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特開2023-130239ラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130239
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 283/01 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
C08F283/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034804
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】503090980
【氏名又は名称】ジャパンコンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】清水 卓爾
(72)【発明者】
【氏名】三浦 彬
(72)【発明者】
【氏名】箱谷 昌宏
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127BB041
4J127BB071
4J127BB151
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD131
4J127BE051
4J127BE05Z
4J127BE391
4J127BE39Y
4J127BF151
4J127BF15Y
4J127BG181
4J127BG18Z
4J127DA06
4J127DA08
4J127DA12
4J127DA16
4J127DA23
4J127DA39
4J127DA43
4J127DA45
4J127DA46
4J127DA53
4J127EA05
4J127FA48
(57)【要約】
【課題】硬化時のアルデヒドの発散量を抑制しつつ、かつ、成形性に優れるラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】ラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法は、低収縮化剤とアルデヒド捕捉剤とを混合し、混合物を得る第1工程と、混合物と、ラジカル重合性樹脂とを混合する第2工程とを備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低収縮化剤に、アルデヒド捕捉剤を溶解させ、混合物を得る第1工程と、
前記混合物と、ラジカル重合性樹脂とを混合する第2工程とを備える、ラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記アルデヒド捕捉剤が尿素化合物である、請求項1に記載のラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記尿素化合物がエチレン尿素である、請求項2に記載のラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記アルデヒド捕捉剤の配合割合が、前記ラジカル重合性樹脂および前記低収縮化剤の総量100質量部に対して、1質量部以上3質量部以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記第2工程では、さらに、硬化剤を混合し、
前記硬化剤が、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネートである、請求項1~4のいずれか一項に記載のラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不飽和ポリエステル樹脂などのラジカル重合性樹脂を含むラジカル硬化性樹脂組成物は、建築分野における建築材料の仕上げに用いられている。
【0003】
一方、これらのラジカル硬化性樹脂組成物は、硬化する際に、ホルムアルデヒドが発生する場合がある。このような場合には、健康被害が高くなるという不具合がある。
【0004】
そのため、ラジカル硬化性樹脂組成物として、例えば、不飽和ポリエステル樹脂組成物と、低収縮化剤と、エチレン尿素(ホルムアルデヒド捕捉剤)とを含むシートモールディングコンパウンド及びバルクモールディングコンパウンド用樹脂組成物が提案されている(例えば、下記特許文献1の実施例1参照。)。特許文献1の樹脂組成物では、エチレン尿素によって、ホルムアルデヒドの発散量を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-154589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、建材や内装材から放散された揮発性有機化合物(VOC)が住空間において高濃度化することにより、そこに居住する人々がシックハウス症候群などの健康被害を生じるといった問題が発生する。
【0007】
最近では車室内の環境にも注目され、一般に太陽光の照射を受けることで車室内温度は住宅に比べて高くなることが多く、とくに夏場の炎天下では50℃を越えることもあり、自動車内のVOCは種類、量ともに非常に多くなることが明らかとなっている。
【0008】
とりわけ、成形材料(例えば、SMC)では、アルデヒドの発散量の抑制が一層要求されている。
【0009】
また、ラジカル硬化性樹脂組成物を用いて、成形品を製造する際には、生産性が要求される。
【0010】
本発明は、硬化時のアルデヒドの発散量を抑制しつつ、かつ、生産性に優れるラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明[1]は、低収縮化剤に、アルデヒド捕捉剤を溶解させ、混合物を得る第1工程と、前記混合物と、ラジカル重合性樹脂とを混合する第2工程とを備える、ラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法である。
【0012】
本発明[2]は、前記アルデヒド捕捉剤が尿素化合物である、上記[1]に記載のラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法を含んでいる。
【0013】
本発明[3]は、前記尿素化合物がエチレン尿素である、上記[2]に記載のラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法を含んでいる。
【0014】
本発明[4]は、前記アルデヒド捕捉剤の配合割合が、前記ラジカル重合性樹脂および前記低収縮化剤の総量100質量部に対して、1質量部以上3質量部以下である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法を含んでいる。
【0015】
本発明[5]は、前記第2工程では、さらに、硬化剤を混合し、前記硬化剤が、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネートである、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法を含んでいる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法は、予め、低収縮化剤に、アルデヒド捕捉剤を溶解させ、混合物を得、その混合物と、ラジカル重合性樹脂とを混合する。そのため、硬化時のアルデヒドの発散量を抑制しつつ、かつ、生産性に優れるラジカル硬化性樹脂組成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法は、低収縮化剤に、アルデヒド捕捉剤を溶解させ、混合物を得る第1工程と、混合物と、ラジカル重合性樹脂とを混合する第2工程とを備える。つまり、この方法では、予め、低収縮化剤に、アルデヒド捕捉剤を溶解させ、混合物を得、その混合物と、ラジカル重合性樹脂とを混合する。そのため、詳しくは後述するが、硬化時のアルデヒドの発散量を抑制しつつ、かつ、生産性に優れるラジカル硬化性樹脂組成物を製造することができる。
【0018】
<第1工程>
第1工程では、低収縮化剤に、アルデヒド捕捉剤を溶解させ、混合物を得る。
【0019】
低収縮化剤は、ラジカル硬化性樹脂組成物を用いて得られる成形品(後述)を得る場合に、成形品(後述)の硬化収縮および熱収縮を抑制するために配合される。
【0020】
低収縮化剤は、低収縮化ポリマーを含む。低収縮化ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレン系熱可塑性エラストマー、架橋ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル-ポリスチレンブロックコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、および、飽和ポリエステルが挙げられる。
【0021】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエンブロック共重合エラストマー、スチレン-イソプレンブロック共重合エラストマー、スチレン-エチレン/ブチレンブロック共重合エラストマー、および、スチレン-エチレン/プロピレンブロック共重合エラストマーが挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマーとして、好ましくは、スチレン-ブタジエンブロック共重合エラストマーが挙げられる。
【0022】
また、スチレン系熱可塑性エラストマーとして、市販品を用いることもできる。このような市販品として、例えば、D1101、D1102、D1155、DKX405、DKX410、DKX415、D1192、D1161、D1171、G1651、G1652、G1654、G1701、G1730(以上、クレイトンポリマー社製)、アサプレンT411、アサプレンT432、タフプレンA、タフプレン125、タフプレン126S、タフプレン315、タフプレン912、タフテックH1141、タフテックH1041、タフテックH1043、タフテックH1052(以上、旭化成社製)、セプトン1001、1201(以上、クラレ社製)が挙げられる。
【0023】
また、スチレン系熱可塑性エラストマーにおけるスチレン含量は、例えば、5質量%以上で、また、例えば、80質量%以下である。
【0024】
低収縮化ポリマーとして、好ましくは、ポリスチレン、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、および、飽和ポリエステルが挙げられる。低収縮化ポリマーとして、より好ましくは、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリ酢酸ビニルおよび飽和ポリエステルが挙げられる。
【0025】
低収縮化ポリマーの数平均分子量は、例えば、5000以上、好ましくは、10000以上、また、例えば、200000以下、好ましくは、100000以下である。
【0026】
低収縮化ポリマーは、単独使用または2種以上併用できる。
【0027】
そして、低収縮化剤は、上記低収縮化ポリマーが後述する重合性単量体(好ましくは、スチレン)に溶解された溶液として、調製される。つまり、低収縮化剤は、好ましくは、低収縮化ポリマーと後述する重合性単量体とを含み、より詳細には、低収縮化ポリマーの重合性単量体溶液である。
【0028】
低収縮化ポリマーの重合性単量体溶液の固形分濃度は、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、40質量%以上、さらに好ましくは、55質量%以上、また、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。つまり、低収縮化ポリマーの重合性単量体溶液において、重合性単量体の含有量は、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上、また、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、60質量%以下、さらに好ましくは、45質量%以下である。
【0029】
また、低収縮化剤、つまり、低収縮化ポリマーの重合性単量体溶液としては、飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0030】
飽和ポリエステル樹脂は、飽和ポリエステルを、後述する重合性単量体に溶解させることにより得られる。換言すれば、飽和ポリエステル樹脂は、飽和ポリエステルの重合性単量体溶液(低収縮化ポリマーの重合性単量体溶液)である。
【0031】
飽和ポリエステルは、後述するエチレン性不飽和結合不含多塩基酸と、後述する多価アルコールとの重合生成物である。
【0032】
エチレン性不飽和結合不含多塩基酸としては、好ましくは、アジピン酸、イソフタル酸が挙げられる。
【0033】
多価アルコールとしては、好ましくは、2価アルコール、より好ましくは、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。
【0034】
飽和ポリエステルは、エチレン性不飽和結合不含多塩基酸と、多価アルコールと重縮合(縮合重合)することにより得られる。
【0035】
エチレン性不飽和結合不含多塩基酸と、多価アルコールとを重縮合(縮合重合)させるには、多塩基酸に対す多価アルコールの当量比(多価アルコールのヒドロキシル基/多塩基酸のカルボキシル基)が、例えば、0.9以上、好ましくは、0.95以上、また、例えば、1.2以下、好ましくは、1.1以下になるように、配合し、常圧、窒素雰囲気下で撹拌する。
【0036】
反応温度としては、例えば、150℃以上、好ましくは、190℃以上、また、例えば、250℃以下、好ましくは、230℃以下である。
【0037】
反応時間としては、例えば、8時間以上、また、例えば、30時間以下である。
【0038】
なお、上記の反応において、必要に応じて、公知の溶剤および公知の触媒を配合することもできる。
【0039】
これにより、飽和ポリエステルが得られる。
【0040】
飽和ポリエステルの酸価(測定方法:JIS K6901(2008年)に準拠)は、例えば、5mgKOH/g以上、また、例えば、40mgKOH/g未満である。
【0041】
そして、この飽和ポリエステルを、後述する重合性単量体(好ましくは、スチレン)に溶解させ、必要により、添加剤(重合禁止剤(後述)(好ましくは、ハイドロキノン))を配合することにより、飽和ポリエステル樹脂を調製する。
【0042】
飽和ポリエステル樹脂の調製においては、重合性単量体の配合割合は、飽和ポリエステル100質量部に対して、例えば、35質量部以上、また、例えば、100質量部以下である。また、重合禁止剤の配合割合は、飽和ポリエステル100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.005質量部以上、また、例えば、0.1質量部以下、好ましくは、0.05質量部以下である。
【0043】
低収縮化剤の配合割合については、後述する。
【0044】
アルデヒド捕捉剤は、硬化時のアルデヒド(具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、以下同様。)の発散量を抑制する。
【0045】
アルデヒド捕捉剤としては、例えば、ヒドラジド化合物、および、尿素化合物が挙げられる。
【0046】
ヒドラジド化合物としては、例えば、カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、および、コハク酸ジヒドラジドが挙げられる。
【0047】
尿素化合物としては、例えば、エチレン尿素、ジメチルエチレン尿素、プロピレン尿素、および、テトラブチル尿素が挙げられる。
【0048】
また、アルデヒド捕捉剤としては、例えば、特開2005-154589号公報に記載された化合物(C)を用いることもできる。
【0049】
アルデヒド捕捉剤として、好ましくは、硬化時のアルデヒドの発散量を一層抑制する観点から、尿素化合物、より好ましくは、硬化時のアルデヒドの発散量をより一層抑制する観点から、エチレン尿素が挙げられる。
【0050】
アルデヒド捕捉剤の配合割合については、後述する。
【0051】
そして、第1工程では、低収縮化剤(低収縮化ポリマーの重合性単量体溶液)に、アルデヒド捕捉剤を溶解させる。
【0052】
低収縮化剤(低収縮化ポリマーの重合性単量体溶液)に、アルデヒド捕捉剤を溶解させる場合には、低収縮化剤(低収縮化ポリマーの重合性単量体溶液)に、アルデヒド捕捉剤を添加して加熱し、攪拌する。これにより、混合物を得る。
【0053】
加熱温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、60℃以上、また、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下である。加熱時間は、例えば、0.5時間以上、また、例えば、3時間以下、好ましくは、2時間以下である。
【0054】
混合物は、その後、室温(25℃)まで冷却する。
【0055】
アルデヒド捕捉剤の配合割合は、硬化時のアルデヒドの発散量を抑制しつつ、かつ、生産性を向上させる観点から、低収縮化ポリマー100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、17質量部以下、より好ましくは、15質量部以下である。
【0056】
また、アルデヒド捕捉剤の配合割合は、硬化時のアルデヒドの発散量を抑制しつつ、かつ、生産性を向上させる観点から、低収縮化剤100質量部に対して、例えば、3質量部以上、好ましくは、4質量部以上、より好ましくは、6質量部以上、また、例えば、15質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、8質量部以下である。
【0057】
<第2工程>
第2工程では、混合物と、ラジカル重合性樹脂とを混合する。
【0058】
ラジカル重合性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。ラジカル重合性樹脂として、各種物性(靱性、強度、耐久性、耐候性、耐熱水性、および、透明性)に優れる観点から、好ましくは、不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0059】
不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和ポリエステルおよび重合性単量体を含む。つまり、不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和ポリエステルおよび重合性単量体を含む不飽和ポリエステル樹脂組成物である。
【0060】
不飽和ポリエステルは、多塩基酸と、多価アルコールとの縮合生成物である。
【0061】
多塩基酸は、必須成分としてのエチレン性不飽和二重結合を有する多塩基酸(以下、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸とする。)と、任意成分としてのエチレン性不飽和二重結合を有しない多塩基酸(以下、エチレン性不飽和結合不含多塩基酸とする。)とを含む。
【0062】
エチレン性不飽和結合含有多塩基酸としては、例えば、エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸およびその無水物、エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸のハロゲン化物、および、エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸のアルキルエステルが挙げられる。
【0063】
エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、および、ジヒドロムコン酸が挙げられる。また、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸には、例えば、上記のエチレン性不飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物が含まれる。エチレン性不飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸が挙げられる。エチレン性不飽和結合含有多塩基酸としては、好ましくは、無水マレイン酸が挙げられる。
【0064】
エチレン性不飽和結合不含多塩基酸としては、例えば、飽和脂肪族多塩基酸、飽和脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸、これらの酸の無水物、これらの酸のハロゲン化物、および、これらの酸のアルキルエステルが挙げられる。
【0065】
飽和脂肪族多塩基酸としては、例えば、飽和脂肪族二塩基酸が挙げられる。
【0066】
飽和脂肪族二塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,3-ジメチルコハク酸、ヘキシルコハク酸、グルタル酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、3,3-ジメチルコハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、および、セバシン酸が挙げられる。また、飽和脂肪族多塩基酸には、上記の飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物が含まれる。飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物としては、例えば、無水シュウ酸、および、無水コハク酸が挙げられる。
【0067】
飽和脂環族多塩基酸としては、例えば、飽和脂環族二塩基酸が挙げられる。
【0068】
飽和脂環族二塩基酸としては、例えば、ヘット酸、1,2-ヘキサヒドロフタル酸、1,1-シクロブタンジカルボン酸、および、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(cis-またはtrans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸もしくはその混合物)が挙げられる。飽和脂環族多塩基酸としては、上記の飽和脂環族二塩基酸から誘導される酸無水物が含まれる。飽和脂環族二塩基酸から誘導される酸無水物としては、例えば、無水ヘット酸が挙げられる。
【0069】
芳香族多塩基酸としては、例えば、芳香族二塩基酸が挙げられる。
【0070】
芳香族二塩基酸としては、例えば、フタル酸(オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸)、トリメリット酸、および、ピロメリット酸が挙げられる。また、芳香族多塩基酸には、上記の芳香族二塩基酸から誘導される酸無水物が挙げられる。芳香族二塩基酸から誘導される酸無水物としては、例えば、無水フタル酸が挙げられる。
【0071】
多塩基酸は、単独使用または2種以上併用できる。
【0072】
多塩基酸が、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸およびエチレン性不飽和結合不含多塩基酸を含む場合には、多塩基酸100モルに対して、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸の配合割合は、例えば、10モル%以上、好ましくは、20モル%以上、また、例えば、99モル%以下、好ましくは、80モル%以下である。
【0073】
多価アルコールとしては、例えば、2価アルコールおよび3価アルコールが挙げられる。
【0074】
2価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、および、芳香族ジオールが挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、アルカンジオール、および、エーテルジオールが挙げられる。アルカンジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-または1,3-プロパンジオールもしくはその混合物)、ブチレングリコール(1,2-または1,3-または1,4-ブチレングリコールもしくはその混合物)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、および、3,3-ジメチロールヘプタンが挙げられる。エーテルジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、および、ジプロピレングリコールが挙げられる。脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール(1,2-または1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールもしくはその混合物)、シクロヘキサンジメタノール(1,2-または1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールもしくはその混合物)、シクロヘキサンジエタノール(1,2-または1,3-または1,4-シクロヘキサンジエタノールもしくはその混合物)、および、水素化ビスフェノールAが挙げられる。芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、および、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物が挙げられる。
【0075】
3価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、および、トリイソプロパノールアミンが挙げられる。
【0076】
多価アルコールとして、好ましくは、2価アルコールが挙げられる。多価アルコールとして、より好ましくは、脂肪族ジオールが挙げられる。多価アルコールとして、さらに好ましくは、アルカンジオールが挙げられる。多価アルコールとして、とりわけ好ましくは、プロピレングリコールおよびネオペンチルグリコールが挙げられる。
【0077】
多価アルコールは、単独使用または2種以上併用できる。
【0078】
不飽和ポリエステルは、多塩基酸と、多価アルコールとを重縮合することにより得られる。
【0079】
多塩基酸と、多価アルコールとを重縮合させるには、まず、下記の当量比で、多塩基酸と、多価アルコールとを配合する。
【0080】
多塩基酸に対する多価アルコールの当量比(多価アルコールのヒドロキシル基/多塩基酸のカルボキシル基)は、例えば、0.9以上、好ましくは、0.95以上、また、例えば、1.2以下、好ましくは、1.1以下である。
【0081】
多塩基酸と、多価アルコールとを配合した後、常圧および窒素雰囲気下で撹拌しながら、多塩基酸と、多価アルコールとを反応させる。反応温度は、例えば、150℃以上、好ましくは、190℃以上、また、例えば、250℃以下、好ましくは、230℃以下である。
【0082】
なお、上記の反応において、必要に応じて、公知の溶剤および公知の反応触媒を配合することもできる。
【0083】
これにより、不飽和ポリエステルが得られる。
【0084】
不飽和ポリエステルの酸価(測定方法:JIS K6901(2008年)に準拠)は、例えば、5mgKOH/g以上、好ましくは、10mgKOH/g以上、また、例えば、40mgKOH/g未満、好ましくは、30mgKOH/g以下である。
【0085】
不飽和ポリエステルの重量平均分子量は、例えば、2000以上、好ましくは、4000以上、また、例えば、25000以下、好ましくは、20000以下である。
【0086】
なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。重量平均分子量は、不飽和ポリエステルをGPC測定することにより求めることができる。
【0087】
重合性単量体としては、例えば、スチレン系モノマー、および、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが挙げられる。
【0088】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、および、クロロスチレンが挙げられる。
【0089】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリルエステル、環構造含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステル、および、多官能(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル)、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、および、(メタ)アクリル酸ステアリルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アリルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アリルが挙げられる。環構造含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、および、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、および、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、および、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、および、これらのクロライド塩が挙げられる。(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、および、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシルが挙げられる。多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、および、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0090】
重合性単量体としては、好ましくは、スチレン系モノマー、より好ましくは、スチレンが挙げられる。
【0091】
重合性単量体は、単独使用または2種以上併用できる。
【0092】
そして、上記した不飽和ポリエステルを、重合性単量体(好ましくは、スチレン)に溶解させ、必要により、添加剤(重合禁止剤(後述)(好ましくは、ハイドロキノン))を配合することにより、不飽和ポリエステル樹脂を調製する。
【0093】
不飽和ポリエステル樹脂の調製においては、重合性単量体の配合割合は、不飽和ポリエステル100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、60質量部以上、また、例えば、100質量部以下である。また、重合禁止剤の配合割合は、不飽和ポリエステル100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.005質量部以上、また、例えば、0.1質量部以下、好ましくは、0.05質量部以下である。
【0094】
そして、第2工程では、混合物と、ラジカル重合性樹脂とを混合する。これにより、ラジカル硬化性樹脂組成物を製造する。
【0095】
ラジカル硬化性樹脂組成物において、アルデヒド捕捉剤の配合割合は、ラジカル重合性樹脂および低収縮化剤の総量100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、1.5質量部以上、また、例えば、4質量部以下、好ましくは、3質量部以下、より好ましくは、2.5質量部以下である。
【0096】
アルデヒド捕捉剤の配合割合が、上記下限以上であれば、アルデヒドの発散量を抑制することができる。
【0097】
また、アルデヒド捕捉剤の配合割合が、上記上限以下であれば、生産性および成形性を向上させることができる。
【0098】
また、ラジカル硬化性樹脂組成物において、低収縮化剤の配合割合は、ラジカル重合性樹脂および低収縮化剤の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。
【0099】
また、ラジカル硬化性樹脂組成物において、低収縮化ポリマーの配合割合は、ラジカル重合性樹脂および低収縮化剤の総量100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、15質量部以上、また、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
【0100】
また、ラジカル硬化性樹脂組成物において、ラジカル重合性樹脂の配合割合は、ラジカル重合性樹脂および低収縮化剤の総量100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、40質量部以上、また、例えば、80質量部以下である。
【0101】
また、第2工程において、好ましくは、硬化剤を混合する。このような場合には、ラジカル硬化性樹脂組成物は、硬化剤を含む。
【0102】
硬化剤としては、例えば、有機過酸化物が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、パーオキシエステル、および、パーオキシモノカーボネートが挙げられる。
【0103】
パーオキシエステルとしては、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ヘキシルパーオキシアセテート、および、t-アミルパーオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエートが挙げられる。パーオキシエステルとして、好ましくは、t-ブチルパーオキシベンゾエートが挙げられる。また、パーオキシエステルとして、スチレンの発散量を低減する観点から、好ましくは、t-ヘキシルパーオキシアセテート、および、t-アミルパーオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエートが挙げられる。
【0104】
パーオキシモノカーボネートとしては、例えば、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピル(モノ)カーボネート、および、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシカーボネートが挙げられる。パーオキシモノカーボネートとして、好ましくは、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネートが挙げられる。
【0105】
硬化剤として、スチレンの発散量をより一層低減する観点から、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネートが挙げられる。
【0106】
一方、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネートを用いるとスチレンの発散量をより一層低減できるものの、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネートに起因して、アルデヒドが発生するため、アルデヒドの発散量が増加する傾向がある。しかし、このラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法では、予め、低収縮化剤に、アルデヒド捕捉剤を溶解させ、混合物を得、その混合物と、ラジカル重合性樹脂とを混合するため、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネートを用いる場合であっても、アルデヒドの発散量の増加を抑制できる。
【0107】
硬化剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0108】
硬化剤の配合割合は、ラジカル重合性樹脂および低収縮化剤の総量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。
【0109】
また、第2工程において、さらに、適宜の割合で添加剤を混合することもできる。このような場合には、ラジカル硬化性樹脂組成物は、添加剤を含む。
【0110】
添加剤としては、例えば、重合禁止剤、湿潤分散剤、離型剤、着色剤、難燃剤、柄材、抗菌剤、親水剤、光触媒、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、分離防止剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、チクソ付与剤、チクソ安定剤、および、重合促進剤が挙げられる。添加剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0111】
重合禁止剤は、可使時間、硬化反応を調整するために配合される。
【0112】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン化合物、ベンゾキノン化合物、カテコール化合物、フェノール化合物、および、N-オキシル化合物が挙げられる。重合禁止剤として、好ましくは、ベンゾキノン化合物が挙げられる。ベンゾキノン化合物としては、例えば、p-ベンゾキノン、および、メチル-p-ベンゾキノンが挙げられる。ベンゾキノン化合物として、好ましくは、p-ベンゾキノンが挙げられる。
【0113】
重合禁止剤の配合割合は、ラジカル重合性樹脂および低収縮化剤の総量100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、また、例えば、0.1質量部以下である。
【0114】
そして、上記したように、必要により、硬化剤および添加剤を混合した後に、必要により、充填材を混合することもできる。
【0115】
充填材としては、無機充填材が挙げられる。無機充填材としては、例えば、酸化物、水酸化物(例えば、水酸化アルミニウム)、炭酸塩、硫酸塩、シリカ、ガラスパウダー、中空フィラー、ケイ酸塩、フッ化物、リン酸塩、および、粘土鉱物が挙げられる。充填材として、好ましくは、炭酸塩(好ましくは、炭酸カルシウム)が挙げられる。
【0116】
充填材は、単独使用または2種以上併用できる。
【0117】
充填材の配合割合は、ラジカル重合性樹脂および低収縮化剤の総量100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、50質量部以上、好ましくは、80質量部以上、より好ましくは、100質量部以上、さらに好ましくは、150質量部以上、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、210質量部以下である。
【0118】
とりわけ、充填材が、水酸化アルミニウム、または、炭酸カルシウムである場合には、充填材の配合割合は、ラジカル重合性樹脂および低収縮化剤の総量100質量部に対して、例えば、80質量部以上、好ましくは、100質量部以上、より好ましくは、150質量部以上、また、例えば、210質量部以下である。
【0119】
また、とりわけ、中空フィラーが、中空フィラーである場合には、例えば、5質量部以上、また、例えば、60質量部以下である。
【0120】
そして、このようなラジカル硬化性樹脂組成物に、強化繊維を配合させることにより、成形材料を調製できる。そして、このような成形材料から、公知の方法により、成形品を得ることができる。
【0121】
強化繊維としては、例えば、無機繊維、有機繊維および天然繊維が挙げられる。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、および、セラミック繊維が挙げられる。有機繊維としては、例えば、ポリビニルアルコール系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、フッ素樹脂系繊維、および、フェノール系繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、麻およびケナフが挙げられる。
【0122】
強化繊維として、好ましくは、無機繊維が挙げられる。強化繊維として、より好ましくは、炭素繊維、ガラス繊維が挙げられる。
【0123】
強化繊維の形状は、例えば、クロス状(例えば、ロービングクロス)、マット状(例えば、チョップドストランドマット、プリフォーマブルマット、コンティニュアンスストランドマット、および、サーフェーシングマット)、ストランド状、ロービング状、不織布状、および、ペーパー状が挙げられる。
【0124】
強化繊維の長さは、特に制限されず、例えば、1.5mm以上、強度を向上させる観点から、好ましくは、5mm以上、より好ましくは、15mm以上であり、また、例えば、80mm以下、好ましくは、40mm以下である。
【0125】
そして、成形材料は、強化繊維にラジカル硬化性樹脂組成物を含浸させることより、例えば、シート状の成形材料として得られる。
【0126】
成形材料を調製する方法としては、公知の方法が挙げられる。具体的には、SMC(シートモールディングコンパウンド)、TMC(シックモールディングコンパウンド)、BMC(バルクモールディングコンパウンド)が挙げられる。好ましくは、SMCが挙げられる。
【0127】
強化繊維の含有割合は、成形材料に対して、例えば、20質量%以上、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0128】
これにより、成形材料が得られる。
【0129】
次いで、成形材料を、加熱圧縮成形(後述)できるように、増粘させるために、必要により、増粘剤を混合した後、熟成する。
【0130】
増粘剤としては、例えば、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、および、ポリイソシアネート化合物が挙げられる。アルカリ土類金属酸化物としては、例えば、酸化マグネシウムが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、および、水酸化カルシウムが挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が挙げられる。
【0131】
増粘剤として、好ましくは、アルカリ土類金属酸化物が挙げられる。増粘剤として、より好ましくは、酸化マグネシウムが挙げられる。
【0132】
増粘剤は、単独使用または2種以上併用できる。
【0133】
増粘剤の配合割合は、ラジカル重合性樹脂および低収縮化剤の総量100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上、より好ましくは、0.5質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。
【0134】
熟成温度は、例えば、20℃以上、また、例えば、50℃以下である。熟成時間は、例えば、8時間以上、また、例えば、120時間以下である。
【0135】
そして、成形材料を、公知の方法により、加熱圧縮成形する。
【0136】
加熱圧縮成形の条件は、目的および用途に応じて、適宜設定される。具体的には、成形温度は、例えば、100℃以上、好ましくは、120℃以上、また、例えば、200℃以下、好ましくは、160℃以下である。また、成形圧力は、例えば、1MPa以上、好ましくは、3MPa以上、より好ましくは、5MPa以上、また、例えば、30MPa以下、好ましくは、15MPa以下である。
【0137】
これにより、成形材料が硬化するとともに、成形材料が成形される。そして、成形材料の硬化物を含む成形品が得られる。
【0138】
成形品の厚みは、例えば、0.1mm以上、好ましくは、1.0mm以上、また、例えば、10mm以下、好ましくは、5mm以下である。
【0139】
成形品は、上記したラジカル硬化性樹脂組成物を含む成形材料の硬化物を含む。そのため、硬化時のアルデヒドの発散量を抑制しつつ、かつ、生産性に優れる。
【0140】
そして、このような成形品は、例えば、建材、ハウジング類、注型材、機械部品、電子・電気部品、車両、船舶、航空機などの各部材などに幅広く使用できる。
【0141】
<作用効果>
ラジカル硬化性樹脂組成物の製造方法は、低収縮化剤に、アルデヒド捕捉剤を溶解させ、混合物を得る第1工程と、混合物と、ラジカル重合性樹脂とを混合する第2工程とを備える。つまり、この方法では、予め、低収縮化剤に、アルデヒド捕捉剤を溶解させ、混合物を得、その混合物と、ラジカル重合性樹脂とを混合する。そのため、硬化時のアルデヒドの発散量を抑制しつつ、かつ、生産性に優れるラジカル硬化性樹脂組成物を製造することができる。
【0142】
詳しくは、例えば、特許文献1では、不飽和ポリエステル樹脂組成物と、低収縮化剤と、ホルムアルデヒド捕捉剤とを一括で混合することにより、樹脂組成物を製造している。ホルムアルデヒド捕捉剤を、そのまま混合すると、比表面積が小さくなり、ホルムアルデヒドの抑制効果が低下する。
【0143】
一方、アルデヒド捕捉剤を、一旦、溶解すれば、その後に析出するアルデヒド捕捉剤のサイズ(粒子径)を小さくできる。そうすると、比表面積が大きくなり、その結果、アルデヒドの抑制効果を向上できる。
【0144】
そのため、この方法では、第1工程において、一旦、低収縮化剤に、エチレン尿素(アルデヒド捕捉剤)を溶解させている。これにより、硬化時のアルデヒドの発散量を抑制できる。
【0145】
一方、ラジカル重合性樹脂にアルデヒド捕捉剤を溶解させることも検討されるが、ラジカル重合性樹脂に、アルデヒド捕捉剤を溶解させると、ラジカル重合性樹脂およびアルデヒド捕捉剤の反応および/または配位(とりわけ、ラジカル重合性樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂である場合には、ラジカル重合性樹脂における遊離のカルボキシル基と、アルデヒド捕捉剤(例えば、エチレン尿素)との反応)によって、増粘性が低下する。増粘性が低下すると、成形材料にべたつきが生じ、例えば、成形材料の製造時に、成形材料に張り合わされるキャリアフィルムから、成形材料を剥離しづらくなる。そうすると、生産性が低下する。
【0146】
そのため、この方法では、第1工程において、ラジカル重合性樹脂ではなく、低収縮化剤に、アルデヒド捕捉剤を溶解させている。これにより、生産性を向上させるとともに、硬化時のアルデヒドの発散量を抑制できる。
【実施例0147】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替できる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0148】
<成分の詳細>
以下の実施例および比較例に用いる有効成分の詳細を下記に示す。
不飽和ポリエステル樹脂:合成例1の不飽和ポリエステル樹脂、スチレン含有量40質量%
飽和ポリエステル樹脂:低収縮化剤、合成例2の飽和ポリエステル樹脂、スチレン含有量40質量%
スチレン-ブタジエンブロック共重合エラストマー溶液:低収縮化剤、商品名「Kraton(登録商標)G1701」(クレイトンポリマー社製)、スチレン含有量70質量%
ポリ酢酸ビニル溶液:低収縮化剤、数平均分子量30000、スチレン含有量60質量%
ポリスチレン溶液:低収縮化剤、数平均分子量110000、スチレン含有量65質量%
ポリメタクリル酸メチル溶液:低収縮化剤、数平均分子量60000、スチレン含有量70質量%
TAIC:t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、硬化剤
TBPB:t-ブチルパーオキシベンゾエート、硬化剤
【0149】
<不飽和ポリエステル樹脂の調製>
合成例1
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および攪拌機を備えたフラスコに、無水マレイン酸10.0モル、プロピレングリコール6.5モル、ネオペンチルグリコール4.0モルを仕込んだ。その後、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら200℃~210℃で重縮合反応させた。これにより、酸価が26.5mgKOH/gの不飽和ポリエステルを得た。なお、酸価の測定方法は、JIS K6901(2008年)に準拠した。次いで、この不飽和ポリエステル100質量部に対し、重合禁止剤としてハイドロキノンを0.01質量部、および、スチレンを66.7質量部添加し、これらを均一に混合した。これにより、不飽和ポリエステル樹脂(スチレン含有量40質量%)を得た。
【0150】
<飽和ポリエステル樹脂の調製>
合成例2
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および攪拌機を備えたフラスコに、イソフタル酸4.0モル、ネオペンチルグリコール10.5モルを仕込んだ。その後、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら200℃~210℃で重縮合反応させた。その後、反応生成物の酸価が10mgKOH/gになった時点で150℃まで冷却した。次いで、アジピン酸6.0モルを仕込み、再び210℃~220℃で反応させた。これにより、酸価9.5mgKOH/gの飽和ポリエステルを得た。この飽和ポリエステル100質量部に対し、重合禁止剤としてのハイドロキノンを0.01質量部、および、スチレンを66.7質量部添加し、これらを均一に混合した。これにより、飽和ポリエステル樹脂(スチレン含有率40質量%)を得た。
【0151】
<ラジカル硬化性樹脂組成物、成形材料および成形品の製造>
実施例1~実施例8
[第1工程]
表1および表2に記載の配合処方に従って、低収縮化剤に、エチレン尿素を添加し、70~80℃に加熱し、1時間撹拌した。これにより、低収縮化剤に、エチレン尿素を溶解させ、混合物を得た。その後、得られた混合物を、室温(25℃)まで冷却した。
【0152】
[第2工程]
表1および表2に記載の配合処方に従って、混合物と、ラジカル重合性樹脂と、硬化剤と、重合禁止剤とを混合し、その後、充填材を混合した。
【0153】
これにより、ラジカル硬化性樹脂組成物を製造した。
【0154】
以上、実施例1~実施例8では、低収縮化剤に、エチレン尿素を溶解させた。表1および表2の溶解方法の欄には、「低収縮化剤に溶解」と示す。
【0155】
その後、ラジカル硬化性樹脂組成物に、増粘剤を配合し、次いで、強化繊維を添加して充分に含浸させた。その後、40℃、2日間熟成させて、成形材料を得た。
【0156】
成形材料から、縦210mm×横210mmの薄板成形材料を切り出し、これを2枚積層して、SMC成形用ポジティブ金型(縦300mm×横300mmの平板)の中央に配置し、成形温度(上型/下型)を145℃/130℃として、成形圧力10MPaの条件で4分間加熱および加圧した。これにより、厚み2mmの成形品を得た。
【0157】
比較例1および比較例2
表2に記載の配合処方に従って、ラジカル重合性樹脂に、エチレン尿素を添加し、70~80℃に加熱し、1時間撹拌した。これにより、ラジカル重合性樹脂に、エチレン尿素を溶解させ、混合物を得た。その後、得られた混合物を、室温(25℃)まで冷却した。
【0158】
次いで、混合物と、低収縮化剤と、硬化剤と、重合禁止剤とを混合し、その後、充填材を混合した。
【0159】
これにより、ラジカル硬化性樹脂組成物を製造した。
【0160】
以上、比較例1および比較例2では、ラジカル重合性樹脂に、エチレン尿素を溶解させた。表2の溶解方法の欄には、「ラジカル重合性樹脂に溶解」と示す。
【0161】
次いで、実施例1と同様の手順に基づいて、成形材料および成形品を製造した。なお、比較例2は、切り出した成形材料からキャリアフィルムをはがすことができなかった、そのため、成形することができなかった。
【0162】
比較例3
ラジカル重合性樹脂と、低収縮化剤と、エチレン尿素と、硬化剤と、重合禁止剤とを一括で混合し、その後、充填材を混合した。
【0163】
これにより、ラジカル硬化性樹脂組成物を製造した。
【0164】
以上、比較例3では、ラジカル重合性樹脂と、低収縮化剤と、エチレン尿素とを一括で混合した。表2の溶解方法の欄には、「一括混合」と示す。
【0165】
比較例4
ラジカル重合性樹脂と、エチレン尿素と、硬化剤と、重合禁止剤とを一括で混合し、その後、充填材を混合した。
【0166】
これにより、ラジカル硬化性樹脂組成物を製造した。
【0167】
以上、比較例4では、低収縮化剤を配合しなかった。表2の溶解方法の欄には、「未添加」と示す。
【0168】
次いで、実施例1と同様の手順に基づいて、成形材料および成形品を製造した。
【0169】
<評価>
[生産性]
生産性について、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表1および表2に示す。
(基準)
〇:切り出した成形材料からキャリアフィルムを容易にはがすことができた。
△:切り出した成形材料からキャリアフィルムをはがすとフィルムに、若干、成形材料が残った。また、成形材料に若干のべたつきがあった。
▲:切り出した成形材料からキャリアフィルムをはがすとフィルムに、成形材料が残った。また、成形材料にべたつきがあった。
×:切り出した成形材料からキャリアフィルムをはがすことができなかった。また、キャリアフィルムに成形材料がかなり残った。また、成形材料に、べたつきがあり、成形できなかった。
【0170】
[成形収縮率]
各実施例および各比較例の成形品について、成形に用いた金型および成形品の寸法を用いる他は、JIS K6911(1995年)に準拠して、成形収縮率を測定した。その結果を表1および表2に示す。
【0171】
[外観]
生産性について、以下の基準に基づき、評価した。その結果を表1および表2に示す。
(基準)
〇:成形品の表面(金型高温側)に、黄変および膨れなどが発生しなかった。
△:成形品の表面(金型高温側)に、黄変が発生した。
×:成形品の表面(金型高温側)に、ヒケ、黄変、凹凸、および、膨れなどが発生した。
【0172】
[VOC測定]
JASO(公益社団法人自動車技術会規格)M902に準拠して、VOC(揮発性有機化合物)測定を実施した。
【0173】
具体的には、各実施例および各比較例の成形品について、その製造時24時間経過後に、所定のサイズ(縦100×横100×厚み2mm)にカットし、テストピースを製造した。
【0174】
各テストピースの裏面(成型低温側)に両面テープ(市販の低VOCタイプ(無溶剤))でアルミ箔の裏面(くすんだ側)が表になるよう貼り付けた。
【0175】
VOC測定の結果を表1および表2に示す。また、以下の基準に基づき、アルデヒド発散量およびVOC発散量を評価した。その結果を表1および表2に示す。
【0176】
【表1】
【0177】
【表2】