(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130159
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】指向性アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/10 20060101AFI20230912BHJP
H01Q 7/00 20060101ALI20230912BHJP
H01Q 9/04 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H01Q19/10
H01Q7/00
H01Q9/04
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034667
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】三浦 健
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA06
5J020BC10
5J020DA03
5J020DA04
5J020DA06
(57)【要約】
【課題】構造的に単純でかつ安価で、指向性を有することができる指向性アンテナ装置を提供すること。
【解決手段】アンテナ装置100は、基板101上に配置されたスプリットリング共振器103と、基板101上で、スプリットリング共振器103と同一の面に形成されたGNDプレーン102と、スプリットリング共振器103に対して、基板101に垂直な方向で離間し、所望の周波数で共振可能な無給電素子104とを備え、無給電素子104は、基板101に平行で、GNDプレーン102と対向し、基板101に垂直な方向で無給電素子104を基板101に投影した投影面の少なくとも一部がスプリットリング共振器103と重なるようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置されたスプリットリング共振器と、
前記基板上で、前記スプリットリング共振器と同一の面に形成されたGNDプレーンと、
前記スプリットリング共振器に対して、基板に垂直な方向で離間し、所望の周波数で共振可能な無給電素子とを備え、
前記無給電素子は、前記基板に平行で、前記GNDプレーンと対向し、
前記基板に垂直な方向で前記無給電素子を前記基板に投影した投影面の少なくとも一部が前記スプリットリング共振器と重なる、指向性アンテナ装置。
【請求項2】
前記無給電素子は、直線形状の素子である請求項1に記載の指向性アンテナ装置。
【請求項3】
前記無給電素子は、第1の直線形状の素子と第2の直線形状の素子とが端部で接続している請求項1に記載の指向性アンテナ装置。
【請求項4】
前記第1の直線形状の素子と、前記第2の直線形状の素子が直交している請求項3に記載の指向性アンテナ装置。
【請求項5】
前記無給電素子の全長は、所望の周波数の半波長の整数倍である請求項2から4のいずれかに記載の指向性アンテナ装置。
【請求項6】
前記無給電素子の全長は、所望の周波数の半波長である請求項5に記載の指向性アンテナ装置。
【請求項7】
前記無給電素子の全長は、所望の周波数の一波長である請求項5に記載の指向性アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は指向性アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機器の通信距離がユーザーから求められている。通信相手が特定の方向である場合、指向性アンテナを用いた方が無指向性アンテナと比べ、通信距離は広がる。この指向性アンテナの一例として、装置基板上にパッチ型のアンテナを用いる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたアンテナは装置基板上の金属面に装置基板上の無線回路からの信号を、ピンなどを用いて給電する必要がある。そのため、強度が必要になる装置ではピンを含めたアンテナ全体をモールドなどで固定するため、どうしてもアンテナのコストがかかるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態の指向性アンテナ装置は、基板上に配置されたスプリットリング共振器と、前記基板上で、前記スプリットリング共振器と同一の面に形成されたGNDプレーンと、前記スプリットリング共振器に対して、基板に垂直な方向で離間し、所望の周波数で共振可能な無給電素子とを備え、前記無給電素子は、前記基板に平行で、前記GNDプレーンと対向し、前記基板に垂直な方向で前記無給電素子を前記基板に投影した投影面の少なくとも一部が前記スプリットリング共振器と重なるようにした。
【発明の効果】
【0006】
本開示の指向性アンテナ装置によれば、構造的に単純でかつ安価で、指向性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態1にかかるアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1にかかるアンテナ装置の構成を示す三面図である。
【
図3】実施の形態1にかかるアンテナ装置の電流の方向を示す拡大図である。
【
図4】実施の形態1にかかるアンテナ装置100の電波放射の一例を示す断面図である。
【
図5】無給電素子104の無いアンテナのY-Z面における放射パターンを示す図である。
【
図6】無給電素子104があるアンテナ装置100のY-Z面における放射パターンを示す図である。
【
図7】実施の形態2にかかるアンテナ装置の一例を示す斜視図である。
【
図8】実施の形態2にかかるアンテナ装置の一例を示す三面図である。
【
図9】実施の形態2にかかるアンテナ装置のY-Z面における放射パターンを示す図である。
【
図10】実施の形態2にかかるアンテナ装置の電流の方向を示す拡大図である。
【
図11】実施の形態2にかかるアンテナ装置の変形例を示す斜視図である。
【
図12】実施の形態2にかかるアンテナ装置の変形例を示す三面図である。
【
図13】、実施の形態2にかかるアンテナ装置の変形例の電流の方向を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態1にかかるアンテナ装置の構成を示す斜視図である。また、
図2は、実施の形態1にかかるアンテナ装置の構成を示す三面図である。
図1及び
図2において、アンテナ装置100は、基板101と、GNDプレーン102と、スプリットリング共振器103と、無給電素子104とを備える。
【0009】
基板101は、樹脂等の電気絶縁材料からなる平板上の部材である。樹脂としては、例えば、ガラス布機材エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0010】
GNDプレーン102は、基板101上で、スプリットリング共振器103と同一の面に形成されたグラウンドパターンである。例えば、GNDプレーン102は、銅等の導体からなる板状の導体部材である。具体的には、GNDプレーン102は、送受信回路や信号処理回路等の電気回路のアース導体である。
【0011】
スプリットリング共振器103は、図示しない無線回路に接続され、基板101上に配置されている。例えば、無線回路は、基板101の裏面(GNDプレーン102の形成されていない面)に形成されてもよい。
【0012】
無給電素子104は、スプリットリング共振器103に対して、基板101に垂直な方向で離間し、所望の周波数で共振可能な素子である。例えば、無給電素子104の全長は、所望の周波数の半波長の整数倍である。具体的には、無給電素子104の全長は、所望の周波数の半波長であってもよい。また、無給電素子104の全長は、所望の周波数の一波長であってもよい。また、無給電素子104は、基板101に平行で、GNDプレーン102と対向している。無給電素子104は直線形状の素子である。また、無給電素子104は、銅、真ちゅう、アルミニウム等の線状又は細長い板状の導体で形成される。
【0013】
そして基板101に垂直な方向で無給電素子104を基板101に投影した投影面の少なくとも一部がスプリットリング共振器103と重なる位置関係にある。
【0014】
次に、アンテナ装置100の動作について説明する。
図3は、実施の形態1にかかるアンテナ装置の電流の方向を示す拡大図である。まず、図示しない無線回路からスプリットリング共振器103に信号が入力されると、装置基板端にアンテナ電流301が流れる。すると、無給電素子104に逆向きの電流302が発生する。無給電素子104に電流が流れると、
図4に示すように無給電素子104から電波が放射される。
図4は、実施の形態1にかかるアンテナ装置100の電波放射の一例を示す断面図である。ここで、基板101側に放射された電波は、基板101のGNDプレーン102によって反射する。そのため、無給電素子104側への電波が大きくなり、その反対側への電波は小さくなる。この結果、指向性アンテナが得られる。
【0015】
次にアンテナの指向性について説明する。
図5は、無給電素子104の無いアンテナのY-Z面における放射パターンを示す図である。
図6は、無給電素子104があるアンテナ装置100のY-Z面における放射パターンを示す図である。
図6に示すように、アンテナ装置100では、-Y方向に指向性を持った特性であるため、無給電素子104を追加したことで、指向性アンテナに変わったことが確認できる。
【0016】
このように実施の形態1のアンテナ装置によれば、単純な無給電素子104を追加することにより、安価に指向性アンテナを実現できる。また、実施の形態1のアンテナ装置によれば、この指向性アンテナを電波の到来方向に向きを合わせることで通信距離が広がる。
【0017】
実施の形態2
実施の形態2では、水平偏波成分についても指向性をもたせるアンテナ装置について説明する。
【0018】
実施の形態1では、無給電素子104形状を追加することにより、-Y方向の垂直偏波は指向性を持たせることが可能となったが、水平偏波成分については十分な指向性が実現できていない。これは、無給電素子104に、水平方向の高周波電流がほとんどないためである。これを解決するため、実施の形態2では、無給電素子104の途中を折り曲げた形状にする。
【0019】
図7は、実施の形態2にかかるアンテナ装置の一例を示す斜視図である。また、
図8は、実施の形態2にかかるアンテナ装置の一例を示す三面図である。
図7において、アンテナ装置700は、基板101と、GNDプレーン102と、スプリットリング共振器103と、無給電素子704とを備える。
図7及び
図8において、
図1及び
図2と同一の構成は、同じ番号を付し、説明を省略する。
【0020】
無給電素子704は、スプリットリング共振器103に対して、基板101に垂直な方向で離間し、所望の周波数で共振可能な素子である。また、無給電素子704は、基板101に平行で、GNDプレーン102と対向している。例えば、無給電素子704の全長は、所望の周波数の半波長の整数倍である。具体的には、無給電素子704の全長は、所望の周波数の一波長であってもよい。また、無給電素子704は、基板101に平行で、GNDプレーン102と対向している。
【0021】
無給電素子704は第1の直線形状の素子711と第2の直線形状の素子712とが端部で接続している。そして、第1の直線形状の素子711と第2の直線形状の素子712とが所定の角度を為している。垂直偏波成分と水平偏波成分に指向性を持たせる場合、第1の直線形状の素子711と第2の直線形状の素子712とが直交していることが望ましい。
【0022】
次にアンテナの指向性について説明する。
図9は、実施の形態2にかかるアンテナ装置のY-Z面における放射パターンを示す図である。
図9に示すようにアンテナ装置700では、-Y方向の水平偏波が発生する。この時の無給電素子704に流れる電流は
図10のようになっている。
図10は、実施の形態2にかかるアンテナ装置の電流の方向を示す拡大図である。
【0023】
このように実施の形態2のアンテナ装置によれば、無給電素子104の形状を途中で折り曲げた形状とすることで、水平、垂直偏波共に指向性を持つアンテナが実現できる。
【0024】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施の形態2では、無給電素子704の全長を1波長としたが、全長が半波長としてもよい。
図11は、実施の形態2にかかるアンテナ装置の変形例を示す斜視図である。また、
図12は、実施の形態2にかかるアンテナ装置の変形例を示す三面図である。また
図13は、実施の形態2にかかるアンテナ装置の変形例の電流の方向を示す拡大図である。
【0025】
ただし、
図11の例では、
図7と比較して無給電素子704の効果がある帯域が狭くなる傾向がある。これは、
図1で示すような無給電素子104に発生する電流が、折り曲げたことで小さくなったためである。しかし、使用帯域が狭い場合では十分使える技術である。実施の形態2の変形例は、無給電素子704を小型化しても水平、垂直偏波共に指向性を持つアンテナが実現できる。
【符号の説明】
【0026】
100、700 アンテナ装置
101 基板
102 GNDプレーン
103 スプリットリング共振器
104、704 無給電素子
711 第1の直線形状の素子
712 第2の直線形状の素子