IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人東海大学の特許一覧

<>
  • 特開-姿勢保持装置 図1
  • 特開-姿勢保持装置 図2
  • 特開-姿勢保持装置 図3
  • 特開-姿勢保持装置 図4
  • 特開-姿勢保持装置 図5
  • 特開-姿勢保持装置 図6
  • 特開-姿勢保持装置 図7
  • 特開-姿勢保持装置 図8
  • 特開-姿勢保持装置 図9
  • 特開-姿勢保持装置 図10
  • 特開-姿勢保持装置 図11
  • 特開-姿勢保持装置 図12
  • 特開-姿勢保持装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130228
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】姿勢保持装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20230912BHJP
   F16H 49/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
F16H49/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034778
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 義弘
(72)【発明者】
【氏名】祐島 零央
(72)【発明者】
【氏名】長津 岳大
(72)【発明者】
【氏名】飯田 拓人
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS38
3C707CW08
3C707CX03
3C707CX05
3C707HT25
3C707MT04
3C707XK02
3C707XK06
3C707XK12
3C707XK17
3C707XK28
3C707XK45
3C707XK49
3C707XK75
3C707XK85
(57)【要約】
【課題】姿勢保持装置の動作の精度を向上させる。
【解決手段】姿勢保持装置は、使用者の関節の一方側の部位に装着される第1のフレームと、関節の他方側の部位に装着される第2のフレームと、第1のフレームに対する第2のフレームの回動が伝達される入力軸と、当該入力軸の回転を増速して出力する出力軸とを有する増速機と、出力軸の回動を規制する規制手段とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の関節の一方側の部位に装着される第1のフレームと、
前記関節の他方側の部位に装着される第2のフレームと、
前記第1のフレームに対する前記第2のフレームの回動が伝達される入力軸と、当該入力軸の回転を増速して出力する出力軸とを有する増速機と、
前記出力軸の回動を規制する規制手段と、
を備える姿勢保持装置。
【請求項2】
前記増速機は、遊星歯車機構を有する
請求項1に記載の姿勢保持装置。
【請求項3】
前記増速機は、入力軸が遊星キャリアに、且つ出力軸が太陽歯車に接続され、若しくは入力軸が遊星キャリアに、且つ出力軸が内歯車に接続され、又は入力軸が内歯車に、且つ出力軸が太陽歯車に接続された遊星歯車機構を有する
請求項1又は2に記載の姿勢保持装置。
【請求項4】
前記規制手段は、前記出力軸に固定されたラチェットホイールと、前記第1のフレームに固定され、前記ラチェットホイールに係合可能なラチェット爪とを有する
請求項1から3の何れか一項に記載の姿勢保持装置。
【請求項5】
前記規制手段は、前記ラチェット爪を前記ラチェットホイールの歯に当接させるための位置合わせを行うラチェット爪制御部を有する
請求項4に記載の姿勢保持装置。
【請求項6】
前記ラチェット爪制御部は、前記出力軸に接続された内側円盤部と外周リング部とを備えた第1プレートと、前記第1プレートと隣り合う位置で前記出力軸に接続された第2プレートと、前記第2プレートに回動可能に取り付けられ先端部が前記第2プレートの所定位置から出没可能に構成された第1爪と、前記第2プレートに回動可能に取り付けられ内周部に前記第1爪の先端部が係止される内周歯を備えた第3プレートとを備えており、
前記内側円盤部は、前記第1爪を前記内周歯への係止位置と非係止位置との間で移動させる第1ガイド部を備え、
前記第3プレートは、前記ラチェット爪を前記ラチェットホイールとの係合位置と非係合位置との間で移動させる第2ガイド部を備える
請求項5に記載の姿勢保持装置。
【請求項7】
前記規制手段は、
前記第2ガイド部が前記ラチェット爪の先端部を前記非係合位置に戻すように前記第3プレートと前記ラチェット爪とを相対移動させる第1付勢部材と、
前記第1ガイド部が前記第1爪の先端部を前記非係止位置に戻すように前記内側円盤部と前記第2プレートとを相対回転させる第2付勢部材と、
をさらに備える請求項6に記載の姿勢保持装置。
【請求項8】
前記第1爪を複数備え、
複数の前記第1爪が前記第2プレートから出没する複数の前記所定位置は、前記第2プレートの周方向に互いにオフセットされている
請求項6又は7に記載の姿勢保持装置。
【請求項9】
前記第1のフレーム、前記第2のフレーム、前記増速機及び前記規制手段の組を複数備える
請求項1から8のいずれか一項に記載の姿勢保持装置。
【請求項10】
前記使用者の操作を、複数の前記規制手段に対して一斉に伝達するための操作部を備える
請求項9に記載の姿勢保持装置。
【請求項11】
前記増速機は第1の増速機であり、前記規制手段は前記第1の増速機の出力軸の回動を規制する第1の規制手段であり、
前記第2のフレームと回動可能に接続される第3のフレームと、
前記第2のフレームに対する前記第3のフレームの回動が伝達される第2の入力軸と、当該第2の入力軸の回転を増速して出力する第2の出力軸とを有する第2の増速機と、
前記第2の出力軸の回動を規制する第2の規制手段と、
をさらに備える請求項1から8のいずれか一項に記載の姿勢保持装置。
【請求項12】
前記使用者の操作を、前記第1の規制手段及び前記第2の規制手段に対して一斉に伝達するための操作部を備える
請求項11に記載の姿勢保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、姿勢保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業者の背面に取り付けられるフレーム部と、フレーム部に回動可能に取り付けられ作業者の腕を支持するアーム部と、アーム部の回動を規制する回動規制手段と、回動規制手段を回動状態から規制状態へと切り替える切替手段とを備える姿勢保持装置が提案されていた(例えば特許文献1)。切替手段は、アーム部の先端部に傾動可能に設けられた切替レバーを備えている。回動規制手段は、回動が規制された状態のアーム部を、規制された角度を超えるように上方に回動させることで規制状態から回動状態へと切り替わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-74800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回動規制手段に例えばラチェット機構を用いる場合、歯車と歯止めとが係合することによりアーム部の姿勢を保持することになるため、保持できる角度は段階的なものになる。よって、使用者が精度の高い動作を望む場合、切替レバーを操作してからアーム部の回動が規制されるまでのいわゆる遊びを減少させるためには、歯車の歯数を増加させるだけでは限界があった。
【0005】
本発明は、姿勢保持装置の動作の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
姿勢保持装置は、使用者の関節の一方側の部位に装着される第1のフレームと、関節の他方側の部位に装着される第2のフレームと、第1のフレームに対する第2のフレームの回動が伝達される入力軸と、当該入力軸の回転を増速して出力する出力軸とを有する増速機と、出力軸の回動を規制する規制手段とを備える。
【0007】
また、増速機は、遊星歯車機構を有するものであってもよい。また、増速機は、入力軸が遊星キャリアに、且つ出力軸が太陽歯車に接続され、若しくは入力軸が遊星キャリアに、且つ出力軸が内歯車に接続され、又は入力軸が内歯車に、且つ出力軸が太陽歯車に接続された遊星歯車機構を有するものであってもよい。
【0008】
また、規制手段は、出力軸に固定されたラチェットホイールと、第1のフレームに固定され、ラチェットホイールに係合可能なラチェット爪とを有するものであってもよい。また、規制手段は、ラチェット爪をラチェットホイールの歯に当接させるための位置合わせを行うラチェット爪制御部を有するものであってもよい。
【0009】
また、ラチェット爪制御部は、出力軸に弾性体を介して接続された内側円盤部と外周リング部とを備えた第1プレートと、第1プレートと隣り合う位置で出力軸に接続された第2プレートと、第2プレートに回動可能に取り付けられ先端部が第2プレートの所定位置から出没可能に構成された第1爪と、出力軸に回動可能に取り付けられ内周部に第1爪の先端部が係止される内周歯を備えた第3プレートとを備えており、内側円盤部は、第1爪
を内周歯への係止位置と非係止位置との間で移動させる第1ガイド部を備え、第3プレートは、ラチェット爪をラチェットホイールとの係合位置と非係合位置との間で移動させる第2ガイド部を備えるものであってもよい。
【0010】
また、規制手段は、第2ガイド部がラチェット爪の先端部を非係合位置に戻すように第3プレートとラチェット爪とを相対移動させる第1付勢部材と、第1ガイド部が第1爪の先端部を非係止位置に戻すように内側円盤部と第2プレートとを相対回転させる第2付勢部材とをさらに備えるものであってもよい。
【0011】
また、姿勢保持装置は、第1爪を複数備え、複数の第1爪が第2プレートから出没する複数の所定位置は、第2プレートの周方向に互いにオフセットされていてもよい。
【0012】
また、姿勢保持装置は、第1のフレーム、第2のフレーム、増速機及び規制手段の組を複数備えていてもよい。また、姿勢保持装置は、第2のフレームと回動可能に接続される第3のフレームと、第2のフレームに対する第3のフレームの回動が伝達される第2の入力軸と、当該第2の入力軸の回転を増速して出力する第2の出力軸とを有する第2の増速機と、第2の出力軸の回動を規制する第2の規制手段とをさらに備えるものであってもよい。増速機及び規制手段の組を複数備える場合は、操作部は、使用者の操作を、複数の規制手段の少なくとも一部に対して一斉に伝達するようにしてもよい。
【0013】
上記課題を解決するための手段の内容は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、姿勢保持装置の動作の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、姿勢保持装置の一例を示す斜視図である。
図2図2は、ロック装置の一例を示す分解斜視図である。
図3図3は、姿勢保持装置の動作を説明するための模式的な図である。
図4図4は、姿勢保持装置の動作を説明するための模式的な図である。
図5図5は、第1プレートの一例を示す正面図である。
図6図6は、ロック装置の動作を説明するための図である。
図7図7は、ロック装置の動作を説明するための図である。
図8図8は、ロック装置の動作を説明するための図である。
図9図9は、第1爪のオフセットを説明するための図である。
図10図10は、ロック装置の動作を説明するための図である。
図11図11は、姿勢保持装置の変形例を示す斜視図である。
図12図12は、ドラムブレーキを用いる変形例を説明するための斜視図である。
図13図13は、ドラムブレーキの動作を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る姿勢保持装置について説明する。姿勢保持装置は、使用者の関節の周囲の部位に装着され、使用者が関節を任意の角度に屈曲させた状態で使用者の身体を支持することができる。なお、姿勢保持装置は、下肢や腕等の任意の関節に適用することができる。例えば、姿勢保持装置によれば、手術中において、軽く腰を落とした姿勢で使用者の下肢を支持したり、樹木に対して使用者が腕を上げた状態で使用者の姿勢を支持したりすることができる。
【0017】
図1は、姿勢保持装置の一例を示す斜視図である。姿勢保持装置1は、連結フレーム2と、第1フレーム3と、第2フレーム4と、ロック装置5と、第3フレーム6とを備えている。第1フレーム3、第2フレーム4、ロック装置5及び第3フレーム6は、連結フレーム2を介して左右対称に2組接続されている。なお、使用者(図示せず)から見た方向を図1に矢印で示している。本実施形態では、第1フレーム3は使用者の大腿(太もも)に装着され、第2フレーム4は使用者の小腿(ふくらはぎ)に装着され、第3フレーム6は使用者の足に装着される。第1フレーム3と第2フレーム4との接続箇所は回動可能であり、接続箇所にはロック装置5が接続されている。また、第2フレーム4と第3フレーム6との接続箇所も回動可能である。なお、ロック装置5を操作するための切替レバー(操作部)59は、左右の一方(図1においては左側)に設けられると共に左右のロック装置5とワイヤー58を介して接続され、左右のロック装置5が同時に操作されるものとする。
【0018】
第1フレーム3は、使用者の側方に配置された側方部31と、使用者の後方に接続され、使用者が腰を落とした状態においては使用者の太ももを下方から支持する後方部32と、使用者の太ももに巻き付ける2つのベルト部33とを含む。第2フレーム4は、使用者の側方に配置された側方部41と、使用者のふくらはぎに巻き付ける2つのベルト部42とを含む。なお、第2フレーム4は、使用者の前方に接続され、使用者が膝を曲げた状態においては使用者のすねを下方から支持する前方部(図示せず)をさらに含むようにしてもよい。第1フレーム3の側方部31の下部と第2フレーム4の側方部41の上部とは、回動可能に接続されている。また、第3フレーム6は、使用者の足の外側の側方に配置された第1側部61と、使用者の足裏を支持する底部62と、使用者の足の内側の側方に配置された第2側部63と、かかと側に掛けるベルト部64と、底部62との間でつま先を挟持する前方部65とを含む。第2フレーム4の側方部41の下部と第3フレーム6の第1側部61の上部とも、回動可能に接続されていてもよい。
【0019】
ロック装置5は、ワイヤー58を介して切替レバー59と接続されている。なお、図1においては、ワイヤー58は、ワイヤーチューブに被覆されている。切替レバー59に対する使用者の操作は、ワイヤー58を介してロック装置5本体に伝達され、ロック装置5は、第1フレーム3と第2フレーム4との回動を許容する回動状態と、回動を規制する規制状態とに切り替えられる。回動状態においては、使用者が関節を屈曲させる方向への回動も、関節を伸展(又は部位によっては背屈)させる方向への回動も許容される。一方、規制状態においては、使用者が関節を屈曲させる方向への回動が規制され、関節を伸展させる方向への回動は許容される。本実施形態においては、ロック装置5は使用者の膝の関節に対応する位置に設けられ、規制状態においては膝を屈曲させる方向への回動が規制される。したがって、使用者は、膝を任意の角度に屈曲させた姿勢で体重を姿勢保持装置1に預け、その姿勢を保持することができる。
【0020】
図2は、ロック装置の一例を示す分解斜視図である。図2のロック装置5は、使用者の左脚側に装着される装置であり、使用者の右脚側に装着されるロック装置5は左右が反転した構成となる。ロック装置5は、減速機(増速機)51と、カバー52と、ラチェット機構53を含む規制手段(53~57)とを備える。規制手段は、ラチェット機構53と、第1プレート54と、第2プレート55と、第3プレート56と、ストッパー57とを含む。また、図1に示したワイヤー58は、C字状のストッパー57の両端周辺に接続される。図2に示すように、ワイヤー58は1本のワイヤーであり、ストッパー57の周囲に掛け渡されるものであってもよい。
【0021】
減速機51の構造は特に限定されず、平行軸歯車減速機等でもよいが、例えば遊星歯車減速機を用いることで、第1フレーム3及び第2フレーム4の回動軸と同軸のコンパクトな装置を実現できる。本実施形態においては、減速機51は遊星歯車機構を備えるものと
する。減速機51の本体は第1フレーム3に固定される。また、減速機51は、入力軸511と、出力軸512とを有する。入力軸511は、第2フレーム4に固定される。すなわち、減速機51の入力軸511には、第1フレーム3に対する第2フレーム4の回動が伝達される。また、出力軸512は、入力軸511の回転を増速して出力する。すなわち、減速機51の遊星歯車機構は、内歯車を第1フレーム3に固定し、遊星歯車の公転を伝達する遊星キャリアを入力とし、太陽歯車を出力としてもよい。また、減速機51の遊星歯車機構は、太陽歯車を第1フレーム3に固定し、遊星キャリアを入力とし、内歯車を出力としてもよい。また、減速機51の遊星歯車機構は、遊星キャリアを第1フレーム3に固定し、内歯車を入力とし、太陽歯車を出力としてもよい。なお、3つ目のパターンにおいては、他のパターンとは出力軸が回転する方向が逆になる。出力軸の回転方向に応じて、ラチェット機構53に含まれる歯や歯止め(爪)の向き等は適宜設計を変更することができる。また、出力軸512は、ラチェット機構53のラチェットホイール532及び第2プレート55のプレート本体551に接続され、これらと一体となって回転する。また、出力軸512は、後述する円形のプレート本体551および第2付勢部材553を介して第1プレート54の内側円盤部542と接続される。そして、第2付勢部材553は、出力軸512の回転を受けて回転し、内側円盤部542を回転させる。出力軸512の先端側は、段階的に径が小さくなっており、それぞれ異なる構成要素に設けられた対応する大きさの貫通孔に挿通されるようにしても良い。
【0022】
カバー52は、規制手段を収容する筐体であって、一対のベースプレート521、522と、これらのベースプレート521、522を離隔させた状態で接続するスペーサ523とを備える。本実施形態においては、ベースプレート521、522は矩形形状のプレートであるが、カバー52の形状は規制手段を収容可能なものであれば図示した例には限定されない。一方の第1ベースプレート521は、第1フレーム3と接続され、他方の第2ベースプレート522は、使用者を基準として左右の外側に配置される。そして、ベースプレート521、522の間に、規制手段の構成要素が収容される。第1ベースプレート521には、出力軸512を挿通させる貫通孔5211が形成され、貫通孔5211の内周部と出力軸512との間にはベアリング5212が配置される。第2ベースプレート522には、出力軸512の先端部が挿通される小径の貫通孔5221が形成されている。出力軸512の先端部と小径の貫通孔5221の間にもベアリングを設けても良い(図示せず)。スペーサ523は、ベースプレート521、522の四隅にそれぞれ設けられており、ベースプレート521、522を略平行に接続する。
【0023】
ラチェット機構53は、ラチェット爪531と、ラチェットホイール532とを備える。ラチェット爪531およびラチェットホイール532は、第1フレーム3と第2フレーム4との回動を規制するための部材である。
【0024】
ラチェットホイール532は、第1ベースプレート521に隣り合う位置に配置されており、減速機51の出力軸512と接続される。ラチェットホイール532の中央には、軸孔5321が形成されている。軸孔5321には、例えば出力軸512に設けられるキーと係合するキー溝が設けられ、出力軸512の回転が伝達される。ラチェットホイール532の外周部には、外周歯5322が形成されている。外周歯5322は、使用者が関節を屈曲させる場合において出力軸512が回動する方向(以下「屈曲方向」と呼ぶ)に傾斜しつつ径方向外側へ広がるように形成されている。
【0025】
ラチェット爪531は、ラチェットホイール532の径方向外側に配置されており、基端部5311が、回動軸5312を中心に回動可能になるように第1ベースプレート521に取り付けられている。本実施形態では、ラチェット爪531はラチェットホイール532の周囲に3つ配置されている。ラチェット爪531は、使用者が姿勢保持装置1に体重を預けた場合に保持できる強度を担保できることが望ましいが、その数は3つには限定
されない。ラチェット爪531は、基端部5311から先端部5313に向かう方向が、屈曲方向とは逆になるように取り付けられている。また、ラチェット爪531は、先端部5313付近から回動軸5312と平行に突出する第2ガイドバー5314を有する。第2ガイドバー5314は、後述する第3プレート56のガイドホールに挿入され、第3プレート56の回動に応じて、ラチェット爪531の先端部5313を旋回させる。すなわち、ラチェット爪531は、基端部5311を中心として回動し、先端部5313がラチェットホイール532と係合する係合位置と係合しない非係合位置との間で変位する。ラチェット爪531がラチェットホイール532の外周歯5322と係合した状態において、ロック装置5は規制状態になる。なお、規制状態においても、ラチェット機構53は、使用者が関節を伸展させる方向への回動を許容する。
【0026】
規制手段の第1プレート54は、外周リング部541と、内側円盤部542と、第1固定部543と、第2固定部544と、端部がそれぞれ第1固定部543及び第2固定部544に接続される弾性部材545と、ベアリング546とを含む。外周リング部541は、リング状のプレートであり、内側円盤部542の径方向外側に配置される。内側円盤部542は、第2付勢部材553を介して後述する円形のプレート本体551(ひいては、出力軸512)に接続される円形のプレートである。内側円盤部542の中央に形成された貫通孔には、ベアリング546が取り付けられ、ベアリング546の内側には、出力軸512が挿入されている。すなわち、内側円盤部542と出力軸512とは相対的に回転可能になっている。また、プレート本体551及び第2付勢部材553を介して、且つプレート本体551及び第1爪552を介して(内側円盤部542の第1ガイドホール5421と第1爪の第1ガイドバー5523との幾何学的な拘束によって)、内側円盤部542には出力軸512の回転が伝達される。第1固定部543は、内側円盤部542に取り付けられる、例えば「C」字形状の部材であり、弾性部材545の一端を内側円盤部542に固定する。第2固定部544は、外周リング部541の一方の面に取り付けられる部材であり、弾性部材545の他端を外周リング部541に固定する。弾性部材545は、例えばトーションばねであり、一端が第1固定部543と接続され、他端が第2固定部544と接続される。すなわち、弾性部材545は、内側円盤部542と外周リング部541との間に掛け渡される。
【0027】
内側円盤部542は、第1ガイドホール5421を備えている。第1ガイドホール5421は、第2プレート55が備える第1爪552を、第3プレート56の内周歯563へ当接させる係止位置と当接させない非係止位置との間で移動させるための長孔である。第1ガイドホール5421は、屈曲方向に向かって径方向外側に向かうように傾斜して形成されている。第1ガイドホール5421の内部には、第1爪552の第1ガイドバー5523が挿入される。第1ガイドホール5421に挿入された第1ガイドバー5523は、使用者が切替レバー59を倒し関節を屈曲させる場合において出力軸512が回転すると、第1ガイドホール5421に沿って径方向外側に移動する。第1ガイドホール5421は、第1爪552の位置に対応するように、例えば3か所に形成されており、内側円盤部542の円周方向に所定の間隔をあけて配置されている。第1ガイドホール5421は、内側円盤部542の板厚方向に貫通する貫通孔であってもよいし、第1爪552側に開口する有底の凹部であってもよい。
【0028】
内側円盤部542の第1爪552側に対向する面(図示せず)には、第2付勢部材553の一端部を係止するための突部が形成されている。突部は、たとえばすり割り付き止めねじの端部を内側円盤部542から突出させて装着することで構成されている。確実に係止するためにすり割り付き止めねじを複数用いてもよい。なお、第2付勢部材553の他端は、第2プレート55の円形のプレート本体551に係止されている。
【0029】
外周リング部541は、中央に円形の貫通孔5411が設けられた円形のプレートであ
り、内側円盤部542の径方向外側に、同軸状に配置されている。外周リング部541は、内側円盤部542に対してベアリングを介して相対回転可能に設けられていてもよい。また、外周リング部541の外周部には、外周歯5412が形成されている。外周歯5412は、屈曲方向に向かって傾斜しつつ歯が径方向外側に広がるように形成されており、後述するストッパー57と歯合することで、外周リング部541の回転が規制される。なお、外周歯5412の形状は、外周リング部541の回転を規制するものであれば、特に限定されない。例えば、外周歯5412は、屈曲方向に向かって傾斜せず、径方向外側へ放射状に突出するものであってもよい。
【0030】
第2プレート55は、円形のプレート本体551と、第1爪552と、第2付勢部材553とを含む。プレート本体551は、その中心部に形成され、出力軸512が挿通される貫通孔5511と、第1プレート54側へと突出する支持ピン5512を備えている。プレート本体551は、出力軸512と共に回転するように接続されている。例えば、貫通孔5511には、出力軸512のキーと係合するキー溝が設けられていてもよい。
【0031】
第2プレート55の支持ピン5512は、第1爪552の基端部5521を回転可能に支持する。支持ピン5512は、円柱状であり、第1爪552と同数、円周方向に所定の間隔をあけて配置されている。プレート本体551の第1爪552側に対向する面には、第2付勢部材553の他端を係止するための突部が形成されているものとする。突部は、第1爪552の回動と干渉しない位置に設けられる。なお、第2付勢部材553の一端は、上述した通り、内側円盤部542の第1爪552側に対向する面に形成された突部に係止されている。これら突部も第2付勢部材553を確実に係止するために複数用いても構わない。
【0032】
第1爪552は、第1プレート54とプレート本体551との間に配置されており、プレート本体551の第1プレート54に対向する面に取り付けられている。第1爪552は、その基端部5521に設けられた貫通孔に支持ピン5512が挿入され、プレート本体551に回動可能に取り付けられている。また、回動することにより、第1爪552は、その先端部5522がプレート本体551の外周より径方向外側に向けて出没可能になっている。すなわち、第1爪552は、その先端部5522がプレート本体551の外周よりも径方向内側に収容され、第3プレート56の内周歯563に係止されない非係止位置と、先端部5522がプレート本体551の外周より径方向外側に向けて出没し、第3プレート56の内周歯563に係止される係止位置との間で移動する。第1爪552の基端部5521から先端部5522へ向かう方向は、屈曲方向と同一である。
【0033】
また、第1ベースプレート521には、第1付勢部材5213が接続される。第1付勢部材5213は、ロック装置5が回動状態にあるときに、第2ガイドホール564がラチェット爪531の先端部5313をラチェット非係止位置(ラチェットホイール532を係止しない位置)に戻すように第3プレート56を回転させる方向に付勢する(第3プレート56とラチェット爪531とを相対移動させる)。第1付勢部材5213は、例えば引張コイルばねである。また、第1付勢部材5213は、ラチェットホイール532の側方に配置され、第3プレート56と第1ベースプレート521との間に掛け渡される。例えば、第1付勢部材5213の一端側は第1ベースプレート521に固定され、他端側は第3プレート56の表面に固定される。
【0034】
第2付勢部材553は、ロック装置5が回動状態にあるときに、第1ガイドホール5421が第1爪552の先端部5522を非係止位置に戻すように、内側円盤部542を回転させる方向に付勢する。第2付勢部材553は、例えば、内側円盤部542とプレート本体551との間に掛け渡されたトーションばねである。第2付勢部材553は、出力軸512を囲うように装着され、一端側が内側円盤部542の突部(図示せず)に係止され
、他端側がプレート本体551の突部(図示せず)に係止されている。第2付勢部材553は、屈曲方向とは反対に、内側円盤部542を付勢する。規制手段を規制状態から回動状態に切り替えると、内側円盤部542が回転して、第1ガイドホール5421の径方向内側に第1ガイドバー5523が当接する。これにより、第1爪552の先端部5522が内側に没入して、第1爪552が非係止位置となる。すなわち、第2付勢部材553は、第1ガイドホール5421が第1爪552の先端部5522を非係止位置に戻すように内側円盤部542と第2プレート55のプレート本体551とを相対回転させる。
【0035】
第3プレート56は、第2プレート55とラチェット機構53との間に配置される。第3プレート56は、その中央部に貫通孔561が設けられた円形のプレートであり、貫通孔561と出力軸512とはベアリング562を介して回転可能に接続されている。また、第3プレート56は、第2プレート55側に、貫通孔561と同心の円形の凹部が形成され、凹部の内周には内周歯563が形成されている。内周歯563は、第1爪552と係合し得る。内周歯563は、屈曲方向に向かうように歯が傾斜しており、第1爪552と係合することで第3プレート56を回動させる。また、第3プレート56は、第2ガイドホール564を備える。第2ガイドホール564は、ラチェット爪531をラチェットホイール532の外周歯5322へ当接させる係止位置と当接させない非係止位置との間で移動させるための長孔(貫通穴であっても良いし、くぼみであっても良い)である。第2ガイドホール564は、屈曲方向に向かって径方向外側に向かうように傾斜して形成されている。第2ガイドホール564の内部には、ラチェット爪531の第2ガイドバー5314が挿入される。
【0036】
ストッパー57は、C字状の部材である。ストッパー57は、その内側に内周歯571を有し、内周歯571が第1プレート54の外周リング部541の外周歯5412と係合することでその回転を規制する。ストッパー57は、その外側に、ワイヤー58を通過させる溝部572を有し、C字状の端部の周辺にワイヤー58が接続される。また、ストッパー57は、引張コイルばね等の弾性部材573を介して、四方がそれぞれカバー52のスペーサ523に接続され、第1プレート54の外周リング部541の径方向外側に配置される。
【0037】
ワイヤー58は、切替レバー59とストッパー57とを連結する部材である。ワイヤー58は、切替レバー59とストッパー57の溝部572に掛け渡され、使用者が切替レバー59を操作するとストッパー57を引っ張り、ストッパー57を所定方向に変位させる。なお、ストッパー57等の形状は、外周リング部541の回転を規制できるものであれば、図示したものには限定されない。例えば、ストッパー57及びワイヤー58に代えて、例えばタイミングベルトのような歯付ベルトを配置し、使用者の操作に応じて外周リング部541と歯合可能にしてもよい。
【0038】
図3から図10は、姿勢保持装置の動作を説明するための模式的な図である。図3及び図4においては、ロック装置5の内部を示している。なお、ラチェット爪531は、1つのみ示している。図3の姿勢保持装置1は、ロック装置5が、第1フレーム3と第2フレーム4との回動を許容する回動状態になっている。回動状態においては、使用者は自由に関節を屈曲及び伸展させることができる。また、回動状態においては、減速機51(図示せず)の出力軸512は、入力軸511に入力された関節の回動量を所定の比率で増速させて、第1プレート54の内側円盤部542等を回転させる。
【0039】
図4の姿勢保持装置1は、使用者が切替レバー59を操作し、ワイヤー58を引いた状態を示している。ワイヤー58が切替レバー59の方向に引かれることにより、ワイヤー58と接続されたストッパー57も切替レバー59の方向に変位する。そして、ストッパー57の内周面が外周リング部541を押圧し、内周歯571と外周歯5412とが係合
して、外周リング部541がストッパー57に固定される。この状態で使用者がさらに関節を屈曲させると、減速機51の出力軸512に接続された第2プレート55のプレート本体551が回動しようとする。
【0040】
図5は、第1プレート54の一例を示す正面図である。上述した通り、外周リング部541に固定された第2固定部544と、内側円盤部542に固定された第1固定部543とは、例えばトーションばねである弾性部材545を介して接続されている。
【0041】
図6から図10は、ロック装置の動作を説明するための図である。図6は、外周リング部541がストッパー57によって固定された時の状態を示している。図7は、第1ガイドホール5421に挿入された第1爪552の第1ガイドバー5523が、減速機51の出力軸512(ひいては、第2プレート55のプレート本体551)の回転と、内側円盤部542に設けられた第1ガイドホール5421との幾何学的な拘束とにより第1ガイドホール5421に沿って径方向外側に案内され、第1爪552の先端部5522が第3プレート56の内周歯563の歯先円(一点鎖線)まで到達したときの状態を示している。外周リング部541がストッパー57によって固定され、内側円盤部542が停止することにより、第1爪552の先端部5522は、径方向外側に突出する。
【0042】
図8は、第2プレート55の第1爪552が、図7の状態からさらに径方向外側に突出し、第3プレート56の内周歯563に当接した状態を示している。第2プレート55の第1爪552が、第3プレート56の内周歯563に当接した後は、第3プレート56の内周歯563により第2プレート55の第1爪552は径方向外側に突出することが出来ない。この状態から出力軸512が屈曲方向にさらに回転しようとすると外周リング部541と内側円盤部542とは弾性部材545で結合されているので、弾性部材545の弾性変形により第2プレート55の第1爪552は内側円盤部542とともに回転し、第1爪552の先端部5522は第3プレート56の内周歯563と噛合い、第2プレート55の第1爪552の回転により第3プレート56が回転する。なお、3つの第1爪552は、周方向に等間隔ではなくオフセットされて設けられている。したがって、3つの第1爪552の先端部5522が径方向外側に突出すると、第3プレート56の内周歯563に近いいずれかの第1爪552の先端が、第3プレート56の内周歯563に当接し、その後、弾性部材545の弾性変形により第1爪552が内側円盤部542とともに回転し、第3プレート56を回転させる。図8の例では、上側に位置する第1爪552が第3プレート56と噛合っている。
【0043】
図9は、第1爪552のオフセットを説明するための図である。仮に複数の第1爪552が円周上において等間隔に配置されている場合、第1爪552が第3プレート56の内周歯563と係合するまでに最大で内周歯563の1歯分回動する必要がある。図9においては、1歯を3等分する間隔で平行に配置された破線を、第1爪552の先端部5522付近に示している。図9において、内周歯563の1歯分の1/3ずつ位相をオフセットして3つの第1爪552を配置している。このように複数の第1爪552をオフセットして配置することにより、使用者が切替レバー59を操作してからロック装置5が動作を完了するまでの遊びを小さくすることができる。なお、第1爪552の数は3つには限定されず、互いにオフセットされた第1爪552の数を増やして遊びを減少させるようにしてもよい。
【0044】
図10は、ラチェット爪531がラチェットホイール532の外周歯5322に係止された状態を示している。第3プレート56の内周歯563と第1爪552とが係合した後に、さらに減速機51の出力軸512が回動すると、第3プレート56も回動する。ここで、第3プレート56には、第2ガイドホール564が形成されており、第3プレート56が回転すると、第2ガイドバー5314が第2ガイドホール564との幾何学的な拘束
によって径方向内側に移動し、ラチェット爪531が回動する。これによって、ラチェット爪531の先端部5313がラチェットホイール532の外周歯5322に係止される。なお、第2ガイドホール564は、その径方向内側端に第2ガイドバー5314が当接したときに、ラチェット爪531の先端部5313がラチェットホイール532の外周歯5322(好ましくは歯底)に当接するように設けられている。
【0045】
ラチェットホイール532の外周歯5322の歯数は、第3プレート56の内周歯563の歯数の倍数であって、第1爪552の個数倍とすることが好ましい。本実施形態では、ラチェットホイール532の外周歯5322の歯数は、第3プレート56の内周歯563の歯数の3倍になっている。このようにすれば、規制手段(53~57)は、ラチェット爪531とラチェットホイール532の外周歯5322とが適切なタイミングで歯合するように、ラチェット爪531の回動とラチェットホイール532の回動とを同期させることができる。
【0046】
ここで、ラチェットホイール532がラチェット爪531に係止されると、減速機51の回転は、使用者が関節を屈曲させる方向に対して規制されることになる(規制状態)。よって、例えば使用者が膝を屈曲させた中腰の姿勢で切替レバー59を操作すると、姿勢保持装置1は関節の角度を保持する規制状態となり、使用者の身体を支持することができる。また、規制状態において使用者が動作を解除する方向に切替レバー59を操作したとしても、姿勢保持装置1に使用者が体重を預けている間は、ラチェット爪531とラチェットホイール532とが係合し、規制状態が維持される。
【0047】
一方、規制状態を解除するためには、使用者は関節を伸展させる方向に動かせばよい。減速機51が逆方向に回転すると、当該方向には回動が規制されてないためラチェットホイール532も回動する。このとき、第2ガイドバー5314が第2ガイドホール564との幾何学的な拘束によって径方向外側に移動し、ラチェット爪531とラチェットホイール532との係止が解除される。このとき、第1付勢部材5213によって、ラチェット爪531の先端部5313はラチェット非係止位置に戻される。また、第2付勢部材553によって、第1爪552の先端部5522はリング非係止位置(第3プレート56の内周歯563に係止されない非係止位置)に戻される。
【0048】
<効果>
姿勢保持装置1は、機械式のロック装置5によって、使用者の関節部分の回動状態と規制状態を切り替えることができる。また、姿勢保持装置1は、動作に電力を必要としないため、装置の構成は複雑にならず、メンテナンスも容易である。また、使用者が関節を伸展させることで規制状態を解除でき、操作が容易である。
【0049】
また、減速機51により使用者が関節を回動させる動作を増速して規制手段(53~57)に出力することができる。姿勢保持装置1は、ラチェット機構53が備えるラチェットホイール532の外周歯5322とラチェット爪531とが係合することで回動を規制するため、仮にラチェットホイール532の歯数が同一である場合、ラチェットホイール532の回転速度が速いほどより短い周期でラチェットホイール532とラチェット爪531とが係合し得るタイミングが繰り返されることになる。すなわち、使用者が操作してから回動が規制されるまでの遊びが小さくなる。したがって、姿勢保持装置1の動作の精度を向上させることができるといえる。特に姿勢保持装置1が使用者の下肢を支持する場合、動作の遊びが大きいと使用者が所望のタイミングで装置を動作させることができずバランスを崩すおそれがある。上述した姿勢保持装置1によれば、使用者の操作後、速やかに回動状態から規制状態へ切り替えることができ、所望の姿勢で姿勢保持装置1の形状を保持させることができる。
【0050】
上述した姿勢保持装置1は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、減速機51は、遊星歯車減速機には限定されない。減速機51は、平行軸歯車減速機やハーモニックドライブ(登録商標)減速機等でもよい。例えば、ハーモニックドライブ減速機であれば、バックラッシュが少ない装置を実現できる。また、前記実施形態では、切替スイッチは、切替レバー59を備えて構成したが、これに限定されるものではない。たとえば、ボタン式のスイッチ等の他の形式のスイッチを用いてもよい。また、上述した爪や歯の数は図示した例には限定されない。
【0051】
図11は、姿勢保持装置の変形例を示す斜視図である。なお、図11においては、上述した実施形態と同一の構成要素には対応する符号を付し、説明を省略する。姿勢保持装置1Aは、連結フレーム2Aと、第1フレーム3と、第2フレーム4と、ロック装置5と、第3フレーム6とを備えている。本変形例においては、連結フレーム2Aは、使用者の腰部の後方及び側方を覆う。また、連結フレーム2Aと第1フレーム3との接続箇所は回動可能であり、当該接続箇所にもロック装置5が接続されている。また、第2フレーム4と第3フレーム6との接続箇所にもロック装置5が接続されている。なお、ロック装置5の数は、適宜増減することができる。また、ロック装置5を操作するための切替レバー(操作部)59は、左右の一方に設けられると共にすべてのロック装置5とワイヤー58を介して接続され、左右のロック装置5が同時に操作されるものとする。このような姿勢保持装置1Aによれば、使用者の膝だけでなく股関節や足首についても任意の角度で保持できるようになる。なお、複数のロック装置5のうち、一部を同時にロックできるようにしたり、各々のロック装置5を個別にロックできるようにしてもよい。このような場合は、複数の切替レバー59を設け、同時にロックするロック装置は、同一の切替レバー59に接続する。また、姿勢保持装置1は、第1フレーム3、第2フレーム4、ロック装置5及び切替レバー59を1つずつ含み、例えば片脚のみ、片腕のみのように使用者が左右の半身に装着するものであってもよい。図11の例についても、左右対称でなく、使用者が左右の半身に装着するものとしてもよい。
【0052】
また、ロック装置5は、図2に示したものには限定されない。例えばラチェット機構53に代えて、ドラムブレーキのようにブレーキシューをドラムに押し当てて任意の角度で回動を規制可能な規制手段を備えるものとしてもよい。
【0053】
図12は、ドラムブレーキを用いる変形例を説明するための斜視図である。本変形例では、上述した実施形態のラチェット機構53、第1プレート54、第2プレート55及び第3プレート56に代えて、ブレーキドラム533と、半円形ブレーキ534と、ガイドプレート535と、弾性部材536と、回転プレート537とを備えるものとする。なお、これらは、例えばブレーキドラム533が第1ベースプレート521に固定され、ガイドプレート535の外周が上述したストッパー57と係合し得るように配置される。ブレーキドラム533は、円形の部材であり、内周部に例えばウレタン材等の摩擦材(ブレーキライニング)を備えていてもよい。半円形ブレーキ534は、円形のブレーキドラム533内に収容される部材であり、ブレーキドラム533と接触し得る部分には、ブレーキシューを備えていてもよい。ブレーキドラム533及び半円形ブレーキ534は、接触することで摩擦により制動力を生じさせるブレーキとして機能する。また、円形のブレーキドラム533と同軸状に、回転軸5331が配置されている。回転軸5331は、上述した実施形態における出力軸512と接続され、一体となって回転する。回転軸5331は、その軸方向に対し垂直に延びるアーム5332を備える。アーム5332は、回転軸5331に対して垂直に取り付けられた棒状体であり、ブレーキドラム533内を、回転軸5331の回転に伴って旋回する。
【0054】
半円形ブレーキ534は、図12の例では概ね半円形状であって、円の中心付近にアーム5332の先端部を収容可能な矩形の凹部5341が設けられ、半円形ブレーキ534
が回転軸5331と共に回転する。また、半円形ブレーキ534は、回転軸5331の軸方向に突出するガイドピン5342が2つずつ形成されている。なお、半円形ブレーキ534の外形は、ブレーキドラム533内を回転できるものであれば特に半円形には限定されない。
【0055】
ガイドプレート535は、円形のプレートである。ガイドプレート535は、貫通孔5351と、4つのガイドホール5352とを有する。貫通孔5351にはベアリングが設けられ、回転軸5331が貫通している。4つのガイドピン5342は、ガイドプレート535に設けられた4つのガイドホールに挿入される。ガイドホール5352は長方形の凹部(貫通穴であってもよい)であり、4つのガイドホール5352は各々の長手方向が同一方向を向くように配置されている。図13に破線の矩形でガイドホール5352を示すように、1方の半円形ブレーキ534に設けられたガイドピン5342が挿入されるガイドホール5352と、他方の半円形ブレーキ534に設けられたガイドピン5342が挿入されるガイドホール5352とは、ガイドホール5352の長手方向に沿って互いに反対方向に偏った位置に設けられている。また、1方の半円形ブレーキ534に設けられたガイドピン5342が挿入されるガイドホール5352と、他方の半円形ブレーキ534に設けられたガイドピン5342が挿入されるガイドホール5352とは、回動状態においては、ガイドピン5342に対し長手方向に沿って互いに反対方向にスペースを有する。また、ガイドプレート535は、その外周部に外周歯5353を備え、上述した実施形態におけるストッパー57と係合し得る。また、ガイドプレート535は、半円形ブレーキ534と反対側の面に突部5354を備え、突部5354は弾性部材536の一端と接続される。なお、ガイドプレート535の形状は、ガイドホール5352と外周歯5353と、突部5354とを有するものであれば特に限定されない。また、突部5354は弾性部材536を確実に係止するために複数用いても構わない。
【0056】
弾性部材536は、例えばトーションばねであり、その一端がガイドプレート535の突部5354に接続される。また、弾性部材536の他端は、回転プレート537に接続される。
【0057】
回転プレート537は、回転軸5331と接続される貫通孔5371を有し、回転軸5331と共に回転する部材である。例えば、貫通孔5371には、回転軸5331のキーと係合するキー溝が設けられていてもよい。回転プレート537のガイドプレート535側には、弾性部材536の他端と接続される突部5372が設けられている。なお、突部5372は弾性部材536を確実に係止するために複数用いても構わない。
【0058】
図13は、ドラムブレーキの動作を説明するための平面図である。図13の上段は回動状態を示し、図13の下段は規制状態を示している。また、図13の上段には、破線の矢印で上述した実施形態における屈曲方向を示している。本変形例で説明したドラムブレーキは、上述した実施形態の回動状態においては、出力軸512に接続された回転軸5331及び回転プレート537が一体となって回転する。また、回転プレート537の回転に伴い、弾性部材536を介して回転プレート537に接続されたガイドプレート535も回転する。また、半円形ブレーキ534のガイドピン5342は、ガイドプレート535のガイドホール5352に挿入され、回動状態においては回転軸5331と共に屈曲方向及びその逆方向に回転し得る。
【0059】
使用者が切替レバー59を操作すると、ストッパー57によってガイドプレート535の回転が停止させられる。また、ガイドプレート535の回転が停止すると、2つの半円形ブレーキ534は、アーム5332の回転と、ガイドホール5352よるガイドピン5342の移動方向の制限とに基づいて、ガイドホール5352の長手方向に沿って互いに反対方向に移動し、ブレーキドラム533と接触する(図13:下段)。また、半円形ブ
レーキ534とブレーキドラム533とが接触した後は、切替レバー59の操作を解除しても、屈曲方向へ使用者の自重等により回転モーメントが回転軸5331に作用している間は、回転軸5331に接続されたアーム5332により半円形ブレーキ534がブレーキドラム533に押し付けられ、その押しつけ力により作用する摩擦力により回転軸5331の回転は規制される。本変形例においても、減速機51によって入力軸511の回転を増速して出力軸512を回転させることで、半円形ブレーキ534がブレーキドラム533に接触するまでに必要な、使用者の関節の回転角度を減少させることができる。よって、減速機を用いることによって、回動状態から規制状態へ遷移するまでのいわゆる遊びを減少させ、姿勢保持装置1の動作の精度を向上させることができる。
【0060】
規制状態を解除する場合は、使用者は関節を伸展させればよい。この場合、回転軸5331が屈曲方向と反対へ回転すると共に、アーム5332によってブレーキドラム533へ押し付けられていた半円形ブレーキ534は、図13の上段に示す状態へ戻る。また、ガイドプレート535は、切替レバー59の操作が解除されているため、ストッパー57との係合も解除され、弾性部材536を介して接続される回転プレート537と共に回転するようになる。以上のように、姿勢保持装置1は、上述した規制手段(53~57)に代えて、図12及び図13に示した構成を含むものであってもよい。なお、凹部5341と、アーム5332とは、面で接触するような形状にしてもよい。また、半円形ブレーキ534は、ブレーキドラム533と接触し得る部分に、摩擦力を増大させるために凹凸部を設けてもよい。同様に、ブレーキドラム533の内周部にも、摩擦力を増大させるために凹凸部を設けてもよい。
【0061】
また、使用用途に応じて使用者が関節を伸展させる方向への回動を規制するようにしてもよい。例えば使用者の腕に装着する姿勢保持装置1の場合、使用者が関節を伸展させる方向への回動を規制するようにしてもよい。すなわち、規制状態において、使用者が関節を伸展させる方向への回動が規制され、関節を屈曲させる方向への回動は許容されるようにしてもよい。なお、回動状態においては、使用者が関節を屈曲させる方向への回動も、関節を伸展させる方向への回動も許容される。このようにすれば、斜め前方へ向かって腕を伸ばした状態で作業を行う場合に、肘関節に装着し前腕を支持する装置や、上腕を上げた状態で作業を行う場合に、肩関節に装着し上腕を支持する装置を実現することができる。なお、姿勢保持装置1が複数のロック装置5を含む場合は、使用者が関節を屈曲させる方向への回動を規制するロック装置5と、使用者が関節を伸展させる方向への回動を規制するロック装置5とを含むものであってもよい。なお、動作を規制する方向は、「屈曲」、「伸展」に限らず、「内転」、「外転」、その他の動作におけるいずれかの方向であってもよい。
【0062】
さらに、ドラムブレーキを用いる機構の回動状態において、4つのガイドピン5342が、ガイドプレート535に設けられた4つのガイドホール5352の長手方向中央にそれぞれ配置されるように、4つのガイドホール5352を大きくしてもよい。回転軸5331の回転が屈曲方向および伸展方向に弾性部材536を介して確実に伝わるように、ガイドプレート535に複数の突部5372、ガイドプレート535に複数の突部5354を設けるなどをしてもよい。これにより、使用者が切替レバー59を操作した後、2つの半円形ブレーキ534は、「屈曲」、「伸展」のいずれの方向においてもブレーキドラムと接触する方向に動き、「屈曲」、「伸展」のいずれの方向においても回動を規制することが可能になる。
【0063】
実施形態及び変形例に記載した内容は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせたり、変更したりすることができる。
【符号の説明】
【0064】
1、1A:姿勢保持装置
2、2A:連結フレーム
3:第1フレーム
4:第2フレーム
5:ロック装置
51:減速機
511:入力軸
512:出力軸
52:カバー
521:第1ベースプレート
522:第2ベースプレート
523:スペーサ
53:ラチェット機構
531:ラチェット爪
5313:先端部
5314:第2ガイドバー
532:ラチェットホイール
5321:軸孔
5322:外周歯
54:第1プレート
541:外周リング部
5412:外周歯
542:内側円盤部
5421:第1ガイドホール
543:第1固定部
544:第2固定部
545:弾性部材
55:第2プレート
551:プレート本体
5512:支持ピン
552:第1爪
5522:先端部
5523:第1ガイドバー
553:第2付勢部材
56:第3プレート
563:内周歯
564:第2ガイドホール
57:ストッパー
571:内周歯
58:ワイヤー
59:切替レバー
6:第3フレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13