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特開2023-130314繊維用透水性付与剤、繊維、不織布及び吸水性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130314
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】繊維用透水性付与剤、繊維、不織布及び吸水性物品
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/292 20060101AFI20230912BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20230912BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20230912BHJP
   A61L 15/20 20060101ALI20230912BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
D06M13/292
D06M15/53
A61F13/511 200
A61L15/20 200
D06M13/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030996
(22)【出願日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2022034475
(32)【優先日】2022-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 匠実
(72)【発明者】
【氏名】関藤 正剛
【テーマコード(参考)】
3B200
4L033
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA03
3B200BA06
3B200BB01
3B200BB03
3B200BB13
3B200BB30
3B200DC01
3B200DC02
4L033AB01
4L033AB07
4L033AC07
4L033BA14
4L033BA39
4L033BA40
4L033CA48
(57)【要約】
【課題】瞬時透水性、耐久透水性及び液戻り防止性が優れた透水性付与剤を提供する。
【解決手段】炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A1)及び一般式(1)で表されるアルキルホスフェート塩(A2)からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン酸エステル塩(A)と、一般式(2)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)と、を含有する繊維用透水性付与剤であって、前記リン酸エステル塩(A)の重量Waと前記多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の重量Wbとの比(Wa/Wb)が81/19~95/5である繊維用透水性付与剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A1)及び下記一般式(1)で表されるアルキルホスフェート塩(A2)からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン酸エステル塩(A)と、下記一般式(2)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)と、を含有する繊維用透水性付与剤であって、
炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A1)及び一般式(1)で表されるアルキルホスフェート塩(A2)からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン酸エステル塩(A)の重量Waと一般式(2)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の重量Wbとの比(Wa/Wb)が81/19~95/5である繊維用透水性付与剤。
【化1】

[一般式(1)中、Rは炭素数6~18のアルキル基であり、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、mは1~10の整数であり、rは1又は2の整数であり、rが1の場合Mはアルカリ金属原子であり、rが2の場合、2つのMのうち1つはアルカリ金属原子であり、もう1つのMが水素原子またはアルカリ金属原子である。]
-[(AO)k-(CHCHO)-H] (2)
[一般式(2)中、AOとCHCHOとの付加モル数の比率(n/k)は0~0.5であり、Rは、多価活性水素化合物から全ての活性水素を除いた残基を表す。AOは、炭素数3又は4のアルキレンオキシ基を表す。kは、AOの付加モル数を表し、4~50の数である。nは、CHCHOの付加モル数を表し、0~25の数である。pは多価活性水素化合物の価数を表し、3~6の整数である。]
【請求項2】
一般式(2)において、nは1~20の数である請求項1に記載の繊維用透水性付与剤。
【請求項3】
多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の多価活性水素化合物が、グリセリン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の繊維用透水性付与剤。
【請求項4】
請求項1または2に記載の繊維用透水性付与剤と繊維本体とを含む繊維であって、
炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A1)及び下記一般式(1)で表されるアルキルホスフェート塩(A2)からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン酸エステル塩(A)の重量Waと下記一般式(2)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の重量Wbとの比(Wa/Wb)が81/19~95/5である繊維。
【化2】

[一般式(1)中、Rは炭素数6~18のアルキル基であり、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、mは1~10の整数であり、rは1又は2の整数であり、rが1の場合Mはアルカリ金属原子であり、rが2の場合、2つのMのうち1つはアルカリ金属原子であり、もう1つのMが水素原子またはアルカリ金属原子である。]
-[(AO)k-(CHCHO)-H] (2)
[一般式(2)中、AOとCHCHOとの付加モル数の比率(n/k)は0~0.5であり、Rは、多価活性水素化合物から全ての活性水素を除いた残基を表す。AOは、炭素数3又は4のアルキレンオキシ基を表す。kは、AOの付加モル数を表し、4~50の数である。nは、CHCHOの付加モル数を表し、0~25の数である。pは多価活性水素化合物の価数を表し、3~6の整数である。]
【請求項5】
請求項4に記載の繊維を用いた不織布。
【請求項6】
請求項5に記載の不織布を用いた吸水性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維用透水性付与剤、繊維、不織布及び吸水性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙おむつや生理用品等の吸収性物品は、液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートの間に、綿状パルプ、高吸収性高分子物質等からなる吸収体を配置した構成になっている。
尿や体液はトップシートを通って吸収体に吸収される。このときの不快感を回避するために、尿や体液が完全に吸収されるまでの時間が極めて短いこと(瞬時透水性)、吸収体からトップシート表面への尿や体液の液戻りが少ないこと(液戻り防止性)が求められている。
さらに、1回~2回分の尿または体液の吸収によってトップシート上の処理剤が流出して透水性が急激に低下すると、吸収性物品の取り替え回数を増やすことになるため、トップシート等の透水性材料には、繰り返し透水性(耐久性透水性)も求められている。
そこで、従来から上記の性能を満たすものについて検討がなされており、例えば、特許文献1においては、多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物を含む処理剤等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6412172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の発明によれば、耐久透水性及び液戻り防止性を向上することができるが、さらなる改善の余地がある。
本発明の課題は、瞬時透水性、耐久透水性及び液戻り防止性が優れた透水性付与剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A1)及び下記一般式(1)で表されるアルキルホスフェート塩(A2)からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン酸エステル塩(A)と、下記一般式(2)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)と、を含有する繊維用透水性付与剤であって、炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A1)及び一般式(1)で表されるアルキルホスフェート塩(A2)からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン酸エステル塩(A)の重量Waと一般式(2)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の重量Wbとの比(Wa/Wb)が81/19~95/5である繊維用透水性付与剤。
【0006】
【化1】
【0007】
[一般式(1)中、Rは炭素数6~18のアルキル基であり、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、mは1~10の整数であり、rは1又は2の整数であり、rが1の場合Mはアルカリ金属原子であり、rが2の場合、2つのMのうち1つはアルカリ金属原子であり、もう1つのMが水素原子またはアルカリ金属原子である。]
-[(AO)k-(CHCHO)-H] (2)
[一般式(2)中、AOとCHCHOとの付加モル数の比率(n/k)は0~0.5であり、Rは、多価活性水素化合物から全ての活性水素を除いた残基を表す。AOは、炭素数3又は4のアルキレンオキシ基を表す。kは、AOの付加モル数を表し、4~50の数である。nは、CHCHOの付加モル数を表し、0~25の数である。pは多価活性水素化合物の価数を表し、3~6の整数である。]
[2]一般式(2)において、nは1~20の数である[1]に記載の繊維用透水性付与剤。
[3]多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の多価活性水素化合物が、グリセリン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールからなる群より選ばれる少なくとも1種である[1]または[2]に記載の繊維用透水性付与剤。
[4][1]~[3]のいずれか一項に記載の繊維用透水性付与剤と繊維本体とを含む繊維であって、炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A1)及び上記一般式(1)で表されるアルキルホスフェート塩(A2)からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン酸エステル塩(A)の重量Waと上記一般式(2)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の重量Wbとの比(Wa/Wb)が81/19~95/5である繊維。
[5][4]に記載の繊維を用いた不織布。
[6][5]に記載の不織布を用いた吸水性物品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、瞬時透水性、耐久透水性及び液戻り防止性が優れた透水性付与剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[繊維用透水性付与剤]
本発明の繊維用透水性付与剤(以下、「透水性付与剤」ともいう)は、炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A1)及び一般式(1)で表されるアルキルホスフェート塩(A2)からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン酸エステル塩(A)と、一般式(2)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)と、を含有する。
以下において「リン酸エステル塩(A)」を「(A)成分」と呼ぶことがある。
【0010】
(A)成分は、炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A1)及び一般式(1)で表されるアルキルホスフェート塩(A2)からなる群より選ばれる少なくとも一種である。(A)成分は炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A1)及び一般式(1)で表されるアルキルホスフェート塩(A2)のうちのいずれか1種のみから構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。以下において「炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A1)」を「リン酸エステル金属塩(A1)」または「(A1)成分」と呼ぶことがある。以下において、「一般式(1)で表されるアルキルホスフェート塩(A2)」を「アルキルホスフェート塩(A2)」と呼ぶことがある。
【0011】
リン酸エステル金属塩(A1)としては、炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸モノエステル金属塩および炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸ジエステル金属塩等が挙げられる。リン酸エステル金属塩(A1)としては、好ましくは炭素数8~18のアルキル基を有するアルコールのリン酸モノエステル金属塩であり、より好ましくは炭素数10~16のアルキル基を有するアルコールのリン酸モノエステル金属塩である。アルキル基としては、直鎖、分岐のいずれであってもよい。
【0012】
リン酸エステル金属塩(A1)の具体例としては、オクチルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、2-エチルヘキシルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、デシルアルコールのリン酸モノエステルナトリウム塩、イソデシルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、ドデシルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、トリデシルアルコールのリン酸モノエステルナトリウム塩、イソトリデシルアルコールのリン酸モノエステルナトリウム塩、テトラデシルアルコール(ミリスチルアルコール)のリン酸モノエステルカリウム塩、ヘキサデシルアルコールのリン酸モノエステルナトリウム塩、オクタデシルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、イソオクタデシルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、オレイルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、及びヤシ油アルコールリン酸モノエステルカリウム塩等が挙げられる。リン酸エステル金属塩(A1)としては、リン酸ジエステル金属塩を用いてもよい。これらのリン酸エステル金属塩(A1)は単独でも二種以上を併用してもよい。
【0013】
瞬時透水性及び液戻り防止性に優れるという観点から、リン酸エステル金属塩(A1)としては、2-エチルヘキシルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、オレイルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、ミリスチルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、イソステアリルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩及びヤシ油アルコールのリン酸モノエステルカリウム塩から選ばれる少なくとも一種以上であることが好ましく、2-エチルヘキシルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、オレイルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、ミリスチルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩及びヤシ油アルコールのリン酸モノエステルカリウム塩のいずれかであることがより好ましい。
【0014】
アルキルホスフェート塩(A2)は下記一般式(1)で表される化合物である。
【0015】
【化2】
【0016】
一般式(1)中、Rは炭素数6~18のアルキル基であり、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、mは1~10の整数であり、rは1又は2の整数であり、rが1の場合Mはアルカリ金属原子であり、rが2の場合、2つのMのうち1つはアルカリ金属原子であり、もう1つのMが水素原子またはアルカリ金属原子である。
【0017】
一般式(1)におけるRは、好ましくは炭素数が8~18のアルキル基である。炭素数8~18のアルキル基としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、イソステアリル基等が挙げられる。また、アルキル基は直鎖アルキル基であっても分岐を有するアルキル基であってもよい。
【0018】
一般式(1)におけるAOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、具体的にはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、およびブチレンオキシ基が挙げられる。これらは一種のみでもよいし二種以上を組み合わせてもよい。これらのうち好ましいものはエチレンオキシ基である。
【0019】
一般式(1)におけるMは、rが1の場合(Mが1つの場合)アルカリ金属原子であり、rが2の場合(Mが2つの場合)、2つのMのうち1つはアルカリ金属原子であり、もう1つのMが水素原子またはアルカリ金属原子である。アルカリ金属原子としてはナトリウム原子、カリウム原子及びリチウム原子等が挙げられる。これらのうち、Mとしてはカリウム原子およびナトリウム原子が好ましい。
一般式(1)におけるmはアルキレンオキサイドの付加モル数を意味し、好ましくはmが1~8であり、より好ましくはmが2~6である。
一般式(1)におけるrはアルキルホスフェート塩(A2)が有するMの数を表し、1又は2の整数である。アルキルホスフェート塩(A2)は、rが1であるアルキルホスフェート塩とrが2であるアルキルホスフェート塩との混合物であってもよい。
【0020】
アルキルホスフェート塩(A2)としては、具体的には、オクチルアルコールのエチレンオキサイド(以下、EOと略記する)2モル付加物リン酸(モノまたはジ)エステルカリウム塩、オクチルアルコールのプロピレンオキサイド(以下、POと略記する)2モル付加物リン酸(モノまたはジ)エステルカリウム塩、ドデシルアルコール(ラウリルアルコール)のEO3モル付加物のリン酸(モノまたはジ)エステルカリウム塩、ラウリルアルコールのPO3モルEO5モル付加物のリン酸(モノまたはジ)エステルカリウム塩、トリデシルアルコールのEO5モル付加物のリン酸(モノまたはジ)エステルカリウム塩、イソトリデシルアルコールのEO3モル付加物のリン酸(モノまたはジ)エステルカリウム塩、オクタデシルアルコール(ステアリルアルコール)のEO5モル付加物のリン酸(モノまたはジ)エステルカリウム塩、イソオクタデシルアルコール(イソステアリルアルコール)のEO5モル付加物のリン酸(モノまたはジ)エステルナトリウム塩、イソオクタデシルアルコールのEO5モル付加物のリン酸(モノまたはジ)エステルカリウム塩、炭素数12~15のアルコールのEO5モル付加物のリン酸(モノまたはジ)エステルカリウム塩、ヤシ油アルコールEO3モル付加物のリン酸(モノまたはジ)エステルカリウム塩、牛脂アルコールEO4モル付加物のリン酸(モノまたはジ)エステルカリウム塩等が挙げられる。
これらのうち、瞬時透水性及び液戻り防止性の観点から、オクチルアルコールのEO2モル付加物リン酸(モノまたはジ)エステルカリウム塩、ラウリルアルコールのEO3モル付加物のリン酸(モノまたはジ)エステルナトリウム塩、ラウリルアルコールのPO3モルEO5モル付加物のリン酸(モノまたはジ)エステルカリウム塩、炭素数12~15のアルコールのEO5モル付加物のリン酸(モノまたはジ)エステルカリウム塩、牛脂アルコールEO4モル付加物のリン酸(モノまたはジ)エステルカリウム塩及びイソステアリルアルコールのEO5モル付加物のリン酸(モノまたはジ)エステルナトリウム塩が好ましい。
【0021】
本発明の透水性付与剤は、下記一般式(2)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)を含有する。以下において「一般式(2)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)」を「多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)」または「(B)成分」と呼ぶことがある。
-[(AO)-(CHCHO)-H] (2)
[一般式(2)中、AOとCHCHOとの付加モル数の比率(n/k)は0~0.5であり、Rは、多価活性水素化合物から全ての活性水素を除いた残基を表す。AOは、炭素数3又は4のアルキレンオキシ基を表す。kは、AOの付加モル数を表し、4~50の数である。nは、CHCHOの付加モル数を表し、0~25の数である。pは多価活性水素化合物の価数を表し、3~6の整数である。]
【0022】
多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)における多価活性水素化合物としては価数が3~6の多価アルコール、糖類、多価カルボン酸及び多価アミン等が挙げられる。
価数が3~6の多価アルコールのうち、3価の多価アルコールとしては、グリセリン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、1,3,5-シクロヘキサントリオール、ペンタメチルグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ひまし油及び硬化ひまし油等が挙げられる。
4価の多価アルコールとして、1,2,3,4-ブタンテトラオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン、リボース、アラビノース、キシロース及びリキソース等が挙げられる。
5価の多価アルコールとして、トリグリセリン、アラビトール、キシリトール、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アロース、グロース、イドース、タロース及びクエルシトール等が挙げられる。
6価の多価アルコールとして、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ガラクチトール、マンニトール、アリトール、イジトール、タリトール及びイノシトール等が挙げられる。
【0023】
価数が3~6の多価アルコールとしては、ひまし油及び硬化ひまし油以外の動植物油脂等も挙げられる。
【0024】
多価アルコールとしては、瞬時透水性及び耐久透水性が優れるという観点から、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びソルビトールが好ましく、グリセリン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールが更に好ましい。
【0025】
糖類としては、単糖類等が挙げられる。
【0026】
価数が3~6の多価カルボン酸のうち、3価のカルボン酸としては、1,2,3-プロパントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸、トリマー酸(C18不飽和カルボン酸3量体)及びトリメリット酸等が挙げられる。
【0027】
4価のカルボン酸としては、エチレンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸及びブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸等が挙げられる。
【0028】
5価のカルボン酸としては、1,2,3,4,5-シクロヘキサンペンタカルボン酸、ベンゼンペンタカルボン酸及び1,2,4,5,8-ナフタレンペンタカルボン酸等が挙げられる。
6価のカルボン酸としては、シクロヘキサンヘキサカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸及び1,2,3,4,5,7-ナフタレンヘキサカルボン酸等が挙げられる。
【0029】
価数が3~6の多価アミンのうち、3価のアミンとしては、1,2,3-プロパントリアミン、ヘキサメチレントリアミン、1,3,5-ベンゼントリアミン及びメラミン等が挙げられる。
4価のアミンとしては、ブタン-1,1,4,4-テトラアミン、トリエチレンテトラミン及びピリミジン-2,4,5,6-テトラアミン等が挙げられる。
【0030】
多価活性水素化合物は、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも2種の活性水素基を化合物中に含んでいてもよい。上記活性水素基を2種以上含む化合物として、クエン酸、グリセリン酸及びアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン酸及びグルタミン酸等)等が挙げられる。
【0031】
多価活性水素化合物としては、価数が3~6の多価アルコールと脂肪酸とが部分エステルを形成したものであってもよい。
価数が3~6の多価アルコールとしては、上述した化合物等が挙げられる。
脂肪酸としては、炭素数8~24の脂肪族カルボン酸[脂肪族飽和カルボン酸(カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸等)、脂肪族不飽和カルボン酸(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ひまし油脂肪酸及び硬化ひまし油脂肪酸等)]等が挙げられる。
【0032】
一般式(2)におけるRが、価数が3~6の多価アルコールと脂肪酸との部分エステルのアルキレンオキサイド付加物から全ての活性水素を除いた残基である場合、多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)のエステル化度は50%以下が好ましい。
エステル化度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定結果から自動積分法により求めたモノ、ジ及びトリエステル体のピーク面積(積分面積)をもとに下記数式(1)から算出できる。
【0033】
【数1】
【0034】
GPCの条件は以下のとおりである。
装置:HLC-8220GPC[東ソー(株)製]
GPCカラム
ガードカラム:TSKguardcolumn SuperH-L(4.6mmI.D.×15cm)
分離カラム:TSKgel SuperH2000(6mmI.D.×15cm)+TSKgel SuperH3000(6mmI.D.×15cm)+TSKgel SuperH4000(6mmI.D.×15cm)
検出器:RI検出器
流動媒体:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/min
カラム温度:40℃
サンプル濃度:0.25重量%
サンプル注入量:10μl
【0035】
多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の多価活性水素化合物としては、瞬時透水性及び耐久透水性に優れるという観点から、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール、グルタミン酸、ひまし油及び硬化ひまし油からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びソルビトールからなる群より選ばれる化合物であることがより好ましい。
【0036】
一般式(2)におけるAOは、炭素数3~4のアルキレンオキシ基を表し、具体的には、プロピレンオキシ基(PO)又はブチレンオキシ基(以下、BOと略記)である。POとしては、直鎖プロピレンオキシ基でも分岐プロピレンオキシ基(1-メチルエチレンオキシ基、2-メチルエチレンオキシ基)でもよい。BOとしては、直鎖ブチレンオキシ基および分岐ブチレンオキシ基(1-メチルプロピレンオキシ基、2-メチルプロピレンオキシ基、3-メチルプロピレンオキシ基、1,2-ジメチルエチレンオキシ基、1,1’-ジメチルエチレンオキシ基、および2,2’-ジメチルエチレンオキシ基等が挙げられる。A2Oは、POであることが好ましい。なお、AOは、1種または2種以上の併用であってもよい。
【0037】
一般式(2)におけるkは、Rに結合している基[(AO)-(CHCHO)-H]1個当たりのAOの付加モル数を表す。kは、取り扱い性の観点から、4~50の数であり、好ましくは8~40であり、より好ましくは12~30である。kは、整数であるとは限らず、小数の場合もある。
【0038】
O中に2種以上のアルキレンオキシ基が含まれる場合、AO中のPO及びBOは、ブロック状またはランダム状に付加してもよい。「ブロック状」とは、Rに結合している基[(AO)-(CHCHO)-H]において、1種のアルキレンオキシ基が2個以上連続している態様をいう。
【0039】
一般式(2)におけるCHCHOは、エチレンオキシ基(EO)を表す。
一般式(2)におけるnは、Rに結合している基[(AO)-(CHCHO)-H]1個当たりのCHCHOの付加モル数を表し、0~25の数である。透水性に優れるという観点から、nは好ましくは1~20の数であり、より好ましくは0~10であり、特に好ましくは0~8である。nは、整数であるとは限らず、小数の場合もある。
【0040】
一般式(2)における、AOとCHCHOとは、ブロック状に付加していることが好ましい。
【0041】
また、一般式(2)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)においては、AO又はCHCHOのいずれかが末端に位置していてもよいが、透水性付与剤の瞬時透水性及び耐久透水性の観点から、CHCHOが末端に位置していることが好ましい。
【0042】
一般式(2)において、AOとCHCHOとの付加モル数の比率(n/k)は0~0.5である。付加モル数の比率は、好ましくは0.02~0.3であり、より好ましくは0.04~0.2である。
なお、AOとCHCHOとの付加モル数の比率は、理論計算から算出される。
【0043】
一般式(2)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)のAOとCHCHOの付加モル数は、(B)をGPCで分析することにより求めることができる。
この場合の、GPCの測定条件は以下のとおりである。
装置:HLC-8220GPC[東ソー(株)製]
GPCカラム
ガードカラム:TSKguardcolumn SuperH-L(4.6mmI.D.×15cm)
分離カラム:TSKgel SuperH2000(6mmI.D.×15cm)+TSKgel SuperH3000(6mmI.D.×15cm)+TSKgel SuperH4000(6mmI.D.×15cm)
検出器:RI検出器
流動媒体:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/min
カラム温度:40℃
サンプル濃度:0.25重量%
サンプル注入量:10μl
【0044】
また、一般式(2)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)のAOとCHCHOの付加モル数は、(B)の原料のモル比及び、多価活性水素化合物の活性水素の数等から算出することができる。例えば、原料として、グリセリン(活性水素の数は3)、プロピレンオキサイド(PO)及びエチレンオキサイド(EO)を、モル比(グリセリン:PO:EO=1:90:20)で用いた場合、グリセリン(3価の活性水素化合物)から全ての活性水素を除いた残基に、[(PO)-(EO)-H]で表される基が3個結合した化合物が得られ(p=3)、当該化合物1分子中の、POの付加モル数の合計は90でEOの付加モル数の合計は20である。
この化合物の、[(PO)-(EO)-H]で表される基1個当たりの、PO付加モル数kは、(PO付加モル数の合計/p)により算出でき、EO付加モル数nは(EO付加モル数の合計/p)により算出できる。
【0045】
本発明の透水性付与剤において、多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)としては、瞬時透水性及び耐久透水性に優れるという観点から、グリセリンのPO90モルEO20モルブロック付加物[一般式(2)中の、kが30、nが6.67、pが3の化合物]、グリセリンのPO85.3モルEO21.8モルブロック付加物[一般式(2)中の、kが28.4、nが7.3、pが3の化合物]、トリメチロールプロパンのPO67モルEO11モルブロック付加物[一般式(2)中の、kが22.3、nが3.67、pが3の化合物]、ペンタエリスリトールPO104モル付加物[一般式(2)中の、kが26、nが0、pが4の化合物]、ペンタエリスリトールのPO104モルEO19.2モルブロック付加物[一般式(2)中の、kが26、nが4.8、pが4の化合物]、ソルビトールのPO9モルBO0.84モルPO78モルブロック付加物[一般式(2)中の、kが22.84、nが0、pが6の化合物]等が好ましい。
【0046】
本発明において、炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A1)及び一般式(1)で表されるアルキルホスフェート塩(A2)からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン酸エステル塩(A)の重量Waと一般式(2)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の重量Wbとの比(Wa/Wb)は81/19~95/5である。(Wa/Wb)を前記範囲とすることにより、瞬時透水性、耐久透水性及び液戻り防止性を優れたものとすることができる。
(Wa/Wb)が81/19未満であると瞬時透水性及び/又は液戻り防止性が不充分となることがあり、95/5を超えると耐久透水性が不充分となることがある。(Wa/Wb)は、瞬時透水性、耐久透水性及び液戻り防止性に優れるという観点から、好ましくは82/18以上、より好ましくは85/15以上であり、好ましくは94/6以下、より好ましくは90/10以下である。
【0047】
本発明の透水性付与剤において、瞬時透水性、耐久透水性及び液戻り防止性を優れたものとすることができるという観点から、透水性付与剤中の不揮発性成分の重量に基づく(A)成分の含有量は、好ましくは81~95重量%、より好ましくは82~94重量%、特に好ましくは85~90重量%である。本明細書において不揮発性成分とは、試料1gをガラス製シャーレ中で蓋をせず、130℃45分間循風乾燥機で加熱乾燥した後の残渣である。
【0048】
本発明の透水性付与剤において、瞬時透水性、耐久透水性及び液戻り防止性を優れたものとすることができるという観点から、透水性付与剤中の不揮発性成分の重量に基づく、多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の含有量は、好ましくは5~19重量%、より好ましくは10~19重量%であり、特に好ましくは15~19重量%である。
【0049】
多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)は、公知の方法等で製造でき、例えば、上記多価アルコールに、炭酸カリウム又は炭酸ナトリウム等を塩基性触媒として、アルキレンオキサイドを付加することにより製造できる。
【0050】
本発明の透水性付与剤は、(A)成分および(B)成分以外の成分を含みうる。このような成分としては、(A)成分および(B)成分以外の他の界面活性剤(C)および添加剤(D)などがあげられる。これらの成分は一種を用いてもよいし二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
他の界面活性剤(C)としては、(A)成分を除くアニオン界面活性剤(C1)、(B)成分を除くノニオン界面活性剤(C2)及び両性界面活性剤(C3)等が挙げられる。これらは単独でも二種以上を併用してもよい。
【0052】
(A)成分を除くアニオン界面活性剤(C1)としてはジアルキルスルホサクシネート塩、アルキルスルホン酸塩等が挙げられる。これらの具体例としては特許第6412172号公報において例示されているもの等が挙げられる。これらは、単独でも二種以上を併用してもよい。アニオン界面活性剤(C1)としては、初期透水性に優れるという観点からジアルキルスルホサクシネート塩が好ましい。ジアルキルスルホサクシネート塩の具体例としては、ジ-2エチルヘキシルスルホサクシネートナトリウム塩、ジドデシルスルホサクシネートナトリウム塩、ジトリデシルスルホサクシネートナトリウム塩、及び1-オクチル2-ヘキサデシルスルホサクシネートカリウム塩等が挙げられるが、これらのうち、ジトリデシルスルホサクシネートナトリウム塩が好ましい。
【0053】
(B)成分を除くノニオン界面活性剤(C2)としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、多価アルコールのポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸とのエステル、多価アルコールと脂肪酸とのエステルのアルキレンオキサイド付加物、ポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸とのエステル、ポリオキシアルキレングリコールジエステル及び多価アルコールと脂肪酸とのエステル等が挙げられる。これらは、単独でも二種以上を併用してもよい。これらの具体例としては特許第6412172号公報において例示されているもの等が挙げられる。これらのうち、多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と脂肪酸とのエステルが好ましい。
【0054】
多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と脂肪酸とのエステルとしては、ひまし油のアルキレンオキサイド付加物のステアリン酸エステル、硬化ひまし油のアルキレンオキサイド付加物のオレイン酸エステル、ひまし油のアルキレンオキサイド付加物の牛脂脂肪酸エステル、硬化ひまし油のアルキレンオキサイド付加物とマレイン酸とステアリン酸とのポリエステル及び硬化ひまし油のアルキレンオキサイド付加物とセバシン酸とステアリン酸とのポリエステル等が挙げられる。これらのうち、通液性および繰り返し透水性向上の観点から、ひまし油のアルキレンオキサイド付加物と脂肪酸とのエステルが好ましく、ひまし油のアルキレンオキサイド付加物とオレイン酸とのエステルがより好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、炭素数2~4のAO(EO、PO、BO)等が挙げられる。AOは、1種または2種以上の併用であってもよい。なお、2種以上のAOを併用する場合は、ブロック付加でもランダム付加でもよい。
【0055】
両性界面活性剤(C3)としては炭素数6~24のアルキル基及び/又は炭素数6~24のアルケニル基を有するベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。これらの具体例としては特開2018-178331号公報において例示されているもの等が挙げられる。これらは、単独でも二種以上を併用してもよい。
【0056】
添加剤(D)としては、例えば、炭素数2~10の多価アルコール(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン及びソルビトール等)、溶剤(水及び有機溶剤等)、ワックス等の潤滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、防腐剤及び香料等が挙げられる。
【0057】
本発明の透水性付与剤は、(A)成分、(B)成分及び必要により添加される成分[水、他の界面活性剤(C)、添加剤(D)等]を配合し、常温又は必要により加熱(例えば30~70℃)して均一に混合することにより得ることができる。各成分の配合順序、配合方法は特に限定されない。
【0058】
本発明の透水性付与剤は、繊維(繊維本体)に使用することが好ましい。本発明の透水性付与剤を繊維本体に使用することで、繊維本体に透水性を付与することができる。透水性付与剤を繊維本体に使用する方法としては、例えば繊維本体に透水性付与剤を付着させる方法等が挙げられる。本明細書において、本発明の透水性付与剤を使用する対象の繊維、即ち、当該透水性付与剤を使用する前の繊維を、透水性付与剤を使用した後の繊維と区別する観点で、「繊維本体」と呼ぶ。
本発明の透水性付与剤を繊維本体に使用して得られる繊維は、不織布製品に用いられることが好ましく、特に、紙おむつ等の吸収性物品のトップシートに用いられることが好ましい。
【0059】
本発明の透水性付与剤は、好ましくは、水系エマルションとして、繊維本体に使用される。
水系エマルションは、透水性付与剤に20~40℃の水を投入して希釈するか、20~40℃の水の中に透水性付与剤を加えて乳化し、作製するのが好ましい。
【0060】
水系エマルションの濃度は、任意の濃度の選択が可能であるが、透水性付与剤中の不揮発性成分の重量割合が、水系エマルションの重量に基づいて、好ましくは0.05~20重量%であり、更に好ましくは0.1~10重量%である。
【0061】
[繊維]
本発明の繊維は、本発明の透水性付与剤と繊維本体とを含む繊維である。本発明の透水性付与剤を繊維本体に使用することで、繊維本体に透水性を付与し、本発明の繊維とすることができる。
【0062】
本発明の透水性付与剤を繊維本体に使用する方法としては、透水性付与剤を繊維本体に付着させる方法等が挙げられる。繊維本体に透水性付与剤を付着させる方法には特に制限はなく、紡糸、延伸などの任意の工程で、ディップ給油法、オイリングロール法、浸漬法、及び噴霧法などの公知の方法を利用することができる。
【0063】
透水性付与剤の付着量は、繊維本体の重量に基づいて、透水性付与剤中の不揮発性成分の重量割合が0.15~2重量%となる量であることが好ましく、0.2~1.5重量%となる量であることが更に好ましく、0.25~1重量%となる量が特に好ましい。
【0064】
瞬時透水性、耐久透水性及び液戻り防止性に優れるという観点から本発明の繊維においては、炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A1)及び一般式(1)で表されるアルキルホスフェート塩(A2)からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン酸エステル塩(A)の重量Waと一般式(2)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の重量Wbとの比(Wa/Wb)が81/19~95/5であることがより好ましい。炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A1)、一般式(1)で表されるアルキルホスフェート塩(A2)及び一般式(2)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)は、それぞれ、透水性付与剤で説明したものと同様の化合物であり、本発明の透水性付与剤由来のものであることが好ましいが、これに限定されない。
繊維は、上記リン酸エステル(A)及び多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)以外の他の成分を含みうる。
【0065】
本発明の繊維の素材(繊維本体)としては疎水性の合成繊維が好ましい。疎水性の繊維は、温度25℃、相対湿度65%で吸水率が1重量%以下である繊維を意味する。
繊維本体としては特に限定されず、疎水性の合成繊維を用いることができ、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等からなる繊維が挙げられる。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、及びエチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体等が挙げられる。
【0066】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート、及びポリエーテルポリエステル等が挙げられる。
ポリアミドとしては、6,6-ナイロン、及び6-ナイロン等が挙げられる。
これらの中でも、ポリオレフィン及びポリエステルは、おむつ用吸水素材として好ましく用いられる。
【0067】
本発明の繊維の態様は、布状の繊維が好ましく、織物、編物、及び不織布等が挙げられる。また、混綿、混紡、混繊、交編、及び交織などの方法で混合した繊維を布状として使用してもよい。これらの中では、特に不織布が好ましい。
【0068】
[不織布]
本発明の繊維は、不織布として適用しうる。本発明の不織布は、本発明の繊維を用いたものである。
本発明の透水性付与剤が付着した繊維を不織布に適用する場合、本発明の透水性付与剤を処理した短繊維を、乾式又は湿式法で繊維積層体とした後、加熱ロールで圧着したり、空気加熱で融着したり、高圧水流で繊維を交絡させ不織布としてもよいし、スパンボンド法、メルトブローン法、及びフラッシュ紡糸法等によって得られた不織布に、本発明の透水性付与剤を付着させてもよい。
【0069】
[吸収性物品]
本発明の繊維、及びそれを用いた不織布は、吸水性物品のトップシート、特に紙おむつ等の衛生材料のトップシートとして好適に用いられる。本発明の吸水性物品は本発明の不織布を用いたものである。
本発明の繊維およびそれを用いた不織布は、セカンドシート、吸水体及び吸収パッド等に利用することもできる。
【実施例0070】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
<製造例1:2-エチルヘキシルアルコールリン酸エステルカリウム塩(A-1)の製造>
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、2-エチルヘキシルアルコール231重量部及び無水リン酸101重量部を仕込み、60℃で反応させた後、水酸化カリウム94重量部を投入し、2-エチルへキシルアルコールのリン酸エステルカリウム塩を得た。得られた2-エチルへキシルアルコールのリン酸エステルカリウム塩に水を加えて、2-エチルへキシルアルコールのリン酸エステルカリウム塩(A-1)を73重量%含有する溶液を得た。
【0072】
<製造例2:ヤシ油アルコールリン酸エステルカリウム塩(A-3)の製造>
製造例1において、2-エチルヘキシルアルコール231重量部に代えてヤシ油アルコール330重量部を用いたこと以外は製造例1と同様にして、ヤシ油アルコールのリン酸エステルカリウム塩を得た。得られたヤシ油アルコールリン酸モノエステルカリウム塩に水を加えて、ヤシ油アルコールリン酸エステルカリウム塩(A-3)を50重量%含有する溶液を得た。
【0073】
<製造例3:ミリスチルアルコールリン酸エステルカリウム塩(A-5)の製造>
製造例1において、2-エチルヘキシルアルコール231重量部に代えて、ミリスチルアルコールを379重量部用いたこと以外は製造例1と同様にして、ミリスチルアルコールのリン酸エステルカリウム塩を得た。得られたミリスチルアルコールのリン酸エステルカリウム塩に水を加えて、ミリスチルアルコールのリン酸エステルカリウム塩(A-5)を50重量%含有する溶液を得た。
【0074】
<製造例4:オレイルアルコールリン酸エステルカリウム塩(A-6)の製造>
製造例1において、2-エチルヘキシルアルコール231重量部に代えて、オレイルアルコールを475重量部用いたこと以外は製造例1と同様にして、オレイルアルコールのリン酸エステルカリウム塩を得た。得られたオレイルアルコールのリン酸エステルカリウム塩に水を加えて、オレイルアルコールのリン酸エステルカリウム塩(A-6)を25重量%含有する溶液を得た。
【0075】
<製造例5:オクチルアルコールのEO2モル付加物のリン酸エステルカリウム塩(A-2)の製造>
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、オクチルアルコールEO2モル付加物578重量部及び無水リン酸150重量部を仕込み、60℃で反応させた後、水酸化カリウム309重量部を投入し、オクチルアルコールのEO2モル付加物のリン酸エステルカリウム塩を得た。得られたオクチルアルコールのEO2モル付加物のリン酸エステルカリウム塩に水を加えて、オクチルアルコールのEO2モル付加物のリン酸エステルカリウム塩(A-2)を40重量%含有する溶液を得た。オクチルアルコールのEO2モル付加物のリン酸エステルカリウム塩は一般式(1)において、Rがオクチル基、AOがEO、mが2、rが1、Mがカリウム原子の化合物である。
【0076】
<製造例6:ラウリルアルコールのPO3モルEO5モル付加物のリン酸エステルカリウム塩(A-4)の製造>
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、ラウリルアルコールのPO3モルEO5モル付加物740重量部及び無水リン酸60重量部を仕込み、60℃で反応させた後、水酸化カリウム115重量部を投入し、ラウリルアルコールのPO3モルEO5モル付加物のリン酸エステルカリウム塩を得た。得られたラウリルアルコールのPO3モルEO5モル付加物のリン酸エステルカリウム塩に水を加えて、ラウリルアルコールのPO3モルEO5モル付加物のリン酸エステルカリウム塩(A-4)を80重量%含有する溶液を得た。ラウリルアルコールのPO3モルEO5モル付加物のリン酸エステルカリウム塩は一般式(1)において、Rがドデシル基、AOがPOおよびEO、mが8、rが1、Mがカリウム原子の化合物である。
【0077】
<製造例7:牛脂アルコールのEO4モル付加物のリン酸エステルカリウム塩(A-7)の製造>
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、牛脂アルコールのEO4モル付加物1350重量部及び無水リン酸270重量部を仕込み、60℃で反応させた後、水酸化カリウム396重量部を投入し、牛脂アルコールのEO4モル付加物のリン酸エステルカリウム塩を得た。得られた牛脂アルコールのEO4モル付加物のリン酸エステルカリウム塩に水を加えて、牛脂アルコールのEO4モル付加物のリン酸エステルカリウム塩(A-7)を73重量%含有する溶液を得た。牛脂アルコールのEO4モル付加物のリン酸エステルカリウム塩は一般式(1)において、Rが炭素数12~18のアルキル基、AOがEO、mが4、rが1、Mがカリウム原子の化合物である。
【0078】
<製造例8~11で得られたアルキレンオキサイド付加物((B)成分)のGPCによる分析方法>
製造例8~11で得られたアルキレンオキサイド付加物を以下の条件により分析した。
(GPCの条件)
装置:HLC-8220GPC[東ソー(株)製]
GPCカラム
ガードカラム:TSKguardcolumn SuperH-L(4.6mmI.D.×15cm)
分離カラム:TSKgel SuperH2000(6mmI.D.×15cm)+TSKgel SuperH3000(6mmI.D.×15cm)+TSKgel SuperH4000(6mmI.D.×15cm)
検出器:RI検出器
流動媒体:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/min
カラム温度:40℃
サンプル濃度:0.25重量%
サンプル注入量:10μl
【0079】
<製造例8:グリセリンのPO90モルEO20モルブロック付加物(B-1)>
攪拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ロート、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中に、グリセリン[分子量92.1、商品名:精製グリセリン(阪本薬品工業製)]9.21重量部、水酸化カリウム0.8重量部を加え攪拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらプロピレンオキサイド523重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに1時間、圧力が下がりきるまでに2時間を要した。次いで、エチレンオキサイド88重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに0.5時間、圧力が下がりきるまでに0.5時間を要した。その後、キョーワード600(協和化学製)10重量部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し、550重量部のアルキレンオキサイド付加物が得られた。得られたアルキレンオキサイド付加物をGPC法により分析したところ、グリセリンのPO90モルEO20モルブロック付加物(B-1)[一般式(2)において、AOがPO、kが30、nが6.67、pが3の化合物]が含まれていることが確認された。
【0080】
<製造例9:グリセリンのPO85.3モルEO21.8モルブロック付加物(B-2)>
攪拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ロート、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中に、グリセリン[分子量92.1、商品名:精製グリセリン(阪本薬品工業製)]9.21重量部、水酸化カリウム0.8重量部を加え攪拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらプロピレンオキサイド496重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに1時間、圧力が下がりきるまでに2時間を要した。次いで、エチレンオキサイド96重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに0.5時間、圧力が下がりきるまでに0.5時間を要した。その後、キョーワード600(協和化学製)10重量部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し、560重量部のアルキレンオキサイド付加物が得られた。得られたアルキレンオキサイド付加物をGPCにより分析したところ、グリセリンのPO85.3モルEO21.8モルブロック付加物(B-2)[一般式(2)中の、AOがPO、kが28.4、nが7.3、pが3の化合物]が含まれていることが確認された。
【0081】
<製造例10:トリメチロールプロパンのPO67モルEO11モルブロック付加物(B-3)の製造>
攪拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ロート、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中に、トリメチロールプロパン(I)[分子量134、商品名トリメチロールプロパン(バイエルケミカル製)]13.4重量部、水酸化カリウム0.8重量部を加え攪拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらプロピレンオキサイド389重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに1時間、圧力が下がりきるまでに2時間を要した。次いで、エチレンオキサイド48.4重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに0.5時間、圧力が下がりきるまでに0.5時間を要した。その後、キョーワード600(協和化学製)10重量部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し、400重量部のアルキレンオキサイド付加物が得られた。得られたアルキレンオキサイド付加物をGPCにより分析したところ、トリメチロールプロパンのPO67モルEO11モルブロック付加物(B-3)[一般式(2)中の、AOがPO、kが22.3、nが3.67、pが3の化合物]が含まれていることが確認された。
【0082】
<製造例11:ペンタエリスリトールのPO104モルEO19.2モルブロック付加物(B-4)の製造>
(1)ペンタエリスリトールのPO104モル付加物の製造
攪拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ロート、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中に、ペンタエリスリトール(I)[分子量136、商品名ペンタリット(広栄化学工業製)]14重量部、水酸化カリウム0.8重量部を加え攪拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらプロピレンオキサイド604重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに1時間、圧力が下がりきるまでに2時間を要した。その後、キョーワード600(協和化学製)10重量部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し、550重量部のアルキレンオキサイド付加物が得られた。得られたアルキレンオキサイド付加物をGPCにより分析したところ、ペンタエリスリトールのPO104モル付加物[一般式(2)中の、AOがPO、kが26、nが0、pが4の化合物]が含まれていることが確認された。
【0083】
(2)ペンタエリスリトールのPO104モルEO19.2モルブロック付加物の製造
(1)で得られたアルキレンオキサイド付加物550重量部を130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらエチレンオキサイド75.2重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに0.5時間、圧力が下がりきるまでに0.5時間を要した。その後、キョーワード600(協和化学製)10重量部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し、600重量部のアルキレンオキサイド付加物が得られた。得られたアルキレンオキサイド付加物をGPCにより分析したところ、ペンタエリスリトールのPO104モルEO19.2モルブロック付加物(B-4)[一般式(2)中の、AOがPO、kが26、nが4.8、pが4の化合物]が含まれていることが確認された。
【0084】
<製造例12:ジトリデシルスルホサクシネートナトリウム塩(C-1)の製造>
温度計及び攪拌機を備えたSUS製のオートクレーブに、フマル酸とトリデカノールとのジエステル化物766.4重量部、イオン交換水80.8重量部及び二亜硫酸ナトリウム150.1重量部を順に仕込み、減圧にて窒素置換後、昇温し、オートクレーブの温度を100℃に保持して撹拌した。さらに、温度を125℃へ昇温し、スルホン化反応を継続した。次に、70℃まで冷却し、エタノール93.0重量部を反応物に添加した。その後、40℃まで冷却し、5重量%の炭酸ナトリウム水溶液5.5重量部を投入し、1時間撹拌した。さらに、5重量%の過酸化水素水2.6重量部を投入し、1時間撹拌した後、(A-2)ジトリデシルスルホサクシネートナトリウム塩を得た。
【0085】
<製造例13:ヒマシ油EO25モル付加物のジオレート(C-2)の製造>
(13-1)ヒマシ油のEO25モル付加物の製造
攪拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ロート、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中に、ヒマシ油459重量部、水酸化カリウム0.1重量部を加え攪拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらエチレンオキサイド541重量部を逐次滴下した。その後、キョーワード600(協和化学製)20重量部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却した後、取り出してヒマシ油EO25モル付加物を得た。
【0086】
(13-2)ヒマシ油EO25モル付加物のジオレートの製造
撹拌機及び温度計を備えた反応容器に、(13-1)で製造したヒマシ油EO25モル付加物778重量部及びオレイン酸220重量部を仕込み、触媒としてパラトルエンスルホン酸4重量部を加え、窒素置換する。150℃まで昇温し反応させることでヒマシ油EO25モル付加物のジオレートを得た。
【0087】
<実施例1~14及び比較例1~4>
表1及び表2に記載した各成分を、各成分(純分)の量が表1及び表2に記載の量(重量部)となるように配合した混合物を(40℃で30分間)撹拌することにより、実施例1~14および比較例1~4の透水性付与剤を得た。
【0088】
尚、実施例1~14及び比較例1~4で用いる各成分に対応する原料は、以下の通りである。表1に記載の各成分の配合量(重量部)は、純分の量(不揮発性成分の量)である。
(A-1):製造例1で得た2-エチルヘキシルアルコールリン酸エステルカリウム塩を73重量%含有する溶液
(A-2):製造例5で得たオクチルアルコールのEO2モル付加物のリン酸エステルカリウム塩を40重量%含有する溶液
(A-3):製造例2で得たヤシ油アルコールリン酸モノエステルカリウム塩を50重量%含有する溶液
(A-4):製造例6で得たラウリルアルコールのPO3モルEO5モル付加物のリン酸エステルカリウム塩を80重量%含有する溶液
(A-5):製造例3で得たミリスチルアルコールのリン酸エステルカリウム塩を50重量%含有する溶液
(A-6):製造例4で得たオレイルアルコールのリン酸エステルカリウム塩を25重量%含有する溶液
(A-7):製造例7で得た牛脂アルコールのEO4モル付加物のリン酸エステルカリウム塩を73重量%含有する溶液
(B-1):製造例8で得たアルキレンオキサイド付加物(グリセリンのPO90モルEO20モルブロック付加物)
(B-2):製造例9で得たアルキレンオキサイド付加物(グリセリンのPO85.3モルEO21.8モルブロック付加物)
(B-3):製造例10で得たアルキレンオキサイド付加物(トリメチロールプロパンのPO67モルEO11モルブロック付加物)
(B-4):製造例11で得たアルキレンオキサイド付加物(ペンタエリスリトールのPO104モルEO19.2モルブロック付加物)
(C-1)製造例12で得たジトリデシルスルホサクシネートナトリウム塩
(C-2)製造例13で得たヒマシ油のEO25モル付加物のジオレート
【0089】
<実施例15~28、比較例5~8:不織布の製造及び評価>
[不織布の製造]
実施例1~14および比較例1~4の透水性付与剤について、それぞれ25℃の温水で不揮発性成分の濃度が1.0重量%となるように希釈することにより、透水性付与剤の希釈液を得た。
次に、繊維本体300gに対し、透水性付与剤希釈液150gをディップ給油法で付着させた。繊維に付着した透水性付与剤の不揮発性成分の付着量[繊維本体の重量に対する重量割合(重量%)]は0.5重量%であった。
繊維本体は、繊維処理剤等の繊維処理剤が付着していない、ポリエステル(芯)-ポリエチレン(鞘)系複合繊維であり、単繊維繊度が2.2Dtex、繊維長が51mmのものであった。それぞれの透水性付与剤希釈液を付着させた繊維を、80℃の温風乾燥機の中に1時間入れた後、室温で4時間以上放置して乾燥させて、透水性付与剤が付着した繊維を得た。
得られた繊維をローラーカードに通し、目付け20g/mのカードウェブを作製した。得られたカードウェブを140℃で10秒の熱風処理を行い、エアスルー不織布を得た。
得られた不織布(実施例15~28、比較例5~8)について、以下の方法により瞬時透水性、耐久透水性及び液戻り防止性の評価試験を行った。結果を表1及び表2に示す。実施例15~28の不織布は、それぞれ実施例1~14の透水性付与剤を用いて製造したものであり、比較例5~8の不織布はそれぞれ比較例1~4の透水性付与剤を用いて製造したものである。
【0090】
[瞬時透水性の評価]
実施例15~28及び比較例5~8の不織布から、10cm×10cmの大きさの方形状の試験布を切り出し、以下の手順により瞬時透水性を評価した。
各例の試験布を、水平面に対し45度傾斜した台上に置き、試験布表面から10mmの高さに設置したビューレットより1滴(約0.05ml)の生理食塩水を滴下して、滴下位置から、生理食塩水が吸収されて消失するまでの距離を測定した。不織布表面の10箇所でこの測定を行って平均液流れ距離を算出する。この平均液流れ距離が14mm以下であれば瞬時透水性は良好である。
【0091】
[耐久透水性及び液戻り防止性の評価]
実施例15~28及び比較例5~8の不織布から、10cm×10cmの大きさの方形状の試験布を切り出し、以下の手順により耐久透水性及び液戻り性を評価した。当該評価試験は温度25℃、湿度65%RHの条件下で行った。
(1)1回目の通液試験
(通液時間の測定)
市販の紙おむつの上に各例の試験布を重ね、さらにその上にSUS製リング(内径6cm、高さ6cm)を置き、当該リングを通じて(リングの内径内に)80mLの人工尿を注入し、人工尿が試験布を通液する時間を測定した。人工尿の注入終了後から、試験布の上から人工尿が消失するまでの時間を、通液時間とした。通液時間は短いほど透水性に優れる。人工尿注入終了後にリングを外して液戻り量の測定に供した。
(液戻り量の測定)
人工尿注入終了後リングを外して5分経過した試験布(紙おむつの上に重ねた状態)の上面(人工尿を注入した側の面)に、あらかじめ重量(W0)を測定しておいた濾紙(東洋濾紙製、No.2)を重ね、その上に重り(3.5kg)をのせて3分間放置した。その後、重りを外して濾紙の重さ(W1)を測定し増加分(W1-W0)を算出し、液戻り量とした。液戻り量は少ないほうが液戻り防止性に優れる。重りと濾紙を取り除いた状態の試験布を2分間放置した後、2回目の通液試験に供した。
【0092】
(2)2回目の通液試験
(通液時間の測定)
1回目の通液試験後の試験布を市販の紙おむつの上に、さらにその上にSUS製リング(内径6cm、高さ6cm)を置き、当該リングを通じて(リングの内径内に)80mLの人工尿を注入し、人工尿が試験布を通液する時間を測定した。人工尿の注入終了後から、試験布の上から人工尿が消失するまでの時間を、通液時間とした。通液時間が短いほど耐久透水性に優れる。2回目の通液時間は20秒以下であることが好ましい。人工尿注入終了後にリングを外して液戻り量の測定に供した。
(液戻り量の測定)
2回目の人工尿注入終了後、リングを外して5分経過した試験布(紙おむつの上に重ねた状態)の上面(人工尿を注入した側の面)に、あらかじめ重量(W0)を測定しておいた濾紙(東洋濾紙製、No.2)を重ね、その上に重り(3.5kg)をのせて3分間放置した。その後、重りを外して濾紙の重さ(W1)を測定し増加分(W1-W0)を算出し、液戻り量とした。液戻り量は少ないほうが液戻り防止性に優れる。重りと濾紙を取り除いた状態の試験布を2分間放置した後、3回目の通液試験に供した。
【0093】
(3)3回目の通液試験
(通液時間の測定)
2回目の通液試験後の試験布を市販の紙おむつの上に、さらにその上にSUS製リング(内径6cm、高さ6cm)を置き、当該リングを通じて(リングの内径内に)80mLの人工尿を注入し、人工尿が試験布を通液する時間を測定した。人工尿の注入終了後から、試験布の上から人工尿が消失するまでの時間を、通液時間とした。通液時間が短いほど耐久透水性に優れる。3回目の通液時間は20秒以下であることが好ましい。人工尿注入終了後にリングを外して液戻り量の測定に供した。
(液戻り量の測定)
3回目の人工尿注入終了後、リングを外して5分経過した試験布(紙おむつの上に重ねた状態)の上面(人工尿を注入した側の面)に、あらかじめ重量(W0)を測定しておいた濾紙(東洋濾紙製、No.2)を重ね、その上に重り(3.5kg)をのせて3分間放
置した。その後、重りを外して濾紙の重さ(W1)を測定し増加分(W1-W0)を算出し、液戻り量とした。液戻り量は少ないほうが液戻り防止性に優れる。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
本発明の透水性付与剤が付着した繊維を使用した不織布は、瞬時透水性、耐久透水性及び液戻り防止性のいずれもが優れているので、吸収性物品のトップシートなどとして有用である。