(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130190
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】光学ガラス、光学素子ブランクおよび光学素子
(51)【国際特許分類】
C03C 3/19 20060101AFI20230912BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C03C3/19
G02B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034719
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522503632
【氏名又は名称】豪雅光電科技(威海)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勇人
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA04
4G062BB09
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4G062NN02
(57)【要約】
【課題】 屈折率が高く、比重が比較的低い光学ガラスおよび光学素子を提供すること。
【解決手段】 屈折率ndが1.900以上であり、アッベ数νdが25.0以下であり、P2O5の含有量が5.0質量%以上であり、Bi2O3の含有量が20.0質量%以下であり、TiO2の含有量が0.1質量%以上であり、TiO2の含有量と、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量[Li2O+Na2O+K2O]との質量比[TiO2/(Li2O+Na2O+K2O)]が2.5~10.0であり、TiO2の含有量と、MgO、CaO、ZnO、SrOおよびBaOの合計含有量[MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO]との質量比[TiO2/(MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO)]が1.25~10.0であり、Li2O、Na2O、MgO、CaO、ZnOおよびSrOの合計含有量[Li2O+Na2O+MgO+CaO+ZnO+SrO]と、K2OおよびBaOの合計含有量[K2O+BaO]との質量比[(Li2O+Na2O+MgO+CaO+ZnO+SrO)/(K2O+BaO)]が0.8以下である、光学ガラス。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率ndが1.900以上であり、
アッベ数νdが25.0以下であり、
P2O5の含有量が5.0質量%以上であり、
Bi2O3の含有量が20.0質量%以下であり、
TiO2の含有量が0.1質量%以上であり、
TiO2の含有量と、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量[Li2O+Na2O+K2O]との質量比[TiO2/(Li2O+Na2O+K2O)]が2.5~10.0であり、
TiO2の含有量と、MgO、CaO、ZnO、SrOおよびBaOの合計含有量[MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO]との質量比[TiO2/(MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO)]が1.25~10.0であり、
Li2O、Na2O、MgO、CaO、ZnOおよびSrOの合計含有量[Li2O+Na2O+MgO+CaO+ZnO+SrO]と、K2OおよびBaOの合計含有量[K2O+BaO]との質量比[(Li2O+Na2O+MgO+CaO+ZnO+SrO)/(K2O+BaO)]が0.8以下である、光学ガラス。
【請求項2】
請求項1に記載の光学ガラスからなる光学素子ブランク。
【請求項3】
請求項1に記載の光学ガラスからなる光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラス、光学素子ブランクおよび光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、AR(拡張現実)技術の進展に伴い、ARデバイスとして、例えばゴーグル型あるいは眼鏡型の表示装置が開発されている。例えばゴーグル型の表示装置には、高屈折率かつ低比重であるレンズが要求され、このようなレンズに適用できるガラスの需要が高まっている。
【0003】
特許文献1~4は、高屈折率の光学ガラスとして、Ti、Nbを含む光学ガラスが開示されている。しかしながら、これらの光学ガラスは、ARデバイス用レンズとして採用するには、屈折率に対して比重が大きすぎると推定される。
【0004】
そこで、高屈折率を維持しながら、比重が低減された光学ガラスが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-17261号公報
【特許文献2】特開2013-212935号公報
【特許文献3】特開2013-227197号公報
【特許文献4】特開2015-63460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、屈折率が高く、比重が比較的低い光学ガラスおよび光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)屈折率ndが1.900以上であり、
アッベ数νdが25.0以下であり、
P2O5の含有量が5.0質量%以上であり、
Bi2O3の含有量が20.0質量%以下であり、
TiO2の含有量が0.1質量%以上であり、
TiO2の含有量と、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量[Li2O+Na2O+K2O]との質量比[TiO2/(Li2O+Na2O+K2O)]が2.5~10.0であり、
TiO2の含有量と、MgO、CaO、ZnO、SrOおよびBaOの合計含有量[MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO]との質量比[TiO2/(MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO)]が1.25~10.0であり、
Li2O、Na2O、MgO、CaO、ZnOおよびSrOの合計含有量[Li2O+Na2O+MgO+CaO+ZnO+SrO]と、K2OおよびBaOの合計含有量[K2O+BaO]との質量比[(Li2O+Na2O+MgO+CaO+ZnO+SrO)/(K2O+BaO)]が0.8以下である、光学ガラス。
(2)上記(1)に記載の光学ガラスからなる光学素子ブランク。
(3)上記(1)に記載の光学ガラスからなる光学素子。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、屈折率が高く、比重が比較的低い光学ガラスおよび光学素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一態様である導光板を用いたヘッドマウントディスプレイの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一態様である導光板を用いたヘッドマウントディスプレイの構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明および本明細書において、ガラス組成は、特記しない限り、酸化物基準で表示する。ここで「酸化物基準のガラス組成」とは、ガラス原料が熔融時にすべて分解されてガラス中で酸化物として存在するものとして換算することにより得られるガラス組成をいう。酸化物基準で表示する全てのガラス成分(清澄剤として添加するSb(Sb2O3)、Ce(CeO2)およびSn(SnO2)を除く)の合計含有量は100質量%とする。各ガラス成分の表記は慣習にならい、SiO2、TiO2などと記載する。ガラス成分の含有量および合計含有量は、特記しない限り質量基準であり、「%」は「質量%」を意味する。
【0011】
ガラス成分の含有量は、公知の方法、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)等の方法で定量することができる。また、本明細書および本発明において、構成成分の含有量が0%とは、この構成成分を実質的に含まないことを意味し、該成分が不可避的不純物レベルで含まれることを許容する。
【0012】
本明細書では、屈折率は、特記しない限り、ヘリウムのd線(波長587.56nm)における屈折率ndをいう。
【0013】
また、アッベ数νdは、分散に関する性質を表す値として用いられるものであり、以下の式で表される。ここで、nFは青色水素のF線(波長486.13nm)における屈折率、nCは赤色水素のC線(656.27nm)における屈折率である。
νd=(nd-1)/nF-nC
【0014】
以下に、本発明の実施形態に係る光学ガラスを説明する。本実施形態に係る光学ガラスは、屈折率ndが1.900以上であり、
アッベ数νdが25.0以下であり、
P2O5の含有量が5.0質量%以上であり、
Bi2O3の含有量が20.0質量%以下であり、
TiO2の含有量が0.1質量%以上であり、
TiO2の含有量と、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量[Li2O+Na2O+K2O]との質量比[TiO2/(Li2O+Na2O+K2O)]が2.5~10.0であり、
TiO2の含有量と、MgO、CaO、ZnO、SrOおよびBaOの合計含有量[MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO]との質量比[TiO2/(MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO)]が1.25~10.0であり、
Li2O、Na2O、MgO、CaO、ZnOおよびSrOの合計含有量[Li2O+Na2O+MgO+CaO+ZnO+SrO]と、K2OおよびBaOの合計含有量[K2O+BaO]との質量比[(Li2O+Na2O+MgO+CaO+ZnO+SrO)/(K2O+BaO)]が0.8以下であることを特徴とする。以下、各要件を説明する。
【0015】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、屈折率ndは1.900以上である。屈折率ndの下限は、好ましくは1.910であり、さらには1.920、1.930、1.940、1.950、1.960、1.970または1.980であってもよい。また、屈折率ndの上限は、好ましくは2.300であり、さらには2.250、2.200、2.150、2.100または2.050であってもよい。
【0016】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、所望の分散特性を得るためにアッベ数νdは25.0以下である。アッベ数νdの上限は、好ましくは23.0であり、さらには20.0、19.5、19.0、18.5または18.0であってもよい。アッベ数νdの下限は、好ましくは15.0であり、さらには15.5、16.0または16.5であってもよい。
【0017】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、P2O5の含有量は5.0%以上である。P2O5の含有量の下限は、好ましくは8.0%であり、さらには10.0%、13.0%、15.0%、18.0%または20.0%であってもよい。P2O5の含有量の上限は、好ましくは50.0%であり、さらには45.0%、40.0%、38.0%、35.0%、33.0%、30.0%または28.0%であってもよい。
【0018】
P2O5は、ネットワーク形成成分であり、ガラス中に高分散成分を多く含有するために必須の成分である。P2O5の含有量を上記範囲とすることで、所望の屈折率を得ることが容易になり、また熔融温度を適切な範囲に制御できる。
【0019】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Bi2O3の含有量は20%以下である。Bi2O3の含有量の上限は、好ましくは15.0%であり、さらには10.0%、5.0%、3.0%または1%であってもよい。Bi2O3は、ガラスの屈折率を上げるガラス成分である。一方、Bi2O3の含有量を高めると、ガラスの着色が増大する。また、高比重化の原因となる。
【0020】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiO2の含有量は0.1%以上である。TiO2の含有量の下限は、好ましくは0.5%であり、さらには1.0%、5.0%、10.0%、13.0%または15.0%であってもよい。TiO2の含有量の上限は、好ましくは50.0%であり、さらには45.0%、40.0%、38.0%、35.0%、33.0%、30.0%、28.0%または25.0%であってもよい。
【0021】
TiO2は、高屈折率化、高分散化に大きく寄与する。また、高屈折率化成分の中では低比重化に寄与する。TiO2の含有量を上記範囲とすることで、高屈折率化と低比重化を両立でき、化学的耐久性も改善できる。一方、TiO2の含有量が多すぎると、熔融温度が上昇し、熔融ガラスを成形、徐冷して光学ガラスを得る過程で、ガラス内における結晶生成が促進されて、ガラスの透明性が低下(白濁)する傾向がある。また着色が増大する。
【0022】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiO2の含有量と、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量[Li2O+Na2O+K2O]との質量比[TiO2/(Li2O+Na2O+K2O)]は2.5~10.0である。該質量比の上限は、好ましくは9.5であり、さらには9.0または8.5であってもよい。該質量比の下限は、好ましくは2.6であり、さらには2.7、2.8、2.9または3.0であってもよい。該質量比が上記範囲にあることにより、所望の屈折率が得られやすく、ガラスの安定性が向上する。
【0023】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiO2の含有量と、MgO、CaO、ZnO、SrOおよびBaOの合計含有量[MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO]との質量比[TiO2/(MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO)]が1.25~10.0である。該質量比の上限は、好ましくは9.5であり、さらには9.0、8.5、8.0または7.5であってもよい。該質量比の下限は、好ましくは1.28であり、さらには1.30、1.33、または1.35であってもよい。該質量比が上記範囲にあることにより、低比重で所望の屈折率を得ることが容易になり、またガラスの安定性が向上する。
【0024】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Li2O、Na2O、MgO、CaO、ZnOおよびSrOの合計含有量[Li2O+Na2O+MgO+CaO+ZnO+SrO]と、K2OおよびBaOの合計含有量[K2O+BaO]との質量比[(Li2O+Na2O+MgO+CaO+ZnO+SrO)/(K2O+BaO)]は0.8以下である。該質量比の上限は、好ましくは0.78であり、さらには0.75、0.73または0.70であってもよい。該質量比が上記範囲にあるとガラスの安定性が向上する。
【0025】
本実施形態に係る光学ガラスにおける上記以外のガラス成分の含有量、比率、特性について、以下に非制限的な例を示す。
【0026】
本実施形態に係る光学ガラスは、F(フッ素)を実質的に含まない。すなわち、本実施形態に係る光学ガラスにおいて、アニオン成分は主としてO(酸素)である。Fの含有量は、酸化物基準のガラス全物質量に対する質量%で表示する場合、外割で、好ましくは1.0%未満であり、さらには、0.5%以下、0.2%以下、0.1%以下の順により好ましい。
【0027】
ここで「外割」とは、F成分につき、ガラスを構成するカチオン成分全てが電荷の釣り合うだけの酸素と結合した酸化物でできていると仮定し、それら酸化物でできたガラス全体の物質量を100%としたときの、F成分の物質量を、質量%で表したものである。
【0028】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、SiO2の含有量の上限は、好ましくは10.0%であり、さらには8.0%、5.0%、3.0%または1.0%であってもよい。SiO2の含有量は0%であってもよい。
【0029】
SiO2は、ガラスのネットワーク形成成分であり、ガラスの熱的安定性、化学的耐久性、耐候性を改善し、熔融ガラスの粘度を高め、熔融ガラスを成形しやすくする働きを有する。一方、SiO2の含有量が多いと、所望の屈折率を得ることが困難になる。
【0030】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、B2O3の含有量の上限は、好ましくは10.0%であり、さらには8.0%、5.0%、3.0%または1.0%であってもよい。B2O3の含有量は0%であってもよい。
【0031】
B2O3は、ガラスのネットワーク形成成分である。また、ガラスのネットワーク形成成分の中では高屈折率化に寄与する。B2O3の含有量を上記範囲とすることで、熔融温度を適切な範囲に制御でき、ガラスの熱的安定性を改善できる。一方、B2O3の含有量が多すぎると、高屈折率化を妨げ、また、耐失透性が低下する傾向がある。
【0032】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Al2O3の含有量の上限は、好ましくは10.0%であり、さらには8.0%、5.0%、3.0%または1.0%であってもよい。Al2O3の含有量は0%であってもよい。
【0033】
Al2O3は、ガラスの化学的耐久性、耐候性を改善する働きを有するガラス成分であり、ネットワーク形成成分として考えることができる。一方、Al2O3の含有量が多くなると、所望の屈折率を得ることが困難になり、また熔融温度が上昇し、ガラスの耐失透性が低下する。また、ガラス転移温度Tgが上昇し、熱的安定性が低下する等の問題が生じやすい。
【0034】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Li2Oの含有量の上限は、好ましくは15.0%であり、さらには10.0%、8.0%、5.0%または3.0%であってもよい。また、Li2Oの含有量の下限は、好ましくは0.01%であり、さらには0.02%、0.03%、0.04%または0.05%であってもよい。Li2Oの含有量は0%であってもよい。
【0035】
Li2Oの含有量を上記範囲とすることで、熔融温度を低下でき、低比重化が可能であり、ガラスの熱的安定性を改善できる。また、Li2Oはアルカリ成分の中では高屈折率化に寄与する。一方、Li2Oの含有量が多すぎると、所望の屈折率を得ることが困難になり、熱的安定性、化学的耐久性、耐候性が低下するおそれがある。
【0036】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Na2Oの含有量の上限は、好ましくは15.0%であり、さらには10.0%、8.0%、5.0%または3.0%であってもよい。また、Na2Oの含有量の下限は、好ましくは0%である。Na2Oの含有量は0%であってもよい。
【0037】
Na2Oは、熔融温度を低下し、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有し、低比重化に寄与するが、その含有量が多すぎると、所望の屈折率を得ることが困難になる。
【0038】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、K2Oの含有量の上限は、好ましくは20.0%であり、さらには15.0%、10.0%または5.0%であってもよい。K2Oの含有量の下限は、好ましくは0.01%であり、さらには0.05%、0.1%、0.5%、1.0%または1.5%であってもよい。
【0039】
K2Oは、熔融温度を低下し、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有し、低比重化に寄与するが、その含有量が多すぎると、所望の屈折率を得ることが困難になる。
【0040】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Cs2Oの含有量の上限は、好ましくは10.0%であり、さらには8.0%、5.0%、3.0%または1.0%であってもよい。また、Cs2Oの含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0041】
Cs2Oは、熔融温度を低下し、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有し、低比重化に寄与するが、その含有量が多くなると、所望の屈折率を得ることが困難になる。
【0042】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、MgOの含有量の上限は、好ましくは15.0%であり、さらには10.0%、8.0%、5.0%または3.0%であってもよい。また、MgOの含有量は0%であってもよい。MgOは、ガラスの熔融温度を低下し、熱的安定性および耐失透性を改善する働きを有するガラス成分である。しかし、MgOの含有量が多くなると、所望の屈折率を得ることが困難になり、ガラスの熱的安定性および耐失透性が低下する。
【0043】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、CaOの含有量の上限は、好ましくは15.0%であり、さらには10.0%、8.0%、5.0%または3.0%であってもよい。また、CaOの含有量は0%であってもよい。CaOは、ガラスの熔融温度を低下し、熱的安定性および耐失透性を改善する働きを有するガラス成分である。しかし、CaOの含有量が多くなると、所望の屈折率を得ることが困難になり、ガラスの熱的安定性および耐失透性が低下する。
【0044】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、SrOの含有量の上限は、好ましくは15.0%であり、さらには10.0%、8.0%、5.0%または3.0%であってもよい。また、SrOの含有量の下限は、好ましくは0%である。SrOは、ガラスの熔融温度を低下し、熱的安定性および耐失透性を改善する働きを有するガラス成分である。しかし、SrOの含有量が多くなると、比重が増加し、所望の屈折率を得ることが困難になり、ガラスの熱的安定性および耐失透性が低下する。
【0045】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、BaOの含有量の上限は、好ましくは30.0%であり、さらには28.0%、25.0%、23.0%、20.0%、18.0%、15.0%、13.0%または10.0%であってもよい。また、BaOの含有量の下限は、好ましくは0.1%であり、さらには0.5%、1.0%、2.0%または3.0%であってもよい。BaOは、ガラスの熔融温度を低下し、熱的安定性および耐失透性を改善する働きを有するガラス成分である。しかし、BaOの含有量が多くなると、比重が増加し、所望の屈折率を得ることが困難になり、ガラスの熱的安定性および耐失透性が低下する。
【0046】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、ZnOの含有量の上限は、好ましくは15.0%であり、さらには10.0%、8.0%、5.0%または3.0%であってもよい。また、ZnOの含有量の下限は、好ましくは0%である。ZnOは、ガラスの熔融温度を低下し、熱的安定性および耐失透性を改善する働きを有するガラス成分である。しかし、ZnOの含有量が多くなると、比重が増加し、所望の屈折率を得ることが困難になり、ガラスの熱的安定性および耐失透性が低下する。
【0047】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Nb2O5の含有量の上限は、好ましくは80.0%であり、さらには75.0%、70.0%、60.0%、58.0%、55.0%、53.0%または50.0%であってもよい。また、Nb2O5の含有量の下限は、好ましくは5.0%であり、さらには10.0%、15.0%、20.0%、23.0%、25.0%、28.0%、30.0%、33.0%または35.0%であってもよい。
【0048】
Nb2O5は、高屈折率化、高分散化に寄与する成分である。また、Nb2O5の含有量を上記範囲とすることで、ガラスの熱的安定性および化学的耐久性を改善できる。一方、Nb2O5の含有量が多くなりすぎると、熔融温度が上昇し、ガラスの熱的安定性が低下し、また、ガラスの着色が強まる傾向がある。また、ガラスの比重が大きくなるおそれがある。
【0049】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、ZrO2の含有量の上限は、好ましくは10.0%であり、さらには8.0%、5.0%、3.0%または1.0%であってもよい。また、ZrO2の含有量の下限は、好ましくは0%である。ZrO2は、ガラスの屈折率を上げ、熱的安定性および耐失透性を改善する働きを有するガラス成分である。しかし、ZrO2の含有量が多すぎると、比重が増加し、熔融温度が上昇し、熱的安定性が低下する傾向を示す。
【0050】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、WO3の含有量の上限は、好ましくは15.0%であり、さらには13.0%、10.0%、8.0%、5.0%、3.0%または1.0%であってもよい。WO3の含有量は0%であってもよい。WO3は、ガラスの屈折率を上げるガラス成分である。しかし、WO3の含有量が多すぎると、比重が増加し、熱的安定性が低下する傾向を示す。
【0051】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Ta2O5の含有量の上限は、好ましくは10.0%であり、さらには8.0%、5.0%、3.0%または1.0%であってもよい。また、Ta2O5の含有量の下限は、好ましくは0%である。Ta2O5は、ガラスの屈折率を上げるガラス成分である。しかし、Ta2O5の含有量が多くなると、ガラスの比重が増加し、ガラスの熱的安定性が低下し、ガラスの熔融温度が上昇する。
【0052】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、La2O3の含有量の上限は、好ましくは10.0%であり、さらには8.0%、5.0%、3.0%または1.0%であってもよい。また、La2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。La2O3は、ガラスの屈折率を上げるガラス成分である。しかし、La2O3の含有量が多くなると、ガラスの比重が増加し、ガラスの熱的安定性が低下し、ガラスの熔融温度が上昇する。
【0053】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Y2O3の含有量の上限は、好ましくは10.0%であり、さらには8.0%、5.0%、3.0%または1.0%であってもよい。また、Y2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。Y2O3は、ガラスの屈折率を上げるガラス成分である。しかし、Y2O3の含有量が多くなると、ガラスの比重が増加し、ガラスの熱的安定性が低下し、ガラスの熔融温度が上昇する。
【0054】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Gd2O3の含有量の上限は、好ましくは10.0%であり、さらには8.0%、5.0%、3.0%または1.0%であってもよい。また、Gd2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。Gd2O3は、ガラスの屈折率を上げるガラス成分である。しかし、Gd2O3の含有量が多くなると、ガラスの比重が増加し、ガラスの熱的安定性が低下し、ガラスの熔融温度が上昇する。
【0055】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Lu2O3の含有量の上限は、好ましくは10.0%であり、さらには8.0%、5.0%、3.0%または1.0%であってもよい。また、Lu2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。Lu2O3は、ガラスの屈折率を上げるガラス成分である。しかし、Lu2O3の含有量が多くなると、ガラスの比重が増加する。
【0056】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Yb2O3の含有量の上限は、好ましくは10.0%であり、さらには8.0%、5.0%、3.0%または1.0%であってもよい。また、Yb2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。Yb2O3は、ガラスの屈折率を上げるガラス成分である。しかし、Yb2O3の含有量が多くなると、ガラスの比重が増加する。
【0057】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、GeO2の含有量の上限は、好ましくは10.0%であり、さらには8.0%、5.0%、3.0%または1.0%であってもよい。また、GeO2の含有量の下限は、好ましくは0%である。GeO2は、屈折率ndを高める働きを有し、また、一般的に使用されるガラス成分の中で、突出して高価な成分である。したがって、ガラスの製造コストを低減する観点から、GeO2の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0058】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、HfO2の含有量の上限は、好ましくは10.0%であり、さらには8.0%、5.0%、3.0%または1.0%であってもよい。また、HfO2の含有量の下限は、好ましくは0%である。HfO2は、屈折率ndを高める働きを有し、比重を増大し、高価な成分である。したがって、ガラスの製造コストを低減する観点から、HfO2の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0059】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、In2O3の含有量の上限は、好ましくは10.0%であり、さらには8.0%、5.0%、3.0%または1.0%であってもよい。また、In2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。In2O3は、屈折率ndを高める働きを有し、比重を増大し、高価な成分である。したがって、ガラスの製造コストを低減する観点から、In2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0060】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Ga2O3の含有量の上限は、好ましくは10.0%であり、さらには8.0%、5.0%、3.0%または1.0%であってもよい。また、Ga2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。Ga2O3は、屈折率ndを高める働きを有し、比重を増大し、高価な成分である。したがって、ガラスの製造コストを低減する観点から、Ga2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0061】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Sc2O3の含有量の上限は、好ましくは10.0%であり、さらには8.0%、5.0%、3.0%または1.0%であってもよい。また、Sc2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。Sc2O3は、屈折率ndを高める働きを有し、比重を増大する。したがって、ガラスの比重を低減する観点から、Sc2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0062】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、P2O5、TiO2およびNb2O5の合計含有量[P2O5+TiO2+Nb2O5]の上限は、好ましくは98.0%であり、さらには97.0%、96.0%または95.0%であってもよい。また該合計含有量の下限は、好ましくは70.0%であり、さらには73.0%、75.0%、78.0%または80.0%であってもよい。合計含有量[P2O5+TiO2+Nb2O5]が上記範囲にあることにより、熔融温度が低下し、ガラスの安定性が向上する。
【0063】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量[Li2O+Na2O+K2O]の上限は、好ましくは20.0%であり、さらには15.0%、10.0%または5.0%であってもよい。該合計含有量の下限は、好ましくは0.1%であり、さらには0.5%、1.0%、1.5%または2.0%であってもよい。合計含有量[Li2O+Na2O+K2O]を上記範囲とすることで、熱的安定性を改善でき、熔融温度が低下する。一方、該合計含有量が大きすぎると、化学的耐久性、耐候性が低下するおそれがある。また、屈折率が低下するおそれがある。
【0064】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、SrOおよびBaOの合計含有量[SrO+BaO]の上限は、好ましくは30.0%であり、さらには28.0%、25.0%、23.0%、20.0%、18.0%または15.0%であってもよい。該合計含有量の下限は、好ましくは0.1%であり、さらには0.5%、1.0%、2.0%、3.0%、4.0%または5.0%であってもよい。これらの成分は、いずれもガラスの熱的安定性を改善する働きを有する。しかし、合計含有量[SrO+BaO]が多くなると、比重が増大する。
【0065】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、ZnO、SrOおよびBaOの合計含有量[ZnO+SrO+BaO]の上限は、好ましくは30.0%であり、さらには28.0%、25.0%、23.0%、20.0%、18.0%または15.0%であってもよい。該合計含有量の下限は、好ましくは0.1%であり、さらには0.5%、1.0%、2.0%、3.0%、4.0%または5.0%であってもよい。これらの成分は、いずれもガラスの熔融温度を低下し、熱的安定性を改善する働きを有する。しかし、合計含有量[ZnO+SrO+BaO]が多くなると、比重が増加し、所望の屈折率が得られないことがある。
【0066】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、MgO、CaO、ZnO、SrOおよびBaOの合計含有量[MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO]の上限は、好ましくは30.0%であり、さらには28.0%、25.0%、23.0%、20.0%、18.0%または15.0%であってもよい。該合計含有量の下限は、好ましくは0.1%であり、さらには0.5%、1.0%、2.0%、3.0%、4.0%または5.0%であってもよい。これらの成分は、いずれもガラスの熔融温度を低下し、熱的安定性を改善する働きを有する。しかし、合計含有量[MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO]が多くなると、所望の屈折率が得られないことがある。
【0067】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、ZnO、SrOおよびBaOの合計含有量[Li2O+Na2O+K2O+MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO]の上限は、好ましくは30.0%であり、さらには28.0%、25.0%、23.0%、20.0%、18.0%または15.0%であってもよい。また該合計含有量の下限は、好ましくは0.5%であり、さらには1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%または4.5%であってもよい。これらの成分は、いずれもガラスの熔融温度を低下し、熱的安定性を改善する働きを有する。しかし、合計含有量[Li2O+Na2O+K2O+MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO]が多くなると、所望の屈折率が得られないことがある。
【0068】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiO2およびNb2O5の合計含有量[TiO2+Nb2O5]の上限は、好ましくは80.0%であり、さらには78.0%、75.0%、73.0%または70.0%であってもよい。該合計含有量の下限は、好ましくは55.0%であり、さらには56.0%、57.0%、58.0%、59.0%または60.0%であってもよい。合計含有量[TiO2+Nb2O5]が上記範囲にあることにより、高い屈折率が得られ、ガラスの安定性が向上する。
【0069】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiO2、Nb2O5、WO3およびBi2O3の合計含有量[TiO2+Nb2O5+WO3+Bi2O3]の上限は、好ましくは80.0%であり、さらには78.0%、75.0%、73.0%または70.0%であってもよい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは40.0%であり、さらには43.0%、45.0%、48.0%、50.0%、53.0%または55.0%であってもよい。合計含有量[TiO2+Nb2O5+WO3+Bi2O3]を上記範囲とすることで、高い屈折率、高分散性が得られ、ガラスの安定性が向上する。
【0070】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、P2O5の含有量と、P2O5、TiO2およびNb2O5の合計含有量[P2O5+TiO2+Nb2O5]との質量比[P2O5/(P2O5+TiO2+Nb2O5)]の上限は、好ましくは0.40であり、さらには0.38、0.35、0.33または0.30であってもよい。該質量比の下限は、好ましくは0.15であり、さらには0.18、0.20または0.23であってもよい。該質量比が上記範囲にあることにより、所望の屈折率を得ることが容易になり、ガラスの安定性が向上する。
【0071】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、K2Oの含有量と、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量[Li2O+Na2O+K2O]との質量比[K2O/(Li2O+Na2O+K2O)]の下限は、好ましくは0.50であり、さらには0.53、0.55、0.58または0.60であってもよい。該質量比が上記範囲にあるとガラスの安定性が向上する。
【0072】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、MgO、CaO、ZnO、SrOおよびBaOの合計含有量[MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO]と、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量[Li2O+Na2O+K2O]との質量比[(MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO)/(Li2O+Na2O+K2O)]の上限は、好ましくは10.0であり、さらには9.5、9.0、8.5、8.0、7.5または7.0であってもよい。また該質量比の下限は、好ましくは0.30であり、さらには0.35、0.40、0.45または0.50であってもよい。該質量比が上記範囲にあるとガラスの安定性が向上する。
【0073】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、BaOの含有量と、MgO、CaO、ZnO、SrOおよびBaOの合計含有量[MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO]との質量比[BaO/(MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO)]の下限は、好ましくは0を超え、さらには0.1、0.2、0.3、0.4または0.5であってもよい。該質量比が上記範囲にあるとガラスの安定性が向上する。
【0074】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiO2の含有量とTiO2およびNb2O5の合計含有量[TiO2+Nb2O5]との質量比[TiO2/(TiO2+Nb2O5)]の上限は、好ましくは0.60であり、さらには0.58、0.55、0.53または0.50であってもよい。また、該質量比の下限は、好ましくは0.10であり、さらには0.13、0.15、0.18または0.20であってもよい。TiO2およびNb2O5は、いずれも、高屈折率化、高分散化に寄与するガラス成分であるが、比重が大きくなる原因ともなる。TiO2は、Nb2O5と比較して高屈折率化に寄与する一方、ガラスの比重を大きくしにくい。したがって、本発明の実施形態において、質量比[TiO2/(TiO2+Nb2O5)]を上記範囲とすることにより、高屈折率で、安定性が高く、比重の小さい光学ガラスが得られる。
【0075】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiO2の含有量と、TiO2、Nb2O5、WO3およびBi2O3の合計含有量との質量比[TiO2/(TiO2+Nb2O5+WO3+Bi2O3)]の上限は、好ましくは0.60であり、さらには0.58、0.55、0.53または0.50であってもよい。該質量比の下限は、好ましくは0.10であり、さらには0.13、0.15、0.18または0.20であってもよい。TiO2、Nb2O5、WO3およびBi2O3は、いずれも、高屈折率化、高分散化に寄与するガラス成分であるが、比重が大きくなる原因ともなる。TiO2は、Nb2O5、WO3およびBi2O3と比較して高屈折率化に寄与する一方、ガラスの比重を大きくしにくい。したがって、本発明の実施形態において、質量比[TiO2/(TiO2+Nb2O5+WO3+Bi2O3)]を上記範囲とすることにより、高屈折率で、安定性が高く、比重の小さい光学ガラスが得られる。
【0076】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiO2の含有量とNb2O5の含有量との質量比[TiO2/Nb2O5]の上限は、好ましくは2.0であり、さらには1.8、1.5、1.3、1.0または0.8であってもよい。また、該質量比の下限は、好ましくは0.10であり、さらには0.13、0.15、0.18または0.20であってもよい。TiO2およびNb2O5は、いずれも、高屈折率化、高分散化に寄与するガラス成分であるが、比重が大きくなる原因ともなる。TiO2は、Nb2O5と比較して高屈折率化に寄与する一方、ガラスの比重を大きくしにくい。したがって、本発明の実施形態において、質量比[TiO2/Nb2O5]を上記範囲とすることにより、高屈折率で、安定性が高く、比重の小さい光学ガラスが得られる。
【0077】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiO2の含有量と、Nb2O5、WO3およびBi2O3の合計含有量との質量比[TiO2/(Nb2O5+WO3+Bi2O3)]の上限は、好ましくは2.0であり、さらには1.8、1.5、1.3、1.0または0.8であってもよい。該質量比の下限は、好ましくは0.10であり、さらには0.13、0.15、0.18または0.20であってもよい。TiO2、Nb2O5、WO3およびBi2O3は、いずれも、高屈折率化、高分散化に寄与するガラス成分であるが、比重が大きくなる原因ともなる。TiO2は、Nb2O5、WO3およびBi2O3と比較して高屈折率化に寄与する一方、ガラスの比重を大きくしにくい。したがって、本発明の実施形態において、質量比[TiO2/(Nb2O5+WO3+Bi2O3)]を上記範囲とすることにより、高屈折率で、安定性が高く、比重の小さい光学ガラスが得られる。
【0078】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiO2およびNb2O5の合計含有量[TiO2+Nb2O5]と、SiO2、B2O3、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、ZnO、SrOおよびBaOの合計含有量[SiO2+B2O3+Li2O+Na2O+K2O+MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO]との質量比[(TiO2+Nb2O5)/(SiO2+B2O3+Li2O+Na2O+K2O+MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO)]の上限は、好ましくは20.0であり、さらには18.0、15.0、13.0または10.0であってもよい。該質量比の下限は、好ましくは0.5であり、さらには1.0、1.5、2.0、2.5、2.65または3.0であってもよい。質量比[(TiO2+Nb2O5)/(SiO2+B2O3+Li2O+Na2O+K2O+MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO)]を上記範囲とすることにより、高屈折率で、安定性が高く、比重の小さい光学ガラスが得られる。
【0079】
<その他の成分組成>
Pb、As、Cd、Tl、Be、Se、Teは、いずれも毒性を有する。そのため、本実施形態に係る光学ガラスがこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0080】
U、Th、Raはいずれも放射性元素である。そのため、本実施形態に係る光学ガラスがこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0081】
V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tmは、ガラスの着色を増大させ、蛍光の発生源となり得る。そのため、本実施形態に係る光学ガラスがこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0082】
Sb(Sb2O3)、Ce(CeO2)、Sn(SnO2)は清澄剤として機能する任意に添加可能な元素である。このうち、Sb(Sb2O3)は、清澄効果の大きな清澄剤である。Ce(CeO2)は、Sb(Sb2O3)と比較し、清澄効果が小さい。Ce(CeO2)は、多量に添加するとガラスの着色が強まる傾向がある。
【0083】
なお、本明細書では、Sb(Sb2O3)、Ce(CeO2)およびSn(SnO2)の含有量は、外割の表示とし、酸化物基準で表示する全てのガラス成分の合計含有量に含まない。すなわち、本明細書では、Sb(Sb2O3)、Ce(CeO2)およびSn(SnO2)を除く全てのガラス成分の合計含有量を100質量%とする。
【0084】
Sb2O3の含有量は、外割り表示とする。すなわち、Sb2O3、CeO2およびSnO2以外の全ガラス成分の合計含有量を100質量%としたときのSb2O3の含有量は、好ましくは1.0%以下であり、さらには0.5%以下、0.1%以下、0.08%以下、0.06%以下、0.04%以下、0.02%以下の順に好ましい。Sb2O3の含有量は0%であってもよい。
【0085】
CeO2の含有量も、外割り表示とする。すなわち、Sb2O3、CeO2およびSnO2以外の全ガラス成分の合計含有量を100質量%としたときのCeO2の含有量は、好ましくは2.0%以下であり、さらには1.0%以下、0.5%以下、0.1%以下の順により好ましい。CeO2の含有量は0%であってもよい。CeO2の含有量を上記範囲とすることによりガラスの清澄性を改善できる。
【0086】
SnO2の含有量も、外割り表示とする。すなわち、Sb2O3、CeO2およびSnO2以外の全ガラス成分の合計含有量を100質量%としたときのSnO2の含有量は、好ましくは2.0%以下であり、さらには1.0%以下、0.5%以下、0.1%以下の順により好ましい。SnO2の含有量は0%であってもよい。SnO2の含有量を上記範囲とすることによりガラスの清澄性を改善できる。
【0087】
<ガラスの特性>
本実施形態に係る光学ガラスは上記の組成を満足し、高屈折率であるにもかかわらず、低比重であるという特性を有し、以下の特性を有することが好ましい。
【0088】
(比重)
本実施形態に係る光学ガラスは、高屈折率ガラスでありながら、比重が大きくない。ガラスの比重を低減することができれば、レンズの重量を減少できる。一方、比重が小さすぎると、熱的安定性の低下を招く。
【0089】
したがって、本実施形態に係る光学ガラスにおいて、比重の上限は、好ましくは4.20であり、さらには4.15、4.10、4.05、4.00、3.95、3.90、3.85または3.80であってもよい。
【0090】
(屈折率ndと比重dとの比)
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、屈折率ndと比重dとの比(nd/d)の下限は、好ましくは0.48であり、さらには0.49、0.50、0.51または0.52であってもよい。比(nd/d)の上限は、好ましくは0.60であり、さらには0.59、0.58または0.57であってもよい。屈折率ndと比重dとが上記範囲を満たすことで、屈折率が高く、比較的比重の低減された光学ガラスが得られる。
【0091】
(ガラス転移温度Tg)
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、ガラス転移温度Tgの上限は、ガラスを徐冷する温度や加熱軟化の温度ないしプレス温度を下げるという観点から、好ましくは800℃であり、さらには780℃、750℃、730℃または700℃であってもよい。ガラス転移温度Tgの下限は、特に制限されないが、通常380℃である。なおガラスのネットワーク構造をより強固にして、ガラスの割れを抑える観点、あるいはガラスの熱膨張を小さくし、かつガラスの耐熱性を高める観点からは、ガラス転移温度Tgの下限は、好ましくは390℃であり、さらには400℃、410℃、420℃、430℃または440℃であってもよい。特に屈折率の高いガラスは耐熱性を高めるために、ガラス転移温度Tgの下限は、好ましくは460℃とすることができ、さらには480℃、500℃、510℃、520℃、530℃または535℃であってもよい。ガラス転移温度Tgは、主にLi、Na、Kの含有量やその合計含有量、Znの含有量などを調整することで制御できる。
【0092】
(着色度λ70およびλ5)
本実施形態に係る光学ガラスの光線透過性は、着色度λ70およびλ5により評価できる。
厚さ10.0mm±0.1mmのガラス試料について波長200~700nmの範囲で分光透過率を測定し、外部透過率が70%となる波長をλ70、外部透過率が5%となる波長をλ5とする。
【0093】
本実施形態に係る光学ガラスのλ70の上限は、好ましくは650nmであり、さらには640nm、630nm、620nm、610nmまたは600nmであってもよい。λ5の上限は、好ましくは450nmであり、さらには440nm、430nm、420nm、410nmまたは400nmであってもよい。
【0094】
<光学ガラスの製造>
本発明の実施形態に係る光学ガラスは、上記所定の屈折率および組成となるようにガラス原料を調合し、調合したガラス原料により公知のガラス製造方法に従って作製すればよい。例えば、複数種の化合物を調合し、十分混合してバッチ原料とし、バッチ原料を石英坩堝や白金坩堝中に入れて粗熔解(ラフメルト)する。粗熔解によって得られた熔融物を急冷、粉砕してカレットを作製する。さらにカレットを白金坩堝中に入れて加熱、再熔融(リメルト)して熔融ガラスとし、さらに清澄、均質化した後に熔融ガラスを成形し、徐冷して光学ガラスを得る。熔融ガラスの成形、徐冷には、公知の方法を適用すればよい。
【0095】
なお、ガラス中に所望のガラス成分を所望の含有量となるように導入することができれば、バッチ原料を調合するときに使用する化合物は特に限定されないが、このような化合物として、酸化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、フッ化物等が挙げられる。
【0096】
<光学素子等の製造>
本発明の実施形態に係る光学ガラスを使用して光学素子を作製するには、公知の方法を適用すればよい。例えば、ガラス原料を熔融して熔融ガラスとし、この熔融ガラスを鋳型に流し込んで板状に成形し、本発明に係る光学ガラスからなるガラス素材を作製する。得られたガラス素材を適宜、切断、研削、研磨し、プレス成形に適した大きさ、形状のカットピースを作製する。カットピースを加熱、軟化して、公知の方法でプレス成形(リヒートプレス)し、光学素子の形状に近似する光学素子ブランクを作製する。光学素子ブランクをアニールし、公知の方法で研削、研磨して光学素子を作製する。
【0097】
作製した光学素子の光学機能面には使用目的に応じて、反射防止膜、全反射膜などをコーティングしてもよい。
【0098】
本発明の一態様によれば、上記光学ガラスからなる光学素子を提供することができる。光学素子の種類としては、平面レンズ、球面レンズ、非球面レンズ等のレンズ、プリズム、回折格子、導光板等を例示することができる。レンズの形状としては、両凸レンズ、平凸レンズ、両凹レンズ、平凹レンズ、凸メニスカスレンズ、凹メニスカスレンズ等の諸形状を例示することができる。導光板の用途としては、拡張現実(AR)表示タイプの眼鏡型装置や複合現実(MR)表示タイプの眼鏡型装置などの表示装置などを例示することができる。このような導光板は眼鏡型装置のフレームに取り付けられる板状ガラスであり、上記光学ガラスからなるものである。導光板の表面には必要に応じて導光板の内部を、全反射を繰り得して伝搬する光の進行方向を変えるための回折格子が形成されていてもよい。回折格子が公知の方法で形成することができる。上記導光板を有する眼鏡型装置を装着すると、導光板の内部を伝搬した光が瞳孔に入射することにより、拡張現実(AR)表示や複合現実(MR)表示の機能を発現することなる。このような眼鏡型装置は例えば、特表2017-534352などに開示されている。なお、導光板は公知の方法により作製することができる。光学素子は、上記光学ガラスからなるガラス成形体を加工する工程を含む方法により製造することができる。加工としては、切断、切削、粗研削、精研削、研磨等を例示することができる。こうした加工を行う際、上記ガラスを使用することにより、破損を軽減することができ、高品質の光学素子を安定して供給することができる。
【0099】
<画像表示装置>
以下に、本発明の一態様である導光板およびそれを用いた画像表示装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0100】
図1は、本発明の一態様である導光板10を用いた、ヘッドマウントディスプレイ1(以下、「HMD1」と略記する。)の構成を示す図であり、
図1(a)は、HMD1の正面側斜視図であり、
図1(b)は、HMD1の背面側斜視図である。
図1(a)および
図1(b)に示すように、使用者の頭部に装着される眼鏡型フレーム2の正面部には、眼鏡レンズ3が取り付けられる。眼鏡型フレーム2の取付部2aには、画像を照明するためのバックライト4が取り付けられる。眼鏡型フレーム2のツル部分には、画像を映し出すための信号処理機器5、及び音声を再生するスピーカー6が設けられている。信号処理機器5の回路から引き出された配線を構成するFPC(Flexible Printed Circuits)7が、眼鏡型フレーム2に沿って配線されている。表示素子ユニット(例えば液晶表示素子)20は、FPC7によって使用者の両眼中央位置まで配線され、かつバックライト4の光軸線上に表示素子ユニット20の略中心部が配置するように保持される。表示素子ユニット20は、導光板10の略中央部に位置するように、導光板10に対して相対的に固定される。また、使用者の眼前に位置する箇所にはHOE(Holographic Optical Element)32R、32L(第1光学素子)が、それぞれ接着等により導光板10の第1面10a上に密着固定されている。導光板10を挟んで表示素子ユニット20と対向する位置には、HOE52R、52Lが導光板10の第2面10b上に積層されている。
【0101】
図2は、本発明の一態様であるHMD1の構成を模式的に示す側面図である。なお、
図2においては、図面を明瞭化するため、画像表示装置の主要部のみを示しており、眼鏡型フレーム2等は図示省略している。
図2に示すように、HMD1は、画像表示素子24と導光板10の中心を結ぶ中心線Xを挟み左右対称の構造を有している。また、画像表示素子24から導光板10に入射された各波長の光は、後述するように二分割されて使用者の右眼、左眼のそれぞれに導光される。各眼に導光される各波長の光の光路も中心線Xを挟み略左右対称である。
【0102】
図2に示すように、バックライト4は、レーザ光源21、拡散光学系22およびマイクロレンズアレイ23を有する。表示素子ユニット20は、画像表示素子24を有する画像生成ユニットであり、例えばフィールドシーケンシャル(Field Sequential)方式で駆動する。レーザ光源21は、R(波長436nm)、G(波長546nm)、B(波長633nm)の各波長に対応したレーザ光源を有し、各波長の光を高速で順次照射する。各波長の光は、拡散光学系22、マイクロレンズアレイ23に入射され、光量ムラのない均一な高指向性の平行光束に変換されて、画像表示素子24の表示パネル面に垂直に入射される。
【0103】
画像表示素子24は、例えばフィールドシーケンシャル方式で駆動する透過型液晶(LCDT-LCOS)パネルである。画像表示素子24は、各波長の光に、信号処理機器5の画像エンジン(不図示)が生成する画像信号に応じた変調をかける。画像表示素子24の有効領域の画素で変調された各波長の光は、所定の光束断面(該有効領域と略同じ形状)をもって導光板10に入射される。なお、画像表示素子24は、例えばDMD(Digital Mirror Device)や反射型液晶(LCOS)パネル、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、有機EL(Electro-Luminescence)、無機EL等の他の形態の表示素子に置換することも可能である。
【0104】
なお、表示素子ユニット20は、フィールドシーケンシャル方式の表示素子に限らず、同時式の表示素子(射出面前面に所定の配列のRGBカラーフィルタを有する表示素子)の画像生成ユニットとしてもよい。この場合、光源には、例えば白色光源が使用される。
【0105】
図2に示すように、画像表示素子24により変調された各波長の光は、第1面10aから導光板10内部に順次入射される。導光板10の第2面10b上には、HOE52Rと52L(第2光学素子)が積層されている。HOE52Rおよび52Lは、例えば矩形状を有する反射型の体積位相型HOEであって、R、G、Bの各波長の光に対応する干渉縞が各々に記録されたフォトポリマーを三枚積層した構成を有する。すなわち、HOE52Rおよび52Lは、R、G、Bの各波長の光を回折しそれ以外の波長の光を透過する波長選択機能を有するように構成されている。
【0106】
なお、HOE32Rおよび32Lも反射型の体積位相型HOEであり、HOE52Rおよび52Lと同一の層構造を有する。HOE32Rおよび32Lと52Rおよび52Lは、例えば干渉縞パターンのピッチが略同一であってもよい。
【0107】
HOE52Rと52Lは、互いの中心が一致し、かつ干渉縞パターンが180(deg)反転された状態で積層されている。そして、積層された状態でその中心が中心線Xと一致するように導光板10の第2面10b上に接着等により密着固定されている。HOE52R、52Lには、画像表示素子24により変調された各波長の光が導光板10を介して順次入射される。
【0108】
HOE52R、52Lはそれぞれ、順次入射される各波長の光を右眼、左眼に導くため所定の角度を付与して回折する。HOE52R、52Lにより回折された各波長の光はそれぞれ、導光板10と空気との界面で全反射を繰り返して導光板10内部を伝搬しHOE32R、32Lに入射される。ここで、HOE52R、52Lは、各波長の光に同一の回折角を付与する。そのため、導光板10に対する入射位置が略同一の(あるいは別の表現によれば、画像表示素子24の有効領域内の略同一座標から射出された)全ての波長の光は、導光板10内部の略同一の光路を伝搬して、HOE32R、32L上の略同位置に入射する。別の観点によれば、HOE52R、52Lは、画像表示素子24の有効領域に表示された画像の該有効領域内における画素位置関係がHOE32R、32L上で忠実に再現されるようにRGBの各波長の光を回折する。
【0109】
このように本発明の一態様においては、HOE52R、52Lは、それぞれ、画像表示素子24の有効領域内の略同一座標から射出された全ての波長の光をHOE32R、32L上の略同位置に入射させるように回折する。あるいは、HOE52R、52Lは、画像表示素子24の有効領域内で相対的にずらされた本来同一画素をなす全ての波長の光をHOE32R、32L上の略同位置に入射させるように回折するように構成されてもよい。
【0110】
HOE32R、32L上に入射された各波長の光は、HOE32R、32Lにより回折されて導光板10の第2面10bから外部に略垂直に順次射出される。このように略平行光として射出された各波長の光はそれぞれ、画像表示素子24により生成された画像の虚像Iとして使用者の右眼網膜、左眼網膜に結像する。また、使用者が拡大画像の虚像Iを観察できるように、HOE32R、32Lにコンデンサ作用を付与してもよい。すなわち、HOE32R、32Lの周辺領域に入射された光ほど瞳の中心に寄るように角度をもって射出され使用者の網膜に結像するようにしてもよい。あるいは、使用者に拡大画像の虚像Iを観察させるために、HOE52R、52Lは、HOE32R、32L上での画素位置関係が画像表示素子24の有効領域に表示された画像の該有効領域内における画素位置関係に対して拡大された相似形状をなすようにRGBの各波長の光を回折するようにしてもよい。
【0111】
導光板10内を進む光の空気換算光路長が、屈折率が高いほど短くなるため、屈折率が高い本実施形態に係る光学ガラスを使用することにより、画像表示素子24の幅に対する見かけの視野角を大きくすることができる。さらに、屈折率が高いものの比重が低く抑えられているため、軽量でありながら上記効果が得られる導光板を提供することができる。
【0112】
なお、本発明の一態様である導光板は、シースルーである透過型のヘッドマウントディスプレイや非透過型のヘッドマウントディスプレイなどに使用することができる。
【0113】
これらヘッドマウントディスプレイは、導光板が本実施形態の高屈折率低比重の光学ガラスからなるので、広視野角による没入感が優れており、情報端末と組み合わせて使用したり、AR(Augmented Reality:拡張現実)等の提供用として使用したり、映画鑑賞やゲームやVR(Virtual Reality:仮想現実)等の提供用として使用する画像表示装置として好適である。
【0114】
以上、ヘッドマウントディスプレイを例にとり説明したが、その他の画像表示装置に上記導光板を取り付けてもよい。
【実施例0115】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0116】
(実施例1)
表1に示すガラス組成を有するガラスサンプルを以下の手順で作製し、各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0117】
[光学ガラスの作製]
ガラスの構成成分に対応する化合物原料、すなわち、リン酸塩、炭酸塩、酸化物等の原料を秤量し、十分混合して調合原料とした。該調合原料を白金製坩堝に投入し、大気雰囲気下で1000~1350℃に加熱して熔融し、攪拌により均質化、清澄して熔融ガラスを得た。該熔融ガラスを成形型に鋳込んで成形し、徐冷して、ブロック形状のガラスサンプルを得た。
【0118】
[ガラス成分組成の確認]
得られたガラスサンプルについて、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)で各ガラス成分の含有量を測定し、表1に示す各組成のとおりであることを確認した。なお、全てのガラスサンプルにおいて、F(フッ素)は含まれていないことを確認した。
【0119】
[光学特性の測定]
得られたガラスサンプルについて、以下に示す方法にて、比重、屈折率nd、アッベ数νd、ガラス転移温度Tg、着色度λ70、λ5を測定した。
【0120】
〔1〕比重
比重は、アルキメデス法により測定した。
【0121】
〔2〕屈折率ndおよびアッベ数νd
JIS B 7071-1の屈折率測定法により、屈折率nd、ng、nF、nCを測定し、下式に基づきアッベ数νdを算出した。
νd=(nd-1)/(nF-nC)
【0122】
〔3〕ガラス転移温度Tg
NETZSCH JAPAN社製の示差走査熱量分析装置(DSC3300SA)を使用し、ガラス転移温度Tgを測定した。サンプルを粉砕して約0.02ccになる重さを量り取り、φ5mmのPtパンに投入後、昇温速度10℃/min、最高温度1000℃の条件で測定した。標準試料にはアルミナ(Al2O3)を使用した。
【0123】
〔4〕λ70、λ5
上記サンプルを、厚さ10mmで、互いに平行かつ光学研磨された平面を有するように加工し、波長280nmから700nmまでの波長域における分光透過率を測定した。光学研磨された一方の平面に垂直に入射する光線の強度を強度Aとし、他方の平面から出射する光線の強度を強度Bとして、分光透過率B/Aを算出した。分光透過率が70%になる波長をλ70とし、分光透過率が5%になる波長をλ5とした。なお、分光透過率には試料表面における光線の反射損失も含まれる。
【0124】
結果を下表に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表2-1】
【表2-2】
【表3-1】
【表3-2】
【表4-1】
【表4-2】
【0125】
(実施例2)
実施例1において作製した各光学ガラスを用いて、公知の方法により、レンズブランクを作製し、レンズブランクを研磨等の公知方法により加工して各種レンズを作製した。
作製した光学レンズは、平面レンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズ、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ等の各種レンズである。
各種レンズは、他種の光学ガラスからなるレンズと組合せることにより、二次の色収差を良好に補正することができた。
【0126】
また、ガラスが低比重であるため、各レンズとも同等の光学特性、大きさを有するレンズよりも重量が小さく、ゴーグル型または眼鏡型のAR表示装置用あるいはMR表示装置用として好適である。同様にして、実施例1で作製した各種光学ガラスを用いてプリズムを作製した。
【0127】
(実施例3)
実施例1において作製した各光学ガラスを、長さ50mm×幅20mm×厚さ1.0mmの矩形薄板状に加工して、導光板を得た。この導光板を、
図1に示すヘッドマウントディスプレイ1に組み込んだ。
【0128】
このようにして得られたヘッドマウントディスプレイについて、アイポイントの位置で画像を評価したところ、広い視野角で、高輝度かつ高コントラストな画像を観察することができた。
【0129】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0130】
例えば、上記に例示されたガラス組成に対し、明細書に記載の組成調整を行うことにより、本発明の一態様にかかる光学ガラスを作製することができる。
また、明細書に例示または好ましい範囲として記載した事項の2つ以上を任意に組み合わせることは、もちろん可能である。