(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130265
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】し渣搬送装置及びし渣搬送方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/00 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
C02F11/00 A ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034854
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 潤
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 俊康
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA30
4D059BE02
4D059BE11
4D059BE31
4D059BE38
4D059BJ02
4D059BK05
4D059BK11
4D059BK17
4D059CB01
4D059CB04
4D059CB09
4D059EA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の課題は、し渣と水を混合する混合部におけるし渣搬送を促進するとともに、混合部におけるオーバーフローを抑制して、し渣搬送効率を向上させることができるし渣搬送装置及びし渣搬送方法を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、し渣と水を混合する混合部と、混合部で処理された混合水を、し渣と分離水に分離する分離部と、分離部で分離した分離水を混合部へ循環させる循環路と、分離水の一部を排水することにより、混合部に流入させる分離水の流入量を調整する調整部とを備えるし渣搬送装置及びこの装置を用いたし渣搬送方法を提供する。この発明によれば、し渣と水の混合水から分離された分離水を利用し、かつ、混合部に流入させる分離水の流入量を調整することで、混合部におけるし渣搬送を促進するとともに、オーバーフローを抑制し、し渣の搬送効率を向上させることが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
し渣と水を混合する混合部と、
前記混合部で処理された混合水を、し渣と分離水に分離する分離部と、
前記分離部で分離した分離水を前記混合部へ循環させる循環路と、
前記分離水の一部を排水することにより、前記混合部に流入させる分離水の流入量を調整する調整部と、を備えることを特徴とする、し渣搬送装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記分離水の流入量を調整する調整槽を備えることを特徴とする、請求項1に記載のし渣搬送装置。
【請求項3】
前記調整槽内に堰を設けることを特徴とする、請求項2に記載のし渣搬送装置。
【請求項4】
前記調整部は、前記循環路から分岐した配管及び開閉弁を備えることを特徴とする、請求項1に記載のし渣搬送装置。
【請求項5】
し渣と水を混合する混合ステップと、
前記混合ステップで処理された混合水を、し渣と分離水に分離する分離ステップと、
前記分離ステップで分離した分離水を前記混合ステップへ循環させる循環ステップと、
前記分離水の一部を排水することにより、前記混合ステップに流入させる分離水の流入量を調整する調整ステップと、を備えることを特徴とする、し渣搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、し渣搬送装置及びし渣搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場やポンプ場等の沈砂池設備では、汚水中のし渣がバースクリーン等で捕集され、レーキ等により沈砂池から掻き揚げられる。掻き揚げられたし渣は、破砕機を介してし渣混合槽に投入される。し渣混合槽は、さらに水が供給され、破砕されたし渣と水を混合する。この破砕されたし渣と水の混合水は、ポンプの動力により配管移送され、し渣分離槽に搬送される。このようなし渣搬送装置では、し渣混合槽に常時多量の水を補給する必要があり、不経済であるばかりでなく、十分な水を補給できない場合には、採用できない。
【0003】
これに対して、例えば、特許文献1には、し渣と水との混合水を洗浄槽に搬送し、洗浄槽内からし渣を取り出して排出するし渣搬送方法において、洗浄槽の水を混合水に戻す方法が開示されている。また、特許文献1には、このし渣搬送方法により、水の補給をほとんど必要とせず、十分な補給水が得られない場所でも、し渣の搬送を可能とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された方法に基づくし渣搬送では、し渣と水の混合水をポンプ等の動力によって搬送する際に、し渣と水を混合する混合部の底にし渣が溜まってしまうことが課題となっている。
そこで、本発明者らは、し渣と水を混合する混合部内のし渣の搬送を促進するために、混合部で処理されたし渣と水の混合水を、し渣と分離水に分離し、この分離水を混合部に循環させることで、混合部内に分離水の流れを形成し、し渣の搬送を促進できるという知見を得た。
【0006】
また、本発明者らは、この知見に基づき、さらに検討を重ねた結果、混合部に分離水を循環させるに当たり、循環過程における洗浄等により、混合部へ流入する分離水の水量が増加し、混合部におけるオーバーフローを起こすことがあることが分かった。混合部によるオーバーフローの頻度が増加すると、本来搬送されるべきし渣が系外に排出されてしまい、し渣搬送効率が低下するという問題が生じる。
【0007】
したがって、本発明の課題は、し渣の搬送において、し渣と水を混合する混合部におけるし渣搬送を促進するとともに、混合部におけるオーバーフローを抑制して、し渣搬送効率を向上させることができるし渣搬送装置及びし渣搬送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、し渣と水の混合水から分離された分離水を混合部へ循環させる際に、分離水の一部を排水し、混合部に流入させる分離水の流入量を調整することにより、分離水の流れによる混合部内のし渣搬送促進と併せて、混合部におけるオーバーフローの抑制を可能とし、し渣搬送効率を向上させることが可能になることを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のし渣搬送装置及びし渣搬送方法である。
【0009】
上記課題を解決するための本発明のし渣搬送装置は、し渣と水を混合する混合部と、混合部で処理された混合水を、し渣と分離水に分離する分離部と、分離部で分離した分離水を混合部へ循環させる循環路と、分離水の一部を排水することにより、混合部に流入させる分離水の流入量を調整する調整部と、を備えることを特徴とする。
このし渣搬送装置によれば、し渣の搬送において、し渣と水の混合水から分離された分離水を利用し、常時多量の水を補給することなく、し渣を搬送するための分離水の流れを混合部内に形成することで、混合部内のし渣の搬送を促進することができる。
また、混合部に流入させる分離水の流入量を調整することで、混合部におけるオーバーフローを抑制し、し渣の搬送効率を向上させることが可能となる。
【0010】
また、本発明のし渣搬送装置の一実施態様としては、調整部は、分離水の流入量を調整する調整槽を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、調整槽を介した流入量調整を行うことで、分離水の急激な水量変化においても、機械的な操作を高頻度で行うことなく、混合部に供給する分離水の流入量を適切に調整することが可能となる。
【0011】
また、本発明のし渣搬送装置の一実施態様としては、調整槽内に堰を設けるという特徴を有する。
この特徴によれば、調製槽内に設けた堰を介することで、混合部に対して一定量の分離水を循環させることが簡便かつ容易に行うことが可能となる。また、分離水の流量調整に機械的な操作を必要としないため、不具合が生じにくいという利点を奏する。
【0012】
また、本発明のし渣搬送装置の一実施態様としては、調整部は、循環路から分岐した配管及び開閉弁を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、配管の設置スペースのみで、混合部に循環させる分離水の調整を行うことが可能となる。これにより、導入や更新に係るコスト低減が可能となる。
【0013】
上記課題を解決するための本発明のし渣搬送方法は、し渣と水を混合する混合ステップと、混合ステップで処理された混合水を、し渣と分離水に分離する分離ステップと、分離ステップで分離した分離水を混合ステップへ循環させる循環ステップと、分離水の一部を排水することにより、混合ステップに流入させる分離水の流入量を調整する調整ステップと、を備えることを特徴とする。
このし渣搬送方法によれば、し渣の搬送において、し渣と水の混合水から分離された分離水を利用し、常時多量の水を補給することなく、し渣を搬送するための分離水の流れを形成することができ、混合ステップにおけるし渣の搬送を促進することができる。
また、混合ステップに流入させる分離水の流入量を調整することで、混合ステップ時におけるオーバーフローを抑制し、し渣の搬送効率を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、し渣の搬送において、し渣と水を混合する混合部におけるし渣搬送を促進するとともに、混合部におけるオーバーフローを抑制して、し渣搬送効率を向上させることができるし渣搬送装置及びし渣搬送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施態様のし渣搬送装置の構造を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施態様のし渣搬送装置における調整部の別態様を示す概略説明図である。
【
図3】本発明の第2の実施態様のし渣搬送装置の構造を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の第3の実施態様のし渣搬送装置の構造を示す概略説明図である。
【
図5】本発明の第4の実施態様のし渣搬送装置の構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のし渣搬送装置及びし渣搬送方法は、下水処理場やポンプ場等の沈砂池設備等で捕集され、レーキ等により沈砂池から掻き揚げられたし渣の搬送に用いられる。
また、本発明のし渣搬送装置及びし渣搬送方法は、し渣搬送において、ポンプ等により配管移送を行うものである。本発明によれば、し渣を配管で移送するため、汚水の飛散や臭気の漏れ等を防止することができる。
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るし渣搬送装置及びし渣搬送方法の実施態様を詳細に説明する。なお、本発明のし渣搬送方法については、以下のし渣搬送装置の構造及び作動の説明に置き換えるものとする。また、実施態様に記載するし渣搬送装置については、本発明に係るし渣搬送装置を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0018】
〔第1の実施態様〕
図1は、本発明の第1の実施態様におけるし渣搬送装置1Aの構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係るし渣搬送装置1Aは、
図1に示すように、し渣と水が投入され、し渣と水を混合する混合部2Aと、混合部2Aの内部に設置され、し渣を破砕する破砕部3Aと、破砕されたし渣と水の混合水(以下、単に「混合水」という。)をし渣と分離水に分離する分離部4と、分離部4から排出された分離水を混合部2Aに循環する循環路L1と、分離部4から排出された分離水の一部を排水することにより、混合部2Aに流入させる分離水の流入量を調整する調整部5Aと、を備えた構成である。また、本実施態様における循環路L1は、分離部4からの分離水を調整部5Aに供給する循環路L1aと、調整部5Aで流入量を調整した分離水を混合部2Aに投入する循環路L1bからなるものである。なお、
図1中の矢印は水の流れを示すものである。
【0019】
本実施態様に係るし渣搬送装置1Aによるし渣搬送について、概略を説明する。
まず、し渣及び水を混合部2Aに投入し、混合部2A内に設けられた破砕部3Aでし渣を破砕した後、破砕部3の後段側から混合水を混合部2A外に排出し、この混合水を分離部4でし渣と分離水に分離する。そして、この分離水が循環路L1を介して調整部5に供給されることで、混合部2Aに流入させる分離水の流入量の調整を行い、さらに、流量調整された分離水を混合部2Aに供給することで、し渣搬送装置1A内を分離水が循環するものである。
以下、本実施態様におけるし渣搬送装置1Aの各構成について説明する。
【0020】
[混合部]
混合部2Aは、し渣と水を混合する混合ステップを行うためのものであり、所定の水位まで水が貯められている水路型の槽からなるものが挙げられる。
混合部2Aには、沈砂池設備から掻き揚げられた(除去された)し渣が、し渣搬送機により投入されるとともに、し渣をスラリー化するための水が投入される。
本実施態様において、混合部2Aに対するし渣及び水の投入手段及び投入に係る構造については特に限定されない。例えば、し渣搬送装置1Aの前段にし渣と水を予め混合する混合槽(不図示)を設けることや、し渣搬送装置1Aに対してし渣を投入する箇所と水を導入する箇所をそれぞれ独立して設けること等が挙げられる。
また、混合部2Aに投入される水については特に限定されず、上水、用水、処理水などが挙げられる。水の調達に係るコストを鑑みると、下水処理場などの処理施設から排出される処理水を活用することが特に好ましい。
【0021】
本実施態様におけるし渣搬送装置1Aは、混合部2Aの一端側に、し渣及び水を投入するとともに、後述する分離部4による固液分離処理及び調整部5による流量調整を経た分離水を投入する分離水投入部21Aを設け、混合部2Aの他端側には、破砕部3Aを通過した混合水を排出する混合水排出部22が設けられている。そして、混合部2Aの内部には、し渣を搬送するための分離水の流れF1が形成されている。
図1に示すように、本実施態様のし渣搬送装置1Aにおける分離水の流れF1の方向は、分離水投入部21Aから混合部2Aの内部に設置された破砕部3Aの方向に向かっており、この分離水の流れF1により、混合部2Aの底に溜まったし渣を破砕部3Aに搬送することができる。さらに、破砕部3Aを通過した混合水は、分離水の流れF1によって、混合水排出部22まで搬送される。
【0022】
混合部2A内で分離水の流れF1を形成するための手段としては、特に制限されず、例えば、
図1に示すように、混合部2Aの底面を傾斜させ、分離水を投入する分離水投入部21Aと混合水を排出する混合水排出部22の間に高低差を設け、混合部2A内の位置エネルギーを利用することが挙げられる。また、分離水の流れF1を形成する他の手段としては、循環路L1内に分離水を流通させるためのポンプや重力等のエネルギーを利用することや、混合部2A内にスクリュー等の動力により流れを形成する装置(撹拌装置等)を設けることなどが挙げられる。また、混合部2A内には流れを形成するための装置(撹拌装置等)を特に設けず、混合水排出部22から排出した混合水を分離部4まで移送するためのポンプP等の作用によって混合部2A内に分離水の流れF1を形成することもできる。
【0023】
分離水の流れF1を形成する手段は複数設けるものとしてもよい。例えば、本実施態様におけるし渣搬送装置1Aとしては、混合部2Aの底面を傾斜させることによる位置エネルギーを利用するほか、循環路L1内に分離水を流通させるためのエネルギーを利用して、混合部2Aの底部付近に分離水の流れF1を形成することが挙げられる。具体的な構成としては、分離部4を地上に設置して、この分離部4と地下に設けられた混合部2Aを配管からなる循環路L1により連結する。そして、分離部4から混合部2Aの位置エネルギーによって循環路L1内に分離水を流通させることができる。なお、循環路L1内に分離水を流通させるためのエネルギーとしては、どのようなものでもよく、ポンプ等を利用してもよい。
【0024】
混合部2Aには、し渣搬送を円滑に行うための各種構成を設けるものとしてもよい。
例えば、混合部2Aに水位計Sを設け、観測した水位に応じた対応を行うものとしてもよい。例えば、水位計Sの測定結果に応じ、後述する調整部5における流入量調整を行うものとしてもよい。また、水位が所定値より低下した場合、し渣の搬送を継続する際には、水の投入量を増加させるという対応を行うものとしてもよい。これにより、混合部2内でし渣の搬送に必要な水量が維持されるため、安定的なし渣の搬送を実現することができる。
また、混合部2Aにドレン部を設け、必要に応じて混合部2Aに残存するし渣や混合水をドレンとして系外に排出するものとしてもよい。
【0025】
[破砕部]
破砕部3Aは、し渣を破砕する破砕ステップを行うために使用されるものである。し渣を破砕することにより、混合部2A内のし渣の搬送をより促進することができる。また、し渣は、下水や汚水等に含まれる金属類やプラスチック類、下着、雑巾、脱脂綿等の繊維類等であり、これらのし渣は、ポンプ、脱水機、撹拌機等の後段の機器に絡みついて機器の故障の原因となる。そのため、破砕部3Aによりし渣を破砕することにより、機器の故障等を防止することができる。また、し渣を破砕することにより、し渣の洗浄効率を高めることもできる。
【0026】
破砕部3Aの設置位置は特に限定されず、どの位置に設置してもよいが、例えば、
図1に示すように、混合部2Aの内部に設置されるほか、混合部2A内にし渣を投入する箇所に破砕部3Aを設置することが挙げられる。
【0027】
破砕部3Aとしては、破砕機を用いることが挙げられる。破砕機としては、どのような形式のものを使用してもよく、例えば、駆動軸に複数の破砕刃を備えた二軸破砕機等を用いればよい。本実施態様においては、破砕機を混合部2Aの内部に設置することから、駆動軸を立設する縦型の二軸破砕機が特に好ましい。
また、破砕機の設置に関しては、混合部2Aの水面に対して傾斜させることが好ましい。より具体的には、混合部2Aの傾斜した底面に対し、縦型の二軸破砕機の駆動軸が傾斜あるいは垂直となるように立設することが好ましい。これにより、破砕機の上流側にし渣が滞留することを抑制して、破砕機へし渣を容易に流入させることができる。その結果、し渣の破砕をより促進することができる。
【0028】
破砕部3Aで破砕されたし渣と水とが混合した混合水は、混合水排出部22より排出される。混合部2Aから排出された混合水は、ポンプPにより混合水搬送路L2を通って分離部4に搬送される。また、混合水搬送路L2は分岐しており、混合部2Aへ混合水を返送する混合水返送路L3が設けられている。混合水返送路L3によれば、分離部4を一時停止する場合などに、混合水搬送路L2のポンプPを駆動した状態で維持することができる。また、混合部2A内の分離水の流れを促進することもできる。
【0029】
なお、混合水返送路L3を直接又は分岐して循環路L1に連結してもよい。これにより、返送される混合水が分離水の流れを形成するために利用されるため、混合部2Aの底部に溜まったし渣の搬送をより促進することができる。
【0030】
[分離部]
分離部4は、混合部2Aから混合水搬送路L2を介して供給される混合水を、し渣と分離水に分離する分離ステップを行うためのものである。
分離部4は、固液分離処理を行うことができる装置であればどのようなものでもよく、例えば、ドラム型の濾過装置や、遠心分離装置等が挙げられる。
分離部4で分離された分離水は、循環路L1(循環路L1a)を通って調整部5Aに供給される。一方、分離部4で分離されたし渣は、脱水機やし渣洗浄機等で処理される。
【0031】
分離部4には、固液分離処理後の装置内を洗浄する洗浄水が供給される。この洗浄水は、分離水とともに、調整部5Aに供給される。
【0032】
[調整部]
調整部5Aは、分離部4で分離された分離水を、混合部2Aに循環させるに当たり、混合部2Aに流入させる分離水の流入量を調整する調整ステップを行うためのものである。
調整部5Aは、混合部2Aに流入させる分離水の流入量を調整することができるものであればよく、具体例としては、分離部4と混合部2Aを接続する循環路L1上に設けられ、循環路L1aを介して導入される分離水の一部を排水することにより、循環路L1bを介して混合部2Aに流入させる分離水の流入量を調整するものが挙げられる。
【0033】
上述したように、分離部4からの分離水には、分離部4を洗浄した洗浄水が含まれるため、混合部2Aから搬送された混合水よりも水量が増加するという状況が生じる。このため、分離部4から直接分離水を混合部2Aに循環させると、混合部2Aではオーバーフローが起きることになる。このオーバーフローの頻度が増加すると、し渣搬出機により混合部2Aに投入されたし渣は、破砕部3Aに向かって搬送される前に混合部2A外に排出されてしまい、し渣搬送効率が低下するという問題が生じてしまう。
本実施態様におけるし渣搬送装置1Aは、混合部2Aに流入させる分離水の流入量を調整する調整部5を設けることで、混合部2Aにおけるオーバーフローの抑制を可能とするものである。
【0034】
本実施態様における調整部5Aは、し渣搬送装置1Aにおける処理や操作(分離部4の洗浄操作等)に起因して、分離水の水量が変化した場合においても、一定量の分離水を混合部2Aに流入させることができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。
調整部5Aの一例としては、
図1に示すように、調整槽51と、堰52と、越流部53と、排水管54とを備えるものが挙げられる。
【0035】
調整槽51は、分離水を貯留することができる構造を有する槽であればよく、サイズや形状については特に限定されない。
調整槽51を設けて、分離水を一時貯留することで、分離部4から供給される分離水の急激な水量変化にも対応することが可能となる。これにより、混合部2Aへ流入させる分離水の流量調整において、機械的な操作を高頻度で行うことなく、分離水の流入量を適切に調整することが可能となる。
【0036】
また、調整槽51内に堰52を設け、堰52を越えた分離水のみを循環路L1bを介して混合部2Aに循環させる。このとき、堰52の形状や、調整槽51内で配置する堰52の高さや位置を設計することによって、混合部2Aに一定量(所定量)の分離水を流入させ、し渣搬送装置1Aとしての分離水の循環を適切に行うことが可能となる。これにより、分離水の流量調整に機械的な操作を必要とせず、不具合が生じにくいという利点を奏する。
堰52の構造については特に限定されない。例えば、調整槽51内において垂直に配置した板状部材に三角形や四角形の切込部を設け、三角堰や四角堰と呼ばれる構造とすること等が挙げられる。
【0037】
堰52を越えた分離水を混合部2Aに流入させる手段については特に限定されない。例えば、分離部4と同様に、調整槽51を地上に設置して、この調整槽51底部と地下に設けられた混合部2Aを循環路L1bにより連結することが挙げられる。そして、調整槽51から混合部2Aの位置エネルギーによって分離水を流入させることができる。また、循環路L1bにポンプ等を設けるものとしてもよい。
【0038】
一方、堰52とは別に、混合部2Aに流入させる分離水の流入量調整とともに、調整槽51内の水位が急激に上昇した場合の対応を行うために、調整槽51から分離水を排水する構造として、越流部53や排水管54を設けるものとする。
越流部53は、調整槽51の上端部に設けられ、水が越流する箇所は、堰52よりも高い位置となるように配置されている。そして、越流部53から排出された分離水は配管53aを介して系外に排出される。
排水管54は、調整槽51の下部に設けられ、調整槽51内の分離水を適宜排水するものである。排水管54を介して排出された分離水は、配管53aを介して排出される分離水と合流、あるいは別々に系外に排出される。
このとき、系外に排出される分離水は、分離部4による固液分離処理後の処理水である。このため、この分離水は、更なる処理を必要としない場合には、河川等へ放出するものとしてもよいが、再度沈砂池設備等に返送して再処理を行うものとしてもよく、水処理施設における水資源として再利用するものとしてもよい。
【0039】
本実施態様における調整部5Aは、地上に配置された分離部4と地下に設けられた混合部2Aを接続する循環路L1上に設けるに当たり、
図1に示すように、地上側に調整槽51を設けることに限定されない。
図2は、本実施態様のし渣搬送装置1Aにおける調整部5Aの別態様を示す概略説明図である。
図2に示すように、本実施態様の調整部5Aの別態様としては、調整槽51と混合部2Aとを略水平方向に近接して設け、分離水投入部21Aと堰52が一体となった構造を有するものが挙げられる。この場合、調整槽51に供給された分離水のうち、堰52の構造を有する分離水投入部21Aを越えた分離水のみが混合部2Aに供給されることになる。したがって、
図2に示した調整部5Aでは、調整部5Aと混合部2Aが分離水投入部21Aを介して直接連結することになるため、循環路L1bは省略される。
このとき、分離水投入部21Aとしては、三角堰や四角堰と呼ばれる構造(いわゆる越流堰)を備える樋状部材や管状部材を用い、堰52と一体化した構造とすること以外に、調整部5Aに対する樋状部材や管状部材の配置によって一定量の分離水を混合部2Aに流入させるものとしてもよい。
【0040】
以上のように、本実施態様におけるし渣搬送装置及びし渣搬送方法により、し渣の搬送において、し渣と水の混合水から分離された分離水を利用し、常時多量の水を補給することなく、し渣を搬送するための分離水の流れを混合部内に形成することで、混合部内のし渣の搬送を促進することができる。また、混合部に流入させる分離水の流入量を調整することで、混合部におけるオーバーフローを抑制し、し渣の搬送効率を向上させることが可能となる。
【0041】
〔第2の実施態様〕
図3は、本発明の第2の実施態様のし渣搬送装置1Bの構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係るし渣搬送装置1Bは、
図3に示すように、第1の実施態様のし渣搬送装置1Aにおける調整部5Aの構造とは異なる構造を有する調整部5Bを備えるものである。
なお、本実施態様におけるし渣搬送装置1Bの構成のうち、第1の実施態様のし渣搬送装置1Aの構成と同じものについては、説明を省略する。
【0042】
本実施態様における調整部5Bは、
図3に示すように、循環路L1から分離した分岐配管55及び開閉弁56を備えるものである。この開閉弁56を開放することで、循環路L1内を流れる分離水の一部を排水し、混合部2Aに流入させる分離水の流入量を調整することが可能となる。なお、分岐配管55を介して排出される分離水は、系外へ排出されるか、または沈砂池設備等に返送されて再処理あるいは再利用される。
【0043】
このとき、開閉弁56の開閉操作については、作業者が適宜行うものとしてもよく、制御部を設けることで開閉操作の制御を行うものとしてもよい。制御部による開閉弁56の開閉操作に係る制御の一例としては、例えば、開操作と閉操作を所定間隔で定期的に繰り返すことや、混合部2Aに設けた水位計Sの測定結果に基づく開閉操作に係る制御を行うことなどが挙げられる。
【0044】
本実施態様におけるし渣搬送装置1Bにおいては、分岐配管55の設置スペースのみで、混合部2Aに循環させる分離水の調整を行うことが可能となる。また、調整部5Bの導入や、し渣搬送装置1Bの更新に係るコスト低減が可能となる。
【0045】
〔第3の実施態様〕
図4は、本発明の第3の実施態様のし渣搬送装置1Cの構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係るし渣搬送装置1Cは、破砕部3Bとして横型の二軸破砕機を使用し、破砕部3Bが混合部2Cの外部に設置されている。また、本実施態様におけるし渣搬送装置1Cの混合部2Cは、略水平な底面を有する構造からなる。
なお、本実施態様におけるし渣搬送装置1Cの構成のうち、第1の実施態様のし渣搬送装置1Aの構成と同じものについては、説明を省略する。
【0046】
本実施態様におけるし渣搬送装置1Cでは、し渣は、破砕部3Bで破砕した後に、混合部2Cに投入される。この構成によれば、し渣が破砕されて小さくなっていることから、混合部2Cの底部で溜まりにくいという効果がある。
【0047】
本実施態様における分離水投入部21Bは、循環路L1を構成する配管が、混合部2Cの底部付近まで延設し、該配管の末端が混合水排出部22の方向に向けて屈折し、吐出部を形成しているものである。分離水投入部21Bは、混合水排出部22の方向に分離水を投入するため、分離水投入部21Bの吐出部と反対側の水を分離水の流れ方向に引き込む作用がある。そのため、分離水投入部21Bの吐出部の反対側(背面側)でも、分離水の流れF2が形成される。そのため、破砕部3Bは、分離水投入部21Bの吐出部の背面側に設置されているが、し渣の搬送が促進されるものとなる。
【0048】
本実施態様における破砕部3Bは、し渣を投入した後、洗浄水による洗浄を行う必要がある。そのため、し渣をスラリー化するための水の投入とは別に、破砕部3Bの洗浄水が混合部2C内に供給されるため、混合部2C内の水量増加によるオーバーフローが生じやすい傾向にある。
したがって、調整部5Aにおいては、分離部4における洗浄水の影響に加え、破砕部3Bに供給される洗浄水の影響についても考慮し、堰52の構造及び配置を設定することが好ましい。これにより、混合部2Cに流入する分離水の流入量(所定量)を適切に調整し、混合部2Cにおけるオーバーフローをより確実に抑制することが可能となる。
なお、
図4では、調整部として、第1の実施態様において
図1に示した調整部5Aに係るものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、第1の実施態様において
図2に示した調整部5Aのほか、第2の実施態様における調整部5Bを用いるものとしてもよい。
【0049】
〔第4の実施態様〕
図5は、本発明の第4の実施態様のし渣搬送装置1Dの構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係るし渣搬送装置1Dは、
図5に示すように、第1の実施態様のし渣搬送装置1Aにおける破砕部3を省略し、混合部2Dに対するし渣の投入位置を、分離水投入部21Bの吐出部の前方に設置するものである。
なお、本実施態様におけるし渣搬送装置1Dの構成のうち、第1の実施態様のし渣搬送装置1Aの構成と同じものについては、説明を省略する。
【0050】
本実施態様におけるし渣搬送装置1Dは、し渣の破砕を伴わない搬送を行うことができる。また、この構成によれば、分離水の流れが強い領域にし渣が投入されるため、混合部2Dの底面におけるし渣の溜まりが抑制され、し渣の搬送をより促進することができる。
なお、
図5では、調整部として、第1の実施態様において
図1に示した調整部5Aに係るものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、第1の実施態様において
図2に示した調整部5Aのほか、第2の実施態様における調整部5Bを用いるものとしてもよい。
【0051】
なお、上述した実施態様はし渣搬送装置及びし渣搬送方法の一例を示すものである。本発明に係るし渣搬送装置及びし渣搬送方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係るし渣搬送装置及びし渣搬送方法を変形してもよい。
【0052】
例えば、本実施態様のし渣搬送装置における調整部は、混合部に流入させる分離水の流入量を元の分離水の水量から減じた状態で供給するものである。一方、混合部の水位が低下した場合に対応するために、混合部に水を補給するための構造を設けるものとしてもよい。
より具体的には、混合部内の水が不足した場合や、混合部内の水を交換する場合に、混合部に水を補給するための構成として、水を貯留可能な補給水槽及び給水配管を備える水補給部を設けることが挙げられる。このとき、水補給部の補給水槽に貯留し、混合部へ補給する水は、どのようなものを使用してもよく、例えば、下水処理場、浄水場、ポンプ場等の水処理設備から発生する処理水や、農業用水、工業用水等の用水や、上水等が利用される。また、本発明のし渣搬送装置から排出される排水を利用してもよい。
これにより、混合部内の水が不足した場合に、補給水槽に貯留された水を補給することができるため、水の補給を迅速に実行することができる。また、混合部内の水を交換する場合にも、早期の立ち上げが可能であり、維持管理作業が容易になる。
【0053】
また、本実施態様のし渣搬送装置において、破砕されたし渣と水が混合した混合水は、混合水排出部を介して混合部外に排出される。このとき、混合水中のし渣含有量に偏りが存在すると、混合水排出部の閉塞を生じさせるおそれがあるため、混合水を均一化して排出することが望ましい。
混合水の均一化を行う手段としては、混合水を撹拌する手段を設けることが挙げられる。これにより、混合水の均一化に加え、破砕後のし渣洗浄を促進することができる。
ここで、上述したとおり、し渣には繊維類が含まれることから、撹拌羽根を備えた撹拌機による機械撹拌では、これらのし渣が破砕後に再度集まったり、撹拌羽根に絡みつくなどして、撹拌機の過負荷や混合水排出部の閉塞を発生させることがある。そのため、機械撹拌によらない撹拌手段を設けることが好ましく、例えば、破砕部の後段に清水を供給し、供給した清水により混合部内に旋回流を発生させることが挙げられる。これにより、機械撹拌によらず、混合水を撹拌し、均一化を図ることが可能となる。また、混合水の円滑な搬送をより確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のし渣搬送装置及びし渣搬送方法は、下水処理場やポンプ場等の沈砂池設備等で捕集、分離されたし渣の搬送に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0055】
1A,1B,1C,1D し渣搬送装置、2A,2B 混合部、21A,21B 分離水投入部、22 混合水排出部、3A,3B 破砕部、4 分離部、5A,5B 調整部、51 調整槽、52 堰、53 越流部、53a 配管、54 排水管、55 分岐配管、56 開閉弁、L1,L1a,L1b 循環路、L2 混合水搬送路、L3 混合水返送路、S 水位計、P ポンプ、F1,F2 分離水の流れ