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特開2023-130259対象物特定システム、および対象物特定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130259
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】対象物特定システム、および対象物特定方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20230912BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H04N7/18 K
H04N7/18 U
G06F3/01 570
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034841
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000233491
【氏名又は名称】株式会社日立システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐貴
【テーマコード(参考)】
5C054
5E555
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054CE01
5C054FC12
5C054FE19
5C054HA19
5E555AA64
5E555BA38
5E555BB38
5E555BC04
5E555CA42
5E555CB66
5E555CC05
5E555EA22
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】作業者に装着された撮像部が撮像した画像に基づいて対象物を適切に特定する。
【解決手段】作業者に装着されたカメラ11が撮像した画像に基づいて、作業者が指差した対象物を特定する対象物特定システム10であって、作業者が所定距離を隔てて設けられた基準対象物に正対した状態でカメラが撮像した基準画像に基づいて、作業者の目とカメラとの位置関係を算出する算出部21と、カメラが撮像した空間画像に基づいて、カメラが撮像した空間の環境地図を作成する作成部22と、位置関係に基づいて、環境地図上の作業者の目および指先と対象物とを含む目線平面を設定する設定部23と、作業者が対象物を指差した状態で指先および対象物をカメラが撮像した撮像画像Pi上の中央座標と指先の座標との座標差に基づいて、目線平面上の作業者の目線を推定する推定部24と、目線に基づいて、作業者が指差した対象物を特定する特定部25と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者に装着された単眼の撮像部が撮像した画像に基づいて、前記作業者が指差した対象物を特定する対象物特定システムであって、
前記作業者が所定距離を隔てて設けられた基準対象物に正対した状態で前記撮像部が撮像した基準画像に基づいて、前記作業者の目と前記撮像部との位置関係を算出する算出部と、
前記撮像部が撮像した空間画像に基づいて、前記撮像部が撮像した空間の環境地図を作成する作成部と、
前記位置関係に基づいて、前記環境地図上の前記作業者の目および指先と前記対象物とを含む目線平面を設定する設定部と、
前記作業者が前記対象物を指差した状態で前記指先および前記対象物を前記撮像部が撮像した所定画像上の中央座標と前記指先の座標との座標差に基づいて、前記目線平面上の前記作業者の目線を推定する推定部と、
前記目線に基づいて、前記作業者が指差した対象物を特定する特定部と、を備える対象物特定システム。
【請求項2】
作業者に装着された単眼の撮像部が撮像した画像に基づいて、前記作業者が注視している対象物を特定する対象物特定システムであって、
前記作業者が所定距離を隔てて設けられた基準対象物に正対した状態で前記撮像部が撮像した基準画像に基づいて、前記作業者の目と前記撮像部との位置関係を算出する算出部と、
前記撮像部が撮像した空間画像に基づいて、前記撮像部が撮像した空間の環境地図を作成する作成部と、
前記位置関係に基づいて、前記環境地図上の前記作業者の目線を推定する推定部と、
前記目線に基づいて、前記作業者が注視している対象物を特定する特定部と、を備える対象物特定システム。
【請求項3】
前記基準対象物は、所定高さに垂直に設けられたマーカである、
請求項1または2に記載の対象物特定システム。
【請求項4】
複数の前記作業者毎に個人視差を記録する記憶部を備え、
前記設定部は、前記位置関係および前記個人視差に基づいて、前記目線平面を設定する、
請求項1に記載の対象物特定システム。
【請求項5】
前記作業者に対する複数の高さ毎に当該作業者の上下視差を記録する記憶部を備え、
前記設定部は、前記位置関係および前記上下視差に基づいて、前記目線平面を設定する、
請求項1に記載の対象物特定システム。
【請求項6】
複数の前記対象物毎に当該対象物からの所定範囲を記録する記憶部と、
アラートを発生する警告部と、
を備え、
前記算出部は、前記環境地図に基づいて、前記指先と前記対象物との距離を算出し、
前記警告部は、前記指先と前記対象物との距離が前記所定範囲に近づいた場合、アラートを発生する、
請求項1または2に記載の対象物特定システム。
【請求項7】
アラートを発生する警告部を備え、
前記算出部は、前記作業者の目と前記撮像部との前記位置関係に基づいて、前記作業者の目と前記指先との距離を算出し、
前記警告部は、前記作業者の目と前記指先との距離が、第一距離未満または前記第一距離よりも大きい第二距離以上の場合、または前記環境地図上の前記指先の位置が、過去の前記指先の位置から第三距離以上離れた場合、アラートを発生する、
請求項1に記載の対象物特定システム。
【請求項8】
前記所定画像上に前記対象物と、前記作業者の目線とのうち少なくとも何れか一つを強調した加工画像を表示する表示部を備える、
請求項1または2に記載の対象物特定システム。
【請求項9】
作業者に装着された単眼の撮像部が撮像した画像に基づいて、前記作業者が指差した対象物を特定する対象物特定システムによる対象物特定方法であって、
前記作業者が所定距離を隔てて設けられた基準対象物に正対した状態で前記撮像部が撮像した基準画像上の中央座標と前記対象物の座標の座標差に基づいて、前記作業者の目と前記撮像部との位置関係を算出し、
前記撮像部が撮像した空間画像に基づいて、前記撮像部が撮像した空間の環境地図を作成し、
前記位置関係に基づいて、前記環境地図上の前記作業者の目および指先と前記対象物とを含む目線平面を設定し、
前記作業者が前記対象物を指差した状態で前記指先および前記対象物を前記撮像部が撮像した所定画像上の中央座標と前記指先の座標との座標差に基づいて、前記目線平面上の前記作業者の目線を推定し、
前記目線に基づいて、前記作業者が指差した対象物を特定する対象物特定方法。
【請求項10】
作業者に装着された単眼の撮像部が撮像した画像に基づいて、前記作業者が注視している対象物を特定する対象物特定システムによる対象物特定方法であって、
前記作業者が所定距離を隔てて設けられた基準対象物に正対した状態で前記撮像部が撮像した基準画像上の中央座標と前記対象物の座標の座標差に基づいて、前記作業者の目と前記撮像部との位置関係を算出し、
前記撮像部が撮像した空間画像に基づいて、前記撮像部が撮像した空間の環境地図を作成し、
前記位置関係に基づいて、前記環境地図上の前記作業者の目線を推定し、
前記目線に基づいて、前記作業者が注視している対象物を特定する対象物特定方法。
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【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物特定システム、および対象物特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバ等の機器の保守点検作業では、作業者が対象物を指差呼称することがある。指差呼称では、作業者は、腕を前方に出しながら指先を対象物に向け、掛け声を唱える。
【0003】
特許文献1には、対象物と、対象物から離れてその対象物を指示する作業者の指先とを作業者に装着された撮像部によって撮像し、撮像した画像上において指示者の意図した指示位置を特定する情報処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-224890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
保守点検作業では、作業者の体にカメラを装着すると、カメラが撮像した撮像画像に基づいて、作業者が指差呼称を行っているかと、どの対象物を指差したかを把握することができる。しかし、作業者の目線と、作業者に装着されたカメラの向きとには、視差が生じる。そのため、指差呼称した作業者の視野角(視界)では、指先と対象物とが重なっている場合でも、作業者に装着されたカメラから撮像した画像では、ずれが生じる。このように、カメラで撮像した画像から作業者が指差した対象物を特定することは容易ではない。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、その目的は、作業者に装着された撮像部が撮像した画像に基づいて対象物を適切に特定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決するために、本発明は、作業者に装着された撮像部が撮像した画像に基づいて、前記作業者が指差した対象物を特定する対象物特定システムであって、前記作業者が所定距離を隔てて設けられた基準対象物対象物に正対した状態で前記撮像部が撮像した基準画像に基づいて、前記作業者の目と前記撮像部との位置関係を算出する算出部と、前記撮像部が撮像した空間画像に基づいて、前記撮像部が撮像した空間の環境地図を作成する作成部と、前記位置関係に基づいて前記環境地図上の前記作業者の目および指先と前記対象物とを含む目線平面を設定する設定部と、前記作業者が前記対象物を指差した状態で前記指先および前記対象物を前記撮像部が撮像した所定画像上の目線を推定する推定部と、前記目線に基づいて、前記所定画像を補正する補正部と、前記補正部が補正した補正画像に基づいて、前記作業者が指差した対象物を特定する特定部と、を備える。
尚、本発明における「装着」とは、作業者が身に着けたヘルメットなどを介して取り付けられた状態も含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業者に装着された撮像部が撮像した画像に基づいて対象物を適切に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る作業現場における対象物特定システムの模式図。
図2】実施例1に係る作業者の視界とカメラ画像を比較する図。
図3】実施例1に係る指差呼称した作業者の指先の位置を説明する図。
図4】実施例1に係る対象物特定システムの機能ブロック図。
図5】実施例1に係る対象物特定処理を説明する図。
図6】実施例1に係る接近距離を説明する模式図。
図7】実施例1に係る表示装置の画面を示す図。
図8】実施例1に係るキャリブレーション作業を説明する模式図。
図9】実施例1に係るキャリブレーション作業で算出される視差を説明する図。
図10】実施例1に係る対象物特定処理を示すフローチャート。
図11】実施例2に係る作業現場における対象物特定システムの図。
図12】実施例2に係る対象物特定処理を示すフローチャート。
図13】実施例3に係る作業現場における対象物特定システムの図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る対象物特定システムの具体例を、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は実施例によって限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。
【実施例0011】
図1は、実施例1に係る作業現場における対象物特定システムの模式図である。
【0012】
対象物特定システム10は、作業者Wが指差した対象物Tを特定するシステムである。対象物Tは、例えば、サーバ等の機器または設備である。作業者Wは、対象物Tの保守および点検中に、対象物Tに対して指差呼称を行う。指差呼称では、作業者Wは、腕を前方に出しながら指先Fを対象物Tに向け、掛け声を唱える。
【0013】
作業者Wは、頭部にヘルメットHを装着している。ヘルメットHの上部前面には、対象物特定システム10を構成する「撮像部」の一例としての単眼のカメラ11が取り付けられている。尚、カメラ11は、作業者Wの頭部以外に、胸部などの他の部位に装着されてもよい。さらに、カメラ11以外の対象物特定システム10は、カメラ11と一体に設けられてもよいし、カメラ11と無線または有線で通信可能な状態で作業者Wのポケット内または他の場所に設けられてもよい。
【0014】
ここで、カメラ11は、作業者Wに装着されたヘルメットHに取り付けられており、作業者Wの目線L1よりも上方に位置する。カメラ11の向きL2は、斜め下向きに固定されている。このため、作業者Wの目線L1と、カメラの向きL2とには、視差θが生じる。
【0015】
図2は、実施例1に係る作業者の視界とカメラ画像とを比較する図である。
【0016】
対象物Tを指差呼称した作業者Wの視野角(視界)Vでは、指先Fと対象物Tとが視野角Vの中央で重なる。一方、対象物Tを指差呼称した作業者Wをカメラ11が撮像した「所定画像」の一例としての撮像画像i1では、指先Fが撮像画像i1の中央、対象物Tが撮像画像i1の上部にそれぞれ表示される。撮像画像i1に表示される指先Fおよび対象物Tの位置の差(ずれ)は、作業者Wの目線とカメラ11との視差θの大きさと、カメラ11から対象物Tまでの距離に比例する。本実施例では、カメラ11が作業者Wの目線よりも上方にあるため、対象物Tは、撮像画像i1の上部に表示されている。
【0017】
図3は、実施例1に係る指差呼称した作業者の指先の位置を説明する図であり、(a)は、作業者の指先が目線上に位置する状態であり、(b)は、作業者の指先が目線よりも左側に位置する状態である。
【0018】
一般に、作業者Wが指差呼称すると、作業者Wの指先Fは、作業者Wの視野角Vの上下中央付近に位置する。つまり、作業者W、または作業者Wの動作(腕を曲げる角度)が指差呼称毎に異なったとして、対象物Tを指差呼称した作業者Wの指先Fは、作業者Wの視野角Vの上下中央付近の何れかに位置する。
【0019】
図4は、実施例1に係る対象物特定システムの機能ブロック図であり、図5は、実施例1に係る対象物特定処理を説明する図である。
【0020】
対象物特定システム10は、作業者Wが指差した対象物Tを特定する対象物特定処理を実行する。対象物特定システム10は、単眼のカメラ11と、「記憶部」の一例としてのメモリ12と、プロセッサ13と、警告部14と、表示部15とを備える。
【0021】
カメラ11は、作業者Wが装着したヘルメットHに取り付けられ、対象物Tを撮像する。カメラ11は、対象物Tを撮像した撮像画像i1をプロセッサ13に送信する。
【0022】
メモリ12は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)等の半導体記憶媒体等を有する。メモリ12には、作業者W毎の個人視差と、作業者Wに対する複数の高さ毎に作業者Wの上下視差と、複数の対象物T毎に対象物Tからの所定範囲とが格納されてよい。個人視差は、指差呼称するときの作業者W毎の指先Fの位置の個人差である。上下視差は、高さの異なる対象物Tを作業者Wが指差呼称するときの作業者Wの指先Fの位置の傾向である。所定範囲は、対象物Tに作業者Wが近づくことが許される範囲である。
【0023】
プロセッサ13は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等である。プロセッサ13は、算出部21と、作成部22と、設定部23と、推定部24と、特定部25とを備えている。
【0024】
算出部21は、作業者Wが保守点検作業を開始する前に予め実施される後述するキャリブレーション作業により、作業者Wの目とカメラ11との位置関係を算出する。算出部21は、カメラ11が撮像した空間の後述する環境地図に基づいて、指先Fと対象物Tとの距離を算出してもよい。さらに、算出部21は、作業者Wの目とカメラ11との位置関係に基づいて、作業者Wの目と指先Fとの距離を算出してもよい。
【0025】
作成部22は、カメラ11が撮像した空間画像に基づいて、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等により、カメラ11が撮像した空間の環境地図を作成する。
【0026】
設定部23は、算出部21が算出した位置関係に基づいて、環境地図上の作業者Wの目おおび指先Fと対象物Tとを含む目線平面P(図5(b))を設定する。尚、設定部23は、位置関係および個人視差に基づいて、目線平面Pを設定してもよい。さらに、設定部23は、位置関係および上下視差に基づいて、目線平面Pを設定してもよい。さらに、設定部23は、位置関係、個人視差および上下視差に基づいて、目線平面Pを設定してもよい。
【0027】
推定部24は、撮像画像i1上の中央座標画像と指先Fの座標との座標差に基づいて、目線平面P上の作業者Wの目線L1を推定する(図5(c)参照)。
【0028】
特定部25は、作業者Wの目線L1に基づいて、作業者Wが指差した対象物Tを特定する。このとき、作業者Wの目線L1上には、作業者Wの目および指先Fと対処物Tとがこの順に並ぶ。
【0029】
図6は、実施例1に係る接近距離を説明する模式図である。
【0030】
警告部14は、作業者Wの指先Fと対象物Tとの距離が所定範囲に近づいた場合、アラートAlを発生する。さらに、警告部14は、作業者の目と指先Fとの距離が、第一距離(例えば、15cm)未満または第一距離よりも大きい第二距離(例えば、成人の腕の長さの平均よりも1.5倍以上遠い)の場合、アラートAlを発生する。さらに、警告部14は、環境地図上の指先Fの位置が、過去の指先Fの位置から第三距離以上離れた場合、アラートAlを発生する。
【0031】
図7は、実施例1に係る表示装置の画面を示す図である。
【0032】
表示部15は、ディスプレイ等の表示ディバイスでよい。表示部15は、撮像画像i1上に対象物Tと、作業者Wの目視線L1を強調した加工画像i2を表示する。尚、表示部15は、加工画像i2における対象物Tと、作業者Wの視線とのうち何れか一つを強調して表示してもよい。
【0033】
次に、作業者Wの目線L1とカメラ11の向きL2との視差θを算出するキャリブレーション作業について説明する。
【0034】
図8は、実施例1に係るキャリブレーション作業を説明する模式図であり、図9は、実施例1に係るキャリブレーション作業で算出される視差を説明する図である。
【0035】
カメラ11は、図8に示すように、作業者Wの体(例えば、前額部)に装着される。作業者Wから所定距離を隔てた位置には、「基準対象物」の一例としてのマーカM(例えば、ARマーカ)が設けられている。マーカMは、所定高さに垂直に設けられている。これにより、作業者Wは、容易にキャリブレーションすることが可能となる。作業者Wは、マーカMから所定距離を隔てた位置から、マーカMに正対した状態で直立し、マーカMに目線L1を合わせる。
【0036】
カメラ11は、マーカMを撮像する。算出部21は、カメラ11が撮像した撮像画像i1内のマーカMを認識し、撮像画像i1の座標におけるマーカMの二次元座標pMと、マーカMとカメラ11の位置関係を示す回転ベクトルRと、並進ベクトルt=(tx,ty,tz)とを算出する。このとき、目線平面P(目線L1)上のマーカMは、カメラ11からt(m)離れている場合、カメラ11の座標系(撮像画像i1)では、座標pMに撮像される。
【0037】
算出部21は、回転ベクトルRに基づいて、目線L1とカメラ11の向きL2との視差θを算出する。算出部21は、座標pMと、視差θとに基づいて、画像座標系から目線平面Pへの変換が可能になり、撮像画像i1内の指先座標を三次元座標へ変換することができる。尚、作業者Wの目は、カメラ11の垂直下にあるため、目の座標は、(0,0,tz)となる。
【0038】
図10は、実施例1に係る対象物特定処理を示すフローチャートである。
【0039】
まず、算出部21は、作業者Wが保守点検作業を開始する前にキャリブレーション作業により、作業者Wの目とカメラ11との位置関係を算出する(S1)。
【0040】
次に、作成部22は、カメラ11が撮像した空間画像に基づいて、SLAM等により、カメラ11が撮像した空間の環境地図を作成する(S2)。次に、設定部23は、算出部21が算出した位置関係に基づいて、環境地図上の作業者Wの目および指先Fと対象物Tとを含む目線平面Pを設定する(S3)。
【0041】
次に、推定部24は、撮像画像i1上の中央座標画像と指先Fの座標との座標差に基づいて、目線平面P上の作業者Wの目線L1を推定する(S4)。次に、特定部25は、作業者Wの目線L1に基づいて、作業者Wが指差した対象物Tを特定する(S5)。
【0042】
この構成によれば、作業者Wに装着されたカメラ11が撮像した画像に基づいて、作業者Wが指差した対象物Tを特定する対象物特定システム10は、算出部21と、作成部22と、設定部23と、推定部24と、特定部25とを備える。算出部21は、作業者Wが所定距離を隔てて設けられたマーカMに正対した状態でカメラ11が撮像したマーカMに基づいて、作業者Wの目とカメラ11との位置関係を算出する。作成部22は、カメラ11が撮像した空間画像に基づいて、カメラ11が撮像した空間の環境地図を作成する。設定部23は、位置関係に基づいて、環境地図上の作業者Wの目および指先Fと対象物Tとを含む目線平面Pを設定する。推定部24は、作業者Wが対象物Tを指差した状態で指先Fおよび対象物Tをカメラ11が撮像した撮像画像i1上の中央座標と指先の座標との座標差に基づいて、目線平面P上の作業者Wの目線L1を推定する。特定部25は、目線L1に基づいて、作業者Wが指差した対象物Tを特定する。これにより、作業者Wに装着されたカメラ11が撮像した画像に基づいて、作業者Wが指差した対象物Tを適切に特定することができる。
【0043】
さらに、複数の作業者W毎に個人視差を記録するメモリ12を備え、設定部23は、作業者Wの目とカメラ11との位置関係および個人視差に基づいて、目線平面Pを設定する。これにより、作業者Wに個人差がある場合でも、適切に目線平面Pを設定することができる。
【0044】
さらに、作業者Wに対する複数の高さ毎に作業者Wの上下視差を記録するメモリ11を備え、設定部23は、作業者Wの目とカメラ11との位置関係および上下視差に基づいて、目線平面を設定する。これにより、作業者Wが対象物Tを見上げる作業現場または見下げる作業現場であっても、目線平面を適切に設定することができる。
【0045】
さらに、複数の対象物T毎に対象物Tからの所定範囲を記録するメモリ12と、アラートAlを発生する警告部14と、を備え、算出部21は、環境地図に基づいて、指先Fと対象物Tとの距離を算出し、警告部14は、指先Fと対象物Tとの距離が所定範囲に近づいた場合、アラートAlを発生する。これにより、作業者Wが通電している対象物Tに必要以上に近づくことを抑制することができる。
【0046】
さらに、アラートAlを発生する警告部14を備え、算出部21は、作業者Wの目とカメラ11との位置関係に基づいて、作業者Wの目と指先Fとの距離を算出し、警告部14は、作業者Wの目と指先Fとの距離が、第一距離未満または第一距離よりも大きい第二距離以上の場合、または環境地図上の指先Fの位置が、過去の指先Fの位置から第三距離以上離れた場合、アラートAlを発生する。これにより、カメラ11が他の物体に衝突したり、カメラ11の留め具が緩んだりして、カメラ11の位置および向きが変更されたことを作業者Wが確認することができる。
【実施例0047】
本発明の実施例2に係る対象物特定システム30について説明する。なお、第2実施形態に係る対象物特定システム30は、第1実施例に係る対象物特定システム10とは、プロセッサ33の構成が異なるだけであり、その他の構成は、実施例1に係る対象物特定システム10と同様である。したがって、実施例1との相違を中心に述べる。
【0048】
図11は、実施例2に係る作業現場における対象物特定システムの図である。図12は、実施例2に係る対象物特定処理を示すフローチャートである。
【0049】
対象物特定システム30のプロセッサ33は、算出部21と、作成部22と、推定部44と、特定部45とを備えている。
【0050】
実施例1では、作業者Wが指差呼称すると、作業者Wの指先Fは、作業者Wの視野角Vの上下中央付近に位置すると仮定した。実施例2では、指先Fが作業者Wの視野角Vの上下左右中央付近に位置すると仮定する事により、目線平面Pを設定することなく目線L1を推定する事が可能になる。従って、推定部44は、上記仮定と作業者Wの目とカメラ11との位置関係から目線L1を推定する。特定部45は、目線L1に基づいて作業者Wが視界の上下左右中心付近で注視している対象物Tを特定する。また、上記仮定を置いた場合、目線L1の推定に指先Fの情報はいらないため、本実施例では指差呼称を実施しなくてもよい。
【0051】
この構成によれば、作業者Wに装着されたカメラ11が撮像した画像に基づいて、作業者Wが注視している対象物Tを容易かつ適切に特定することができる。
【実施例0052】
本発明の実施例3に係る対象物特定システム50について説明する。なお、第3実施形態に係る対象物特定システム50は、第1実施例に係る対象物特定システム10とは、作業者Wへの装着位置が異なるだけであり、その他の構成は、実施例1に係る対象物特定システム10と同様である。したがって、実施例1との相違を中心に述べる。
【0053】
図13は、実施例3に係る作業現場における対象物特定システムの図である。。
【0054】
対象物特定システム50のカメラ11は、作業者Wが頭部に装着するルメットHの右側方に取り付けられている。即ち、対象物特定システム50のカメラ11は、作業者Wの目の右側方に配置されている。
【0055】
この構成によれば、対象物Tを指差呼称した作業者Wの指先Fが、作業者Wの視野角Vの左右中央付近の何れかに位置する場合、作業者Wに装着されたカメラ11が撮像した画像に基づいて、作業者Wが指差した対象物Tを適切に特定することができる。
【0056】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれている。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明する為に詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることもできる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を付け加えることもできる。また、他の実施例の構成の一部について、他の構成を追加したり削除したり置換してもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…対象物特定システム、11…カメラ、12…メモリ、14…警告部、15…表示部、21…算出部、22…作成部、23…設定部、24…推定部、25…特定部、30…対象物特定システム、44…推定部、45…特定部、50…対象物特定システム、Al…アラート、F…指先、i1…撮像画像、i2…加工画像、L1…目線、P…目線平面、T…対象物、W…作業者、θ…視差
図1
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図4
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図13