(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130481
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】配管部材用インコア
(51)【国際特許分類】
F16L 33/24 20060101AFI20230912BHJP
F16L 33/30 20060101ALI20230912BHJP
F16L 21/02 20060101ALN20230912BHJP
F16L 47/06 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
F16L33/24
F16L33/30
F16L21/02 A
F16L47/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115061
(22)【出願日】2023-07-13
(62)【分割の表示】P 2019029928の分割
【原出願日】2019-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000128968
【氏名又は名称】株式会社オンダ製作所
(72)【発明者】
【氏名】上野 晃
(72)【発明者】
【氏名】近藤 倫明
(57)【要約】
【課題】配管部材への挿入を容易に行い得ることと、当該挿入時において配管部材が削られてしまうことの防止とを高次元で両立できるインコアを提供すること。
【解決手段】配管用継手1は、外筒部6を有する第一流路部材2と、外筒部6に挿入されスナップ係合された内筒部12を有する第二流路部材3と、内筒部12に挿入配置され、スナップ係合を強固とするためのインコア4とを備えている。内筒部12の内周面においてインコア4の挿入側に位置する端部には、周方向に延びる複数の凹所が形成され、複数の凹所の間にはそれぞれ仮保持部23が設けられている。仮保持部23は、インコア4を内筒部12に仮挿入したときインコア4を保持する。インコア4において第二端部43の外周面には、先端面43aに対して近づくに連れて小径となるテーパ面43bが形成され、インコア4の内周面において先端面43aに隣接する部分には、小径部43cが設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管部材に対して挿入して用いられる円筒状のインコアであって、前記配管部材への挿入側に位置する端部の外周面には当該端部の先端面に対して近づくに連れて小径となるテーパ面が形成され、内周面において前記先端面に隣接する部分を径方向内側に突出させて、当該突出させた部分の円筒面の内径を前記先端面から離れた部分よりも小径とし、当該小径の部分の軸線方向への長さは、前記インコアの前記軸線方向への長さの半分以下である配管部材用インコア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば給水給湯用の配管部材に対して挿入して用いられるインコアに関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、特許文献1の配管用継手100は、外筒部101aを有する第一流路部材101と、外筒部101aに挿入されスナップ係合された内筒部102aを有する第二流路部材102と、内筒部102aに挿入配置されて内筒部102aと外筒部101aとのスナップ係合を強固とする円筒状のインコア103とを備えている。インコア103において、内筒部102aへの挿入側に位置する端部104の外周面には、当該挿入を容易とするためにテーパ面104aが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の配管用継手100においては、内筒部102aへのインコア103の挿入を容易とすべく、テーパ面104aの傾斜角度を小さく設定すると、インコア103の端部104が先鋭となる。したがって、当該挿入時において、内筒部102aの内周面が、インコア103の先端面104bによって削られてしまう問題があった。
【0005】
特に特許文献1の配管用継手100にあっては、内筒部102aの内周面においてインコア103の挿入側に位置する端部に、浅く挿入されたインコア103の端部104を仮保持するための仮保持部105が、周方向に間隔をおいて複数設けられている。つまり、内筒部102aの内周面には、周方向において部分的に肉部(仮保持部105)が存在する。したがって、内筒部102aの内周面においては、仮保持部105に対してインコア103の挿入力が集中し易く、前述した内筒部102aの内周面が削られる問題が顕著となっていた。
【0006】
本発明の目的は、配管部材への挿入を容易に行い得ることと、当該挿入時において配管部材が削られてしまうことの防止とを高次元で両立できるインコアを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために請求項1に係る発明は、配管部材に対して挿入して用いられる円筒状のインコアであって、前記配管部材への挿入側に位置する端部の外周面には当該端部の先端面に対して近づくに連れて小径となるテーパ面が形成され、内周面において前記先端面に隣接する部分を、前記先端面から離れた部分よりも小径とし、当該小径の部分の軸線方向への長さは、前記インコアの前記軸線方向への長さの半分以下であるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】第二流路部材に対するインコアの仮挿入状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を具体化した一実施形態について、
図1~
図4を参照しつつ説明する。
図1に示すように、配管用継手1は、金属または樹脂等からなる円筒状の第一流路部材2と、第一流路部材2に係合された樹脂からなる円筒状の第二流路部材3と、配管部材としての第二流路部材3に挿入され、第一流路部材2と第二流路部材3との長期間にわたる係合を実現するための金属製または硬質樹脂製のインコア4とを備えている。
【0010】
第一流路部材2において一方の端部(
図1の左端部)側の外周面には、配管用継手1を給湯器等の機器(図示しない)に対して接続するための雄ねじ5が形成されている。第一流路部材2において他方の端部(
図1の右端部)側には、第二流路部材3を取り付けるための外筒部6が設けられている。外筒部6の内周面には、内向き爪部8と、各々シールリング9を収容する二条の収容溝10とが、それぞれ周方向において環状に形成されている。
【0011】
第二流路部材3において一方の端部(
図1の右端部)側には、電熱線コイル13が埋設されている。電熱線コイル13に接続された一対の電極14は、第二流路部材3の外側へと突出している。電熱線コイル13に対して樹脂製パイプ(図示しない)を挿入した状態で、一対の電極14を介して電熱線コイル13の通電を行うことで、当該樹脂製パイプと第二流路部材3との接触部分が溶融して相互に接合される。
【0012】
第二流路部材3において他方の端部(
図1の左端部)側には、内筒部12が設けられている。内筒部12は、第一流路部材2の外筒部6に挿入されている。内筒部12の外周面には、外向き爪部16が、周方向において環状に形成されている。外筒部6(第一流路部材2)と内筒部12(第二流路部材3)とは、内向き爪部8と外向き爪部16とがスナップ係合することで、相互に抜け止めされている。
【0013】
第二流路部材3の内周面には、内筒部12の先端部に位置する第一段差18と、電熱線コイル13側に位置する第二段差19とがそれぞれ設けられている。内筒部12の内周面において、第一段差18を境界とした第二段差19側つまり大径側には、円筒状のインコア4が挿入配置されている。インコア4において第一端部41(
図1の右端部)の外周面には、フランジ41aが形成されている。フランジ41aは、第二段差19に当接することで、内筒部12に対するインコア4の挿入位置を決めている。
【0014】
インコア4が内筒部12に挿入配置されることで、内筒部12における外向き爪部16に対応する部分が縮径方向に変形することが抑制され、ひいては外向き爪部16と内向き爪部8とのスナップ係合の解除が抑制される。つまり、外向き爪部16と内向き爪部8とのスナップ係合は、インコア4によって強固なものとなっており、当該スナップ係合が長期間にわたって維持される。
【0015】
図3に示すように、内筒部12の内周面において第二段差19側の端部(インコア4の挿入側に位置する端部)には、周方向に延びる複数の凹所21が形成されている。隣接する凹所21の間には、それぞれ仮保持部23が設けられている。仮保持部23は、内筒部12の内周面において、周方向に等間隔で設けられている。
図4に示すように、仮保持部23は、インコア4の第二端部43(
図3の左端部。内筒部12への挿入側に位置する端部)を内筒部12に対して所定の挿入位置よりも浅く挿入(仮挿入)したとき、第二端部43の外周面に圧接してインコア4を確実に保持する。
【0016】
ここで、インコア4の第二端部43を内筒部12に仮挿入した状態で、内筒部12を第一流路部材2の外筒部6に対して挿入する組立手順を採用する場合がある。この場合、内筒部12の内周面に形成された凹所21(
図3参照)によって、スナップ係合の過程における内筒部12(外向き爪部16)の変形が生じ易くなる。これは、内筒部12が縮径方向に変形しようとするとき、インコア4の第二端部43の外周面に対して接触する仮保持部23の肉が、凹所21に向って逃げるからである。したがって、インコア4を内筒部12に仮挿入した状態であっても、内筒部12を外筒部6に対してスナップ係合する作業が困難とはならない。
【0017】
図2に示すように、インコア4において第二端部43の先端面43aは、インコア4の軸線に対して直交する方向へと延びる平面よりなっている。インコア4において第二端部43の外周面には、先端面43aに対して近づくに連れて小径となるテーパ面43bが形成されている。テーパ面43bは、内筒部12に対するインコア4の挿入を容易とする。第二端部43の内周面において先端面43aに隣接する部分は、先端面43aから離れた部分よりも径方向内側に突出されて小径(小径部43c)となっている。小径部43cの円筒面の内径は、第一段差18における小径側の円筒面の内径とほぼ同じである。
【0018】
インコア4は、第二端部43の外周面にテーパ面43bが形成されているにもかかわらず、小径部43cを設けることによって、先端面43aの径方向の幅つまりは面積が比較的広く確保されている。したがって、インコア4の第二端部43が先鋭とはならず、本実施形態のように仮保持部23を備えているような悪条件下であっても、仮保持部23にインコア4の挿入力が集中することを抑制できる。よって、当該挿入時において、内筒部12の内周面がインコア4の先端面43aによって削られる問題の発生を回避できる。
【0019】
なお、インコア4の内周面において、先端面43aに隣接する部分だけではなく、先端面43aから離れた部分も含めた全体を小径とすることでも、インコア4の第二端部43が先鋭となることは回避できる。しかし、この場合、インコア4が全体的に肉厚となって重量増やコスト高となるし、インコア4の剛性が過剰に高くなって内筒部12への挿入性も悪化するし、さらにはインコア4の内側を通過する際に流体が受ける流通抵抗も大きくなる。
【0020】
これらの問題点や、突出部分である小径部43cの強度確保を総合的に勘案すれば、小径部43cの大きさ、特に軸線方向への長さは、先端面43aからテーパ面43bの全体に対応する程度が好適であり、長くてもインコア4の軸線方向への長さの半分以下でかつテーパ面43bの軸線方向への長さの2倍以下の条件を満たすことが好ましい。
【0021】
(別例)
上記実施形態は、例えば以下のように変更できる。
○
図5に示すように、ワンタッチ継手51に対して接続される、配管部材としての樹脂製パイプ61の端部に挿入されるインコア62において具体化すること。ワンタッチ継手51の構造は、ロックリング52やシールリング53等を備えた周知なものであるため、詳細な説明は省略する。
【0022】
インコア62が樹脂製パイプ61内に没入することは、インコア62の第一端部63に形成されたフランジ63aによって規制されている。インコア62が挿入された樹脂製パイプ61の端部が、ワンタッチ継手51に対して挿入され、ロックリング52によって抜け止めされかつ、シールリング53によって水密が図られている。
【0023】
インコア62において第二端部64の外周面には、第二端部64の先端面64aに対して近づくに連れて小径となるテーパ面64bが形成されている。テーパ面64bは、樹脂製パイプ61に対するインコア62の挿入を容易とする。第二端部64の内周面において先端面64aに隣接する部分は、先端面64aから離れた部分よりも径方向内側に突出されて小径(小径部64c)となっている。
【0024】
小径部64cを設けることで、第二端部64の外周面にテーパ面64bが形成されているにもかかわらず、インコア62の先端面64aは径方向の幅つまりは面積が比較的広く確保されている。したがって、インコア62の第二端部64が先鋭とはならず、インコア62の挿入時において、樹脂製パイプ61の内周面が先端面64aによって削られる問題の発生を回避できる。
【0025】
○インコア4、62の内周面を、第二端部43、64の先端面43a、64aに対して近づくに連れて小径となるテーパ面とすることで、当該テーパ面において先端面43a、64aに隣接する最小径の部分を、小径部43c、64cとすること。
【0026】
○インコア4、62からフランジ17を削除すること。
【符号の説明】
【0027】
1…配管用継手、2…第一流路部材、3…第二流路部材、4…インコア、6…外筒部、12…内筒部、21…凹所、23…仮保持部、43…第二端部、43a…先端面、43b…テーパ面、43c…小径部。