(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013043
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】超音波下穿刺補助具
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
A61B8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116938
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】堀端 篤
(72)【発明者】
【氏名】原賀 勇壮
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE11
4C601FF04
4C601FF06
4C601GC30
(57)【要約】
【課題】目的部位における吸引性を向上できる超音波下穿刺補助具を提供することを目的とする。
【解決手段】超音波下穿刺を行う際に使用される超音波下穿刺補助具1であって、超音波プローブPが装着されるプローブ装着部2と、プローブ装着部2に取り付けられると共に、超音波プローブPによって探知される目的部位Tの表面Sに密着して吸引する吸引ユニット3と、を備え、吸引ユニット3は、プローブ装着部2に取り付けられる支持管部42と、支持管部42の内部に連通可能に装着される筒状のパッド5と、を備え、パッド5の先端部52は、目的部位Tの表面Sに密着可能な可撓性を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波下穿刺を行う際に使用される補助具であって、
超音波プローブが装着される本体部と、
前記本体部に取り付けられると共に、前記超音波プローブによって探知される目的部位の表面を吸引する吸引ユニットと、を備え、
前記吸引ユニットは、
前記本体部に取り付けられる支持管部と、
前記支持管部の内部に連通可能に装着される筒状の吸着部と、を備え、
前記吸着部の先端部は、前記目的部位の表面に密着可能な可撓性を有している、超音波下穿刺補助具。
【請求項2】
前記先端部は、前記支持管部よりも可撓性が高く、且つ、前記目的部位との密着によって拡開可能である、請求項1記載の超音波下穿刺補助具。
【請求項3】
前記吸着部は、前記支持管部に装着された胴体部を備え、
前記先端部は、前記胴体部よりも内径が拡がっている、請求項1または2記載の超音波下穿刺補助具。
【請求項4】
前記先端部の外縁は、全周に亘って屈曲部を形成することなく湾曲部によって連続的に繋がっている請求項1~3のいずれか一項記載の超音波下穿刺補助具。
【請求項5】
前記本体部は、前記超音波プローブを保持するホールド部を備え、
前記吸着部は複数設けられており、
前記複数の吸着部は、前記ホールド部を挟むように対向して配置されている、請求項1~4のいずれか一項記載の超音波下穿刺補助具。
【請求項6】
前記本体部は、前記超音波プローブを囲んで保持するホールド部と、
前記ホールド部の前記超音波プローブに対面する内周面とは反対側の外周面から突出すると共に、前記支持管部が取り付けられるブラケット部と、を備え、
前記ブラケット部には、前記支持管部を支持する管装着部が設けられており、
前記管装着部と前記支持管部との間には、前記支持管部の移動を許容する遊びが設けられている、請求項1~5のいずれか一項記載の超音波下穿刺補助具。
【請求項7】
前記支持管部は、胴管部と、前記胴管部から張り出しており、前記胴管部の管軸線方向に並んで配置された一対のフランジ部とを備え、
前記管装着部は、前記胴管部が挿入されると共に、前記一対のフランジ部の間に配置される開口部と、前記開口部の周縁であり、前記一対のフランジ部に当接可能な係止座部とを備え、
前記係止座部の厚みは、前記一対のフランジ部同士の間隔よりも薄くなって前記遊びを形成している、請求項6記載の超音波下穿刺補助具。
【請求項8】
前記開口部と前記胴管部との間には、前記胴管部の傾動を許容する隙間を有し、前記隙間によって前記遊びが形成されている、請求項7記載の超音波下穿刺補助具。
【請求項9】
前記開口部には、前記管軸線に交差する側方が開放され、前記側方からの前記胴管部の挿入を受け入れる導入部が設けられており、
前記導入部には、前記胴管部の外径よりも幅が狭い抜け止め部が設けられている、請求項7または8記載の超音波下穿刺補助具。
【請求項10】
前記開口部には、前記管軸線に交差する側方が開放され、前記側方からの前記胴管部の挿入を受け入れる導入部が設けられており、
前記管装着部は、前記導入部に沿って設けられると共に、前記フランジ部の移動を案内するガイド溝を備えている、請求項7~9のいずれか一項記載の超音波下穿刺補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波下穿刺を行う際に使用される超音波下穿刺補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波による検査を行いながら神経ブロックや血管穿刺などを行う超音波下穿刺を行う場合がある。超音波下穿刺では、超音波ブローブを例えば頚部などの目的部位の表面に圧着させながら、目的部位の内部に存在する血管等の探索を行う。血管の中で特に静脈等は内部を流れる血液の圧が低いため、超音波プローブの圧着により、潰れてしまう可能性があり、針等の穿刺において、より高度の技術が要求される場合がある。また頚部は表面が湾曲しているのに対し、超音波プローブの皮膚接触面は平らであり、このため超音波プローブの中心部付近のみが頚部に強く当てられ、これによっても静脈を圧迫しているという問題があった。
【0003】
そこで、この血管等の潰れを防ぐために、超音波プローブを当てながら目的部位の表面を吸引することで目的部位の内部の血管等を実質的に拡張させ、針等の穿刺を容易にする技術が開示されている(特許文献1参照)。この技術では、目的部位の表面を吸引しながら超音波プローブで検査するために、特別な補助具が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超音波下穿刺を行う際において、上記補助具を用いる技術的意義は非常に高い。ここで、上記補助具を用いる場合に、施術する目的部位は必ずしも平担ではなく、湾曲していたり柔らかであったりして目的部位の吸引操作において、更なる工夫や熟練性を有するという課題があった。
【0006】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、目的部位における吸引性を向上できる超音波下穿刺補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、超音波下穿刺を行う際に使用される超音波下穿刺補助具であって、超音波プローブが装着される本体部と、本体部に取り付けられると共に、超音波プローブによって探知される目的部位の表面を吸引する吸引ユニットと、を備え、吸引ユニットは、本体部に取り付けられる支持管部と、支持管部の内部に連通可能に装着される筒状の吸着部と、を備え、吸着部の先端部は、目的部位の表面に密着可能な可撓性を有している。
【0008】
この超音波下穿刺補助具を使用する際には、本体部に超音波プローブを装着し、吸引ユニットに所定の吸引装置を接続する。次に、超音波プローブ及び吸引ユニットを目的部位の表面に設置する。次に、吸引ユニットを介して目的部位の表面を吸引しながら術者が引き上げることにより、目的部位の表面は持ち上がり、内部が拡張する。ここで、超音波プローブは目的部位の表面に圧着されているが、目的部位の内部は拡張しているので、超音波プローブの圧着によっても潰れにくい。更に、吸引ユニットは吸着部を備え、吸着部の先端部は、目的部位に密着可能な可撓性を有している。目的部位の表面は柔軟で複雑な形状であるが、吸着部の先端部は、目的部位に密着可能な可撓性を有しているため、目的部位の形状に追従し易く、目的部位との密着性が高まって目的部位の吸引性を容易に向上できる。
【0009】
上記の超音波下穿刺補助具において、先端部は、支持管部よりも可撓性が高く、且つ、目的部位との密着によって拡開可能であってもよい。支持管部の可撓性が低ければ変形し難くなるため、本体部への安定した取り付けに有利である。これに対し、先端部の可撓性を支持管部よりも高くすることで目的部位の複雑な形状に対して追従し易くなり、さらに、先端部は、目的部位との密着によって拡開可能であるため、密着時に目的部位に接する領域が増えてシール性は向上し、目的部位の吸引性の向上に有利である。
【0010】
上記の超音波下穿刺補助具において、吸着部は、支持管部に装着された胴管部を備え、先端部は、胴管部よりも内径が拡がっていてもよい。先端部を目的部位に密着させる際に、先端部の内径が拡がっていれば、先端部が内側に折り込まれて隙間が生じるような不具合は生じ難く、吸引性の向上に有利となる。
【0011】
上記の超音波下穿刺補助具において、先端部の外縁は、全周に亘って屈曲することなく湾曲しながら連続的に繋がっていてもよい。先端部の外縁は、目的部位への密着の際に隙間を生じ易い屈曲部分を持たないので、吸引性の向上に有利となる。
【0012】
上記の超音波下穿刺補助具において、本体部は、超音波プローブを保持するホールド部を備え、吸着部は複数設けられており、複数の吸着部は、ホールド部を挟むように対向して配置されていてもよい。目的部位は、超音波プローブを挟んだ両脇から吸引されるようになり、超音波プローブが圧着される部位を中心として内部の適切な拡張を行い易くなる。
【0013】
上記の超音波下穿刺補助具において、本体部は、超音波プローブを囲んで保持するホールド部と、ホールド部の超音波プローブに対面する内周面とは反対側の外周面から突出すると共に、支持管部が取り付けられるブラケット部と、を備え、ブラケット部には、支持管部を支持する管装着部が設けられており、管装着部と支持管部との間には、支持管部の移動を許容する遊びが設けられていてもよい。目的部位の表面は柔軟で複雑な形状である。吸着部が装着された支持管部は、管装着部に対して移動可能であるため、目的部位の複雑な形状にも追従し易く、目的部位との密着性を維持して目的部位の吸引性を向上できる。
【0014】
上記の超音波下穿刺補助具において、支持管部は、胴管部と、胴管部から張り出しており、胴管部の管軸線方向に並んで配置された一対のフランジ部とを備え、管装着部は、胴管部が挿入されると共に、一対のフランジ部の間に配置される開口部と、開口部の周縁であり、一対のフランジ部に当接可能な係止座部とを備え、係止座部の厚みは、一対のフランジ部同士の間隔よりも薄くなって遊びを形成していてもよい。支持管部は、胴管部の長手方向(管軸線向)に移動可能となり、目的部位の凹凸表面に追従し易く、目的部位の吸引性を容易に向上できる。
【0015】
上記の超音波下穿刺補助具において、開口部と胴管部との間には、胴管部の傾動を許容する隙間を有し、この隙間によって遊びが形成されていてもよい。支持管部の胴管部は、開口部に対して傾動可能であるため、目的部位の湾曲した傾斜表面に追従し易く、目的部位の吸引性を容易に向上できる。
【0016】
上記の超音波下穿刺補助具において、開口部には、管軸線に交差する側方が開放され、側方からの胴管部の挿入を受け入れる導入部が設けられており、導入部には、胴管部の外径よりも幅が狭い抜け止め部が設けられていてもよい。抜け止め部により胴管部が開口部から離脱するのを防止できる。
【0017】
上記の超音波下穿刺補助具において、開口部には、管軸線に交差する側方が開放され、側方からの胴管部の挿入を受け入れる導入部が設けられており、管装着部は、導入部に沿って設けられると共に、フランジ部の移動を案内するガイド溝を備えていてもよい。ガイド溝により、フランジ部を介して胴管部は、適切な位置に案内される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、目的部位における吸引性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態に係る超音波下穿刺補助具を示し、(a)の図は斜視図、(b)の図は目的部位の表面に設置している状態を示す側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る超音波下穿刺補助具の平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る超音波下穿刺補助具の底面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係り、吸着構造の一部を破断して示す側面図である。
【
図5】
図5は支持管部及びパッドを示し、(a)の図は、パッドの一部を破断して示す側面図であり、(b)の図は(a)の図のb-b線に沿った断面図である。
【
図6】
図6は、パッドを底面側から見た図であり、(a)の図は本実施形態に係るパッドを示す図であり、(b)~(d)の図は変形例に係るパッドを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る超音波下穿刺補助具の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1に示されるように、実施形態に係る超音波下穿刺補助具(以下、「補助具1」と称する)は、目的部位Tの表面Sを、吸引によって牽引する。目的部位Tは、穿刺対象となる皮膚などである。術者が目的部位Tを吸引して持ち上げる(牽引して持ち上げる)ことで、超音波検査の際、神経ブロックや血管穿刺における目的部位Tの潰れ等を防止し,穿刺作業を補助することが可能となる。また、目的部位Tを吸引によって牽引する構造を採用することで、非侵襲的に牽引を行うことが可能となる。さらに、この構造によれば、牽引の度合いを調整し易くなり、補助具1としての取扱性や操作性を向上させるという有利な効果がある。
【0022】
補助具1は、超音波プローブPが装着されるプローブ装着部2(本体部)と、超音波プローブPによって探知される目的部位Tの表面Sを吸引する吸引ユニット3とを備えている。本実施形態に係る吸引ユニット3は減圧吸引式を採用しており、複数の吸引構造4(
図2及び
図3参照)を備えている。複数の吸引構造4は、それぞれプローブ装着部2に着脱自在に装着されている。なお、吸引ユニット3は、プローブ装着部2に一体的に形成されるようにしてもよい。
【0023】
超音波プローブPは、深触子とも呼ばれる装置であり、超音波を発生すると共に、はね返ってきた超音波を探知して撮像する。超音波プローブPは、例えば圧電材、音響整合層、音響レンズ等の構造を備えており、使用する周波数帯域や特性等は用途によって適宜に選択できる。
【0024】
プローブ装着部2及び吸引ユニット3は、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン(以下「ABS樹脂」という)、アクリルニトリル・スチレン(以下「AS樹脂」という)、塩化ビニル系樹脂、メタクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテルなどを使用して製造できる。本実施形態に係るプローブ装着部2と吸引ユニット3とは別体であるが、一体成形によって製造してもよい。また、プローブ装着部2及び吸引ユニット3は、同一の材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。また、目的部位Tの表面Sを外部から視認できるように、補助具1の少なくとも一部分は透明あるいは半透明であると望ましい。
【0025】
図2、
図3及び
図4に示されるように、プローブ装着部2は、超音波プローブPを囲んで保持するホールド部21を備えている。ホールド部21は、超音波プローブPの外形に対応し、平面視で、例えば略矩形の筒状体である。ホールド部21は、両方の端部が開放されている。一方の端部(上端部21c)は、超音波プローブPを装着する際の受け入れ口であり、他方の端部(下端部21d)は、目的部位Tに対向する部分である。ホールド部21の下部は、下端部21dに近くなるほど縮径したテーパ状を呈している。
【0026】
超音波プローブPは、ホールド部21の上端部21c側から挿入され、超音波を照射する照射部Paがホールド部21の下端部21dから突出するように装着される。ホールド部21の内側には、超音波プローブPが納まる略矩形の領域(以下、「保持領域HA」と称する)が形成されている。超音波プローブPは、ホールド部21に挿入されて、ホールド部21の内周面21aに圧着され、所定位置に固定される。また、ホールド部21は弾性変形可能であり(可撓性を有し)、超音波プローブPの圧着状態を解消するように変形させることで、ホールド部21から超音波プローブPを取り外すことができる。なお、ホールド部21の超音波プローブPに対面する内周面21aには、超音波プローブPの移動を規制する位置決め部が設けられていてもよい。
【0027】
ホールド部21には、穿刺用の針Nの穿刺方向を案内するガイド部21eが設けられている。ガイド部21eは、ホールド部21の下端部21dから突出している板片である。ガイド部21eの先端(下端)には、針Nの穿刺方向を案内する溝21fが設けられている。
【0028】
プローブ装着部2は、ホールド部21の内周面21aとは反対側の外周面21bから突出するブラケット部22を備えている。本実施形態に係るブラケット部22は、ホールド部21の外周面21bの二箇所(複数個所)から外側に向けて突き出すように設けられており、特に保持領域HAを挟んで対称となる位置に設けられている。ブラケット部22には管装着部23が設けられており、管装着部23には、吸引ユニット3の吸引構造4が組付けられるように装着される。
【0029】
本実施形態に係る吸引ユニット3は、二つ(複数)の吸引構造4を備えており、二つの吸引構造4は実質的に同一の構造を備えている。したがって、以下の説明では、主として一方の吸引構造4を説明し、他方の吸引構造4については、同一の参照番号等を付して詳しい説明を省略する。なお、吸引ユニット3は単一の吸引構造4によって形成されていてもよい。
【0030】
図2及び
図4に示されるように、吸引構造4は、主管部41と、主管部41の内部に連通する支持管部42と、支持管部42に装着されるパッド5と、を備えている。主管部41は、ブラケット部22に沿うように延在しており、例えば、減圧吸引を行う吸引装置に接続されている。ブラケット部22は、ホールド部21の下端部21d側を向く表面(下面22b)と反対側の表面(上面22a)とを備えている。主管部41はブラケット部22の上面22aに沿って配置されている。パッド5は、吸盤状の部材であり、吸着部の一例である。
【0031】
主管部41には、単体または複数の支持管部42が設けられている。本実施形態では、一本の主管部41に対して二本の支持管部42を設けた態様を例示するが、三本以上であってもよい。なお、必要以上に多くなると操作性を損なう可能性があるため、一本の主管部41に対して二本~四本、つまり、両方の主管部41に対する合計で、四本~八本の支持管部42を設けるのが望ましい。また、各主管部41に対し、それぞれ同数の支持管部42を設けることが望ましいが、異なる本数の支持管部42を設けるようにしてもよい。
【0032】
支持管部42は、主管部41に対して交差(例えば、直交)する方向に突出し、ブラケット部22を貫通するように延在している。支持管部42の長手方向は、実質的に超音波プローブPで発生する超音波の送受信方向になっている。以下、支持管部42の長手方向を管軸線Ls方向として説明する。
【0033】
支持管部42は、管軸線Ls方向において主管部41とは反対側に開放された端部(開放端部)を備えている。支持管部42の開放端部を含む一部分は、主管部41に連絡している部分に比べて内径が拡がっている円筒状のパッド装着部42mである。パッド装着部42mには、外側に張り出すように設けられたフランジ状のストッパ42nが設けられている。
【0034】
パッド装着部42mの内径D1は、例えば、8mm以上、23mm以下にすることができ、8mm以上、20mm以下にすることができ、8mm2以上、16mm以下にすることができる。パッド装着部42mの内部面積、つまり管軸線Lsに直交する断面においてパッド装着部42mに囲まれた内側領域の面積は、例えば、0.5cm2以上、4cm2以下にすることができ、0.5cm2以上、3cm2以下にすることができ、0.5cm2以上、2cm2以下にすることができる。
【0035】
パッド5は筒状であり、パッド装着部42mに外装されて押し込まれ、ストッパ42nまで到達して位置決めされる。パッド5の形状である「筒状」とは、支持管部42の開放端部を取り囲んで内部に陰圧空間を形成可能となる形状を意味している。つまり、支持管部42に装着された際にリーク個所となる隙間を生じない形状であればよく、円筒のみならず、断面視で楕円状や矩形状等の形状が広く含まれる。
【0036】
パッド5は、目的部位Tの表面Sを吸引するために、その目的部位Tの表面Sに密着する(
図1の(b)図参照)。「目的部位Tの表面S」とは、超音波プローブPによって探知される目的部位Tの表面Sを意味するが、超音波プローブPで撮像される領域(撮像領域)のみに限定するという意味ではなく、パッド5での吸引により撮像領域の潰れ等を防止するなどの影響を与え得る領域を広く含む。
【0037】
パッド5は、支持管部42に装着された胴体部51と、目的部位Tの表面Sに接触する先端部52とを備えている。胴体部51は、例えば、管軸線Ls方向で内径が一定であり、パッド装着部42m(支持管部42)に外装されて圧着している。
【0038】
また、先端部52は、管軸線Ls方向で胴体部51に連続するように設けられている。先端部52は、胴体部51に連絡する連絡部52aと、管軸線Ls方向で連絡部52aの反対側であり、目的部位Tの表面Sに密着する密着部52bとを備えている。密着部52bの外周縁は、先端部52の外縁52eを意味する。
【0039】
本実施形態に係るパッド5は、一体的に形成された胴体部51と先端部52とを備えており、パッド5は、支持管部42よりも弾性変形し易く、可撓性が高い。つまり、先端部52は、支持管部42よりも可撓性が高く、さらに胴体部51よりも弾性変形し易くて可撓性が高い。なお、支持管部42よりも可撓性が高くなるようなパッド5の構造は、例えば、支持管部42よりも可撓性が高くなる材料を用いたり、支持管部42よりも薄くしたりすることで実現できる。また、先端部52が胴体部51よりも可撓性が高くなる構造は、先端部52を胴体部51よりも薄くすることで実現でき、逆に、胴体部51側に補強リブを設けるなどして胴体部51の可撓性が低くなるような構造にすることで実現できる。
【0040】
また、先端部52は、例えば、内面の全体が目的部位Tの表面Sに密着する部分として説明することもできる。その場合、表面Sを牽引するための陰圧を形成する隙間領域は、先端部52の内側ではなく、胴体部51が装着されたパッド装着部42mの内側に形成される。つまり、先端部52の内面の全体が表面Sに密着可能な形態においては、パッド装着部42mの内側領域が実質的に吸引口として機能し、パッド装着部42mの内径D1は吸引口の内径として説明できる。
【0041】
本実施形態に係る先端部52は、目的部位Tとの密着によって拡開可能である。先端部52が拡開可能とは、外縁52eが拡開可能であることを意味する。また、先端部52の内径D2は、胴体部51の内径よりも拡がっており、外側に広がり易くなるような工夫が施されている。具体的に説明すると、先端部52の密着部52bの内径は、連絡部52aから離れるほど拡大しており、最も離れた位置が最大の内径D2になっている。本実施形態において、先端部52の内径は、実質的に内径D2を意味しており、内径D2は、胴体部51の内径よりも大きくなっている。その結果、先端部52は、目的部位Tとの密着を維持して円滑に広がり易くなっている。さらに、先端部52は、胴体部51から離れるほど薄くなっており、胴体部51よりも拡開し易くなる工夫が施されている。
【0042】
また、本実施形態に係る先端部52は、内径D2のみならず、外径D3も広がっているスカート状を呈する。具体的に説明すると、先端部52の密着部52bの外径は、連絡部52aから離れるほど拡大しており、最も離れた位置が最大の外径D3になっている。本実施形態において、先端部52の外径とは外縁52eによって規定される径であり、実質的に外径D3を意味している。その結果、先端部52は、目的部位Tとの密着を維持して円滑に広がり易くなっている。また、先端部52の幅W1、つまり管軸線Ls方向に対して傾斜するように延在する先端部52の外面に沿った距離は、例えば、1mm以上、6mm以下にすることができ、1.5mm以上、5mm以下にすることができ、2mm以上、4mm以下にすることができる。
【0043】
先端部52の内径D2及び外径D3は、先端部52が目的部位Tの表面Sに密着していない状態、つまり、先端部52が潰れていない状態を基準にする。この基準状態において、先端部52の内径D2は、胴体部51の内径よりも大きくすることができ、例えば、10mm以上、30mm以下にすることができ、10mm以上、25mm以下にすることができ、10mm以上、20mm以下にすることができる。また、先端部52の外径D3は、先端部52(密着部52b)の肉厚によって決まる。例えば、内径D2に対する外径D3の寸法差(内径D2よりも大きくなる幅)は、0.7mm以上で、3mm以下にすることができ、1.0mm以上で、2mm以下にすることができ、また、1.3mm以上で、1.8mm以下にすることができる。
【0044】
また、先端部52の外縁52eは、全周に亘って屈曲することなく湾曲しながら連続的に繋がっている。「全周に亘って屈曲することなく湾曲しながら連続的に繋がっている」とは、全周において屈曲部分を有していないことを意味している。例えば、本実施形態に係る先端部52の外縁52eは円形であり、円の全周に亘って屈曲することなく湾曲しながら連続的に繋がっている(
図6の(a)図参照)。なお、先端部52の外縁52eは、楕円形の形態(
図6の(b)図参照)であってもよく、また、直線部分が湾曲部分を介して接続された形態、例えば、多角形の角部に湾曲部分を設けた形態(
図6の(c)図参照)であってもよい。また、単体のパッド5が複数の支持管部42に装着されるような形態(
図6の(d)図参照)であってもよく、複数の支持管部42の内部に連通可能となる幅広の空間を形成し、幅広の先端部52の外縁52eの全周に亘って屈曲することなく湾曲しながら連続的に繋がっていてもよい。
【0045】
上述の通り、本実施形態では、四個(複数)のパッド5を備えているが、単体のパッド5であってもよい。また、全てのパッド5が装着される複数のパッド装着部42mの内部面積の合計、つまり、吸引口の総面積は、例えば、1.5cm2以上、16cm2以下にすることができ、2cm2以上、12cm2以下にすることができ、3cm2以上、10cm2以下にすることができる。また、パッド5の材料は、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマーなどを適宜に利用することができる。
【0046】
次に、
図4及び
図5を参照し、吸引構造4をプローブ装着部2に組み付ける構造について詳しく説明する。吸引構造4の複数の支持管部42は、ブラケット部22に取り付けられている。ブラケット部22には、支持管部42を支持する管装着部23が設けられている。支持管部42は、胴管部43と、胴管部43から張り出し、胴管部43の管軸線Ls方向に並んで配置された一対のフランジ部44と、を備えている。
【0047】
管装着部23は、胴管部43が側方から挿入される開口部45を備えている。開口部45は、貫通孔の一部分が、ブラケット部22の外縁まで延びて開放されたような形状である。より具体的に説明すると、開口部45は、胴管部43の円筒形状に対応した円弧部45aと、円弧部45aに接続された導入部45bとを備えている。管装着部23に装着された状態の支持管部42を基準にすると、円弧部45aは、胴管部43の管軸線Lsに交差する方向である側方が開放されて開放領域を形成している。導入部45bは、開放領域の両側縁に沿った部分として説明することもできる。
【0048】
胴管部43は、一対のフランジ部44に挟まれた領域(挿入部43a)を備えており、挿入部43aは、導入部45bを介し、側方からスライドさせるようにして開口部45に挿入される。その結果、開口部45は、一対のフランジ部44の間に配置される。また、管装着部23は、開口部45の周縁である係止座部23aを備えている。係止座部23aは、一対のフランジ部44のいずれか一方に当接可能であり、フランジ部44に干渉することで胴管部43の管軸線Ls方向の抜けを防止し、支持管部42を所定位置に保持している。
【0049】
係止座部23aの厚みTaは、一対のフランジ部44同士の間隔Daよりも薄い。その結果、一対のフランジ部44と係止座部23aとの間には、支持管部42の管軸線Ls方向の僅かな移動を許容する隙間(以下、「第1の遊びSa」と称する)が設けられている(
図5の(a)図参照)。支持管部42にはパッド5が装着されており、パッド5の先端部52は目的部位Tの表面Sに吸着される。目的部位Tは柔らかで複雑な形状であるため、この第1の遊びSaを設けることで、支持管部42は、目的部位Tの凹凸形状等に追従した管軸線Ls方向の移動が可能になる。
【0050】
また、開口部45と挿入部43aとの間には、胴管部43の傾動を許容する隙間(以下、「第2の遊びSb」と称する)が形成されている(
図5の(b)図参照)。より具体的に説明すると、円弧部45aの内径は、挿入部43aの外径よりも大きく、フランジ部44の外径よりも小さい。その結果、円弧部45aと挿入部43aとの間には、第2の遊びSbとなる隙間が形成される。前述の通り、目的部位Tは柔らかで複雑な形状であるため、この「第2の遊びSb」を設けることで、支持管部42は、目的部位Tの湾曲形状等に追従した傾動が可能になる。
【0051】
開口部45の導入部45bには、挿入部43aの外径よりも幅が狭い抜け止め部46が設けられている。挿入部43aを開口部45から抜こうとする力が作用したとしても、挿入部43aは抜け止め部46に干渉することになるため、挿入部43aは開口部45から抜け難く、支持管部42がブラケット部22から離脱するのを抑止することができる。なお、本実施形態に係るブラケット部22及び支持管部42の少なくとも一方は、弾性変形可能であり、可撓性を有している。従って、抜け止め部46を設けていても、抜け止め部46や挿入部43a(胴管部43)を変形させることで、挿入部43aを開口部45に挿入することができる。また、抜け止め部46や挿入部43aを変形させることで、挿入部43aを開口部45から抜くことができる。
【0052】
管装着部23は、導入部45bに沿って設けられたガイド溝47を備えている。ガイド溝47は、導入部45bに挿入される胴管部43と一緒に移動するフランジ部44の移動を案内する。ブラケット部22は、目的部位Tに対向する側の表面(下面)と、反対側の表面(上面)とを備えている。ガイド溝47は、ブラケット部22の下面に設けられており、導入部45bに沿うように設けられると共に、円弧部45aの周りにも形成されている。ガイド溝47の長手方向(導入部45bに沿った方向)に直交する方向の距離は、フランジ部44の外径より広く、フランジ部44が収まる程度の幅を有している。フランジ部44は、ガイド溝47に案内されながら移動し、胴管部43と一緒に円弧部45aまで到達する。この位置は、吸引構造4がブラケット部22に適切に装着された所定位置となる。
【0053】
図2に示されるように、吸引ユニット3は一対の吸引構造4を備えており、一対の吸引構造4は、それぞれブラケット部22に組み付けられている。複数のブラケット部22同士の間には、超音波プローブPが収納される保持領域HAが設けられている。つまり、複数のブラケット部22は、保持領域HAを挟んだ対称位置に設けられている。また、各ブラケット部22には、それぞれ吸引構造4が装着されており、したがって一対の吸引構造4は、保持領域HAを挟んだ対向位置となるように配置されている。
【0054】
また、吸引ユニット3は複数のパッド5を備え、複数のパッド5は保持領域HA及びホールド部21を挟むように対向して配置されている。具体的には、吸引ユニット3は一対の吸引構造4を備えており、それぞれ複数のパッド5を備えている。そして、一方の吸引構造4のいずれかのパッド5と他方の吸引構造4のいずれかのパッド5とを結ぶ直線を仮定した場合、保持領域HA及びホールド部21は、その直線上に配置されている。つまり、一方の吸引構造4のパッド5と他方の吸引構造4のパッド5とは、保持領域HA及びホールド部21を挟むように対向して配置されている。なお、複数のパッド5の全てを対象とする必要はなく、少なくとも一部のパッド5同士が保持領域HA及びホールド部21を挟むように対向して配置されていてもよい。
【0055】
次に、本実施形態に係る補助具1の作用、効果について説明する。この補助具1を使用する際には、プローブ装着部2に超音波プローブPを装着し、吸引ユニット3に所定の減圧吸引装置を接続する。次に、超音波プローブP及び吸引ユニット3を目的部位Tの表面Sに設置する。次に、吸引ユニット3を介して目的部位Tの表面Sを吸引することにより、目的部位Tの表面Sは持ち上がり、内部が拡張する。ここで、超音波プローブPは目的部位Tの表面Sに圧着されているが、目的部位Tの内部は拡張しているので、超音波プローブPの圧着によっても潰れにくい。更に、吸引ユニット3は、支持管部42の内部に連通可能に装着される筒状のパッド5を備え、パッド5の先端部52は、目的部位Tの表面Sに密着可能な可撓性を有している。目的部位Tの表面Sは柔軟で複雑な形状であるが、パッド5の先端部52は、目的部位Tの表面Sに密着可能な可撓性を有しているため、目的部位Tの表面Sの形状に追従し易く、目的部位Tの表面Sとの密着性が高まって目的部位Tにおける吸引性を容易に向上できる。
【0056】
なお、減圧吸引装置は、例えば、真空ポンプ及び真空コントローラーを備えており、陰圧を調整しながら、皮膚を引っ張り上げることができる陰圧を確認することができる。目的部位Tの表面Sが、例えば皮膚の場合、陰圧の値が11kPaを超えると、皮膚が赤くなる傾向が見られるので、陰圧の値は10kP以下が望ましい。
【0057】
また、本実施形態において、パッド5の先端部52は、支持管部42よりも可撓性が高く、且つ、目的部位Tとの密着によって拡開可能である。支持管部42の可撓性が低ければ変形し難くなるため、プローブ装着部2への安定した取り付けに有利である。これに対し、先端部52の可撓性は、支持管部42よりも高いので目的部位Tの表面Sの複雑な形状に対して追従し易くなり、さらに、先端部52は、目的部位Tとの密着によって拡開可能であるため、密着時に目的部位Tに接する領域が増えてシール性は向上し、目的部位Tにおける吸引性の向上に有利である。
【0058】
また、本実施形態において、パッド5は、支持管部42に装着された胴管部43を備え、先端部52は、胴管部43よりも内径が拡がっている。先端部52を目的部位Tに密着させる際に、先端部52の内径が拡がっていれば、先端部52が内側に折り込まれて隙間が生じるような不具合は生じ難く、吸引性の向上に有利となる。
【0059】
また、本実施形態において、パッド5の先端部52の外縁52eは、全周に亘って屈曲することなく湾曲しながら連続的に繋がっており、目的部位Tへの密着の際に隙間を生じ易い屈曲部分を持たないので、吸引性の向上に有利となる。
【0060】
本実施形態において、プローブ装着部2は、超音波プローブPを保持するホールド部21を備え、パッド5は複数設けられている。さらに、複数のパッド5は、ホールド部21を挟むように対向して配置されている。その結果、パッド5に密着して吸引される目的部位Tは、超音波プローブPを挟んだ両脇から吸引されるようになり、超音波プローブPが圧着される部位を中心として内部の適切な拡張を行い易くなる。
【0061】
本実施形態において、管装着部23と支持管部42との間には、支持管部42の移動を許容する第1の遊びSa及び第2の遊びSbが設けられている。第1の遊びSa及び第2の遊びSbの少なくとも一方を設けることで、支持管部42は、管装着部23に対して移動可能となり、目的部位Tの複雑な形状にも追従し易く、目的部位Tとの密着性を維持して目的部位Tの吸引性を容易に向上できる。
【0062】
なお、第1の遊びSaを設けることで、支持管部42は、胴管部43の長手方向(軸線方向)に移動可能となり、目的部位Tの凹凸の表面Sに追従し易く、目的部位Tの吸引性を容易に向上できる。また、第2の遊びSbを設けることで、支持管部42の胴管部43は開口部45に対して傾動可能となる。その結果、支持管部42に装着されたパッド5は、目的部位Tの湾曲しながら傾斜した表面Sに対して追従し易くなり、目的部位Tにおける吸引性を容易に向上できる。
【0063】
また、本実施形態に係る開口部45には、側方からの胴管部43の挿入を受け入れる導入部45bが設けられており、導入部45bには、胴管部43の外径よりも幅が狭い抜け止め部46が設けられてる。抜け止め部46により胴管部43が開口部45から離脱するのを防止できる。
【0064】
また、本実施形態に係る管装着部23には、フランジ部44の移動を案内するガイド溝47が設けられているため、胴管部43は、フランジ部44を介してガイド溝47によって適切な位置に案内される。
【実施例0065】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。各実施例では、補助具のサンプルを用意し、皮膚に対して実際にパッドの先端部を密着させ、減圧吸引装置を駆動して吸引性、リーク性、作業性の評価を行った。減圧吸引装置は、ダイヤフラム式真空ポンプに真空コントローラーを組み合わせた装置を使用した。ダイヤフラム式真空ポンプとしては、KNF社製の「ダイヤフラム式真空ポンプ(型番N810FT.18(Ex)) 10L/min 10kPa(abs)」を使用した。真空コントローラーとしては、アズワン社製の「真空コントローラー(型番VC-01)」を使用した。
【0066】
この評価試験では、パッドの先端部を皮膚に接触させ、陰圧を調整しながら、皮膚を引っ張り上げることができる陰圧を確認した。具体的には、最初に、陰圧が4kPaになるように調整し、この状態で皮膚を引っ張り上げ、所定時間(例えば、10秒程度)、維持できた場合には、4kPaの陰圧で皮膚を引っ張り上げることができたとして確認した。また、4kPaの陰圧では、皮膚を引っ張り上げることができない場合には、段階的に陰圧を上昇させ、各段階で皮膚を引っ張り上げてみた。皮膚を所定時間、引っ張り上げることができれば、その陰圧が皮膚を引っ張り上げることができる陰圧として確認した。皮膚を引っ張り上げることができない場合、最大で20kPaになるまで陰圧を上昇させることで引っ張り上げの可否を検証した。
【0067】
(実施例1)
パッドは、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いて製造し、パッドの先端部は皮膚に密着可能な可撓性を有する構造とした。パッドの胴体部は円筒状であり、先端部は胴体部からスカート状に拡がっている形状とした。先端部の外縁の形状及び胴体部の内側の形状は円形である。胴体部は、支持管部のパッド装着部に装着されている。先端部の内周面は略全体に亘って皮膚に密着するため、陰圧によって皮膚を吸引する機能(吸引口)については、実質的に胴体部が装着されたパッド装着部の内側の空間によって奏される。実施例1のパッド装着部の内径D1を16.0mmとし、先端部の内径を19.396mmとし、先端部の外縁の直径を20.825mmとした。パッド装着部の内部面積、つまり管軸線に直交する断面においてパッド装着部に囲まれた内側領域の面積は約2.0cm2とした。また、胴体部から傾斜しながら張り出した先端部の幅は、3mmとした。また、実施例1では、形状が同じ4個のパッドを使用し、上記の実施形態に係る補助具に沿った吸引ユニットになるような態様のサンプルを使用した。
【0068】
(実施例2)
先端部の外縁の形状を楕円にし、さらに胴体部が装着されるパッド装着部の内部面積が約2cm2になるように調整したパッドを使用した。このパッドの形態以外は、実施例1と共通となる態様のサンプルを使用した。
【0069】
(実施例3)
円形の胴体部が装着されるパッド装着部の内部面積が約0.7cm2になるように調整したパッドを使用した。このパッドの形態以外は、実施例1と共通となる態様のサンプルを使用した。
【0070】
(実施例4)
円形の胴体部が装着されるパッド装着部の内部面積が約3.5cm2になるように調整したパッドを使用した。このパッドの形態以外は、実施例1と共通となる態様のサンプルを使用した。
【0071】
(実施例5)
実施例1と同じパッドを2個使用した以外は、実施例1と共通となる態様のサンプルを使用した。
【0072】
(実施例6)
実施例1と同じパッドを8個使用した以外は、実施例1と共通となる態様のサンプルを使用した。
【0073】
(吸引性について)
吸引性については、パッド内において皮膚の引っ張りが認められる陰圧を確認した場合には、吸引性が良好であると評価した。具体的には、4kPa以上の陰圧を確認できれば吸引性が良好であると評価した。一方で、陰圧が高すぎる場合、例えば、10kPaを超えると皮膚が赤くなる等の症状が認められたので、表1において陰圧が10kPa以下の場合を、優(〇)と評価し、11~20KPaの場合を、良(△)と評価した。
【0074】
(リーク性について)
皮膚に接触している部分からの漏れ易さを示し、漏れが生じる場合を不良(×)、漏れを生じない場合を優(〇)と評価した。なお、以下の表1に示されるように、実施例1~6は、全て漏れを生じなかったため、結果的に、全て優(〇)と評価した。
【0075】
(作業性について)
作業のし易さを評価するものであり、問題無い場合を優(〇)と評価し、問題は無いが、少し作業し難い場合を良(△)と評価した。
【0076】
【0077】
(実施例7)
実施例7では、胴体部から傾斜しながら張り出した先端部の幅は、0.5mmとし、さらに、胴体部が装着されるパッド装着部の内部面積が約2cm2になるように調整したパッドを使用した。このパッドの形態以外は、実施例1と共通となる態様のサンプルを使用した。
【0078】
(実施例8)
実施例8では、胴体部から傾斜しながら張り出した先端部の幅は、8mmとし、さらに、胴体部が装着されたパッド装着部の内部面積が約2cm2になるように調整したパッドを使用した。このパッドの形態以外は、実施例1と共通となる態様のサンプルを使用した。
【0079】
実施例7及び実施例8の吸引性、リーク性、及び作業性の評価は、表2に示される通りである。
【0080】
【0081】
以上、本発明を上記の実施形態及び実施例に基いて説明したが、本発明は上記の実施形態等のみに限定して解釈されるものではない。例えば、上記の実施形態では、複数の吸引構造を備えた吸引ユニットを備えた例を説明したが、単体の吸引構造を備えた吸引ユニットを設けた態様であってもよい。また、吸引ユニットは、単体の支持管部及び単体の吸着部を備えた形態であってもよい。
【0082】
また、開口部は、導入部が無く、側方が開放されていない形態であってもよく、例えば、内周の形状が閉じている貫通孔であってもよい。この場合、支持管部が、開口部を貫通するように挿通される形態であったり、フランジ部を備えた状態でも挿通可能となるために、支持管部が分割可能な形態であったりしてもよい。また、管装着部と支持管部との間に隙間などの遊びが形成されていない形態であってもよい。
1…補助具(超音波下穿刺補助具)、2…プローブ装着部(本体部)、3…吸引ユニット、21…ホールド部、21a…内周面、21b…外周面、22…ブラケット部、23…管装着部、23a…係止座部、42…支持管部、43…胴管部、43a…挿入部、44…フランジ部、45…開口部、46…抜け止め部、47…ガイド溝、5…パッド(吸着部)、51…胴体部、52…先端部、52e…外縁、Ta…係止座部の厚み、Da…フランジ部同士の間隔、Ls…管軸線、N…針、P…超音波プローブ、S…目的部位の表面、T…目的部位、Sa…第1の遊び、Sb…第2の遊び。