサ及びコンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属化フィルムコンデンサが開示されている。この金属化フィルムコンデンサは、コンデンサ用金属化フィルムを少なくとも1枚用いて構成されている。
【0003】
コンデンサ用金属化フィルムは、高分子フィルムの少なくとも片面に金属膜層を有する。電極引き出し用メタリコン側近傍の金属膜層部分(ヘビーエッジ部)が他の部分(アクティブ部)よりも厚く形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の金属化フィルムコンデンサでは、静電容量が変化しやすいおそれがある。さらに特許文献1の金属化フィルムコンデンサでは、通電時に発熱しやすいおそれもある。
【0006】
本開示の目的は、静電容量の変化を低減しつつ、発熱を抑制することができるコンデンサ及びコンデンサの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るコンデンサは、第1方向に延びるコンデンサ本体と、前記コンデンサ本体の前記第1方向一方側に形成された第1端面電極と、前記コンデンサ本体の前記第1方向他方側に形成された第2端面電極と、を備える。
【0008】
前記コンデンサ本体は、第1金属化フィルムと、前記第1方向に垂直な第2方向に沿って前記第1金属化フィルムに重ねられた第2金属化フィルムと、を含む。
【0009】
前記第1金属化フィルムは、第1誘電体フィルムと、前記第1誘電体フィルムの前記第1方向他方側の端部に存在する第1マージン部を除く箇所に形成され、前記第1端面電極に接触する第1金属層と、前記第1金属層に形成され、前記第1端面電極に接触し、前記第1方向における長さが前記第1金属層よりも短い第1端部金属層と、を含む。
【0010】
前記第2金属化フィルムは、第2誘電体フィルムと、前記第2誘電体フィルムの前記第1方向一方側の端部に存在する第2マージン部を除く箇所に形成され、前記第2端面電極に接触する第2金属層と、前記第2金属層に形成され、前記第2端面電極に接触し、前記第1方向における長さが前記第2金属層よりも短い第2端部金属層と、を含む。
【0011】
前記第1金属層のうち、前記第2方向に沿って前記第2金属層に対向する部分が第1有効電極部を構成する。
【0012】
前記第1金属層と前記第1端部金属層とが重なり、前記第1有効電極部よりも膜抵抗値が低い部分が第1低抵抗部を構成する。
【0013】
前記第2金属層のうち、前記第2方向に沿って前記第1金属層に対向する部分が第2有効電極部を構成する。
【0014】
前記第2金属層と前記第2端部金属層とが重なり、前記第2有効電極部よりも膜抵抗値が低い部分が第2低抵抗部を構成する。
【0015】
前記第1金属化フィルムを120℃で30分間加熱処理したときの、前記第1低抵抗部が存在する領域である第1低抵抗領域の熱収縮率が、前記第1有効電極部が存在する領域である第1有効電極領域の熱収縮率よりも小さく、かつ、前記第1低抵抗領域の熱収縮率と前記第1有効電極領域の熱収縮率との差の絶対値が2.0%以下である。
【0016】
前記第2金属化フィルムを120℃で30分間加熱処理したときの、前記第2低抵抗部が存在する領域である第2低抵抗領域の熱収縮率が、前記第2有効電極部が存在する領域である第2有効電極領域の熱収縮率よりも小さく、かつ、前記第2低抵抗領域の熱収縮率と前記第2有効電極領域の熱収縮率との差の絶対値が2.0%以下である。
【0017】
本開示の一態様に係るコンデンサの製造方法は、第1方向に延びるコンデンサを製造する方法である。
【0018】
前記コンデンサの製造方法は、第1金属化フィルム作製工程と、第2金属化フィルム作製工程と、コンデンサ本体作製工程と、端面電極形成工程と、を備える。
【0019】
前記第1金属化フィルム作製工程では、第1誘電体フィルムの前記第1方向一方側から前記第1方向他方側までの部分のうち、前記第1方向他方側の端部を第1マージン部として残し、前記第1マージン部以外の部分に蒸着により第1金属層を形成し、前記第1金属層の前記第1方向一方側の端部に蒸着により第1端部金属層を形成することにより、第1金属化フィルムを作製する。
【0020】
前記第2金属化フィルム作製工程では、第2誘電体フィルムの前記第1方向一方側から前記第1方向他方側までの部分のうち、前記第1方向一方側の端部を第2マージン部として残し、前記第2マージン部以外の部分に蒸着により第2金属層を形成し、前記第2金属層の前記第1方向他方側の端部に蒸着により第2端部金属層を形成することにより、第2金属化フィルムを作製する。
【0021】
前記コンデンサ本体作製工程では、前記第1金属化フィルムの前記第1端部金属層を前記第1方向一方側に配置し、前記第2金属化フィルムの前記第2端部金属層を前記第1方向他方側に配置し、前記第1誘電体フィルム又は前記第2誘電体フィルムを介して前記第1金属層と前記第2金属層とが対向するように、前記第1方向に垂直な第2方向に沿って前記第1金属化フィルムと前記第2金属化フィルムとを重ねることにより、コンデンサ本体を作製する。
【0022】
前記端面電極形成工程では、前記コンデンサ本体の前記第1方向一方側に第1端面電極を形成し、前記第1方向他方側に第2端面電極を形成する。
【0023】
前記第1金属層のうち、前記第2方向に沿って前記第2金属層に対向する部分が第1有効電極部を構成する。
【0024】
前記第1金属層と前記第1端部金属層とが重なり、前記第1有効電極部よりも膜抵抗値が低い部分が第1低抵抗部を構成する。
【0025】
前記第2金属層のうち、前記第2方向に沿って前記第1金属層に対向する部分が第2有効電極部を構成する。
【0026】
前記第2金属層と前記第2端部金属層とが重なり、前記第2有効電極部よりも膜抵抗値が低い部分が第2低抵抗部を構成する。
【0027】
前記第1金属化フィルムを120℃で30分間加熱処理したときの、前記第1低抵抗部が存在する領域である第1低抵抗領域の熱収縮率が、前記第1有効電極部が存在する領域である第1有効電極領域の熱収縮率よりも小さく、かつ、前記第1低抵抗領域の熱収縮率と前記第1有効電極領域の熱収縮率との差の絶対値が2.0%以下である。
【0028】
前記第2金属化フィルムを120℃で30分間加熱処理したときの、前記第2低抵抗部が存在する領域である第2低抵抗領域の熱収縮率が、前記第2有効電極部が存在する領域である第2有効電極領域の熱収縮率よりも小さく、かつ、前記第2低抵抗領域の熱収縮率と前記第2有効電極領域の熱収縮率との差の絶対値が2.0%以下である。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、静電容量の変化を低減しつつ、発熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るコンデンサを示す概略断面図である。
【
図2】
図2Aは、第1金属化フィルムを示す概略平面図である。
図2Bは、第2金属化フィルムを示す概略平面図である。
【
図3】
図3Aは、第1金属化フィルムを示す概略断面図である。
図3Bは、第2金属化フィルムを示す概略断面図である。
【
図4】
図4Aは、コンデンサ本体を作製する様子を示す概略斜視図である。
図4Bは、コンデンサ本体を示す概略斜視図である。
図4Cは、本実施形態に係るコンデンサを示す概略斜視図である。
【
図5】
図5は、熱収縮率測定用サンプルを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
1.概要
特許文献1の金属化フィルムには、ヘビーエッジ部と、アクティブ部とが形成されている。ヘビーエッジ部は、アクティブ部よりも厚く形成されている。そのため、特許文献1の金属化フィルムを重ねると、しわが寄りやすく、このしわが原因となって、金属化フィルムコンデンサの静電容量が変化しやすくなる、と本発明者らは考えている。
【0032】
そこで、本発明者らは、上記のしわを低減すべく、鋭意研究を続けた結果、金属化フィルムの2つの領域の熱収縮率を特定の範囲内に収めることが有効であるとの知見を得た。この知見に基づいて、本発明者らは、以下のようなコンデンサ1を開発した。
【0033】
すなわち、
図1に示すように、本実施形態に係るコンデンサ1は、コンデンサ本体10と、第1端面電極101と、第2端面電極102と、を備える。コンデンサ本体10は、第1金属化フィルム21と、第2金属化フィルム22と、を含む。
【0034】
そして、第1金属化フィルム21を120℃で30分間加熱処理したときの、第1低抵抗領域601の熱収縮率が、第1有効電極領域501の熱収縮率よりも小さく、かつ、第1低抵抗領域601の熱収縮率と第1有効電極領域501の熱収縮率との差の絶対値が2.0%以下である(
図2A及び
図3A参照)。これにより、第1低抵抗領域601と第1有効電極領域501との境界においてしわが寄りにくくなる。
【0035】
さらに、第2金属化フィルム22を120℃で30分間加熱処理したときの、第2低抵抗領域602の熱収縮率が、第2有効電極領域502の熱収縮率よりも小さく、かつ、第2低抵抗領域602の熱収縮率と第2有効電極領域502の熱収縮率との差の絶対値が2.0%以下である(
図2B及び
図3B参照)。これにより、第2低抵抗領域602と第2有効電極領域502との境界においてしわが寄りにくくなる。
【0036】
このように、しわが低減された第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22を重ねるので、両者の密着性を向上させることができる。その結果、コンデンサ1の静電容量の変化を低減することができる。
【0037】
一方、本実施形態では、第1端面電極101と第1有効電極部51との間に第1低抵抗部61が介在することで、通電時においてコンデンサ1が発熱しにくくなる。
【0038】
同様に、第2端面電極102と第2有効電極部52との間に第2低抵抗部62が介在することで、通電時においてコンデンサ1が発熱しにくくなる。
【0039】
したがって、本実施形態によれば、静電容量の変化を低減しつつ、発熱を抑制することができる。なお、静電容量の変化とは、静電容量が減少する変化と、静電容量が増加する変化とを意味する。本実施形態では、いずれの変化も低減し得る。
【0040】
2.詳細
(1)コンデンサ
(1.1)構成
以下、本実施形態に係るコンデンサ1について、図面を参照して説明する。各図は模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさは必ずしも実際の寸法を反映しているとは限らない。なお、図中に第1方向D1、第2方向D2及び第3方向D3を規定する矢印を図示しているが、これらの矢印は、説明の都合上図示しているだけであり、コンデンサ1の方向を限定する趣旨ではなく、実体を伴わない。第1方向D1、第2方向D2及び第3方向D3は、相互に直交する。また以下において、「側面視」とは、第1方向D1に沿って視ることを意味し、「平面視」とは、第2方向D2に沿って視ることを意味し、「正面視」とは、第3方向D3に沿って視ることを意味する。
【0041】
図1及び
図4Cに示すように、本実施形態に係るコンデンサ1は、側面視角丸長方形状をなし、第1方向D1に延びる立体形状をなす。コンデンサ1は、コンデンサ本体10と、第1端面電極101と、第2端面電極102と、を備える。本実施形態では、コンデンサ1が巻回型コンデンサである場合について説明するが、コンデンサ1は積層型コンデンサでもよい。なお、
図1は、理解しやすくするために簡略化して図示されており、
図4Cに示すコンデンサ1の正面視での断面を正確に表しているわけではない。
【0042】
<コンデンサ本体>
コンデンサ本体10は、側面視角丸長方形状をなし、第1方向D1に延びる立体形状をなす(
図4B参照)。
【0043】
コンデンサ本体10は、少なくとも1枚以上の第1金属化フィルム21と、少なくとも1枚以上の第2金属化フィルム22と、を含む。巻回型コンデンサの場合には、コンデンサ本体10は、1枚の第1金属化フィルム21と、1枚の第2金属化フィルム22と、を含み得る。積層型コンデンサの場合には、コンデンサ本体10は、2枚以上の第1金属化フィルム21と、2枚以上の第2金属化フィルム22と、を含み得る。
【0044】
≪第1金属化フィルム≫
第1金属化フィルム21は、第2方向D2に厚さを有し、第1方向D1を短手方向(幅方向)及び第3方向D3を長手方向とする長尺状をなすフィルムである(
図2A及び
図3A参照)。第1金属化フィルム21は、第1誘電体フィルム201と、第1金属層31と、第1端部金属層41と、を含む。
【0045】
第1誘電体フィルム201は、第2方向D2に厚さを有し、第1方向D1を短手方向(幅方向)及び第3方向D3を長手方向とする長尺状をなすフィルムである。
【0046】
第1誘電体フィルム201の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)及びポリフェニレンスルフィド(PPS)等が挙げられる。ポリプロピレン(PP)は、延伸ポリプロピレン(OPP:Oriented polypropylene)及び無延伸ポリプロピレン(CPP:Castpolypropylene)を含む。延伸ポリプロピレン(OPP)は、2軸延伸ポリプロピレンを含む。
【0047】
第1誘電体フィルム201の厚さは、好ましくは1.5μm以上3.5μm以下、より好ましくは1.7μm以上3.2μm以下、さらに好ましくは2.0μm以上2.8μm以下である。
【0048】
第1金属層31は、第2方向D2に厚さを有し、第1方向D1を短手方向(幅方向)及び第3方向D3を長手方向とする長尺状をなしている(
図2Aの薄いドットハッチング及び
図3A参照)。第1金属層31の幅は、第1誘電体フィルム201の幅よりも短い。なお、本明細書において「幅」とは、第1方向D1における長さを意味する。
【0049】
第1金属層31は、第1誘電体フィルム201の第2方向D2一方側を向く面(本実施形態では片面)に形成されている。第1金属層31は、第1誘電体フィルム201の第1マージン部211を除く箇所に形成されている。このように、第1金属層31は、第1マージン部211には形成されていない。なお、本実施形態では、第1金属層31はベタ状をなしているが、第1金属層31はベタ状ではなく所定のパターン状をなしていてもよい。
【0050】
ここで、第1マージン部211は、第1誘電体フィルム201の第1方向D1他方側(
図2Aでは右側)の端部に存在し、第3方向D3に延びている。第1マージン部211は、第1誘電体フィルム201が第2方向D2一方側を向いて露出している部分である。
【0051】
第1金属層31は、第1端面電極101に接触している(
図1参照)。第1マージン部211が存在することにより、第1金属層31は、第2端面電極102には接触していない。
【0052】
第1金属層31を形成する金属は、特に限定されない。好ましくは、第1金属層31は、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、銅(Cu)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)及びこれらの合金からなる群より選ばれた金属を含む。
【0053】
第1端部金属層41は、第2方向D2に厚さを有し、第1方向D1を短手方向(幅方向)及び第3方向D3を長手方向とする長尺状をなしている(
図2Aの濃いドットハッチング及び
図3A参照)。第1端部金属層41は、第1金属層31の第2方向D2一方側を向く面に形成されている。第1端部金属層41は、第1金属層31の第1方向D1一方側(
図2Aでは左側)の端部に存在する。
【0054】
第1端部金属層41は、第1端面電極101に接触している(
図1参照)。第1端部金属層41は、第2端面電極102には接触していない。第1端部金属層41の幅は、第1金属層31の幅よりも短い。
【0055】
第1端部金属層41を形成する金属は、特に限定されない。好ましくは、第1端部金属層41は、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、銅(Cu)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)及びこれらの合金からなる群より選ばれた金属を含む。
【0056】
≪第2金属化フィルム≫
第2金属化フィルム22は、
図1に示すように、第2方向D2に沿って第1金属化フィルム21に重ねられている。本実施形態では、第1金属化フィルム21と第2金属化フィルム22とが交互に重ねられている。なお、実際には、コンデンサ1が巻回型コンデンサである場合には、第1方向D1に延びる軸線(例えば
図4Aの巻芯8)を中心とした仮想円の径方向(第2方向D2を含む)に沿って、第1金属化フィルム21と第2金属化フィルム22とが交互に重なっている。一方、コンデンサ1が積層型コンデンサである場合には、第2方向D2に沿って、第1金属化フィルム21と第2金属化フィルム22とが交互に重なっている。
【0057】
第2金属化フィルム22も、第1金属化フィルム21と同様に、第2方向D2に厚さを有し、第1方向D1を短手方向(幅方向)及び第3方向D3を長手方向とする長尺状をなすフィルムである(
図2B及び
図3B参照)。第2金属化フィルム22は、第2誘電体フィルム202と、第2金属層32と、第2端部金属層42と、を含む。
【0058】
第2誘電体フィルム202は、第1誘電体フィルム201と同様に、第2方向D2に厚さを有し、第1方向D1を短手方向(幅方向)及び第3方向D3を長手方向とする長尺状をなすフィルムである。本実施形態では、第2誘電体フィルム202の幅は、第1誘電体フィルム201の幅と同じである。
【0059】
第2誘電体フィルム202の材質に関する説明は、第1誘電体フィルム201の材質に関する説明と同じである。なお、1つのコンデンサ1において、第2誘電体フィルム202の材質は、第1誘電体フィルム201の材質と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0060】
第2誘電体フィルム202の厚さに関する説明は、第1誘電体フィルム201の厚さに関する説明と同じである。なお、1つのコンデンサ1において、第2誘電体フィルム202の厚さは、第1誘電体フィルム201の厚さと同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0061】
第2金属層32は、第2方向D2に厚さを有し、第1方向D1を短手方向(幅方向)及び第3方向D3を長手方向とする長尺状をなしている(
図2Bの薄いドットハッチング及び
図3B参照)。第2金属層32の幅は、第2誘電体フィルム202の幅よりも短い。本実施形態では、第2金属層32の幅は、第1金属層31の幅と同じである。
【0062】
第2金属層32は、第2誘電体フィルム202の第2方向D2一方側を向く面(本実施形態では片面)に形成されている。第2金属層32は、第2誘電体フィルム202の第2マージン部212を除く箇所に形成されている。このように、第2金属層32は、第2マージン部212には形成されていない。なお、本実施形態では、第2金属層32はベタ状をなしているが、第2金属層32はベタ状ではなく所定のパターン状をなしていてもよい。第2金属層32の平面視の形状は、第1金属層31の平面視の形状と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0063】
ここで、第2マージン部212は、第2誘電体フィルム202の第1方向D1一方側(
図2Bでは左側)の端部に存在し、第3方向D3に延びている。第2マージン部212は、第2誘電体フィルム202が第2方向D2一方側を向いて露出している部分である。本実施形態では、第2マージン部212の幅は、第1マージン部211の幅と同じである。
【0064】
第2金属層32は、第2端面電極102に接触している(
図1参照)。第2マージン部212が存在することにより、第2金属層32は、第1端面電極101には接触していない。
【0065】
第2金属層32を形成する金属に関する説明は、第1金属層31を形成する金属に関する説明と同じである。なお、1つのコンデンサ1において、第2金属層32を形成する金属は、第1金属層31を形成する金属と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0066】
なお、1つのコンデンサ1において、第2金属層32の厚さは、第1金属層31の厚さと同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0067】
第2端部金属層42は、第2方向D2に厚さを有し、第1方向D1を短手方向(幅方向)及び第3方向D3を長手方向とする長尺状をなしている(
図2Bの濃いドットハッチング及び
図3B参照)。第2端部金属層42は、第2金属層32の第2方向D2一方側を向く面に形成されている。第2端部金属層42は、第2金属層32の第1方向D1他方側(
図2Bでは右側)の端部に存在する。
【0068】
第2端部金属層42は、第2端面電極102に接触している(
図1参照)。第2端部金属層42は、第1端面電極101には接触していない。第2端部金属層42の幅は、第2金属層32の幅よりも短い。本実施形態では、第2端部金属層42の幅は、第1端部金属層41の幅と同じである。
【0069】
第2端部金属層42を形成する金属に関する説明は、第1端部金属層41を形成する金属に関する説明と同じである。なお、1つのコンデンサ1において、第2端部金属層42を形成する金属は、第1端部金属層41を形成する金属と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0070】
なお、1つのコンデンサ1において、第2端部金属層42の厚さは、第1端部金属層41の厚さと同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0071】
≪有効電極部≫
第1金属層31の大部分が第1有効電極部51を構成する。具体的には、
図1及び
図3Aに示すように、第1金属層31のうち、第2方向D2に沿って第2金属層32に対向する部分が第1有効電極部51を構成する。平面視において、第1有効電極部51が存在する領域が第1有効電極領域501である(
図2Aの薄いドットハッチング及び
図3A参照)。
【0072】
一方、第2金属層32の大部分が第2有効電極部52を構成する。具体的には、
図1及び
図3Bに示すように、第2金属層32のうち、第2方向D2に沿って第1金属層31に対向する部分が第2有効電極部52を構成する。平面視において、第2有効電極部52が存在する領域が第2有効電極領域502である(
図2Bの薄いドットハッチング及び
図3B参照)。
【0073】
図1に示すように、第1有効電極部51と第2有効電極部52とは、第1誘電体フィルム201又は第2誘電体フィルム202を介して対向している。このように、第1有効電極部51及び第2有効電極部52は、コンデンサ1の静電容量に寄与する。すなわち、コンデンサ1に通電すると、第1有効電極部51に正又は負の電荷が蓄えられるとともに、この電荷と極性の異なる電荷が第2有効電極部52に蓄えられる。第1有効電極領域501と第2有効電極領域502とが対向する面積が大きくなるほど、コンデンサ1の静電容量は大きくなる。
【0074】
≪低抵抗部≫
第1金属層31のうち第1有効電極部51を除く部分と第1端部金属層41とが第1低抵抗部61を構成する。換言すれば、
図1及び
図3Aに示すように、第1金属層31と第1端部金属層41とが重なっている部分が第1低抵抗部61を構成する。第1低抵抗部61は、第1誘電体フィルム201の第1方向D1一方側(
図2Aでは左側)の端部に存在し、第3方向D3に延びている。第1低抵抗部61の膜抵抗値は、第1有効電極部51の膜抵抗値よりも低い。平面視において、第1低抵抗部61が存在する領域が第1低抵抗領域601である(
図2Aの濃いドットハッチング及び
図3A参照)。
【0075】
一方、第2金属層32のうち第2有効電極部52を除く部分と第2端部金属層42とが第2低抵抗部62を構成する。換言すれば、
図1及び
図3Bに示すように、第2金属層32と第2端部金属層42とが重なっている部分が第2低抵抗部62を構成する。第2低抵抗部62は、第2誘電体フィルム202の第1方向D1他方側(
図2Bでは右側)の端部に存在し、第3方向D3に延びている。第2低抵抗部62の膜抵抗値は、第2有効電極部52の膜抵抗値よりも低い。平面視において、第2低抵抗部62が存在する領域が第2低抵抗領域602である(
図2Bの濃いドットハッチング及び
図3B参照)。
【0076】
≪熱収縮率≫
本実施形態では、第1金属化フィルム21を120℃で30分間加熱処理したときの、第1低抵抗領域601の熱収縮率が、第1有効電極領域501の熱収縮率よりも小さい。さらに、第1低抵抗領域601の熱収縮率と第1有効電極領域501の熱収縮率との差の絶対値が2.0%以下である。なお、第1低抵抗領域601の熱収縮率が、第1有効電極領域501の熱収縮率よりも小さいので、両者の熱収縮率の差の絶対値は0%超である。
【0077】
一方、第2金属化フィルム22の場合も第1金属化フィルム21の場合と同様である。すなわち、第2金属化フィルム22を120℃で30分間加熱処理したときの、第2低抵抗領域602の熱収縮率が、第2有効電極領域502の熱収縮率よりも小さい。さらに、第2低抵抗領域602の熱収縮率と第2有効電極領域502の熱収縮率との差の絶対値が2.0%以下である。この場合も、第2低抵抗領域602の熱収縮率が、第2有効電極領域502の熱収縮率よりも小さいので、両者の熱収縮率の差の絶対値は0%超である。
【0078】
≪熱収縮率の測定≫
第1金属化フィルム21の熱収縮率は、以下のようにして測定することができる。なお、第2金属化フィルム22の熱収縮率も、第1金属化フィルム21の場合と同様に測定することができる。
【0079】
図5に熱収縮率測定用サンプル7を示す。熱収縮率測定用サンプル7は、第1金属化フィルム21の一部であり、第1有効電極領域501及び第1低抵抗領域601を含むように、第1金属化フィルム21から切り取られたものである。すなわち、
図2Aに示すように、第1金属化フィルム21から一点鎖線に沿って切り取られたものが熱収縮率測定用サンプル7である。
【0080】
図5に示すように、平面視での熱収縮率測定用サンプル7の第3方向D3における長さはLである。平面視での熱収縮率測定用サンプル7の幅はWである。Wは、第1有効電極領域501の幅W5と、第1低抵抗領域601の幅W6との合計である。このときの熱収縮率測定用サンプル7の寸法は、加熱処理前の寸法である。なお、実寸については、[実施例]の項に記載する。
【0081】
次に、第3方向D3に沿って、第1低抵抗領域601内に2つの標線M61、M62、及び第1有効電極領域501内に2つの標線M51、M52を付ける。熱収縮率測定用サンプル7の第3方向D3一方側(
図5では下側)の端縁から標線M62までの距離と、熱収縮率測定用サンプル7の第3方向D3他方側(
図5では上側)の端縁から標線M61までの距離とは等しい。また、熱収縮率測定用サンプル7の第3方向D3一方側(
図5では下側)の端縁から標線M52までの距離と、熱収縮率測定用サンプル7の第3方向D3他方側(
図5では上側)の端縁から標線M51までの距離とは等しい。さらに、2つの標線M61、M62間の間隔と、2つの標線M51、M52間の間隔とは等しく、これらの間隔をL0とする。
【0082】
次に、熱収縮率測定用サンプル7を120℃で30分間加熱処理する。これにより、熱収縮率測定用サンプル7は熱収縮する。
【0083】
具体的には、第1低抵抗領域601において、ほぼ第3方向D3に沿って、標線M61は第3方向D3一方側(
図5では下側)に変位して標線M63となり、標線M62は第3方向D3他方側(
図5では上側)に変位して標線M64となる。2つの標線M63、M64間の間隔をL6とする。L6はL0よりも短い。なお、
図5では、理解しやすくするため、変位前後の標線M61~M64を全て図示している。また熱収縮率測定用サンプル7を加熱処理すると寸法変化するが、これについては図示省略している。
【0084】
ここで、第1低抵抗領域601の熱収縮率をS6とすると、S6は、以下の式(1)で表される。
【0085】
【0086】
一方、第1有効電極領域501において、ほぼ第3方向D3に沿って、標線M51は第3方向D3一方側(
図5では下側)に変位して標線M53となり、標線M52は第3方向D3他方側(
図5では上側)に変位して標線M54となる。2つの標線M53、M54間の間隔をL5とする。L5はL0よりも短い。さらにL5はL6よりも短い。なお、
図5では、理解しやすくするため、変位前後の標線M51~M54を全て図示している。
【0087】
ここで、第1有効電極領域501の熱収縮率をS5とすると、S5は、以下の式(2)で表される。
【0088】
【0089】
以上のようにして、第1金属化フィルム21の熱収縮率を測定することができる。より詳細には、第1低抵抗領域601の熱収縮率、及び第1有効電極領域501の熱収縮率を測定することができる。上述のように、本実施形態では、第1金属化フィルム21を120℃で30分間加熱処理したときの、第1低抵抗領域601の熱収縮率が、第1有効電極領域501の熱収縮率よりも小さい。これは、以下の式(3)で表される。
【0090】
【0091】
さらに、第1低抵抗領域601の熱収縮率と第1有効電極領域501の熱収縮率との差の絶対値が2.0%以下である。これは、以下の式(4)で表される。
【0092】
【0093】
ここで、第1端部金属層41の厚さが薄くなるほど、第1低抵抗部61の厚さと第1有効電極部51の厚さとの差が小さくなる。そのため、第1低抵抗領域601の熱収縮率と第1有効電極領域501の熱収縮率との差の絶対値が0%に近づく。逆に、第1端部金属層41の厚さが厚くなるほど、第1低抵抗部61の厚さと第1有効電極部51の厚さとの差が大きくなる。そのため、第1低抵抗領域601の熱収縮率と第1有効電極領域501の熱収縮率との差の絶対値が大きくなる。
【0094】
したがって、第1低抵抗領域601の熱収縮率と第1有効電極領域501の熱収縮率との差の絶対値を2.0%以下とするための手段の1つとして、例えば、第1端部金属層41の厚さを調節することが挙げられる。
【0095】
<端面電極>
第1端面電極101は、コンデンサ本体10の第1方向D1一方側(
図1では左側)の端面に形成されている。第1端面電極101を形成する金属に関する説明は、第1端部金属層41を形成する金属に関する説明と同じである。なお、1つのコンデンサ1において、第1端面電極101を形成する金属は、第1端部金属層41を形成する金属と同じであることが好ましい。
【0096】
一方、第2端面電極102は、コンデンサ本体10の第1方向D1他方側(
図1では右側)の端面に形成されている。第2端面電極102を形成する金属に関する説明は、第2端部金属層42を形成する金属に関する説明と同じである。なお、1つのコンデンサ1において、第2端面電極102を形成する金属は、第2端部金属層42を形成する金属と同じであることが好ましい。
【0097】
より好ましくは、第1端面電極101、第2端面電極102、第1端部金属層41、及び第2端部金属層42が、同種の金属で形成されている。換言すれば、より好ましくは、第1端面電極101、第2端面電極102、第1端部金属層41、及び第2端部金属層42の各々を形成する金属が同じである。
【0098】
(1.2)作用効果
本実施形態では、第1低抵抗領域601の熱収縮率が、第1有効電極領域501の熱収縮率よりも小さく、かつ、第1低抵抗領域601の熱収縮率と第1有効電極領域501の熱収縮率との差の絶対値が2.0%以下である。これにより、第1低抵抗領域601と第1有効電極領域501との境界においてしわが寄りにくくなる。
【0099】
同様に、第2低抵抗領域602の熱収縮率が、第2有効電極領域502の熱収縮率よりも小さく、かつ、第2低抵抗領域602の熱収縮率と第2有効電極領域502の熱収縮率との差の絶対値が2.0%以下である。これにより、第2低抵抗領域602と第2有効電極領域502との境界においてしわが寄りにくくなる。
【0100】
このように、しわが低減された第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22を重ねるので、両者の密着性を向上させることができる。換言すれば、第1金属化フィルム21と第2金属化フィルム22との間に隙間が形成されにくくなる。その結果、コンデンサ1の静電容量の変化を低減することができる。
【0101】
一方、本実施形態では、第1金属層31と第1端部金属層41とが重なり、第1有効電極部51よりも膜抵抗値が低い部分が第1低抵抗部61を構成している。第1端面電極101と第1有効電極部51とは直接接触せずに、第1端面電極101と第1有効電極部51との間に第1低抵抗部61が介在することで、通電時においてコンデンサ1が発熱しにくくなる。
【0102】
同様に、第2金属層32と第2端部金属層42とが重なり、第2有効電極部52よりも膜抵抗値が低い部分が第2低抵抗部62を構成している。第2端面電極102と第2有効電極部52とは直接接触せずに、第2端面電極102と第2有効電極部52との間に第2低抵抗部62が介在することで、通電時においてコンデンサ1が発熱しにくくなる。
【0103】
したがって、本実施形態によれば、静電容量の変化を低減しつつ、発熱を抑制することができる。第1端面電極101、第2端面電極102、第1端部金属層41、及び第2端部金属層42が、同種の金属で形成されていると、通電時におけるコンデンサ1の発熱を更に抑制することができる。
【0104】
(2)コンデンサの製造方法
(2.1)構成
本実施形態に係るコンデンサ1の製造方法は、第1金属化フィルム作製工程と、第2金属化フィルム作製工程と、コンデンサ本体作製工程と、端面電極形成工程と、を備える。
【0105】
<第1金属化フィルム作製工程>
第1金属化フィルム作製工程では、第1誘電体フィルム201の第2方向D2一方側を向く面(片面)に第1金属層31及び第1端部金属層41を形成することにより、第1金属化フィルム21を作製する。
【0106】
具体的には、第1金属層31は、第1誘電体フィルム201の第1方向D1一方側から第1方向D1他方側までの部分のうち、第1方向D1他方側(
図2A及び
図3Aでは右側)の端部以外の部分に蒸着(1回目の蒸着)により形成される。第1誘電体フィルム201の第1方向D1他方側(
図2A及び
図3Aでは右側)の端部は、1回目の蒸着前にオイル等によりマスキングされるので金属の蒸着はなされず、第1マージン部211として残される。
【0107】
さらに第1端部金属層41は、第1金属層31の第1方向D1一方側(
図2A及び
図3Aでは左側)の端部に蒸着(2回目の蒸着)により形成される。なお、第1有効電極領域501及び第1マージン部211は、2回目の蒸着前にオイル等によりマスキングされるので、金属の蒸着はなされない。
【0108】
以上のようにして、第1金属化フィルム21を作製する。
【0109】
<第2金属化フィルム作製工程>
第2金属化フィルム22は、第1金属化フィルム21と同様に作製することができる。すなわち、第2金属化フィルム作製工程では、第2誘電体フィルム202の第2方向D2一方側を向く面(片面)に第2金属層32及び第2端部金属層42を形成することにより、第2金属化フィルム22を作製する。
【0110】
具体的には、第2金属層32は、第2誘電体フィルム202の第1方向D1一方側から第1方向D1他方側までの部分のうち、第1方向D1一方側(
図2B及び
図3Bでは左側)の端部以外の部分に蒸着(1回目の蒸着)により形成される。第2誘電体フィルム202の第1方向D1一方側(
図2B及び
図3Bでは左側)の端部は、1回目の蒸着前にオイル等によりマスキングされるので金属の蒸着はなされず、第2マージン部212として残される。
【0111】
さらに第2端部金属層42は、第2金属層32の第1方向D1他方側(
図2B及び
図3Bでは右側)の端部に蒸着(2回目の蒸着)により形成される。なお、第2有効電極領域502及び第2マージン部212は、2回目の蒸着前にオイル等によりマスキングされるので、金属の蒸着はなされない。
【0112】
以上のようにして、第2金属化フィルム22を作製する。なお、第2金属化フィルム作製工程は、第1金属化フィルム作製工程の前後のいずれでもよく、第1金属化フィルム作製工程と同時でもよい。複数の第1金属化フィルム21を作製する場合には、一部の第1金属化フィルム21を反転させて第2金属化フィルム22として使用してもよい。
【0113】
<コンデンサ本体作製工程>
コンデンサ本体作製工程では、第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22を用いてコンデンサ本体10を作製する(
図4A及び
図4B参照)。
【0114】
まず、
図4Aに示すように、第2方向D2に沿って第1金属化フィルム21と第2金属化フィルム22とを重ねる。このとき、第1誘電体フィルム201又は第2誘電体フィルム202を介して第1金属層31と第2金属層32とを対向させる。さらに、第1金属化フィルム21の第1端部金属層41を第1方向D1一方側に配置し、第2金属化フィルム22の第2端部金属層42を第1方向D1他方側に配置する。
【0115】
次に、
図4Aに示すように、第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22を重ねた状態で丸棒状の巻芯8に巻回すると、円柱状をなす巻回体9が得られる。さらに巻回体9を第2方向D2に加圧することにより、
図4Bに示すようなコンデンサ本体10が得られる。加圧前において巻芯8は側面視円形をなしているが、加圧後において巻芯8は側面視で第3方向D3に延びる直線状をなす。
【0116】
なお、本実施形態のようにコンデンサ1が巻回型コンデンサである場合には、巻芯8に第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22を巻回すると、第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22が重なる方向は、巻芯8を中心とした仮想円の径方向にほぼ等しくなる。
【0117】
<端面電極形成工程>
端面電極形成工程では、コンデンサ本体10の第1方向D1一方側の端面に第1端面電極101を形成し、第1方向D1他方側の端面に第2端面電極102を形成する(
図4C参照)。第1端面電極101及び第2端面電極102は、金属溶射法により形成することができる。なお、コンデンサ本体10の端面から巻芯8が突出している場合には、端面が面一となるように巻芯8を切り落としてもよい。
【0118】
ここで、コンデンサ本体10の第1方向D1一方側の端面には、第1金属層31及び第1端部金属層41の端面が露出しているが、第2金属層32及び第2端部金属層42の端面は露出していない。したがって、第1端面電極101は、第1金属層31及び第1端部金属層41に接触するが、第2金属層32及び第2端部金属層42には接触しない。
【0119】
一方、コンデンサ本体10の第1方向D1他方側の端面には、第2金属層32及び第2端部金属層42の端面が露出しているが、第1金属層31及び第1端部金属層41の端面は露出していない。したがって、第2端面電極102は、第2金属層32及び第2端部金属層42に接触するが、第1金属層31及び第1端部金属層41には接触しない。
【0120】
以上のようにして端面電極形成工程が終了すると、
図4Cに示すようなコンデンサ1が得られる。
【0121】
(2.2)作用効果
本実施形態では、第1有効電極領域501と第1低抵抗領域601とは熱履歴が異なる。すなわち、第1有効電極領域501は、1回目の蒸着による加熱処理がなされ、2回目の蒸着による加熱処理はなされていない。つまり、第1有効電極領域501の加熱処理は1回のみである。一方、第1低抵抗領域601は、1回目及び2回目の蒸着による加熱処理がなされている。つまり、第1低抵抗領域601の加熱処理は2回である。したがって、第1低抵抗領域601の熱収縮率を、第1有効電極領域501の熱収縮率よりも小さくしやすくなる。そして、蒸着の条件(例えば金属の溶融温度等)を適宜に調節することにより、第1低抵抗領域601の熱収縮率と第1有効電極領域501の熱収縮率との差の絶対値を2.0%以下とする。これにより、第1低抵抗領域601と第1有効電極領域501との境界においてしわが寄りにくくなる。
【0122】
同様に、第2有効電極領域502と第2低抵抗領域602とは熱履歴が異なる。すなわち、第2有効電極領域502は、1回目の蒸着による加熱処理がなされ、2回目の蒸着による加熱処理はなされていない。つまり、第2有効電極領域502の加熱処理は1回のみである。一方、第2低抵抗領域602は、1回目及び2回目の蒸着による加熱処理がなされている。つまり、第2低抵抗領域602の加熱処理は2回である。したがって、第2低抵抗領域602の熱収縮率を、第2有効電極領域502の熱収縮率よりも小さくしやすくなる。そして、蒸着の条件(例えば金属の溶融温度等)を適宜に調節することにより、第2低抵抗領域602の熱収縮率と第2有効電極領域502の熱収縮率との差の絶対値を2.0%以下とする。これにより、第2低抵抗領域602と第2有効電極領域502との境界においてしわが寄りにくくなる。
【0123】
このように、しわが低減された第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22を重ねるので、両者の密着性を向上させることができる。換言すれば、第1金属化フィルム21と第2金属化フィルム22との間に隙間が形成されにくくなる。その結果、コンデンサ1の静電容量の変化を低減することができる。
【0124】
一方、本実施形態では、1回目の蒸着により第1有効電極部51が形成され、2回目の蒸着により第1低抵抗部61が形成される。第1端面電極101と第1有効電極部51とは直接接触せずに、第1端面電極101と第1有効電極部51との間に第1低抵抗部61が介在することで、通電時においてコンデンサ1が発熱しにくくなる。
【0125】
同様に、1回目の蒸着により第2有効電極部52が形成され、2回目の蒸着により第2低抵抗部62が形成される。第2端面電極102と第2有効電極部52とは直接接触せずに、第2端面電極102と第2有効電極部52との間に第2低抵抗部62が介在することで、通電時においてコンデンサ1が発熱しにくくなる。
【0126】
したがって、本実施形態によれば、静電容量の変化を低減しつつ、発熱を抑制することができる。なお、第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22の少なくともいずれかにしわが寄ると、これらを重ねて巻回又は積層すると、しわが増幅されて、コンデンサ本体10の外面にしわが現れやすくなる。したがって、コンデンサ本体10の外観を観察することで、第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22の少なくともいずれかにしわが寄っているか否かを推定することができる。
【実施例0127】
以下、本開示を実施例によって具体的に説明する。ただし、本開示は実施例に限定されない。
【0128】
1.サンプル
(1)コンデンサ
表1に示すように、サンプル1~9のコンデンサ1を製造した。各コンデンサ1の外形寸法は、以下のとおりである。
【0129】
第1方向D1の長さ:35mm
第2方向D2の長さ:45mm
第3方向D3の長さ:80mm。
【0130】
(2)各部
(2.1)コンデンサ本体
(2.1.1)第1金属化フィルム
第1金属化フィルム21は、蒸着により第1誘電体フィルム201の片面に第1金属層31及び第1端部金属層41を形成することにより作製した。特に蒸着時の金属の溶融温度を適宜変化させることにより、熱収縮率の異なる9つの第1金属化フィルム21を作製した。ただし、サンプル9の第1金属化フィルム21には第1端部金属層41が存在しない。
【0131】
第1誘電体フィルム201の材質:2軸延伸ポリプロピレン
第1誘電体フィルム201の厚さ:2.5μm
第1誘電体フィルム201の幅:30mm
第1金属層31の材質:アルミニウム(Al)
第1金属層31の厚さ:10nm
第1端部金属層41の材質:亜鉛(Zn)
第1端部金属層41の厚さ:25nm。
【0132】
なお、蒸着により形成される第1金属層31及び第1端部金属層41の厚さは非常に薄いため、厚さの測定は困難である。上記の数値は代表値を示している。
【0133】
(2.1.2)第2金属化フィルム
第2金属化フィルム22は、第1金属化フィルム21を反転させたものであり、実質的に第1金属化フィルム21と同じである。したがって、サンプル9の第2金属化フィルム22には第2端部金属層42が存在しない。
【0134】
(2.2)端面電極
第1端面電極101の材質:亜鉛(Zn)
第2端面電極102の材質:亜鉛(Zn)。
【0135】
(3)熱収縮率
サンプル1~9の第1金属化フィルム21について、第1低抵抗領域601の熱収縮率(S6)及び第1有効電極領域501の熱収縮率(S5)を測定した。測定値を表1に示す。表1中の低抵抗領域及び有効電極領域は、第1低抵抗領域601及び第1有効電極領域501とそれぞれ同義である。
【0136】
なお、加熱処理前の熱収縮率測定用サンプル7の実寸は、以下のとおりである。
【0137】
長さL:120mm
長さL0(加熱処理前の2つの標線間の間隔):100mm
幅W:10mm
幅W5:8mm
幅W6:2mm。
【0138】
なお、加熱処理後の2つの標線間の間隔L5、L6はサンプル1~9ごとに異なる。実寸は測長機を用いて測定した。
【0139】
(4)膜抵抗値
サンプル1~8の第1金属化フィルム21について、四端子法により、第1低抵抗領域601の膜抵抗値及び第1有効電極領域501の膜抵抗値を測定した。サンプル1~8のいずれについても、第1低抵抗領域601の膜抵抗値が第1有効電極領域501の膜抵抗値よりも低いことを確認した。
【0140】
2.評価項目
(1)外観
コンデンサ本体を120℃で6時間エージング処理した後、コンデンサ本体の外観を目視により観察した。具体的には、コンデンサ本体の外面にしわが有るか否かを確認した。巻芯が側面視直線状をなさずに曲がっているものは、しわが有ると判断した。観察結果を下記評価基準に分類し、外観を評価した。
【0141】
A:コンデンサ本体の外面にしわが無い
B:コンデンサ本体の外面にしわが有る。
【0142】
(2)静電容量変化
コンデンサをPPSケース(縦:150mm、横:100mm、高さ:50mm)内に入れ、さらに熱硬化性エポキシ樹脂をPPSケース内に注型して硬化させることにより、封止されたコンデンサを得た。このコンデンサを90℃、85%RHの恒温恒湿槽内に入れ、DC500V、50Arms、10kHzの条件で1000時間リプル電流を流した。コンデンサの初期の静電容量と、1000時間経過後の静電容量とから静電容量変化率ΔCを算出した。算出結果を下記評価基準に分類し、静電容量変化を評価した。
【0143】
A:静電容量変化率ΔCが±1.5%以内
B:静電容量変化率ΔCが±1.5%超。
【0144】
(3)発熱
コンデンサの平坦な外面に熱電対を取り付け、周囲温度90℃、DC500V、100Arms、10kHzの条件で2時間リプル電流を流した後、熱電対によってコンデンサの自己温度上昇ΔTを測定した。自己温度上昇ΔTを下記評価基準に分類し、発熱を評価した。
【0145】
A:自己温度上昇ΔTが15℃以下
B:自己温度上昇ΔTが15℃超。
【0146】