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特開2023-130386糖化タンパク質センサ、測定方法、プログラム及びセンサの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130386
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】糖化タンパク質センサ、測定方法、プログラム及びセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/40 20060101AFI20230912BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20230912BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230912BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20230912BHJP
   C12Q 1/00 20060101ALI20230912BHJP
   C12Q 1/26 20060101ALI20230912BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C12M1/40 B
G01N27/416 336G
G01N33/50 Z
G01N33/483 F
C12Q1/00 C
C12Q1/26
C12Q1/37
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103032
(22)【出願日】2023-06-23
(62)【分割の表示】P 2020519938の分割
【原出願日】2019-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2018095919
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】516089522
【氏名又は名称】株式会社PROVIGATE
(74)【代理人】
【識別番号】100174252
【弁理士】
【氏名又は名称】赤津 豪
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 成史
(72)【発明者】
【氏名】西 光海
(72)【発明者】
【氏名】片山 憲和
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 雄弥
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い精度での測定、および迅速な測定が可能な糖化タンパク質センサを提供する。
【解決手段】固定化されたプロテアーゼと、固定化されたケトアミンオキシダーゼと、過酸化水素検出部と、を備える糖化タンパク質センサとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定化されたプロテアーゼと、
固定化されたケトアミンオキシダーゼと、
過酸化水素検出部と、
を備える糖化タンパク質センサ。
【請求項2】
前記固定化されたケトアミンオキシダーゼは前記過酸化水素検出部に近接して配置された、
請求項1に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項3】
前記固定化されたプロテアーゼは前記固定化されたケトアミンオキシダーゼに近接して配置された、
請求項2に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項4】
測定対象である液体を収容する液体収容部を更に備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項5】
前記液体収容部の容積は100μL以下である、
請求項4に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項6】
過酸化水素検出部と、
前記過酸化水素検出部上に配置され、固定化されたプロテアーゼと固定化されたケトアミンオキシダーゼとを含む酵素層と、
を備える糖化タンパク質センサ。
【請求項7】
前記酵素層は、固定化されたプロテアーゼを含むプロテアーゼ層と固定化されたケトアミンオキシダーゼを含むケトアミンオキシダーゼ層とを積層して有する、
請求項6に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項8】
前記ケトアミンオキシダーゼ層と前記プロテアーゼ層とは、前記過酸化水素検出部に近い方から、前記ケトアミンオキシダーゼ層、前記プロテアーゼ層の順に積層されている、
請求項7に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項9】
前記ケトアミンオキシダーゼ層は、第一のケトアミンオキシダーゼ層と第二のケトアミンオキシダーゼ層とを含み、
前記第一のケトアミンオキシダーゼ層と前記プロテアーゼ層と第二のケトアミンオキシダーゼ層とがこの順に積層されている、
請求項7に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項10】
前記酵素層は、固定化されたケトアミンオキシダーゼを含むケトアミンオキシダーゼ層と、前記ケトアミンオキシダーゼ層の前記過酸化水素検出部に対して反対側の面に固定化されたプロテアーゼとを備える、
請求項6に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項11】
前記過酸化水素検出部と前記酵素層との間に配置されたイオン交換樹脂を更に備える、
請求項6から10のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項12】
前記固定化されたプロテアーゼは、前記固定化されたケトアミンオキシダーゼから離れて配置された、
請求項1に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項13】
前記固定化されたプロテアーゼを収容するプロテアーゼ収容部と、
前記固定化されたケトアミンオキシダーゼを収容し、前記プロテアーゼ収容部と流体連結されたケトアミンオキシダーゼ収容部と、
前記プロテアーゼ収容部から前記ケトアミンオキシダーゼ収容部に液体を送る送液機構と、
を備える、
請求項12に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項14】
前記プロテアーゼ部及び/又は前記ケトアミンオキシダーゼ部を加熱するヒータを更に備える、
請求項12又は13に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項15】
前記プロテアーゼ収容部を加熱するプロテアーゼ用ヒータを更に備える、
請求項12又は13に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項16】
前記プロテアーゼ用ヒータは、前記プロテアーゼ収容部を、40℃以上に加熱するように構成された、
請求項15に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項17】
前記プロテアーゼ収容部又はプロテアーゼの温度を測定するプロテアーゼ用温度センサを更に備える、
請求項15又は16に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項18】
前記プロテアーゼ用温度センサからの情報に基づいて、前記プロテアーゼ用ヒータの発熱量を制御する温度制御機構を更に備える、
請求項15から17のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項19】
前記ケトアミンオキシダーゼ収容部を加熱するケトアミンオキシダーゼ用ヒータを更に備える、
請求項15から18のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項20】
前記ケトアミンオキシダーゼ用ヒータは、前記ケトアミンオキシダーゼ収容部を、40℃以下の温度で加熱するように構成された、
請求項19に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項21】
前記ケトアミンオキシダーゼ収容部又はケトアミンオキシダーゼの温度を測定するケトアミンオキシダーゼ用温度センサを更に備える、
請求項19又は20に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項22】
前記ケトアミンオキシダーゼ用温度センサからの情報に基づいて、前記ケトアミンオキシダーゼ用ヒータの発熱量を制御する温度制御機構を更に備える、
請求項19から21のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項23】
前記プロテアーゼ収容部と前記ケトアミンオキシダーゼ収容部との間に、双方に流体連結されて配置され、冷却機構を備える冷却部を更に備える、
請求項15から22のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項24】
被験物質を含む溶液の上流方向から、
前記固定化されたプロテアーゼ、
前記固定化されたケトアミンオキシダーゼ、
前記過酸化水素検出部、
の順に配置された、
請求項1に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項25】
前記プロテアーゼは基材に固定されている、
請求項24に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項26】
前記プロテアーゼはビーズに固定されている、
請求項25に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項27】
前記過酸化水素検出部は過酸化水素電極を含む、
請求項1から26のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項28】
過酸化水素検出器は光検出器を含む、
請求項1から26のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項29】
過酸化水素検出器は、過酸化水素と反応する発光試薬と光検出器とを含む、
請求項1から26のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項30】
第一の固定化されたプロテアーゼと、
第一の固定化されたケトアミンオキシダーゼと、
第一過酸化水素検出部と、
を備える第一センサと、
第二の固定化されたケトアミンオキシダーゼと、
第二過酸化水素検出部と、
を備える第二センサと、
を備える糖化タンパク質センサ。
【請求項31】
第一過酸化水素検出部と、
前記第一過酸化水素検出部上に配置され、固定化されたプロテアーゼと固定化されたケトアミンオキシダーゼとを含む第一酵素層と、
第二過酸化水素検出部と、
前記第二過酸化水素検出部上に配置され、実質的に前記固定化されたケトアミンオキシダーゼからなる酵素を含む第二酵素層と、
を備える糖化タンパク質センサ。
【請求項32】
前記第一過酸化水素検出部と前記第二過酸化水素検出部とは過酸化水素電極を含む、
請求項31に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項33】
前記第一過酸化水素検出部は、第一作用極と、対極及び参照極の一方とを備え、
前記第二過酸化水素検出部は、第二作用極と、対極及び参照極の他方とを備える、
請求項32に記載の糖化タンパク質センサ
【請求項34】
前記対極に電位を印加し、前記第一作用極に流れる電流と前記第二作用極に流れる電流とを測定する電流測定回路を更に備える、
請求項32又は33に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項35】
前記糖化タンパク質は糖化アルブミンを含む、
請求項1から34のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項36】
アルブミンセンサを更に備える、
請求項35に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項37】
糖化タンパク質を含む測定溶液を用意することと、
前記測定溶液を固定化されたプロテアーゼに導入することと、
前記固定化されたプロテアーゼを用いて、前記糖化タンパク質を断片化してペプチド断片を生成することと、
固定化されたケトアミンオキシダーゼを用いて、前記ペプチド断片のうち、糖化されたアミノ酸残基を含むペプチド断片から、過酸化水素を発生させることと、
過酸化水素検出器を用いて、前記ケトアミンオキシダーゼにより発生した前記過酸化水素を検出すること、
を備える、糖化タンパク質の測定方法。
【請求項38】
固定化されたプロテアーゼと、
固定化されたケトアミンオキシダーゼと、
過酸化水素検出部と、
を備える糖化タンパク質センサを用意することと、
糖化タンパク質を含む測定溶液を用意することと、
前記測定溶液を前記糖化タンパク質センサに導入することと、
前記糖化タンパク質センサを用いて前記測定溶液中の前記糖化タンパク質を検出すること、
を備える、糖化タンパク質の測定方法。
【請求項39】
前記過酸化水素検出部からの出力信号と関連付けられた糖化タンパク質の濃度を求めることを更に備える、
請求項38に記載の、糖化タンパク質の測定方法。
【請求項40】
前記糖化タンパク質は、糖化アルブミン又は糖化ヘモグロビンであって、
前記方法は、
アルブミンの濃度又はヘモグロビンの濃度を求めることと、
前記糖化アルブミンの濃度又は前記糖化ヘモグロビンの濃度と、前記アルブミンの濃度又は前記ヘモグロビンの濃度との比率である糖化アルブミン値又は糖化ヘモグロビン値を求めることと、
を更に備える、
請求項38又は39に記載の、糖化タンパク質の測定方法。
【請求項41】
1週間、2週間、3週間、4週間又は1か月ごとに、ユーザに対して糖化タンパク質濃度の測定を行うべきことを報知すること、
を更に備える、
請求項38から40のいずれか一項に記載の、糖化タンパク質の測定方法。
【請求項42】
前記アルブミンの濃度又はヘモグロビンの濃度を求めることと、
前記糖化アルブミンの濃度又は前記糖化ヘモグロビンの濃度と、前記アルブミンの濃度又は前記ヘモグロビンの濃度との比率である糖化アルブミン値又は糖化ヘモグロビン値を求めることと、
を繰り返して行うことを更に備える、
請求項38から41のいずれか一項に記載の、糖化タンパク質の測定方法。
【請求項43】
複数回の前記アルブミンの濃度又は前記ヘモグロビンの濃度との比率から、平均血糖値を換算して求めることを更に備える、
請求項42に記載の、糖化タンパク質の測定方法。
【請求項44】
請求項38から41のいずれか一項に記載の測定方法に含まれる各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項45】
前記糖化タンパク質は糖化アルブミンを含む、
請求項41から44のいずれか一項に記載の、糖化タンパク質の測定方法。
【請求項46】
第一過酸化水素検出部と、
前記第一過酸化水素検出部上に配置され、固定化されたプロテアーゼと固定化されたケトアミンオキシダーゼとを含む第一酵素層と、
前記第二過酸化水素検出部上に配置され、実質的に前記固定化されたケトアミンオキシダーゼからなる酵素を含む第二酵素層と、
を備える糖化タンパク質センサを用意することと、
糖化タンパク質を含む測定溶液を前記糖化タンパク質センサに導入することと、
前記第一過酸化水素検出部からの出力信号と、前記第二過酸化水素検出部からの出力信号とから、これらの出力信号と関連付けられた糖化タンパク質の濃度を求めること、
を備える、糖化タンパク質の測定方法。
【請求項47】
基板を用意することと、
前記基板上に過酸化水素検出部を配置することと、
前記基板上にケトアミンオキシダーゼを固定化することと、
前記基板上にプロテアーゼを固定化することと、
を備える、糖化タンパク質センサの製造方法。
【請求項48】
前記基板上にケトアミンオキシダーゼを固定化することは、前記過酸化水素検出部上にケトアミンオキシダーゼを固定化することを含み、
前記基板上にプロテアーゼを固定化することは、前記過酸化水素検出部上にプロテアーゼを固定化することを含む、
請求項47に記載の、糖化タンパク質センサの製造方法。
【請求項49】
前記過酸化水素検出部上にケトアミンオキシダーゼを固定化することは、第一基材にケトアミンオキシダーゼが固定されたケトアミンオキシダーゼ層を形成することを含み、
前記過酸化水素検出部上にプロテアーゼを固定化することは、前記ケトアミンオキシダーゼ層上に、第二基材にプロテアーゼが固定されたプロテアーゼ層を形成することを含む、
請求項48に記載の製造方法。
【請求項50】
前記過酸化水素検出部上にケトアミンオキシダーゼを固定化することは、前記プロテアーゼ層上に、第三基材にケトアミンオキシダーゼが固定された第二のケトアミンオキシダーゼ層を形成することを更に含む、
請求項49に記載の製造方法。
【請求項51】
前記過酸化水素検出部上にケトアミンオキシダーゼを固定化することと、前記過酸化水素検出部上にプロテアーゼを固定化することとは、前記過酸化水素検出部上に、前記ケトアミンオキシダーゼと前記プロテアーゼとが共通基材に固定された同一の酵素層を形成することを含む、
請求項48に記載の製造方法。
【請求項52】
基板を用意することと、
前記基板上に第一過酸化水素検出部と第二過酸化水素検出部とを形成することと、
前記第一過酸化水素検出部上に、第一ケトアミンオキシダーゼとプロテアーゼとを固定することと、
前記第二過酸化水素検出部上に、第二ケトアミンオキシダーゼを固定することと、
を備える、
糖化タンパク質センサの製造方法。
【請求項53】
前記基板を用意することは、第一基板と第二基板とを用意することを備え、
前記基板上に第一過酸化水素検出部と第二過酸化水素検出部とを形成することは、前記第一基板上に第一過酸化水素検出部を形成し、前記第二基板上に第二過酸化水素検出部を形成することを備え、
本体基板を用意することと、
前記本体基板上に、前記第一基板と前記第二基板とを接合することと、
を更に備える、
請求項52に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、糖化タンパク質センサ、測定方法、プログラム及びセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病の診断や血糖コントロールの管理指標として、糖化タンパク質の測定が行われている。一例として、糖化ヘモグロビンと糖化アルブミンは、臨床の現場で頻繁に測定されている。糖化タンパク質の測定方法としては、電気泳動法、イオン交換クロマトグラフィー法、アフィニティクロマトグラフィー法、免疫法、酵素法が知られているが、正確でありながら簡便かつ迅速な測定が望まれることから、近年は酵素法が主流となっている。
【0003】
一般的な酵素法による糖化タンパク質の測定方法は、まず、第一ステップでプロテアーゼによりタンパク質をアミノ酸に分解し、第二ステップでそれらアミノ酸のうち糖化したアミノ酸のみをケトアミンオキシダーゼを作用させて過酸化水素を発生させ、第三ステップでその過酸化水素を発色反応に変換して吸光度を測定する。
【発明の概要】
【0004】
従来の糖化タンパク質測定法においては、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼの共存によって酵素どうしの分解反応が生じるため、高い精度での測定が困難であった。また、従来の糖化タンパク質測定法では、測定のための工程が複数に渡るため、迅速な測定が困難であるとともに、検査担当者の手技によって測定誤差が生じやすい問題があった。
【0005】
本開示の一実施形態によれば、糖化タンパク質又はフルクトサミンセンサは、固定化されたプロテアーゼと、固定化されたケトアミンオキシダーゼと、過酸化水素検出部と、を備える。
【0006】
被験試料は、溶液であってもよい。溶液は、体液でもよく、体液由来の溶液でもよく、体液の希釈液であってもよい。溶液は、体液でない(非体液由来)溶液でもよく、体液又は体液由来の溶液と非体液由来の溶液の混合液であってもよい。溶液は、サンプル測定に使用される溶液であってもよく、校正用の測定に使用される溶液であってもよい。例えば、溶液は、標準液や校正液であってもよい。
【0007】
「体液」は、血液、血清、血漿、リンパ液であってもよく、組織間液、細胞間液、間質液などの組織液であってもよく、体腔液、漿膜腔液、胸水、腹水、心嚢液、脳脊髄液(髄液)、関節液(滑液)、眼房水(房水)であってもよい。体液は、唾液、胃液、胆汁、膵液、腸液などの消化液であってもよく、汗、涙、鼻水、尿、精液、膣液、羊水、乳汁であってもよい。体液は、動物の体液であってもよく、ヒトの体液であってもよい。「体液」は、動物由来のタンパク質を含む食品中の液体(牛乳、乳製品など)であってもよい。体液は、植物の体液、植物生体液、又は植物由来の液体であってもよい。例えば、体液は植物の果汁、密、樹液であってもよい。「体液」は溶液であってもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、溶液は生理緩衝液を含んでいてもよい。溶液は、測定対象物を含んでいてもよい。緩衝液は、いわゆるグッドバッファと呼ばれる緩衝液であってもよい。緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)やN-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸緩衝液(TES)を含んでいてもよい。緩衝液は、2-モルホリノエタンスルホン酸(MES)、3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPSO)、ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-プロパンスルホン酸)二水和物(POPSO)、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)、ピペラジン―1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)一ナトリウム(PIPES)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、コラミン塩酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)―2-アミノエタンスルホン酸(BES)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸ナトリウム(HEPES-Na)、アセトアミドグリシン、トリシン、グリシンアミド、ビシン、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis-Tris)、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、N-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ―3-アミノプロパンスルホン酸(CAPSO)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)、3-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]―2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸(HEPPS)、2-ヒドロキシ-3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル] プロパンスルホン酸一水和物(HEPPSO)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、及び2-ヒドロキシ-N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPSO)のいずれか一つ又は混合液を含んでいてもよい。
【0009】
溶液は、測定対象物質を含んでいてもよい。例えば、溶液は涙であって、測定対象物質は涙中に含まれるグリコアルブミンであってもよい。あるいは、測定対象物は、血液又は血清中のアルブミン、グリコアルブミン、ヘモグロビン、グリコヘモグロビンであってもよく、間質液中のアルブミン、グリコアルブミンであってもよく、涙中のアルブミン、グリコアルブミンであってもよく、尿中のアルブミン、グリコアルブミンであってもよく、唾液中のアルブミン、グリコアルブミンであってもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、センシングする対象は、フルクトサミンであってもよい。いくつかの実施形態では、センサは、フルクトサミンセンサであってもよい。フルクトサミンは、糖化タンパク質であってもよく、糖化ペプチドであってもよく、糖化アミノ酸であってもよい。糖化タンパク質は、糖化アルブミンであってもよく、糖化ヘモグロビンであってもよい。糖化タンパク質は、AGE(Advanced Glycation End Products、終末糖化産物、後期糖化生成物)であってもよい。いくつかの実施形態では、センシングする対象は、糖化脂質であってもよい。
【0011】
「固定化」は、酵素(プロテアーゼ、ケトアミンオキシダーゼ)などを基板もしくは基材に対して固定化することを意味する。これらの酵素は、基板に対して固定された基材に固定化されていてもよい。いくつかの実施形態では、酵素はデバイス本体、流路内壁、チャンバ又は収容部の壁面に対して直接的又は間接的に固定されていてもよい。酵素は、固定化を目的として部材を介して固定対象に対して固定化されていてもよい。酵素は、固定化を本来の目的としない一つ又は複数の部材を介して固定対象に対して固定されていてもよい。いくつかの実施形態では、酵素が固定化された固定対象は、デバイス本体等に対して実質的に移動可能であってもよい。例えば、酵素はビーズに固定され、当該ビーズは溶液の移動とともに、流路に対して移動可能であってもよい。
【0012】
固定化方法としては、例示的には、共有結合法、物理吸着法、イオン結合法、架橋法、包括法、生物化学的特異結合法などがある。使用される酵素に応じて、酵素が失活しないような固定化方法が選択されてもよく、複数の固定化方法を組み合わして用いてもよい。いくつかの実施形態では、基材としてタンパク質を用い、これに酵素を混ぜ合わせてからグルタルアルデヒドなどの架橋剤で固化してもよい。これにより、比較的高価な酵素を用いてもコストを低減することができる。いくつかの実施形態は、フッ素系樹脂、水硬性樹脂、光硬化性樹脂、固体高分子電解質、ポリイオンコンプレックスを用いて固定化してもよく、ナイロン、エチルセルロース、アセチルセルロース、ポリスチレンなどの水に不溶性の半透膜を用いて酵素を閉じ込めてもよく、リン脂質を用いてリポソームや逆ミセル中に閉じ込めてもよい。
【0013】
基材を基板に固定するために、シランカップリング剤などの接着剤を用いてもよい。接着剤は、基板と基材の間に層(シランカップリング層)として形成してもよい。過酸化水素検出部とその上の層とは、例えば接合剤を介して接合されていてよい。接合剤は、本開示の測定原理を実質的に阻害しない限りにおいて様々なものを用いてよい。接合剤は例えば、無機材料と有機材料を接合する材料を含んでいてもよい。接合剤は、例えばシランカップリング剤でもよい。シランカップリング剤は例示的に以下が挙げられる。
ビニル系:ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、7-オクテニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、4-ビニルフェニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、5-(トリエトキシシリル)-2-ノルボルネン;
スチリル系:p-スチリルトリメトキシシラン;
メタクリル系:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3-メタクリロキシプロピルトリアリルシラン、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン;
アクリル系:3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリアリルシラン;
エポキシ系:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン;
アミノ系:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、N-6-(アミノヘキシル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジメチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス[3-(トリメトキシシリル)-プロピル]アミン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩;
ウレイド系:3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン;
アジド系:11-アジドウンデシルトリメトキシシラン;
イソシアネート系:3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン;
イソシアヌレート系:トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート;
メルカプト系:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン;
又は、酸無水物:3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物。
【0014】
基板は、SiOを主成分として含有していてもよく、ガラス基板でもよい。基板は、高分子又は樹脂を含んでいてもよい。基板は透明高分子材料を含んでいてもよい。基板は例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー(COP)などの樹脂材料を含んで構成されていてもよい。基板は、透明基板でもよく、不透明基板でもよい。基板は、柔軟性のある(フレキシブル)基板でもよい。基板は、サファイア基板でもよい。
【0015】
基材の主成分は、高分子であってもよい。基材の主成分は、生体高分子であってもよく、有機高分子であってもよく、無機高分子であってもよい。例えば、基材は、シリカゲル、ガラス、アルミナ、モレキュラーシーブ、セライト、木炭、などの多孔質の無機材料、カオリナイト、セラミック、ヒドロキシアパタイトなどの陶磁性物質、ベントナイトなどの粘土質、酸性白土、ポリアクリルアミドゲル、ポリビニルアルコール樹脂、ウレタンポリマー、シリコーン樹脂、スチレン樹脂、パーフルオロスルホン酸樹脂、漆、セルロース、アガロース(寒天)、アルギン酸、カラギーナンなどの多糖類、コラーゲン(膠やゼラチン)、キチン、キトサン、ポリペプチド、ポリリジンであってもよく、含んでいてもよい。
【0016】
基材の主成分は、タンパク質であってもよい。基材の主成分は、ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin、BSA)であってもよい。基材をタンパク質で構成する場合には、一般的に、架橋剤を用いて、酵素と基材のタンパク質を架橋して固定化する。基材の主成分となるタンパク質と架橋剤とを併せて「基材」と呼んでもよい。架橋剤は、感光硬化性樹脂、水硬化性樹脂、又は熱硬化性であってもよい。架橋剤は、グルタルアルデヒドなどの二官能基性の試薬であってもよい。架橋剤は、ホルムアルデヒドであってもよく、グリオキサールやマロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、及びグルタルアルデヒドから選ばれる二官能基性の試薬であってもよい。
【0017】
基材の主成分は、イオンマトリックスであってもよく、ポリイオンコンプレックス(以下単にイオンコンプレックスと呼ぶ。)であってもよい。ポリアニオンとポリカチオンを水溶液中で混合することにより、強い静電相互作用によるポリイオンコンプレックスが形成される。イオンマトリックスは、静電的に基板に固定されてもよい。イオンマトリックスは、静電的に酵素をマトリックス内に閉じ込めることができる。例えばポリアミノ酸などの反対電荷(カチオンとアニオン)の高分子を混合することで静電相互作用によって複合体を形成し、その中に酵素などを閉じ込めることができる。イオンマトリックスは、酵素に直接結合しないため、酵素の活性低下を低減又は回避することができる。イオンマトリックスは、架橋法で失活してしまう酵素に用いてもよい。
【0018】
基材は、ビーズであってもよい。ビーズは、カーボン微粒子(カーボンビーズ)であってもよく、シリカ(SiO)微粒子(シリカビーズ)であってもよい。ビーズは、高分子ビーズであってもよい。ビーズの材料は、キチン、キトサンやアルギン酸などの高分子多糖類であってもよい。ビーズは、金属微粒子や可磁化物質を含んだビーズであってもよく、磁性ビーズであってもよい。ビーズのサイズは、その平均粒径で10nm以上であってもよく、200nm以下であってもよい。酵素は、ビーズに対して架橋されてもよい。ビーズは、基板や他の基材に対して直接固定されていてもよく、基板や基材等に固定されなくても、所定の容積内に収容されるように配置されてもよい。ビーズは、デバイス本体に固定されずに、溶液の流れとともに移動可能であってもよい。ビーズは、それを収容する収容部に対して直接は固定されていなくても、その収容部から実質的に出ないように配置されていてもよい。これにより例えば、希釈液や洗浄液などで流し又はリンスして、不要な物質を除去しつつ、ビーズをその位置に維持できる。これにより例えば、繰り返し使用が可能になる。
【0019】
基材は、多孔質材料を含んでいてもよい。多孔質材料はセラミックスでもよく、カーボン材料であってもよい。基材は、ゼオライトであってもよい。基材は、金属有機構造体であってもよい。
【0020】
「プロテアーゼ」は一般に、タンパク質やポリペプチドを加水分解して異化する、ペプチド結合加水分解酵素の総称である。プロテアーゼは、タンパク質をペプチド断片に分解する酵素であってもよい。タンパク質が糖化されたアミノ酸残基を含む場合、プロテアーゼの作用によって生じたペプチド断片には、糖化されたアミノ酸残基を含むペプチド断片と、全く糖化されていないペプチド断片が存在し得る。
【0021】
「プロテアーゼ」は、動物由来のプロテアーゼであってもよく、植物由来のプロテアーゼであってもよく、微生物由来のプロテアーゼであってもよい。プロテアーゼは、エキソペプチダーゼであってもよく、エンドペプチダーゼであってもよい。プロテアーゼは、アスパルティックプロテアーゼ、金属プロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、又はチオールプロテアーゼであってもよい。
【0022】
「プロテアーゼ」は、複数のタイプ又は種類のプロテアーゼを含んでいてもよく、一つのタイプ又は種類のプロテアーゼを含んでいてもよい。例えばプロテアーゼは、プロテイナーゼとペプチダーゼとの一方を含んでいてもよく、両方を含んでいてもよい。複数のプロテアーゼを混合することで、分解効率を上げられる場合がある。プロテアーゼは、改変型プロテアーゼ又は改変されたプロテアーゼを含んでいてもよい。プロテアーゼは添加剤とともに使用してもよい。添加剤は、例えば、界面活性剤、尿素であってもよい。添加剤は、非限定的に例えば、タンパク質を不安定化又は変性させることができる。改変型プロテアーゼや添加剤の使用により、非限定的に例えば、タンパク質の分解効率や基質の選択性を向上することができる。
【0023】
動物由来のプロテアーゼは、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、エラスターゼ、牛膵臓プロテアーゼ、カテプシン、カルパイン、プロテアーゼタイプ-I、プロテアーゼタイプ-XX、アミノペプチダーゼN、カルボキシペプチダーゼ、パンクレアチン(プロテアーゼやアミラーゼなど複数の酵素の混合物)などであってもよい。
【0024】
植物由来のプロテアーゼは、パパイン、ブロメライン、ジンギパイン、カリクレイン、フィシン、キモパパイン、アクチニジン、カルボキシペプチターゼWなどであってもよい。
【0025】
微生物由来のプロテアーゼは、バチルス(Bacillus)属(又は由来、以下同様)、ゲオバチルス(Geobacillus)属、とパエニバチルス(Paenibacillus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリウム(Penicillium)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、リソバクター(Lysobacter)属、酵母(Yeast)由来、トリチラチウム(Tritirachium)属、サーマス(Thermus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、リゾプス(Rhizopus)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属などのプロテアーゼであってもよい。
【0026】
プロテアーゼは、例えば吸光度測定によるタンパク質の消化又は分解効率に基づいて選択されてもよい。いくつかの実施形態では、アルブミン(HSA)の分解の前後の吸光度の差が100mAbs以上のプロテアーゼが用いられてもよい。アルブミン(HSA)の分解の前後の吸光度の差が90mAbs以上であってもよい。アルブミン(HSA)の分解の前後の吸光度の差が110mAbs以上であってもよい。
【0027】
プロテアーゼは、プロテアーゼ―タイプXXIV、オリエンターゼ22BF、オリエンターゼ90N、トヨチームNEP-160、及びアルカロフィリックプロテアーゼからなる群から選ばれてもよい。プロテアーゼは、プロテアーゼ―タイプXXIV、オリエンターゼ22BF、オリエンターゼ90N、トヨチームNEP-160、及びアルカロフィリックプロテアーゼからなる群から選ばれてもよい。プロテアーゼは、プロナーゼ、プロテアーゼ-タイプXIVからなる群から選ばれてもよい。
【0028】
プロテアーゼは、中性プロテアーゼ、酸性プロテアーゼ、アルカリ性プロテアーゼのいずれかであってもよい。例えば、涙を測定する場合には、中性又は弱アルカリ性プロテアーゼを採用してもよい。プロテアーゼは、高温域(例えば60℃以上)でも活性を保つ耐熱性プロテアーゼ(例えばサーモリシン)であってもよい。プロテアーゼは、低温域(例えば30℃以下)でも活性を保つ低温活性プロテアーゼであってもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼは、センサ内に乾燥状態で配置されていてもよい。プロテアーゼは、非限定的に例えば、自然乾燥、フリーズドライ法又はスプレードライ法で形成されてもよい。いくつかの実施形態では、溶液に溶解した状態で配置されていてもよい。溶液に溶けたプロテアーゼは、使用まで冷却保存されてもよい。プロテアーゼは溶液ともに凍結され、使用時には溶かして使用されてもよい。プロテアーゼは、乾燥してはおらず水分を含んだ環境に保持されていてもよい。例えば、プロテアーゼは、ゲルの中に配置されていてもよい。
【0030】
「ケトアミンオキシダーゼ」は、糖化アミノ酸又は糖化されたアミノ酸残基を含むペプチド又はペプチド断片のケトアミン構造を認識し、糖化アミノ酸を酸化して、アミノ酸、グルコソン(α-ケトアルデヒド)及び過酸化水素を生じさせる酸化酵素である。したがって、ケトアミンオキシダーゼは、認識する糖化アミノ酸又は糖化されたアミノ酸残基を含むペプチド又はペプチド断片の量に比例する又は関連した量の過酸化水素を生成する。
【0031】
ケトアミンオキシダーゼは、デヒドロゲナーゼであってもよく、キナーゼであってもよく、オキシダーゼであってもよい。ケトアミンオキシダーゼは、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)、フルクトシルペプチドオキシダーゼ、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ、フルクトシルアミンオキシダーゼ、アマドリアーゼ、フルクトシルアミンデグリカーゼやそれらの改変型であってもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、ケトアミンオキシダーゼは、ε-アミノ基が糖化されたアミノ酸またはペプチドに作用するオキシダーゼであってもよい。アミノ酸は、リジンであってもよい。ε-アミノ基が糖化されたアミノ酸またはペプチドに選択的に作用するオキシダーゼを用いることで、グリコアルブミンセンサを構成することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、ケトアミンオキシダーゼは、α-アミノ基が糖化されたアミノ酸またはペプチドに作用するオキシダーゼであってもよい。アミノ酸は、バリンであってもよい。α-アミノ基が糖化されたアミノ酸またはペプチドに作用するオキシダーゼを用いることで、糖化ヘモグロビンセンサ又は糖化ヘモグロビンA1c(HbA1c)センサを構成することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、センサは検出部を備えていてもよい。検出部は過酸化水素検出部であってもよい。「過酸化水素検出部」(過酸化水素センサ)は、電気化学方式の電極であってもよく、過酸化水素電極であってもよい。過酸化水素電極は、対極、参照極、および作用極を有していてもよい。いくつかの実施形態では、検出部は、酸素を検出してもよい。例えば、酵素反応で減少する酸素の量又は濃度を検出してもよい。酸素検出は比較的、ノイズ源となる分子やイオンに対して感度が低く、干渉に強いと考えられている。酸素検出により、酸素の消費量を計測してもよい。涙は採取時に大気飽和になっているので、検出部は涙中の酵素のセンシングに使用してもよい。検出部は、複数の検出方法を選択的に又は組み合わせて行うことができるように構成されていてもよい。
【0035】
過酸化水素の検出は、光学式検出でもよい。光学式検出は、吸光度や発光の測定を含んでいてもよい。例えば、ペルオキシダーゼと4―アミノアンチピリンと発色剤を加えることで、酸化縮合により生じるキノン色素の色変化を、例えば透明基板の裏面から測定してもよい。いくつかの実施形態では、検出部は、発光試薬と光検出器を含んでいても良い。例えば、発光試薬としてルミノールを用いてもよい。ルミノールは粉末状で配置されてもよい。過酸化水素をルミノールと反応させ、ルミノール反応による発光(波長460nm)の強度を測定してもよい。試薬は更に、ヘキサシアノ鉄酸カリウムや水酸化ナトリウムなどを含んでいてもよい。ルミノール反応は、金電極、白金電極や酸化インジウムスズの透明電極(ITO電極)を用い、交流駆動する電気化学発光法で測定してもよい。その他蛍光反応を検出する場合には、シュウ酸エステルと蛍光物質の組合せを用いてもよく、ルシゲニン(アクリジニウム、ビス(N-メチルアクリジニウム))を用いてもよい。検出部は、それ以外の方式の過酸化水素センサであってもよい。
【0036】
「検出部上」とは、検出部の表面の一部の上部であってもよく、検出部の全体を覆うように配置されてもよい。また、基板上に形成された検出部上であってもよい。基板の表面全体を覆ってもよく、検出部上を覆いつつ基板の一部を覆っていてもよい。
【0037】
センサは、液体収容部を有していてもよい。液体収容部は、固定されたプロテアーゼと固定されたケトアミンオキシダーゼと検出部との一つ、二つ又はすべてを含んでいてもよい。液体収容部は長手方向に延在していてもよい。液体収容部の容積は、1mL、500μL、300μL、200μL、100μL、50μL、30μL、20μL、10μL、5μL、4μL、3μL、2μL、1μL、0.9μL、0.8μL、0.7μL、0.6μL、0.5μL、0.4μL、0.3μL、0.2μL、0.1μLの値以下又は未満であってもよい。液体収容部は、液体導入口を有していてもよい。液体収容部は、液体出口を有していても良い。液体収容部は、空気孔を有していてもよい。空気孔は、液体が液体収容部に導入される際に液体収容部にあった気体がセンサ外部に排出される機能を有していてもよい。
【0038】
本開示の糖化タンパク質センサ等による、例示的又は潜在的な作用効果を説明する。
プロテアーゼは、他のプロテアーゼを分解し得る。プロテアーゼはまた、(ケトアミン)オキシダーゼを分解し得る。固定されていないプロテアーゼは、液体内を拡散などで移動し、他のプロテアーゼやケトアミンオキシダーゼに遭遇し、それらを分解し得る。プロテアーゼの溶液は保存に適しておらず、固体のプロテアーゼを毎回秤量する必要がある。予めデバイス内にプロテアーゼを固定化することにより、測定手順を効率化することができる。固定化されたプロテアーゼは、繰り返し使用することができる。本発明のケトアミンオキシダーゼとプロテアーゼは固定化することにより、繰り返し測定が可能になり、1測定当たりのランニングコストを大幅に低減できる。測定間にデバイス内を洗浄してもよい。本開示の糖化タンパク質センサは小型化することができる。また、過酸化水素検出部とケトアミンオキシダーゼ固定化層が近接していると、過酸化水素の拡散距離が短くなり、過酸化水素と反応する体液中の干渉物質の影響を受け難くなる。ケトアミンオキシダーゼ、プロテアーゼの固定化層は、例えば1マイクロメートル(μm)以下の薄膜としてそれぞれ形成して過酸化水素掲出部上に形成すると、お互いが近接するため、高感度な測定が可能になる。さらに試薬としては高価な酵素の量が少なくても所定の感度を得られ、製造コストを低減することも可能になる。
【0039】
なお、上記に挙げた本開示の一または複数の特徴を任意に組み合わせた実施形態も本開示の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本開示の一実施形態に係るセンサの断面模式図
図2】本開示の一実施形態に係るセンサの断面模式図
図3】本開示の一実施形態に係るセンサの断面模式図
図4】本開示の一実施形態に係るセンサの断面模式図
図5】本開示の一実施形態に係るセンサの断面模式図
図6】本開示の一実施形態に係るセンサの断面模式図
図7】本開示の一実施形態に係るセンサの断面模式図
図8】本開示の一実施形態に係るセンサの断面模式図
図9】本開示の一実施形態に係るセンサの断面模式図
図10】本開示の一実施形態に係るセンサの断面模式図
図11】本開示の一実施形態に係るセンサの断面模式図
図12】本開示の一実施形態に係るセンサの断面模式図
図13】本開示の一実施形態に係るセンサの構成を示す模式図
図14】本開示の一実施形態に係るセンサの構成を示す模式図
図15】本開示の一実施形態に係るセンサの構成を示す模式図
図16】本開示の一実施形態に係るセンサの平面模式図
図17】本開示の一実施形態に係るセンサの構成を示す模式図
図18】本開示の一実施形態に係るセンサチップの平面模式図
図19】本開示の一実施形態に係るセンサチップの平面模式図
図20】本開示の一実施形態に係るセンサチップの平面模式図
図21】本開示の一実施形態に係るセンサチップの平面模式図
図22】本開示の一実施形態に係るセンサチップの平面模式図
図23A】本開示の一実施形態に係るセンサの製造工程を示す断面模式図
図23B】本開示の一実施形態に係るセンサの製造工程を示す断面模式図
図23C】本開示の一実施形態に係るセンサの製造工程を示す断面模式図
図23D】本開示の一実施形態に係るセンサの製造工程を示す断面模式図
図23E】本開示の一実施形態に係るセンサの製造工程を示す断面模式図
図23F】本開示の一実施形態に係るセンサの製造工程を示す断面模式図
図23G】本開示の一実施形態に係るセンサの製造工程を示す断面模式図
図23H】本開示の一実施形態に係るセンサの製造工程を示す断面模式図
図23I】本開示の一実施形態に係るセンサの製造工程を示す断面模式図
図24】本開示の一実施形態に係るセンサの一部の構成を示す模式図
図25】本開示の一実施形態に係るセンサの一部の構成を示す模式図
図26】各プロテアーゼの消化率を示すグラフ
図27】各プロテアーゼでのセンサ出力を示すグラフ
図28】プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼの動作の温度への依存性を示すグラフ
図29】センサ出力のグリコアルブミン濃度への依存性を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0041】
1.センサの構造
図1を用い、本開示の一実施形態に係る糖化タンパク質センサの構成について説明する。図1に示すセンサ100は、プロテアーゼ101とケトアミンオキシダーゼ102と過酸化水素検出部103を有している。プロテアーゼ101とケトアミンオキシダーゼ102は、基材であるウシ血清アルブミン105に架橋剤であるグルタルアルデヒド106により架橋されている。ウシ血清アルブミン105も互いに架橋されている。これらが固定化層104を形成している。固定化層104は、シランカップリング剤107により過酸化水素検出部103に対して繋がっている。これにより、プロテアーゼ101とケトアミンオキシダーゼ102とは、過酸化水素検出部103又はセンサ100全体に対して固定化されている。固定化層104とそれが固定するプロテアーゼ101とケトアミンオキシダーゼ102とを併せて酵素層111を形成している。
【0042】
センサ100に対して、糖化タンパク質151が導入される。糖化タンパク質151は、タンパク質152に糖153が結びついている構造をしている。糖化タンパク質151がプロテアーゼ101により分解されて、ペプチド断片が生じる。
【0043】
ペプチド断片には、糖化されたペプチド断片154と糖化されていないペプチド断片155とがある。これらのペプチド断片は、固定化膜104内を拡散していくと考えられる。糖化されたペプチド断片154がケトアミンオキシダーゼ102と反応すると、グルコソン(図示せず)と過酸化水素156が生じる。
【0044】
この過酸化水素156も固定化膜104内を拡散していくと考えられる。過酸化水素検出部103はこの過酸化水素156を検出し、その濃度に関連した信号を出力する。
【0045】
過酸化水素検出部103が過酸化水素電極である場合には、過酸化水素電極で過酸化水素156が分解され、放出される電子が電流として検出される。この反応は以下のように記載することができる。
→ 2H + O + 2e
【0046】
過酸化水素156は過酸化水素電極103で消費される。したがって、固定化膜104中の過酸化水素156の濃度は、過酸化水素検出部103近傍で最も低く、過酸化水素検出部103から遠ざかるにしたがって上昇する。つまり、固定化膜104内には、過酸化水素156の濃度勾配が存在する。この濃度勾配は、測定開始直後に変化し、所定の時間後にほぼ安定する。この安定したときに、過酸化水素電極103が検出する過酸化水素156の濃度は、センサ100に導入される糖化タンパク質151の濃度に関連している。予め、糖化タンパク質151の濃度と過酸化水素電極103で発生する電流値との関連性を求める。実際の測定を行う際には、この較正に基づき、過酸化水素電極103で発生する電流値から、被検体溶液中の糖化タンパク質151の濃度を算定することができる。
【0047】
いくつかの実施形態によるセンサは、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼとが同じ基材に固定されていてもよい(一体型)。
【0048】
図2は、いくつかの実施形態(第二の実施形態)に係る一体型のセンサの構造を示している。センサ200は、プロテアーゼ201とケトアミンオキシダーゼ202と基材204と過酸化水素検出部203とを有している。プロテアーゼ201とケトアミンオキシダーゼ202とは基材204に固定化され、基材204は過酸化水素検出部203に固定化されている。図2に示すセンサ200では、同じ基材204が過酸化水素検出部203上に層又は膜として形成され、過酸化水素検出部203上にプロテアーゼ201とケトアミンオキシダーゼ202とが基材204に固定化されている酵素層211が形成されている。プロテアーゼ201とケトアミンオキシダーゼ202は、この同じ基材204中に固定化されている。
【0049】
図3は、いくつかの実施形態(第三の実施形態)に係るセンサの構造を示している。センサ300は、プロテアーゼ301とケトアミンオキシダーゼ302とこれらが固定化された基材304と基材304が固定化された過酸化水素検出部303とを有している。図3に示すセンサ300では、同じ基材304が過酸化水素検出部303上に層又は膜として形成され、過酸化水素検出部303上にプロテアーゼ301とケトアミンオキシダーゼ302とが基材304に固定化されている酵素層311が形成されている。図3に示すセンサ300は更に、基材304と過酸化水素検出部303との間に両者を接着する接着剤又は接合剤305を有している。この接合剤305はシランカップリング剤であってもよい。シランカップリング剤は、過酸化水素検出部303が電極のような金属(図示せず)をその表面に有する場合に、当該金属と有機材料からなる基材304とを比較的強固に接合することができる。
【0050】
図4は、いくつかの実施形態に係るセンサ(第四の実施形態)の構造を示している。センサ400は、プロテアーゼ401とケトアミンオキシダーゼ402とこれらが固定化された基材404,414と基材414が固定化された過酸化水素検出部403とを有している。より詳細には、過酸化水素検出部403上にケトアミンオキシダーゼ402を含む基材414の層(ケトアミンオキシダーゼ層412)が形成されている。このケトアミンオキシダーゼ層412の上に、つまり過酸化水素検出部403と反対側の面上に、プロテアーゼ401を含む基材404の層(プロテアーゼ層411)が形成されている。すなわち、過酸化水素検出部403上に、ケトアミンオキシダーゼ層412とプロテアーゼ層411とがこの順に積層されている。
【0051】
本開示のセンサでは、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼは、検出部上に積層されていてもよく、積層されていなくてもよい。いくつかの実施形態では、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼは、検出部に近接して配置されてもよく、検出部の近傍に配置されてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼ層、ケトアミンオキシダーゼ層又は酵素層の厚さは、100μm、50μm、20μm、10μm、1μm、500nm、300nm、250nm、200nm、100nm、50nmなどの値以下又は未満であってもよい。いくつかの実施形態では、プロテアーゼ層、ケトアミンオキシダーゼ層又は酵素層の厚さは、10nm、20nm、25nm、30nm、50nm、100nmなどの値以上又はより大きくてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態によるセンサは、ケトアミンオキシダーゼ部がプロテアーゼ部を包囲するように配置されていてもよい(包囲型)。
【0054】
図5は、いくつかの実施形態に係るセンサ(第五の実施形態)の構造を示している。センサ500は、プロテアーゼ501とケトアミンオキシダーゼ502とこれらが固定化された基材504,514と基材514が固定化された過酸化水素検出部503と基板506とを有している。より詳細には、基板506に過酸化水素検出部503が設けられている。過酸化水素検出部503上にケトアミンオキシダーゼ502が固定化された基材514(固定化ケトアミンオキシダーゼ部512)が形成されている。固定化ケトアミンオキシダーゼ部512を囲むように、プロテアーゼ501が固定化された基材504(固定化プロテアーゼ部511)が形成されている。換言すれば、基板506上で、実質的に過酸化水素検出部503が配置された部分に固定化ケトアミンオキシダーゼ部512が配置され、固定化ケトアミンオキシダーゼ部512と過酸化水素検出部503がない基板506の表面とを覆うように固定化プロテアーゼ部511が配置されている。このような構造により、ケトアミンオキシダーゼの固定化量と比較して、プロテアーゼの固定化量を相対的に大きくすることができる。これにより、例えば、大きな分子であるタンパク質のプロテアーゼによる分解又は消化が律速となる場合などに、センサの応答速度や検出感度などを向上することができる。
【0055】
酵素は基材内に固定化されてもよく、基材の外面に固定化されてもよい(直接接合型)。
【0056】
図6に示すセンサ600は、直接接合型であり、プロテアーゼ601とケトアミンオキシダーゼ602とこれらが固定化された過酸化水素検出部603とを有している。より詳細には、過酸化水素検出部603上にケトアミンオキシダーゼ602が固定された基材614(ケトアミンオキシダーゼ層612)が形成されている。プロテアーゼ601は、このケトアミンオキシダーゼ層612の上部面に架橋剤604により固定されている。図6のプロテアーゼ601は、基材614に固定されている。プロテアーゼ601はケトアミンオキシダーゼ602に架橋されていてもよい。
【0057】
図7は、過酸化水素電極を有するセンサ構造の一例を示している。図7では、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼの固定化の一例として、図4のような積層構造が示されている。しかし、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼの固定化の態様は、これに限定されず、上記例示的に説明したように、積層構造でも図7以外の構造でもよく、積層でない構造でもよい。
【0058】
図7に示すセンサ700は、絶縁基板706上に形成された過酸化水素電極730と、過酸化水素電極730上に配置されたケトアミンオキシダーゼ702とそれを固定する基材714(ケトアミンオキシダーゼ層712)と、ケトアミンオキシダーゼ層712上に配置されたプロテアーゼ701とそれを固定する基材704(プロテアーゼ層711)とを有している。過酸化水素電極730とケトアミンオキシダーゼ層712との間には、電極730の表面と基材714とを接着するシランカップリング剤705が塗布されている。
【0059】
図7に示す過酸化水素電極730は、三電極法用の電極であり、対極731と参照極732と作用極733とを有して構成されている。図7に示すセンサ700は更に、過酸化水素電極730に接続された電気回路770を有している。この電気回路770は、オペアンプ771と電圧発生回路772と電流測定回路773とを備えている。オペアンプの出力(OUT)は対極731に接続され、反転入力(-IN)は参照極732に接続され、非反転入力(+IN)は電圧発生回路772に接続されている。
【0060】
三電極法は、溶液や体液と接触するように対極、参照極および作用極を設置し、対極と作用極の間に所定の電位差を持たせ、対極から作用極に流れる電流を測定する方法である。一般的に、金属や金属酸化物などの物質が電解液に入ると、その物質と電解液の間に界面電位と呼ばれる電位差が生じる。この電位差までを考慮した上で、対極と作用極の間に電圧を印加すると、対極からが電流が流れ、対極と溶液の間の電位差が変化し得る。この電位差の変化により、所望の電圧が溶液に対して正確に加わらない場合がある。三電極法では、これを回避するために、参照極が対極の印加した電位を測定し、その電位が所望の値に定まるように、対極に印加する電圧を制御することができる。また、参照極で測定された電位を、対極を制御する回路に帰還(フィードバック)するフィードバック回路が存在する。
【0061】
2.夾雑物に起因するノイズの低減
溶液には、夾雑物が含まれ得る。例えば、体液中のタンパク質を測定する場合に、測定対象であるタンパク質以外のタンパク質、ペプチド断片、核酸、イオンなど種々の夾雑物により測定ノイズが生じる。これらの夾雑物によるノイズは、測定エラーや測定誤差の原因となる。したがって、本開示のいくつかの実施形態に係るセンサは、夾雑物の測定信号に与える影響を低減する構成を有していてもよい。
【0062】
<イオン交換樹脂を用いたノイズ低減>
いくつかの実施形態に係るセンサは検出器上にイオン交換樹脂を有していてもよい。
【0063】
図8に示すセンサ800は、過酸化水素電極803と、過酸化水素電極803上に配置されたケトアミンオキシダーゼ802とそれを固定する基材814(ケトアミンオキシダーゼ層812)と、ケトアミンオキシダーゼ層814上に配置されたプロテアーゼ801とそれを固定する基材804(プロテアーゼ層811)とを有している。図8に示すセンサ800は更に、ケトアミンオキシダーゼ層812と過酸化水素電極803との間にイオン交換樹脂807を有している。
【0064】
例えばナフィオン(登録商標)を初めとする陽イオン交換樹脂を用いて、体液内に存在するアスコルビン酸や尿酸、特にマイナスイオンなどが透過して検出部に到達することを抑制し又は妨ぐことができる。例えばポリピロールなどの陰イオン交換樹脂を用いて、ドーパミンなど、特にプラスイオンなどが透過して検出部に到達することを抑制し又は妨ぐことができる。
【0065】
イオン交換樹脂は、一つ、複数又は少なくとも一つの種類のイオン交換樹脂を含んでいてもよい。イオン交換樹脂は、一つ、複数又は少なくとも一つの種類の層を有して構成されていてもよい。
【0066】
図8では、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼの固定化の一例として、図4のような積層構造が示されている。しかし、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼの固定化の態様は、これに限定されず、上記例示的に説明したように、積層構造でも図8以外の構造でもよく、積層でない構造でもよい。
【0067】
<差分センサによるノイズ低減>
いくつかの実施形態に係るセンサでは、一対の又は一組の差動又は差分センサであってもよい。センサは、複数の対又は複数の組の差動又は差分センサを含んでいてもよい。この差分型のセンサが有する一組の差分センサは、メインセンサとサブセンサとを有して構成されていてもよい。メインセンサは、固定化されたプロテアーゼと固定化されたケトアミンオキシダーゼと検出部とを備える。サブセンサは、メインセンサが検出する主たる測定対象物質(被験物質)に対しては感度が低く、しかしノイズ原因となる分子に対してはメインセンサと実質的に同じ又は同様の感度を有している。
【0068】
一例として、センサとして体液中の糖化タンパク質を測定するためのセンサを考える。体液中には、被験物質であるタンパク質以外のタンパク質、ペプチド、ビタミンC、イオンなどが含まれている。例えばペプチド断片はケトアミンオキシダーゼが認識することで過酸化水素が発生する原因となる。また体液中のイオンは過酸化水素検出部により検出され得る。
【0069】
したがって、サブセンサは、これらを含むノイズ原因がメインセンサとほぼ同じ程度又はある関連性を有する態様で検出するようなセンサであってもよい。サブセンサは、例えば、メインセンサに対して、プロテアーゼを含んでおらず(プロテアーゼ非含有)、その他の構造がほぼ同じであってよい。例えば、サブセンサにおいては、基材と酵素とを含む部分の表面積や高さ寸法、基材の種類、製造方法などが、メインセンサのそれとほぼ同様であってもよい。メインセンサとサブセンサのプロテアーゼ以外の材料、構造、製法などは、同じでなくてもよい。その場合は、較正などで互いの関連性を求めればよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、差分センサのメインセンサとサブセンサの両方又は一方における過酸化水素検出器をイオン交換樹脂で覆ってもよく、過酸化水素検出器の表面にイオン交換樹脂の層又は膜を配置してもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、メインセンサの構成は、例えば図3のような酵素層一体型であってもよい。
【0072】
図9に係るセンサ1000は、酵素層一体型のメインセンサ1000aとサブセンサ1000bとを有している。
【0073】
図9に示すメインセンサ1000aは、図2又は図3のような酵素層一体型である。具体的には、メインセンサ1000aは、プロテアーゼ1001とケトアミンオキシダーゼ1002とこれらが固定化された基材1004と基材1004が固定化された過酸化水素検出部1003aとを有している。図9に示すメインセンサ1000aでは、同じ基材1004が過酸化水素検出部1003a上に層又は膜として形成され、過酸化水素検出部1003a上にプロテアーゼ1001とケトアミンオキシダーゼ1002とが基材1004に固定化されている酵素層1011aが形成されている。プロテアーゼ1001とケトアミンオキシダーゼ1002の酵素分子は、この同じ基材1004中に固定化されている。
【0074】
一方、図9に示すサブセンサ1000bは、メインセンサ1000aとほぼ同様の構成でプロテアーゼ1001を含んでいない(非含有)。具体的には、サブセンサ1000bは、メインセンサ1000aと同様のケトアミンオキシダーゼ1002と基材1014と過酸化水素検出部1003bとを有している。ケトアミンオキシダーゼ1002と基材1014とを有するサブセンサ1000bの酵素層1011bは、メインセンサの酵素層1011aとほぼ同じ寸法であってもよい。
【0075】
メインセンサ1000aとサブセンサ1000bの過酸化水素検出器1003a,1003bはそれぞれ測定用電気回路1070a,1070bに接続されている。これらの電気回路1070a,1070bは、各過酸化水素検出器1003a,1003bからの電流などの出力信号を受けて、その値をデジタルに変換してCPUなどの演算部1030に送る。いくつかの実施形態では、電気回路1070a,1070bから演算部1030への送信は、電気や光による有線でもよく、無線でもよい。
【0076】
演算部1030は、メインセンサ1000aとサブセンサ1000bからの信号につき差分などの演算を行ってもよい。メインセンサ1000aの出力信号から、サブセンサ1000bからの信号を基に夾雑物等のノイズに該当する出力を除去することにより、測定対象物質についての信号をより高い精度で検出することができる。演算部1030は、送信部を更に備えていてもよく(図示せず)、また外部の送信部に接続されていてもよい。送信部は信号を、光、電気又は電磁気的に、有線又は無線で送信することができる。送信する信号は、演算部1030で差分演算を行った後の信号でもよい。別の実施形態では、送信部は、メインセンサ1000aとサブセンサ1000bからの信号を個別に送信してもよい。送信先で、差分等の演算を行ってもよい。これらの演算部の構成又は機能は、本実施形態に限られず他の実施形態に適用されてもよい。演算部は、内部に記憶媒体を備えていてもよく、演算部の外部に配置された記憶媒体に接続され又は接続されるように構成されていてもよい。
【0077】
差分型センサにおいてメインセンサの構成は、例えば図4のような積層型であってもよい。
【0078】
図10に示すセンサ1100は、積層型のメインセンサ1100aとサブセンサ1100bとを有している。
【0079】
図10に示すメインセンサ1100aは、図4のような積層型である。図10に示すメインセンサ1100aは、プロテアーゼ1101とケトアミンオキシダーゼ1102とこれらが固定化された基材1104,1114と基材1114が固定化された過酸化水素検出部1103aとを有している。より詳細には、過酸化水素検出部1103a上にケトアミンオキシダーゼ1102を含む基材1114の層(ケトアミンオキシダーゼ層1112a)が形成されている。このケトアミンオキシダーゼ層1112aの上に、つまり過酸化水素検出部1103aと反対側の面上に、プロテアーゼ1101を含む基材1104の層(プロテアーゼ層1111a)が形成されている。すなわち、過酸化水素検出部1103a上に、ケトアミンオキシダーゼ層1112aとプロテアーゼ層1111aとがこの順に積層されている。
【0080】
いくつかの実施形態では、各層での基材に異なる材料を用いてもよい。例えば、ケトアミンオキシダーゼ層にはタンパク質を主成分とする基材を用い、プロテアーゼ層には光架橋性樹脂を主成分とする基材を用いてもよい。
【0081】
一方、図10に示すサブセンサ1100bは、メインセンサ1100aとほぼ同様の構成でプロテアーゼ1101やその基材1104を含んでいない、又は非含有である。具体的には、サブセンサ1100bは、センサ1100aと同様のケトアミンオキシダーゼ1102と基材1124と過酸化水素検出部1103bとを有している。ケトアミンオキシダーゼ1102と基材1124とを有するサブセンサ1100bの酵素層1112bは、メインセンサの酵素層1111a,1112b全体とほぼ同じ寸法であってもよい。
【0082】
メインセンサとサブセンサ間で酵素層の厚さが異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、サブセンサのケトアミンオキシダーゼ層の厚さは、メインセンサのケトアミンオキシダーゼ層の厚さと同じでもよい。各センサの膜厚は、同一又は異なる較正溶液を用いて得られる信号強度などの相関に基づいて調節してもよい。酵素の濃度や全体量は、メインセンサとサブセンサ間で同じであってもよく、異なっていてもよく、センサに応じて調整されてもよい。基材の材質も、メインセンサとサブセンサ間で同じでもよく、異なっていてもよい。
【0083】
メインセンサ1100aとサブセンサ1100bの過酸化水素検出器1103a,1103bはそれぞれ測定用電気回路1170a,1170bに接続されている。これらの電気回路1170a,1170bは、各過酸化水素検出器1103a,1103bからの電流などの出力信号を受けて、その値をデジタルでCPUなどの演算部1130に送る。
【0084】
いくつかの実施形態では、差分型センサにおいてメインセンサの構成は、例えば図5のような包囲型であってもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、差分型センサにおいてメインセンサの構成は、例えば図6のような直接接合型であってもよい。
【0086】
図11に示すセンサ1200は、直接接合型のメインセンサ1200aとサブセンサ1200bとを有している。
【0087】
図11に示すメインセンサ1200aは、図4のような直接接合型センサであり、プロテアーゼ1201とケトアミンオキシダーゼ1202とこれらが固定化された過酸化水素検出部1203aとを有している。より詳細には、過酸化水素検出部1203a上にケトアミンオキシダーゼ1202が固定された基材1214(ケトアミンオキシダーゼ層1212a)が形成されている。プロテアーゼ1201は、このケトアミンオキシダーゼ層1212aの上部面に架橋剤1204により固定されている。図11のプロテアーゼ1201は、基材1214に固定されている。プロテアーゼ1201はケトアミンオキシダーゼ1202に架橋されていてもよい。
【0088】
一方、図11に示すサブセンサ1200bは、プロテアーゼ1201を含んでいない、又は非含有である。具体的には、サブセンサ1200bは、メインセンサ1200aと同様のケトアミンオキシダーゼ1202と基材1224と過酸化水素検出部1203bとを有している。換言すれば、過酸化水素検出部1203b上に、ケトアミンオキシダーゼ1202と基材1224とを含む酵素層1212bが構成されている。
【0089】
メインセンサ1200aでは、ケトアミンオキシダーゼ層1212a上にプロテアーゼ1201が直接接合されている。これに対し、サブセンサ1200bの最表面は実質的に基材1224で構成されているといってよい。これにより、メインセンサ1200aとサブセンサ1200bとでは、最表面における分子やイオンの基材内部への透過性などの特性において必ずしも同一ではない、又は異なる可能性があると考えられる。したがって、メインセンサ1200aとサブセンサ1200bとの特性が実質的に同じになるように、あるいは関連性を有するように、サブセンサ1200bの酵素層1212bの構成、例えば厚さ、基材1224の種類、ケトアミンオキシダーゼ1202の濃度、製造方法などを、相対的に調節してもよい。
【0090】
メインセンサ1200aとサブセンサ1200bの過酸化水素検出器1203a,1203bはそれぞれ測定用電気回路1270a,1270bに接続されている。これらの電気回路1270a,1270bは、各過酸化水素検出器1203a,1203bからの電流などの出力信号を受けて、その値をデジタルでCPUなどの演算部1230に送る。
【0091】
差分センサのメインセンサとサブセンサは、それぞれ、過酸化水素検出部に過酸化水素電極を含んでいてもよい。例えば図7に示す過酸化水素電極730と電気回路770をメインセンサに配置し、同様あるいは相対的に異なる構成の過酸化水素電極と電気回路とをサブセンサに配置してもよい。
【0092】
差分センサのメインセンサとサブセンサとで、過酸化水素検出部の一部の構成を共有してもよい。例えば、過酸化水素検出部に過酸化水素電極を配置する場合には、作用極をそれぞれのセンサに配置して、対極と参照極をいずれかのセンサに配置して共有してもよい。
【0093】
図12に示す差分センサ1300においては、基板1306上にメインセンサ1300aとサブセンサ1300bとが配置されている。
【0094】
図12に示すメインセンサ1300aは、過酸化水素電極1330aの上に、シランカップリング剤1305aを介して酵素層1311aが配置されている。酵素層1311aは、プロテアーゼ1301とケトアミンオキシダーゼ1302とを基材1304内に含有している。図12に示すサブセンサ1300bは、過酸化水素電極1330bの上に、シランカップリング剤1305bを介して酵素層1311bが配置されている。酵素層1311bは、プロテアーゼ1301を含まず、ケトアミンオキシダーゼ1302を基材1324内に含有している。
【0095】
メインセンサ1300aの過酸化水素電極1330aは、メインセンサ用作用極1333aと対極1331とを含んでいる。一方、サブセンサ1300bの過酸化水素電極1330bはサブセンサ用作用極1333bと参照極1332とを含んでいる。これらの電極は電気回路1370に接続されている。
【0096】
言い換えれば、図12に示す過酸化水素電極1330a,1330bは、三電極法用の電極であり、作用極1333a,1333bは、メインセンサ1300aとサブセンサ1300bとにそれぞれ配置されている。一方、対極1331と参照極1332とはメインセンサ1300aとサブセンサ1300bとのいずれか一方にのみ配置されている。
【0097】
図12に示すセンサ1300は更に、過酸化水素電極1330a,1330bに接続された電気回路1370を有している。この電気回路1370は、オペアンプ1371と電圧発生回路1372と、メインセンサ1300aとサブセンサ1300bとにそれぞれ接続された電流測定回路1373a,1373bとを備えている。オペアンプの出力(OUT)は対極1331に接続され、反転入力(-IN)は参照極1332に接続され、非反転入力(+IN)は電圧発生回路1372に接続されている。
【0098】
測定時には被験物質(測定対象物質、被測定物質)を含む溶液(図示せず)が、メインセンサ1300aとサブセンサ1300bとの両方に接触する。したがって、対極1331は、参照極1332の電位に対して一定の電位差を生じさせつつ、メインセンサ用作用極1333aとサブセンサ用作用極1333bとの両方に対して、所望の電圧を印加することができる。電流測定回路1373a,1373bはそれぞれ、メインセンサ1300aとサブセンサ1300bからの出力信号を検出し、外部(図示せず)に出力信号を提供する。このような構成により、電極の面積を小さくし、センサ及びデバイスを小型化することができる。
【0099】
図12のメインセンサ1300aの酵素層は、図2のような一体型の構成を有しているが、これに限定されない。図12のサブセンサ1300bも同様のこれに限定されない。メインセンサ1300a及びサブセンサ1300bはいずれの他の態様で構成されていてもよい。
【0100】
図12では、メインセンサ1300aとサブセンサ1300bとのそれぞれに電流測定回路1373a,1373bが配置されているが、この構成に限られない。一つの電流測定回路とスイッチング回路を配置し、メインセンサ用作用極1333aとサブセンサ用作用極1333bとからの信号を、スイッチング回路を用いて、交互あるいは所定のタイミングで、電流測定回路に提供し検出又は測定してもよい。
【0101】
プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼと検出部は、積層されるなど、同一箇所や近接して配置されなくてもよい。いくつかの実施形態では、ケトアミンオキシダーゼと検出部とが積層又は近接して配置され、プロテアーゼはこれらから離間して配置されてもよい。別の実施形態では、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼと検出部は、互いに離間して配置されてもよい。プロテアーゼを他の構成から離間して固定して配置することで、プロテアーゼによる分解反応の時間、温度を含む種々の条件を効率化又は最適化することができる。プロテアーゼによる分解反応を十分に行ったあとに、反応生成物であるペプチド断片をケトアミンオキシダーゼに送ることができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼと検出部は、溶液の上流から、あるいは上流側から下流側に、更に言い換えれば溶液の導入方向又は反応の順番の方向にしたがって、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼと検出部の順に配置されてもよい。これにより、各反応での反応生成物を次の反応に効率よく搬送することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼと検出部が、それぞれに画定された収容部(チャンバ)内に収容されていてもよい。各反応が対応する収容部内で起こり、またある反応を他の反応と分けて行うことができる。これにより、他の反応の条件や作成条件から受ける制限や影響を低減、所望の反応を効率的に行うことができる。例えば、プロテアーゼで糖化タンパク質をペプチド断片にする時間を十分にとり、所望の時間後に、ペプチド断片をケトアミンオキシダーゼに送ることができる。
【0104】
図13に示すセンサ1400では、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼと検出部が互いに離間して配置されている。更に、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼと検出部が溶液の導入方向又は反応の順番の方向にしたがって、上流側から下流側にプロテアーゼとケトアミンオキシダーゼと検出部の順に配置されている。さらに、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼと検出部が、それぞれに画定された収容部(チャンバ)内に収容され、互いに流体連結されている。
【0105】
図13をより詳細に説明する。液体導入口1452から入ってきた液体が、プロテアーゼ収容部1455に入る。液体は液体導入口1452まで流路を通って入ってきてもよい。液体は、溶液導入口1452まで毛細管現象により送液されてもよい。プロテアーゼ収容部1455には、プロテアーゼ1401がビーズ1404に固定された状態で収容されている。いくつかの実施形態では、ビーズ1404は収容部1455の内壁に固定されていてもよい。別の実施形態では、ビーズ1404は収容部1455に対して直接固定されなくてもよい。例えば十分大きなビーズ1404に対して流路を細くすることで、実質的にビーズ1404は収容部1455内に固定されている状態になっている。
【0106】
図13に示すプロテアーゼ収容部1455には、ヒータ1460が配置されている。ヒータ1460はプロテアーゼ収容部1455内の溶液又はプロテアーゼ1401を加熱し又はその温度を制御して、プロテアーゼによる分解反応の速度を上げるなど、反応を効率化又は最適化することができる。図13では電流によるヒータが記載されているが、これに限らない。ヒータは、電気以外の加熱方式が採用されてもよい。別の実施形態では、温度調節器が配置されても良い。
【0107】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼの温度を制御してもよい。いくつかの実施形態では、プロテアーゼ、ケトアミンオキシダーゼの温度を一緒に又は個別に制御してもよい。いくつかの実施形態では、センサ又はセンサチップの一部又は全体の温度を制御してもよい。いくつかの実施形態では、プロテアーゼ収容部の温度を制御してもよい。プロテアーゼ等の加熱時間や温度プロファイルが制御されてもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼの温度は、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、及び60℃のいずれか以上又はいずれかより高くてもよい。いくつかの実施形態では、プロテアーゼの温度は、80℃、75℃、70℃、65℃、60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、及び35℃のいずれか以下又はいずれかより低くてもよい。いくつかの実施形態では、プロテアーゼの温度は、そのプロテアーゼの至適温度の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、プロテアーゼの温度は失活する温度より低くてもよい。
【0109】
プロテアーゼ収容部1455内で、生成されたペプチド断片は、ケトアミンオキシダーゼ1402が基材1414に固定されているケトアミンオキシダーゼ収容部1456に搬送される。
【0110】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼ収容部1455からケトアミンオキシダーゼ収容部1456への溶液状態のプロテアーゼの搬送は、毛細管現象で行われてもよい。例えば、各収容部とその間の流路の断面積や距離などの形状、内壁の親水性又は疎水性などの材質などを選択又は調節して、溶液状態のプロテアーゼのプロテアーゼ収容部1455内での滞留時間や、ケトアミンオキシダーゼ収容部1456への送液のタイミングなどを調節することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼ収容部1455をシリコーンなどの柔軟性又は弾性物質で容積可変に構成し、所定のタイミングで外部から圧力をかけて変形させることにより、プロテアーゼ収容部1455から液体を排出するようにしてもよい。その際、液体が液体導入口1452に逆流しないように液体導入口1452が閉じられるように構成されてもよい。
【0112】
ケトアミンオキシダーゼ収容部1456では、ケトアミンオキシダーゼ1402が基材1414に固定されている。図13では、基材1414とケトアミンオキシダーゼ1402は、ケトアミンオキシダーゼ収容部1456内に固定化層として形成されている。ケトアミンオキシダーゼ収容部1456内に搬送されたペプチド断片は、ケトアミンオキシダーゼ1402と反応して、その結果過酸化水素が発生する。
【0113】
いくつかの実施形態では、ケトアミンオキシダーゼの温度を制御してもよい。いくつかの実施形態では、ケトアミンオキシダーゼ収容部の温度を制御してもよい。いくつかの実施形態では、プロテアーゼの温度とケトアミンオキシダーゼの温度とが異なるようにそれぞれの温度を制御してもよい。いくつかの実施形態では、プロテアーゼの温度を、ケトアミンオキシダーゼの温度より高くなるようにそれぞれの温度を制御してもよく、あるいは、ケトアミンオキシダーゼの温度を、プロテアーゼの温度より低くなるようにそれぞれの温度を制御してもよい。いくつかの実施形態では、プロテアーゼの温度制御とケトアミンオキシダーゼの温度制御とを、同時に行ってもよく、異なる時間帯に行ってもよく、又は一部の時間帯が重なるように行ってもよい。いくつかの実施形態では、ケトアミンオキシダーゼ等の加熱時間や温度プロファイルが制御されてもよい。
【0114】
いくつかの実施形態では、ケトアミンオキシダーゼの制御温度は、10℃、12℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃及び37℃のいずれか以上又はいずれかより高くてもよい。いくつかの実施形態では、ケトアミンオキシダーゼの制御温度は、70℃、60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、37℃及び35℃のいずれか以下又はいずれかより低くてもよい。ケトアミンオキシダーゼの温度制御は、加熱、冷却、又は加熱と冷却の組み合わせで行ってもよい。
【0115】
いくつかの実施形態では、測定時にケトアミンオキシダーゼは室温で保持されてもよい。いくつかの実施形態では、測定時のケトアミンオキシダーゼの温度を測定して、検出器による結果に対して温度補正を行ってもよい。例えば、ケトアミンオキシダーゼを室温に保ちつつ測定を行い、測定結果に対して温度補正を行ってもよい。いくつかの実施形態では、測定時又はペプチド断片化の際のプロテアーゼの温度を測定して、検出器による結果に対して温度補正を行ってもよい。いくつかの実施形態では、測定時又はペプチド断片化の際のプロテアーゼの温度と、測定時のケトアミンオキシダーゼの温度とに基づいて、測定結果に対して温度補正を行ってもよい。例示的に、温度補正を行うことで、ケトアミンオキシダーゼ及びプロテアーゼの少なくとも一方の温度制御を簡略化することができる。それにより例えば、電源を電池にし、センサ構成を小型化することができる。
【0116】
過酸化水素は、検出反応器1457に搬送され検出器1431によって検出される。図13では、検出反応器1457内部にルミノールを含む試薬1431が配置され、外部に光検出器(フォトダイオード)1432が配置され、ルミノール反応による発光を検出する。
【0117】
ケトアミンオキシダーゼは固定化層内で基材に固定されていなくてもよい。ケトアミンオキシダーゼは、ビーズに固定されてもよい。
【0118】
図14に示すセンサ1500では、図13に示すセンサ1400の構成と部分的に似ているが、ケトアミンオキシダーゼ1502はビーズ1504に固定され、ケトアミンオキシダーゼ収容部1556内に収容されている。
【0119】
図13に示すセンサ1400や図14に示すセンサ1500では、検出器はルミノール反応のための試薬と発光を検出する光検出器とを有して構成されている。しかし同様の構成で、検出器を他の検出器としてもよい。検出器として、その他の光検出器を用いてもよく、過酸化水素電極を用いてもよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、ケトアミンオキシダーゼと過酸化水素検出器は接触又は近接させ、プロテアーゼをこれらから離間して配置してもよい。ケトアミンオキシダーゼと過酸化水素検出器と近接して配置することは、過酸化水素検出器の検出するノイズ要因の影響を低減し又は過酸化水素の検出感度を向上する一つの方法である。
【0121】
図15に示すセンサ1600では、ケトアミンオキシダーゼ1602が過酸化水素検出器1603に近接して固定され、プロテアーゼ1601がこれらから離間して配置されている。
【0122】
液体導入口1652から入ってきた液体が、プロテアーゼ収容部1655に入る。プロテアーゼ収容部1655には、プロテアーゼ1601がビーズ1604に固定された状態で収容されている。
【0123】
図15に示すプロテアーゼ収容部1655には、ヒータ1660が配置されている。ヒータ1660はプロテアーゼ収容部1655内の溶液又はプロテアーゼ1601を加熱し又はその温度を制御して、プロテアーゼによる分解反応を効率化又は最適化することができる。図15では電流によるヒータが記載されているが、これに限らない。ヒータも電気以外の加熱方式が採用されてもよい。別の実施形態では、温度調節器が配置されても良い。
【0124】
プロテアーゼ収容部1655内で、生成されたペプチド断片は、固定されたケトアミンオキシダーゼ1602と過酸化水素検出器1603が収容されたケトアミンオキシダーゼ収容部1656に搬送される。
【0125】
ケトアミンオキシダーゼ収容部1656では、ケトアミンオキシダーゼ1602が基材1614に固定されて、酵素層1611を形成している。図15では、基材1614とケトアミンオキシダーゼ1602は、ケトアミンオキシダーゼ収容部1656内に固定化層として形成されている。ケトアミンオキシダーゼ収容部1656内に搬送されたペプチド断片は、ケトアミンオキシダーゼ1602と反応して、その結果過酸化水素が発生する。発生した過酸化水素は近接して配置されている過酸化水素検出器1603で検出される。
【0126】
プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼとを離間配置する構成においても、溶液内の物質などにおけるノイズ原因は存在し得る。本開示に係るセンサは、そのようなノイズを低減するための機構を更に有していてもよく、同機構に接続されるように構成されていてもよい。
【0127】
いくつかの実施形態では、過酸化水素検出器をイオン交換樹脂で覆ってもよく、過酸化水素検出器の表面にイオン交換樹脂の層又は膜を配置してもよい。
【0128】
いくつかの実施形態に係るセンサは、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼとを離間配置する構成を有する、一対の又は一組の差動又は差分センサであってもよい。
【0129】
いくつかの実施形態に係る差分センサでは、過酸化水素検出器をイオン交換樹脂で覆ってもよく、過酸化水素検出器の表面にイオン交換樹脂の層又は膜を配置してもよい。
【0130】
図16に示すセンサ1700では、プロテアーゼがケトアミンオキシダーゼに対して分離し個別の収容部内に配置されている。
【0131】
導入口1752から導入された溶液は、メインセンサ1700aとサブセンサ1700bとに分流される。溶液は、メインセンサ1700aではプロテアーゼ収容部1755aに導入される。プロテアーゼ収容部1755aには、プロテアーゼが固定化された酵素層1711aが配置されている。プロテアーゼ収容部1755aで生じたペプチド断片は、流路を通りケトアミンオキシダーゼ収容容器1756aに搬送される。図16に示すケトアミンオキシダーゼ収容容器1756a内には、ケトアミンオキシダーゼが固定化されたケトアミンオキシダーゼ層1712aと過酸化水素検出器1703aが配置されている。ケトアミンオキシダーゼ収容容器1756aの反応により、糖化されたペプチド断片が最終的に過酸化水素として検出される。
【0132】
一方サブセンサ1700bの流路や収容部はメインセンサ1700aと同様に構成されているが、プロテアーゼが配置されていない。すなわち、溶液がまず導入されるチャンバ1755bは、メインセンサ1700aのプロテアーゼ収容部1755aと同様の構造をしているが、プロテアーゼを収容していない。プロテアーゼがないチャンバ1755bの次のチャンバ(収容部)としては、ケトアミンオキシダーゼ収容容器1756bが配置されている。サブセンサ1700bのケトアミンオキシダーゼ収容容器1756b内には、メインセンサ1700aのケトアミンオキシダーゼ収容容器1756aと同様に、ケトアミンオキシダーゼが固定化されたケトアミンオキシダーゼ層1712bと過酸化水素検出器1703bが配置されている。
【0133】
メインセンサ1700aのプロテアーゼ収容部1755aと、サブセンサ1700bの対応するチャンバ1755bとには、ヒータ1760が設けられている。これにより、プロテアーゼ収容部1755a内のプロテアーゼによる分解反応の速度を上げ、同反応を効率化し又は最適化できる。さらには、サブセンサ1700bの流路の構成や条件を、プロテアーゼがないこと以外はメインセンサ1700aのそれと出来る限り同じ又は同様にすることができる。
【0134】
メインセンサ1700aの過酸化水素検出器1703aからの出力信号と、サブセンサ1700bの過酸化水素検出器1703bからの出力信号との差分信号を計算することができる。この差分演算から、過酸化水素検出器1712aでの対象とする過酸化水素の濃度、そしてそれに関連する当初の溶液内の被験物質である糖化タンパク質の濃度を求めることができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼとを別々に温度制御をしてもよい。いくつかの実施形態では、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼとのそれぞれに対する温度制御デバイスが配置されていてもよい。温度制御デバイスは、加熱デバイスであってもよく、冷却デバイスであってもよく、それら両方を有していてもよく、温冷制御可能なデバイスであってもよい。
【0136】
いくつかの実施形態では、センサは、プロテアーゼ収容部とケトアミンオキシダーゼ収容部との間に温度制御用収容部を有していてもよい。いくつかの実施形態では、温度制御用収容部は、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼとでの動作温度が異なる場合に、プロテアーゼ収容部から送られてくる溶液の温度を変化又は制御して、ケトアミンオキシダーゼの動作温度に近づけてもよい。いくつかの実施形態では、プロテアーゼに対して加熱デバイスが配置され、温度制御用収容部では冷却デバイスが配置されていてもよい。いくつかの実施形態では、ケトアミンオキシダーゼに対して加熱デバイスが配置されていてもよい。
【0137】
図17に示すセンサ1800は、シリアルに流体連結された、プロテアーゼ収容部1855と冷却用溶液収容部(冷却部)1858とケトアミンオキシダーゼ収容部1856とを有している。プロテアーゼ収容部1855は、液体導入口1852を備え、ここからプロテアーゼ収容部1855内に溶液を導入できる。プロテアーゼ収容部1855には、プロテアーゼ1801がビーズ1804に固定された状態で収容されている。
【0138】
図17に示すプロテアーゼ収容部1855には、ヒータ1860が配置されている。ヒータ1860はプロテアーゼ収容部1855内の溶液又はプロテアーゼ1801を加熱し又はその温度を制御して、プロテアーゼ反応の速度を上げるなど、反応の効率化又は最適化することができる。
【0139】
プロテアーゼ収容部1855内で生成されたペプチド断片は、冷却用溶液収容部1858を介して流体連結されたケトアミンオキシダーゼ収容部1856まで送液される。ケトアミンオキシダーゼ収容部1856には、固定されたケトアミンオキシダーゼ1802と過酸化水素検出器1803が収容されている。過酸化水素検出器1803は、測定器(不図示)に接続され、これに対して電気信号を送信することができる。
【0140】
ケトアミンオキシダーゼ収容部1856では、ケトアミンオキシダーゼ1802が基材1814に固定されて、酵素層1811を形成している。図17では、基材1814とケトアミンオキシダーゼ1802は、ケトアミンオキシダーゼ収容部1856内に固定化層として形成されている。ケトアミンオキシダーゼ収容部1856内に搬送されたペプチド断片は、ケトアミンオキシダーゼ1802と反応して、その結果過酸化水素が発生する。発生した過酸化水素は近接して配置されている過酸化水素検出器1803で検出される。
【0141】
ケトアミンオキシダーゼ収容部1856には、ヒータ1861が配置されている。ヒータ1861はケトアミンオキシダーゼ収容部1856内の溶液又はケトアミンオキシダーゼ1802を加熱し又はその温度を制御して、酵素反応の速度を上げるなど、反応を効率化し又は最適化することができる。
【0142】
図17では、プロテアーゼ収容部1855とケトアミンオキシダーゼ収容部1856とのそれぞれに個別のヒータ1860,1861が配置されている。これにより、プロテアーゼ1801とケトアミンオキシダーゼ1802に対して、個別に温度制御又は加熱をすることができる。これにより例えば、時間的又は温度、又はその両方において、独立した温度制御を行うことができる。いつかの実施形態では、プロテアーゼ収容部1855又はプロテアーゼ1801の温度を、ケトアミンオキシダーゼ収容部1856又はケトアミンオキシダーゼ1802の温度よりも高く制御することができる。いつかの実施形態では、プロテアーゼ収容部1855又はプロテアーゼ1801の温度を、ケトアミンオキシダーゼ収容部1856又はケトアミンオキシダーゼ1802の温度よりも低く制御することができる。
【0143】
もしプロテアーゼ収容部1855で加熱された溶液が、ケトアミンオキシダーゼ収容部1856に送られると、その溶液がケトアミンオキシダーゼ1802にとって適正な温度になるまでに時間がかかり非効率であり、又は正確な測定ができなくなる場合がある。そのため、ケトアミンオキシダーゼ収容部1856に導入される前に、溶液を一旦冷却してもよい。図17に示すようなセンサ1800は、加熱されたプロテアーゼ収容部1855で加熱された溶液を、冷却用溶液収容部1858内に滞留させることができる。溶液を、冷却デバイス(回路/素子)1862(例えばペルチェ素子)を用いて冷却し、ケトアミンオキシダーゼ1802の至適温度又は使用温度に近づける。その後溶液を、ケトアミンオキシダーゼ収容部1856に送ることができる。これにより例えば、測定を効率的にまたは正確に行うことができる。
【0144】
図17に示すセンサ1800は一例として次のように使用してもよい。すなわち、まず、測定対象物質を含む溶液をプロテアーゼ収容部1855に導入する。プロテアーゼ収容部1855は、溶液導入前に加熱を開始してもよく、溶液導入後に加熱を開始してもよい。プロテアーゼ収容部1855でペプチド断片化を行った後、溶液を冷却用溶液収容部1858に送る。冷却用溶液収容部1858は、溶液導入前に冷却を開始してもよく、溶液導入後に冷却を開始してもよい。冷却用溶液収容部1858で十分に又は適切な温度まで冷却を行った後、溶液をケトアミンオキシダーゼ収容部1856に送ってもよい。ケトアミンオキシダーゼ収容部1856は、溶液導入後に加熱を開始してもよい。
【0145】
いくつかの実施形態では、送液は、溶液導入口1852から圧力を掛けることで行ってもよい。いくつかの実施形態では、送液は、各収容部1855,1856,1858の容積を変化させて又は各収容部に対して圧力を掛けることで行ってもよい。プロテアーゼ収容部1855は、空気孔(不図示)を有していてもよい。いくつかの実施形態では、送液の際の圧力は陽圧であってもよい。いくつかの実施形態では、送液の際の圧力は陰圧であってもよい。いくつかの実施形態では、各収容部の入口と出口とのそれぞれ又は両方の近傍に、バルブが配置されていてもよい。バルブは、各収容部の温度の違いなどによって発生しうる泡を、流路から取り除くように機能してもよい。
【0146】
いくつかの実施形態では、溶液を、プロテアーゼ収容部から出す際に、プロテアーゼとビーズとがプロテアーゼ収容部から出てもよい。例えば、プロテアーゼとビーズは、冷却用収容部まで入ってもよく、ケトアミンオキシダーゼ収容部まで入ってもよい。いくつかの実施形態では、プロテアーゼとビーズとは送液の際に実質的にプロテアーゼ収容部に残るように、センサが構成されてもよい。
【0147】
図17では、電流によるヒータ1860,1861と冷却デバイス1862が記載されているが、これに限らない。ヒータ1860,1861は、電気以外の加熱方式を採用してもよい。冷却デバイス1862は、ペルチェ素子以外の冷却方式を採用してもよい。別の実施形態では、他の温度調節器が配置されてもよい。
【0148】
いくつかの実施形態では、溶液導入口1852、プロテアーゼ収容部1855、冷却用溶液収容部1858とケトアミンオキシダーゼ収容部1856とは、一つの部品、例えばカセットや使い捨ての流体デバイスであってもよい。いくつかの実施形態では、ヒータ1860,1861と冷却デバイス1862とは、本体に固定されていてもよい。上記流体デバイスが、この本体に挿入され又は固定されるように、センサ1800が構成されていてもよい。ヒータ1860,1861と冷却デバイス1862との間には断熱材が配置されていてもよい。これにより例えば、温度制御の効率を上げることができる。
【0149】
3.過酸化水素電極の配置
過酸化水素電極のレイアウト又は配置は種々の構成が可能である。以下、過酸化水素電極の構成を例示的に説明する。
【0150】
<電極配置例1>
本開示で示す過酸化水素電極は、糖化タンパク質又はフルクトサミンの測定用途に限られず、溶液の電気化学的測定を含む他の用途に用いることもできる。すなわち、本開示の一実施形態に係るセンサ又はセンサチップは、過酸化水素電極を含む。過酸化水素電極の参照極は、対極と作用極に挟まれていてもよい。センサチップは、液体収容部を有していてもよい。液体収容部は長手方向に延在していてもよい。液体収容部の容積は、10μL、5μL、4μL、3μL、2μL、1μL、0.9μL、0.8μL、0.7μL、0.6μL、0.5μL、0.4μL、0.3μL、0.2μL、0.1μLの値以下又は未満であってもよい。液体収容部は、液体導入口を有していてもよい。液体収容部は、液体出口を有していても良い。液体収容部は、空気孔を有していてもよい。空気孔は、液体が液体収容部に導入される際に液体収容部にあった気体がセンサチップ外部に排出される機能を有していてもよい。センサチップは、電気回路を有していても良く、電気回路に接続されるように構成されていてもよい。センサチップは、電気回路と接続されるための出力端子を有していてもよい。
【0151】
図18は一つの実施形態としてのセンサチップの電極構成を模式的に示す上面図である。図18のセンサチップ2000では、基板2006上に、導入された溶液に接触するように対極2031、参照極2032、作用極2033が配置され、これらの電極を覆うように酵素層2011が配置されている。
【0152】
センサチップ2000は、流路又は液体収容部を画定する部材、例えばチップカバーを更に有していてもよく、そのようなチップカバーがないセンサチップとして形成されてもよい。図18には、流路と液体収容部を規定するセンサチップカバー(図示せず)がセンサチップの上面に被せてある。液体収容部に対応するセンサチップ上の部分2051が規定され、液体は導入口2052から液体収容部2051に導入される。チップカバーは、液体収容部2051に関して液体導入口2052の反対側に空気孔2053を有している。
【0153】
過酸化水素電極2031,2032,2033は互いに平行に、液体収容部2051に沿って長手方向に延在するように配置されている。液体は導入口2052側で、作用極2033の端部は、他電極すなわち対極2031、参照極2032の端部に対して、短く構成されている。導入口2052から導入された液体は、液体収容部2051内をその長手方向に進展する。液体が最初にあるいは他電極と同時に作用極2033に接触すると、大きな電流が流れ電極に損傷を与える可能性がある。このような構成にすることで、電極の損傷を回避することができる。
【0154】
図18に示すセンサチップ2000は更に、液体検出電極2034を液体収容部内に有している。図18では、電極2034は、液体収容部2051内で液体が進入する際に、液体が最後に接触する位置に配置されている。液体検出電極2034での液体の有無を検出することで、液体収容部2051又は過酸化水素電極2031,2032,2033が十分に液体で充満されたことを確認することができる。液体検出電極2034で液体が検出された場合には、液体の収集を終了したことをユーザに報知してもよい。あるいは、所定の時間以上に待っても、液体検出電極2034で液体が検出されない場合には、液体が十分に収集できなかったとして測定を開始しない、あるいはユーザに対して液体の収集をやり直す、他のチップの使用を進めるなどの報知を行ってもよい。
【0155】
図18に示すセンサチップ2000は、対極2031、参照極2032、作用極2033、液体検出電極2034に対応し電気的に接続された出力端子2041,2042,2043,2044を有している。センサチップは、電気回路又は電気回路を有する他のデバイス(いずれも図示せず)に差し込み式又は着脱可能に接続するように構成されていてもよい。図18に示すセンサチップ2000では、この着脱部に上記出力端子が配置されている。
【0156】
図18では1つの検出電極のみが記載されている。しかし、いくつかの実施形態では、複数の検出電極を配置してもよい。複数の電極を流路内に液体の進行方向に設置してもよい。例えば、検出電極は、検出部が液体と最初に触れる箇所、検出部が完全に液体と接触した箇所、そしてその中間に配置してもよい。例えば、最初の検出電極は、液体が検出部、流路、あるいは液体収容部に進入し始めたことを検知することが出来る。中間の電極は、液体が進入しているか否かを検知することができる。中間の電極まで液体が進入しなかった場合は、検出部の一部のみを用いているため、測定不可能であることを報知するため、あるいは誤差の大きい測定になり得ることを報知するために用いられてもよい。
【0157】
以下その他の配置やヴァリエーションについて例示的に説明する。配置や説明は一部省略する場合がある。各実施形態や例示において、他の構成を適用してもよい。
【0158】
<複数の電極配置>
センサチップの液体収容部には複数個又は複数種類のセンサ又は過酸化水素電極を配置してもよい。複数のセンサは同種のセンサであってもよく、上記のような差分計測のためのメインセンサとサブセンサの組み合わせでもよい。
【0159】
<電極配置例2>
図19に示すセンサチップ2100は、液体収容部2151内にその長手方向に、複数のセンサ2100a,2100bが互いに平行に配置されている。なお、複数のセンサ2100a,2100bの参照極と対極は、回路上は参照極同士、作用極同士し接続されて共通になっている。液体は、流体導入口2152から導入され、毛管現象と親水性の含水性ポリマーとしても機能する固定化膜の作用などにより、液体収容部2151を進展し、内部の空気を空気孔2153から押し出しつつ、液体収容部2151を充満し、最終的に検出電極2134に至る。
【0160】
<電極配置例3>
図20に示すセンサチップ2200は、図12で示したような過酸化水素電極の一部を複数のセンサで共有している。すなわち、図20に示すセンサチップ2200は、メインセンサ2220aとサブセンサ2220bとを有している。メインセンサ2220aでは、基板2206上に作用極2233aと対極2131が配置され、これらの電極の上にメインセンサ用の酵素層2221aが配置されている。サブセンサ2220bでは、基板2206上に作用極2233bと参照極2232が配置され、これらの電極の上にサブセンサ用の酵素層2221bが配置されている。参照極2232は、基板2206上で対極2231と作用極2233bとの間に配置され、あるいは挟まれている。
【0161】
<複数センサのアセンブリ型>
複数のセンサを同じセンサチップに配置する場合に、センサチップの本体基板上にすべてのセンサを直接形成しなくてもよい。例えば、作製した各センサを本体基板上に接合してもよい。
【0162】
図21に示すセンサチップ2300では、本体基板2360上に二つの既に作成されたセンサ2300a,2300bが接合されている。
【0163】
センサ2300a,2300bの酵素層2311a,2311b又は過酸化水素電極2330a,2330bは、液体収容部2351の、液体導入口2352から空気孔2353に向けて延びる長手方向に延在するように形成されている。
【0164】
図21のセンサチップ2300では、本体基板2360上と各センサ上とに、それぞれ対応するボンディングパッド2340a,2340b,2341a,2341bが形成されている。これらのボンディングパッドは、センサ2300a,2300bの本体基板2360上への接合後又は接合の際に、電気的に接合される。例えば、ボンディンパッド間をワイヤボンディングで接続してもよい。
【0165】
図21のセンサチップ2300では、本体基板2360に電気回路(図示せず)などと接続可能な出力端子2340が配置されている。これらの出力端子2340は対応するボンディングパッド2341a,2341bと配線で接続されている。対極と参照極はセンサチップ2300又は電気回路を介して短絡されていてもよい。このような構成により、例えば、酵素層の耐久性やその他の層の構成によっては、1つのチップ内に2つのセンサを同時に製造することが難しい、もしくは2つのセンサの歩留まりが著しく異なった場合に、別々に製造して、良品を組み合わせることでトータルの製造コストを抑えることができる。
【0166】
<他の電極方向>
過酸化水素電極は、細長い液体収容部の長手方向以外の方向に沿って形成されてもよい。
【0167】
例えば、図22に示すセンサチップ2400のように、液体収容部2451の長手方向に垂直方向に延びた各電極が基板2406上に配置されてもよい。より具体的には、図22の過酸化水素電極は、液体収容部2451内で液体導入口2452から空気孔2453に向かう長手方向に垂直な方向に、対極2431、参照極2432、作用極2433が配置されている。参照極2432は、対極2431と作用極2433との間に挟まれている。作用極2433は、液体導入の際の液体進展方向で過酸化水素電極の3つの電極の内最後の位置に配置されている。これらの過酸化水素電極の後に液体検出電極2434が配置されている。過酸化水素電極の上に、酵素層2411が形成されている。この電極構成のように参照極2432は対極2431と作用極2433とに挟まれることで、例えば、外部ノイズを低減し、液体が液体収容部2451に進入する際に最後に作用極2433に接触することで、過大な電流が流れることを避けて安全な測定が可能になる。
【0168】
4.センサの製造方法
以下図23Aから図23Iの断面模式図を用いて、本開示の一実施形態であるデュアル糖化タンパク質センサの製造方法について説明する。
【0169】
<過酸化水素電極の形成>
図23Aに示すように、絶縁基板3006上に、2組の電極、すなわち第一の過酸化水素電極3030aと第二の過酸化水素電極3030bを形成する。絶縁基板3006は、ガラス、石英、セラミックスを主成分とする基板であってもよい。絶縁基板3006は、ポリエチレンテレフタラート(PET)ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂などであってもよい。これらは、耐水性、耐熱性、耐薬品性および上記電極との密着性に優れた材料として知られている。
【0170】
それぞれの組の過酸化水素電極3030a,3030bは、Ti/Ptを積層した作用極と、Ti/Pt/Ag/AgClを積層した参照極と、Ti/Ptを積層した対極が形成されている。図ではこれらの積層構造は図示されていない。これらの電極は、例示的に、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、ケミカル・ベーパー・ディポジッション(CVD)法、電解法、スクリーン印刷などを用いて形成することができる。スパッタリング法は、比較的、短時間で、精度よく薄膜の白金膜を形成できる。例えば、まずチタン(Ti)、白金(Pt)の順に成膜しパターニングする。次に、作用極と対極を覆い、参照極上に銀(Ag)を製膜する。最後に銀の表面に対して塩化処理を行う。これにより、上記のような積層電極構造を形成することができる。なお、Tiは基板とPtとの接着力を高める目的で製膜される場合が多い。しがって、基板や製膜条件によって、過酸化水素電極のTi層を省いてもよい。例えば、PET樹脂やCOP樹脂等のフレキシブルシートの絶縁基板を用いた場合は、過酸化水素電極のTi層を省いてもよい。
【0171】
<サブセンサ用酵素層の形成>
最初に図23Bに示すように、半導体製造などのフォトリソグラフィー工程で用いられるポジ型フォトレジスト3009を絶縁基板3006上にスピン塗布し、2組の過酸化水素電極3030a,3030bをカバーする。
【0172】
続いて、図23Cに示すように、露光、現像、エッチングでレジスト3009に対してパターニングを行い、第二の過酸化水素電極上3030bを開口させる。
【0173】
図23Dに示すように、シランカップリング剤3005bである3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)溶液を、回転数3,000rpm、30秒でスピン塗布し、乾燥させる。その後、基材3014となるBSAとケトアミンオキシダーゼ3002を含む溶液をグルタルアルデヒドと混合させる。そして、この混合液を基板上にスピン塗布する。グルタルアルデヒドの架橋反応によってケトアミンオキシダーゼ3002を固化させる。
【0174】
レジスト3009をアセトン中で超音波処理してリフトオフする。第二の過酸化水素電極上3030b上にのみ、シランカップリング剤3005bを介して、基材3014となるBSAとケトアミンオキシダーゼ3002とを含む酵素膜3011bが残る。これにより、絶縁基板3006上にサブセンサ3000bが形成され、メインセンサ用の第一の過酸化水素電極3030aが露出される。(図23E
【0175】
図23Bで説明した工程と同様に、再度レジスト3091を絶縁基板3006全体にスピン塗布する。塗布後、酵素が失活しないようにレジスト3091を固化させる(図23F)。
【0176】
<メインセンサ用酵素層の形成>
まず、露光、現像、エッチングでレジスト3091に対してパターニングを行い、第一の過酸化水素電極上を開口させる(図23G)。
【0177】
第一の過酸化水素電極3030a上に開口部がある状態で、図23Dと同様に、シランカップリング剤3005aである3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)溶液を、回転数3,000rpm、30秒でスピン塗布し、乾燥させる。その後、基材3004となるBSAとケトアミンオキシダーゼ3002及びプロテアーゼ3001とを含む溶液をグルタルアルデヒドと混合させる。そして、この混合液を基板上にスピン塗布する。グルタルアルデヒドの架橋反応によってケトアミンオキシダーゼ3002とプロテアーゼ3001を固化させる(図23H)。
【0178】
レジスト3091をアセトン中で超音波処理してリフトオフする。こうして、絶縁基板3006上の第一と第二の過酸化水素電極3330a,3330b上にそれぞれ、シランカップリング剤3005a,3005bを介して、それぞれ基材であるBSA3004に固定されたプロテアーゼ3001とケトアミンオキシダーゼ3002を含む酵素層3011aと、酵素としてケトアミンオキシダーゼ3002のみを含み、これが基材であるBSA3014に固定された酵素層3011bが残るセンサが作成された。すなわち、絶縁基板上3006にメインセンサ3000aとサブセンサ3000bが形成された。このようにして、プロテアーゼ3001の有無だけが異なる差動型のデュアル糖化アルブミンセンサ酵素層を有するセンサ3000を作成することができる(図23I)。
【0179】
なお、本実施例ではレジストによるパターニングの製造方法を示したが、第一の過酸化水素電極上に開口部を有するメタルマスクと、第二の過酸化水素電極上に開口部を有するメタルマスクを使用しても良い。
【0180】
いくつかの実施形態では、糖化タンパク質センサ(検出部、検出器)はアルブミンセンサ(検出部、検出器)を備えていてもよい。糖化タンパク質センサとアルブミンセンサを併せてセンサと呼んでもよく、糖化タンパク質とアルブミンの両方を測定できるように構成されたシステムを糖化タンパク質センサと呼んでもよい。同一の採集から得られた体液や液体が、糖化タンパク質センサとアルブミンセンサの両方に適用されるように、センサが構成されていてもよい。別の実施形態では、異なるタイミングで採集された体液や液体が、糖化タンパク質センサとアルブミンセンサとに供給されるようにセンサが構成されてもよい。いくつかの実施形態では、糖化タンパク質センサは、アルブミンセンサに接続されるように構成されていてもよい。アルブミンセンサと協働することで、グリコアルブミン(GA)値をより簡易、効率的に測定することができる。
【0181】
アルブミンセンサとしては、例えば、アルブミンがブロモクレゾールグリーン(BCG)、ブロモクレゾールパープル(BCP)などの色素に結合する際の吸収波長又は吸収スペクトルの変化を利用する色素結合法や電気化学的方法による測定が可能である。また、抗体を用いた免疫法などに基づくデバイスや装置であってもよい。
【0182】
いくつかの実施形態では、酵素(ケトアミンオキシダーゼ及び/又はプロテアーゼ)は、保護剤で覆ってもよい。保護剤は、保護層、保護膜、又は保護コーティングでもよい。
【0183】
図24に示すように、保護剤は、酵素層を覆うように配置してもよい。図24では、ケトアミンオキシダーゼ部が示され、プロテアーゼやその他の素子や構成は省略されている。基板4006上に過酸化水素検出器4003が配置され、その上に基材4014内にケトアミンオキシダーゼ4002が包含され、ケトアミンオキシダーゼ層4012が形成されている。ケトアミンオキシダーゼ4002又はケトアミンオキシダーゼ層4012を覆うように保護膜4008が配置されている。保護膜4008は、過酸化水素検出器4003も覆うように配置されてもよい。
【0184】
図25に示すように、保護剤は、各酵素分子を覆うように配置してもよく、あるいは酵素の部分又は酵素分子の集合体を覆うように配置してもよい。図25では、ケトアミンオキシダーゼ部が示され、プロテアーゼやその他の素子や構成は省略されている。基板4106上に過酸化水素検出器4103が配置され、その上に基材4114内にケトアミンオキシダーゼ4102が包含され、ケトアミンオキシダーゼ層4112が形成されている。保護コーティングは、ケトアミンオキシダーゼ4102を、個別に又は分子ごとに覆ってもよい。複数のケトアミンオキシダーゼ4102を覆うように形成されてもよい。
【0185】
いくつかの実施形態では、酵素の保護剤は、基材の材料から選ばれてもよい。いくつかの実施形態では、酵素の保護剤は、酵素の基材と同じ材料であってもよい。酵素の基材と保護剤とが同じ材料で形成されていると、例えば測定中の加熱とか、室温の温度変化などによる、熱膨張係数の違いによる熱応力による剥離や破損を回避できる。保護剤は、非限定的に例えば、酵素の劣化を回避し又は寿命を延ばすことができる。例えば、デバイス本体に対して固定化されていないプロテアーゼ、又は固定化されたプロテアーゼの一部が外れて流れてくることで、ケトアミンオキシダーゼに触れてこれを分解し又は変性させ得る。保護剤は、例えばこのようなケトアミンオキシダーゼの分解を回避又は抑制することができる。いくつかの実施形態では、ケトアミンオキシダーゼの保護剤は、プロテアーゼに分解されにくい材料で形成されていてもよい。
【0186】
保護剤の形成方法として、FOAD膜を塗布(例えばスピンコートやバーコート)、架橋させ(放置、架橋時間)、乾燥した後に、保護膜を形成してもよい。保護膜は、均一な膜厚を有するように形成されてもよい。保護膜は、使用する溶液の性質によって、スピンコート法、バーコート法、ブレードコート法、スプレーコート法、又はディップ法により塗布してもよい。塗布された保護膜は、所定時間、所定温度に保持してもよい。塗布後の処理により、必要な膜厚を得てもよい。
【0187】
保護剤は、非限定的に例えば、フッ素系樹脂、光硬化樹脂、水硬化樹脂、セルロース(エチルセルロース、アセチルセルロースなど)、ナイロン、ポリスチレン、非たんぱく系樹脂、ポリイオンコンプレックス、錯体、無機高分子、固体高分子電解質、多孔性高分子金属錯体(例えばZIF-8)、金属有機構造体、又はリン脂質であってもよい。いくつかの実施形態では、ケトアミンオキシダーゼの保護剤は、アルブミンを含んでいてもよく、実質的にアルブミンからなっていてもよい。いくつかの実施形態では、保護剤としてのアルブミンはBSAであってもよい。保護剤なしでケトアミンオキシダーゼの寿命が1週間の系において、BSAによる保護剤で覆うことで、ケトアミンオキシダーゼの寿命が1カ月ほどに延びたこと、出力が半分になる時間が倍に延びたことが確認された。
【0188】
保護剤により、非限定的な例示として、液による熱振動などによる寿命への影響を低減できる。酵素は、基材により包括固定してもよく、部分的に固定されてよく、基材により被覆されてもよい。一つの解釈として、保護剤は、基材の表面に露出している酵素分子の部分を保護していてもよい。一つの解釈として、酵素を保護剤により保護すると寿命が延びると考えることもできる。非限定的に例えば、夾雑物の酵素の活性や酵素反応効率などに対する影響を低減できる。非限定的に例えば、保護膜などは、酵素が基材から脱落又は脱離することを回避又は低減することができる。非限定的に例えば、保護膜は、送液などの際に受ける外圧、pH、塩濃度などのパラメータの急激な変化による変性(たんぱく変性)を回避することができる。
【0189】
以降、プロテアーゼとケトアミンオキシダーゼについていくつかの実施例を用いて説明する。
【0190】
<実施例1>
各種プロテアーゼの動作特性を比較した。
プロテアーゼとして、オリエンターゼ22BF(エイチビィアイ株式会社製)16mg、ヌクレイシン(エイチビィアイ株式会社製)133mg、オリエンターゼAY(エイチビィアイ株式会社製)12.8mg、オリエンターゼOP(エイチビィアイ株式会社製)8.0mg、スミチームMP(新日本化学工業株式会社製)16mg、プロテアーゼXIV(シグマアルドリッチジャパン合同会社)4mgを、それぞれ、TES緩衝液400μLに溶解させ一晩透析した溶液を、プロテアーゼ溶液として用いた。サーモリシン(富士フイルム和光純薬株式会社製)4mg、トリプシン(富士フイルム和光純薬株式会社製)4mg、α―キモトリプシン(東京化成工業株式会社製)4mg、パパイン(ナカライテスク株式会社製)4mg、ブロメライン(富士フイルム和光純薬株式会社製)4mgも、それぞれTES緩衝液400μLに溶解させそのまま使用した。
【0191】
グリコアルブミンキットルシカGA-L(旭化成ファーマ株式会社)のGA-Lキャリブレータ(GA濃度:14.9mg/mL、アルブミン濃度:47.9mg/mL)12μLとTES緩衝液93μLを混合、そこにプロテアーゼ溶液15μLを加えた。その混合溶液を、アルミブロックインキュベータを用いて37℃または60℃で10分間加熱した。当該混合溶液をアルミブロックから外し、余熱や室温で消化が進行しないようにすぐに冷蔵庫に入れ、その後低温で保管した。これをGA消化サンプルと呼ぶ。一方、プロテアーゼ溶液とTES緩衝液とを混合した。この混合溶液を同様に加熱処理した。これをプロテアーゼ自己消化サンプルと呼ぶ。
【0192】
市販のグリコアルブミンキットルシカのALB R-2液とマイクロプレートリーダを用いて吸光度測定を行った。GA消化サンプルの消化前後での吸光度変化から各プロテアーゼのアルブミンの消化率をもとめた。
【0193】
図26に、加熱温度37℃と60℃とでの消化率を示す。37℃ではオリエンターゼ22BFとプロテアーゼXIVが比較的高い消化率を示した。60℃ではオリエンターゼ22BF、プロテアーゼXIV、スミチームMP、サーモリシンが比較的高い消化率を示した。オリエンターゼ22BF、プロテアーゼXIV、スミチームMP、サーモリシンは、いずれも細菌由来のプロテアーゼである。一つの解釈として、細菌由来のプロテアーゼは、動物由来、植物由来のプロテアーゼより消化率が高い、あるいは、動物由来、植物由来のプロテアーゼは細菌由来のプロテアーゼよりも低い消化率であるということもできる。この解釈は一つの考えを示すものであり、他の理論又は実験結果があってもよい。本実験結果に基づいて、いくつかの実施形態では、アルブミンの消化に用いるプロテアーゼとして、オリエンターゼ22BF、プロテアーゼXIV、スミチームMP、及びサーモリシンの群から選択されるプロテアーゼを用いてもよい。あるいは、それらの内の複数のプロテアーゼを組み合わせて用いてもよい。
【0194】
図27に、FAOD電極を用いてGA消化サンプルの電流値を測定した。消化GAサンプルの出力とプロテアーゼ自己消化サンプルの出力との差分から、消化したGAによる正味の出力を示す。
図27に示すように、オリエンターゼ22BF、プロテアーゼXIV及びスミチームMPが比較的高い出力を与えた。一つの解釈として、オリエンターゼ22BF、プロテアーゼXIV及びスミチームMPは、FAODが反応しうる大きさの糖化ペプチド断片までアルブミンを消化するのに好ましいプロテアーゼであるということもできる。この解釈は一つの考えを示すものであり、他の理論又は実験結果があってもよい。
【0195】
<実施例2>
プロテアーゼの動作温度を検討した。
オリエンターゼ22BF(エイチビィアイ株式会社製)16mgをTES緩衝液400μLに溶解させ一晩透析した溶液をプロテアーゼ溶液とした。
【0196】
グリコアルブミンキットルシカGA-L(旭化成ファーマ株式会社)のGA-Lキャリブレータ(GA濃度:14.8mg/mL、アルブミン濃度:47.5mg/mL)12μLとTES緩衝液93μLを混合、そこにプロテアーゼ溶液15μLを加えた。同時に、プロテアーゼのみを含むサンプル溶液、キャリブレータのみを含むサンプル溶液も調整した。これらを、アルミブロックインキュベータを用いて20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃の各温度で2.5分または10分間保持した。その後、各溶液をアルミブロックから外し、余熱や室温で消化が進行しないようにすぐに冷蔵庫に入れ、その後低温で保管した。
【0197】
GA消化サンプルを導入した際のFAOD電極の出力電流値を測定した。このGA消化サンプルの出力電流値から、プロテアーゼのみのサンプル溶液(プロテアーゼ自己消化サンプル)の出力電流値とGAのみのサンプル溶液(GA消化サンプル)の出力電流値との差分、すなわち、[GA消化サンプルの出力電流値]-[プロテアーゼのみのサンプル溶液の出力電流値]-[GAのみのサンプル溶液の出力電流値]を正味の消化したGAの出力電流値とした。図28に、正味の消化したGAの出力電流値を消化処理の温度(消化温度)の関数としてプロットした(a)。
【0198】
図28に示すように、FAOD電極からの出力電流値は、60℃付近あるいは60℃から70℃の間で最も高くなった。いくつかの実施形態では、プロテアーゼの消化温度は、FAOD電極からの出力電流値が高い範囲に設定してもよい。例えばプロテアーゼの消化温度は、図28でFAOD電極からの出力電流値が高い60℃付近あるいは60℃から70℃の間に設定してもよい。プロテアーゼの消化温度は、50℃、55℃、又は60より高く、又はそれ以上であってもよい。プロテアーゼの消化温度は、プロテアーゼの失活温度以下又は未満であってもよい。いくつかの実施形態では、プロテアーゼの消化温度は、FAODの至適温度範囲と異なっていてもよい。
【0199】
<実施例3>
ケトアミンオキシダーゼ(FAOD)の動作温度を検討した。
N-ε-(1-デオキシフルクトシル)-L-リジン(FK)のトリフルオロ酢酸塩(株式会社ペプチド研究所)をTES緩衝液に溶かして12.8μMのFK溶液を作成した。このFK溶液を導入した際の、FAOD電極からの出力電流値を、10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃の各温度において測定した(図28の(b))。
【0200】
図28に示すように、FAOD電極からの出力電流値は、40℃付近で最も高くなった。一つの解釈として、FAOD電極の至適温度範囲は40℃付近であるといえる。FAOD電極又はその近傍の温度を40℃付近に設定してもよい。いくつかの実施形態では、FAOD電極又はその近傍の温度は、プロテアーゼの至適温度又は温度範囲と異なっていてもよい。
【0201】
<実施例4>
FAOD電極の出力電流のGA濃度への依存性を検討した。
GA値の異なるアルブミン粉末をTES緩衝液に溶解した各溶液を、GAサンプル溶液として準備した。
プロテアーゼXIV(シグマアルドリッチジャパン合同会社)4mg、オリエンターゼ22BF(エイチビィアイ株式会社製)16mgをそれぞれTES緩衝液400μLに溶解させ、一晩透析した溶液をプロテアーゼ溶液として準備した。
【0202】
ラテックスビーズ(IMMUTEX P0113、コスモ・バイオ株式会社)分散溶液40μLをTES緩衝液400μLと混合し、そこに50mgの4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM、東京化成工業株式会社)を加えて溶解させ、この溶液を室温で2時間攪拌した。遠心分離(12,000rpm、20分間)して上澄みを除いた。TES緩衝液400μLを追加して、この溶液を攪拌した。同じ操作を3回繰り返してビーズを洗浄し、余剰分のDMT-MMを除いた。3回目に上澄みを除いた後に、透析したプロテアーゼ溶液400μLを加えて、この溶液を冷蔵庫内で4時間攪拌した。TES緩衝液を400μL追加して遠心分離(12,000rpm、20分間)後、上澄みを除いた。TES緩衝液800μLを加えて、この溶液を攪拌した。同じ操作を3回繰り返してビーズを洗浄し、余剰分のプロテアーゼを除いた。3回目に上澄みを除いた後に、200μLのTES緩衝液を加えて、この溶液を冷蔵庫内で保存した。
【0203】
1.67mg/mLのGAサンプル溶液60μLとプロテアーゼ固定化ビーズ溶液20μLとをよく混合した。この混合溶液を、アルミブロックインキュベータを用いて37℃で30分間加熱した。30分後にTES緩衝液40μLを加え、遠心分離(12,000rpm、30分間)後、その上澄みを分取した。この溶液を、消化GAサンプルとした。
【0204】
消化GAサンプル液を導入して、FAOD電極からの出力電流値を測定した。図29に、この出力電流値をGA濃度の関数として示す。図29に示すように、プロテアーゼによって切片の値が異なるものの、GA濃度と消化GAサンプル液によるFAOD電極からの出力電流値との間には直線的な関係があった。さらに、GA溶液をビーズに固定化したプロテアーゼを用いて消化し、その消化液によるFAOD電極からの出力電流値は、系のGA濃度に依存して変化することが分かった。したがって、固定化したプロテアーゼとFAOD電極を用いてGA濃度測定が可能であることが示された。
【0205】
6.測定方法
以下、本開示に係る測定方法のいくつかの実施形態について説明する。
【0206】
糖化タンパク質を含む測定溶液がセンサに導入される。固定化されたプロテアーゼは、糖化タンパク質を含む測定溶液と接触して、この糖化タンパク質を断片化してペプチド断片を生成する。生成後、ペプチド断片は拡散し、固定化されたケトアミンオキシダーゼに至る。固定化されたケトアミンオキシダーゼは、ペプチド断片のうち、糖化されたアミノ酸残基を含むペプチド断片から、過酸化水素を発生させる。過酸化水素検出器は、前記ケトアミンオキシダーゼで発生した過酸化水素を検出する。
【0207】
いくつかの実施形態では、測定する糖化タンパク質は、糖化アルブミンであってもよい。
【0208】
いくつかの実施形態では、まず、固定化されたプロテアーゼと固定化されたケトアミンオキシダーゼと過酸化水素検出部とを備える糖化タンパク質センサを用意する。また、糖化タンパク質を含む測定溶液を用意する。次に、測定溶液を糖化タンパク質センサに導入する。糖化タンパク質センサを用いて測定溶液中の糖化タンパク質を検出する。
【0209】
いくつかの実施形態では、過酸化水素検出器の出力信号から、糖化タンパク質の濃度を求めてもよい。測定溶液中の糖化タンパク質を検出することが、測定溶液中の糖化タンパク質の濃度を求める又は算出することを含んでいてもよい。
【0210】
過酸化水素検出部からの出力信号と関連付けられた糖化タンパク質の濃度を求めてもよい。予め又は目的とする測定の前に、較正用溶液中の糖化タンパク質の濃度と過酸化水素検出器の出力信号との関連性、相関関係、関数などを求めてもよい。このようにして得られた参照データ、参照テーブル、関連性、相関関係、関数などを用いて又は参照して、測定溶液から得られた過酸化水素検出器の出力信号から、測定溶液中の糖化タンパク質の濃度を求めてもよい。例えば、検出器が電流を測定する場合には、その電流値と糖化タンパク質の濃度とが関連付けられたテーブル(較正線)に基づいて、電気回路で測定された電流値から、このテーブルを参照して、糖化タンパク質の濃度を求める演算をしてもよい。関連性などは、メイン(第一)センサからの電流値に基づく濃度換算値と、サブ(第二)センサからの電流値に基づく濃度換算値との差分を求める演算であってもよい。
【0211】
いくつかの実施形態では、糖化タンパク質を検出してもよく、ある閾値以上あるいはより高い場合の糖化タンパク質があることを検出してもよく、糖化タンパク質の濃度を求めてもよく、糖化タンパク質を定量してもよく、タンパク質の糖化度を求めてもよい。
【0212】
いくつかの実施形態では、測定溶液中での測定対象である糖化タンパク質(糖化タンパク質)とそれに対応する非糖化タンパク質を併せた総タンパク質の量又はその溶液中濃度を求めてもよい。糖化タンパク質は糖化アルブミンであってもよい。
【0213】
いくつかの実施形態では、対象タンパク質の総量の濃度に対する糖化タンパク質(対象タンパク質のうち糖化されたもの)の濃度の比率又は割合を求めてもよい。いくつかの実施形態では、さらにこの比率から前回の測定から今回の測定までの期間での平均血糖値を換算して求めてもよい。いくつかの実施形態では、連続する2回の測定から求めた当該比率から、該当する期間の平均血糖値を換算して求めてもよい。いくつかの実施形態では、複数回の測定から得られた当該比率から該当する期間の平均血糖値を求めてもよい。いくつかの実施形態では、平均血糖値は、複数回の測定から得られた当該比率の和を当該回数で割ることで求めてもよい。いくつかの実施形態では、平均血糖値は、各回で得られた当該比率について重み付けを施した関数として求めてもよく、その関数は一例として、重み付けは、より新しい測定回で得られた当該比率についてより大きく設定された関数として求めてもよい。
【0214】
いくつかの実施形態では、糖化タンパク質濃度の測定をユーザに注意喚起などの報知をしてもよい。
【0215】
ユーザとは、実際に糖化タンパク質センサを使用する者であってもよく、自己又は他人の糖化タンパク質の測定をしている者、測定を予定している者、測定を義務付けられ又は推奨されている者などを意味する。ユーザは、個人であってもよく、一人であってもよく複数人であってもよく、少なくとも一人であってもよい。ユーザは、一つ、複数又は少なくとも一つの法人や会社などの組織であってもよい。
【0216】
ユーザに対する報知は、所定あるいは適切なタイミングで行われてもよい。1回目以降の測定については、一定又は不定の間隔で報知が行われてもよい。任意の二つの測定の間隔は、3日、5日、6日、7日、10日、15日、20日、30日、40日、50日、60日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、1か月、2か月月、3か月、4か月、5か月、6か月であってもよく、その他の期間であってもよい。糖化アルブミンの測定には、7日、10日、15日、20日、1週間、2週間、3週間などの期間で報知されてもよい。
【0217】
いくつかの実施形態では、複数の測定の間に洗浄を行ってもよい。洗浄は、固定化されたプロテアーゼと固定化されたケトアミンオキシダーゼと検出部との全体又は部分に対して、純水、生理食塩水、TESなどの緩衝液を流すことを含んでいてもよい。
【0218】
本開示のいくつかの実施形態に係るプログラム又はコンピュータプログラムは、本出願に記載の測定方法に含まれる各ステップをコンピュータに実行させてもよく、コンピュータに読み出して実行させてもよい。本開示のいくつかの実施形態に係るコンピュータ可読記憶媒体は、本出願に記載の測定方法に含まれる各ステップをコンピュータに実行さるためのプログラム又はコンピュータプログラムを記憶していてもよい。
【0219】
A01
固定化されたプロテアーゼと、
固定化されたケトアミンオキシダーゼと、
過酸化水素検出部と、
を備える糖化タンパク質センサ。
A01a
前記固定化されたケトアミンオキシダーゼは前記過酸化水素検出部に近接して配置された、
実施形態A01に記載の糖化タンパク質センサ。
A01b
前記固定化されたプロテアーゼは前記固定化されたケトアミンオキシダーゼに近接して配置された、
実施形態A01aに記載の糖化タンパク質センサ。
A01c
測定対象である液体を収容する液体収容部を更に備える、
実施形態A01からA01bのいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
A01d
前記液体収容部の容積は100μL以下である、
実施形態A01cに記載の糖化タンパク質センサ。
A02
過酸化水素検出部と、
前記過酸化水素検出部上に配置され、固定化されたプロテアーゼと固定化されたケトアミンオキシダーゼとを含む酵素層と、
を備える糖化タンパク質センサ。
A03
前記酵素層は、固定化されたプロテアーゼを含むプロテアーゼ層と固定化されたケトアミンオキシダーゼを含むケトアミンオキシダーゼ層とを積層して有する、
実施形態A02に記載の糖化タンパク質センサ。
A04
前記ケトアミンオキシダーゼ層と前記プロテアーゼ層とは、前記過酸化水素検出部に近い方から、前記ケトアミンオキシダーゼ層、前記プロテアーゼ層の順に積層されている、
実施形態A03に記載の糖化タンパク質センサ。
A05
前記ケトアミンオキシダーゼ層は、第一のケトアミンオキシダーゼ層と第二のケトアミンオキシダーゼ層とを含み、
前記第一のケトアミンオキシダーゼ層と前記プロテアーゼ層と第二のケトアミンオキシダーゼ層とがこの順に積層されている、
実施形態A03に記載の糖化タンパク質センサ。
A06
前記酵素層は、固定化されたケトアミンオキシダーゼを含むケトアミンオキシダーゼ層と、前記ケトアミンオキシダーゼ層の前記過酸化水素検出部に対して反対側の面に固定化されたプロテアーゼとを備える、
実施形態A02に記載の糖化タンパク質センサ。
A07
前記過酸化水素検出部と前記酵素層との間に配置されたイオン交換樹脂を更に備える、
実施形態A02からA06のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
A08
前記固定化されたプロテアーゼは、前記固定化されたケトアミンオキシダーゼから離れて配置された、
実施形態A01に記載の糖化タンパク質センサ。
A09
前記固定化されたプロテアーゼを収容するプロテアーゼ収容部と、
前記固定化されたケトアミンオキシダーゼを収容し、前記プロテアーゼ収容部と流体連結されたケトアミンオキシダーゼ収容部と、
前記プロテアーゼ収容部から前記ケトアミンオキシダーゼ収容部に液体を送る送液機構と、
を備える、
実施形態A08に記載の糖化タンパク質センサ。
A10
前記プロテアーゼ及び/又は前記ケトアミンオキシダーゼを加熱するヒータを更に備える、
実施形態A08又はA09に記載の糖化タンパク質センサ。
A11
前記プロテアーゼ収容部を加熱するプロテアーゼ用ヒータを更に備える、
実施形態A08又はA09に記載の糖化タンパク質センサ。
A12
前記プロテアーゼ用ヒータは、前記プロテアーゼ収容部を、40℃以上又は50℃以上に加熱するように構成された、
実施形態A11に記載の糖化タンパク質センサ。
A13
前記プロテアーゼ収容部又はプロテアーゼの温度を測定するプロテアーゼ用温度センサを更に備える、
実施形態A11又はA12に記載の糖化タンパク質センサ。
A14
前記プロテアーゼ用温度センサからの情報に基づいて、前記プロテアーゼ用ヒータの発熱量を制御する温度制御機構を更に備える、
実施形態A11からA13のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
A15
前記ケトアミンオキシダーゼ収容部を加熱するケトアミンオキシダーゼ用ヒータを更に備える、
実施形態11からA14のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
A16
前記ケトアミンオキシダーゼ用ヒータは、前記ケトアミンオキシダーゼ収容部を、室温以上50℃以下の温度で加熱するように構成された、
実施形態A15に記載の糖化タンパク質センサ。
A17
前記ケトアミンオキシダーゼ収容部又はケトアミンオキシダーゼの温度を測定するケトアミンオキシダーゼ用温度センサを更に備える、
実施形態A15又はA16に記載の糖化タンパク質センサ。
A18
前記ケトアミンオキシダーゼ用温度センサからの情報に基づいて、前記ケトアミンオキシダーゼ用ヒータの発熱量を制御する温度制御機構を更に備える、
実施形態A15からA17のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
A19
前記プロテアーゼ収容部と前記ケトアミンオキシダーゼ収容部との間に、双方に流体連結されて配置され、冷却機構を備える冷却部を更に備える、
実施形態A11からA18のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
A21
被験物質を含む溶液の上流方向から、
前記固定化されたプロテアーゼ、
前記固定化されたケトアミンオキシダーゼ、
前記過酸化水素検出部、
の順に配置された、
実施形態1に記載の糖化タンパク質センサ。
A22
前記プロテアーゼは基材に固定されている、
実施形態A01からA21のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
A23
前記プロテアーゼはビーズに固定されている、
実施形態A22に記載の糖化タンパク質センサ。
A24
前記過酸化水素検出部は過酸化水素電極を含む、
実施形態A01からA23のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
A25
過酸化水素検出器は光検出器を含む、
実施形態A01からA23のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
A26
過酸化水素検出器は、過酸化水素と反応する発光試薬と光検出器とを含む、
実施形態A01からA23のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
A27
第一の固定化されたプロテアーゼと、
第一の固定化されたケトアミンオキシダーゼと、
第一過酸化水素検出部と、
を備える第一センサと、
第二の固定化されたケトアミンオキシダーゼと、
第二過酸化水素検出部と、
を備える第二センサと、
を備える糖化タンパク質センサ。
A28
第一過酸化水素検出部と、
前記第一過酸化水素検出部上に配置され、固定化されたプロテアーゼと固定化されたケトアミンオキシダーゼとを含む第一酵素層と、
第二過酸化水素検出部と、
前記第二過酸化水素検出部上に配置され、実質的に前記固定化されたケトアミンオキシダーゼからなる酵素を含む第二酵素層と、
を備える糖化タンパク質センサ。
A29
前記第一過酸化水素検出部と前記第二過酸化水素検出部とは過酸化水素電極を含む、
実施形態A28に記載の糖化タンパク質センサ。
A30
前記第一過酸化水素検出部は、第一作用極と、対極及び参照極の一方とを備え、
前記第二過酸化水素検出部は、第二作用極と、対極及び参照極の他方とを備える、
実施形態A29に記載の糖化タンパク質センサ
A31
前記対極に電位を印加し、前記第一作用極に流れる電流と前記第二作用極に流れる電流とを測定する電流測定回路を更に備える、
実施形態A29又はA30に記載の糖化タンパク質センサ。
A32
前記糖化タンパク質は糖化アルブミンを含む、
実施形態A01からA31のいずれか一項に記載の糖化タンパク質センサ。
A33
アルブミンセンサを更に備える、
実施形態A32に記載の糖化タンパク質センサ。
B01
糖化タンパク質を含む測定溶液を用意する(provide)ことと、
前記測定溶液を固定化されたプロテアーゼに導入する(direct)ことと、
前記固定化されたプロテアーゼを用いて、前記糖化タンパク質を断片化してペプチド断片を生成することと、
固定化されたケトアミンオキシダーゼを用いて、前記ペプチド断片のうち、糖化されたアミノ酸残基を含むペプチド断片から、過酸化水素を発生させることと、
過酸化水素検出器を用いて、前記ケトアミンオキシダーゼで発生した過酸化水素を検出すること、
を備える、糖化タンパク質の測定方法。
B02
固定化されたプロテアーゼと、
固定化されたケトアミンオキシダーゼと、
過酸化水素検出部と、
を備える糖化タンパク質センサを用意することと、
糖化タンパク質を含む測定溶液を用意する(provide)ことと、
前記測定溶液を前記糖化タンパク質センサに導入することと、
前記糖化タンパク質センサを用いて前記測定溶液中の前記糖化タンパク質を検出すること、
を備える、糖化タンパク質の測定方法。
B03
前記過酸化水素検出部からの出力信号と関連付けられた糖化タンパク質の濃度を求めることを更に備える、
実施形態B02に記載の、糖化タンパク質の測定方法。
B04
前記糖化タンパク質は、糖化アルブミン又は糖化ヘモグロビンであって、
前記方法は、
アルブミンの濃度又はヘモグロビンの濃度を求めることと、
前記糖化アルブミンの濃度又は前記糖化ヘモグロビンの濃度と、前記アルブミンの濃度又は前記ヘモグロビンの濃度との比率である糖化アルブミン値又は糖化ヘモグロビン値を求めることと、
を更に備える、
実施形態B02又はB03に記載の、糖化タンパク質の測定方法。
B05
1週間、2週間、3週間、4週間又は1月ごとに、ユーザに対して糖化タンパク質濃度の測定を行うべきことを報知すること、
を更に備える、
実施形態B02からB04のいずれか一項に記載の、糖化タンパク質の測定方法。
B06
前記糖化タンパク質は糖化アルブミンを含む、
実施形態B02からB05のいずれか一項に記載の、糖化タンパク質の測定方法。
B07
複数回の前記アルブミンの濃度又は前記ヘモグロビンの濃度との比率から、平均血糖値を換算して求めることを更に備える、
実施形態B06に記載の、糖化タンパク質の測定方法。
B08
実施形態B02からB07のいずれか一項に記載の測定方法に含まれる各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
B09
実施形態B07に記載のプログラムを記憶したコンピュータ可読記憶媒体。
B10
第一過酸化水素検出部と、
前記第一過酸化水素検出部上に配置され、固定化されたプロテアーゼと固定化されたケトアミンオキシダーゼとを含む第一酵素層と、
前記第二過酸化水素検出部上に配置され、実質的に前記固定化されたプロテアーゼからなる酵素を含む第二酵素層と、
を備える糖化タンパク質センサを用意することと、
糖化タンパク質を含む測定溶液を前記糖化タンパク質センサに導入することと、
前記第一過酸化水素検出部からの出力信号と、前記第二過酸化水素検出部からの出力信号とから、これらの出力信号と関連付けられた糖化タンパク質の濃度を求めること、
を備える、糖化タンパク質の測定方法。
C01
基板を用意することと、
前記基板上に過酸化水素検出部を配置することと、
前記基板上にケトアミンオキシダーゼを固定化することと、
前記基板上にプロテアーゼを固定化することと、
を備える、糖化タンパク質センサの製造方法。
C02
前記基板上にケトアミンオキシダーゼを固定化することは、前記過酸化水素検出部上にケトアミンオキシダーゼを固定化することを含み、
前記基板上にプロテアーゼを固定化することは、前記過酸化水素検出部上にプロテアーゼを固定化することを含む、
実施形態C01に記載の、糖化タンパク質センサの製造方法。
C03
前記過酸化水素検出部上にケトアミンオキシダーゼを固定化することは、第一基材にケトアミンオキシダーゼが固定されたケトアミンオキシダーゼ層を形成することを含み、
前記過酸化水素検出部上にプロテアーゼを固定化することは、前記ケトアミンオキシダーゼ層上に、第二基材にプロテアーゼが固定されたプロテアーゼ層を形成することを含む、
実施形態C02に記載の製造方法。
C04
前記過酸化水素検出部上にケトアミンオキシダーゼを固定化することは、前記プロテアーゼ層上に、第三基材にケトアミンオキシダーゼが固定された第二のケトアミンオキシダーゼ層を形成することを更に含む、
実施形態C03に記載の製造方法。
C05
前記過酸化水素検出部上にケトアミンオキシダーゼを固定化することと、前記過酸化水素部上にプロテアーゼを固定化することとは、前記ケトアミンオキシダーゼと前記プロテアーゼとを共通基材と混合して、前記過酸化水素部上に同一の酵素層を形成することを含む、
実施形態C02に記載の製造方法。
C06
基板を用意することと、
前記基板上に第一過酸化水素検出部と第二過酸化水素検出部とを形成することと、
前記第一過酸化水素検出部上に、第一ケトアミンオキシダーゼとプロテアーゼとを固定することと、
前記第二過酸化水素検出部上に、第二ケトアミンオキシダーゼを固定することと、
を備える、
糖化タンパク質センサの製造方法。
C07
前記基板を用意することは、第一基板と第二基板とを用意することを備え、
前記基板上に第一過酸化水素検出部と第二過酸化水素検出部とを形成することは、前記第一基板上に第一過酸化水素検出部を形成し、前記第二基板上に第二過酸化水素検出部を形成することを備え、
本体基板を用意することと、
前記本体基板上に、前記第一基板と前記第二基板とを接合することと、
を更に備える、
実施形態C06に記載の製造方法。
【0220】
以上、本開示の幾つかの実施形態及び実施例について説明したが、これらの実施形態及び実施例は、本開示を例示的に説明するものである。例えば、上記各実施形態は本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必要に応じて寸法、構成、材質、回路を追加変更してもよい。特許請求の範囲は、本開示の技術的思想から逸脱することのない範囲で、実施形態に対する多数の変形形態を包括するものである。したがって、本明細書に開示された実施形態及び実施例は、例示のために示されたものであり、本開示の範囲を限定するものと考えるべきではない。
【符号の説明】
【0221】
100 センサ
101 プロテアーゼ
102 ケトアミンオキシダーゼ
103 過酸化水素検出部
104 固定化層
105 基材
106 架橋剤
107 シランカップリング剤
111 酵素層
151 糖化タンパク質
152 タンパク質
153 糖
154 糖化されたペプチド断片
155 糖化されていないペプチド断片
156 過酸化水素
200 センサ
201 プロテアーゼ
202 ケトアミンオキシダーゼ
203 過酸化水素検出部
204 基材
211 酵素層
300 センサ
301 プロテアーゼ
302 ケトアミンオキシダーゼ
303 過酸化水素検出部
304 基材
305 接合剤
311 酵素層
400 センサ
401 プロテアーゼ
402 ケトアミンオキシダーゼ
403 過酸化水素検出部
404,414 基材
411 プロテアーゼ層
412 ケトアミンオキシダーゼ層
500 センサ
501 プロテアーゼ
502 ケトアミンオキシダーゼ
503 過酸化水素検出部
506 基板
504,514 基材
511 固定化プロテアーゼ部
512 固定化ケトアミンオキシダーゼ部
600 センサ
601 プロテアーゼ
602 ケトアミンオキシダーゼ
603 過酸化水素検出部
604 架橋剤
612 ケトアミンオキシダーゼ層
614 基材
700 センサ
701 プロテアーゼ
702 ケトアミンオキシダーゼ
704,714 基材
705 シランカップリング剤
706 絶縁基板
711 プロテアーゼ層
712 ケトアミンオキシダーゼ層
730 過酸化水素電極
731 対極
732 参照極
733 作用極
770 電気回路
771 オペアンプ
772 電圧発生回路
773 電流測定回路
800 センサ
801 プロテアーゼ
802 ケトアミンオキシダーゼ
804,814 基材
807 イオン交換樹脂
811 プロテアーゼ層
812 ケトアミンオキシダーゼ層
1000 センサ
1000a メインセンサ
1000b サブセンサ
1001 プロテアーゼ
1002 ケトアミンオキシダーゼ
1003a,1003b 過酸化水素検出部
1004,1014 基材
1011a,1011b 酵素層
1030 演算部
1070a,1070b 電気回路
1100 センサ
1100a メインセンサ
1100b サブセンサ
1101 プロテアーゼ
1102 ケトアミンオキシダーゼ
1103a,1103b 過酸化水素検出部
1104,1114,1124 基材
1111a,1111b プロテアーゼ層
1112a ケトアミンオキシダーゼ層
1011a,1011b 酵素層
1130 演算部
1170a,1170b 電気回路
1200 センサ
1200a メインセンサ
1200b サブセンサ
1201 プロテアーゼ
1202 ケトアミンオキシダーゼ
1203a,1203b 過酸化水素検出部
1204 架橋剤
1214,1224 基材
1212a ケトアミンオキシダーゼ層
1212b 酵素層
1230 演算部
1270a,1270b 電気回路
1300 センサ
1300a メインセンサ
1300b サブセンサ
1301 プロテアーゼ
1302 ケトアミンオキシダーゼ
1304,1324 基材
1305a,1305b シランカップリング剤
1306 基板
1311a,1311b 酵素層
1330a,1330b 過酸化水素電極
1331 対極
1332 参照極
1333a,1333b 作用極
1370 電気回路
1371 オペアンプ
1372 電圧発生回路
1373a,1373b 電流測定回路
1400 センサ
1401 プロテアーゼ
1402 ケトアミンオキシダーゼ
1404 ビーズ
1414 基材
1431 試薬
1432 光検出器
1452 液体導入口
1455 プロテアーゼ収容部
1456 ケトアミンオキシダーゼ収容部
1457 検出反応器
1460 ヒータ
1500 センサ
1502 ケトアミンオキシダーゼ
1504 ビーズ
1600 センサ
1601 プロテアーゼ
1602 ケトアミンオキシダーゼ
1603 過酸化水素検出器
1604 ビーズ
1611 酵素層
1614 基材
1652 液体導入口
1655 プロテアーゼ収容部
1656 ケトアミンオキシダーゼ収容部
1660 ヒータ
1700 センサ
1700a メインセンサ
1700b サブセンサ
1703a,1703b 過酸化水素検出器
1711a 酵素層
1712a,1712b ケトアミンオキシダーゼ層
1752 液体導入口
1755a プロテアーゼ収容部
1755b プロテアーゼがないチャンバ
1756a,1756b ケトアミンオキシダーゼ収容容器
1760 ヒータ
1800 センサ
1801 プロテアーゼ
1802 ケトアミンオキシダーゼ
1803 過酸化水素検出器
1804 ビーズ
1811 酵素層
1814 基材
1852 液体導入口
1855 プロテアーゼ収容部
1856 ケトアミンオキシダーゼ収容部
1858 冷却部/冷却用溶液収容部
1860,1861 ヒータ
1862 冷却回路/素子
2000 センサチップ
2006 基板
2011 酵素層
2031 対極
2032 参照極
2033 作用極
2034 液体検出電極
2041,2042,2043,2044 出力端子
2051 液体収容部
2052 流体導入口
2053 空気孔
2100 センサチップ
2100a,2100b センサ
2134 液体検出電極
2151 液体収容部
2152 流体導入口
2153 空気孔
2200 センサチップ
2200a メインセンサ
2200b サブセンサ
2206 基板
2221a,2221b 酵素層
2231 対極
2232 参照極
2233a,2233b 作用極
2300 センサチップ
2300a,2300b センサ
2311a,2311b 酵素層
2330a,2330b 過酸化水素電極
2340 出力端子
2340a,2340b,2341a,2341b ボンディングパッド
2351 液体収容部
2352 流体導入口
2353 空気孔
2360 基板
2400 センサチップ
2406 基板
2411 酵素層
2431 対極
2432 参照極
2433 作用極
2434 液体検出電極
2451 液体収容部
2452 流体導入口
2453 空気孔
3000 センサ
3000a メインセンサ
3000b サブセンサ
3001 プロテアーゼ
3002 ケトアミンオキシダーゼ
3004,3014 基材(BSA)
3005a,3005b シランカップリング剤
3006 絶縁基板
3009,3091 レジスト
3011a,3011b 酵素層
3030a,3030b 過酸化水素電極
4002,4102 ケトアミンオキシダーゼ
4003,4103 過酸化水素検出器
4006,4106 基板
4008,4108 保護
4012,4112 ケトアミンオキシダーゼ層
4014,4114 基材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B
図23C
図23D
図23E
図23F
図23G
図23H
図23I
図24
図25
図26
図27
図28
図29
【手続補正書】
【提出日】2023-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定化されたプロテアーゼと、
固定化されたケトアミンオキシダーゼと、
過酸化水素検出部と、
を備え
前記固定されたプロテアーゼは、前記固定されたケトアミンオキシダーゼから離れて配置されている、
る糖化タンパク質センサ。
【請求項2】
前記固定化されたプロテアーゼを収容するプロテアーゼ収容部と、
前記固定化されたケトアミンオキシダーゼを収容し、前記プロテアーゼ収容部と流体連結されたケトアミンオキシダーゼ収容部と、
前記プロテアーゼ収容部から前記ケトアミンオキシダーゼ収容部に液体を送る送液機構と、
を備える、
請求項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項3】
前記プロテアーゼの温度及び前記ケトアミンオキシダーゼの温度を個別に制御するように構成された温度調節機構を更に備える、
請求項1に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項4】
前記温度制御機構は、前記プロテアーゼ収容部を、40℃以上に加熱するように構成された、
請求項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項5】
前記プロテアーゼの温度を測定するプロテアーゼ用温度センサを更に備える、
請求項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項6】
前記温度制御機構は、前記ケトアミンオキシダーゼ収容部を、40℃以下の温度で加熱するように構成された、
請求項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項7】
前記ケトアミンオキシダーゼの温度を測定するケトアミンオキシダーゼ用温度センサを更に備える、
請求項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項8】
前記プロテアーゼ収容部と前記ケトアミンオキシダーゼ収容部との間に、双方に流体連結されて配置され、冷却機構を備える冷却部を更に備える、
請求項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項9】
前記プロテアーゼは基材に固定されている、
請求項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項10】
前記プロテアーゼはビーズに固定されている、
請求項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項11】
前記固定化されたケトアミンオキシダーゼは前記過酸化水素検出部に近接して配置された、
請求項1に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項12】
前記過酸化水素検出部は過酸化水素電極を含む、
請求項に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項13】
前記過酸化水素検出部と前記ケトアミンオキシダーゼとの間に配置されたイオン交換樹脂を更に備える、
請求項12に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項14】
前記糖化タンパク質は糖化アルブミンを含む、
請求項1又は30に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項15】
アルブミンセンサを更に備える、
請求項14に記載の糖化タンパク質センサ。
【請求項16】
第二の固定されたケトアミンオキシダーゼと、
固定されたプロテアーゼと、
前記固定されたケトアミンオキシダーゼと、
過酸化水素検出部と、
を、上流からこの順番で備え、
前記固定されたプロテアーゼは、前記固定されたケトアミンオキシダーゼから離れて配置されている、
糖化タンパク質センサ。