(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130158
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ダイポールアンテナ及び電波方位探知装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/27 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
H01Q9/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034666
(22)【出願日】2022-03-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1) 納入検査日・納入日(公開日) 令和3年3月10日/令和3年3月12日 納入検査場所 日本電気株式会社府中事業所(東京都府中市日新町1-10) 販売・納入先 総務省 関東総合通信局 (東京都千代田区九段南1丁目2番1号 九段第3合同庁舎) 公開者 日本電気株式会社 <資 料>「遠隔方位測定設備 小型可搬センサの納入検査議事録(納入確認覚書)」
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000101857
【氏名又は名称】アンテナ技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】栗原 崇
(72)【発明者】
【氏名】奥野 秀一
(57)【要約】
【課題】構造が単純で、広周波数帯域の電波を受信可能で無指向性に近い指向性を持つダイポールアンテナ及び電波方位探知装置を提供する。
【解決手段】ダイポールアンテナ1は、使用周波数帯域の中心周波数の波長に対応する全長Lを有するダイポール20を備える。ダイポール20は、給電点Qを通る基準面Sqから基準面Sqに垂直な正面方向Dに所定の傾斜角度θで傾く一対の素子21,22を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用周波数帯域の中心周波数の波長に対応する全長を有するダイポールを備え、
前記ダイポールは、給電点を通る基準面から前記基準面に垂直な正面方向に所定の傾斜角度で傾く一対の素子を有するダイポールアンテナ。
【請求項2】
前記全長は、前記中心周波数の0.5波長以上1.5波長以下に対応し、
前記傾斜角度は、10°以上45°以下である請求項1に記載のダイポールアンテナ。
【請求項3】
前記ダイポールは、前記正面方向に凸となるように湾曲するカール部を先端に有する請求項1又は請求項2に記載のダイポールアンテナ。
【請求項4】
前記カール部の曲率半径は、前記使用周波数帯域の中心周波数の0.02波長から0.3波長である請求項3に記載のダイポールアンテナ。
【請求項5】
前記カール部の中心角は、30°以上180°である請求項3又は請求項4に記載のダイポールアンテナ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の前記ダイポールアンテナを備える電波方位探知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイポールアンテナ及び電波方位探知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
広い方位角の範囲から到来する広周波数帯域の電波を受信するための電波方位探知装置があった。電波方位探知装置には、例えば、スリーブダイポールアンテナ、バイコニカルアンテナ、ディスコーンアンテナ等のアンテナが用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電波方位探知装置は、広周波数帯域の電波を受信可能で指向性をできるだけ持たないようにするため、構造が複雑となるという課題があった。
【0005】
そこで、上述した課題を鑑み、本発明は、構造が単純で、広周波数帯域の電波を受信可能で無指向性に近い指向性を持つダイポールアンテナ及び電波方位探知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るダイポールアンテナは、使用周波数帯域の中心周波数の波長に対応する全長を有するダイポールを備え、前記ダイポールは、給電点を通る基準面から前記基準面に垂直な正面方向に所定の傾斜角度で傾く一対の素子を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、構造が単純で、広周波数帯域の電波を受信可能で無指向性に近い指向性を持つダイポールアンテナ及び電波方位探知装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る電波方位探知装置の部分斜視図である。
【
図2】実施形態に係るダイポールアンテナの側面図である。
【
図3】ダイポールアンテナの正面方向における利得特性の比較図である。
【
図4】最小構成の実施形態に係るダイポールアンテナの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る電波方位探知装置100の部分斜視図である。
図2は、実施形態に係るダイポールアンテナ1の側面図である。
【0010】
図1及び
図2に示すように、実施形態に係る電波方位探知装置100は、ダイポールアンテナ1を備えている。実施形態に係る電波方位探知装置100は、ダイポールアンテナ1を支持する支柱10を備えていてもよい。
【0011】
支柱10は、ダイポールアンテナ1を支持する直線状の構造体である。支柱10は、例えば、鉛直方向に沿って延びた状態で、地表又は構造物に設置される。
【0012】
ダイポールアンテナ1は、支柱10の側面に支持されている。ダイポールアンテナ1は、支柱10から離れる方向に延びている。ダイポールアンテナ1は、例えば、支柱10の延在方向が鉛直方向である場合、その延在方向に垂直な方向である水平方向に延びている。ダイポールアンテナ1は、鉛直方向(以下、支柱10の延在方向と同じ意味で用いる場合がある。)からみて、放射状に、複数配置されていてよい。
図1に示すように、ダイポールアンテナ1は、鉛直方向からみて、放射状に、例えば、5箇所に配置されていてよい。ダイポールアンテナ1は、鉛直方向からみて、支柱10を中心とする周方向に等間隔で配置されていてよい。
【0013】
ダイポールアンテナ1は、支柱10に支持される支持アーム23と、ダイポール20とを有している。
【0014】
支持アーム23は、ダイポール20を支持するための剛性及び強度を有する構造体である。支持アーム23は、一端を、支柱10に片持ち支持されている。支持アーム23は、他端にダイポール20を支持している。支持アーム23は、鉛直方向からみて、放射状に直線状に延びている。支持アーム23は、例えば、5箇所に配置されていてよい。支持アーム23は、例えば、支柱10の延在方向(鉛直方向)に対する垂直方向(水平方向)に沿って直線状に延びる筒状体である。支持アーム23は、その延在方向に沿って、ダイポール20に繋がる通信回路を構成する導体を含む通信ケーブル等を通している。
【0015】
ダイポール20は、一対の素子21,22で構成されている。ダイポール20は、支柱10の延在方向に平行な平面(支柱10が鉛直方向に沿って延在する場合は、鉛直面)に平行になるように配置されている。
【0016】
一対の素子21,22は、例えば、アルミニウム等の金属製の管である。一対の素子21,22は支柱10の延在方向に平行な平面(支柱10が鉛直方向に沿って延在する場合は、鉛直面)に沿って配置されている。一対の素子21,22は、それぞれ、給電点Qから離れる方向に延びている。なお、給電点Qは、支持アーム23に沿って配置される導線が、一方の素子21と他方の素子22に分岐する位置である。導線を通る電流は、給電点Qにおいて向きを変える。導線は、支持アーム23に沿って配置された状態で束ねられている。導線は、一対の素子21,22のそれぞれに接続されている。給電点Qは、例えば、支持アーム23における正面方向Dの先端である。
【0017】
一対の素子21,22は、給電点Qを通る正面方向Dを基準として、鉛直方向に対称的に配置されていてよい。言い換えると、一対の素子21,22は、給電点Qを隔てて、給電点Qの上方と下方にそれぞれ配置されていてよい。
【0018】
ここで、
図2に示すように、ダイポール20は、使用周波数帯域の中心周波数の波長に対応する全長Lを有している。なお、全長Lは、ダイポール20の一方の先端21eから他方の先端22eまでの、基準面Sqに平行な距離(正面方向Dに沿ってみたときの長さ)である。
また、ダイポール20は、給電点Qを通る基準面Sqから基準面Sqに垂直な正面方向Dに所定の傾斜角度θで傾く一対の素子21,22を有している。なお、基準面Sqは、支柱10の延在方向に平行で支持アーム23に垂直な鉛直面であってよい。
【0019】
このように、ダイポールアンテナ1は、使用周波数帯域の中心周波数の波長に対応する全長Lを有するダイポール20を備えている。そして、ダイポール20は、給電点Qを通る基準面Sqから基準面Sqに垂直な正面方向Dに所定の傾斜角度θで傾く一対の素子21,22を有している。ダイポール20の全長Lと傾斜角度θとの関係を調整することで、指向性が強まることを抑えつつ、広周波数帯域の電波を受信できる。
したがって、本ダイポールアンテナを用いれば、広周波数帯域をカバーするために複数の種類の低指向性を有するアンテナシステムを組み合わせることを要することなく、単純な構造で、広周波数帯域の電波を受信可能で、無指向性に近い指向性を持つアンテナ及び電波方位探知装置を提供できる。
全長Lは、使用周波数帯域の中心周波数の0.5波長以上1.5波長以下に対応することが好ましい。傾斜角度θは、10°以上45°以下であることが好ましい。これにより、より効果的に、指向性が強まることを抑えつつ、広周波数帯域の電波を受信できる。
【0020】
また、ダイポール20は、正面方向Dに凸となるように湾曲するカール部21c,22cを先端に有していることが好ましい。言い換えると、カール部21c,22cは、正面方向Dとは反対方向に曲がっている。このように、ダイポール20の先端を正面方向Dに凸となるように湾曲にすることで、素子21,22が正面方向Dに傾斜することで強まる指向性を抑えることができ、広周波数帯域の電波を受信できる構造で、無指向性に近い指向性を持った状態にできる。
【0021】
また、カール部21c,22cの曲率半径rは、使用周波数帯域の中心周波数の0.02波長から0.3波長であることが好ましい。このように、カール部21c,22cの曲率半径rを、使用周波数帯域の中心周波数の0.02波長から0.3波長にすることで、素子21,22が正面方向Dに傾斜することで強まる指向性を効果的に抑えることができ、広周波数帯域の電波を受信できる構造で、無指向性に近い指向性を持った状態にできる。
【0022】
また、カール部21c,22cの中心角αは、30°以上180°以下であることが好ましい。このように、カール部21c,22cの中心角αを、30°以上180°以下にすることで、素子21,22が正面方向Dに傾斜することで強まる指向性を効果的に抑えることができ、広周波数帯域の電波を受信できる構造で、無指向性に近い指向性を持った状態にできる。
【0023】
次に、
図3を用いて、本実施形態に係るダイポールアンテナ1の正面方向Dにおける利得特性について、比較例と比較して説明する。
図3は、各種ダイポールアンテナの正面方向Dにおける利得特性の比較図である。
図3において、横軸は、周波数を示し、縦軸は、利得(ゲイン)を示している。
図3において、太線aは、本実施形態に係るダイポールアンテナ1の利得曲線を表している。
図3において、破線bは、比較例1に係るスリーブダイポールアンテナの利得曲線の代表例を表している。
図3において、細線cは、比較例2に係る狭周波数帯域の電波の受信に対応するダイポールアンテナの利得曲線の代表例を表している。
【0024】
図3に示すように、本実施形態及び比較例1では、約0.1GHzから0.7GHzまでの周波数帯域において、-10dBi以上の利得が得られている。これに対して、比較例2では、-10dBi以上の利得が得られる周波数帯域は、約0.1GHzから0.45GHzまでの周波数帯域に限られている。
このように、本実施形態に係るダイポールアンテナ1は、狭周波数帯域のダイポールアンテナのように、単純な構造で、小型、軽量でありながらも、スリーブダイポール等の複雑な構造で、大型、大きな質量のアンテナと同等の性能が得られる。
【0025】
<最小構成の実施形態>
以下、本発明に係るダイポールアンテナ1の最小構成の実施形態について、
図4を用いて説明する。
図4は、最小構成の実施形態に係るダイポールアンテナ1の側面図である。
【0026】
(構成)
本実施形態のダイポールアンテナ1は、使用周波数帯域の中心周波数の波長に対応する全長Lを有するダイポール20を備える。
ダイポール20は、給電点Qを通る基準面Sqから基準面Sqに垂直な正面方向Dに所定の傾斜角度θで傾く一対の素子21,22を有する。
【0027】
(作用及び効果)
本実施形態のダイポールアンテナ1は、使用周波数帯域の中心周波数の波長に対応する全長Lを有するダイポール20を備えている。そして、ダイポール20は、給電点Qを通る基準面Sqから基準面Sqに垂直な正面方向Dに所定の傾斜角度θで傾く一対の素子21,22を有している。ダイポール20の全長Lと傾斜角度θとの関係を調整することで、指向性が強まることを抑えつつ、広周波数帯域の電波を受信できる。
したがって、本ダイポールアンテナを用いれば、広周波数帯域をカバーするために複数の種類の低指向性を有するアンテナシステムを組み合わせることを要することなく、単純な構造で、広周波数帯域の電波を受信可能で、無指向性に近い指向性を持つアンテナ及び電波方位探知装置を提供できる。
【0028】
以上、本開示の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として示したものであり、本開示の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0029】
1 ダイポールアンテナ
10 支柱
20 ダイポール
21,22 素子
21c,22c カール部
21e,22e 先端
23 支持アーム
100 電波方位探知装置
D 正面方向
L 全長
Q 給電点
r 曲率半径
Sq 基準面
α 中心角
θ 傾斜角度