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特開2023-130209ポリ乳酸、バインダー組成物、及び焼成用ペースト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130209
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ポリ乳酸、バインダー組成物、及び焼成用ペースト
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/52 20220101AFI20230912BHJP
   C04B 35/634 20060101ALI20230912BHJP
   H01B 1/22 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
C09K23/52 ZBP
C04B35/634 600
H01B1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034751
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】宮本 豪
(72)【発明者】
【氏名】岡本 秀二
【テーマコード(参考)】
5G301
【Fターム(参考)】
5G301DA03
5G301DA05
5G301DA06
5G301DA10
5G301DA11
5G301DA13
5G301DA19
5G301DA23
5G301DA42
5G301DD01
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】溶剤に視認可能な溶け残りなく溶解可能であって、溶剤と混合した際、有効なレオロジー特性を有し、優れた焼成性を併せ持つ、焼成用ペースト用のポリ乳酸を提供する。
【解決手段】本発明によれば、L体成分及びD体成分を含むポリ乳酸であって、ポリ乳酸に含まれるL体成分及びD体成分の合計を100質量%としたときの、L体成分の含有比率であるL-乳酸比、又はD体成分の含有比率であるD-乳酸比が60~93質量%である、焼成用ペースト用のポリ乳酸が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
L体成分及びD体成分を含むポリ乳酸であって、
前記ポリ乳酸に含まれるL体成分及びD体成分の合計を100質量%としたときの、L体成分の含有比率であるL-乳酸比、又はD体成分の含有比率であるD-乳酸比が60~93質量%である、
焼成用ペースト用のポリ乳酸。
【請求項2】
請求項1に記載のポリ乳酸であって、
25℃においてせん断速度を0.01sec-1から10,000sec-1まで150秒かけて一定の変化率で増加させたときの、せん断速度1sec-1における、前記ポリ乳酸を10質量%、ブチルカルビトールアセテートを90質量%含む、ポリ乳酸溶液の粘度が、2.0Pa・s以上である、ポリ乳酸。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のポリ乳酸であって、
重量平均分子量が50,000~300,000である、ポリ乳酸。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載のポリ乳酸、及び溶剤を含む、焼成用ペースト調製用のバインダー組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の焼成用ペースト調製用のバインダー組成物であって、25℃においてせん断速度を0.01sec-1から10,000sec-1まで150秒かけて一定の変化率で増加させたときの、せん断速度1sec-1における粘度が、2.0Pa・s以上である、焼成用ペースト調製用のバインダー組成物。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の焼成用ペースト調製用のバインダー組成物と、無機粒子を含む、焼成用ペースト。
【請求項7】
焼成用ペースト調製用のバインダー組成物であって、
L体成分及びD体成分を含むポリ乳酸を含み、
25℃においてせん断速度を0.01sec-1~10,000sec-1まで150秒かけて一定の変化率で増加させたときの、せん断速度が1sec-1における粘度Aとせん断速度が100sec-1における粘度Bとの比A/Bが1.0~2.0であり、25℃においてせん断速度を0.01sec-1~10,000sec-1まで150秒かけて一定の変化率で増加させたときの、せん断速度が500sec-1における粘度Cとせん断速度が9,000sec-1における粘度Dとの比C/Dが2.0~200.0である、バインダー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
内部電極(例えば、MLCC(積層セラミックコンデンサ、Multilayer Ceramic Capacitor))を製造する際に用いる無機粒子含有焼成用ペーストには、バインダーとしてエチルセルロース(EC)やポリビニルブチラール(PVB)が多く用いられている。
【0002】
特許文献1には、導電性粉末と有機バインダー樹脂とを含有する組成物で形成された、積層セラミックコンデンサの内部電極用乾燥膜に係る発明が開示されており、バインダー樹脂として、エチルセルロース及びポリビニルブチラールを含むことが開示されている。
また、特許文献2には、無機物質、バインダー樹脂及び溶剤を含有するペースト組成物であって、前記バインダー樹脂は、乳酸の単独重合体、及び乳酸と共重合性単量体との共重合体から選ばれる少なくとも1種の(共)重合体であることを特徴とするペースト組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-121744号公報
【特許文献2】特開平9-142938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の、例えば、エチルセルロースやポリビニルブチラール等を用いた無機粒子含有焼成用ペーストは、焼成後の残存炭素が多く、焼成性が低かった。また、特に近年のコンデンサの小型化に伴い、バインダーが均一に分散し、塗工性に優れ、かつ、焼成性が高い、無機粒子含有焼成用ペーストを調製可能な焼成用ペースト用バインダーが求められているが、従来のバインダーは、これらを両立することができなかった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、溶剤に視認可能な溶け残りなく溶解可能であって、溶剤と混合した際、有効なレオロジー特性を有し、優れた焼成性を併せ持つ、焼成用ペースト用のポリ乳酸を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、L体成分及びD体成分を含むポリ乳酸であって、ポリ乳酸に含まれるL体成分及びD体成分の合計を100質量%としたときの、L体成分の含有比率である、L-乳酸比又はD体成分の含有比率であるD-乳酸比が60~93質量%である、焼成用ペースト用のポリ乳酸が提供される。
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、ポリ乳酸のL体成分の含有比率である、L-乳酸比又はD体成分の含有比率であるD-乳酸比を特定の範囲に調整することで、溶剤に視認可能な溶け残りなく溶解可能であって、溶剤と混合した際、有効なレオロジー特性を有し、エチルセルロースを凌駕する焼成性を併せ持つ、焼成用ペースト用ポリ乳酸となることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、25℃においてせん断速度を0.01sec-1~10,000sec-1まで150秒かけて一定の変化率で増加させたときのせん断速度1sec-1における、前記記載のポリ乳酸であって、前記ポリ乳酸を10質量%、ブチルカルビトールアセテートを90質量%含む、ポリ乳酸溶液の粘度が、2.0Pa・s以上である、ポリ乳酸である。
好ましくは、前記記載のポリ乳酸であって、重量平均分子量が50,000~300,000である、ポリ乳酸である。
本発明の別の形態によれば、前記記載のポリ乳酸、及び溶剤を含む、焼成用ペースト調製用のバインダー組成物が提供される。
好ましくは、前記記載の焼成用ペースト調製用のバインダー組成物であって、25℃においてせん断速度を0.01sec-1~10,000sec-1まで150秒かけて一定の変化率で増加させたときのせん断速度1sec-1における粘度が、2.0Pa・s以上である、焼成用ペースト調製用のバインダー組成物である。
本発明の別の形態によれば、前記記載の焼成用ペースト調製用のバインダー組成物と、無機粒子を含む、焼成用ペーストが提供される。
また、本発明の別の形態によれば、焼成用ペースト調製用のバインダー組成物であって、
L体成分及びD体成分を含むポリ乳酸を含み、25℃において、せん断速度を0.01sec-1から10,000sec-1まで150秒かけて一定の変化率で増加させたときの、せん断速度1sec-1における粘度Aと、せん断速度100sec-1における粘度Bとの比A/Bが1.0~2.0であり、25℃において、せん断速度を0.01sec-1から10,000sec-1まで150秒かけて一定の変化率で増加させたときの、せん断速度500sec-1における粘度Cとせん断速度が9,000sec-1における粘度Dとの比C/Dが2.0~200.0である、バインダー組成物が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るポリ乳酸によれば、溶剤に視認可能な溶け残りなく溶解可能であって、溶剤と混合した際、有効なレオロジー特性を有し、エチルセルロースを凌駕する優れた焼成性を併せ持つ、焼成用ペースト用ポリ乳酸を得ることができる。
より具体的には、本発明に係るポリ乳酸は、溶剤に視認可能な溶け残りなく溶解可能であり、バインダーが均一に分散した焼成用ペースト調製用のバインダー組成物及び焼成用ペーストを得ることができる。また、本発明に係るポリ乳酸は、溶剤と混合した際、有効なレオロジー特性を有し、すなわち、適度な粘度を有し、擬塑性を有するため、塗工性に優れる焼成用ペーストを調製可能である。また、本発明に係るポリ乳酸、該ポリ乳酸を含む焼成用ペースト調製用のバインダー組成物及び焼成用ペーストは、焼成性に優れ、ペーストを焼成した後の残存炭素がないか又は極めて少ない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を例示して本発明について詳細な説明をする。本発明は、これらの記載によりなんら限定されるものではない。以下に示す本発明の実施形態の各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.ポリ乳酸
本発明に係るポリ乳酸は、L体成分及びD体成分を含むポリ乳酸であって、ポリ乳酸に含まれるL体成分及びD体成分の合計を100質量%としたときの、L体成分の含有比率である、L-乳酸比、又はD体成分の含有比率であるD-乳酸比が60~93質量%である。
【0012】
本発明において、ポリ乳酸とは、乳酸に由来する構成成分を含むポリマーである。本発明に係るポリ乳酸は、L-乳酸に由来する構成成分であるL体成分、及び、D-乳酸に由来する構成成分であるD体成分を含む。本発明に係るポリ乳酸は、L体成分及びD体成分を主成分とするポリマーであるが、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてその他のモノマーに由来する構成成分を含んでいてもよい。本発明に係るポリ乳酸は、ポリ乳酸を100質量%としたとき、乳酸に由来する構成成分以外の構成成分を例えば、0、5、10、15、20質量%含んでいてもよく、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内含んでいてもよい。本発明に係るポリ乳酸は、乳酸に由来する構成成分のみ、すなわち、L体成分及びD体成分からなるものとすることもできる。
【0013】
本発明に係るポリ乳酸は、ポリ乳酸に含まれるL体成分及びD体成分の合計を100質量%としたときの、L体成分の含有比率であるL-乳酸比、又はD体成分の含有比率であるD-乳酸比が60~93質量%であり、70~90質量%であることが好ましい。L-乳酸比は、例えば、60、65、70、75、80、85、90、93質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、D-乳酸比は、例えば、60、65、70、75、80、85、90、93質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
L-乳酸比又はD-乳酸比を上記下限以上とすることにより、溶剤と混合した際、十分に高い粘度及び擬塑性を有するバインダー組成物を得ることができ、塗工性に優れる焼成用ペーストを調製可能である。L-乳酸比又はD-乳酸比を上記上限以下とすることにより、溶剤に視認可能な溶け残りなく溶解可能であるバインダー組成物及び焼成用ペーストを得ることができる。
L-乳酸比及びD-乳酸比は、原料中のL体成分とD体成分の質量比から算出することができる。また、L-乳酸比及びD-乳酸比は、熱分解GC/MSにより分析することができる。また、L-乳酸比及びD-乳酸比は、ポリ乳酸重合時の原料に用いるL-乳酸とD-乳酸との質量比を調整することで制御することができる。
【0014】
本発明の一実施形態に係るポリ乳酸は、重量平均分子量が50,000~300,000であることが好ましい。重量平均分子量は、例えば、50,000、100,000、150,000、200,000、250,000、300,000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。重量平均分子量を上記数値範囲内とすることにより、溶剤溶解性とバインダー組成物の粘度のバランスに優れたポリ乳酸となりやすい。
【0015】
本発明の一実施形態に係るポリ乳酸は、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))を1.5~2.7とすることができる。分子量分布は、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0016】
本発明の一実施形態に係るポリ乳酸は、L-乳酸比又はD-乳酸比が60~80質量%である場合に、重量平均分子量が100,000~300,000であることがより好ましい。この場合、重量平均分子量は、例えば、100,000、150,000、200,000、250,000、300,000とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態に係るポリ乳酸は、L-乳酸比又はD-乳酸比が80質量%超~93質量%である場合に、重量平均分子量が50,000~250,000であることがより好ましい。この場合、重量平均分子量は、例えば、50,000、100,000、150,000、200,000、250,000とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0017】
重量平均分子量及び分子量分布は、GPC法で求めることができ、具体的には実施例に記載の条件で測定することができる。重量平均分子量及び分子量分布は、ポリ乳酸重合時の重合条件を調整することで、制御することができる。
【0018】
本発明に係るポリ乳酸の構造は特に限定されないが、ランダム共重合体とすることができる。
【0019】
本発明の一実施形態に係るポリ乳酸は、25℃において、せん断速度を0.01sec-1から10,000sec-1まで150秒かけて一定の変化率で増加させたときの、せん断速度1sec-1における、ポリ乳酸を10質量%、ブチルカルビトールアセテートを90質量%含む、ポリ乳酸溶液の粘度が、2.0Pa・s以上であることが好ましい。せん断速度1sec-1におけるポリ乳酸溶液の粘度は、例えば、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、20.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、80.0、90.0、100.0、200.0、300.0、400.0、500.0、600.0、700.0、800.0、900.0、1000.0Pa・sであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ポリ乳酸溶液の粘度を上記のように調整することによって、ポリ乳酸の溶剤溶解性と、該ポリ乳酸を含む焼成用ペーストの塗工性とのバランスにより優れるポリ乳酸を得ることができる。
【0020】
本発明の一実施形態に係るポリ乳酸溶液は、25℃において、せん断速度を0.01sec-1から10,000sec-1まで150秒かけて一定の変化率で増加させたときの、せん断速度1sec-1における粘度Aとせん断速度100sec-1における粘度Bとの比A/Bが1.0~2.0であることが好ましい。A/Bは、例えば、1.0、1.0超、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0021】
本発明の一実施形態に係るポリ乳酸溶液は、25℃において、せん断速度を0.01sec-1から10,000sec-1まで150秒かけて一定の変化率で増加させたときの、せん断速度500sec-1における粘度Cとせん断速度9,000sec-1における粘度Dとの比C/Dが2.0~200.0であることが好ましい。C/Dは、例えば、2.0、5.0、10.0、20.0、50.0、100.0、150.0、200.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
すなわち、本発明の一実施形態に係るポリ乳酸溶液は、せん断速度が高いほど粘度が低くなる擬塑性を示すことが好ましい。
【0022】
本発明の一実施形態に係るポリ乳酸溶液は、25℃において、せん断速度を0.01sec-1から10,000sec-1まで150秒かけて一定の変化率で増加させたときの、各せん断速度が以下であることが好ましい。せん断速度が1sec-1における粘度Aについては上記したとおりである。せん断速度が100sec-1における粘度Bは2.0~900.0Pa・sであることが好ましく、5.0~800.0Pa・sがより好ましい。粘度Bは、例えば、2.0、5.0、10.0、20.0、50.0、100.0、200.0、300.0、400.0、500.0、600.0、700.0、800.0、900.0Pa・sであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。せん断速度が500sec-1における粘度Cは1.0~600.0Pa・sであることが好ましく、1.0~400.0Pa・sがより好ましい。粘度Cは、例えば、1.0、2.0、5.0、10.0、20.0、50.0、100.0、200.0、300.0、400.0、500.0、600.0Pa・sであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。せん断速度が9,000sec-1における粘度Dは0.05~2.0Pa・sであることが好ましく、0.1~1.0Pa・sがより好ましい。粘度Dは、例えば、0.05、0.1、0.2、0.3、0.5、0.8、1.0、1.1.0、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0023】
ポリ乳酸溶液の粘度は、ポリ乳酸のL-乳酸比又はD-乳酸比及び重量平均分子量を調整することにより、制御することができる。25℃における各せん断速度のときのポリ乳酸溶液の粘度は、回転式粘度計、例えばレオメーターを用いて測定することができ、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0024】
本発明の一実施形態に係るポリ乳酸は、溶剤に溶解したとき(例えば、ポリ乳酸を10質量%、ブチルカルビトールアセテートを90質量%含む、ポリ乳酸溶液を作製したとき)、目視で視認可能な不溶解物がないことが好ましい。また、本発明に係るポリ乳酸は、窒素雰囲気中500℃で1時間の焼成を行ったとき、目視で視認可能な残存炭素がないことが好ましい。
【0025】
本発明に係るポリ乳酸は、焼成用ペースト用ポリ乳酸であり、焼成用ペーストのバインダーとして好適に用いることができる。上記したように本発明に係るポリ乳酸は、L-乳酸比又はD-乳酸比を特定の数値範囲内とすることにより、溶剤に視認可能の溶け残りなく溶解可能であって、溶剤と混合した際、有効なレオロジー特性、すなわち、適度な粘度と擬塑性とを有し、エチルセルロースを凌駕する焼成性を併せ持つ、焼成用ペースト用ポリ乳酸となることを初めて見出しなされたものである。本発明によれば、バインダーが均一に分散し、塗工性に優れ、焼成時の残存炭素が少ない焼成用ペーストを得ることができ、近年のさらに小型化したコンデンサの製造においても、パターン形成が可能であり、かつ、得られるコンデンサに、バインダーに由来する有機物質が残留せず、欠陥のリスクを低減できる利益を供する。
【0026】
2.ポリ乳酸の製造方法
本発明に係るポリ乳酸の製造方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法で製造することができる。
本発明の一実施形態に係るポリ乳酸は、環状二量体であるラクチドを含む原料を重合する工程を含む製造方法により得ることができる。原料が含むことができるラクチドとしては、メソ-ラクチド、L-ラクチド、D-ラクチドを挙げることができる。
原料は、メソ-ラクチド、L-ラクチド、D-ラクチドから選択される少なくとも2つを含むことが好ましく、メソ-ラクチド及びL-ラクチドを含むか、メソ-ラクチド、L-ラクチド、及びD-ラクチドを含むことができる。
原料は、原料に含まれるメソ-ラクチド、L-ラクチド、D-ラクチドの合計を100質量%としたとき、L体成分を合計で60~93質量%含むことが好ましい。または、原料は、原料に含まれるメソ-ラクチド、L-ラクチド、D-ラクチドの合計を100質量%としたとき、D体成分を合計で60~93質量%含むことが好ましい。原料は、L体成分を合計で、例えば、60、65、70、75、80、85、90、93質量%含むことができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。原料は、D体成分を合計で、例えば、60、65、70、75、80、85、90、93質量%含むことができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0027】
重合には、触媒を用いることができ、触媒としては、例えば、乳酸スズ、酒石酸スズ、ジカプリル酸スズ、ジラウリル酸スズ、ジパルチミン酸スズ、ジステアリン酸スズ、ジオレイン酸スズ、α-ナフエト酸スズ、β-ナフエト酸スズ、オクチル酸スズ等の有機スズ系化合物、粉末スズ; 亜鉛末、ハロゲン化亜鉛、酸化亜鉛、有機亜鉛系化合物; テトラプロピルチタネート等のチタン化合物; ジルコニウムイソプロポキシド等のジルコニウム系化合物; 三酸化アンチモン等のアンチモン系化合物を挙げることができる。触媒の添加量は、原料である乳酸及びラクチド等の合計100質量部に対して、0.001~1質量部とすることができ、0.005~0.5質量部とすることができる。
【0028】
重合は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。重合温度は、例えば、150~210℃とすることができ、160~200℃とすることができる。重合時間は、例えば、1~10時間とすることができ、4~8時間とすることができる。
【0029】
触媒の種類及び添加量、並びに、重合温度及び時間等の重合条件を調整することにより、ポリ乳酸の重量平均分子量及びポリ乳酸溶液の粘度を調整することができる。
【0030】
3.バインダー組成物
本発明の一実施形態に係るバインダー組成物は、上記に記載のポリ乳酸、及び溶剤を含み、焼成用ペースト調製用とできる。
【0031】
本発明の一実施形態に係るバインダー組成物は、ポリ乳酸をバインダーとして含み、ポリ乳酸以外のバインダーを含んでいても良い。本発明の一実施形態に係るバインダー組成物が、ポリ乳酸の他に含み得るバインダーとしては、エチルセルロース及びポリビニルブチラールを挙げることができる。本発明の一実施形態に係るバインダー組成物は、バインダー組成物が含むバインダーを100質量%としたときに、ポリ乳酸を50質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。バインダーを100質量%としたときのポリ乳酸の含有率は、例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。本発明の一実施形態に係るバインダー組成物は、バインダーとして、ポリ乳酸のみを含むものとすることもできる。
【0032】
本発明の一実施形態に係るバインダー組成物が含み得る溶剤としては、特に制限はなく、公知の溶剤を用いることができる。溶剤は、本発明に係るポリ乳酸との相溶性に優れることが好ましく、例えば、本発明に係るポリ乳酸を10質量%、溶剤を90質量%含む、ポリ乳酸溶液を調製した際、視認可能な溶け残りがないことが好ましい。また、溶剤の沸点は150~300℃であることが好ましく、200~290℃であることがより好ましく、220~280℃であることがさらに好ましい。溶剤としては、アルコール系溶剤、エステル系溶剤等を挙げることができる。
【0033】
アルコール系溶剤としては、例えば、シクロヘキサノール等のシクロアルカノール、テルピネオール(α、β、γ異性体、又はこれらの任意の混合物を含む。)、ジヒドロテルピネオール等のテルペンアルコール(モノテルペンアルコール等)、ジヒドロターピネオール、ミルテノール、ソブレロール、メントール、カルベオール、ペリリルアルコール、ピノカルベオール、ソブレロール、ベルベノール、ジプロピレングリコール、ブチルカルビトール等が挙げられる。
【0034】
エステル系溶剤としては、例えば、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ジヒドロターピニルアセテート(DHTA)、ブチルグリコールアセテート(BMGAC)、ジエチレングリコールアルキルエーテルアセテート(ここで、アルキルとしては、エチル、プロピル、n-ブチルなどが例示される。以下同じ。)エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート等のアセテート類、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールモノ-iso-ブチレート、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールモノ-iso-ブチレートエーテル、: ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールアルキルエーテル、エチレングリコールアルキルエーテル、ジプロピレングリコールアルキルエーテル等が挙げられる。
【0035】
上記の中でも、溶剤はエステル系溶剤のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。また、溶剤は、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ブチルグリコールアセテート(BMGAC)、ジヒドロターピニルアセテート(DHTA)、テルピネオール、ジヒドロターピネオールのうち少なくとも1つを含むことがより好ましく、ブチルカルビトールアセテート(BCA)を含むことが更により好ましい。
【0036】
本発明の一実施形態に係るバインダー組成物は、バインダー組成物を100質量%としたとき、バインダーを1~20質量%含むことができる。バインダー組成物を100質量%としたときのバインダーの含有率は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0037】
本発明の一実施形態に係るバインダー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて他の添加剤を含むこともできる。他の添加剤としては、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤等を挙げることができる。
【0038】
本発明の一実施形態に係るバインダー組成物は、25℃において、せん断速度を0.01sec-1から10,000sec-1まで150秒かけて一定の変化率で増加させたときの、せん断速度1sec-1における粘度が、2.0Pa・s以上であることが好ましい。バインダー組成物の粘度は、例えば、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、20.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、80.0、90.0、100.0、200.0、300.0、400.0、500.0、600.0、700.0、800.0、900.0、1000.0Pa・sであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。上記のような粘度を有することにより、塗工性に優れる焼成用ペーストを調製可能なバインダー組成物となる。
【0039】
本発明の一実施形態に係るバインダー組成物は、25℃において、せん断速度を0.01sec-1から10000sec-1まで150秒かけて一定の変化率で増加させたときの、せん断速度1sec-1における粘度Aとせん断速度100sec-1のときの粘度Bとの比A/Bが1.0~2.0であることが好ましい。A/Bは、例えば、1.0、1.0超、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0040】
本発明の一実施形態に係るバインダー組成物は、25℃において、せん断速度を0.01sec-1から10,000sec-1まで150秒かけて一定の変化率で増加させたときの、せん断速度が500sec-1における粘度Cとせん断速度が9,000sec-1における粘度Dとの比C/Dが2.0~200.0であることが好ましい。C/Dは、例えば、2.0、5.0、10.0、20.0、50.0、100.0、150.0、200.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
すなわち、本発明の一実施形態に係るバインダー組成物は、せん断速度が高いほど粘度が低くなる擬塑性を示すことが好ましい。
【0041】
本発明の一実施形態に係るバインダー組成物は、25℃において、せん断速度を0.01sec-1から10,000sec-1まで150秒かけて一定の変化率で増加させたときの、各せん断速度が以下であることが好ましい。せん断速度が1sec-1における粘度Aについては上記したとおりである。せん断速度が100sec-1における粘度Bは2.0~900.0Pa・sであることが好ましく、5.0~800.0Pa・sがより好ましい。粘度Bは、例えば、2.0、5.0、10.0、20.0、50.0、100.0、200.0、300.0、400.0、500.0、600.0、700.0、800.0、900.0Pa・sであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。せん断速度が500sec-1における粘度Cは1~600Pa・sであることが好ましく、1.0~400.0Pa・sがより好ましい。粘度Cは、例えば、1.0、2.0、5.0、10.0、20.0、50.0、100.0、200.0、300.0、400.0、500.0、600.0Pa・sであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。せん断速度が9,000sec-1における粘度Dは0.05~2Pa・sであることが好ましく、0.1~1.0Pa・sがより好ましい。粘度Dは、例えば、0.05、0.1、0.2、0.3、0.5、0.8、1.0、1.1.0、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0042】
バインダー組成物の粘度は、ポリ乳酸のL-乳酸比又はD-乳酸比及び重量平均分子量、並びに、バインダー及び溶剤の種類及び量を調整することにより、制御することができる。25℃における各せん断速度のときのバインダー組成物の粘度は、回転式粘度計、例えばレオメーターを用いて測定することができ、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0043】
本発明の一実施形態に係るバインダー組成物は、目視で視認可能なバインダーの不溶解物がないことが好ましい。また、本発明に係るバインダー組成物は、窒素雰囲気中500℃で1時間の焼成を行ったとき、目視で視認可能な残存炭素がないことが好ましい。本発明の一実施形態に係るバインダー組成物は、バインダーが均一に溶解しており、適度に高い粘度を有し、焼成性に優れるため、焼成用ペースト調製用に好適である。
【0044】
4.焼成用ペースト
本発明の一実施形態に係る焼成用ペーストは、上記のバインダー組成物と無機粒子を含む。無機粒子としては、用途に応じた公知の粉体を用いることができる。無機粒子としては、例えは、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、ITO、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、各種ガラス粉、無機蛍光体、黒鉛粉、はんだ粉などが挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、配線パターンをスクリーン印刷などで印刷する場合に用いる焼成用ペーストの調製には、銀や銅、ニッケルなどが用いることでき、ニッケルを用いることが好ましい。本発明の一実施形態に係る焼成用ペーストは、積層セラミックコンデンサ(MLCC)用とすることができ、例えば、MLCCの内部電極用とできる。一例として、本発明の一実施形態に係る焼成用ペーストは、無機粒子としてニッケルを含む、内部電極用とすることができる。
【0045】
焼成用ペーストの配合は、焼成用ペーストの良好な塗布性や、焼成用ペーストを焼結させて得られる焼結体が、各種の良好な特性を有するように、適宜調整される。例えば、MLCC等に用いる内部電極や導体配線を形成する場合、焼成用ペーストを、公知の方法で、例えば、スクリーン印刷法、ディスペンス法、ドクターブレード法等の成形方法で成形し、所望の形状の成形体を得ることができる。続いて、得られた成形体を、必要に応じて適宜な温度で加熱乾燥させた後、焼成することで、焼成用ペースト中のバインダーが除去され、無機粉体が焼結し、焼結体を得ることができる。本発明に係るポリ乳酸を含む焼成用ペーストは、塗工性に優れ、例えば上記の方法での成形が可能であり、焼成後にポリ乳酸に由来する残存炭素が少なく欠陥のリスクが少ない電極、導体配線を得ることができる。
【実施例0046】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0047】
以下の手順で、各ポリ乳酸を調製した。
<製造例1>
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた反応装置に、メソ-ラクチドを60部、L-ラクチドを40部、オクチル酸スズを0.01部仕込み、窒素ガスを導入しながら180℃に昇温し、6時間重合反応を行い、重量平均分子量(Mw)が20万、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が2.0のポリ乳酸1を得た。
【0048】
<製造例2>
メソ-ラクチドを20部、L-ラクチドを80部、オクチル酸スズを0.5部としたこと以外は、製造例1と同様の方法にて重量平均分子量(Mw)が5万、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.7のポリ乳酸2を得た。
【0049】
<製造例3>
メソ-ラクチドを40部、L-ラクチドを60部、オクチル酸スズを0.1部としたこと以外は、製造例1と同様の方法にて重量平均分子量(Mw)が10万、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.8のポリ乳酸3を得た。
【0050】
<製造例4>
D-ラクチドを30部、L-ラクチドを70部、オクチル酸スズを0.005部としたこと以外は、製造例1と同様の方法にて重量平均分子量(Mw)が30万、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.8のポリ乳酸4を得た。
【0051】
<製造例5>
オクチル酸スズを0.5部としたこと以外は、製造例1と同様の方法にて重量平均分子量(Mw)が5万、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.7のポリ乳酸5を得た。
【0052】
<製造例6>
オクチル酸スズを0.005部としたこと以外は、製造例3と同様の方法にて重量平均分子量(Mw)が30万、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が2.5のポリ乳酸6を得た。
【0053】
<製造例7>
メソ-ラクチドを40部、D-ラクチドを60部としたこと以外は、製造例3と同様の方法にて重量平均分子量(Mw)が10万、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.8のポリ乳酸7を得た。
【0054】
<製造例8>
メソ-ラクチドを60部、D-ラクチドを40部としたこと以外は、製造例1と同様の方法にて重量平均分子量(Mw)が20万、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が2.0のポリ乳酸8を得た。
【0055】
<製造例9>
L-ラクチドを30部、D-ラクチドを70部としたこと以外は、製造例4と同様の方法にて重量平均分子量(Mw)が30万、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.8ポリ乳酸9を得た。
【0056】
<製造例10>
メソ-ラクチドを100部、オクチル酸スズを0.005部としたこと以外は、製造例1と同様の方法にて重量平均分子量(Mw)が30万、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が2.0のポリ乳酸10を得た。
【0057】
<製造例11>
メソ-ラクチドを10部、L-ラクチドを90部としたこと以外は、製造例1と同様の方法にて重量平均分子量(Mw)が5万、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.7のポリ乳酸11を得た。
【0058】
<重量平均分子量の測定条件>
ポリ乳酸の重量平均分子量及び分子量分布は以下の条件で測定した。
測定装置:HLC-8120GPC(東ソー社製)
GPCカラム構成:以下の5連カラム(すべて東ソー社製)
(1)TSK-GEL G7000HXL
(2)TSK-GEL GMHXL
(3)TSK-GEL GMHXL
(4)TSK-GEL G2500HXL
サンプル濃度:1.5mg/cmとなるように、テトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1ml/min
カラム温度:40℃
【0059】
<L-乳酸比及びD-乳酸比>
L体成分及びD体成分の合計を100質量%としたときの、L体成分の含有比率(L-乳酸比(質量%))、及び、D体成分の含有比率(D-乳酸比(質量%))を原料配合から計算した。結果を表1に示す。なお、各ポリ乳酸の重合反応における反応率は、95%以上であった。
【0060】
[実施例1]
密閉容器にポリ乳酸1を10部、BCAを100%とした溶媒を90部に投入し、THINKY製自公転式ミキサー「あわとり練太郎」にて2000rpmで20分撹拌後、バインダー組成物1を得た。バインダー組成物1の各物性の測定結果を表2に示す。
【0061】
[実施例2]
ポリ乳酸1に代えてポリ乳酸2を用いた以外は、実施例1と同様の方法でバインダー組成物2を得た。バインダー組成物2の各物性の測定結果を表2に示す。
【0062】
[実施例3]
ポリ乳酸1に代えてポリ乳酸3を用いた以外は、実施例1と同様の方法でバインダー組成物3を得た。バインダー組成物3の各物性の測定結果を表2に示す。
【0063】
[実施例4]
ポリ乳酸1に代えてポリ乳酸4を用いた以外は、実施例1と同様の方法でバインダー組成物4を得た。バインダー組成物4の各物性の測定結果を表2に示す。
【0064】
[実施例5]
ポリ乳酸1に代えてポリ乳酸5を用いた以外は、実施例1と同様の方法でバインダー組成物5を得た。バインダー組成物5の各物性の測定結果を表2に示す。
【0065】
[実施例6]
ポリ乳酸1に代えてポリ乳酸6を用いた以外は、実施例1と同様の方法でバインダー組成物6を得た。バインダー組成物6の各物性の測定結果を表2に示す。
【0066】
[実施例7]
実施例2の溶媒をBCA50%とDHTA50%の混合溶媒に替え、実施例1と同様の方法でバインダー組成物7を得た。バインダー組成物7の各物性の測定結果を表2に示す。
【0067】
[実施例8]
ポリ乳酸1に代えてポリ乳酸7を用いた以外は、実施例1と同様の方法でバインダー組成物8を得た。バインダー組成物8の各物性の測定結果を表2に示す。
【0068】
[実施例9]
ポリ乳酸1に代えてポリ乳酸8を用いた以外は、実施例1と同様の方法でバインダー組成物9を得た。バインダー組成物9の各物性の測定結果を表2に示す。
【0069】
[実施例10]
ポリ乳酸1に代えてポリ乳酸9を用いた以外は、実施例1と同様の方法でバインダー組成物10を得た。バインダー組成物10の各物性の測定結果を表2に示す。
【0070】
[比較例1]
ポリ乳酸1に代えてポリ乳酸10を用いた以外は、実施例1と同様の方法でバインダー組成物11を得た。バインダー組成物11の各物性の測定結果を表2に示す
【0071】
[比較例2]
ポリ乳酸1に代えてポリ乳酸11を用いた以外は、実施例1と同様の方法でバインダー組成物12を得た。バインダー組成物12の各物性の測定結果を表2に示す
【0072】
[比較例3]
ポリ乳酸に代えてエチルセルロースを用いた以外は、実施例1と同様の方法で比較例3のバインダー組成物13を得た。バインダー組成物13の各物性の測定結果を表2に示す
【0073】
<焼成性の測定方法>
実施例・比較例のポリ乳酸又はエチルセルロースを窒素雰囲気中500℃で1時間の焼成(TG-DTA)を行った場合の残炭の有無を目視にて確認して、ポリマーの焼成性を以下の基準にしたがって評価した。
装置名:日立ハイテクサイエンス STA7220
雰囲気:N 200mL/min
温度条件:40℃→500℃ 昇温速度=10℃/min
試料容器:アルミ製 オープンセル
〇:残炭がない
×:残炭が有る
【0074】
<溶剤溶解性>
密閉容器に表2に記載の配合で、有機溶剤とポリ乳酸を投入し、THINKY製自公転式ミキサー「あわとり練太郎」にて、2000rpmで20分撹拌した。その後、前記密閉容器から取り出したサンプル10gをガラス板上にのせ約5cmに塗り広げた後、目視でバインダーの溶剤への溶解性を評価した。
○:ガラス板上にのせたサンプルは有機溶剤中に均一に溶解しており、不溶解物は観察されなかった。
×:ガラス板上にのせたサンプルに不溶解物が多数観察された。
【0075】
<各せん断速度における粘度A、B、C、D及び粘度比の求め方>
本発明の樹脂溶液粘度は、TAインスツメンツ製粘度・粘弾性測定装置「Discovery HR30」を用いて行った。具体的には、測定温度25℃設定の下、バインダー組成物0.1gを直径20mm、コーン角度0.975°のCone plateを、クリアランス23μmにて取り付けた測定部にセットし、せん断速度を0.01sec-1から10,000sec-1まで150秒かけて一定の変化率で増加させたときの、せん断速度1sec-1における粘度A、せん断速度100sec-1における粘度B、せん断速度500sec-1における粘度C、せん断速度9,000sec-1における粘度Dを測定した。また、粘度比A/Bおよび粘度比C/Dを求めた。なお、「せん断速度を0.01sec-1から10,000sec-1まで150秒かけて一定の変化率で増加させる」とは、25秒毎にせん断速度が10倍になるようにせん断速度を増加させることを意味し、例えば、測定開始から25秒後のせん断速度は0.1sec-1であり、測定開始から50秒後のせん断速度は1sec-1となる。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】