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特開2023-13030ステージ装置及びマニピュレーションシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013030
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】ステージ装置及びマニピュレーションシステム
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/26 20060101AFI20230119BHJP
   G02B 21/32 20060101ALI20230119BHJP
   B25J 7/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
G02B21/26
G02B21/32
B25J7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116918
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若▲崎▼ 知己
【テーマコード(参考)】
2H052
3C707
【Fターム(参考)】
2H052AA00
2H052AD03
2H052AD06
2H052AD19
2H052AD21
2H052AD22
2H052AE13
2H052AF14
2H052AF19
3C707BS30
3C707XG03
(57)【要約】
【課題】複雑な制御を必要とせず、顕微鏡視野内で試料の体勢を変更することができるステージ装置及びマニピュレーションシステムを提供する。
【解決手段】ステージ装置は、顕微鏡22の観察方向に垂直な保持面30aに試料が支持される試料ステージ30と、試料ステージ30を保持面30aに平行な方向に移動可能な面方向移動ユニット(水平移動ユニット40)と、顕微鏡22に対して試料ステージ30及び面方向移動ユニットを顕微鏡22の視野中心(光軸26)に一致する回転軸回りに回転させることが可能な回転ユニット50と、を備える。マニピュレーションシステム10は、ステージ装置と、視野中心が回転軸に一致する顕微鏡22を含む顕微鏡ユニット20と、試料を操作するための治具64を含むマニピュレータ60と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡の観察方向に垂直な保持面に試料が支持される試料ステージと、
前記試料ステージを前記保持面に平行な方向に移動可能な面方向移動ユニットと、
前記顕微鏡に対して前記試料ステージ及び前記面方向移動ユニットを前記顕微鏡の視野中心に一致する回転軸回りに回転させることが可能な回転ユニットと、
を備える、ステージ装置。
【請求項2】
前記回転ユニットは、
前記顕微鏡が固定される基台に対して前記回転軸回りに回動可能に支持されかつ前記面方向移動ユニットを介して前記試料ステージを支持する円板体と、
軸回りの回転に伴って前記円板体を回転させる回転作動軸部と、
を含む、請求項1に記載のステージ装置。
【請求項3】
前記面方向移動ユニットは、
前記円板体に対して前記保持面に平行な第一方向に前記試料ステージを移動可能な第一方向移動ユニットと、
前記円板体に対して前記保持面に平行かつ前記第一方向に直交する第二方向に前記試料ステージを移動可能な第二方向移動ユニットと、
を含む、請求項2に記載のステージ装置。
【請求項4】
前記面方向移動ユニットは、前記円板体の上面側に取り付けられる、
請求項2又は3に記載のステージ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のステージ装置と、
視野中心が前記回転軸に一致する前記顕微鏡を含む顕微鏡ユニットと、
前記試料を操作するための治具を含むマニピュレータと、
を備える、マニピュレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ装置及びマニピュレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば細胞等の微細物質に対して微細操作を実施するために、マニピュレーションシステムが用いられる。一般的に、マニピュレーションシステムは、水平方向に移動可能なXYステージと、微細物質を操作するマニピュレータと、を備え、XYステージ上に載置された微細物質を顕微鏡視野内に移動させ、顕微鏡観察下でマニピュレータを移動制御することが可能である(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、特許文献2には、水平方向に移動可能なXYステージ上に回転機構を備えるマニピュレーションシステムが開示されている。回転機構を備えることにより、微細物質の観察方向が適していない場合であって、微細物質が液状に近い、又はマニピュレータが微細物質の体勢変更に適していない等の場合であっても微細物質の観察方向の変更が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-205370号公報
【特許文献2】特許第5788719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2のマニピュレーションシステムは、XYステージの移動に伴い回転機構の回転軸も移動する。したがって、回転機構の回転によって微細物質が顕微鏡視野外へ移動しないように、XYステージの位置に応じて回転に加えてXYステージを移動させるという複雑な制御が必要である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複雑な制御を必要とせず、顕微鏡視野内で試料の体勢を変更することができるステージ装置及びマニピュレーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るステージ装置は、顕微鏡の観察方向に垂直な保持面に試料が支持される試料ステージと、前記試料ステージを前記保持面に平行な方向に移動可能な面方向移動ユニットと、前記顕微鏡に対して前記試料ステージ及び前記面方向移動ユニットを前記顕微鏡に対して前記顕微鏡の視野中心に一致する回転軸回りに回転させることが可能な回転ユニットと、を備える。
【0008】
このようなステージ装置によれば、視野中心回りに試料を回転させることができる。すなわち、面方向移動ユニットによって試料を顕微鏡の視野中心に移動させた後、試料が所望の体勢になるように回転ユニットで視野中心回りに回転させることで、回転させた後も視野内に試料を存在させ続けることができる。また、面方向の位置に応じて回転に加えて面方向へも変位させるような複雑な制御を必要とせず、顕微鏡視野内での試料の体勢変更を単純な構造で実現できる。
【0009】
本発明の一態様に係るステージ装置において、前記回転ユニットは、前記顕微鏡が固定される基台に対して前記回転軸回りに回動可能に支持されかつ前記面方向移動ユニットを介して前記試料ステージを支持する円板体と、軸回りの回転に伴って前記円板体を回転させる回転作動軸部と、を含む。
【0010】
このようなステージ装置によれば、回転作動軸部の回転方向及び回転量に対応して、円板体を所定方向に所定回転量で回転させることができる。したがって、単純な構造で、所望の回転量で試料ステージ及び試料を視野中心回りに回転させることができる。
【0011】
本発明の一態様に係るステージ装置において、前記面方向移動ユニットは、前記円板体に対して前記保持面に平行な第一方向に前記試料ステージを移動可能な第一方向移動ユニットと、前記円板体に対して前記保持面に平行かつ前記第一方向に直交する第二方向に前記試料ステージを移動可能な第二方向移動ユニットと、を含む。
【0012】
このようなステージ装置によれば、保持面に平行な平面上の二軸で試料ステージを移動させることができる。したがって、単純な構造で、試料ステージを面方向に移動させることができるので、試料を視野中心まで容易に移動させることができる。
【0013】
本発明の一態様に係るステージ装置において、前記面方向移動ユニットは、前記円板体の上面側に取り付けられる。
【0014】
このようなステージ装置によれば、試料を顕微鏡の視野中心に移動させた後の面方向移動ユニットを、円板体が面方向移動ユニットを下方から支持した状態で、容易に顕微鏡の視野中心回りに回転させることができる。
【0015】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムは、前記ステージ装置と、視野中心が前記回転軸に一致する前記顕微鏡を含む顕微鏡ユニットと、前記試料を操作するための治具を含むマニピュレータと、を備える。
【0016】
このようなマニピュレーションシステムによれば、マニピュレータの操作対象である試料を視野中心回りに回転させることができる。したがって、試料の観察方向が適しておらず、姿勢変更を必要とする際、試料が液状に近い、又はマニピュレータの治具が試料の体勢変更に適していない場合であっても、試料を顕微鏡視野内に存在させ続けた状態で体勢変更させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複雑な制御を必要とせず、顕微鏡視野内で試料の体勢を変更することができるステージ装置及びマニピュレーションシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係るマニピュレーションシステムの物理構成を模式的に示す図である。
図2図2は、図1に示すマニピュレーションシステムの制御ブロック図である。
図3図3は、図1に示すマニピュレーションシステムの操作方法を説明するための平面図である。
図4図4は、図3の要部拡大図である。
図5図5は、図1に示すマニピュレーションシステムの操作方法を説明するための平面図である。
図6図6は、図5の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0020】
(実施形態)
[システムの構成]
まず、本実施形態に係るマニピュレーションシステム10の物理構成及びシステム構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、実施形態に係るマニピュレーションシステム10の物理構成を模式的に示す図である。図2は、図1に示すマニピュレーションシステム10の制御ブロック図である。なお、図1は、一部の構成を断面で示している。マニピュレーションシステム10は、顕微鏡観察下で細胞等の微細物質を操作するためのシステムである。マニピュレーションシステム10は、例えば、微細物質である試料100(図4等参照)の一部を切断する。
【0021】
図1及び図2に示すように、実施形態のマニピュレーションシステム10は、基台12と、基台12の片側から立設した柱部14と、顕微鏡ユニット20と、試料ステージ30と、水平移動ユニット40と、回転ユニット50と、マニピュレータ60と、コントローラ80と、を備える。顕微鏡ユニット20は、基台12に固定して設けられる。マニピュレータ60は、柱部14に固定して設けられる。試料ステージ30と、水平移動ユニット40と、回転ユニット50とは、顕微鏡視野に対する試料100の位置及び体勢を変更可能なステージ装置を構成する。試料ステージ30は、水平移動ユニット40及び回転ユニット50を介して、基台12に設けられる。
【0022】
顕微鏡ユニット20は、顕微鏡22と、撮像素子を含むカメラ24と、備える。顕微鏡ユニット20は、顕微鏡22とカメラ24とが一体構造となっている、例えば、マイクロスコープである。顕微鏡22及びカメラ24は、実施形態において、試料ステージ30に支持される試料保持部材32の直下において、基台12の内部に配置され、試料保持部材32に収容された試料100(図3等参照)等を下方から、基台12の上面に形成された開口12aを通して平面視可能である。顕微鏡22及びカメラ24の光軸26は、試料100等に対して垂直方向に入射する。光軸26は、顕微鏡22及びカメラ24の視野中心に一致する。
【0023】
顕微鏡ユニット20は、さらに、試料保持部材32に向けて光を照射する不図示の光源と、焦点合わせ機構28(図2参照)と、を備えている。実施形態のように顕微鏡22及びカメラ24が試料保持部材32の直下に配置される場合、光源は、例えば、試料保持部材32の直上に配置される。試料保持部材32の試料100(図3等参照)に光源から光が照射されると、試料保持部材32の試料100で反射した光が顕微鏡22に入射する。試料100に関する光学像は、顕微鏡22で拡大された後、カメラ24で撮像される。光学像は、焦点合わせ機構28によって、顕微鏡22及びカメラ24のレンズの位置及びレンズ間の距離を調整して顕微鏡22及びカメラ24の焦点合わせを行うことで明瞭に投影される。顕微鏡ユニット20は、カメラ24で撮像された画像を基に試料100の観察が可能となっている。カメラ24及び焦点合わせ機構28は、実施形態において、後述のコントローラ80に電気的に接続されている。
【0024】
試料ステージ30は、シャーレ又はウェルプレート等の試料保持部材32を支持可能な保持面30aを有する台座である。保持面30aは、顕微鏡22及びカメラ24の観察方向に垂直な平面であり、実施形態において、水平面である。顕微鏡22及びカメラ24の観察方向とは、試料100等に対して入射する光軸26の方向である。試料ステージ30は、実施形態において、顕微鏡22及びカメラ24の上方に配置される。試料ステージ30は、水平移動ユニット40及び回転ユニット50を介して、基台12に対して水平方向に移動可能かつ光軸26に一致する回転軸回りに回動可能に設けられる。なお、ここで「光軸26に一致する」とは、少なくとも光軸26と平行かつ顕微鏡22の視野内に回転軸が位置することを含み、好ましくは、光軸26を中心とし視野幅の1/5を直径とする円内に回転軸が位置することを示す。また、ここで「平行」とは、寸法誤差、設計誤差等によって、両者が理論的な平行関係とならない場合も含む。
【0025】
また、試料ステージ30は、水平移動ユニット40を介して、回転ユニット50に対して水平方向に移動可能に設けられる。試料ステージ30は、実施形態において、第一方向D1及び第二方向D2にそれぞれ移動可能である。第一方向D1は、水平方向かつ回転ユニット50を基準とする一方向である。第二方向D2は、水平方向かつ第一方向D1に直交する方向である。試料ステージ30は、後述の水平移動ユニット40の第一方向移動ユニット42の移動部42bに固定される。
【0026】
水平移動ユニット40は、試料ステージ30を保持面30aに平行な方向、すなわち実施形態では水平方向に移動可能である。水平移動ユニット40は、試料ステージ30を回転ユニット50に対して第一方向D1及び第二方向D2にそれぞれ移動させる。水平移動ユニット40は、例えば、二軸アクチュエータを含む。水平移動ユニット40は、実施形態において、第一方向移動ユニット42と、第二方向移動ユニット44と、を含む。
【0027】
第一方向移動ユニット42は、第二方向移動ユニット44に対して試料ステージ30を第一方向D1に移動させる。第一方向移動ユニット42は、固定部42aと、移動部42bと、を含む。固定部42aは、第二方向移動ユニット44の移動部44bに固定される。固定部42aは、実施形態において、移動部44bの上面側に取り付けられる。固定部42aは、移動部42bを第一方向D1に移動可能に支持する。移動部42bは、試料ステージ30に固定される。移動部44bは、実施形態において、上面側に試料ステージ30の下面側が固定される。第一方向移動ユニット42は、例えば、第一方向D1に沿って設けられる周知のボールねじ42cと、ボールねじ42cを軸回りに回転させる回転駆動源(不図示)と、を含む。移動部42bには、ボールねじ42cが挿通し、内周面に雌ねじを有する貫通孔が形成される。移動部42bは、ボールねじ42cと螺合し、ボールねじ42cの軸回りの回転に伴って、第一方向D1に移動する。ボールねじ42cを軸回りに回転させる不図示の回転駆動源は、実施形態において、後述のコントローラ80に電気的に接続されている。
【0028】
第二方向移動ユニット44は、回転ユニット50に対して第一方向移動ユニット42を第二方向D2に移動させる。第二方向移動ユニット44は、固定部44aと、移動部44bと、を含む。固定部44aは、回転ユニット50に固定される。固定部44aは、実施形態において、円板体52の上面側に取り付けられる。固定部44aは、移動部44bを第二方向D2に移動可能に支持する。移動部44bは、第一方向移動ユニット42の固定部42aに固定される。第二方向移動ユニット44は、例えば、第二方向D2に沿って設けられる周知のボールねじ44cと、ボールねじ44cを軸回りに回転させる回転駆動源(不図示)と、を含む。移動部44bには、ボールねじ44cが挿通し、内周面に雌ねじを有する貫通孔が形成される。移動部44bは、ボールねじ44cと螺合し、ボールねじ44cの軸回りの回転に伴って、第一方向D1に移動する。ボールねじ44cを軸回りに回転させる不図示の回転駆動源は、実施形態において、後述のコントローラ80に電気的に接続されている。
【0029】
回転ユニット50は、試料ステージ30及び水平移動ユニット40を、顕微鏡22及びカメラ24の視野中心、すなわち光軸26に一致する回転軸回りに顕微鏡22及びカメラ24に対して回転可能である。回転ユニット50は、実施形態において、円板体52と、回転作動軸部54と、軸受56と、回転作動軸部54を軸回りに回転させる回転駆動源(不図示)と、を含む。
【0030】
円板体52は、実施形態において、中空のウォームホイールである。円板体52は、光軸26に一致する回転軸回りに回動可能であるように軸受56を介して基台12の上面に支持される。円板体52の直径は、基台12の開口12aの直径より大きい。円板体52は、基台12の内部に設けられる顕微鏡22及びカメラ24の視野を遮らないように回転軸周りが中空に設けられる環形状である。円板体52は、外周面に回転作動軸部54の歯部54aと噛み合う歯部52aを有する。円板体52には、第二方向移動ユニット44の固定部44aが固定される。円板体52は、回転作動軸部54の軸回りの回転に伴って、光軸26に一致する回転軸回りに回転する。
【0031】
回転作動軸部54は、実施形態において、ウォームである。回転作動軸部54は、水平な軸回りに回動可能であるように、基台12の支持部(不図示)に支持される。回転作動軸部54は、外周面に円板体52の歯部52aと噛み合う歯部54aを有する。回転作動軸部54は、軸回りに回転することによって、円板体52を、光軸26に一致する回転軸回りに回転させる。回転作動軸部54を軸回りに回転させる不図示の回転駆動源は、実施形態において、後述のコントローラ80に電気的に接続されている。
【0032】
軸受56は、基台12の上面に対して円板体52を光軸に一致する回転軸回りに回動可能に支持する。軸受56の内径は、基台12の開口12aより大きい。軸受56は、基台12の内部に設けられる顕微鏡22及びカメラ24の視野を遮らないように回転軸周りが中空に設けられる環形状である。軸受56は、実施形態において、スラスト玉軸受である。軸受56は、ハウジング軌道盤56aと、複数の玉56bと、保持器(不図示)と、軸軌道盤56cと、を含む。
【0033】
ハウジング軌道盤56aは、軸心が光軸26に一致するように、下面が基台12の上面の開口12aの周りに固定される環形状である。ハウジング軌道盤56aの上面には、軸心を中心とする環状の溝が設けられる。複数の玉56bは、ハウジング軌道盤56aの溝に配置される。複数の玉56bは、溝内を転動可能である。不図示の保持器は、複数の玉56bがハウジング軌道盤56aの軸心回りに均等に配置されるように複数の玉56bを保持する。軸軌道盤56cは、軸心が光軸26に一致するように複数の玉56bを介して、ハウジング軌道盤56aに支持される環形状である。軸軌道盤56cの下面には、軸心を中心とし、複数の玉56bが転動可能な環状の溝が設けられる。軸軌道盤56cは、複数の玉56bがハウジング軌道盤56aに対して転動することによって、ハウジング軌道盤56aに対して軸心回りに回転可能である。軸軌道盤56cの上面には、円板体52の下面が固定される。
【0034】
マニピュレータ60は、X軸-Y軸-Z軸の3軸構成のマニピュレータである。なお、実施形態において、水平面内の一方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と交差する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと交差する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。マニピュレータ60は、保持部材62と、治具64と、三軸移動ユニット70と、駆動装置(不図示)と、を備える。
【0035】
保持部材62は、保持部材62は、一方の端部から他方の端部に向かって下方に傾斜し、かつ平面視で長手方向がX軸方向に平行であるように、一方の端部が三軸移動ユニット70の移動部70bに連結される。保持部材62は、三軸移動ユニット70によって、三次元空間を移動領域として移動する。保持部材62は、他方の端部に治具64が取り付け可能である。治具64は、実施形態において、微細物質である試料100(図4等参照)の一部を切断可能なカッターである。実施形態の治具64は、保持部材62に装着されている状態において、上方から下方に移動することで切断可能であるように、刃がX軸方向に平行に形成される。
【0036】
三軸移動ユニット70は、基台12に固定される固定部70aと、固定部70aに対してX軸-Y軸-Z軸の3軸方向に移動可能な移動部70bと、を有する。移動部70bは、不図示の駆動装置の駆動により、基台12に対してX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動する。三軸移動ユニット70は、後述のコントローラ80に電気的に接続されている。
【0037】
三軸移動ユニット70は、例えば、Z軸方向移動ユニット72と、X軸方向移動ユニット74と、Y軸方向移動ユニット76と、を含む。Z軸方向移動ユニット72は、移動部70bを含み、移動部70bをX軸方向移動ユニット74に対してZ軸方向に移動可能である。X軸方向移動ユニット74は、Z軸方向移動ユニット72をY軸方向移動ユニット76に対してX軸方向に移動可能である。Y軸方向移動ユニット76は、固定部70aを含み、X軸方向移動ユニット74を基台12に対してY軸方向に移動可能である。
【0038】
コントローラ80は、マニピュレーションシステム10の各部を制御する制御装置である。コントローラ80は、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサを有する演算処理装置、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリを有する記憶装置、及び入出力インターフェース装置等のハードウェア資源を備える。コントローラ80の機能は、記憶装置に格納された所定のプログラムを演算処理装置が実行することで実現される。コントローラ80は、演算処理装置による演算結果に従って、各構成要素に各種機能を実行させる制御信号を出力する。
【0039】
コントローラ80は、顕微鏡ユニット20の焦点合わせ機構28、水平移動ユニット40、回転ユニット50、及びマニピュレータ60の、それぞれの駆動装置を制御し、必要に応じて設けられたドライバやアンプ等(不図示)を介してそれぞれに制御信号を出力する。コントローラ80は、顕微鏡ユニット20のカメラ24が取得した顕微鏡画像の映像信号を取得する。コントローラ80には、情報入力手段としての操作部82及び入力部84と、情報取得手段としての表示部86と、が接続されている。
【0040】
操作者は、操作部82及び入力部84を介して、コントローラ80にコマンドを入力することができる。操作部82は、例えば、ジョイスティック又はダイヤル等を含む。入力部84は、例えば、キーボード、マウス又はタッチパネル等を含む。
【0041】
操作部82が、例えば、マニピュレータ60の三次元移動を操作する三軸ジョイスティック等を含む場合、三軸ジョイスティックには、例えば、基台と、基台から直立するハンドル部と、を備える公知のものを用いることができる。三軸ジョイスティックは、例えば、ハンドル部を傾斜させるように操作することでマニピュレータ60のX-Y駆動を行うことができ、ハンドル部をねじることでマニピュレータ60のZ駆動を行うことができる。
【0042】
また、操作部82が、例えば、試料ステージ30の水平移動を操作する二軸ジョイスティックと、試料ステージ30の回転を操作するダイヤル等を含む場合、二軸ジョイスティックには、例えば、基台と、基台から直立するハンドル部と、を備える公知のものを用いることができる。二軸ジョイスティックは、例えば、ハンドル部を傾斜させるように操作することで水平移動ユニット40の第一方向D1及び第二方向D2への駆動を行うことができる。また、ダイヤルは、回転させることで、回転方向及び回転変位量に対応して円板体52の回転変位量を調整することができる。
【0043】
表示部86は、例えば、液晶パネル等の表示画面を含む。表示部86には、例えば、カメラ24で取得した顕微鏡画像や各種制御用画面が表示されるようになっている。なお、入力部84としてタッチパネルが用いられる場合には、表示部86の表示画面にタッチパネルを重ねて用い、操作者が表示部86の表示画像を確認しつつ入力操作を行うようにしてもよい。
【0044】
[システムの操作方法]
次に、本実施形態に係るマニピュレーションシステム10において、顕微鏡22の視野に対して試料100の位置及び体勢を変更させる操作方法について、図3から図6までを参照して説明する。図3は、図1に示すマニピュレーションシステム10の操作方法を説明するための平面図である。図4は、図3の要部拡大図である。図5は、図1に示すマニピュレーションシステム10の操作方法を説明するための平面図である。図6は、図5の要部拡大図である。
【0045】
以下に示す一例では、試料100を図4及び図6に示す切断予定ラインCLに沿ってマニピュレータ60の治具64で切断するために最適であるように、試料100の位置及び体勢を変更させる操作を行うものとする。操作者は、マニピュレーションシステム10において、まず、試料100が収容された試料保持部材32を、試料ステージ30の中央部に支持する。操作者は、次に、水平移動ユニット40を駆動させて、試料100を顕微鏡22及びカメラ24の視野内に移動させる。
【0046】
図3及び図4は、試料100を、顕微鏡22及びカメラ24の視野内に移動させた後の状態を示している。この際、試料100が顕微鏡22及びカメラ24の視野中心である光軸26に重なるように移動させることが好ましい。図3及び図4に示す一例では、試料100が試料ステージ30の中心30bからずれた位置で試料保持部材32に収容されているので、図3に示すように、試料ステージ30の中心30bは、光軸26からずれた位置に移動する。また、図4に示すように、顕微鏡22及びカメラ24の視野内に移動させた後の試料100は、切断予定ラインCLが治具64の刃の方向であるX軸方向に対して傾いている状態である。
【0047】
操作者は、次に、回転ユニット50を駆動させて、試料ステージ30を回転ユニット50の回転軸回りに回転させる。すなわち、試料100を光軸26回りに回転させて、試料100の体勢を変更させる。すなわち、試料100の切断予定ラインCLが治具64の刃の方向であるX軸方向に平行になるように、試料ステージ30を回転させる。
【0048】
図5及び図6は、図3及び図4に示す状態の後、さらに試料100の体勢を、マニピュレータ60によって操作可能な方向に変更させた後の状態を示している。ここで、試料100は、顕微鏡22及びカメラ24の視野中心である光軸26上にある。したがって、図3及び図4に示す状態から図5及び図6に示す状態に試料100の体勢を変更させる際、試料ステージ30を光軸26と一致する回転ユニット50の回転軸回りに回転させることによって、試料100を顕微鏡22及びカメラ24の視野の範囲内で光軸26回りに回転させることができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態のステージ装置は、顕微鏡22の観察方向に垂直な保持面30aに試料が支持される試料ステージ30と、試料ステージ30を保持面30aに平行な方向に移動可能な面方向移動ユニット(水平移動ユニット40)と、顕微鏡22に対して試料ステージ30及び面方向移動ユニットを顕微鏡22の視野中心に一致する回転軸回りに回転させることが可能な回転ユニット50と、を備える。
【0050】
このようなステージ装置によれば、視野中心(光軸26)回りに試料100を回転させることができる。すなわち、面方向移動ユニット(水平移動ユニット40)によって試料100を顕微鏡22の視野中心に移動させた後、試料100が所望の体勢になるように回転ユニット50で視野中心回りに回転させることで、回転させた後も視野内に試料100を存在させ続けることができる。また、面方向(実施形態では、水平方向)の位置に応じて回転に加えて面方向へも変位させるような複雑な制御を必要とせず、顕微鏡22視野内での試料100の体勢変更を単純な構造で実現できる。
【0051】
また、本実施形態のステージ装置において、回転ユニット50は、顕微鏡22が固定される基台12に対して回転軸回りに回動可能に支持されかつ面方向移動ユニット(水平移動ユニット40)を介して試料ステージ30を支持する円板体52と、軸回りの回転に伴って円板体52を回転させる回転作動軸部54と、を含む。
【0052】
このようなステージ装置によれば、回転作動軸部54の回転方向及び回転量に対応して、円板体52を所定方向に所定回転量で回転させることができる。したがって、単純な構造で、所望の回転量で試料ステージ30及び試料100を視野中心(光軸26)回りに回転させることができる。
【0053】
また、本実施形態のステージ装置において、面方向移動ユニット(水平移動ユニット40)は、円板体52に対して保持面30aに平行な第一方向D1に試料ステージ30を移動可能な第一方向移動ユニット42と、円板体52に対して保持面30aに平行かつ第一方向D1に直交する第二方向D2に試料ステージ30を移動可能な第二方向移動ユニット44と、を含む。
【0054】
このようなステージ装置によれば、保持面30aに平行な平面上の二軸で試料ステージ30を移動させることができる。したがって、単純な構造で、試料ステージ30を面方向(実施形態では、水平方向)に移動させることができるので、試料100を視野中心まで容易に移動させることができる。
【0055】
また、本実施形態のステージ装置において、面方向移動ユニット(水平移動ユニット40)は、円板体52の上面側に取り付けられる。
【0056】
このようなステージ装置によれば、試料100を顕微鏡22の視野中心に移動させた後の面方向移動ユニットを、円板体52が面方向移動ユニット(水平移動ユニット40)を下方から支持した状態で、容易に顕微鏡22の視野中心回りに回転させることができる。
【0057】
また、本実施形態のマニピュレーションシステム10は、ステージ装置と、視野中心(光軸26)が回転軸に一致する顕微鏡22を含む顕微鏡ユニット20と、試料を操作するための治具64を含むマニピュレータ60と、を備える。
【0058】
このようなマニピュレーションシステム10によれば、マニピュレータ60の操作対象である試料100を視野中心(光軸26)回りに回転させることができる。したがって、試料100の観察方向が適しておらず、姿勢変更を必要とする際、試料が液状に近い、又はマニピュレータ60の治具64が試料100の体勢変更に適していない場合であっても、試料100を顕微鏡22視野内に存在させ続けた状態で体勢変更させることができる。
【0059】
なお、本実施形態は、上記態様に限定されるものではない。即ち、本実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0060】
例えば、図1に示す実施形態では、顕微鏡22及びカメラ24は、試料保持部材32の下方に配置されているが、試料保持部材32の上方に配置してもよい。また、顕微鏡ユニット20において、カメラ24は、顕微鏡22と別体に設けてもよい。
【0061】
また、実施形態の試料ステージ30は、平面視で矩形状であるが、円形であってもよい。また、試料ステージ30の保持面30aは、実施形態において水平面であるが、顕微鏡22及びカメラ24の光軸26の試料100に対する入射方向に対して垂直な面であればよい。
【0062】
なお、顕微鏡22及びカメラ24の光軸26の試料100に対する入射方向が垂直軸から傾いている場合、すなわち、試料ステージ30の保持面30aが水平面に対して傾いている場合、マニピュレーションシステム10は、水平移動ユニット40の代わりに試料ステージ30を面方向に移動可能な面方向移動ユニットを備える。
【0063】
また、実施形態の水平移動ユニット40及び回転ユニット50は、コントローラ80に電気的に接続され、操作部82からコントローラ80に入力されたコマンドに対応して出力された制御信号に基づいて駆動するが、機械的に接続して設けられる操作部への操作者による操作によって駆動してもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 マニピュレーションシステム
12 基台
20 顕微鏡ユニット
22 顕微鏡
24 カメラ
26 光軸
28 焦点合わせ機構
30 試料ステージ
30a 保持面
30b 中心
32 試料保持部材
40 水平移動ユニット(面方向移動ユニット)
42 第一方向移動ユニット
44 第二方向移動ユニット
50 回転ユニット
52 円板体
54 回転作動軸部
56 軸受
60 マニピュレータ
62 保持部材
64 治具
70 三軸移動ユニット
80 コントローラ
100 試料
D1 第一方向
D2 第二方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6