(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130343
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】溶液ベースのプラズモン特異的結合パートナーアッセイにおけるシグナル増幅
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20230912BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20230912BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230912BHJP
G01N 21/41 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G01N33/543 595
G01N33/569 Z
G01N33/569 F
G01N33/53 D
G01N33/53 N
G01N33/53 M
G01N33/53 V
G01N33/53 E
G01N33/53 F
G01N21/41 102
【審査請求】有
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093650
(22)【出願日】2023-06-07
(62)【分割の表示】P 2021147395の分割
【原出願日】2016-08-04
(31)【優先権主張番号】62/201,051
(32)【優先日】2015-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521282871
【氏名又は名称】ゾエティス サービシズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】メーラ ラジェッシュ ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】アロン ケニス ピー.
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】フリスズ ジェシカ
(57)【要約】
【課題】貴金属ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による診断アッセイにおいて高感度で連続的な結合現象の動力学を定量的に監視するための方法を提供する。
【解決手段】試料を溶液中で第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲートと混合する工程を含む、試料中の標的分析物を検出する方法であって、第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲートは、結合パートナーに連結された金属ナノ構造を含み、結合パートナーは、試料中に標的分析物が存在する場合にそれに特異的に結合し、第1の検出コンジュゲートと、分析物と、第2の検出コンジュゲートとの間での複合体を形成することが可能であり、複合体形成時の光学シグナルの変化が、試料中の標的分析物の存在を示す、方法を提供する。ナノ構造およびナノ合金、ならびに結合パートナーとコンジュゲートしたナノ構造およびナノ合金の調製方法も記載する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)試料を第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲートと混合する工程であって、第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲートは、結合パートナーに連結された複合金属ナノ構造を含み、該結合パートナーは、試料中に標的分析物が存在する場合にそれに特異的に結合し、第1の検出コンジュゲートと、該分析物と、第2の検出コンジュゲートとの間での複合体の形成が可能である、工程;
(b)該複合体を、紫外-可視-赤外スペクトル内の波長範囲の光源に曝露する工程;ならびに
(c)該複合体からの光学シグナルを測定する工程であって、光学シグナルの変化が試料中の標的分析物の存在を示す、工程
を含む、試料中の標的分析物の検出方法。
【請求項2】
光学シグナルが、反射率、吸光度スペクトル、散乱スペクトルまたは発光スペクトルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
光学シグナルの変化が、スペクトルピーク波長シフトおよび/または全スペクトル波長シフトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
全スペクトル波長シフトが差スペクトルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
標的分析物のナノグラム量の存在が検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
標的分析物のピコグラム量の存在が検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
標的分析物のフェムトグラム量の存在が検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)が、分光光度法キュベット、分析用ローター、マイクロウェルプレート、臨床分析器、フローチャンバー、光ファイバーの先端上または透明ゲルにおいて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
複合金属ナノ構造が、金、銀、銅、白金、パラジウム、カドミウム、鉄、ニッケルおよび亜鉛から選択される少なくとも2種の金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
複合金属ナノ構造のそれぞれが、第1の金属のコアおよび第2の金属のコーティングを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
複合金属ナノ構造のそれぞれが、金コーティングおよび銀コアを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
複合金属ナノ構造のそれぞれが、銀コーティングおよび金コアを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
複合金属ナノ構造のそれぞれが、第1の金属および第2の金属の合金である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
複合金属ナノ構造が、球形ナノ粒子、ピラミッド形ナノ粒子、六角形ナノ粒子、ナノチューブ、ナノスター、ナノシェル、ナノロッド、ナノアイランド、ナノドット、ナノワイヤーまたはそれらの組合せから選択される幾何構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
結合パートナーが生体高分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
生体高分子が、抗体またはその断片、抗原、レセプター、リガンド、ポリヌクレオチド、アプタマー、ポリペプチド、ポリサッカライド、リポポリサッカライド、グリコペプチド、リポタンパク質または核タンパク質を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
生体高分子が抗体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
生体高分子が抗原である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲートが、抗体である結合パートナーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体が、標的分析物の異なるエピトープに結合する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
標的分析物が、タンパク質、酵素、抗原、抗体、ペプチド、核酸、ホルモン、糖タンパク質、ポリサッカライド、毒素、ウイルス、ウイルス粒子、薬物分子、ハプテンおよび化学物質から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
標的分析物が、病原性抗原、または病原性抗原に対する抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
病原性抗原がウイルス性抗原である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ウイルス性抗原が、ネコ白血病ウイルス、イヌパルボウイルス、口蹄疫ウイルス、インフルエンザウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVウイルス、ヒトパピローマウイルス、エプスタイン・バーウイルスおよび狂犬病ウイルスから選択されるウイルスに由来する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
病原性抗原が細菌性抗原である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
細菌性抗原が、エーリキア(Ehrlichia)、ボレリア(Borrelia)、アナプラズマ(Anaplasma)、サルモネラ(Salmonella)、バチルス(Bacillus)およびリケッチア(Rickettsia)から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
細菌性抗原が、エーリキア・カニス(Ehrlichia canis)、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chafeensis)、エーリキア・エウィンギイ(Ehrlichia ewingii)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、アナプラズマ・プラティス(Anaplasma platys)、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム(Anaplasma phagocytophilum)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)およびリケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
病原性抗原が真菌性抗原または寄生虫性抗原である、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
真菌性抗原または寄生虫性抗原が、イヌ糸状虫、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、熱帯熱マラリア原虫、アフリカトリパノソーマ症、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
工程(a)の混合が、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールおよびポリアスパラギン酸から選択されるポリマー材料の存在下で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
ポリマー材料がポリエチレングリコールである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
工程(a)の混合が、ポリサッカライドの存在下で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
ポリサッカライドが、マルトデキストリン、コーンシロップおよびポリグルコースから選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ポリサッカライドがマルトデキストリンである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
反応混合物中のマルトデキストリンの最終濃度が約2%~約20%重量/体積である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
反応混合物中のマルトデキストリンの最終濃度が約5%~約10%重量/体積である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
工程(a)の混合がブロッキング剤の存在下で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
ブロッキング剤が、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン、オボアルブミンおよびガンマ-グロブリンから選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ブロッキング剤がウシ血清アルブミンである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
反応混合物中のウシ血清アルブミンの最終濃度が約1%~約5%重量/体積である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
試料中に標的分析物が存在する場合にそれに特異的に結合可能な結合パートナーに連結された金属ナノ構造を含む、第1の検出コンジュゲートと;
試料中に標的分析物が存在する場合にそれに特異的に結合可能な結合パートナーに連結された金属ナノ構造を含む、第2の検出コンジュゲートと
を含む、分析物検出デバイスであって、
第1の検出コンジュゲートおよび/または第2の検出コンジュゲート中の金属ナノ構造が、複合金属ナノ構造である、
分析物検出デバイス。
【請求項42】
分光光度法キュベット、分析用ローター、マイクロウェルプレートまたはフローチャンバーである、請求項41に記載の分析物検出デバイス。
【請求項43】
分析用ローターである、請求項42に記載の分析物検出デバイス。
【請求項44】
分析用ローターが、1つまたはそれ以上の反応チャンバーを含み、該反応チャンバーに、第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲートが配置される、請求項43に記載の分析物検出デバイス。
【請求項45】
第1の検出コンジュゲートおよび/または第2の検出コンジュゲートが凍結乾燥されている、請求項41に記載の分析物検出デバイス。
【請求項46】
試験試料を受容するように構成されている、請求項41に記載の分析物検出デバイス。
【請求項47】
第1の検出コンジュゲートと、前記分析物と、第2の検出コンジュゲートとの複合体を、紫外-可視-赤外スペクトル内の波長範囲において光源に曝露するように構成されている、請求項41に記載の分析物検出デバイス。
【請求項48】
前記デバイスが、前記複合体からの光学シグナルを測定するようにさらに構成されており、光学シグナルの変化が、前記試料中の標的分析物の存在を示す、請求項47に記載の分析物検出デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が、参照によって全体的に本明細書に組み込まれる、2015年8月4日出願の米国仮特許出願第62/201,051号の優先権の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、試料中の標的分析物を検出するためのシステムおよび方法に関する。特に、本発明は、試料中の微量の標的分析物を検出することができる、局在プラズモン共鳴ベースの分析物検出システムを提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
現在のイムノアッセイおよび生体分子結合アッセイでは、典型的に、アッセイを実行するために、複数のステップおよび精巧な装置が必要とされる。そのような不均一アッセイを実行することに関与する感度の欠如および複雑性は、標識化されていない特異的結合パートナーから標識化されたものを分離するための特定のニーズから生じる。
【0004】
貴金属ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)特性をベースとするアッセイを開発する試みがなされてきた(Tokel et al.,Chem Rev.,Vol.114:5728ー5752,2014(非特許文献1))。LSPRは、入射光によって誘発された、ナノメートルサイズ構造の電子の集団的振動である。金属ナノ粒子は、それらの付近の屈折率変化に対する強い電磁応答を有し、したがって、ナノ粒子の共鳴振動数のシフトを、ナノ粒子表面への分子結合の指標として測定することができる。結合現象を検出する診断アッセイにおいて、金属ナノ粒子、特に金ナノ粒子が利用されているが、そのようなアッセイは、一般に、低い感度のために困難があり、連続的な結合現象の動力学を定量的に監視するために使用することができない。
【0005】
したがって、感度の増加を提供しながら、均一フォーマットを利用する、改善されたアッセイ法が必要とされている。分光法などの標準的な検査技術を利用するアッセイも望ましいであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Tokel et al.,Chem Rev.,Vol.114:5728ー5752,2014
【発明の概要】
【0007】
本出願は、限定されないが、リガンド、レセプター、転写因子、結合DNA因子、抗原および抗体に関与する、特異的結合パートナーに関するアッセイを実行するための局在表面プラズモン共鳴(LSPR)技術の使用を記載する。より具体的には、本出願は、複合金属ナノ材料標識パートナーを使用するそのようなアッセイにおける有意な増幅を達成するための方法および材料に関する。
【0008】
本明細書に記載の種々の実施形態において、本出願は、定性的または定量的様式で特異的結合パートナーの結合を決定するための溶液中の複合ナノ材料標識パートナーの使用に関する。
【0009】
第1の態様において、本出願は、試料中の標的分析物の検出方法を提供する。一実施形態において、この方法は、結合パートナーに連結された金属ナノ構造を含む第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲートと試料を混合する工程であって、結合パートナーは、試料中に標的分析物が存在する場合にそれに特異的に結合し、第1の検出コンジュゲートと、分析物と、第2の検出コンジュゲートとの間での複合体の形成が可能である、工程;複合体を、紫外-可視-赤外スペクトル内の波長範囲の光源に曝露する工程;ならびに複合体からの光学シグナルを測定する工程であって、光学シグナルの変化が試料中の標的分析物の存在を示す、工程を含む。代表的な実施形態において、第1の検出コンジュゲートおよび/または第2の検出コンジュゲート中の金属ナノ構造は、複合金属ナノ構造である。別の代表的な実施形態において、混合工程は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールおよびポリアスパラギン酸から選択されるポリマー材料の存在下で実行される。好ましい実施形態において、ポリマー材料はPEGである。さらに別の代表的な実施形態において、混合工程は、ポリサッカライドの存在下で実行される。いくつかの実施形態において、ポリサッカライドは、マルトデキストリン、コーンシロップおよびポリグルコースから選択される。好ましい実施形態において、ポリサッカライドはマルトデキストリンである。さらに別の代表的な実施形態において、混合工程は、ブロッキング剤の存在下で実行される。いくつかの実施形態において、ブロッキング剤は、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン、オボアルブミンおよびガンマ-グロブリンから選択される。好ましい実施形態において、ブロッキング剤はウシ血清アルブミンである。
【0010】
いくつかの実施形態において、検出コンジュゲートは、標的分析物に特異的に結合することが可能である結合パートナーを含む。特定の実施形態において、結合パートナーは、ハプテンおよび他の小分子、薬剤、ホルモン、限定されないが、抗体またはその断片(例えば、Fv、Fab、(Fab)2、単鎖、CDRなど)、抗原、レセプター、リガンド、ポリヌクレオチド、アプタマー、ポリペプチド、ポリサッカライド、リポポリサッカライド、グリコペプチド、リポタンパク質または核タンパク質を含む生体高分子である。特定の代表的な実施形態において、結合パートナーは抗体である。他の代表的な実施形態において、結合パートナーは抗原である。いくつかの実施形態において、検出コンジュゲート(例えば、第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲート)は、同種の分子である結合パートナーを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、検出コンジュゲート中の金属ナノ構造は、貴金属またはその複合体から構成されることが可能である。いくつかの実施形態において、検出コンジュゲート中の金属ナノ構造は、遷移金属またはその複合体から構成されてもよい。いくつかの実施形態において、検出コンジュゲート中の金属ナノ構造は、貴金属または遷移金属と組み合わせて、アルカリ金属またはランタニドを含み得る。特定の実施形態において、検出コンジュゲート中の金属ナノ構造は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、チタン、クロム、カドミウム、亜鉛、鉄、コバルト、ニッケルおよびその複合体から選択される金属を含む。代表的な実施形態において、金属ナノ構造は金ナノ構造である。別の代表的な実施形態において、金属ナノ構造は銀ナノ構造である。
【0012】
好ましい実施形態において、検出コンジュゲート中の金属ナノ構造は、少なくとも2種の貴金属、遷移金属、アルカリ金属またはランタニドを含む複合金属ナノ構造である。いくつかの実施形態において、複合金属ナノ構造は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、チタン、クロム、カドミウム、亜鉛、鉄、コバルトおよびニッケルから選択される少なくとも2種の金属を含む。他の実施形態において、複合金属ナノ構造は、金、銀、銅、白金、パラジウム、カドミウム、鉄、ニッケルおよび亜鉛をから選択される少なくとも2種の金属を含む。代表的な実施形態において、複合金属ナノ構造は、金および銀を含む。
【0013】
1つの代表的な実施形態において、第1の結合パートナーは、金または複合ナノ粒子と連結され、第2の結合パートナーは、金、銀、銅、白金、パラジウム、カドミウムおよび亜鉛からなる群から選択される2種の金属を含有する別の複合ナノ材料と連結される。別の代表的な実施形態において、第1の結合パートナーは、銀および金を含有するナノ粒子とコンジュゲートされ、第2の結合パートナーは、金および銅を含むナノ粒子とコンジュゲートされる。
【0014】
本明細書に記載されるとおり、様々なアッセイにおいて有意なシグナル増幅が達成可能である。特定の実施形態において、アッセイは、直接、間接、サンドウィッチ、競合および二次標識化アッセイである。特定のさらなる実施形態において、これらのアッセイは、特定の結合現象を監視するために、吸光、散乱および/または反射率測定を使用し得る。
【0015】
特定の実施形態において、本発明の方法は、試料中の標的分析物のフェムトグラムからナノグラム量を検出することができる。
【0016】
上記のとおり、本出願は、定性的または定量的様式で特異的結合パートナーの結合を決定するための、溶液中での、ナノ材料標識パートナー、例えば、複合金属ナノ構造とコンジュゲートした抗体の使用に関する。いくつかの実施形態において、溶液は、ポリサッカライド(例えば、マルトデキストリン)、トレハロース、ポリマー材料(例えば、PEG)、ブロッキング剤(例えば、ウシ血清アルブミン)および/または塩化ナトリウムの1種またはそれ以上を含む。代表的な実施形態において、1種またはそれ以上の溶液成分、例えば、マルトデキストリンは、凍結乾燥された形態で、例えば、ビーズまたはペレットとして提供されてもよい。例えば、1種またはそれ以上の溶液成分は、分光光度法キュベット中で、あるいは分析用ローターの1つまたはそれ以上の反応チャンバー中で、ビーズまたはペレットとして提供されてもよい。ビーズまたはペレットは、液体、例えば、水、食塩溶液、液体試料などの添加時に懸濁してもよい。一実施形態において、溶液は、約2%~約20%重量/体積(wt/vol)の最終濃度でマルトデキストリンを含む。別の実施形態において、溶液は、約4%~約15%重量/体積の最終濃度でマルトデキストリンを含む。さらに別の実施形態において、溶液は、約5%~約10%重量/体積の最終濃度でマルトデキストリンを含む。いくつかの実施形態において、アッセイの感度は、マルトデキストリンが溶液に添加される場合、別の糖、例えば、スクロースまたはficollを含む溶液中でアッセイが実行される場合と比較して、改善される。
【0017】
別の態様において、本発明は、試料中の標的分析物を検出するための、本明細書に記載される方法を利用するための分析物検出デバイスを提供する。適切な分析物検出デバイスとしては、限定されないが、分光光度法キュベット、分析用ローター、マイクロウェルプレート、臨床分析器(例えば、Cobas Fara)またはフローチャンバーが含まれ得る。光ファイバーの先端または透明ゲルも、本明細書に開示される検出方法を実行するために利用されてよい。代表的な実施形態において、分析物検出デバイスは、分光光度法キュベットおよび分析用ローターから選択される。
【0018】
好ましい実施形態において、分析物検出デバイスの構成成分は、遠心ローターまたはディスクに含まれる。いくつかの実施形態において、ローターまたはディスクは、複数の検出コンジュゲートが位置する1つまたはそれ以上の反応チャンバーを含有していてもよい。特定の実施形態において、検出コンジュゲートは、凍結乾燥されたビーズまたはペレットなどの凍結乾燥された組成物の形態で存在する。いくつかの実施形態において、分析物検出デバイスは、1つまたはそれ以上の反応チャンバーを含み、それぞれの反応チャンバーは、複数の検出コンジュゲート(例えば、第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲート)を含み、検出コンジュゲートは、金属ナノ粒子、例えば、複合金属ナノ構造に連結されている。ローターまたはディスクが、2つ以上の反応チャンバーを含む実施形態において、検出コンジュゲートは、異なる分析物がそれぞれの反応チャンバーにおいて検出されることができるように選択することができる。
【0019】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の分析物検出デバイスを含むキットを提供する。一実施形態において、キットは、複数の検出コンジュゲート(例えば、第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲート)を含み、検出コンジュゲートは、金属ナノ粒子、例えば、複合金属ナノ構造に連結されている。いくつかの実施形態において、検出コンジュゲートの1つまたはそれ以上は、凍結乾燥されていてもよい。一実施形態において、検出コンジュゲートの全てが凍結乾燥されている。代表的な実施形態において、第1の検出コンジュゲートおよび/または第2の検出コンジュゲート中の金属ナノ構造は、複合金属ナノ構造である。
【0020】
さらに別の態様において、本発明は、本明細書に記載の検出デバイスおよび方法で使用するための複合金属ナノ構造を調製する方法を提供する。一実施形態において、この方法は、ポリマーおよび塩化金酸の混合物を含む第1の溶液を調製すること、銀および銅ナノ構造を含む第2の溶液を調製すること、ならびに一定期間、第1の溶液を第2の溶液と一緒にインキュベーションすることを含み、得られる混合物は、金コーティング銀ナノ構造または金コーティング銅ナノ構造を含む。特定の実施形態において、アスコルビン酸などの還元剤が、製造されるナノ構造の量を増加させるために、反応混合物に添加される。一実施形態において、第1の溶液中のポリマーは、ポリビニルピロリドンである。別の実施形態において、第1の溶液中のポリマーは、ポリビニルアルコールである。別の実施形態において、この方法は、CHAPSなどの清浄剤および塩化金酸の混合物、ならびに銀または銅塩を含む溶液を含む第1の溶液を調製すること、ならびに第1の溶液を、アスコルビン酸などの還元剤を含有する第2の溶液と一緒にインキュベーションして、複合ナノ構造の形成を誘導することを含む。ナノ構造の径および形状は、使用される金属の比率、清浄剤の濃度、ならびに最終的に使用されるアスコルビン酸の量を変更することによって変動可能である。
[本発明1001]
(a)試料を第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲートと混合する工程であって、第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲートは、結合パートナーに連結された複合金属ナノ構造を含み、該結合パートナーは、試料中に標的分析物が存在する場合にそれに特異的に結合し、第1の検出コンジュゲートと、該分析物と、第2の検出コンジュゲートとの間での複合体の形成が可能である、工程;
(b)該複合体を、紫外-可視-赤外スペクトル内の波長範囲の光源に曝露する工程;ならびに
(c)該複合体からの光学シグナルを測定する工程であって、光学シグナルの変化が試料中の標的分析物の存在を示す、工程
を含む、試料中の標的分析物の検出方法。
[本発明1002]
光学シグナルが、反射率、吸光度スペクトル、散乱スペクトルまたは発光スペクトルである、本発明1001の方法。
[本発明1003]
光学シグナルの変化が、スペクトルピーク波長シフトおよび/または全スペクトル波長シフトを含む、本発明1001の方法。
[本発明1004]
全スペクトル波長シフトが差スペクトルである、本発明1003の方法。
[本発明1005]
標的分析物のナノグラム量の存在が検出される、本発明1001の方法。
[本発明1006]
標的分析物のピコグラム量の存在が検出される、本発明1001の方法。
[本発明1007]
標的分析物のフェムトグラム量の存在が検出される、本発明1001の方法。
[本発明1008]
工程(a)が、分光光度法キュベット、分析用ローター、マイクロウェルプレート、臨床分析器、フローチャンバー、光ファイバーの先端上または透明ゲルにおいて実行される、本発明1001の方法。
[本発明1009]
複合金属ナノ構造が、金、銀、銅、白金、パラジウム、カドミウム、鉄、ニッケルおよび亜鉛から選択される少なくとも2種の金属を含む、本発明1001の方法。
[本発明1010]
複合金属ナノ構造のそれぞれが、第1の金属のコアおよび第2の金属のコーティングを含む、本発明1001の方法。
[本発明1011]
複合金属ナノ構造のそれぞれが、金コーティングおよび銀コアを含む、本発明1009の方法。
[本発明1012]
複合金属ナノ構造のそれぞれが、銀コーティングおよび金コアを含む、本発明1009の方法。
[本発明1013]
複合金属ナノ構造のそれぞれが、第1の金属および第2の金属の合金である、本発明1001の方法。
[本発明1014]
複合金属ナノ構造が、球形ナノ粒子、ピラミッド形ナノ粒子、六角形ナノ粒子、ナノチューブ、ナノスター、ナノシェル、ナノロッド、ナノアイランド、ナノドット、ナノワイヤーまたはそれらの組合せから選択される幾何構造を有する、本発明1001の方法。
[本発明1015]
結合パートナーが生体高分子である、本発明1001の方法。
[本発明1016]
生体高分子が、抗体またはその断片、抗原、レセプター、リガンド、ポリヌクレオチド、アプタマー、ポリペプチド、ポリサッカライド、リポポリサッカライド、グリコペプチド、リポタンパク質または核タンパク質を含む、本発明1015の方法。
[本発明1017]
生体高分子が抗体である、本発明1016の方法。
[本発明1018]
生体高分子が抗原である、本発明1016の方法。
[本発明1019]
第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲートが、抗体である結合パートナーを含む、本発明1001の方法。
[本発明1020]
前記抗体が、標的分析物の異なるエピトープに結合する、本発明1019の方法。
[本発明1021]
標的分析物が、タンパク質、酵素、抗原、抗体、ペプチド、核酸、ホルモン、糖タンパク質、ポリサッカライド、毒素、ウイルス、ウイルス粒子、薬物分子、ハプテンおよび化学物質から選択される、本発明1001の方法。
[本発明1022]
標的分析物が、病原性抗原、または病原性抗原に対する抗体である、本発明1001の方法。
[本発明1023]
病原性抗原がウイルス性抗原である、本発明1022の方法。
[本発明1024]
ウイルス性抗原が、ネコ白血病ウイルス、イヌパルボウイルス、口蹄疫ウイルス、インフルエンザウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVウイルス、ヒトパピローマウイルス、エプスタイン・バーウイルスおよび狂犬病ウイルスから選択されるウイルスに由来する、本発明1023の方法。
[本発明1025]
病原性抗原が細菌性抗原である、本発明1022の方法。
[本発明1026]
細菌性抗原が、エーリキア(Ehrlichia)、ボレリア(Borrelia)、アナプラズマ(Anaplasma)、サルモネラ(Salmonella)、バチルス(Bacillus)およびリケッチア(Rickettsia)から選択される、本発明1025の方法。
[本発明1027]
細菌性抗原が、エーリキア・カニス(Ehrlichia canis)、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chafeensis)、エーリキア・エウィンギイ(Ehrlichia ewingii)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、アナプラズマ・プラティス(Anaplasma platys)、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム(Anaplasma phagocytophilum)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)およびリケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)から選択される、本発明1026の方法。
[本発明1028]
病原性抗原が真菌性抗原または寄生虫性抗原である、本発明1022の方法。
[本発明1029]
真菌性抗原または寄生虫性抗原が、イヌ糸状虫、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、熱帯熱マラリア原虫、アフリカトリパノソーマ症、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)から選択される、本発明1028の方法。
[本発明1030]
工程(a)の混合が、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールおよびポリアスパラギン酸から選択されるポリマー材料の存在下で実行される、本発明1001の方法。
[本発明1031]
ポリマー材料がポリエチレングリコールである、本発明1030の方法。
[本発明1032]
工程(a)の混合が、ポリサッカライドの存在下で実行される、本発明1001の方法。
[本発明1033]
ポリサッカライドが、マルトデキストリン、コーンシロップおよびポリグルコースから選択される、本発明1032の方法。
[本発明1034]
ポリサッカライドがマルトデキストリンである、本発明1033の方法。
[本発明1035]
反応混合物中のマルトデキストリンの最終濃度が約2%~約20%重量/体積である、本発明1034の方法。
[本発明1036]
反応混合物中のマルトデキストリンの最終濃度が約5%~約10%重量/体積である、本発明1035の方法。
[本発明1037]
工程(a)の混合がブロッキング剤の存在下で実行される、本発明1001の方法。
[本発明1038]
ブロッキング剤が、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン、オボアルブミンおよびガンマ-グロブリンから選択される、本発明1037の方法。
[本発明1039]
ブロッキング剤がウシ血清アルブミンである、本発明1038の方法。
[本発明1040]
反応混合物中のウシ血清アルブミンの最終濃度が約1%~約5%重量/体積である、本発明1039の方法。
[本発明1041]
試料中に標的分析物が存在する場合にそれに特異的に結合可能な結合パートナーに連結された金属ナノ構造を含む、第1の検出コンジュゲートと;
試料中に標的分析物が存在する場合にそれに特異的に結合可能な結合パートナーに連結された金属ナノ構造を含む、第2の検出コンジュゲートと
を含む、分析物検出デバイスであって、
第1の検出コンジュゲートおよび/または第2の検出コンジュゲート中の金属ナノ構造が、複合金属ナノ構造である、
分析物検出デバイス。
[本発明1042]
分光光度法キュベット、分析用ローター、マイクロウェルプレートまたはフローチャンバーである、本発明1041の分析物検出デバイス。
[本発明1043]
分析用ローターである、本発明1042の分析物検出デバイス。
[本発明1044]
分析用ローターが、1つまたはそれ以上の反応チャンバーを含み、該反応チャンバーに、第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲートが配置される、本発明1043の分析物検出デバイス。
[本発明1045]
第1の検出コンジュゲートおよび/または第2の検出コンジュゲートが凍結乾燥されている、本発明1041の分析物検出デバイス。
[本発明1046]
試験試料を受容するように構成されている、本発明1041の分析物検出デバイス。
[本発明1047]
第1の検出コンジュゲートと、前記分析物と、第2の検出コンジュゲートとの複合体を、紫外-可視-赤外スペクトル内の波長範囲において光源に曝露するように構成されている、本発明1041の分析物検出デバイス。
[本発明1048]
前記デバイスが、前記複合体からの光学シグナルを測定するようにさらに構成されており、光学シグナルの変化が、前記試料中の標的分析物の存在を示す、本発明1047の分析物検出デバイス。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本明細書に記載のLSPRイムノアッセイの基本原理を示す。金属ナノ粒子は、それ自体、金属組成、径、形状および分散媒体の性質に依存する光学スペクトルを示す。最初の一次結合およびその後の二次結合によるナノ粒子の表面におけるわずかな変化は、ナノコンジュゲートと相互作用する光の特徴において漸進的変化を引き起こす。そのような変化を適切な分光計によって記録することができ、定性的ならびに定量的情報が提供される。
【
図2】レセプターが複数のリガンド結合部位を有する例を示す。ナノ粒子によって標識化された抗体は、抗原に結合するとスペクトルシフトを引き起こす。
【
図3】レセプターが複数の結合部位を有するか、またはレセプターが異なる結合部位を有する場合の、異なるナノ粒子タイプ間のLSPRカップリング作用を示す。
【
図4】LSPRシグナルに及ぼすポリエチレングリコール(PEG)の作用を例示する。LSPRシグナルは、PEGの存在下で実質的に増加する。この図は、2.5ngの糸状虫抗原および抗糸状虫ポリクローナル抗体を含有する反応媒体中へのPEGの添加時におけるLSPRシグナルの10倍の増大を示す。
【
図5】青色金ナノスターを利用することによる、波長シフトの増加を示す。この図中、青色ナノスターにコンジュゲートした抗体は、抗体の赤色コロイド金コンジュゲートと比較した場合、波長シフト率の2倍の増加を提供した。この実験は、2.5ngの粗糸状虫抽出液を抗原として使用してセットアップされ、次に、赤色コロイド金を使用して調製された市販のコンジュゲート、または本発明によって調製された新規青色コンジュゲートのいずれかと反応させた。両種のコンジュゲートにおいて、ポリエチレングリコールが使用された。
【
図6】ニワトリ抗プロテインAの青色コロイドコンジュゲートが、広い濃度範囲においてプロテインAと反応し、反応速度が長時間にわたって線形であることを示す。
【
図7A】LSPR技術が溶液相(
図7A)で使用される場合の、固体相(
図7B)で使用される場合と比べての、分析物検出の実質的な改善を示す。反応は、固体相ではNicoyaチップを使用して、または液体相ではNicoyaキュベットアセンブリを使用して実行された。2つの実験において、同Nicoya分光計を使用した。キュベットアッセイ(溶液相)におけるCRP応答は、固体相よりも約6~8倍高かった。
【
図7B】LSPR技術が溶液相(
図7A)で使用される場合の、固体相(
図7B)で使用される場合と比べての、分析物検出の実質的な改善を示す。反応は、固体相ではNicoyaチップを使用して、または液体相ではNicoyaキュベットアセンブリを使用して実行された。2つの実験において、同Nicoya分光計を使用した。キュベットアッセイ(溶液相)におけるCRP応答は、固体相よりも約6~8倍高かった。
【
図8A】コロイド金コンジュゲートモノクローナル抗TSH抗体を使用する溶液相中でのTSHの検出を示す。
【
図8B】コロイド金コンジュゲートモノクローナル抗TSH抗体を使用する溶液相中でのTSHの検出を示す。
【
図9A】反応媒体中、PEGを用いないTSH検出の比較を示す。2つのモノクローナル抗体(C1およびC6)がコロイド金コンジュゲートとして使用された。2つのコンジュゲートの比率は様々であり、最適シグナルは、30%のC1および70%のC6で得られた。
【
図9B】反応媒体中、PEGを用いてのTSH検出の比較を示す。2つのモノクローナル抗体(C1およびC6)がコロイド金コンジュゲートとして使用された。2つのコンジュゲートの比率は様々であり、最適シグナルは、30%のC1および70%のC6で得られた。
【
図9C】反応媒体にPEGが含まれる場合の検出のTSH LSPRピークシフトの比較を示す。PEGが、500秒においてTSHアッセイにおける分析物検出を増強することを示す。
【
図10】次のように合成された金/銀合金ナノ粒子の光学スペクトルを示す:硝酸銀の添加前に塩化金をCTABと反応させ、続いて、アスコルビン酸、そして最終的に水酸化ナトリウムを添加した。
【
図11】ナノ合金粒子中の銀含有量の増加に対する、λ
maxにおける線形青色シフトを示す。
【
図12】金および金/銀合金ナノ粒子とのマウスIgGコンジュゲートの免疫反応性を示す。コンジュゲートは、金または合金粒子上でのマウスIgGの受動的吸着によって合成された。これらは、側方流動ニトロセルロースストリップにおいてストリップされたプロテインAとの反応性に関して試験された。
【
図13】CHAPSでキャップされた金/銀ナノスターの光学スペクトルを示す。塩化金は、硝酸銀およびクエン酸三ナトリウムの添加の前にCHAPSに添加される。ナノスター形成は、アスコルビン酸、CHAPSおよびクエン酸三ナトリウムを含有する還元溶液の添加によって誘導される。その後、特定の銀濃度までのλ
max赤色シフトと、次に青色シフトが生じる。したがって、異なるサイズのナノスターは、反応媒体中の金対銀の比率を変化させることによって製造される。
【
図14】銀の不在下で製造された金のみのナノ粒子へのマウスIgGの結合時の赤色へのピークシフトを示す。
【
図15】約37.5%の銀の存在下で製造された金/銀ナノスターへのマウスIgGの結合時の赤色へのより大きいピークシフトを示す。
【
図16】LSPRシグナルに及ぼすマルトデキストリンの高い好ましい作用を示す。
【
図17】マルトデキストリンおよびBSAがどのように分析用ローター中での沈降を減少させ、高いLSPRシグナルを維持するかを示す。
【
図18】BSA、PEGおよびマルトデキストリンの様々な濃度下でのTSHのpg/ml検出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、複合金属ナノ構造標識結合パートナーによって、LSPRベースのアッセイにおける有意な増幅が達成可能であるという発見に、部分的に基づく。したがって、本発明は、生体分子に連結された複合金属ナノ構造を含む複数の検出コンジュゲートを利用する、分析物検出方法を提供する。
【0023】
本発明は、一般に複数のステップおよびそのようなステップを実行するために精巧な装置が必要とされる、現在のイムノアッセイ、リガンド-レセプター結合アッセイ、核酸-タンパク質結合アッセイまたは他の特異的結合パートナーアッセイの課題を克服する。そのような不均一アッセイを実行することに関与する感度の欠如および複雑性は、標識化されていない特異的結合パートナーから標識化されたものを分離するための特定のニーズから生じる。本発明は、結合現象が、分光法において当業者によって使用されるいずれかの分光学的技術によってリアルタイムで測定されるLSPR特徴を変化させるため、反応および未反応アッセイ成分の分離が不必要である均一フォーマットで、アッセイに関与する全てのステップを実行することによって、そのような制限を克服する。分離を必要としない、本発明のワンポット(one pot)アッセイでは、プラズモンカップリングおよび関連作用が使用され、最終LSPR変調シグナルの増幅が提供される。
【0024】
当業者に明白であるように、本発明は、ヒトおよび動物の両方における感染症と関連するものなどの様々な抗原性分析物、例えば、感染症と関連する抗原およびその応答において生じた抗体の検出に適用されてもよい。抗原および抗体の検出を越えて、本明細書に記載の技術は、リガンドおよびレセプター、ならびに転写因子およびそれらの関連DNA結合因子などの特異的結合パートナーに関与するアッセイを実行するためにも使用されてよい。さらに、特異的結合パートナーとの金属ナノ粒子の適切なコンジュゲートを使用して、RNA-RNA、RNA-DNA、DNA-DNAまたはタンパク質-核酸相互作用が検出され得る。
【0025】
本明細書に提供されるように、本発明は、定性的または定量的様式で特異的結合パートナーの結合を決定するための、(化学的または物理的堆積を介して表面に付着することとは対照的に)溶液中での金属ナノ粒子の使用を記載する。金属ナノ粒子に付着した未結合および結合パートナーを含有する領域と相互作用する光の特徴の変化が測定可能であり、このことから、特異的結合パートナー間の定性的および定量的相互作用の両方が、適切な検出器によって決定可能となる。
【0026】
第1の態様において、本出願は、試料中の標的分析物の検出方法を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、結合パートナーに連結された金属ナノ構造を含む複数の検出コンジュゲートと、試料を混合する工程を含む。一実施形態において、この方法は、存在する場合、試料中の標的分析物に特異的に結合し、第1の検出コンジュゲートと、分析物と、第2の検出コンジュゲートとの間での複合体の形成が可能である結合パートナーに連結された金属ナノ構造を含む、第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲート;複合体を、紫外-可視-赤外スペクトル内の波長範囲の光源に曝露すること;ならびに光学シグナルの変化が試料中の標的分析物の存在を示す、複合体からの光学シグナルを測定することを含む。代表的な実施形態において、第1の検出コンジュゲートおよび/または第2の検出コンジュゲート中の金属ナノ構造は、複合金属ナノ構造である。別の代表的な実施形態において、混合工程は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールおよびポリアスパラギン酸から選択されるポリマー材料の存在下で実行される。好ましい実施形態において、ポリマー材料はPEGである。さらに別の代表的な実施形態において、混合工程は、ポリサッカライドの存在下で実行される。いくつかの実施形態において、ポリサッカライドは、マルトデキストリン、コーンシロップおよびポリグルコースから選択される。好ましい実施形態において、ポリサッカライドはマルトデキストリンである。さらに別の代表的な実施形態において、混合工程は、ブロッキング剤の存在下で実行される。いくつかの実施形態において、ブロッキング剤は、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン、オボアルブミンおよびガンマ-グロブリンから選択される。好ましい実施形態において、ブロッキング剤はウシ血清アルブミンである。
【0027】
本明細書に記載の種々の実施形態において、本発明の方法は、サンドウィッチアッセイフォーマット、直接アッセイフォーマット、間接アッセイフォーマット、ならびに競合および二次標識化フォーマットに構成することができる。
【0028】
いくつかの実施形態で、検出方法は、サンドウィッチアッセイである。そのような実施形態において、検出コンジュゲートは、試料中に存在する場合、標的分析物に特異的に結合が可能である結合パートナーに連結された金属ナノ構造を含む。例えば、一実施形態において、サンドウィッチアッセイフォーマットの方法は、存在する場合、試料中の標的分析物に特異的に結合し、第1の検出コンジュゲートと、分析物と第2の検出コンジュゲートとの間での複合体の形成が可能である結合パートナーに連結された金属ナノ構造を含む、第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲートを含む。代表的な実施形態において、第1の検出コンジュゲートおよび/または第2の検出コンジュゲート中の金属ナノ構造は、複合金属ナノ構造である。複合体を光源に曝露し、光学シグナルを測定する。ここで、光学シグナルの変化は、試料中の分析物の存在を示す。例として、標的分析物を含有する試料が、第1および第2の検出コンジュゲートと混合される場合、標的分析物は、検出コンジュゲートの結合パートナーに結合し、第1の検出コンジュゲートと、分析物と、第2の検出コンジュゲートとの間で複合体が形成される。このような複合体形成によって、互いに近接した検出コンジュゲートにおける金属のナノ構造、すなわち、プラズモン-プラズモンカップリングがもたらされる。金属ナノ構造によって吸収、分散または伝導される光量は、複合体中の金属ナノ構造の近接によって影響を受け、したがって、試料中の標的分析物の存在を示すピーク吸収波長のシフト増強がもたらされる。
【0029】
他の実施形態において、検出方法は、競合アッセイである。そのような実施形態において、第1の検出コンジュゲートは、重要な標的分析物に結合した金属ナノ構造を含む。サンドウィッチアッセイ方法と同様に、第2の検出コンジュゲートは、標的分析物に特異的に結合することが可能である。この種類のアッセイにおいて、第1の検出コンジュゲートは、最初は第2の検出コンジュゲートに結合するであろう。標的分析物を含有する試料が、これらの初期複合体と混合される場合、試料中の未標識または遊離標的分析物は、第2の検出コンジュゲートへの結合に関して、第1の検出コンジュゲートと競合するであろう。この種類のアッセイにおける光学シグナルの変化は、ピーク吸収波長において波長シフトを比例的に減少させるであろう第2の検出コンジュゲートからの第1の検出コンジュゲートにおける金属ナノ構造の置換に起因するであろう。
【0030】
上記のとおり、本発明の方法は、複数の検出コンジュゲートを利用し得る。検出コンジュゲートは、アッセイ構成次第で、標的分析物または別の検出コンジュゲートに特異的に結合することが可能である結合パートナーに連結された金属ナノ構造を含む。例えば、方法が、サンドウィッチアッセイフォーマットで構成される実施形態において、検出コンジュゲートは、標的分析物に特異的に結合することが可能である結合パートナーに連結またはコンジュゲートされた金属ナノ構造を含む。方法が直接競合アッセイフォーマットで構成される他の実施形態において、検出コンジュゲートの少なくとも1つは、標的分析物に結合またはコンジュゲートされた金属ナノ構造を含む。代表的な実施形態において、第1の検出コンジュゲートおよび/または第2の検出コンジュゲート中の金属ナノ構造は、複合金属ナノ構造である。
【0031】
いくつかの実施形態において、検出コンジュゲートは、標的分析物に特異的に結合することが可能である結合パートナーを含む。本明細書で使用される場合、「特異的結合」とは、高い親和性、例えば、少なくとも10-6Mの親和性による標的分子への結合を意味する。いくつかの実施形態において、結合パートナーは、ハプテンおよび他の小分子、薬剤、ホルモン、限定されないが、抗体またはその断片(例えば、Fv、Fab、(Fab)2、単鎖、CDRなど)、抗原、レセプター、リガンド、ポリヌクレオチド、アプタマー、ポリペプチド、ポリサッカライド、リポポリサッカライド、グリコペプチド、リポタンパク質または核タンパク質を含む生体高分子である。特定の実施形態において、結合パートナーは抗体である。他の実施形態において、結合パートナーは抗原である。
【0032】
いくつかの実施形態において、検出コンジュゲート、例えば、第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲートは、同種の分子であるが、好ましくは、互いに別個の位置で標的分析物と結合する、結合パートナーを含む。例として、第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲートは、両方とも標的分析物を認識する抗体であることが可能であるが、第1の検出コンジュゲートが標的分析物と結合するエピトープは、第2の検出コンジュゲートが標的分析物と結合するエピトープとは別であり、かつ理想的にはオーバーラップしない。したがって、特定の実施形態において、第1の検出コンジュゲートは、標的分析物の第1のエピトープを識別する抗体を含み、かつ第2の検出コンジュゲートは、標的分析物の第2のエピトープを識別する異なる抗体を含む。本明細書に記載の種々の実施形態において、第1の検出コンジュゲートは、標的分析物の第1のエピトープを識別するモノクローナル抗体を含み得る。さらなる実施形態において、第2の検出コンジュゲートは、第1の検出コンジュゲートによって識別されるエピトープとは別であり、かつ理想的にはオーバーラップしない標的分析物の第2のエピトープを識別するモノクローナル抗体を含み得る。代替的に、第1の検出コンジュゲートおよび/または第2の検出コンジュゲートは、ポリクローナル抗体を含み得る。例えば、第2の検出コンジュゲートはモノクローナル抗体を含んでなるが、第1の検出コンジュゲートはポリクローナル抗体を含み得る。いくつかの実施形態において、第1の検出コンジュゲートはポリクローナル抗体を含み、かつ第2の検出コンジュゲートはポリクローナル抗体を含む。
【0033】
検出コンジュゲート中の金属ナノ構造は、貴金属またはその複合体から構成されることが可能である。いくつかの実施形態において、検出コンジュゲート中の金属ナノ構造は、遷移金属またはその複合体から構成されてもよい。いくつかの実施形態において、検出コンジュゲート中の金属ナノ構造は、貴金属または遷移金属と組み合わせて、アルカリ金属またはランタニドを含み得る。特定の実施形態において、検出コンジュゲート中の金属ナノ構造は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、チタン、クロム、カドミウム、亜鉛、鉄、コバルト、ニッケルおよびその複合体から選択される金属を含む。一実施形態において、金属ナノ構造は金ナノ構造である。別の実施形態において、金属ナノ構造は銀ナノ構造である。
【0034】
好ましい実施形態において、検出コンジュゲート中の金属ナノ構造は、複合金属ナノ構造である。「複合金属ナノ構造」とは、少なくとも2種の貴金属、遷移金属、アルカリ金属またはランタニドを含むナノ構造を意味する。2種以上の金属は合金として一緒に混合されてもよく、または2種以上の金属はナノ構造の別個の部分において存在していてもよい。例えば、1種の金属はナノ構造のコアを形成してよく、第2の金属はナノ構造の外殻またはコーティングを形成する。いくつかの実施形態において、複合金属ナノ構造は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、チタン、クロム、カドミウム、亜鉛、鉄、コバルトおよびニッケルから選択される少なくとも2種の金属を含む。他の実施形態において、複合金属ナノ構造は、金、銀、銅、白金、パラジウム、カドミウム、鉄、ニッケルおよび亜鉛から選択される少なくとも2種の金属を含む。1つの特定の実施形態において、複合金属ナノ構造は、金および銀を含む。別の実施形態において、複合金属ナノ構造は、金および銅を含む。さらに別の実施形態において、複合金属ナノ構造は、銀および銅を含む。本発明の方法で使用される複合金属ナノ構造は、球形ナノ粒子、ピラミッド形ナノ粒子、六角形ナノ粒子、ナノチューブ、ナノスター、ナノシェル、ナノロッド、ナノドット、ナノアイランド、ナノワイヤー、ナノディスク、ナノキューブまたはそれらの組合せなどの多数の異なる幾何構造を含むことができる。代表的な実施形態において、複合金属ナノ構造は、ナノスターおよびナノロッドから選択される。
【0035】
特定の実施形態において、本発明の方法で使用される複合金属ナノ構造は、第1の金属および第2の金属の合金である。いくつかの実施形態において、本発明の方法で使用される複合金属ナノ構造は、第1の金属のコアおよび第2の金属のコーティングを含む。特定の実施形態において、複合金属ナノ構造は、銀コアおよび金コーティングを含む。他の実施形態において、複合金属ナノ構造は、銅コアおよび金コーティングを含む。別の実施形態において、コアは銀であり、かつコーティングは銅である。いくつかの実施形態において、複合金属ナノ構造のそれぞれは、誘電体コア(例えば、二酸化ケイ素、硫化金、二酸化チタン、シリカおよびポリスチレン)、第1の金属の第1のコーティングおよび第2の金属の第2のコーティングを含む。検出方法の1つの特定の実施形態において、コアはシリカであり、第1のコーティング(すなわち、内部コーティング)は銀コーティングであり、第2のコーティングは金コーティング(すなわち、外部コーティング)である。別の実施形態において、コアはシリカであり、第1のコーティング(すなわち、内部コーティング)は銅コーティングであり、第2のコーティングは金コーティング(すなわち、外部コーティング)である。
【0036】
いくつかの実施形態において、第2の金属によるコーティングプロセスに続いて、第1の金属を含むコアは溶解されて、第2の金属から構成される中空構造が作られる。例えば、金ナノ粒子による銀コアのコーティングによって、銀コアの周囲に金シェルが作成され、銀コアは、その後、溶解されるか、または分解され、中空ナノ金シェル構造が形成される。
【0037】
金属ナノ構造には、球形ナノ粒子、ならびにナノプレートおよびナノシェルが含まれる。ナノプレートは、それらの厚さより大きい側面寸法(例えば、エッジ長さ)を有する。ナノプレートには、ナノディスク、ナノポリゴン、ナノヘキサゴン、ナノキューブ、ナノリング、ナノスターおよびナノプリズムが含まれる。いくつかの実施形態において、複合ナノ構造を含む金属ナノ構造は、球形ナノ粒子、ピラミッド形ナノ粒子、六角形ナノ粒子、ナノチューブ、ナノスター、ナノシェル、ナノロッド、ナノドット、ナノアイランド、ナノワイヤー、ナノディスク、ナノキューブまたはそれらの組合せから選択される幾何構造を有する。不規則形状を含めて、他の形状も可能である。特定の実施形態において、金属ナノ構造の径および形状は均一ではない、すなわち、金属ナノ構造は、異なる形状および径のナノ構造の不均一混合物である。代表的な実施形態において、金属ナノ構造は、ナノスターである。別の代表的な実施形態において、金属ナノ構造は、ナノロッドである。別の代表的な実施形態において、金属ナノ構造は、複合ナノ球体である。
【0038】
球形ナノ粒子に関して、適切な直径範囲としては、約5nm~約200nm、約10nm~約100nmおよび約20nm~約60nmが含まれる。ナノロッドに関して、適切な直径範囲としては、約5nm~約50nm、約8nm~約30nmおよび約10nm~約25nmが含まれる。さらに、ナノロッドに関して、適切な長さ範囲としては、約25nm~約150nm、約40nm~約120nmおよび約50nm~100nmが含まれる。いくつかの実施形態において、ナノロッドのアスペクト比、すなわち、長さ/直径は、2~10である。ナノプレートに関して、エッジ長さは、約10nm~約800nm、約20nm~約500nm、約50nm~約200nm、約30nm~約100nmまたは約10nm~約300nmであってよい。ナノプレートの厚さは、約1~約100nm、約5nm~約80nm、約10nm~約50nmまたは約5nm~約20nmの範囲であることが可能である。
【0039】
いくつかの実施形態において、ナノプレートは、2より大きいアスペクト比を有する。アスペクト比は、厚さに対するエッジ長さの比率である。好ましくは、ナノプレートは、約2~約25、約3~約20、約5~約10、約2~約15または約10~約30のアスペクト比を有する。
【0040】
金属ナノ構造への分子のコンジュゲート方法は、当業者に既知である。そのような方法としては、1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)、スルホ-NHSカップリング、疎水性結合またはチオエーテル化学が関与するものなどのコンジュゲーション化学が含まれる。いくつかの実施形態において、結合パートナーまたは標的分析物は、チオール、アミン、ジチオール、アクリルホスホラミダイト、アジドまたはアルキンを含む種々の化学官能性を介して金属ナノ構造に連結させることができる。いくつかの実施形態において、この分子は、より大きいキャリア分子またはタンパク質を介して間接的に金属ナノ構造に連結させることができる。そのような間接カップリングは、この分子が、ホルモン、薬剤、10kD未満の他の小分子などのように小さい場合、特に有用である。好ましくは、キャリアタンパク質は、標的分析物との特異的な相互作用の能力を有さない。いくつかの実施形態において、プロテインAまたはプロテインGまたはプロテインA/Gがナノ粒子にコンジュゲートされるか、または連結されてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、第1の検出コンジュゲートにおいて利用される金属は、第2の検出コンジュゲートにおける金属ナノ構造が製造される金属と同一であることが可能である。例えば、一実施形態において、第1の検出コンジュゲートは、金ナノ構造を含み、かつ第2の検出コンジュゲートは、金ナノ構造を含む。他の実施形態において、第1の検出コンジュゲートにおいて利用される金属は、第2の検出コンジュゲートにおける金属ナノ構造を製造するために使用される金属と異なる。例えば、いくつかの実施形態において、第1の検出コンジュゲートは、銀ナノ構造を含み、かつ第2の検出コンジュゲートは、金ナノ構造を含む。他の実施形態において、第1の検出コンジュゲートは、金ナノ構造を含み、かつ第2の検出コンジュゲートは、銀ナノ構造を含む。ある特定の実施形態において、第1の検出コンジュゲートは、金ナノ構造を含み、かつ第2の検出コンジュゲートは、複合ナノ構造を含む。関連する実施形態において、複合ナノ構造は、金コーティング銀ナノ構造を含む。他の特定の実施形態において、第1の検出コンジュゲートは、金ナノ構造を含み、かつ第2の検出コンジュゲートは、金コーティング銅ナノ構造を含む複合ナノ構造を含む。さらに他の実施形態において、第1の検出コンジュゲートは、金ナノ構造を含み、かつ第2の検出コンジュゲートは、金コーティングマグネタイトナノ構造を含む複合ナノ構造を含む。さらに他の実施形態において、第1の検出コンジュゲートは、金ナノ構造を含み、かつ第2の検出コンジュゲートは、金およびアルカリ金属またはランタニドを含む複合ナノ構造を含む。
【0042】
特定の実施形態において、第1の検出コンジュゲートを製造するために使用される金属ナノ構造の径は、第2の検出コンジュゲートにおいて使用される金属ナノ構造の径と類似する。そのような実施形態において、2組のナノ構造の径を合わせることによって、反射率、発光または散乱スペクトルにおける最適な波長シフトを提供することができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、反応環境は、適切な緩衝剤、イオン強度および他の促進剤によって調整され得る。好ましい実施形態において、反応環境は、本明細書に記載されるように、LSPRシグナルの強度を増強することができるポリエチレングリコール(PEG)を含む。限定されないが、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールおよびポリアスパラギン酸を含む他の類似のポリマー材料が使用されてもよい。
【0044】
本発明は、試料中の標的分析物を検出するために、本明細書に記載の方法を利用するための分析物検出デバイスも提供する。適切な分析物検出デバイスとしては、限定されないが、分光光度法キュベット、分析用ローター、マイクロウェルプレートまたはフローチャンバーが含まれてよい。当業者によって理解されるように、光ファイバーの先端または透明ゲルも、本明細書に開示される検出方法を実行するために利用されてよい。
【0045】
特定の実施形態において、本明細書に記載の分析物検出デバイスの全ての構成成分は、遠心ローターまたはディスクに含まれる。例えば、ローターまたはディスクは、複数の検出コンジュゲートが位置する1つまたはそれ以上の反応チャンバーを含有していてもよい。いくつかの実施形態において、検出コンジュゲートは、凍結乾燥されたビーズまたはペレットなどの凍結乾燥された組成物の形態で存在する。いくつかの実施形態において、分析物検出デバイスは、1つまたはそれ以上の反応チャンバーを含むローターまたはディスクを含み、それぞれの反応チャンバーは、複数の検出コンジュゲート(例えば、第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲート)を含み、検出コンジュゲートは、金属ナノ粒子に連結されている。そのようなデバイスは、ワンステップ分析物検出アッセイを提供し、それによって、試験試料がローターまたはディスクと接触し、ローターまたはディスクへの遠心力の適用によって、反応チャンバーへと試験試料が送達され、そこで、試料は、第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲートと混合される。ローターまたはディスクが2つ以上の反応チャンバーを含む実施形態において、検出コンジュゲートは、異なる分析物がそれぞれの反応チャンバーにおいて検出されることができるように選択することができる。これらのローターフォーマット検出デバイスは、サンドウィッチアッセイフォーマット、直接競合フォーマットで、またはローターが複数の反応チャンバーを含む場合は両方で構成されることが可能である。
【0046】
本明細書に記載の金属ナノ構造の種類のいずれも、これらのローターフォーマット検出デバイスによって使用可能である。いくつかの実施形態において、第1の検出コンジュゲートは、金ナノ構造を含み、かつ第2の検出コンジュゲートにおける金属ナノ構造は、金ナノ構造である。他の実施形態において、第1の検出コンジュゲートは、銀ナノ構造を含み、かつ第2の検出コンジュゲートにおける金属ナノ構造は、金ナノ構造である。さらに他の実施形態において、第1の検出コンジュゲートは、金ナノ構造を含み、かつ第2の検出コンジュゲートは、複合ナノ構造を含む。例えば、一実施形態において、複合ナノ構造は、金コーティング銀ナノ構造である。別の実施形態において、複合ナノ構造は、金コーティング銅ナノ構造である。
【0047】
本発明は、本明細書に開示される本発明の分析物検出デバイスを含むキットも含む。一実施形態において、キットは、複数の検出コンジュゲート(例えば、第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲート)を含み、その中で検出コンジュゲートは、金属ナノ粒子に連結されている。いくつかの実施形態において、検出コンジュゲートの1つまたはそれ以上は、例えば、ペレットまたはビーズの形態で凍結乾燥されてもよい。一実施形態において、検出コンジュゲートの全てが凍結乾燥される。さらなる実施形態において、キットは、1種またはそれ以上の追加の試薬を含んでもよい。いくつかの実施形態において、1種またはそれ以上の追加の試薬は、凍結乾燥された形態で提供される。いくつかの実施形態において、キットは、ブロッキング剤、糖、ポリマー性促進材料、塩化ナトリウムおよび/またはそれらの組合せを含んでよい。「ブロッキング剤」は、検出可能な薬剤および/または分析物と、試料中に存在するタンパク質との会合を防ぐ薬剤である。ブロッキング剤は、典型的に、それら自体がタンパク質であり、それらとしては、限定されないが、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン、オボアルブミン、ガンマグロブリンおよび非免疫動物からのIgGが含まれうる。いくつかの実施形態において、糖はポリサッカライドである。一実施形態において、ポリサッカライドは、マルトデキストリン、コーンシロップおよびポリグルコースから選択される。好ましい実施形態において、ポリサッカライドはマルトデキストリンである。別の実施形態において、糖はトレハロースである。いくつかの実施形態において、試薬キットは、マルトデキストリンおよびトレハロースを含んでよい。いくつかの実施形態において、ポリマー性促進材料はPEGである。
【0048】
本発明のキットは、試験試料中の分析物を検出するためのデバイスを使用するための指示、生物学的試料を回収するためのデバイスまたはツール、ならびに/または土壌、食品および生物学的組織などの固体材料から試料を得るための抽出緩衝剤を含んでもよい。
【0049】
本明細書に記載されるように、試験試料は、生物学的試料または環境もしくは食品試料から調製された抽出液を含む、いずれの種類の液体試料であることが可能である。1つの特定の実施形態において、試験試料は、生物学的試料である。生物学的試料としては、限定されないが、全血、血漿、血清、唾液、尿、胸水、汗、胆汁、脳脊髄液、糞便、腟液、精子、眼レンズ液、粘膜、滑液、腹水、羊水、生検組織、唾液および細胞溶解物が含まれる。生物学的試料は、がん、感染性疾患(例えば、ウイルス、細菌、寄生虫または真菌感染)、心臓血管疾患、代謝疾患、自己免疫疾患などの疾患状態を有することが疑われるヒト対象または動物対象から得ることができる。生物学的試料は、定期健康診断を受けている健康な対象(例えば、ヒトまたは動物)から得ることもできる。
【0050】
方法のいくつかの実施形態において、試験試料は、第1の検出コンジュゲートと混合され、混合物は、その後、第2の検出コンジュゲートと接触する。特定の実施形態において、試料、第1の検出コンジュゲートおよび第2の検出コンジュゲートは、同時に接触する。例えば、両試薬との試料の接触が、本明細書に記載のローターフォーマット検出デバイスにおいて同時に起こってよい。
【0051】
上記のとおり、本出願は、定性的または定量的様式で特異的結合パートナーの結合を決定するための、溶液中の複合ナノ材料標識パートナーの使用に関する。本発明者らは、驚くべきことに、ポリサッカライド、例えば、マルトデキストリンが溶液に添加される場合、スクロース、トレハロースまたはficollなどの他の糖の添加と比較して、溶液ベースアッセイの感度が有意に増強されることを見出した。遠心ローターフォーマットにおいて、分析用チャンバー中に試料を送達するために、低速遠心分離が必要とされる。溶液へのポリサッカライド、例えば、マルトデキストリンの添加は、遠心分離間および後に、複合ナノ材料標識パートナー、例えば、金-銀ナノスターとコンジュゲートした抗体の凝集および沈降を防ぐことに特に有効である。スクロース、トレハロースまたはficollなどの他の糖と比べての感度の改善は予想外であった。凝集および沈降の減少によって、アッセイの感度増加が達成される。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の方法は、ポリサッカライド、例えば、マルトデキストリン、コーンシロップまたはポリグルコースを含む溶液中で実行される。
【0052】
一実施形態において、溶液は、約2%~約20%重量/体積の最終濃度でポリサッカライドを含む。別の実施形態において、溶液は、約4%~約15%重量/体積の最終濃度でポリサッカライドを含む。さらに別の実施形態において、溶液は、約5%~約10%重量/体積の最終濃度でポリサッカライドを含む。代表的な実施形態において、溶液は、それらの間の全ての値を含めて、約5%、6%、7%、8%、9%または10%の最終濃度でポリサッカライドを含む。本明細書に記載の種々の実施形態において、アッセイの感度は、ポリサッカライドが溶液に添加される場合、別の糖、例えば、スクロースまたはficollを含む溶液中でアッセイが実行される場合と比較して、改善され得る。代表的な実施形態において、ポリサッカライドは、マルトデキストリンである。
【0053】
一実施形態において、溶液は、約0.1%~約20%重量/体積の最終濃度でブロッキング剤を含む。別の実施形態において、溶液は、約0.5%~約10%重量/体積の最終濃度でブロッキング剤を含む。さらに別の実施形態において、溶液は、約1%~約5%重量/体積の最終濃度でブロッキング剤を含む。代表的な実施形態において、溶液は、それらの間の全ての値を含めて、約1%、2%、3%、4%または5%の最終濃度でブロッキング剤を含む。本明細書に記載の種々の実施形態において、アッセイの感度は、ブロッキング剤が溶液に添加される場合、ブロッキング剤の不在下でアッセイが実行される場合と比較して、改善され得る。いくつかの実施形態において、ブロッキング剤は、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン、オボアルブミンおよびガンマ-グロブリンから選択される。代表的な実施形態において、ブロッキング剤は、ウシ血清アルブミンである。
【0054】
いくつかの実施形態において、溶液は、マルトデキストリン、トレハロース、PEG、ブロッキング剤(例えばウシ血清アルブミン)および/または塩化ナトリウムの1種またはそれ以上を含む。代表的な実施形態において、溶液成分の1種またはそれ以上、例えば、マルトデキストリンは、液体、例えば、水、食塩溶液または液体試料の添加時に懸濁する凍結乾燥されたビーズまたはペレットとして提供されてもよい。例えば、溶液成分の1種またはそれ以上は、液体の添加後に溶液中で懸濁するビーズとして分光光度法キュベットまたは分析用ローターの反応チャンバー中に提供されてもよい。
【0055】
追加の実施形態において、LSPRシグナルは、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールおよびポリアスパラギン酸から選択されるポリマー性促進材料の存在下で第1および第2の検出コンジュゲートを分析物と混合することによって、実質的に増加し得る。代表的な実施形態において、ポリマー材料は、ポリエチレングリコール(PEG)である。一実施形態において、反応混合物は、約0.1mg/mL~約200mg/mLの最終濃度でポリマー材料、例えば、PEGを含む。別の実施形態において、反応混合物は、約0.2mg/mL~約100mg/mLの最終濃度でポリマー材料、例えば、PEGを含む。さらに別の実施形態、反応混合物は、約0.5mg/mL~約10mg/mLの最終濃度でポリマー材料、例えば、PEGを含む。さらに別の実施形態において、反応混合物は、約2mg/mL~約8mg/mLの最終濃度でポリマー材料、例えば、PEGを含む。代表的な実施形態において、反応混合物は、それらの間の全ての値を含めて、約2、3、4、5、6、7または8mg/mLの最終濃度でポリマー材料、例えば、PEGを含む。
【0056】
本発明の検出方法は、標的分析物の定性的または定量的な量を決定するために使用されてよい。そのような方法は、試料中の標的分析物のおよその量を決定するために特に有用であり、これは、特に、特定の医学的状態を診断するか、または薬物療法の有効性を評価するために使用することができる。一実施形態において、標的分析物の量は、既知量の標的分析物を有する試料に関して、本明細書に記載の金属ナノ粒子からの光学シグナルの変化を測定することによって、特定の分析物に対する標準曲線を確立すること;試験試料に関する光学シグナルの変化を決定すること;そして試験試料に関する光学シグナルの変化を、標準曲線に関して得られる値と比較することによって、決定することができる。いくつかの実施形態において、第1の試薬と第2の試薬との間の複合体の量を決定することは、試験試料からの吸光度比および/または反応速度と、既知量の複合体を有する一試料からの吸光度比および/または反応速度とを比較すること、それによって、試験試料中の複合体の量を決定することを含む。試験試料から得られた定量的な値は、標的分析物の異常または正常レベルのいずれかを示す、あらかじめ決定された閾値と比較されてもよい。
【0057】
本発明の検出方法は、試料中の微量の標的分析物を検出するために非常に感度が高い技術を提供する。いくつかの実施形態において、プラズモン共鳴ベースのシグナルの増幅は、標的分析物のナノグラム量が試料中で検出されることができるように、金ナノ構造コンジュゲートによって達成することができる。したがって、この方法の一実施形態において、標的分析物のナノグラム量の存在が検出される。いくつかの実施形態において、金ナノ粒子を含む検出コンジュゲートからのプラズモン共鳴ベースのシグナルは、複合金属ナノ構造検出コンジュゲートを使用して増幅することができる。分析物に特異的な抗体にコンジュゲートされた金コーティング銀ナノ構造の使用によって、標的分析物のピコグラム量の検出が可能となり得る。したがって、この方法のいくつかの実施形態において、標的分析物のピコグラム量の存在が検出される。方法の他の実施形態において、標的分析物のフェムトグラム量の存在が検出される。複合金属ナノ構造の組成および/または形状を変更することによって、より高い感度が得られうる。
【0058】
入射光が金属ナノ構造に適用される場合、金属中の伝導帯電子は、入射電磁波の同一周波数において集合的に振動する。これらの共鳴振動の結果として、ナノ構造は、特定の波長範囲において強く光を吸収し、散乱する。貴金属または遷移金属を含む金属ナノ構造に関して、この波長範囲は、ナノ構造の特定の組成に依存して、紫外-可視-赤外スペクトルにある。したがって、本発明の方法での使用に適切な電磁エネルギーを適用するための光源としては、アークランプおよびレーザーを含めて、紫外-可視スペクトルまたは紫外-可視-赤外スペクトル内の波長範囲を適用し得るいずれの光源も含むことができる。いくつかの実施形態において、光の特定の波長が適用されるように、光源にモノクロメータが備えられてもよい。
【0059】
金属ナノ構造の光学的特性は、それらの径、形状および組成に依存する。例えば、固体金ナノ粒子は、粒径に依存して、約515nm~約560nmの吸収ピーク波長(λmax)を有する。30nmの直径を有する金球形ナノ粒子は、約520nmにおいて最大吸収を有するが、λmaxは、粒子直径が増加するほど、より長い波長にシフトする。銀および銅粒子は、紫外/青色または赤色領域(例えば、約350nm~約500nm)においてλmaxを有するが、粒子直径が増加すると、λmaxは、より長い波長にシフトする。金属ナノロッドは、横方向λmax1および縦方向λmax2を有する。異なる金属の合金は、典型的に、含まれる金属の吸収ピーク間の中間範囲において吸収ピークを示す。例えば、金および銀の50/50合金を含むナノ構造は、約480nmのλmaxを示すが、金の量が増加すると、吸収ピークは、より長い波長にシフトする。局在媒体屈折率における変化に対するLSPRシグナルの感度は、ナノ構造の形状または幾何構造を変化させることによって調節することができる。例えば、ナノ球体粒子(例えば、ナノプリズム、ナノロッド、ナノシェルなど)では、球体と比較して、増加したLSPR感度を有する。いくつかの実施形態において、光学的特性(例えば、特定の波長における吸収/散乱)は、検出コンジュゲートで利用される金属ナノ構造の径、形状または組成を変化させることによって、特定の用途のために調整される。
【0060】
入射光および金属ナノ構造の間の相互作用は、反射光または透過光として監視することができる。吸収または散乱される入射光の量は、反射モードでの吸収スペクトルまたは透過モードでの吸収スペクトルとして測定することができる。いくつかの実施形態において、金属ナノ構造から測定される光学シグナルは、光学反射、吸光度スペクトル、散乱スペクトルおよび/または発光スペクトルであることが可能である。
【0061】
結合パートナーと標的分析物との間での複合体形成から得られる検出コンジュゲートにおける金属ナノ構造間のプラズモンカップリングは、金属ナノ構造の局在表面プラズモン共鳴スペクトルの変化を生じる。例えば、そのような変化としては、光学的吸光の増加、光学的反射の増加ならびに/または散乱および/もしくは発光シグナルの増加を含むことができる。いくつかの実施形態において、試料中の標的分析物の存在を示す光学シグナルにおける変化としては、シフト、光学的散乱の増加または減少、あるいはこれらの特徴の組合せが含まれる。特定の実施形態において、試料中の標的分析物の存在を示す光学シグナルの変化は、スペクトルピーク波長シフトである。特定の他の実施形態において、試料中の標的分析物の存在を示す光学シグナルの変化は、ピーク以外の位置での波長シフトである。例えば、試料中の標的分析物の存在を示す光学シグナルの変化は、中点スペクトル波長シフト、波長ベースでのスペクトル波長シフト、または差スペクトルなどの全スペクトル波長シフトであり得る。一実施形態において、光学スペクトルピークにおける波長シフトは、200nm~1200nmのスペクトル窓領域内での赤色シフト(例えば、より長波長へのシフト)であり得る。別の実施形態において、光学スペクトルピークにおける波長シフトは、200nm~1200nmのスペクトル窓領域内での青色シフト(例えば、より短波長へのシフト)であり得る。光学シグナルの変化は、設定反応時間後の特定の時点で測定することができる。さらに、あるいは代わりに、反応期間(例えば、速度決定)の光学シグナルの変化が測定されてもよい。両種類の測定を、標的分析物の定性または定量分析に使用することができる。
【0062】
異なる波長において光学シグナルを測定し、吸光、散乱また発光スペクトルを得るための様々な手段は、当該技術において知られている。いずれの分光光度または光度測定計器も、開示された方法における使用に適切である。いくつかの非限定的な例としては、プレートリーダー、Cobas FaraアナライザーおよびPiccolo xpress(登録商標)ならびにVetscanアナライザー(Abaxis,Inc.,Union City,CA)、光ファイバーリーダー(例えば、LightPath(商標)S4(LamdaGen,Menlo Park,CA))、SPR計器(例えば、GE Healthcareから入手可能なBiacore計器)、Olympus、Hitachiなどからの遠心アナライザーが含まれる。
【0063】
本発明は、(i)結合パートナーに連結された金属ナノ構造を含む第1の検出コンジュゲート、(ii)標的分析物、および(iii)結合パートナーに連結された金属ナノ構造を含む第2の検出コンジュゲートを含み、第1の検出コンジュゲートの結合パートナーが、標的分析物上の第1のエピトープに結合し、そして第2の検出コンジュゲートの結合パートナーが、標的分析物上の第2のエピトープに結合し、それによって、第1の検出コンジュゲート、標的分析物および第2の検出コンジュゲートを含む複合体が形成される、アッセイ複合体も含む。いくつかの実施形態において、アッセイ複合体は、遠心ローターでの使用に適合されるキュベットに含まれる。他の実施形態において、アッセイ複合体は、遠心ローターまたはディスク中の反応チャンバー内に含まれる。
【0064】
いずれの種類の標的分析物も、本発明の方法、デバイスおよびアッセイ複合体、特に疾患の診断で重要なものを使用して検出することができる。標的分析物としては、限定されないが、タンパク質、酵素、抗原、抗体、ペプチド、核酸(RNA、DNA、mRNA、miRNA)、ホルモン、糖タンパク質、ポリサッカライド、毒素、ウイルス、ウイルス粒子、薬物分子、ハプテンまたは化学物質を含むことができる。いくつかの実施形態において、標的分析物は、ヒトおよび/または動物における感染症と関連するマーカーまたは抗原である。他の実施形態で、標的分析物は、特定の生理学的状態または病理学的状態と関連するマーカーまたは抗原である。
【0065】
特定の実施形態において、標的分析物は、病原性抗原または病原性抗原への抗体である。例えば、病原性抗原は、ウイルス性抗原(例えば、ネコ白血病ウイルス、イヌパルボウイルス、口蹄疫ウイルス、インフルエンザウイルス、A型、B型、C型肝炎ウイルス、HIVウイルス、ヒトパピローマウイルス、エプスタイン・バーウイルス、狂犬病ウイルスなど)、細菌性抗原(例えば、エーリキア(Ehrlichia)、ボレリア(Borrelia)、アナプラズマ(Anaplasma)、サルモネラ(Salmonella)、バチルス(Bacillus)、リケッチア(Rickettsia)など)、真菌性抗原、または寄生虫性抗原(例えば、イヌ糸状虫、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、熱帯熱マラリア原虫、アフリカトリパノソーマ症、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)など)であることが可能である。特定の実施形態において、細菌性抗原は、エーリキア・カニス(Ehrlichia canis)、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chafeensis)、エーリキア・エウィンギイ(Ehrlichia ewingii)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、アナプラズマ・プラティス(Anaplasma platys)、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム(Anaplasma phagocytophilum)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)およびリケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)であり得る。他の実施形態において、標的分析物は、疾患関連抗原または疾患関連抗原への抗体である。疾患関連抗原としては、限定されないが、がん関連抗原またはマーカー(例えば、PSA、AFP、CA125、CA15-3、CA19-9、CEA、NY-ESO-1、MUC1、GM3、GD2、ERBB2など)、心臓血管疾患関連抗原またはマーカー(例えば、トロポニン、C-反応性タンパク質、脳ナトリウム利尿ペプチド、CKMB、脂肪酸結合タンパク質など)、代謝関連抗原またはマーカー(例えば、甲状腺刺激ホルモン、チロキシン、レプチン、インスリン)、あるいは自己免疫疾患関連抗原またはマーカー(例えば、自己抗体)が含まれる。特定の実施形態において、標的分析物は、炎症抗原またはマーカー(例えば、C-反応性タンパク質、MRP14、MRP8、25F9など)である。他の実施形態において、標的分析物は、妊娠関連抗原またはマーカー(例えば、胎児抗原、ヒト絨毛膜ゴナドトロピン)である。
【0066】
本発明は、複合金属ナノ構造を調製する方法も提供する。一実施形態において、この方法は、ポリマーおよび塩化金酸の混合物を含む第1の溶液を調製すること、銀および銅ナノ構造を含む第2の溶液を調製すること、ならびに一定期間、第1の溶液を第2の溶液と一緒にインキュベーションすることを含み、得られる混合物は、金コーティング銀ナノ構造または金コーティング銅ナノ構造を含む。得られる混合物は、好ましくは、約515nm~約670nmまたは約520nm~約560nmのピーク吸光度を有する。一実施形態において、得られる混合物は、約530nm~約545nmのピーク吸光度を有する。別の実施形態において、この方法は、CHAPSなどの清浄剤および塩化金酸の混合物、ならびに銀または銅塩を含む溶液を含む第1の溶液を調製すること、ならびに第1の溶液を、アスコルビン酸などの還元剤を含有する第2の溶液と一緒にインキュベーションして、複合ナノ構造の形成を誘導することを含む。ナノ構造の径および形状は、使用される金属の比率、清浄剤の濃度、ならびに最終的に使用されるアスコルビン酸の量を変更することによって変動可能である。
【0067】
第1の溶液の調製において使用されるポリマーは、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、種々のガム、ゼラチンまたは上記のいずれかを含む混合ポリマーのいずれか1つであることが可能である。1つの特定の実施形態において、ポリマーは、ポリビニルピロリドンである。ポリマーの分子量を変化させることによって、種々の種類のコーティングナノ構造を得ることができる。ポリマーの適切な分子量の範囲には、約5,000ダルトン~約150,000ダルトン、約10,000ダルトン~約100,000ダルトン、約20,000ダルトン~約80,000ダルトンが含まれる。いくつかの実施形態において、ポリマーは、50,000ダルトン未満の分子量を有する。他の実施形態において、ポリマーは、20,000ダルトン未満の分子量を有する。ある特定の実施形態において、ポリマーは、約10,000ダルトンの分子量を有する。
【0068】
金コーティングの特徴は、ポリマー:塩化金酸の濃度比を調整することによって制御することができる。例えば、ポリマー:塩化金酸の濃度比は、約100:1~約1:100、約2:1~約5:1、または約1.5:1~約8:1である。いくつかの実施形態において、ポリマー:塩化金酸の濃度比は1:1である。ポリマーの適切な濃度としては、限定されないが、水またはエタノール中約0.1%~約20%wt/wtが含まれる。塩化金酸の適切な濃度としては、限定されないが、約0.001M~約1.0M、約0.010M~約0.500Mおよび約0.050M~約0.100Mが含まれる。
【0069】
コーティング効率および厚さは、コーティング溶液(すなわち、第1の溶液)のpHおよびハロゲン化物含有量によっても影響を受ける可能性がある。特定の実施形態において、溶液のpHは、約3~約14の範囲に保持される。溶液のハロゲン化物含有量は、いくつかの実施形態において、150mM未満である。他の実施形態において、溶液のハロゲン化物含有量は、約0~約50mMの範囲にある。
【0070】
銀および銅ナノ構造の溶液を調製する方法は、当業者に知られている。例えば、銀または銅ナノ構造を含む第2の溶液は、それぞれ、参照によって全体的に本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2012/0101007号明細書、米国特許出願公開第2014/0105982号明細書または米国特許出願公開第2013/0230717号明細書に記載の方法のいずれかによって調製することができる。一実施形態において、銀または銅ナノ構造を含む第2の溶液は、銀または銅供給源を還元剤と混合することによって調製される。適切な銀供給源としては、硝酸銀などの銀塩が含まれる。適切な銅供給源としては、硫酸銅(II)、塩化銅(II)、水酸化銅(II)および硝酸銅(II)、酢酸銅(II)、ならびにトリフルオロ酢酸銅(II)が含まれる。銀または銅供給源と反応してナノ構造を形成することができる還元剤としては、グルコース、アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウムおよびPVPなどのポリマーのアルカリ性溶液(例えば、pH7.5より高いもの)を含むことができる。特定の実施形態において、還元剤はアスコルビン酸である。銀ナノ構造または銅ナノ構造の所望の形状および光学スペクトルピークは、当業者に既知であるように反応物の比率または濃度を調整することによって達成することができる。例としてのみであるが、高濃度の還元剤によって、五角形および両すい形ナノ構造をもたらすことができるのに対して、低濃度の還元剤によって、細長いナノワイヤーまたはチューブをもたらすことができる。ナノ構造の特定の形状次第で、銀または銅ナノ構造を含む第2の溶液は、約540nm~約1000nm、約600nm~約700nm、約630nm~約680nm、約750nm~約850nm、約900nm~約940nm、約580nm~約620nmまたは約550nm~約750nmのピーク吸光度を有し得る。特定の実施形態において、銀ナノ構造を含む第2の溶液は、約600nm(すなわち、595nm~605nm、両端の値を含む)のピーク吸光度を有する。いくつかの実施形態において、銅ナノ構造を含む第2の溶液は、約585nm(すなわち、580nm~590nm、両端の値を含む)のピーク吸光度を有する。いくつかの実施形態において、銅ナノ構造を含む溶液のピーク吸光度は、同様の径および形状の銀ナノ構造を含む溶液のピーク吸光度より高い(すなわち、赤色シフト)。
【0071】
いくつかの実施形態において、第2の溶液との第1の溶液のインキュベーション時間は、少なくとも12時間である。他の実施形態において、第2の溶液との第1の溶液のインキュベーション時間は、24時間より長く、好ましくは48時間より長く、より好ましくは少なくとも72時間である。反応混合物のピーク吸光度の変化は、それに応じてインキュベーション時間を調整するために、インキュベーション期間中に監視することができる。例えば、ピーク吸光度のより短波長、例えば、520nm~550nm領域へのシフトは、金コーティングナノ構造が安定したことを示すことができる。特定の実施形態において、得られたナノ構造の塩化ナトリウム(例えば、0.25~1M)への安定性は、ナノ構造の適切なコーティングを示すために使用される。ナノロッドなどのCTABコーティング粒子は、塩化ナトリウムに対して耐性がある。
【0072】
特定の実施形態において、本発明は、約50/mLより高い光学密度を有するナノ構造の合成方法を提供する。一実施形態において、この方法は、本明細書に記載のポリマーと塩化金酸とを混合すること、第1の期間、設定温度で混合物を撹拌すること、混合物にアスコルビン酸を添加すること、第2の期間、混合物をインキュベーションすることを含む。ナノ構造の径および形状は、ポリマー対塩化金酸の濃度比ならびにインキュベーションの温度および時間によって規定される。ポリマーおよび塩化金酸の濃度は、上記の範囲にあることが可能である。温度は、所望のナノ構造の径および形状に基づいて調整することができるが、約4℃~約100℃の範囲にあってよい。同様に、インキュベーション期間(すなわち、第1の期間)は、ナノ構造の所望の特性に基づいて調整することができるが、約15分~1日の範囲にあってよい。
【0073】
いくつかの実施形態において、第1のインキュベーション期間後、約0.1~1部(例えば、約1~5M)のアスコルビン酸を混合物に添加する。アスコルビン酸の添加後の第2のインキュベーション期間は、約1~約24時間であってよい。理論によって拘束されないが、アスコルビン酸の添加によって、製造されるナノ構造の量の実質的な増加がもたらされる。
【0074】
特定の実施形態において、この方法は、約1~約100部の塩化金(例えば、約0.001M~1M)または硝酸銀(例えば、約0.001M~1M)または他の金属(例えば、貴金属、遷移金属、アルカリ金属もしくはランタニド)を混合物に加えるまたはドープすることをさらに含む。このドーピングステップによって、得られるナノ構造の共鳴強度をさらに増加させることができる。いくつかの実施形態において、塩化金、硝酸銀または他の金属は、アスコルビン酸が反応に添加される前に混合物に添加される。他の実施形態において、塩化金、硝酸銀または他の金属は、アスコルビン酸の添加の後に混合物に添加される。金属およびアスコルビン酸の添加の順番は、得られるナノ構造を所望の形状および径に調整するために調整されてもよい。
【0075】
いくつかの実施形態において、本開示は、複合ナノ粒子の合成方法を提供する。特定の実施形態において、銀/金ナノ粒子は、単一容器中で、連続的に、かつ強力に混合しながら、次の試薬のあらかじめ決められた量を添加することによって合成される:(1)界面活性剤(例えば、イオン性[アニオン性、カチオン性もしくは両性イオン性]または非イオン性)、あるいはキャッピング剤、例えば、3-((3-コラミドプロピル)ジメチルアミノ)-1-プロパンスルホネート(CHAPS)、SDS、Tween、Tritonもしくはいずれかのスルホベタイン清浄剤、(2)塩化金、(3)水、(4)硝酸銀、(5)クエン酸三ナトリウムおよび最終的に(6)アスコルビン酸がナノ粒子の形成を開始するために添加される。他の実施形態において、ナノ粒子は、単一容器中で、次のあらかじめ決められた量を次の順番で添加することによって合成される:(1)界面活性剤またはキャッピング剤、例えば、CHAPS、SDS、Tween、Triton、CTABもしくはいずれかのスルホベタイン清浄剤、(2)塩化金、(3)硝酸銀、(4)クエン酸三ナトリウム、(5)水および(6)還元体。いくつかの実施形態において、還元体は、CHAPS、アスコルビン酸、クエン酸三ナトリウムおよび水から構成される。さらなる実施形態において、還元体は、約200mgのCHAPS、約4gのアスコルビン酸、約117.6mgのクエン酸三ナトリウムおよび約15.68gの水から構成される。いくつかの実施形態において、約1mLの1%(wt/wt)CHAPS水溶液を、連続的に、約0.25mLの0.1M塩化金、約0.5mLの0.02M硝酸銀、約0.05mLの1Mクエン酸三ナトリウム、約6.2mLの水および約2mLの還元体と混合する。金属塩、キャッピング剤、還元体などの種々の活性成分の濃度ならびに溶液のpHを変化させることによって、異なる粒子の種類(例えば、ナノ球体、ナノスターまたはナノロッド)およびナノ粒子の異なる組成物がもたらされる。
【0076】
いくつかの実施形態において、ナノスターは、順番に、水、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、塩化金、アスコルビン酸および予め形成された金ナノ球体シードを混合することによって形成される。さらなる実施形態において、約0.825mLの水、約0.1mLの20%CTAB、約0.025mLの0.1M塩化金、約0.05mLの1Mアスコルビン酸および約0.05mLの金ナノ球体シードが、その順序で混合される。シードの古さ(age)およびシード対金属イオンの比率は、ナノ粒子の幾何構造、したがって、光学スペクトルに影響を与える。
【0077】
本明細書に提供される方法を使用するナノ材料の形成は、本質的に数分以内に完了するが、一晩かけて平衡に到達させてもよい。ナノ粒子の合成は分光法によって監視することができ、走査または透過電子顕微鏡法によって確認することができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、径、したがって、光学的特性は、界面活性剤またはキャッピング剤、アスコルビン酸、クエン酸三ナトリウム、塩化金および/または硝酸銀の濃度を変更することによって変更することができる。合成されたナノスターの径は、銀含有量が増加すると特定の点まで増加するが、次いで減少する。これらの変化は、銀/金の比率の増加時にピークが赤色シフトするが、次いで、金:銀モル比5:2において青色シフトが開始し、合成されたナノスターのLSPRピークにおいて反映される。反応混合物中の選択された清浄剤の最終濃度は、0.05~5%で変動可能であり、清浄剤の濃度がより高いほど、より小さい粒子が優位を占める。アスコルビン酸の濃度を増加させることによって、より小さいナノスターが製造され、アスコルビン酸の最終濃度は0.05~0.2Mまで変動する。同様に、クエン酸三ナトリウムの濃度を10mMから100mMまで増加させることによって、ナノスターの径が減少する。
【0079】
いくつかの実施形態において、金-銀ナノ合金は、CTAB(例えば、アルコールに溶解されたCTAB)を塩化金および硝酸銀と混合することによって、アルカリ還元条件下で合成され得る。いくつかの実施形態において、ナノ合金の形成は、順番に、水、CTAB、塩化金(0.5mM~5mM)、硝酸銀(金の20%~80%)、アスコルビン酸(10mM~200mM)またはアスコルビン酸、クエン酸三ナトリウムおよびCHAPSを含有する還元体、ならびにNaOH(アスコルビン酸の50%~200%)を混合することによって誘導され得る。さらなる実施形態において、ナノ合金は、約0.825mlの水、イソプロパノール中で調製された約0.1mlの20%CTAB、約0.025mlの0.1M塩化金、約0.005~0.025mlの0.1M硝酸銀、約0.05mlの1Mアスコルビン酸および約0.05mlの1M NaOHを混合することによって形成される。CTABの濃度は、0.05Mから0.2Mまで様々であることが可能であるが、より低い濃度であるほど、合成されたナノスターのより高い含有量に有利に作用する。酸性pHは、ナノロッドの形成に有利に作用し、pHの減少によって、より高いアスペクト比が得られる。
【0080】
本発明は、限定するものとして解釈されるべきでない次の追加の実施例によって、さらに例証される。当業者は、本開示を考慮に入れて、開示される特定の実施形態に多くの変更が実施されてよいことを理解し、それによって、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、なお同様または類似の結果を得ることができることを認識する。
【0081】
本開示を通して参照された全ての特許および非特許文献は、全ての目的に関して、参照によって全体的に本明細書に組み込まれる。
【実施例0082】
実施例1.LSPRシグナルの増幅を利用する直接アッセイ
本実施例において、ブランク反応は、抗糸状虫ポリクローナル抗体のコロイドコンジュゲートを含有する溶液、リン酸緩衝塩水などの適切な分散媒体および糸状虫抗原を欠く試料を添加することによって構成される。スペクトル変化を一定期間にわたって記録する。次いで、陽性対照の組は、上記ブランク溶液で使用される反応溶液に既知量の糸状虫抗原を添加することによって構成される。あるいは、ブランク反応を記録し、次いで、既知量の糸状虫抗原を添加して、スペクトル走査におけるシフトを抗原の濃度と関連づける較正曲線を調製する。次いで、この較正曲線を使用して、未知試料中の糸状虫抗原の量を計算する。スペクトル走査におけるシフトとは、(i)λmaxにおける変化、(2)陽性および陰性試料間の差スペクトル、または(3)微分スペクトルを意味する。
【0083】
実施例2.LSPRシグナルの増幅を利用するサンドウィッチアッセイ
サンドウィッチアッセイは、分析物が、特異的結合パートナーにそれぞれの部位が結合する、少なくとも2つの別個の結合部位(抗原のエピトープ)を示す場合に、最も適切である。したがって、本実施例において、CRPの1つのエピトープに対する抗体が、金および/または銀ナノ粒子上に固定され、非オーバーラップエピトープに対する第2の抗体が、コロイド金および/または銀で標識化される。試料中のCRP抗原の量がスペクトル変化の範囲を決定するため、この構成によってCRP抗原の測定が可能となる。第2の抗体が標識化されないが、スペクトル変化が数桁低い場合も、スペクトル変化が観察される。ナノ粒子の金属組成は、反応条件を最適化するように変化されてもよい。
【0084】
実施例3.ローター中でのアッセイ実行
直接競合アッセイまたはサンドウィッチアッセイは、米国特許第5,061,381号明細書、同第5,122,284号明細書、同第5,186,844号明細書、同第5,304,348号明細書、同第5,457,053号明細書および同第5,693,233号明細書に記載されるローターなどの遠心ローター中で実行されてもよい。この場合、対となる2つのモノクローナル抗体または2つ以上のエピトープに結合するポリクローナル抗体混合物のナノ粒子コンジュゲートは、凍結乾燥されたビーズとして添加される。溶液相LSPRアッセイは、モノクローナルおよびポリクローナル抗体の両方で機能する。
【0085】
実施例4.ポリエチレングリコールまたは類似ポリマーによるLSPRシグナルの増強
図4および
図9A~9Cに表されたデータは、LSPRシグナルが、ポリエチレングリコールの存在下で実質的に増加することを示す。異なる分子量を有するPEGは、所与のアッセイにおいて所望の選択性を得るために、最適化された濃度で使用されてよい。所与のナノ粒子の組合せおよび/または特異的結合パートナーの組合せに関して最適化された反応条件を得るために、PEGは、ポリビニルピロリドンまたは類似ポリマー材料で置換されてよい。
【0086】
実施例5.マルトデキストリンの添加によるアッセイ感度の改善
沈降作用を最小化し、LSPRシグナルを維持する種々の糖および他の薬剤の影響を決定するために、複数の実験を実行した。
図16に示されるように、マルトデキストリンは驚くべきことにシグナルを上昇させ、これはBSAの存在によってさらに改善された。対照的に、トレハロース、ソルビトールまたはシクロデキストリンが添加された場合、LSPRシグナルの強度はそれほど強くはなかった(データは示していない)。加えて、マルトデキストリンおよびBSAの添加によって、沈降の問題も解決された(
図17)。約50pg/mlのTSHが、特定の量のPEG、BSAおよびマルトデキストリンを用いて検出可能であった(
図18)。
【0087】
実施例6.金ナノスターおよび金-銀合金粒子の合成ならびにその使用
本明細書に記載の溶液相プラズモンアッセイなどのプラズモンアッセイで使用するためのナノ材料を合成するために、新規方法が利用された。
【0088】
CHAPSコーティングナノスターまたはCTABコーティングナノスターは、次の方法を使用して調製した。CHAPSコーティングナノスターに関しては、適切な容器中で、1mlの1%(重量/重量)CHAPS(3-((3-コラミドプロピル)ジメチルアミノ)-1-プロパンスルホネート)水溶液を調製した。0.25mlの0.1M塩化金、0.5mlの0.02M硝酸銀、0.05mlの1Mクエン酸三ナトリウム、6.2mlの水および最終的に2mlの還元体(200mgのCHAPS、4gのアスコルビン酸、117.6mgのクエン酸三ナトリウム、15.68gの水)を、連続的に容器中で撹拌し、そして少なくとも1時間、十分に混合した。水中で1:20まで希釈後、光学スペクトルを読んだ。いくつかの実施形態において、径、したがって、光学特性は、CHAPS、アスコルビン酸、クエン酸三ナトリウム、塩化金および硝酸銀の濃度を変化させることによって変更することができる。
【0089】
CTABコーティングナノスターに関しては、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を20%(wt/wt)の濃度でイソプロパノール中に溶解した。他の全ての試薬は水性であった。ナノスターの形成は、0.825mlの水、0.1mlの20%CTAB、0.025mlの0.1M塩化金、0.05mlの1Mアスコルビン酸および最終的に0.05mlの予め形成された金ナノ球体シードを順番に混合することによって誘導された。いくつかの実施形態において、径、したがって、光学特性は、成分の濃度を変えることによって変更することができる。ナノロッドをシーディングするために新しいシードが使用される場合、30℃において、CTABの水溶液からナノロッドが製造された。イソプロパノール中で調製されたCTAB溶液は、室温で使用することが可能であるが、ナノロッドよりもナノスターの合成に有利に作用する。
【0090】
金-銀ナノ合金は、イソプロパノール中に溶解されたCTABを塩化金および硝酸銀と混合することによって、アルカリ還元条件下で合成された。ナノ合金の形成は、水(合計1mlの反応体積を与える)、0.2mlの20%CTAB(イソプロパノール中)、0.025mlの0.1M塩化金、0~0.05mlの0.02M硝酸銀、アスコルビン酸、CHAPSおよびクエン酸三ナトリウムを含有する0.02mlの還元体、ならびに最終的に0.05mlの1M NaOHを順番に混合することによって誘導された。いくつかの実施形態において、還元体は、CHAPS、クエン酸三ナトリウムおよびアスコルビン酸を含有する。酸性pHは、シードの古さに依存するが、ナノスターおよびナノロッドの製造に有利に作用する。
【0091】
硝酸銀の添加と、それに続く、アスコルビン酸、そして最終的に、水酸化ナトリウムの添加の前に、塩化金をCTABと反応させることによって合成された金/銀合金ナノ粒子の光学スペクトルを
図10に提供する。
図11で示されるように、ナノ合金粒子中の銀含有量が増加すると、λ
maxにおける線形青色シフトが得られ、ナノ合金粒子中の金含有量が増加すると、赤色シフトが得られる。
【0092】
CHAPSでキャップされた金/銀ナノスターを調製するために、硝酸銀およびクエン酸三ナトリウムの添加の前に塩化金をCHAPSに添加した。ナノスターの形成は、アスコルビン酸、CHAPSおよびクエン酸三ナトリウムを含有する還元溶液の添加によって誘導された。CHAPSでキャップされた金/銀ナノスターの光学スペクトルを
図13に示す。λ
maxは、特定の銀濃度まで赤色シフトし、次いで、その後、青色シフトした。したがって、反応媒体中の金対銀の比率を変化させることによって、異なる径のナノスターが製造された。
【0093】
次の方法を使用して、抗体をナノスターまたはナノ合金に付加した。適切な体積のナノスターまたはナノ合金溶液を、適切なg力で遠心分離した。上清を慎重に除去し、等体積の1%CHAPSで置き換えた。水中で1:20に希釈し、λmaxにおけるスペクトルおよびODを読んだ。2mlのマイクロチューブ中、水、0.5Mボレート(pH9.2)、1%のCHAPS、ステップ1からの洗浄ナノスター/ナノ合金および所望の抗体を、その順番で添加した。CHAPSの最終濃度が0.1%であり、ボレートが0.05~0.1Mであり、粒子ODが1mlあたり2であり、かつ抗体濃度が1~10μg/ODであるように、溶液の量は調整された。5~10分のインキュベーション後、等体積のコンジュゲート希釈剤CG(3xPBS、1%のBSA、2%のCHAPSおよび0.1%のアジ化ナトリウム)を添加して、十分に混合した後、10分間、5000gにおいて遠心分離し、上清を除去し、コンジュゲートを、最初の体積まで、コンジュゲート希釈剤CG中で再び懸濁させた。遠心分離ステップを1回繰り返し、そして最終ペレットを、コンジュゲート希釈剤CGの最初の体積の1/5で再び懸濁させた。1:10希釈のODスペクトルを読んだ。この時点で、コンジュゲートは、イムノアッセイでの治療または使用に使用可能である。文献で知られるように、抗体は、抗体をナノ粒子の希釈溶液に添加することによって、合成されたままのナノ粒子に付加される。
【0094】
図12は、金および金/銀(50%/50%等モル)合金ナノ粒子によるマウスIgGコンジュゲートの免疫反応性を示す。金または合金粒子上へのマウスIgGの受動的吸着によって合成されたコンジュゲートは、側方流動ニトロセルロースストリップにおいてストリップされたプロテインAとの反応性に関して試験された。
【0095】
金/銀ナノスターは、銀の不在下で製造された金のみのナノ粒子と比較して、マウスIgGの結合時に赤色へのより大きいピークシフトを示した。金のみのナノ粒子へのマウスIgGの結合時の赤色へのピークシフトは
図14に示され、約37.5%の銀の存在下で製造された金/銀ナノスターへのマウスIgGの結合時の赤色へのより大きいピークシフトは
図15に示される。
【0096】
いくつかの実施形態において、遠心分離条件、イオン強度、pHおよび抗体対ナノ材料比は、それぞれの種類の抗体-ナノ材料の組合せに関して最適化されてよい。共有結合を使用するコンジュゲーションのための別の方法は、当業者に周知である。
【0097】
開示された発明は、変更可能である記載された特定の方法論、プロトコルおよび材料に限定されないことは理解される。また、本明細書で使用された専門用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのためであり、かつ添付の請求の範囲によってのみ限定されるであろう本発明の範囲を制限するように意図されないことも理解される。
【0098】
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの同等物を認識するか、またはルーチンな実験を使用して確認することができるであろう。そのような同等物は、次の請求の範囲によって包括されるように意図される。
工程(a)が、分光光度法キュベット、分析用ローター、マイクロウェルプレート、臨床分析器、フローチャンバー、光ファイバーの先端上または透明ゲルにおいて実行される、請求項1に記載の方法。
生体高分子が、抗体またはその断片、抗原、レセプター、リガンド、ポリヌクレオチド、アプタマー、ポリペプチド、ポリサッカライド、リポポリサッカライド、グリコペプチド、リポタンパク質または核タンパク質から選択される、請求項9に記載の方法。
細菌性抗原が、エーリキア・カニス(Ehrlichia canis)、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chafeensis)、エーリキア・エウィンギイ(Ehrlichia ewingii)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、アナプラズマ・プラティス(Anaplasma platys)、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム(Anaplasma phagocytophilum)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)、またはリケッチア・リケッチア(Rickettsia rickettsia)である、請求項16に記載の方法。
工程(a)の混合が、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールおよびポリアスパラギン酸から選択されるポリマー材料の存在下で実行される、請求項1に記載の方法。
第1の検出コンジュゲートと、前記分析物と、第2の検出コンジュゲートとの複合体を、紫外-可視-赤外スペクトル内の波長範囲において光源に曝露するように構成されている、請求項25に記載の分析物検出デバイス。