(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130148
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】鞄用錠前
(51)【国際特許分類】
A45C 13/10 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
A45C13/10 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034650
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】507384238
【氏名又は名称】株式会社鞄工房山本
(71)【出願人】
【識別番号】301051725
【氏名又は名称】東京メタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104488
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 良夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 一彦
(72)【発明者】
【氏名】加瀬谷 克美
【テーマコード(参考)】
3B045
【Fターム(参考)】
3B045AA24
3B045CE08
3B045EA02
3B045EA06
3B045EB05
3B045LA10
(57)【要約】
【課題】鞄本体と被せ蓋を連結する錠前において、容易に蓋を鞄本体に掛止することを可能にする。
【解決手段】磁力により互いに吸着可能とした、鞄本体側錠前部2及び被せ蓋側錠前部6を具備し、鞄本体側錠前部はベース3とベースに突設させた突起部4とを有するとともに突起部に掛止溝5が形成され、被せ蓋側錠前部は、突起部が貫通する貫通穴10が形成された筐体部7と筐体部内に移動自在に収容されて突起部に掛止される掛止板11を具備し、掛止板は、先端側が筐体部より突出するとともに弾性材によって突出方向に付勢され、突起部が貫通する貫通穴15と掛止溝に挿入可能な掛止部16を有し、鞄本体側錠前部と被せ蓋側錠前部は、互いに重ねることで磁力により互いに吸着するとともに、突起部が貫通穴を貫通して突起部に形成した掛止溝に掛止部が挿入されて互いに連結される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部を開口とした鞄本体とこの鞄本体の上部開口を開閉自在に覆う被せ蓋を備える鞄において被せ蓋を鞄本体に係止するための鞄用錠前であって、
鞄本体に取り付けられる鞄本体側錠前部(2)と、被せ蓋に取り付けられて前記鞄本体側錠前部(2)に連結される被せ蓋側錠前部(6)と、を具備するとともに、前記鞄本体側錠前部(2)及び被せ蓋側錠前部(6)は磁力により互いに吸着可能であり、
前記鞄本体側錠前部(2)は、鞄に取り付けられるベース(3)と、該ベースに突設させた突起部(4)とを有するとともに、前記突起部(4)は、側面に掛止溝(5)を有しており、
前記被せ蓋側錠前部(6)は、前記突起部(4)が貫通する筐体側貫通穴(10)が形成された筐体部(7)と、該筐体(7)内に移動自在に収容されて前記突起部(4)に掛止される掛止板(11)と、を具備し、
前記掛止板(11)は、先端側が前記筐体(7)より突出するとともに、前記筐体(7)の内部において弾性部材(14)によって突出方向に付勢されており、前記突起部(4)が貫通する掛止板側貫通穴(15)が形成されるとともに、該掛止板側貫通穴(15)内には、前記突起部(4)の側面に形成した掛止溝(5)に挿入可能な掛止部(16)を有しており、
前記鞄本体側錠前部(2)に被せ蓋側錠前部(6)を重ねることで、鞄本体側錠前部(2)と被せ蓋側錠前部(6)が磁力により互いに吸着するとともに、突起部(4)が筐体側貫通穴(10)及び掛止板側貫通穴(15)を貫通し、前記突起部(4)の側面に形成した掛止溝(5)に掛止部(16)が挿入されて前記鞄本体側錠前部(2)に被せ蓋側錠前部(6)が掛止され、この状態で、前記掛止板(11)の先端側を前記筐体(7)側に押圧して掛止板(11)を筐体(7)の反切欠き部側に移動することで、掛止部(16)が掛止溝(5)から出て、鞄本体側錠前部(2)に対する被せ蓋側錠前部(6)の掛止が解除され、磁力に対抗して前記鞄本体側錠前部(2)から被せ蓋側錠前部(6)を引き離すことで、筐体側貫通穴(10)及び掛止板側貫通穴(15)に対する突起部(4)の貫通を解除して、前記鞄本体側錠前部(2)と被せ蓋側錠前部(6)の連結を解除可能にしたことを特徴とする鞄用錠前。
【請求項2】
前記鞄本体側錠前部(2)及び被せ蓋側錠前部(6)を樹脂で形成したことを特徴とする請求項1に記載の鞄用錠前。
【請求項3】
前記突起部(4)に磁石を具備するとともに、被せ蓋側錠前部(6)における、突起部(4)で筐体側貫通穴(10)及び掛止板側貫通穴(15)を貫通したときに突起部(4)が接触又は近接する箇所に、突起部(4)に具備した磁石に吸着可能な磁石を備えることで前記鞄本体側錠前部(2)及び被せ蓋側錠前部(6)を磁力により互いに吸着可能にしことを特徴とする請求項2に記載の鞄用錠前。
【請求項4】
前記鞄本体側錠前部(2)及び被せ蓋側錠前部(6)を形成する際に、樹脂の材料に磁石の粉を混入することで、前記突起部(4)及び、被せ蓋側錠前部(6)における、突起部(4)で筐体側貫通穴(10)及び掛止板側貫通穴(15)を貫通したときに突起部(4)が接触又は近接する箇所に、互いに吸着する磁力を持たせた、ことを特徴とする請求項3に記載の鞄用錠前。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は上部を開口とした鞄本体とこの鞄本体の上部開口を開閉自在に覆う被せ蓋を備える鞄において被せ蓋を鞄本体に係止するための鞄用錠前に係り、より詳しくは、容易に蓋を鞄本体に係止可能とした鞄用錠前に関する。
【背景技術】
【0002】
鞄の中には、例えばランドセルのように、上部が開口している鞄本体と、この鞄本体の上部開口を開閉自在に覆う被せ蓋を有する物があるが、このような鞄においては、衝撃等で蓋が開かないようにするために、蓋を鞄本体に係止するための錠前を有することが一般的である。
【0003】
例えば
図6及び
図7はランドセルの錠前を説明するための図であり、
図6は、ランドセルの被せ蓋51の先端部分を示す図であり、
図7は、ランドセルの本体55の底部分を示す図である。そして、
図6において、ランドセルの被せ蓋51には、「Yベロ」と言われる連結用の生地52が先端側に取り付けられており、このYベロ52の先端には掛止板53が取り付けられ、掛止板53には掛止孔54が形成されている。
【0004】
一方、
図7において、ランドセルの本体55の底部分の外側には、操作つまみ57を有する錠前本体56が取り付けられ、操作つまみ57は回動自在であり、掛止板53の掛止孔54に挿通可能とされている。そして、操作つまみ57に掛止板53を掛止することで、被せ蓋51の先端部をランドセルの本体55の底に固定可能としている。
【0005】
このように、従来のランドセルでは、Yベロ52を介して被せ蓋51の先端側に掛止板53を取り付けているために、被せ蓋51の開閉を行うに際して、掛止板53が上下方向に大きく揺れてしまい、掛止板53が本人あるいは周囲にいる者に当たってしまい、それにより、本人あるいは周囲にいる者が怪我をしてしまうおそれが考えられた。また、被せ蓋51を開閉する際には、ランドセルを横向きに倒して、ランドセルの底に備えた錠前本体56の操作つまみ57と被せ蓋51の先端に取り付けた掛止板53との掛止を脱着する必要があるため、教科書等の出し入れの際に手間がかかるという問題点が指摘されていた。
【0006】
この点、このような問題点を解決するために、ランドセルの正面側に錠前を取り付けて、この錠前に掛止可能な掛止具を蓋に取り付けて、ランドセルの正面で蓋を固定する方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3118921号公報
【特許文献2】実用新案登録第3144429号公報
【特許文献3】実用新案登録第3056704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ランドセルの正面側に錠前を取り付け、この錠前に掛止可能な掛止具を被せ蓋に取り付けることで、ランドセルの正面で被せ蓋を固定する場合は、被せ蓋によってランドセルの正面側が隠されてしまうために、錠前の位置を正確に把握することができず、操作つまみと掛止板との連結を容易に行うことが困難となってしまう。
【0009】
即ち、Yベロの先端に掛止板を取り付けた場合には、操作つまみの位置の把握が容易であるために、操作つまみを掛止孔に挿通させることは容易であるが、被せ蓋に掛止板を備えた場合には被せ蓋が障害になってスクールバッグの正面側が見えないために、手探りで操作つまみの位置を見つけなければならないため、操作つまみを迅速に掛止孔に挿通させることが困難となってしまうことがある。
【0010】
そこで、本発明は、上部を開口とした鞄本体とこの鞄本体の上部開口を開閉自在に覆う被せ蓋を備える鞄において、使用者本人や周囲にいる者に危険が及ぶことがなく、容易に蓋を鞄本体に掛止することを可能にした鞄用錠前を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上部を開口とした鞄本体とこの鞄本体の上部開口を開閉自在に覆う被せ蓋を備える鞄において被せ蓋を鞄本体に係止するための鞄用錠前であって、
鞄本体に取り付けられる鞄本体側錠前部と、被せ蓋に取り付けられて前記鞄本体側錠前部に連結される被せ蓋側錠前部と、を具備するとともに、鞄本体側錠前部及び被せ蓋側錠前部は磁力により互いに吸着可能であり、
鞄本体側錠前部は、鞄に取り付けられるベースと、ベースに突設させた突起部とを有するとともに、突起部は、側面に掛止溝が形成され、
被せ蓋側錠前部は、前記突起部が貫通する筐体側貫通穴が形成された筐体部と、筐体内に移動自在に収容されて前記突起部に掛止される掛止板と、を具備し、
掛止板は、先端側が前記筐体より突出するとともに、筐体の内部において弾性部材によって突出方向に付勢されており、前記突起部が貫通する掛止板側貫通穴が形成されるとともに、貫通穴内には、前記突起部の側面に形成した掛止溝に挿入可能な掛止部を有しており、
前記鞄本体側錠前部に被せ蓋側錠前部を重ねることで、鞄本体側錠前部と被せ蓋側錠前部が磁力により互いに吸着するとともに、突起部が筐体側貫通穴及び掛止板側貫通穴を貫通し、突起部の側面に形成した掛止溝に掛止部が挿入されて鞄本体側錠前部に被せ蓋側錠前部が掛止され、この状態で、掛止板の先端側を筐体側に押圧して掛止板を筐体の奥側に移動することで、掛止部が掛止溝から出て鞄本体側錠前部に対する被せ蓋側錠前部の掛止が解除され、磁力に対抗して前記鞄本体側錠前部から被せ蓋側錠前部を引き離すことで、貫通穴に対する突起部の貫通を解除して、鞄本体側錠前部と被せ蓋側錠前部の連結を解除可能にしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の鞄用錠前では、鞄本体に取り付けられる鞄本体側錠前部と、被せ蓋に取り付けられて前記鞄本体側錠前部に連結される被せ蓋側錠前部を具備して構成されているために、Yベロを介して被せ蓋の先端側に掛止板を取り付けている鞄用錠前と異なり、着脱の際に掛止板が本人あるいは周囲にいる者に当たってしまことを防止することができる。
【0013】
また、鞄本体側錠前部及び被せ蓋側錠前部を磁力により互いに吸着可能としているために、容易に蓋を鞄本体に掛止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の鞄用錠前の実施例の構造を説明するための断面図である。
【
図2】本発明の鞄用錠前の実施例の構造を説明するための断面図である。
【
図3】本発明の鞄用錠前の実施例における被せ蓋側錠前部を説明するための図である。
【
図4】本発明の鞄用錠前の実施例における被せ蓋側錠前部を説明するための図である。
【
図5】本発明の鞄用錠前の実施例における掛止板を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の鞄用錠前は、上部を開口とした鞄本体とこの鞄本体の上部開口を開閉自在に覆う被せ蓋を備える鞄において被せ蓋を鞄本体に係止するための鞄用錠前であって、鞄本体に取り付けられる鞄本体側錠前部と、被せ蓋に取り付けられて鞄本体側錠前部に連結される被せ蓋側錠前部を具備しており。本体側錠前部と被せ蓋側錠前部は、磁力により互いに吸着可能としている。
【0016】
そして鞄本体側錠前部は、鞄に取り付けられるベースと、このベースに突設させた突起部を有しており、突起部の側面には掛止溝が形成されている。
【0017】
一方、被せ蓋側錠前部は、前記突起部が貫通する筐体側貫通穴が形成された筐体部と、この筐体部内に移動自在に収容された掛止板を有しており、掛止板は、前記突起部に掛止されることとしている。また、掛止板は、先端側が筐体部より突出するとともに、筐体の内部において、弾性部材によって、突出方向に付勢されている。更に掛止板には、突起部が貫通する掛止板側貫通穴が形成されるとともに、この掛止板側貫通穴内には、前記突起部の側面に形成した掛止溝に挿入可能な掛止部が形成されている。
【0018】
そして、鞄本体側錠前部に被せ蓋側錠前部を重ねることで、鞄本体側錠前部と被せ蓋側錠前部が磁力により互いに吸着され、更に、突起部が筐体側貫通穴及び掛止板側貫通穴を貫通するとともに、突起部の側面に形成した掛止溝に掛止部が挿入される。そして掛止板は弾性体により突出方向に付勢されているので、掛止部は掛止溝内側に押圧されており、それにより、鞄本体側錠前部に被せ蓋側錠前部が掛止されるとともにその状態が維持される。
【0019】
一方、この状態で、掛止板の先端側を筐体側に押圧して掛止板を弾性体の弾性力に対抗して筐体の奥側に移動すること、掛止部が掛止溝から出て、鞄本体側錠前部に対する被せ蓋側錠前部の掛止が解除されるので、磁力に対抗して鞄本体側錠前部から被せ蓋側錠前部を引き離すことで、筐体側貫通穴及び掛止板側貫通穴に対する突起部の貫通を解除して、鞄本体側錠前部と被せ蓋側錠前部の連結を解除可能にしている。
【0020】
ここで、鞄本体側錠前部及び被せ蓋側錠前部を樹脂で形成するとよく、これにより製造が容易となる。またこのとき、突起部に磁石を具備するとともに、被せ蓋側錠前部における、突起部で貫通穴を貫通したときに突起部が接触又は近接する箇所に、突起部に具備した磁石に吸着可能な磁石を備えるとよく、これにより、鞄本体側錠前部と被せ蓋側錠前部を磁力により互いに吸着可能にすることができる。
【0021】
更に、突起部と被せ蓋側錠前部に磁石を具備する際には、鞄本体側錠前部と被せ蓋側錠前部を樹脂成型する際に、樹脂材料に磁石の粉を混入するとよく、これにより、容易に、突起部と被せ蓋側錠前部に磁石を具備することが可能となる。
【実施例0022】
本発明の鞄用錠前(以下単に「錠前」という。)の実施例について図を参照して説明すると、
図1は本実施例の錠前の構造を示す断面図であり、図において1が本実施例の錠前である。そして、本実施例の錠前1は、鞄本体側錠前部と被せ蓋側錠前部とで構成され、平面視野を四角形状としている。そして、鞄本体側錠前部が鞄本体に取り付けられ、被せ蓋側錠前部は、被せ蓋における、被せ蓋を閉じて鞄本体の上部開口を閉鎖した際に鞄本体側錠前部に対向する箇所に取り付けられ、鞄本体側錠前部と被せ蓋側錠前部は、重ね合わす配置で連結される。即ち、被せ蓋側錠前部は被せ蓋の裏面に取り付けられる。また、鞄本体側錠前部と被せ蓋側錠前部は、互いに吸着可能な磁石を有しており、重ね合わすことで互いに吸着可能としている。
【0023】
ここで、
図1、2において2が鞄本体側錠前であり、本実施例において鞄本体側錠前2は、全体を樹脂で形成している。また図において、鞄本体側錠前2は、平面視野を四角形状としたベース3を有しており、このベース3の中央部分には、円柱状の突起部4を突設しており、突起部4の一方側(図における右側)の側面部分には、掛止溝5が形成されている。
【0024】
次に、
図1において6が被せ蓋側錠前である。そして、被せ蓋側錠前6は、筐体7と、この筐体7の内部に収容した掛止板11を有している。また、筐体7は、上部を開口とした箱状の収容部8と、収容部8の上部開口を閉鎖した蓋部9とを具備している。更に、
図3は収容部8の平面を示した図であり、図において収容部8は、中央部分に、ベース3に突設した突起部4が貫通する筐体側貫通穴10が形成されている。
【0025】
次に、前記掛止板11について説明すると、
図4は蓋部9を外した状態の筐体7を平面視野で示した図であり、図において11が掛止板である。そして、本実施例における掛止板11は、長尺の板状としており、前記収容部8の先端側(図における左側)に形成した切欠き12を貫通する配置で、先端側(図における左側)が、筐体7より外部に突出している。
【0026】
一方、基端側(図における右側)は、収容部8の内壁との間に隙間13が形成されるとともに、収容部8の内壁との間にスプリング14が配置され、このスプリング15の弾性力によって、先端側が突出している突出方向へ付勢されている。そしてこれにより、通常は掛止板11の基端と収容部8の内壁との間には隙間13が形成されており、掛止板11を収容部8の基端側(反切欠き12側)に押圧することで、掛止板11を収容部8の基端側(反切欠き12側)に後退させて隙間13の距離を短くすることを可能としている。
【0027】
次に
図4において15は、掛止板側貫通穴である。本実施例において掛止板11の中央部分近傍にはわずかに長孔状とした掛止板側貫通穴15が形成されており、この掛止板側貫通穴15の内周側において、掛止板11の基端側には板状の掛止部16がわずかに突設されている。
【0028】
そして、前記鞄本体側錠前2のベース3に突設した突起部4は、鞄本体側錠前2に被せ蓋側錠前6を重ね合わせた際に、筐体部7に形成した筐体側貫通穴10及び掛止板11に形成した掛止板側貫通穴15を貫通することとしているとともに、貫通した際に、前記掛止部16に対向する側面側に掛止溝5が形成されている。そしてこれにより、鞄本体側錠前2に被せ蓋側錠前6を重ね合わせた際には、筐体部7に形成した筐体側貫通穴10及び掛止板11に形成した掛止板側貫通穴15を貫通するとともに、掛止部16が、突起部4の側面に形成した掛止溝5の中に挿入され、これにより掛止部16が掛止溝5に掛止され、被せ蓋側錠前6を鞄本体側錠前2から引き離すことが不可能になり、鞄本体側錠前2と被せ蓋側錠前6の重ね合わせを解除することを不可能にし、被せ蓋を鞄本体に固定することができる。なお、
図4及び5において17は、掛止板11が収容部8から飛び出すことを防止するためのストッパーである。そして、筐体7と掛止板11はいずれも、樹脂により形成されている。
【0029】
また、本実施例において前記鞄本体側錠前2における突起部4の上端部分近傍には磁石が具備されている。そして、被せ蓋側錠前6は、突起部4で筐体側貫通穴10及び掛止板側貫通穴13を貫通したときに突起部4が接触又は近接する箇所に、具体的には、蓋部9における突起部4の上方に位置する箇所に、突起部4に具備した磁石に吸着可能な磁石を備えている。そしてこれにより、鞄本体側錠前部2を被せ蓋側錠前部6に重ね合わせた際に、鞄本体側錠前部2と被せ蓋側錠前部6が互いに磁力により吸着されることとしている。
【0030】
そして、本実施例においては、鞄本体側錠前部2及び被せ蓋側錠前部6を樹脂成型する際に、突起部4及び蓋部9を成形する段階で、樹脂の材料に磁石の粉を混入することで、突起部4及び蓋部9に磁石を具備することとしている。
【0031】
ただし、必ずしも樹脂成型する際に磁石の粉を混入して磁石を具備する必要はなく、樹脂成型した後に、突起部4及び蓋部9に磁石を取り付けてもよい。また、必ずしも突起部4に磁石を具備する必要はなく、ベース3に磁石を具備するとともに、蓋部9における、ベース3に備えた磁石に対向する箇所に、ベース3に具備した磁石に吸着可能な磁石を具備してもよい。
【0032】
このように構成される本実施例の錠前の作用を説明すると、本実施例の錠前を使用する際には、鞄本体側錠前2を鞄本体に取り付け、それとともに、被せ蓋の裏面において、被せ蓋を閉じた際に鞄本体側錠前2に対向する箇所に、蓋部9側が被せ蓋に当接する配置で、被せ蓋側錠前6を取り付ける。
【0033】
この状態で被せ蓋を閉じると、被せ蓋側錠前6が磁力によって鞄本体側錠前2の突起部4に導かれ、突起部4が、筐体側貫通穴10及び掛止板側貫通穴15を貫通し、更にそのときに、突起部4の存在により掛止板11が基端側に押されて移動し、掛止板側貫通穴15の内部に形成した掛止部16が、突起部4の側面に形成した掛止溝5の内部に挿入される。そして、これにより、鞄本体側錠前にと被せ蓋側錠前6が掛止され、被せ蓋を鞄本体に連結することができる。そしてこの状態では、被せ蓋側錠前6を鞄本体側錠前2から外そうとしても、掛止板11はスプリング14の弾性力で先端側に押圧され、掛止部16が掛止溝5の内部に挿入されているために、外すことはできない。
【0034】
そしてこの連結状態において、掛止板11の先端部を収容部8の内部側に押圧すると、掛止板11が収容部8の基端側(反切欠き部12側)に移動し、それにより掛止部16が掛止溝5から抜け出る。そうすると、突起部4と掛止板11との掛止が解除されるために、この状態において、磁力に対向して被せ蓋側錠前6を、鞄本体側錠前2に重なっている状態から外す方向へ移動させると、被せ蓋側錠前6を鞄本体側錠前2との連結から解除することができ、被せ蓋を開くことが可能となる。
【0035】
従って、本実施例の錠前1では、被せ蓋の着脱の際に掛止板が本人あるいは周囲にいる者に当たってしまことを防止することができるとともに、容易に蓋を鞄本体に掛止することが可能である。
本発明の鞄用錠前は、鞄本体と被せ蓋を有する鞄において被せ蓋を容易に開閉自在としているために、上部を開口とした鞄本体と鞄本体の上部開口を開閉自在な被せ蓋を有する鞄に用いる錠前の全般に適用可能である。