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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130191
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】視野測定機
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20230912BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20230912BHJP
   G03B 37/00 20210101ALI20230912BHJP
   G09B 23/30 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
G01M11/00 T
G03B15/00 U
G03B15/00 W
G03B37/00 A
G09B23/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034722
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】391009372
【氏名又は名称】ミドリ安全株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉井 克哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 亨
【テーマコード(参考)】
2C032
2G086
2H059
【Fターム(参考)】
2C032CA02
2G086EE12
2H059BA15
2H059CA00
(57)【要約】
【課題】 頭部や目、呼吸用の保護具などを装着した際の視野範囲を容易に且つ正確に測定できる視野測定機を提供する。
【解決手段】 人頭模型4と、前記人頭模型の正面に配置されて当該人頭模型に相対する面が半球状の視野範囲測定面31となる測定用ドーム3とを具備し、前記視野範囲測定面には、半球の中心の測定位置に前記人頭模型を配置した際に正面を0°として上下左右方向に経緯線が配置され、少なくとも左右方向は120°までの経緯線を具備し、前記人頭模型の目の位置に魚眼レンズを備えたCCDカメラ41を配置し、前記視野範囲測定面の前記経緯線を撮影できるようにした、視野測定機1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人頭模型と、前記人頭模型の正面に配置されて当該人頭模型に相対する面が半球状の視野範囲測定面となる測定用ドームとを具備し、前記視野範囲測定面には、半球の中心の測定位置に前記人頭模型を配置した際に正面を0°として上下左右方向に経緯線が配置され、少なくとも左右方向は120°までの経緯線を具備し、前記人頭模型の目の位置に魚眼レンズを備えたCCDカメラを配置し、前記視野範囲測定面の前記経緯線を撮影できるようにした、視野測定機。
【請求項2】
前記人頭模型の側方には前記視野範囲測定面の前記経緯線を照らす照明装置が設けられている、請求項1記載の視野測定機。
【請求項3】
前記CCDカメラで撮影した画像をパソコン上で処理し、視野範囲を測定する視野測定装置を具備する、請求項1又は2記載の視野測定機。
【請求項4】
前記視野測定装置は、コンピュータ上で動作するソフトウェアである、請求項3記載の視野測定機。
【請求項5】
前記人頭模型は、他の人頭模型と交換可能に設けられている、請求項1~4の何れか一項記載の視野測定機。
【請求項6】
前記人頭模型は、前記測定位置と、準備位置とを移動可能に設けられている、請求項1~5の何れか一項記載の視野測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視野測定機に関し、頭部や目、呼吸用の保護具などを着用した際の視野範囲を測定する視野測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
作業時に発生する飛来物や薬液飛沫、粉塵が舞う環境などから目や呼吸を防護するために保護めがね・ゴーグルやマスクを装着する。環境が劣悪になればなるほど、保護めがねからゴーグル、マスクであれば半面形から全面形と目を覆う部分が多くなり、総じて視界(視野)が狭くなってしまう傾向がある。ゴーグルやマスクの機能を向上させる一方、できるだけ視野を確保したいという要望がある。
【0003】
このようなゴーグルやマスクを装着した際の視野範囲を客観的に測定するのが好ましい。
【0004】
従来の視野測定装置としては、視野全般に亘って分布する光点が灯る装置を用い、光点を対数関数的段差をとる強さで照明させて、診断される人間が見えたか、見えないかの判断をして視野を測定する装置が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、この視野測定装置では、被験者が視野を判断するため、手間がかかりすぎ、また、被験者によって測定結果がばらつくという問題がある。
【0006】
一方、JIS T8152-1981に準じ、成人男子の頭部と大きさが同程度の標準人頭の眼部に豆電球を装着し、電球から発生する光を半円球状の投影面に映し出し、光の当たった部分を視野とし、その視野角度を計測する方法が提案されている(非特許文献1参照)。
【0007】
これによると、豆電球からの光が当たった範囲を視野範囲とするが、豆電球によって照らされた範囲が人の視野と同じになるとは言い難い。また、豆電球によって照らされた範囲の境目の判断がし難く、測定者の誤差が大きくなる問題がある。一般的には、人の視野は左右100°程度あると言われているが、この測定方法では左右90°までしか測定できない。
【0008】
また、呼吸用保護具のISO(国際規格)の第11部には視野測定の項目があるが、測定原理はJIS T8152-1981とほぼ同じで人頭の眼部に豆電球をつけ、半円球状の投影面に映し出し、光の当たった部分を計測する(非特許文献2参照)。
【0009】
上述した技術と異なる点は半円球状の投影面が左右120°まであること、視野のマッピングは測定する視野角度10点が決まっているのでその値を「視野スコア(Visual Field Score:VFS)」として計算することである。
【0010】
この場合も、人頭の目が豆電球となっており、豆電球によって照らされた範囲が人の視野と同じになるとは言い難いという問題がある。豆電球によって照らされた範囲の境目の判断がし難く、測定者の誤差が大きくなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平2-4307号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】酒匂幸夫ら, “個人装備品における視野試験の実施結果について”, 消防科学研究所報 32号, 1995
【非特許文献2】ISO 16900-11 Respiratory protective devices - Methods of test and test equipment -Part 11: Determination of field of vision, 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
非特許文献1や非特許文献2では、人頭の目が豆電球となっており、豆電球によって照らされた範囲が人の視野と同じになるとは言い難いという問題がある。また、豆電球によって照らされた範囲の境目の判断がし難く、測定者の誤差が大きくなるという問題がある。因みに、人の視野は左右100°程度あると言われているが、非特許文献1の測定方法では左右90°までしか測定できないという問題もある。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑み、頭部や目、呼吸用の保護具などを装着した際の視野範囲を容易に且つ正確に測定できる視野測定機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、人頭模型と、前記人頭模型の正面に配置されて当該人頭模型に相対する面が半球状の視野範囲測定面となる測定用ドームとを具備し、前記視野範囲測定面には、半球の中心に前記人頭模型を配置した際に正面を0°として上下左右方向に経緯線が配置され、少なくとも左右方向は120°までの経緯線を具備し、前記人頭模型の目の位置に魚眼レンズを備えたCCDカメラを配置し、前記視野範囲測定面の前記経緯線を撮影できるようにした、視野測定機にある。
【0016】
本発明の第2の態様は、前記人頭模型の側方には前記視野範囲測定面の前記経緯線を照らす照明装置が設けられている、第1の態様の視野測定機にある。
【0017】
本発明の第3の態様は、前記CCDカメラで撮影した画像をパソコン上で処理し、視野範囲を測定する視野測定装置を具備する、第1又は2の態様の視野測定機にある。
【0018】
本発明の第4の態様は、前記視野測定装置は、コンピュータ上で動作するソフトウェアである、第3の態様の視野測定機にある。
【0019】
本発明の第5の態様は、前記人頭模型は、他の人頭模型と交換可能に設けられている、第1~4の態様の視野測定機にある。
【0020】
本発明の第6の態様は、前記人頭模型は、前記測定位置と、準備位置とを移動可能に設けられている、第1~5の態様の視野測定機にある。
【発明の効果】
【0021】
本発明の視野測定機によれば、実際の視野に近似した視野を簡便且つ正確に想定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る視野測定機の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る視野測定機の側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る視野測定機の上面図である。
図4】本発明の実施形態に係る視野測定機の正面図である。
図5】本発明の実施形態に係る視野測定機の測定フローを示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る視野測定機の測定結果の一例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0024】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る視野測定機の概略構成を示す斜視図、図2は、側面状態を一部透視した側面図、図3はその上面図、図4は、その正面図である。
【0025】
これらの図面に示すように、視野測定機1は、基台2上に配置された測定用ドーム3と、人頭模型4とを具備する。人頭模型4は、架台5上に配置され、架台5は、レール6上に配置され、図2において左右方向に移動可能となっている。各図において、人頭模型4は、測定用ドーム3の球面の中心に位置する、測定位置であるA位置と、球面から離間した、準備位置であるB位置とに配置された状態を図示しているが、実際には何れか一方に配置されるものであり、A位置とB位置とを移動可能である。また、B位置では、人頭模型4にゴーグルなどの視野測定対象の装着品を着脱できるようになっており、人頭模型4は、作業者と正対できるように、90°回転可能となっている。
【0026】
測定用ドーム3の内面、人頭模型4と相対向する面は、左右側が半球より延設された球面となっており、球面内面は、経緯度線が配置された視野範囲測定面31となっている。人頭模型4がA位置に配置された場合、目の位置が球面の半球断面の中心に位置するようになっており、経緯線は、正面を0°として上下左右に描画されており、上下側は90°まで、左右側は延設されて120°までとなっている。
【0027】
視野範囲測定面31の経緯線は精度が求められるため、測定用ドーム3は、金属や硬質樹脂など硬質の材料で形成するのが好ましく、より好ましくは温度膨張率の小さな材料とするのがよく、本実施形態では、合成木材製とした。
【0028】
人頭模型4は、標準的な男性の頭部を模して作成されたものと、標準的な女性の頭部を模して作成されたものとを、ネジ1本で交換できるようになっており、それぞれ、人間が装着するゴーグルやマスク、フェイスシールドなどが装着できるようになっている。人頭模型4の目も人間の目を模して作製されており、左右の眼球の代わりに、魚眼レンズを具備するCCDカメラ41が設けられている。
【0029】
CCDカメラ41は、図示しないコンピュータであるパソコンに接続されており、撮影した画像をパソコンに送信できるようになっている。なお、CCDカメラ41は、パソコンに直接接続されている必要はなく、撮影後にパソコンに接続してもよく、又は、メモリカードなどを介して撮影した画像をパソコンに取り込むようにしてもよい。
【0030】
パソコンには、CCDカメラ41で撮影した画像を処理して視野範囲を測定するソフトウェアがインストールされており、画像を処理して視野範囲を測定することができ、これが本実施形態の視野測定装置となる。
【0031】
なお、視野測定装置は、パソコンに導入可能なソフトウェアである必要はなく、人頭模型4のCCDカメラ41に接続される専用機器であってもよい。この場合の専用機器は、CCDカメラ41が撮影した画像を映し出す画面と、画像を処理して視野範囲を測定するソフトウェアが動作する処理装置を具備するものである。
【0032】
人頭模型4の側方には、図示は省略するが、視野範囲測定面31を照らすためのLEDからなる照明装置が設けられている。なお、測定用ドーム3の内面側だけ、透明樹脂などの透明部材で形成して当該透明部材に経緯線を描画し、透明部材の裏面側に照明装置を配置するようにしてもよい。
【0033】
次に、このような視野測定機1を用いての視野測定手順を説明する。
まず、視野の測定前にキャリブレーションを行うため、人頭模型4を装着品を装着しない状態でA位置に移動して測定用ドーム3内に配置し、視野範囲測定面31に描かれた経緯線と左右のCCDカメラ41の中心点、水平線、垂直線を合わせる。
【0034】
次いで、人頭模型4をB位置に移動して人頭模型4にゴーグルなどの試験体を装着し、その後、A位置に移動し、撮影する。視野範囲測定面31を測定した画像は、装着した試験体によって狭まった視野の映像となり、この映像がソフトウェア上で確認できる。
【0035】
次に、ソフトウェアの測定ボタンを押すと、ソフトウェアは視野範囲を測定する。
図5には、測定フローを示す。ステップS1で測定が開始されると、ステップS2でCCDカメラ41の生画像を取り込み、ステップS3で画像の二値化により境界を検出し、ステップS4で可視ラインが形成される。
【0036】
図6は、測定結果の一例であり、白く見える視野の周囲のラインが可視ライン45であり、可視ライン45より大きなラインは、試験体を装着しない状態の視野範囲を示す標準視野ライン46である。
【0037】
この測定状態では、画面上で処理状態が確認でき、画面上では緑色の可視ライン45が表示されて動き出し、可視ライン45は、最終的に図5の測定フローに従ってフレームと視野の境界を検出して図6の最終位置に移動する。
【0038】
この可視ライン45が確定すると、ステップS5では、視野角の表示や視野面積の計算が行われ、同時に、ステップS6では、画像の描画と切取も行われる。
【0039】
なお、画面上は、測定中は視野率が常時測定されている。視野率は、試験体を装着していない状態の視野を100%としたときの、試験体を装着した状態で測定した視野の割合である。
【0040】
この状態で測定を終了するかどうかを判断し(ステップS7)、再度測定する場合には(ステップS7;No)、ステップS2に戻り、測定終了ボタンを押すと(ステップS7;Yes)、可視ライン45の位置が止まり、視野率が決定され、測定が終了する(ステップS8)。視野率は可視ライン45の面積と視野100%(標準視野ライン46)の面積を比較することで算出される。また、パソコンの画面上ではマウスで指定した場所の視野角度を確認することができる。
【0041】
以上の視野測定機1では、魚眼レンズを具備するCCDカメラ41で測定した画像を二値化処理することにより視野範囲を測定できるので、客観的に且つ正確に視野範囲を測定できる。また、従来のように豆電球ではなく魚眼レンズを具備するCCDカメラ41で撮影した画像を用いて視野範囲を測定するので、左右それぞれで100°を超える視野範囲を測定でき、実際により近い視野範囲を測定できるものである。
【0042】
なお、CCDカメラ41の魚眼レンズは少なくとも120°までの範囲が撮影可能なものであれば、広角レンズであっても問題ない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
ゴーグルやマスク、フェイスシールドの他、水中めがね、水中マスク、フード、空気呼吸器、ヘルメットなど種々の装着品についての視野範囲を測定できるものである。
【符号の説明】
【0044】
1…視野測定機、2…基台、3…測定用ドーム、4…人頭模型、5…架台、6…レール、31…視野範囲測定面、41…CCDカメラ、45…可視ライン、46…標準視野ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6