(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130234
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】医療用管状体搬送装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/95 20130101AFI20230912BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
A61F2/95
A61M25/00 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034789
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA14
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB10
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB19
4C267BB20
4C267BB26
4C267BB31
4C267BB39
4C267BB40
4C267BB43
4C267BB63
4C267CC07
4C267GG02
4C267GG04
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG09
4C267GG21
4C267GG22
4C267GG34
4C267HH08
4C267HH17
(57)【要約】
【課題】ガイドワイヤに対する追従性が良好で、しかもガイドワイヤとの摩擦抵抗を低減可能な医療用管状体搬送装置を製造できる方法を提供する。
【解決手段】医療用管状体を体内に搬送する医療用管状体搬送装置の製造方法であって、チューブの内腔に、第1芯材部を配する工程と、前記チューブの遠位端部の外側に筒状部材を配する工程と、前記チューブの遠位端部と前記筒状部材を固定する工程と、前記第1芯材部よりも細い第2芯材部を、前記筒状部材の少なくとも遠位端部に配する工程と、前記筒状部材の遠位端部における内径を縮径させる工程と、を含む医療用管状体搬送装置の製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用管状体を体内に搬送する医療用管状体搬送装置の製造方法であって、
チューブの内腔に、第1芯材部を配する工程と、
前記チューブの遠位端部の外側に筒状部材を配する工程と、
前記チューブの遠位端部と前記筒状部材を固定する工程と、
前記第1芯材部よりも細い第2芯材部を、前記筒状部材の少なくとも遠位端部に配する工程と、
前記筒状部材の遠位端部における内径を縮径させる工程と、
を含む医療用管状体搬送装置の製造方法。
【請求項2】
前記筒状部材の遠位端部は、該筒状部材の遠位端から長軸方向に15mmまでの領域である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記筒状部材は、近位側筒状部材および遠位側筒状部材で構成されており、
前記チューブの内腔に、前記第1芯材部を配する工程と、
前記チューブの遠位端部の外側に前記近位側筒状部材を配する工程と、
前記チューブの遠位端部と前記近位側筒状部材を固定する工程と、
前記近位側筒状部材よりも遠位側に前記遠位側筒状部材を配する工程と、
前記近位側筒状部材と前記遠位側筒状部材を固定する工程と、
前記第1芯材部よりも細い第2芯材部を、前記遠位側筒状部材の少なくとも遠位端部に配する工程と、
前記遠位側筒状部材の遠位端部における内径を縮径させる工程と、
を含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記遠位側筒状部材の遠位端部は、該遠位側筒状部材の遠位端から長軸方向に15mmまでの領域である請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記遠位側筒状部材の最大外径は、前記近位側筒状部材の最大外径よりも小さい請求項3または4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1芯材部および前記第2芯材部を有する一の芯材を用いる請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記一の芯材は、前記第1芯材部よりも遠位側に前記第2芯材部を有しており、
前記一の芯材を遠位側から近位側へ移動させることにより、前記第2芯材部を前記遠位端部に配する請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記一の芯材は、前記第1芯材部よりも近位側に前記第2芯材部を有しており、
前記一の芯材を近位側から遠位側へ移動させることにより、前記第2芯材部を前記遠位端部に配する請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第1芯材部を有する第1芯材と、前記第2芯材部を有する第2芯材を準備し、
前記第1芯材部よりも細い第2芯材部を、前記筒状部材の少なくとも遠位端部に配する工程に先立って、
前記チューブの内腔から前記第1芯材を抜去する工程、
を含む請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項10】
前記第1芯材部を有する第1芯材と、前記第2芯材部を有する第2芯材を準備し、
前記第1芯材部よりも細い第2芯材部を、前記遠位側筒状部材の少なくとも遠位端部に配する工程に先立って、
前記チューブの内腔から前記第1芯材を抜去する工程、
を含む請求項3~5のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用管状体搬送装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体内に医療用管状体を搬送し、配置する最小侵襲治療技術が開発されている。医療用管状体としては、例えば、ステント、ステントグラフト、閉塞具、注入カテーテル、プロテーゼ弁等が用いられている。これらのうちステントは、一般に、体内管腔が狭窄または閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するために用いられる医療用管状体である。
【0003】
医療用管状体は、搬送装置を用い、体内管腔を通して体内に搬送される。搬送装置は、外側チューブを備えており、この外側チューブの内腔に医療用管状体を保持させた状態で、体内管腔に挿入される。体内の所定位置に搬送された医療用管状体は、外側チューブの内腔から解放されることによって、体内の所定位置に配置(留置)される。
【0004】
搬送装置を用いて体内に医療用管状体を搬送するにあたっては、まず、体内管腔にガイドワイヤを通し、次に、ガイドワイヤに沿って医療用管状体搬送装置の先端部が病変部に到達するまで挿入する。しかし、このようにガイドワイヤを先行させていても、体内管腔内に事前に留置されているステントや、体内管腔の狭窄部や、体内管腔の急な屈曲部などにより、医療用管状体搬送装置が進行できず、ガイドワイヤに対する追従性が悪くなることがある。
【0005】
ガイドワイヤに対してカテーテル(搬送装置)の追従性を向上させたカテーテルが特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されているカテーテルは、その先端部の内径が狭められるようにテーパー状に縮径されている。これにより、先端部内周とガイドワイヤ外周とのクリアランスが小さくなり、ガイドワイヤがカテーテルの先端部において偏心せず、がたつくことが防止されている。その結果、ガイドワイヤに対するカテーテルの追従性が向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、カテーテルの先端部には、熱加工が容易でかつ高い柔軟性を発現させるための樹脂が用いられる。柔軟性を発現させるための樹脂は、一般に、粘着性(タック性)が高いため、先端部全体の内径を狭めるようにテーパー状に縮径すると、先端部とガイドワイヤとの接触面積が大きくなるため、それに伴い摩擦抵抗が大きくなる。そのため、カテーテルの操作性が悪くなったり、先端部とガイドワイヤがスタックしてしまうことにより、手技の遅延に繋がることがあった。なお、上記特許文献1では、カテーテルの先端部に樹脂層を配し、この樹脂層の熱収縮率の違いを利用することによって先端部の内径を狭めるようにテーパー状に縮径しているが、カテーテルの先端部に用いる樹脂の種類が限定されてしまい、汎用性がなかった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガイドワイヤに対する追従性が良好で、しかもガイドワイヤとの摩擦抵抗を低減可能な医療用管状体搬送装置を製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、次の通りである。
[1] 医療用管状体を体内に搬送する医療用管状体搬送装置の製造方法であって、チューブの内腔に、第1芯材部を配する工程と、前記チューブの遠位端部の外側に筒状部材を配する工程と、前記チューブの遠位端部と前記筒状部材を固定する工程と、前記第1芯材部よりも細い第2芯材部を、前記筒状部材の少なくとも遠位端部に配する工程と、前記筒状部材の遠位端部における内径を縮径させる工程と、を含む医療用管状体搬送装置の製造方法。
[2] 前記筒状部材の遠位端部は、該筒状部材の遠位端から長軸方向に15mmまでの領域である[1]に記載の製造方法。
[3] 前記筒状部材は、近位側筒状部材および遠位側筒状部材で構成されており、前記チューブの内腔に、前記第1芯材部を配する工程と、前記チューブの遠位端部の外側に前記近位側筒状部材を配する工程と、前記チューブの遠位端部と前記近位側筒状部材を固定する工程と、前記近位側筒状部材よりも遠位側に前記遠位側筒状部材を配する工程と、前記近位側筒状部材と前記遠位側筒状部材を固定する工程と、前記第1芯材部よりも細い第2芯材部を、前記遠位側筒状部材の少なくとも遠位端部に配する工程と、前記遠位側筒状部材の遠位端部における内径を縮径させる工程と、を含む[1]に記載の製造方法。
[4] 前記遠位側筒状部材の遠位端部は、該遠位側筒状部材の遠位端から長軸方向に15mmまでの領域である[3]に記載の製造方法。
[5] 前記遠位側筒状部材の最大外径は、前記近位側筒状部材の最大外径よりも小さい[3]または[4]に記載の製造方法。
[6] 前記第1芯材部および前記第2芯材部を有する一の芯材を用いる[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 前記一の芯材は、前記第1芯材部よりも遠位側に前記第2芯材部を有しており、前記一の芯材を遠位側から近位側へ移動させることにより、前記第2芯材部を前記遠位端部に配する[6]に記載の製造方法。
[8] 前記一の芯材は、前記第1芯材部よりも近位側に前記第2芯材部を有しており、前記一の芯材を近位側から遠位側へ移動させることにより、前記第2芯材部を前記遠位端部に配する6に記載の製造方法。
[9] 前記第1芯材部を有する第1芯材と、前記第2芯材部を有する第2芯材を準備し、前記第1芯材部よりも細い第2芯材部を、前記筒状部材の少なくとも遠位端部に配する工程に先立って、前記チューブの内腔から前記第1芯材を抜去する工程、を含む[1]または[2]に記載の製造方法。
[10] 前記第1芯材部を有する第1芯材と、前記第2芯材部を有する第2芯材を準備し、前記第1芯材部よりも細い第2芯材部を、前記遠位側筒状部材の少なくとも遠位端部に配する工程に先立って、前記チューブの内腔から前記第1芯材を抜去する工程、を含む[3]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガイドワイヤに対する良好な追従性を発現しつつ、摩擦抵抗を最小限に抑えた医療用管状体搬送装置を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、チューブの遠位端部の外側に筒状部材を配した状態を示す断面図である。
【
図2】
図2は、筒状部材の遠位端部に第2芯材部を配した後、筒状部材の遠位端部における内径を縮径させた状態を示す断面図である。
【
図3】
図3は、チューブの遠位端部の外側に筒状部材を配した状態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、芯材の第2芯材部を筒状部材の遠位端部に配した状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、チューブの遠位端部の外側に筒状部材を配した状態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、芯材の第2芯材部を筒状部材の遠位端部に配した状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、チューブの遠位端部の外側に近位側筒状部材を配した状態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、遠位側筒状部材の遠位端部に第2芯材部を配した後、遠位側筒状部材の遠位端部における内径を縮径させた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る医療用管状体搬送装置の製造方法の実施形態は、チューブの内腔に、第1芯材部を配する工程(以下、第1芯材部配置工程ということがある)と、前記チューブの遠位端部の外側に筒状部材を配する工程(以下、筒状部材配置工程ということがある)と、前記チューブの遠位端部と前記筒状部材を固定する工程(以下、筒状部材固定工程ということがある)と、前記第1芯材部よりも細い第2芯材部を、前記筒状部材の少なくとも遠位端部に配する工程(以下、第2芯材部配置工程ということがある)と、前記筒状部材の遠位端部における内径を縮径させる工程(以下、内径縮径工程ということがある)と、を含むものである。太さの異なる芯材部を使い分けることによって、筒状部材の遠位端部における内径を、該筒状部材の遠位端部よりも近位側における内径よりも小さくすることができる。その結果、上記特許文献1のように、カテーテル(搬送装置)の先端部に用いる樹脂の種類によらず、ガイドワイヤに対する追従性が良好な医療用管状体搬送装置を製造できる。また、先端部全体の内径を狭めるようにテーパー状に縮径する必要がないため、先端部とガイドワイヤとの接触面積が過度に大きくならず、ガイドワイヤとの摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0013】
即ち、本発明に係る製造方法によれば、先端部内周とガイドワイヤ外周とのクリアランスは小さく、先端部より近位側においてはガイドワイヤ外周とのクリアランスが大きい医療用管状体搬送装置が得られる。筒状部材の遠位端部における内径とガイドワイヤ外周とのクリアランスは、筒状部材の遠位端部よりも近位側における内径とガイドワイヤ外周とのクリアランスよりも小さくなるため、筒状部材の遠位端部においては、ガイドワイヤは、筒状部材の遠位端部に保持されるため、ガイドワイヤのがたつきを防止できる。その結果、ガイドワイヤに対する追従性が向上する。一方、筒状部材の遠位端部よりも近位側においては、内径とガイドワイヤ外周とのクリアランスが大きいため、ガイドワイヤ操作時の摺動荷重が小さくなり、ガイドワイヤの操作性を高めることができる。また、先端部とガイドワイヤとの接触面積を小さくできるため、ガイドワイヤとの摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0014】
以下、実施形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施形態によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。以下では、近位側とは使用者(術者)の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対側(すなわち処置対象側)を指す。また、近位側から遠位側への方向を長軸方向または遠近方向と称する。
【0015】
[第1芯材部配置工程]
第1芯材部配置工程では、チューブの内腔に、第1芯材部を配する。チューブは、遠近方向に延在しており、該チューブの少なくとも遠位端部における内腔に、第1芯材部を配する。チューブの内腔に第1芯材部を配置することによって、次の工程以降の作業性が向上する。また、チューブの内腔が減少することを防止できる。
【0016】
チューブは、樹脂材料で形成されていればよい。チューブを形成する樹脂材料としては、公知の樹脂を用いることができ、例えば、ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリエーテルポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET)等のポリエステル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)等のフッ素系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;シリコーン系樹脂;天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。チューブを形成する樹脂材料としては、中でも、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、およびフッ素系樹脂が好適に用いられる。ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、およびフッ素系樹脂の少なくとも1種を含有していることにより、チューブの柔軟性が良好となる。
【0017】
第1芯材部は、芯材の一部を構成していてもよいし、芯材の全体を構成していてもよい。
【0018】
芯材の材料は特に制限されないが、例えば、銅、銀、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料を用いることができる。芯材は、中空であってもよいし、中実であってもよい。芯材の長軸方向に垂直な断面形状は、円形が好ましい。
【0019】
[筒状部材配置工程]
筒状部材配置工程では、チューブの遠位端部の外側に筒状部材を配する。筒状部材は、遠近方向に延在しており、内腔を有している。チューブの遠位端部に配された筒状部材は、先端チップとなり、先端チップが配されていることにより、体内管腔の狭窄部を医療用管状体搬送装置が通過しやすくなる。
【0020】
筒状部材の長軸方向に直交する断面の形状は、例えば、円形状、C字型、楕円形状、多角形状等が挙げられる。
【0021】
チューブの遠位端部の外側に筒状部材を配した状態を
図1に示す。
図1に示した矢印xは、遠近方向(長軸方向)を示しており、
図1に示した矢印の右側が近位側であり、矢印の左側が遠位側である。チューブ1の内腔には、第1芯材部2が配されており、チューブ1の遠位端部の外側に筒状部材3が配されている。
図1では、筒状部材3の内腔にも第1芯材部2が配されている。
【0022】
筒状部材3の遠位端は、チューブ1の遠位端よりも遠位側であり、筒状部材3は、内腔にチューブ1が配されているチューブ配置領域31と、内腔にチューブ1が配されていないチューブ非配置領域32とを有する。
【0023】
筒状部材3の内径は、筒状部材3の遠位側と近位側で異なっており、筒状部材3のチューブ非配置領域32における最大内径d1(以下、筒状部材3の最大内径d1ということがある)は、筒状部材3のチューブ配置領域31における最大内径d2(以下、筒状部材3の最大内径d2ということがある)よりも小さくなっている。筒状部材3の最大内径d1は、筒状部材3の最大内径d2に対して97%以下であることが好ましい。筒状部材3の最大内径d1は、筒状部材3の最大内径d2に対して95%以下であることがより好ましく、更に好ましくは93%以下である。筒状部材3の最大内径d1は、第1芯材部2の外径D3より大きければよい。
【0024】
筒状部材3の最大内径d2は、チューブ1の外径より大きければよく、筒状部材3の最大内径d1は、チューブ1の内径と同じであるか、チューブ1の内径より小さければよい。
【0025】
筒状部材3のチューブ非配置領域32における最小外径D1(以下、筒状部材3の最小外径D1ということがある)は、筒状部材3のチューブ配置領域31における最大外径D2(以下、筒状部材3の最大外径D2ということがある)よりも大きくてもよいし、同じであってもよいし、小さくてもよく、小さいことがより好ましい。筒状部材3の最小外径D1が、筒状部材3の最大外径D2より小さいことにより、医療用管状体搬送装置の先端部の通過性が向上する。
【0026】
筒状部材3は、1部材で構成されていてもよいし、2つ以上の部材で構成されていてもよい。筒状部材3は、2部材以上(特に、2部材)で構成されていることが好ましい。
【0027】
筒状部材3は、近位側から遠位側に向かって外径が縮径するテーパーを有することが好ましい。これにより、筒状部材3の最小外径D1が、筒状部材3の最大外径D2より小さくなるため、医療用管状体搬送装置の生体管腔への通過性を高めることができる。
【0028】
筒状部材3を構成する材料は、例えば、ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリエーテルポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;PET等のポリエステル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂;等の合成樹脂等が挙げられる。
【0029】
筒状部材3を構成する材料は、中でも、ポリアミド系樹脂またはフッ素系樹脂が好ましく、ナイロンまたはPTFEがより好ましい。
【0030】
筒状部材3は、X線不透過物質を含んでいてもよい。X線不透過物質としては、例えば、鉛、バリウム、ヨウ素、タングステン、金、白金、イリジウム、ステンレス、チタン、コバルトクロム合金等が挙げられる。X線不透過物質は、中でも、白金が好ましい。筒状部材3がこのように構成されていることにより、X線透過によって筒状部材3の位置を確認することができる。
【0031】
チューブ1の外側には、X線不透過マーカーが配されていてもよい。X線不透過マーカーを筒状部材3の近位端位置に配することにより、筒状部材3の近位端位置を把握しやすくなる。X線不透過マーカーの形状は、特に限定されず、円筒状であってもよいし、長軸方向に直交する断面の形状が、C字になっている筒状であってもよい。X線不透過マーカーは、X線不透過物質を含んでおり、X線不透過物質としては、上記で例示したものを用いることができる。
【0032】
[筒状部材固定工程]
筒状部材固定工程では、チューブ1の遠位端部と筒状部材3を固定する。チューブ1の遠位端部と筒状部材3は、例えば、接着剤を用いて固定したり、熱融着により固定すればよい。
【0033】
[第2芯材部配置工程]
第2芯材部配置工程では、第1芯材部2よりも細い第2芯材部を、筒状部材3の少なくとも遠位端部に配する。筒状部材3の遠位端部は、該筒状部材3の遠位端から長軸方向に15mmまでの領域とすることが好ましい。
【0034】
第2芯材部は、筒状部材3の少なくとも遠位端部に配すればよく、筒状部材3の長軸方向の全長に亘って配してもよい。即ち、第2芯材部は、筒状部材3の遠位端から長軸方向に少なくとも15mmの位置まで配すればよく、筒状部材3の遠位端から長軸方向に15mmの位置よりも近位側まで配してもよい。
【0035】
本発明に係る製造方法の実施形態において、筒状部材固定工程の後、第2芯材部配置工程に先立って、筒状部材3の遠位端部の一部を切断する工程を更に含んでもよい。筒状部材3の遠位端部の一部を切断することにより、筒状部材3の長さを調節できる。
【0036】
[内径縮径工程]
内径縮径工程では、筒状部材3の遠位端部における内径を縮径させる。筒状部材3の遠位端部に第2芯材部を配した後、筒状部材3の遠位端部における内径を縮径させた状態を
図2に示す。
図1と同じ部材には同じ符号を付すことにより、重複説明を避ける(以下同じ)。
【0037】
図2に示すように、筒状部材3の遠位端部における内径をd1からd4に縮径させることにより、筒状部材3の先端部内周とガイドワイヤ外周とのクリアランスが小さくなるため、ガイドワイヤは、筒状部材3の遠位端部に保持され、ガイドワイヤのがたつきを防止できる。その結果、ガイドワイヤに対する追従性が向上する。また、先端部全体の内径を狭めるようにテーパー状に縮径する必要がないため、先端部とガイドワイヤとの接触面積が過度に大きくならず、ガイドワイヤとの摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0038】
第2芯材部7の外径D4は、
図1に示した第1芯材部2の外径D3より小さければよい。第2芯材部7の外径D4は、第1芯材部2の外径D3に対して94%以下が好ましい。第2芯材部7の外径D4は、第1芯材部2の外径D3に対して81%以下がより好ましく、更に好ましくは70%以下である。第2芯材部7の外径D4の下限は、例えば、0.48mm以上が好ましく、より好ましくは0.57mm以上、更に好ましくは0.66mm以上である。
【0039】
筒状部材3の遠位端部における内径をd1からd4に縮径させるにあたって、筒状部材3の遠位端部における外径も併せて縮径させることが好ましい。これにより、医療用管状体搬送装置の生体管腔への通過性を高めることができる。
【0040】
内径縮径工程において、筒状部材3の遠位端部における内径をd1からd4に縮径させる割合は特に限定されないが、縮径前における筒状部材3の遠位端部の最大内径d1を、例えば、60%以下に縮径することが好ましく、より好ましくは58%以下であり、更に好ましくは56%以下である。筒状部材3の遠位端部における内径をd1からd4に縮径させる割合の下限は、例えば、縮径前における筒状部材3の遠位端部の最大内径d1に対して50%以上が好ましく、より好ましくは51%以上、更に好ましくは52%以上である。
【0041】
筒状部材3の遠位端部における内径は、例えば、筒状部材3の遠位端部を加熱することにより丸め加工して縮径させればよい。
【0042】
本発明に係る医療用管状体搬送装置の実施形態においては、チューブ1の外側に、外側チューブ(図示せず)を有しており、該外側チューブの内腔に、筒状部材3の近位端部が配置されていることが好ましい。また、外側チューブの内腔には、医療用管状体を保持させればよい。
【0043】
外側チューブの最大外径は、筒状部材3の最大外径D2より大きくてもよいし、同じであってもよいし、小さくてもよく、同じであるか、小さいことが好ましい。同じであるか、小さいことにより、医療用管状体搬送装置の通過性が向上する。外側チューブの最大外径と、筒状部材3の最大外径D2との差の絶対値は、0.05mm以下が好ましく、より好ましくは0.03mm以下であり、更に好ましくは0mmである。
【0044】
図1および
図2では、第1芯材部2を有する第1芯材と、第2芯材部7を有する第2芯材を準備し、第1芯材部配置工程では、チューブの内腔に、第1芯材を配し、第2芯材部配置工程では、筒状部材の少なくとも遠位端部に第2芯材を配した構成例を示した。即ち、チューブの内腔に、第1芯材部を有する第1芯材を配する工程(以下、第1芯材配置工程ということがある)と、前記チューブの遠位端部の外側に筒状部材を配する工程(筒状部材配置工程)と、前記チューブの遠位端部と前記筒状部材を固定する工程(筒状部材固定工程)と、前記チューブの内腔から前記第1芯材を抜去する工程(以下、第1芯材抜去工程ということがある)と、前記第1芯材部2よりも細い第2芯材部7を有する第2芯材を、前記筒状部材の少なくとも遠位端部に配する工程(以下、第2芯材配置工程ということがある)と、前記筒状部材の遠位端部における内径を縮径させる工程(内径縮径工程)と、を含む構成例を示している。
【0045】
図1、
図2では、2本の芯材を用いた実施形態を示したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、芯材として、第1芯材部および第2芯材部を有する一の芯材を用いてもよい。即ち、(1)前記一の芯材が、前記第1芯材部よりも遠位側に前記第2芯材部を有しており、前記一の芯材を遠位側から近位側へ移動させることにより、前記第2芯材部を前記遠位端部に配してもよいし、(2)前記一の芯材が、前記第1芯材部よりも近位側に前記第2芯材部を有しており、前記一の芯材を近位側から遠位側へ移動させることにより、前記第2芯材部を前記遠位端部に配してもよい。(1)の実施形態について、
図3、
図4を用いて説明し、(2)の実施形態について、
図5、
図6を用いて説明する。
【0046】
(1)
図3、
図4では、第1芯材部2よりも遠位側に第2芯材部7を有している芯材11を用いており、
図3では、チューブ1の遠位端部の外側に筒状部材3を配した状態を示しており、チューブ1の内腔には、芯材11の第1芯材部2が配されている。
図3では、筒状部材3の内腔にも芯材11の第1芯材部2が配されており、芯材11の第2芯材部7は、筒状部材3の遠位端より遠位側に配されている。
図3に示した状態で、チューブ1の遠位端部と筒状部材3を固定する(筒状部材固定工程)。チューブ1の遠位端部と筒状部材3を固定した後は、芯材11を遠位側から近位側へ移動させることにより、芯材11の第2芯材部7を筒状部材3の遠位端部に配すればよい。芯材11の第2芯材部7を筒状部材3の遠位端部に配した状態を
図4に示す。芯材11の第2芯材部7を筒状部材3の遠位端部に配した後は、筒状部材3の遠位端部における内径を縮径させればよい(内径縮径工程)。
【0047】
(2)
図5、
図6では、第1芯材部2よりも近位側に第2芯材部7を有している芯材12を用いており、
図5では、チューブ1の遠位端部の外側に筒状部材3を配した状態を示しており、チューブ1の内腔には、芯材12の第1芯材部2が配されている。
図5では、筒状部材3の内腔にも芯材12の第1芯材部2が配されており、芯材12の第2芯材部7は、チューブ1の内腔に配されている。
図5に示した状態で、チューブ1の遠位端部と筒状部材3を固定する(筒状部材固定工程)。チューブ1の遠位端部と筒状部材3を固定した後は、芯材12を近位側から遠位側へ移動させることにより、芯材12の第2芯材部7を筒状部材3の遠位端部に配すればよい。芯材12の第2芯材部7を筒状部材3の遠位端部に配した状態を
図6に示す。芯材12の第2芯材部7を筒状部材3の遠位端部に配した後は、筒状部材3の遠位端部における内径を縮径させればよい(内径縮径工程)。
【0048】
図3~
図6では、外径が異なる第1芯材部2と第2芯材部7とを長軸方向に連結した一の芯材を用いた実施形態を示したが、一の芯材の形態は、例えば、第1芯材部2と第2芯材部7との間をテーパー状とし、第1芯材部2と第2芯材部7の外径差による段差をなくしてもよい。
【0049】
筒状部材3は、上記
図1、
図2に示したように、1部材で構成されていてもよいが、2つ以上の部材で構成されていることが好ましい。2部材以上(特に、2部材)で構成することによって、筒状部材3の形状が複雑でも成形しやすくなる。また、筒状部材3の複数の部材で構成することにより、部材ごとに剛性を調整することができるため、追従性や操作性を改善できる。以下、筒状部材3が2つの部材で構成されている実施形態について説明する。
【0050】
本発明に係る医療用管状体搬送装置の製造方法の他の実施形態は、筒状部材が、近位側筒状部材および遠位側筒状部材で構成されており、チューブの内腔に、第1芯材部を配する工程(以下、第1芯材部配置工程ということがある)と、前記チューブの遠位端部の外側に近位側筒状部材を配する工程(以下、近位側筒状部材配置工程ということがある)と、前記チューブの遠位端部と前記近位側筒状部材を固定する工程(以下、近位側筒状部材固定工程ということがある)と、前記近位側筒状部材よりも遠位側に遠位側筒状部材を配する工程(以下、遠位側筒状部材配置工程ということがある)と、前記近位側筒状部材と前記遠位側筒状部材を固定する工程(以下、遠近筒状部材固定工程ということがある)と、前記第1芯材部よりも細い第2芯材部を、前記遠位側筒状部材の少なくとも遠位端部に配する工程(以下、第2芯材部配置工程ということがある)と、前記遠位側筒状部材の遠位端部における内径を縮径させる工程(以下、内径縮径工程ということがある)と、を含むものである。
【0051】
[第1芯材部配置工程]
第1芯材部配置工程では、チューブの内腔に、第1芯材部を配置する。第1芯材部配置工程の説明は、上記した第1芯材部配置工程の説明が参照できる。
【0052】
[近位側筒状部材配置工程]
近位側筒状部材配置工程では、チューブの遠位端部の外側に近位側筒状部材を配する。近位側筒状部材は、遠近方向に延在しており、内腔を有している。チューブの遠位端部に配された近位側筒状部材は、先端チップの土台となり、近位側筒状部材よりも遠位側に配される遠位側筒状部材に対して遠位側から近位側への力が付加されたときに、遠位側筒状部材を押し返し、遠位側筒状部材の通過性を改善できる。
【0053】
近位側筒状部材の長軸方向に直交する断面の形状は、例えば、円形状、C字型、楕円形状、多角形状等が挙げられる。
【0054】
チューブの遠位端部の外側に近位側筒状部材を配した状態を
図7に示す。他の図面と同じ部材には同じ符号を付すことにより、重複説明を避ける。
図7に示した矢印xは、遠近方向(長軸方向)を示しており、
図7に示した矢印の右側が近位側であり、矢印の左側が遠位側である。
【0055】
チューブ1の内腔には、第1芯材部2が配されており、チューブ1の遠位端部の外側に近位側筒状部材3aが配されている。
【0056】
近位側筒状部材3aの遠位端は、チューブ1の遠位端よりも遠位側であり、近位側筒状部材3aは、内腔にチューブ1が配されているチューブ配置領域31と、内腔にチューブ1が配されていないチューブ非配置領域32aとを有する。
【0057】
近位側筒状部材3aの内径は、近位側筒状部材3aの遠位側と近位側で異なっており、近位側筒状部材3aのチューブ非配置領域32aにおける最大内径d1(以下、近位側筒状部材3aの最大内径d1ということがある)は、近位側筒状部材3aのチューブ配置領域31における最大内径d2(以下、近位側筒状部材3aの最大内径d2ということがある)よりも小さくなっている。
【0058】
近位側筒状部材3aの最大内径d1は、近位側筒状部材3aの最大内径d2に対して97%以下であることが好ましい。近位側筒状部材3aの最大内径d1は、近位側筒状部材3aの最大内径d2に対して95%以下であることがより好ましく、更に好ましくは93%以下である。近位側筒状部材3aの最大内径d1は、第1芯材部2の外径D3より大きければよい。
【0059】
近位側筒状部材3aの最大内径d2は、チューブ1の外径より大きければよく、近位側筒状部材3aの最大内径d1は、チューブ1の内径と同じであるか、チューブ1の内径より小さければよい。
【0060】
近位側筒状部材3aのチューブ非配置領域32aにおける最小外径D1(以下、近位側筒状部材3aの最小外径D1ということがある)は、近位側筒状部材3aのチューブ配置領域31における最大外径D2(以下、近位側筒状部材3aの最大外径D2ということがある)よりも大きくてもよいし、同じであってもよいし、小さくてもよく、小さいことがより好ましい。近位側筒状部材3aの最小外径D1が、近位側筒状部材3aの最大外径D2より小さいことにより、医療用管状体搬送装置の先端部の通過性が向上する。
【0061】
近位側筒状部材3aは、近位側から遠位側に向かって外径が縮径するテーパーを有することが好ましい。これにより、近位側筒状部材3aの最小外径D1が、近位側筒状部材3aの最大外径D2より小さくなるため、医療用管状体搬送装置の生体管腔への通過性を高めることができる。
【0062】
近位側筒状部材3aを構成する材料は、上記筒状部材3を構成する材料として例示したものを用いることができる。
【0063】
近位側筒状部材3aは、X線不透過物質を含んでいてもよいが、X線不透過物質を含んでいないことが好ましい。近位側筒状部材3aがX線不透過物質を含む場合は、上記筒状部材3に含まれるX線不透過物質として例示したものを用いることができる。
【0064】
チューブ1の外側には、X線不透過マーカーが配されていてもよい。X線不透過マーカーを近位側筒状部材3aの近位端位置に配することにより、近位側筒状部材3aの近位端位置を把握しやすくなる。X線不透過マーカーの形状は、特に限定されず、円筒状であってもよいし、長軸方向に直交する断面の形状が、C字になっている筒状であってもよい。X線不透過マーカーは、X線不透過物質を含んでおり、X線不透過物質としては、上記で例示したものを用いることができる。
【0065】
[近位側筒状部材固定工程]
近位側筒状部材固定工程では、チューブ1の遠位端部と近位側筒状部材3aを固定する。チューブ1の遠位端部と近位側筒状部材3aは、例えば、接着剤を用いて固定したり、熱融着により固定すればよい。
【0066】
[遠位側筒状部材配置工程]
遠位側筒状部材配置工程では、近位側筒状部材3aよりも遠位側に遠位側筒状部材3bを配する。遠位側筒状部材3bは、先端チップの先端部となる。筒状部材3を、近位側筒状部材3aと遠位側筒状部材3bに分けることで、筒状部材の遠位側の外径と、近位側の外径をそれぞれ調整しやすくなる。また、近位側筒状部材3aと遠位側筒状部材3bの剛性を変化させることもできる。
【0067】
遠位側筒状部材3bの最大外径D5は、近位側筒状部材3aのチューブ配置領域31における最大外径D2よりも大きくてもよいし、同じであってもよいし、小さくてもよく、小さいことがより好ましい。遠位側筒状部材3bの最大外径D5が、近位側筒状部材3aの最大外径D2より小さいことにより、医療用管状体搬送装置の先端部の通過性が向上する。
【0068】
遠位側筒状部材3bの内径d5は、遠位側筒状部材3bの遠位側と近位側で同じであればよく、遠位側筒状部材3bの内径d5は、近位側筒状部材3aのチューブ非配置領域32aにおける最大内径d1より大きくてもよいし、小さくてもよいが、同じであることが好ましい。遠位側筒状部材3bの内径d5は、第1芯材部2の外径D3より大きければよい。
【0069】
遠位側筒状部材3bの長軸方向に直交する断面の形状は、例えば、円形状、C字型、楕円形状、多角形状等が挙げられる。遠位側筒状部材の長軸方向に直交する断面の形状と、近位側筒状部材の長軸方向に直交する断面の形状は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0070】
遠位側筒状部材3bを構成する材料は、上記筒状部材3を構成する材料として例示したものを用いることができる。遠位側筒状部材3bを構成する材料と、近位側筒状部材3aを構成する材料は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。同じであることにより、後の工程において、遠位側筒状部材3bと近位側筒状部材3aの接続強度が向上する。
【0071】
遠位側筒状部材3bの剛性は、近位側に遠位側筒状部材3aの剛性と同じでもよいし、異なっていてもよく、異なっていることが好ましい。遠位側筒状部材3bの剛性と、近位側筒状部材3aの剛性が異なっている場合は、遠位側筒状部材3bの剛性の方が、近位側に遠位側筒状部材3aの剛性よりも大きいことが好ましい。これにより、医療用管状体搬送装置の先端部が狭窄部へ追加しやすくなる。
【0072】
遠位側筒状部材3bは、X線不透過物質を含んでいることが好ましい。X線不透過物質としては、上記筒状部材3に含まれるX線不透過物質として例示したものを用いることができる。
【0073】
[遠近筒状部材固定工程]
遠近筒状部材固定工程では、近位側筒状部材3aと遠位側筒状部材3bを固定する。近位側筒状部材3aと遠位側筒状部材3bは、例えば、接着剤を用いて固定したり、熱融着により固定すればよい。
【0074】
[第2芯材部配置工程]
第2芯材部配置工程では、第1芯材部2よりも細い第2芯材部を、遠位側筒状部材3bの少なくとも遠位端部に配する。遠位側筒状部材3bの遠位端部は、該遠位側筒状部材3bの遠位端から長軸方向に15mmまでの領域とする。
【0075】
第2芯材部は、遠位側筒状部材3bの少なくとも遠位端部に配すればよく、遠位側筒状部材3bの長軸方向の全長に亘って配してもよい。即ち、第2芯材部は、遠位側筒状部材3bの遠位端から長軸方向に少なくとも15mmの位置まで配すればよく、遠位側筒状部材3bの遠位端から長軸方向に15mmの位置よりも近位側まで配してもよい。
【0076】
本発明に係る製造方法の実施形態においては、第2芯材部配置工程の後、第2芯材部配置工程に先立って、遠位側筒状部材3bの遠位端部の一部を切断する工程を更に含んでもよい。遠位側筒状部材3bの遠位端部の一部を切断することにより、遠位側筒状部材3bの長さを調節できる。
【0077】
[内径縮径工程]
内径縮径工程では、遠位側筒状部材3bの遠位端部における内径を縮径させる。遠位側筒状部材3bの遠位端部に第2芯材部7を配した後、遠位側筒状部材3bの遠位端部における内径を縮径させた状態を
図8に示す。他の図面と同じ部材には同じ符号を付すことにより、重複説明を避ける。
【0078】
第2芯材部7の外径D4は、
図7に示した第1芯材部2の外径D3より小さければよく、第2芯材部7の外径D4は、第1芯材部2の外径D3に対して94%以下が好ましい。第2芯材部7の外径D4は、第1芯材部2の外径D3に対して81%以下がより好ましく、更に好ましくは70%以下である。第2芯材部7の外径D4の下限は、例えば、0.48mm以上が好ましく、より好ましくは0.57mm以上、更に好ましくは0.66mm以上である。
【0079】
図8に示すように、遠位側筒状部材3bの遠位端部における内径をd1からd4に縮径させることにより、遠位側筒状部材3bの先端部内周とガイドワイヤ外周とのクリアランスが小さくなるため、ガイドワイヤは、遠位側筒状部材3bの遠位端部に保持され、ガイドワイヤのがたつきを防止できる。その結果、ガイドワイヤに対する追従性が向上する。また、先端部全体の内径を狭めるようにテーパー状に縮径する必要がないため、先端部とガイドワイヤとの接触面積が過度に大きくならず、ガイドワイヤとの摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0080】
遠位側筒状部材3bの遠位端部における内径をd1からd4に縮径させるにあたって、筒状部材3の遠位端部における外径も併せて縮径させることが好ましい。これにより、医療用管状体搬送装置の生体管腔への通過性を高めることができる。
【0081】
内径縮径工程において、遠位側筒状部材3bの遠位端部における内径をd1からd4に縮径させる割合は特に限定されないが、縮径前における遠位側筒状部材3bの遠位端部の最大内径d5を、例えば、60%以下に縮径することが好ましく、より好ましくは58%以下であり、更に好ましくは56%以下である。遠位側筒状部材3bの遠位端部における内径をd1からd4に縮径させる割合の下限は、例えば、縮径前における筒状部材3の遠位端部の最大内径d1に対して50%以上が好ましく、より好ましくは51%以上、更に好ましくは52%以上である。
【0082】
遠位側筒状部材3bの遠位端部における内径d4は、例えば、遠位側筒状部材3bの遠位端部を加熱することにより丸め加工して縮径させればよい。
【0083】
遠位側筒状部材3bの最大外径D5は、近位側筒状部材3aの最大外径D2よりも小さいことが好ましい。遠位側筒状部材3bの遠位側の最大外径D5を小さくすることにより、狭窄部が細くても通過しやすくなる。また、病変部にメッシュ状のステントが既に配されている場合、遠位側筒状部材3bの先端部が細ければ、メッシュの間を通過させることができる。
【0084】
筒状部材3が、近位側筒状部材および遠位側筒状部材で構成されている場合は、チューブ1の外側に、外側チューブ(図示せず)を有しており、該外側チューブの内腔に、近位側筒状部材3aの近位端部が配置されていることが好ましい。また、外側チューブの内腔には、医療用管状体を保持させればよい。
【0085】
外側チューブの最大外径は、近位側筒状部材3aの最大外径D2より大きくてもよいし、同じであってもよいし、小さくてもよく、同じであるか、小さいことが好ましい。同じであるか、小さいことにより、医療用管状体搬送装置の通過性が向上する。外側チューブの最大外径と、近位側筒状部材3aの最大外径D2との差の絶対値は、0.05mm以下が好ましく、より好ましくは0.03mm以下であり、更に好ましくは0mmである。
【0086】
図7および
図8では、第1芯材部2を有する第1芯材と、第2芯材部7を有する第2芯材を準備し、第1芯材部配置工程では、チューブの内腔に、第1芯材を配し、第2芯材部配置工程では、筒状部材の少なくとも遠位端部に第2芯材を配した実施形態を示した。即ち、チューブの内腔に、第1芯材部を有する第1芯材を配する工程(以下、第1芯材配置工程ということがある)と、前記チューブの遠位端部の外側に近位側筒状部材を配する工程(近位側筒状部材配置工程)と、前記チューブの遠位端部と前記近位側筒状部材を固定する工程(近位側筒状部材固定工程)と、前記近位側筒状部材よりも遠位側に遠位側筒状部材を配する工程(遠位側筒状部材配置工程)と、前記近位側筒状部材と前記遠位側筒状部材を固定する工程(遠近筒状部材固定工程)と、前記チューブの内腔から前記第1芯材を抜去する工程(以下、第1芯材抜去工程ということがある)と、前記第1芯材部よりも細い第2芯材部を有する第2芯材を、前記遠位側筒状部材の少なくとも遠位端部に配する工程(第2芯材部配置工程)と、前記遠位側筒状部材の遠位端部における内径を縮径させる工程(内径縮径工程)と、を含む実施形態を示している。
【0087】
図7、
図8では、2本の芯材を用いた実施形態を示したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、
図3~
図6と同様、芯材として、第1芯材部および第2芯材部を有する一の芯材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 チューブ
2 第1芯材部
3 筒状部材
7 第2芯材部
31 チューブ配置領域
32、32a チューブ非配置領域
D1 筒状部材3のチューブ非配置領域32における最小外径、または近位側筒状部材3aのチューブ非配置領域32aにおける最小外径
D2 筒状部材3のチューブ配置領域31における最大外径、または近位側筒状部材3aのチューブ配置領域31における最大外径
D3 第1芯材部2の外径
D4 第2芯材部7の外径
D5 遠位側筒状部材3bの最大外径
d1 筒状部材3のチューブ非配置領域32における最大内径
d2 筒状部材3のチューブ配置領域31における最大内径
d5 遠位側筒状部材3bの内径