(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130291
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ホールピペット
(51)【国際特許分類】
B01L 3/02 20060101AFI20230912BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B01L3/02 C
G01N1/00 101K
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192929
(22)【出願日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】202210213894.7
(32)【優先日】2022-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210750484.6
(32)【優先日】2022-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522469899
【氏名又は名称】江蘇科華医療器械科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬栄華
【テーマコード(参考)】
2G052
4G057
【Fターム(参考)】
2G052AD26
2G052CA18
2G052JA04
2G052JA09
4G057AB12
(57)【要約】
【解決手段】
本発明は、ホールピペットを開示し、ホールピペットが、該頂部バルーンと、接続管と、溢れ液貯留管と、液体吸引管とを備える。本発明では、液体吸引管の上端および下端のそれぞれがテーパー状に形成され、つまり、液体吸引管の上端の内腔が上から下へ漸次に大きくなるテーパー状を呈し、液体吸引管の下端の内腔が上から下へ漸次に小さくなるテーパー状を呈し、液体吸引管の上端および下端の開口の径が大幅に縮小されたので、液体吸引管の上端および下端での液体および固体の作用力が小さくなり、凹状態または凸状態の液体の体積を減少させることができる。
【効果】
これによって、採取の精度が顕著に向上し、押さえによる液体の排出がより容易になり、残留量が低くなる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部バルーンと、接続管と、溢れ液貯留管と、液体吸引管とを備え、
前記頂部バルーンの下端に、連通するように前記接続管が取り付けられ、前記接続管の下端に、連通するように前記溢れ液貯留管が取り付けられ、前記接続管が、前記頂部バルーンと前記溢れ液貯留管との間に接続され、
前記溢れ液貯留管の下端の内部に、前記液体吸引管が密封されるように挿着され、
前記液体吸引管の上端が前記溢れ液貯留管の内部の中間位置まで挿入され、前記液体吸引管の下端が前記溢れ液貯留管の下方に位置し、
前記液体吸引管の上端の外周面と前記溢れ液貯留管の内周面とにより環状チャンバーが形成され、
前記液体吸引管の上端および下端の内腔がそれぞれテーパー状を呈し、前記液体吸引管の上端の内腔は、上から下へ漸次に大きくなるテーパー状を呈し、前記液体吸引管の下端の内腔は、上から下へ漸次に小さくなるテーパー状を呈する
ことを特徴とするホールピペット。
【請求項2】
前記液体吸引管は、一体構造からなり、前記液体吸引管の上端の外周面と前記溢れ液貯留管の下端の内周面とが密封固定される
ことを特徴とする請求項1に記載のホールピペット。
【請求項3】
前記液体吸引管は、別体構造からなり、上部位置決め管と下部取外し管とを含み、
前記上部位置決め管の上端が前記溢れ液貯留管の下端の内部に挿着固定され、前記下部取外し管の上端が前記上部位置決め管の下端に取り外し可能に環装される
ことを特徴とする請求項1に記載のホールピペット。
【請求項4】
前記上部位置決め管の外周面と前記溢れ液貯留管の下端の内周面とが密封固定されることを特徴とする請求項3に記載のホールピペット。
【請求項5】
前記上部位置決め管の上端の内腔は、上から下へ漸次に大きくなるテーパー状を呈し、前記下部取外し管の下端の内腔は、上から下へ漸次に小さくなるテーパー状を呈する
ことを特徴とする請求項3に記載のホールピペット。
【請求項6】
前記下部取外し管の上端に、テーパー状接続口が設けられ、
前記テーパー状接続口が、上が大きく下が小さいようなテーパー構造を呈し、前記下部取外し管の上端が、前記テーパー状接続口を介して前記上部位置決め管の下端の外周面に取り外し可能に環装される
ことを特徴とする請求項3に記載のホールピペット。
【請求項7】
前記頂部バルーンと前記溢れ液貯留管との間の前記接続管は、前記頂部バルーンと前記溢れ液貯留管との間の中央位置または中央位置から離れている位置に位置する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のホールピペット。
【請求項8】
前記接続管の両側に補強部材が設置され、前記補強部材の上端および下端がそれぞれ前記頂部バルーンおよび前記溢れ液貯留管と接続される
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のホールピペット。
【請求項9】
前記接続管、前記溢れ液貯留管および前記液体吸引管は、ガラス製または高分子製のものであることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のホールピペット。
【請求項10】
前記頂部バルーンは、扁平構造または楕円球状構造からなることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のホールピペット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホールピペットに関する。
【背景技術】
【0002】
定量的ピペッティングは、すべての物理、化学および生物実験においてよく実施されるものである。大容量のピペッティングには、国内外でガラス製またはプラスチック製のピペットが使用されることが多い。
図1に示すように、このようなピペットは、通常、バルーン91と、通気管92と、液溜め管93と、毛細管94とを備え、バルーン91の下端が通気管92を介して液溜め管93と接続し、毛細管94の上端が液溜め管93の下端の内部に挿入されて固定接続されるように構成される。このようにして、バルーン91を軽く押さえながら、毛細管94を採取対象液体内に差し込み、そしてバルーン91から手を離れると、液体が毛細管94内に進入することができ、毛細管94の上端から溢れる液体が液溜め管93内に貯留され、これによって、定量的採取を実現する。しかしながら、液体表面と固体表面において作用力が存在するため、毛細管により吸い上げられた液体が毛細管の両端の開口で凸状態または凹状態になり、実際に採取された液体の体積が毛細管の内部の体積と一致しておらず、液体採取の精度が低下し、特定分野で求められる高精度の規格を満たすことができない場合がある。また、従来の毛細管は、通常一体構造からなり、採取対象の体積を変更する場合、毛細管全体、ひいては製品全体を交換する必要があり、使い心地が悪い。また、利用者がバルーン91を押さえるときに力を入れすぎると、液体が直接上方のバルーン91内に吸い込まれてしまい、その後、使用できなくなる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の従来技術の問題を鑑みてなされたものであり、液体採取の精度が高く、容易に容量を変更でき、力の入れすぎで液体がバルーンに吸い込まれる確率を低減できるホールピペットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の問題を解決するため、本発明は、下記の技術案を採用する。
ホールピペットは、頂部バルーンと、接続管と、溢れ液貯留管と、液体吸引管とを備える。頂部バルーンの下端に、連通するように接続管が取り付けられ、接続管の下端に、連通するように溢れ液貯留管が取り付けられ、接続管が、頂部バルーンと溢れ液貯留管との間に接続される。溢れ液貯留管の下端の内部に、液体吸引管が密封されるように挿着される。液体吸引管の上端が溢れ液貯留管の内部の中間位置まで挿入され、液体吸引管の下端が溢れ液貯留管の下方に位置し、液体吸引管の上端の外周面と溢れ液貯留管の内周面とにより環状チャンバーが形成され、液体吸引管の上端および下端の内腔がそれぞれテーパー状を呈し、液体吸引管の上端の内腔は、上から下へ漸次に大きくなるテーパー状を呈し、液体吸引管の下端の内腔は、上から下へ漸次に小さくなるテーパー状を呈する。
さらに、液体吸引管は、一体構造からなり、液体吸引管の上端の外周面と溢れ液貯留管の下端の内周面とが密封して固定される。
さらに、液体吸引管は、別体構造からなり、上部位置決め管と下部取外し管とを含み、上部位置決め管の上端が溢れ液貯留管の下端の内部に挿着固定され、下部取外し管の上端が上部位置決め管の下端に取り外し可能に環装される。
さらに、上部位置決め管の外周面と溢れ液貯留管の下端の内周面とが密封固定される。
さらに、上部位置決め管の上端の内腔は、上から下へ漸次に大きくなるテーパー状を呈し、下部取外し管の下端の内腔は、上から下へ漸次に小さくなるテーパー状を呈する。
さらに、下部取外し管の上端にテーパー状接続口が設置され、接続口は上が大きく下が小さいようなテーパー構造を呈し、下部取外し管の上端が、テーパー状接続口を介して上部位置決め管の下端の外周面に取り外し可能に環装される。
さらに、頂部バルーンと溢れ液貯留管との間の接続管は、頂部バルーンと溢れ液貯留管との間の中央位置または中央位置から離れている位置に位置する。
さらに、接続管の両側に補強部材が設置され、補強部材の上端および下端がそれぞれ頂部バルーンおよび溢れ液貯留管と接続される。
さらに、接続管、溢れ液貯留管および液体吸引管は、ガラス製または高分子製のものである。
さらに、頂部バルーンは、扁平構造または楕円球状構造からなる。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、下記の有益な効果を有する。
1.本発明では、液体吸引管の上端および下端のそれぞれがテーパー状に形成され、つまり、液体吸引管の上端の内腔が上から下へ漸次に大きくなるテーパー状を呈し、液体吸引管の下端の内腔が上から下へ漸次に小さくなるテーパー状を呈し、液体吸引管の上端および下端の開口の径が大幅に縮小されたので、液体吸引管の上端および下端での液体および固体の作用力が小さくなり、凹状態または凸状態の液体の体積を減少させることができる。これによって、採取の精度が顕著に向上し、押さえによる液体の排出がより容易になり、残留量が低くなる。
2.本発明では、液体吸引管は、別体構造からなり、上部位置決め管と下部取外し管とを含み、上部位置決め管の上端が溢れ液貯留管の下端の内部に挿着固定され、下部取外し管の上端が上部位置決め管の下端に取り外し可能に環装されるので、実際の需要に応じて体積の異なる下部取外し管を交換することができる。また、上部位置決め管の体積が一定であるため、吸入される液体の体積を必要に応じて調整できる。
3.本発明では、頂部バルーンと溢れ液貯留管との間の接続管は頂部バルーンと溢れ液貯留管との間の中央位置から離れている位置に設置され、つまり、接続管の下端と溢れ液貯留管の上端との間の通気口が偏って設置されることにより、該通気口が溢れ液貯留管の上端における中央位置から離れている位置にし、偏心通気構造が形成されるようになる。このようにして、利用者が力を入れすぎて多すぎる液体が吸い上げられる場合であっても、通気口が溢れ液貯留管の上端の中央位置から離れているため、液体が上へ移動するときに溢れ液貯留管の上端により制限されるので、液体が直接頂部バルーン内に吸い込まれることを顕著に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】本発明の実施例1による構造の模式図である。
【
図3】本発明の
図2に示す構造の模式的分解図である。
【
図4】本発明の実施例2による構造の模式図である。
【
図5】本発明の
図4に示す構造の模式的分解図である。
【
図6】本発明の実施例3による構造の模式図である。
【
図7】本発明の実施例4による構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、本発明の内容を詳細に説明する。
実施例1
図2および
図3に示すように、ホールピペットは、頂部バルーン1と、接続管2と、溢れ液貯留管3と、液体吸引管4とを備える。前記頂部バルーン1の下端に、連通するように接続管2が取り付けられ、前記接続管2の下端に、連通するように溢れ液貯留管3が取り付けられ、接続管2が頂部バルーン1と溢れ液貯留管3との間の中央位置に位置する。前記溢れ液貯留管3の下端の内部に、液体吸引管4が密封されるように挿着される。前記液体吸引管4の上端が溢れ液貯留管3の内部の中間位置まで挿入され、液体吸引管4の下端が溢れ液貯留管3の下方に位置する。前記液体吸引管4の上端の外周面と溢れ液貯留管3の内周面とにより環状チャンバーが形成される。前記液体吸引管4の上端および下端の内腔がそれぞれテーパー状を呈し、液体吸引管4の上端41が、上から下へ漸次に大きくなるテーパー状を呈し、液体吸引管4の下端42が、上から下へ漸次に小さくなるテーパー状を呈する。また、前記液体吸引管4は、一体に形成される。前記液体吸引管4の上端の外周面と溢れ液貯留管3の下端の内周面とは、接着剤固定、直接挿着、またはその他の方法で密封して固定される。さらに、前記接続管2の両側に補強部材11が設置され、前記補強部材11の上端および下端がそれぞれ頂部バルーン1および溢れ液貯留管3と接続される。また、前記接続管2、溢れ液貯留管3および液体吸引管4は、ガラス製または高分子製のものである。また、前記頂部バルーン1は、扁平構造または楕円球状構造からなる。
【0008】
本発明では、液体吸引管4の上端および下端のそれぞれがテーパー状に形成され、つまり、液体吸引管4の上端41が上から下へ漸次に大きくなるテーパー状を呈し、液体吸引管4の下端42が上から下へ漸次に小さくなるテーパー状を呈し、液体吸引管4の上端および下端の開口の径が大幅に縮小されたので、液体吸引管4の上端および下端での液体および固体の作用力が小さくなり、凹状態または凸状態の液体の体積を減少させることができる。これによって、採取の精度が顕著に向上し、押さえによる液体の排出がより容易になり、残留量が低くなる。
【0009】
実施例2
本実施例は、実施例1に基づくものであり、実施例1との相違点が液体吸引管の構造である。
図4および
図5に示すように、前記液体吸引管4は、別体構造からなり、上部位置決め管43と下部取外し管44とを含む。前記上部位置決め管43の上端が溢れ液貯留管3の下端の内部に挿着固定され、前記下部取外し管44の上端が上部位置決め管43の下端に取り外し可能に環装される。前記上部位置決め管43の外周面と溢れ液貯留管3の下端の内周面とは、接着剤または直接挿着で密封固定される。また、前記上部位置決め管43の上端431は、上から下へ漸次に大きくなるテーパー状を呈し、前記下部取外し管44の下端441は、上から下へ漸次に小さくなるテーパー状を呈する。また、前記下部取外し管44の上端に、上から下へ漸次に小さくなるテーパー状を呈するテーパー状接続口442が設けられる。前記下部取外し管44の上端は、テーパー状接続口442を介して上部位置決め管43の下端の外周面に取り外し可能に環装される。
【0010】
本発明では、液体吸引管4は、別体構造からなり、上部位置決め管43と下部取外し管44とを含み、上部位置決め管43の上端が溢れ液貯留管3の下端の内部に挿着固定され、下部取外し管44の上端が上部位置決め管43の下端に取り外し可能に環装される。上部位置決め管43の体積が一定である。実際の需要に応じて体積の異なる下部取外し管44を交換することができるため、吸入される液体の体積を柔軟に調整できる。
【0011】
実施例3
図6に示すように、この実施例は、実施例1に基づくものであり、実施例1との相違点は、本発明では、接続管2が頂部バルーン1と溢れ液貯留管3との間の中央位置から離れている位置に設置され、偏心通気構造が形成される。
【0012】
実施例4
図7に示すように、この実施例は、実施例2に基づくものであり、実施例2との相違点は、本発明では、接続管2が頂部バルーン1と溢れ液貯留管3との間の中央位置から離れている位置に設置され、偏心通気構造を形成する。
【0013】
上記の実施例3および実施例4における設置方式によれば、力の入れすぎで液体が直接頂部バルーン1に吸い込まれる確率を大幅に低減できる。本発明では、頂部バルーン1と溢れ液貯留管3との間の接続管2が頂部バルーン1と溢れ液貯留管3との間の中央位置から離れている位置に設置され、つまり、接続管2の下端と溢れ液貯留管3の上端との間の通気口21が偏って設置されることにより、該通気口21が溢れ液貯留管3の上端における中央位置から離れている位置にし、偏心通気構造が形成されるようになる。このようにして、利用者が力を入れすぎて多すぎる液体が吸い上げられる場合であっても、通気口21が溢れ液貯留管3の上端の中央位置から離れているため、液体が上へ移動するときに溢れ液貯留管3の上端により制限されるので、液体が直接頂部バルーン1内に吸い込まれることを顕著に低減できる。
【0014】
上記記載は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するものではない。本発明の趣旨および原理から逸脱しない限り、行ったすべての変更、均等置換、改良などは、本発明の保護範囲内に属する。