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特開2023-130193メタサーフェスを備えた反射板の設定制御を行う制御装置、制御方法、及びプログラム
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  • 特開-メタサーフェスを備えた反射板の設定制御を行う制御装置、制御方法、及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130193
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】メタサーフェスを備えた反射板の設定制御を行う制御装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/14 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034724
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大戸 琢也
(72)【発明者】
【氏名】松野 宏己
(72)【発明者】
【氏名】天野 良晃
(72)【発明者】
【氏名】沖田 光隆
(72)【発明者】
【氏名】岡 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大一
(72)【発明者】
【氏名】松永 和己
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA01
5J020BA16
5J020DA03
(57)【要約】
【課題】簡素な処理によって、メタサーフェス反射板の反射効率を向上させること。
【解決手段】複数の反射素子を含んで構成されるメタサーフェスを用いて電波を反射させる反射装置の制御を行う制御装置は、反射装置によって電波を反射させる所定の方向に基づいて、複数の反射素子のそれぞれについての第1の反射位相を決定することと、複数の反射素子についての第1の反射位相のそれぞれに対して一律の第1の位相シフトを加えた場合の反射装置の反射の特性値を、複数の第1の位相シフトの量に対して特定して、その特性値に基づいて使用する第2の位相シフトの量を特定することと、第2の位相シフトの量を複数の反射素子についての第1の反射位相のそれぞれに対して一律に加えた第2の反射位相を、複数の反射素子のそれぞれの反射位相として設定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の反射素子を含んで構成されるメタサーフェスを用いて電波を反射させる反射装置の制御を行う制御装置であって、
前記反射装置によって電波を反射させる所定の方向に基づいて、前記複数の反射素子のそれぞれについての第1の反射位相を決定する決定手段と、
前記複数の反射素子についての前記第1の反射位相のそれぞれに対して一律の第1の位相シフトを加えた場合の前記反射装置の反射の特性値を、複数の前記第1の位相シフトの量に対して特定して、当該特性値に基づいて使用する第2の位相シフトの量を特定する特定手段と、
前記第2の位相シフトの量を前記複数の反射素子についての前記第1の反射位相のそれぞれに対して一律に加えた第2の反射位相を、当該複数の反射素子のそれぞれの反射位相として設定する設定手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記特性値は、前記所定の方向における損失の大きさを示し、
前記特定手段は、複数の前記第1の位相シフトの量のうち、前記損失が所定値より小さい位相シフトの量を、前記第2の位相シフトの量として特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記特性値は、前記所定の方向における損失の大きさを示し、
前記特定手段は、複数の前記第1の位相シフトの量のうち、前記損失が最小の位相シフトの量を、前記第2の位相シフトの量として特定する、ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記特定手段は、前記複数の反射素子のそれぞれについての反射位相と損失との関係を示す情報に基づいて、前記複数の反射素子についての前記第1の反射位相のそれぞれに対して一律の前記第1の位相シフトを加えた場合の損失を前記特性値として特定する、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記特性値は、前記所定の方向を反射方向とした場合の理論値との乖離の大きさを示し、
前記特定手段は、複数の前記第1の位相シフトの量のうち、前記乖離の大きさが所定値より小さい位相シフトの量を、前記第2の位相シフトの量として特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記特性値は、前記所定の方向を反射方向とした場合の理論値との乖離の大きさを示し、
前記特定手段は、複数の前記第1の位相シフトの量のうち、前記乖離の大きさが最小の位相シフトの量を、前記第2の位相シフトの量として特定する、ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
複数の反射素子を含んで構成されるメタサーフェスを用いて電波を反射させる反射装置の制御を行う制御装置によって実行される制御方法であって、
前記反射装置によって電波を反射させる所定の方向に基づいて、前記複数の反射素子のそれぞれについての第1の反射位相を決定することと、
前記複数の反射素子についての前記第1の反射位相のそれぞれに対して一律の第1の位相シフトを加えた場合の前記反射装置の反射の特性値を、複数の前記第1の位相シフトの量に対して特定して、当該特性値に基づいて使用する第2の位相シフトの量を特定することと、
前記第2の位相シフトの量を前記複数の反射素子についての前記第1の反射位相のそれぞれに対して一律に加えた第2の反射位相を、当該複数の反射素子のそれぞれの反射位相として設定することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項8】
複数の反射素子を含んで構成されるメタサーフェスを用いて電波を反射させる反射装置の制御を行う制御装置に備えられたコンピュータに、
前記反射装置によって電波を反射させる所定の方向に基づいて、前記複数の反射素子のそれぞれについての第1の反射位相を決定させ、
前記複数の反射素子についての前記第1の反射位相のそれぞれに対して一律の第1の位相シフトを加えた場合の前記反射装置の反射の特性値を、複数の前記第1の位相シフトの量に対して特定して、当該特性値に基づいて使用する第2の位相シフトの量を特定させ、
前記第2の位相シフトの量を前記複数の反射素子についての前記第1の反射位相のそれぞれに対して一律に加えた第2の反射位相を、当該複数の反射素子のそれぞれの反射位相として設定させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタサーフェスを備えた反射板の設定制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル通信では、基地局装置が送出した電波を受信可能な位置に存在する端末装置に対して無線通信サービスが提供されるため、電波を受信可能でないエリア(不感地帯)を可能な限り小さくすることが肝要である。特に高周波数帯を使用する傾向のある近年の無線通信環境では、基地局装置からの距離が十分に近い位置であってもビルなどの障害物の陰において不感地帯が発生することが想定されるため、このような不感地帯への対応が重要となる。
【0003】
このような不感地帯への対応策として反射板を用いることが検討されている。なお、反射板は、物理的な向きを変更することによって信号を反射させる方向を変更することができるが、メタサーフェス反射板を用いることにより、物理的な向きを変更せずに、様々な方向に電波を反射させることができる。メタサーフェス反射板では、複数の反射素子で構成され、反射素子ごとの反射位相を調整することによって、所定の方向・ビーム幅の反射パターンを形成することができるように構成される。このようなメタサーフェス反射板では、反射の効率が反射位相の設定に応じて変動するため、その反射位相の設定が重要となる。非特許文献1には、複数の反射素子のそれぞれについて所定の方向・ビーム幅に基づいて、初期の反射位相を決定した後に、各反射素子における反射位相を順次調整して、各反射素子において好適な反射位相を決定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Samith Abeywickrama, et al.、「Intelligent Reflecting Surface: Practical Phase Shift Model and Beamforming Optimization」、IEEE Transactions on Communications、VOL. 68、Issue. 9、pp. 5849-5863、2020年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載の技術では、各反射素子について反射位相を順次変更して全体に与える影響を評価するため、反射素子の数が増加すると、その調整のための処理負荷が過大になってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、簡素な処理によって、メタサーフェス反射板の反射効率を向上させる技術を提供する。
【0007】
本発明の一態様による制御装置は、複数の反射素子を含んで構成されるメタサーフェスを用いて電波を反射させる反射装置の制御を行う制御装置であって、前記反射装置によって電波を反射させる所定の方向に基づいて、前記複数の反射素子のそれぞれについての第1の反射位相を決定する決定手段と、前記複数の反射素子についての前記第1の反射位相のそれぞれに対して一律の第1の位相シフトを加えた場合の前記反射装置の反射の特性値を、複数の前記第1の位相シフトの量に対して特定して、当該特性値に基づいて使用する第2の位相シフトの量を特定する特定手段と、前記第2の位相シフトの量を前記複数の反射素子についての前記第1の反射位相のそれぞれに対して一律に加えた第2の反射位相を、当該複数の反射素子のそれぞれの反射位相として設定する設定手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡素な処理によって、メタサーフェス反射板の反射効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】システム構成例を示す図である。
図2】反射板の特性値の変化を説明する図である。
図3】制御装置のハードウェア構成例を示す図である。
図4】制御装置の機能構成例を示す図である。
図5】制御装置によって実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(システム構成)
本実施形態にかかるシステムの構成例を図1に示す。本システムは、基地局装置111と端末装置131との間での通信が、反射板121を介して行われる。反射板121は、複数の反射素子122を含み、物理的な向きを変更せずに、様々な方向に電波を反射させることが可能なメタサーフェス反射板でありうる。メタサーフェス反射板は、複数の反射素子122のそれぞれの反射位相を調整することによって、所定の方向・ビーム幅の反射パターンを形成することができるように構成される。このメタサーフェス反射板は、反射素子122の反射位相に応じて特性が変化する。本システムでは、その反射位相の調整を適切に行うための制御装置101が用意される。
【0012】
制御装置101は、例えば基地局装置111から端末装置131へ及び端末装置131から基地局装置111へ、電波が反射されるように反射パターンを形成するように、反射板121の複数の反射素子122の反射位相を調整する。例えば、正反射の場合には、位相が反転する。メタサーフェス反射板では、反射素子122のインピーダンス(素子形状や、ダイオード・誘電体の誘電率等)を変化させることにより設計可能である。制御装置101は、例えば、複数の反射素子122のいずれか1つの反射位相を固定して、その他の反射素子122の反射位相を計算して決定する。そして、反射板121は、その決定された反射位相を反映させるようにインピーダンスが設定されることにより、特定の反射パターンを得ることができる。なお、この設定は、例えば反射板121の製造時に行われ、運用中に変動させないようにしうる。また、反射板121は、例えば、インピーダンス可変の素子により構成され、制御装置101からの制御信号の入力により、適応的に反射特性を変化させることが可能な反射装置であってもよい。なお、反射特性を適応的に変化させることができるか否かによらず、本明細書および添付の特許請求の範囲において、反射板121のことを反射装置と呼ぶ場合がある。
【0013】
一方で、反射素子122は、それぞれ、反射位相によって損失の大きさが異なりうる。すなわち、上述のように、反射位相を変動させるためのインピーダンスの抵抗成分によって損失が発生するため、反射位相が異なれば、損失の大きさも異なる。複数の反射素子122のそれぞれにおいて生じる損失が累積して、反射板121全体としての損失が大きくなると、他の方向と比して所望の方向に対して利得が高くなるように設定がされていても、電波が大きく減衰してしまうため、効率的に不感地帯に滞在する端末装置131へ通信サービスを提供することができない。このような損失を少なくするために、非特許文献1に記載の技術では、初期の反射位相を決定した後に、各反射素子における反射位相を順次調整して、反射素子122のそれぞれにおける好適な反射位相を決定する。しかしながら、このような手順は煩雑であり、特に反射素子122の数が多くなると、反射位相の決定のための処理負荷が過大になりうる。
【0014】
本実施形態では、このような処理負荷の増大を抑制しながら、かつ、反射時の損失を抑制可能な、メタサーフェス反射板の設定を可能とする手法を提供する。具体的には、制御装置101は、非特許文献1に記載のように、電波を反射させる所定の方向に基づいて、複数の反射素子122のそれぞれに関する初期的に第1の反射位相を決定し、その第1の反射位相のそれぞれに対して、一律の第1の位相シフトを加算して、反射時の損失や反射電力などの反射の特性を示す特性値を算出する。制御装置101は、例えば、複数の反射素子122のそれぞれについて、反射位相と損失との関係を示す情報を事前に保持しておく。そして、制御装置101は、第1の反射位相に第1の位相シフトを加算した後の反射位相における損失を特定し、複数の反射素子122のそれぞれについての損失を加算することにより、反射板121全体としての損失を算出しうる。同様に、複数の反射素子122のそれぞれについて、事前に保持されている反射位相と反射電力との関係を示す情報に基づいて、第1の反射位相に第1の位相シフトを加算した後の反射電力が算出されるようにしてもよい。なお、反射電力は、例えば所定電力の電波を照射した場合の、電波の反射方向ごとの電力値によって示される反射パターンでありうる。また、例えば、第1の反射位相に第1の位相シフトを加算した反射位相を持つように反射素子122が設定された反射板121に実際に電波を照射して、反射特性値を特定するようにしてもよい。そして、制御装置101は、第1の位相シフトを変動させながら、複数の第1の位相シフトの値に対して、反射板121全体としての特性値の変化を特定する。
【0015】
そして、制御装置101は、その特性値に基づいて、複数の第1の位相シフトの量のうち、反射板121の設定に使用すべき第2の位相シフトの量を決定する。制御装置101は、例えば、その特性値が損失である場合には、複数の第1の位相シフトの量のうち、対応する損失の大きさが所定値より小さい位相シフトの量を第2の位相シフトの量として特定する。なお、ここでの所定値は、例えば、損失の大きさの最小値に一定値を乗じた値などの相対的な値であってもよいし、事前に定められた値であってもよい。また、制御装置101は、例えば、複数の第1の位相シフトの量のうち、対応する損失の大きさが最小の第1の位相シフトの量を第2の位相シフトの量として特定してもよい。損失の大きさは、例えば、反射素子122のそれぞれにおける反射位相値と損失の大きさとの関係を示す値から特定される損失の大きさを加算した結果でありうる。また、基準電力の電波を照射して反射された電波の電力の総量と、照射時の電力との差分によって損失が特定されてもよい。
【0016】
また、特性値は、所定の方向を反射方向とした場合の、反射方向ごとの反射電力や損失の値のパターンの理論値との乖離の大きさであってもよい。例えば、制御装置101は、第1の反射位相に第1の位相シフトの量が加算された位相値について、複数の反射素子122のそれぞれについて事前に保持されている反射方向と反射電力との関係を用いて、反射板121全体の反射方向と反射電力との関係を算出しうる。そして、制御装置101は、算出した反射電力と、例えば事前に計算機シミュレーション等によって用意した理論値との差分を複数の反射方向について算出して、その差分を加算した結果を、上述の乖離の大きさとして特定しうる。なお、制御装置101は、例えば、電波を反射させるべき方向から所定の角度範囲における乖離のみを算出してもよい。また、制御装置101は、第1の反射位相に第1の位相シフトの量が加算された位相値が各反射素子に適用されて構成された反射板121の反射電力を測定して、理論値との乖離を特定するようにしてもよい。なお、この場合、制御装置101は、複数の第1の位相シフトの量のうち、対応する乖離の大きさが所定値より小さい位相シフトの量を第2の位相シフトの量として特定する。なお、ここでの所定値は、例えば、乖離の大きさの最小値に一定値を乗じた値などの相対的な値であってもよいし、事前に定められた値であってもよい。また、制御装置101は、例えば、複数の第1の位相シフトの量のうち、対応する乖離の大きさが最小の第1の位相シフトの量を第2の位相シフトの量として特定してもよい。
【0017】
制御装置101は、上述のようにして、第2の位相シフトの量を特定すると、複数の反射素子122のそれぞれについての第1の反射位相に対して、特定した第2の位相シフトを一律に加算した第2の反射位相を、複数の反射素子122のそれぞれの反射位相として設定する。
【0018】
この処理による反射板121の特性の変化について図2を用いて説明する。図2は、一例として、反射素子122が、縦横それぞれに24個ずつ、計484個配置され、反射対象の電波の周波数が28GHz帯であり、入射方向及び反射方向がそれぞれ(60°、0°)及び(55°、180°)である場合の特性の例を示している。なお、方向を示す(x、y)は、(方位角、仰角)を示す。図2に示すように、破線で示される理想的な特性に対して、細い実線で示した初期的な設定を用いた(第1の反射位相が設定された)場合の特性は、反射方向に対して十分な反射電力を得ることができず、損失が大きいことが分かる。これに対して、太い実線で示した、上述のような位相シフトによって改善された特性によれば、反射方向に対して十分に特性が改善できており、反射板121が十分に有効に働いていることが分かる。
【0019】
本実施形態では、反射板121が有する複数の反射素子122のそれぞれについて、電波を反射させる所定の方向に基づいて初期位相を決定した後、その複数の反射素子122に対して、一律に反射位相をシフトさせながら反射板121全体の特性値の改善を図る。このように、位相シフトが複数の反射素子122に対して一律に行われるため、反射素子122の数によらず、低い処理負荷で反射板121の特性を改善することができる。
【0020】
(装置構成)
図3を用いて、制御装置101のハードウェア構成例について説明する。制御装置101は、例えば、汎用のコンピュータであり、一例において、プロセッサ301、ROM302、RAM303、記憶装置304、及び通信回路305を含んで構成される。プロセッサ301は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成され、ROM302や記憶装置304に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM302は、各装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM303は、プロセッサ301がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置304は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路305は、例えば、反射板121の設定のために反射板121と通信するように構成されうる。なお、制御装置101は、スタンドアロンのコンピュータであってもよく、通信回路305を有しなくてもよい。
【0021】
図4に、制御装置101の機能構成例を示す。制御装置101は、その機能として、例えば、初期位相特定部401、位相調整部402、及び設定部403を有する。なお、各機能部は、例えば、プロセッサ301が、ROM302や記憶装置304に記憶されたプログラムを実行することによって実現されうる。ただし、これに限られず、一部または全部の機能部が専用のハードウェアによって実行されてもよい。初期位相特定部401は、反射板121において電波を反射させるべき所定の方向に基づいて、反射板121の複数の反射素子122のそれぞれについての初期位相(上述の第1の反射位相)を特定する。なお、初期位相特定部401は、反射素子122における損失を考慮せずに(例えば損失がないものと仮定して)、第1の反射位相を特定する。初期位相特定部401は、例えば、1つの反射素子の反射位相値を固定した条件で、複数の反射素子122のそれぞれについての第1の反射位相を決定する。位相調整部402は、初期位相特定部401によって特定された複数の反射素子122の第1の反射位相に対して、上述のようにして、一律に第1の位相シフトを加え、反射板121の特性値の変化を特定する。そして、位相調整部402は、複数の第1の位相シフトの量についてそれぞれ特定された特性値に基づいて、その複数の第1の位相シフトの量から使用されるべき第2の位相シフトを特定する。そして、設定部403は、複数の反射素子122のそれぞれに対する第1の反射位相に第2の位相シフトを一律に適用した第2の反射位相を、複数の反射素子122のそれぞれに設定させる。
【0022】
(処理の流れ)
続いて、図5を用いて、制御装置101が実行する処理の流れについて概説する。本処理では、制御装置101は、まず、例えば反射損失がないこと(無損失)を仮定して、所望の反射パターンを実現するために、複数の反射素子122のそれぞれにおける第1の反射位相を特定する(S501)。そして、制御装置101は、S501で特定した第1の反射位相値に対して一律に第1の位相シフトを加えて、例えば損失や理論値との乖離の大きさに対応する特性値を特定する。そして、制御装置101は、複数の第1の位相シフトの値のそれぞれに対して特性値を特定し、複数の第1の位相シフトの量のうち、例えば損失や理論値との乖離の大きさが十分に小さくなる1つの位相シフトの量を第2の位相シフトの量として特定する。そして、制御装置101は、第1の反射位相に対して一律に第2の位相シフトを加えた反射位相を、反射板121における複数の反射素子122のそれぞれに設定する第2の反射位相として特定する(S502)。その後、例えば、制御装置101の制御により、反射板121における複数の反射素子122のそれぞれに、対応する第2の反射位相が設定される(S503)。なお、制御装置101は、第2の反射位相の値を反射板121に通知することにより、反射板121の設定が行われるようにしてもよいし、例えば、制御装置101による設定に基づいて、反射板121の製造等の調整が行われてもよい。
【0023】
以上のようにして、本実施形態による設定手法によれば、メタサーフェスを構成する反射素子の数によらず、低い処理負荷で反射板の特性を改善することができる。
【0024】
上記構成により、処理負荷を抑えつつ適切に設定された反射板を構成することができる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0025】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5