(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130489
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】創傷治癒のための活性成分を含むマイクロニードルアレイを備えるアプリケータシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
A61M37/00 514
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023115624
(22)【出願日】2023-07-14
(62)【分割の表示】P 2020505845の分割
【原出願日】2018-08-04
(31)【優先権主張番号】102017117784.1
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ヘンケ
(72)【発明者】
【氏名】カルステン・ホイザー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】活性成分、特に薬物を皮内適用するためのマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムおよびその使用方法を提供する。
【解決手段】マイクロニードルアレイは、ヒトまたは動物の皮膚を穿刺するのに適し、また少なくとも1種の創傷治癒のための活性成分を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体に複数のマイクロニードルを備える、第1の活性成分の皮内送達を伴う使用のためのマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムであって、
マイクロニードルおよび/または担体は、少なくとも1種の創傷治癒のための第2の活性成分を含むことを特徴とする前記アプリケータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の第1の活性成分の皮内送達を伴う使用のためのマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムであって、
第1の活性成分は、医療用医薬品であることを特徴とする前記アプリケータシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の第1の活性成分の皮内送達を伴う使用のためのマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムであって、
第1の活性成分は、第2の活性成分とは異なることを特徴とする前記アプリケータシステム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の皮内送達を伴う使用のためのマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムであって、
トリガ機構を含むことを特徴とする前記アプリケータシステム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の皮内送達を伴う使用のためのマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムであって、
マイクロニードルアレイは、平面であることを特徴とする前記アプリケータシステム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の皮内送達を伴う使用のためのマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムであって、
担体のマイクロニードルの密度は、5~5,000個/cm2であることを特徴とする前記アプリケータシステム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の皮内送達を伴う使用のためのマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムであって、
創傷治癒のための活性成分は、マイクロニードルアレイおよび/または担体の表面部および/または内部に、0.01~200mg/cm2の量で含まれていることを特徴とする前記アプリケータシステム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムであって、
少なくとも1つのマイクロニードルの先端は、創傷治癒のための活性成分で濡れている、または創傷治癒のための活性成分は、少なくとも1つのマイクロニードルの先端に含まれていることを特徴とする前記アプリケータシステム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のためのマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムであって、
少なくとも1種の活性成分は、アブサン、藻類エキス、アラントイン、アラントイナム、タマネギ、アロエベラ、酢酸アルミニウム、瀝青スルホン酸アンモニウム(ammonium bituminosulfonate)、パイナップルエキス、アプリコットカーネルオイル、アルガンオイル、アルニカ、アイブライトエキス、竹エキス、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベータカロテン、蜜蝋、ヒヨスオイル、ビスマス、ブロッコリーシードオイル、カレンデュラ、塩化セチルピリジニウム、コンドロイチン、シトロネラ、カフェイン、コラーゲン、クプアスバター、デクスパンテノール、d-カンファー、グアヤク、ザクロエキス
、アメリカマンサクの樹皮、血液透析液、尿素、ヘリアンサスオイル、ヒアルロン酸、ホホバオイル、カミツレ花、カオリン、ヒナゲシ、ベニステルペンチン、ラベンダー、肝油、レボメノール、リドカイン、タチアオイ、アーモンドオイル、マクロゴール、ミルラ、ミルラ樹脂エキス、ヒアルロン酸ナトリウム、オリーブオイル、オキシキノリン、パントテン酸、ペルーバルサム、サリチル酸フェニル、松脂、ポリドカノール、ピオリシン、レゾルシノール、ひまし油、ローズマリー、サンファイア、シーバックソーンオイル、ノコギリソウ、ゴマ油、シアバター、安息香、大豆イソフラボン、大豆油、ヒマワリ油、ハンゴンソウ、スパイク油、チモール、トルーバルサム、タチキジムシロ根茎、グレープシードオイル、チロスリシン、ビタミンA、ビタミンE(トコフェロール)、フランキンセンス、麦芽油、アメリカマンサク(ハマメリス)、酸化亜鉛、およびタマネギエキス(Allium cepa)からなる群から選択されることを特徴とする前記アプリケータシステム。
【請求項10】
請求項9に記載の使用のためのマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムであって、
少なくとも1種の活性成分は、デクスパンテノール、コラーゲン、およびヒアルロン酸からなる群から選択される前記アプリケータシステム。
【請求項11】
請求項9に記載の使用のためのマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムであって、
少なくとも1種の活性成分は、アロエベラ、オリーブオイル、および尿素からなる群から選択されることを[特徴とする]前記アプリケータシステム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のためのマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムであって、
マイクロニードルは、ステンレススチール、スチール、金、チタン、ニッケル、鉄、錫、クロム、銅、パラジウム、白金、上記金属の合金、ケイ素、二酸化ケイ素、ガラス、プラスチック、ポリマー、生分解性ポリマーまたは水溶性ポリマー、特に乳酸および/またはグリコール酸のようなα-ヒドロキシ酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、およびポリエチレングリコール、ポリアンヒドリド、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ酪酸、ポリ吉草酸とのコポリマー、およびポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、またはポリカーボネート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルアミド、シクロオレフィン(コ)ポリマー、ポリメタクリレート、および熱可塑性物質からなる群から選択される材料からなることを特徴とする前記アプリケータシステム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のためのマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムであって、
マイクロニードルアレイは、特に接着性のストリップ、パッチ、バンド、弾性バンド、ゴム、またはストラップからなる群から選択される固定手段を含むことを特徴とする前記アプリケータシステム。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のためのマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムであって、
少なくとも1つのリザーバが存在することを特徴とする前記アプリケータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分、特に医療用医薬品を皮内送達するためのマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステム、およびその使用に関し、このマイクロニードルアレイは、ヒトまたは動物の皮膚を穿刺するのに適し、少なくとも1種の創傷治癒のための活性成分を含む。
【背景技術】
【0002】
物質、特に医療用医薬品を無痛皮内(または経皮)投与するのにマイクロニードルアレイが使用されるマイクロニードルシステムおよびデバイスは、先行技術から公知である。それにもかかわらず、創傷治癒を促進するという高い必要性が存在する。
【0003】
皮膚は、いくつかの層から構成される。皮膚の最外層(これは角質層に該当する)は、外来物質が身体内に侵入し、また身体そのものの物質が身体から漏出するのを防止する公知のバリア特性を有する。およそ10~30マイクロメートルの厚さを有する緻密な角質細胞の残渣から構成される複合構造である角質層は、身体を保護するというこの目的のために水分を漏出させない膜を形成する。角質層のこの生来の不透過性は、ほとんどの医薬品およびその他の物質が皮内送達の一環として皮膚を通じて投与されるのを妨害する。
【0004】
その結果、したがって、様々な物質が、例えば角質層に微小孔または切れ目を設け、そして医療用医薬品を角質層の内部または下部にフィードまたは送達することにより投与される。このように、いくつかの医療用医薬品を、例えば、皮下に(subcutaneously)、または皮内に(intradermally)、または皮膚内に(intracutaneously)投与することも可
能である。
【0005】
先行技術において、なおも継続して存在する問題として、マイクロニードルアレイが使用される際に、微小孔および切れ目は互いに接近して位置し、創傷治癒を損なうので、創傷治癒に遅れが生ずることが挙げられる。この遅れによって、細菌およびその他の侵襲性微生物が皮膚内に侵入することが可能となり、最悪の事態では、炎症および感染症すら引き起こす契機となる。
【0006】
先行技術において、特許文献1は、マイクロニードルデバイスを、但し美容上の用途について記載するが、治癒物質は、いわゆる「ローラ」によっても送達される。但し、そのようなローラは、活性成分を投与するためのマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムではない。
【0007】
特に、アプリケータシステムは、加圧下でマイクロニードルアレイを皮膚上に配置し、そして皮膚に急激な荷重をもたらすのに使用される。皮膚に強い圧力を短時間負荷すると、さらなる痛みおよび微傷、または(微小な)皮膚の裂傷さえも引き起こすおそれがある。この問題は、皮膚の発赤および皮膚の腫脹と共に重篤な掻痒感といった症状を伴うおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
活性成分、特に医療用医薬品を皮内送達するためのマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムの目的は、したがって送達中およびその後の創傷治癒を促進し、ならびに掻痒、腫脹、皮層の痛み、発赤、水疱、出血、および炎症のような好ましくない後遺症を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
添付の特許請求の範囲の技術的教示により目的は達成される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、したがって、そのような教示、特に請求項1に記載の機能を有する教示に関し、これは第1の活性成分の皮内送達で使用されるマイクロニードルアレイを含み、担体に複数のマイクロニードルを含むアプリケータシステムであり、その場合マイクロニードルおよび/または担体は、少なくとも1種の創傷治癒のための第2の活性成分を含む。
【0012】
本発明によれば、創傷治癒のためのそのような好適な活性成分は、アブサン、藻類エキス、アラントイン、アラントイナム、タマネギ、アロエベラ、酢酸アルミニウム、瀝青スルホン酸アンモニウム(ammonium bituminosulfonate)、パイナップルエキス、アプリコットカーネルオイル、アルガンオイル、アルニカ、アイブライトエキス、竹エキス、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベータカロテン、蜜蝋、ヒヨスオイル、ビスマス、ブロッコリーシードオイル、カレンデュラ、塩化セチルピリジニウム、コンドロイチン、シトロネラ、カフェイン、コラーゲン、クプアスバター、デクスパンテノール、d-カンファー、グアヤク、ザクロエキス、アメリカマンサクの樹皮、血液透析液、尿素、ヘリアンサスオイル、ヒアルロン酸、ホホバオイル、カミツレ花、カオリン、ヒナゲシ、ベニステルペンチン、ラベンダー、肝油、レボメノール、リドカイン、タチアオイ、アーモンドオイル、マクロゴール、ミルラ、ミルラ樹脂エキス、ヒアルロン酸ナトリウム、オリーブオイル、オキシキノリン、パントテン酸、ペルーバルサム、サリチル酸フェニル、松脂、ポリドカノール、ピオリシン、レゾルシノール、ひまし油、ローズマリー、サンファイア、シーバックソーンオイル、ノコギリソウ、ゴマ油、シアバター、安息香、大豆イソフラボン、大豆油、ヒマワリ油、ハンゴンソウ、スパイク油、チモール、トルーバルサム、タチキジムシロ根茎、グレープシードオイル、チロスリシン、ビタミンA、ビタミンE(トコフェロール)、フランキンセンス、麦芽油、アメリカマンサク(ハマメリス)、酸化亜鉛、およびタマネギエキス(Allium cepa)からなる群より選択される。
【0013】
デクスパンテノール、コラーゲン、およびヒアルロン酸のような、皮膚に対して滋養効果をさらに有する活性成分が特に好ましい。さらに、アロエベラ、オリーブオイル、および尿素が好ましい。
【0014】
さらに、創傷治癒のための活性成分は、通常の添加剤および補助剤を含む処方物、特に液体またはゲルに組込み可能である。
【0015】
さらに、医療用医薬品のような第1の活性成分は、創傷治癒のための第2の活性成分とは異なる。
【0016】
本発明によれば、用語「創傷治癒」は、破壊された皮膚組織(表皮、真皮)を再生するための生理学的プロセスを包含し、同プロセスは特に新しい結合組織または毛細血管の形成により創傷閉鎖を引き起こす。本発明の範囲において、血液の供給が良い、場合によっては処置をした清潔傷の傷口の間に最小限の結合組織が生成された結果、迅速で合併症のない創傷閉鎖を伴う一次創傷治癒と、傷口が多く、創傷での細菌性の炎症を防げなかった、又は組織の損傷部が肉芽組織で充填された創傷での感染、及び辺縁部から始まる上皮化
と広範囲に及ぶ瘢痕形成の結果創傷治癒が遅延する、二次創傷治癒は区別される。
【0017】
さらに、創傷治癒プロセスの各段階は注目すべきであり、それらは、最初の数時間において液体が滲出し、そしてかさぶたが形成される潜伏段階(latency phase)、および損
傷を受けた組織が分解される、異化作用性の自己分解を伴う吸収段階(resorptive phase)である。これらの段階には、(コラーゲンが結合組織細胞(線維芽細胞)により形成されることによる同化作用性の修復を伴う増殖段階または肉芽組織形成段階、そして最終的に肉芽組織が瘢痕組織に変換される修復段階が後続する。ここで必要不可欠なこととして、創傷治癒のための活性成分が、創傷治癒プロセスを支援し、場合により上記の各段階を支援し、ならびに創傷部分および内部における合併症を回避することができることが挙げられる。
【0018】
本発明の範囲において、アプリケータシステムは、活性成分を皮膚上に投与するためのマイクロニードルアレイが提供され、ならびに創傷治癒のための第1および第2の活性成分が皮内に送達されるようにするデバイスを含むシステムである。
【0019】
好ましい実施形態では、アプリケータシステムは、電気的または機械的に制御されるトリガデバイスを含むことができる。例えば、アプリケータシステムは、マイクロニードルが皮膚を穿刺するように、マイクロニードルアレイを皮膚上に配置または適用するプランジャを含むことができる。
【0020】
トリガデバイスは、ポンプ、シリンジ、または例えば、スプリング(それによって十分なエネルギーを加えることでプランジャを押さえつけることができる)を含むことができる。プランジャは、あらゆる任意の形状および性質を有することができ、主に実現することとして、マイクロニードルアレイを第1の位置から、活性成分を皮膚上に投与するための第2の位置に提供されることが挙げられる。
【0021】
アプリケータシステムは、プッシュボタンまたはスレッドをさらに含むことができる。さらに、アプリケータシステムは、第1の活性成分が、例えば活性成分リザーバの開口により放出されるように設計可能である。
【0022】
マイクロニードルアレイは、患者の皮膚経由で、または皮膚中に物質を放出可能にするために、複数のマイクロニードルを含むことが可能であり、該マイクロニードルアレイは、患者の皮膚上に配置される。マイクロニードルアレイの各マイクロニードルは、好ましくは2つの端部を有する延長されたシャフトを含み、該シャフトの一方の端部はマイクロニードルのベースを形成し、それによってマイクロニードルは平面担体に連結している、またはそれによってマイクロニードルは平面担体と一体化している。ベースの反対側に位置するシャフトの端部は、マイクロニードルが皮膚内にできる限り容易に穿刺可能となるように、好ましくはテーパの付いた形状を有する。中空のマイクロニードルのそれぞれには、少なくとも1つの通路もしくはチャンネル、または少なくとも1つのボアホールが含まれ、マイクロニードルのベースからマイクロニードルの先端またはマイクロニードルのほぼ先端まで延在する。通路は、好ましくは円形の直径を有する。
【0023】
マイクロニードルは、様々な材料から製造可能であり、また、固体もしくは半固体、または中空デザインをそれぞれ有する、例えば金属、セラミック材料、半導体、有機材料、ポリマー、または複合物からなる。
【0024】
そのようなマイクロニードルを製造するための好ましい材料は、例えば、医薬的に許容されるステンレススチール、スチール、金、チタン、ニッケル、鉄、錫、クロム、銅、パラジウム、白金、上記金属の合金、ケイ素、二酸化ケイ素、ガラス、プラスチック、およ
びポリマーである。ポリマーは、特に好ましくは生分解性ポリマーまたは水溶性ポリマー、特に生物学的または非生物学的起源であるもの、好ましいポリマーは例えば乳酸および/またはグリコール酸のようなα-ヒドロキシ酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、およびポリエチレングリコール、ポリアンヒドリド、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ酪酸、ポリ吉草酸とのコポリマー、およびポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)を含む。同様に、ポリマーは、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルアミド、シクロオレフィン(コ)ポリマー、ポリメタクリレート、および熱可塑性物質の群に由来する非生分解性ポリマーであってもよい。別の実施形態では、マイクロニードルは、単結晶ケイ素のような単結晶物質からなる。
【0025】
マイクロニードルは、円形の断面または非円形の断面を有する、例えば三角形、四角形、または多角形の断面を有するシャフトを内蔵することができる。シャフトは、ニードルベースからニードルの先端またはニードルのほぼ先端まで延在する1つの通路または複数の通路を有することができる。マイクロニードルは、(有刺の)フックとして設計可能であり、該マイクロニードルのうちの1つまたはそれ以上は、1つまたはそれ以上のそのようなフックを内蔵する。さらに、マイクロニードルは、らせん形状での設計が可能であり、また回転可能に配置可能であり、これにより、回転動作が適用されると、皮膚への穿刺を容易にし、そして特に表皮内の所望の穿刺深さでの皮膚内への係留を有効にする(ドイツ国特許第DE 103 53 629 A1号)。
【0026】
マイクロニードルの直径は、一般的に1μm~1000μm、好ましくは10μm~100μmの範囲である。通路の直径は、一般的に3μm~80μmの範囲であり、好ましい液状物質、液剤、および物質調製物が通過するのに適する。マイクロニードルの長さは、一般的に5μm~6,000μm、特に100μm~700μmの範囲である。
【0027】
マイクロニードルは、そのベースにおいて平面担体に連結している、または平面担体と一体化している。マイクロニードルは、好ましくは、担体の表面エリアに対して略垂直に位置するように配置される。マイクロニードルは、規則的または不規則に配置構成可能である。複数のマイクロニードルの配置構成は、断面が異なる形状、寸法が異なる直径、および/または異なる長さを有するマイクロニードルを含むことができる。複数のマイクロニードルの配置構成は、例えば、中空のマイクロニードルだけを含むことが可能である。同様に、配置構成は、固体のマイクロニードル、ならびに液体包有物が点在した固体のマイクロニードルのような半固体の複合物を含むことができる。
【0028】
担体のマイクロニードルの密度は、5~5,000個/cm2、特に5~1,000個/cm2である。特に、マイクロニードルの密度が高いと、創傷治癒を阻害するおそれがある。
【0029】
マイクロニードルアレイは、平面担体を含むことができ、該担体は、円板形状、平板形状、またはフィルム形状の基本形状を実質的に有する。担体は、円形、楕円形、三角形、四角形、または多角形のベース表面エリアを有することができる。担体は、金属、セラミック材料、半導体、有機材料、ポリマー、または複合物のような様々な材料から製造可能である。担体を製造するのに適する材料は、好ましくはフィルムまたはウェブ形状の材料、例えば、好ましくはポリエチレン(PE)もしくはポリプロピレン(PP)からなる微孔性膜、または好ましくはエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)もしくはポリウレタン(PUR)からなる拡散膜であってもよい。担体を製造するための好適な材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルケトン(PAEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリウレタン(PU)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド
(PA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)のようなポリオレフィン、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリラクテート(PLA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ならびにセルロース水和物またはセルロースアセテートのようなセルロースベースのプラスチック材料からなる群より選択可能である。担体を製造するための好適な材料は、アルミニウム、鉄、銅、金、銀、白金、上記金属の合金、およびその他の医薬的に許容される金属フォイルまたは金属コーティングされたフィルムを含む金属の群からも選択可能である。
【0030】
担体は、好ましくは可撓性の材料、例えば、プラスチック材料からなる。可撓性の材料からなる担体は、非可撓性の材料からなる担体よりも良好に皮膚の表面および皮膚の曲率に適合することができる。このように、マイクロニードルアレイと皮膚との間のより良好な接触が実現し、これによりマイクロニードルアレイの確実性を改善する。
【0031】
好ましい実施形態では、マイクロニードルアレイは、フラットまたは平面のマイクロニードルアレイである。
【0032】
ここで、そのようなマイクロニードルアレイが、創傷治癒のための活性成分で少なくとも濡れていること、または好ましくは創傷治癒のための活性成分が含まれていることが、本発明にとって必要不可欠である。
【0033】
好ましい実施形態では、創傷治癒のための活性成分は、マイクロアレイのマトリックスと一体化可能またはそれに組み込み可能である。好ましい実施形態では、活性成分は、創傷治癒のためにマイクロニードル、または担体にさらに塗布可能である。
【0034】
特に好ましい実施形態では、例えば、少なくとも1つのマイクロニードルの先端は、創傷治癒のための活性成分で濡れている、または創傷治癒のための活性成分が少なくとも1つのマイクロニードルの先端に含まれている。
【0035】
創傷治癒のための活性成分は、0.01~200mg/cm2の量で、マイクロニードルアレイおよび/または担体の表面部および/または内部に存在可能である。
【0036】
さらなる実施形態では、マイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムは、皮膚への固定ならびに皮膚に圧力を加えるための容易な取り扱いを可能にし、そして特に、少なくとも1つの固定手段を含むことができる通常の機能部品を用いて構成可能である。
【0037】
マイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムは、好ましくは液剤または調製物の形態で、少なくとも1種の任意の物質、特に第1の活性成分または医療用医薬品を含有する、少なくとも1つのリザーバを含むことができる。
【0038】
リザーバは、システムに含まれる少なくとも1種の任意の活性成分または医療用医薬品を収蔵するのに使用される。
【0039】
リザーバは、リザーバと該リザーバに接続したマイクロニードルの通路との間に液体の接続が存在するような、中空マイクロニードルの通路への接続部である。このように、マイクロニードルシステムが皮膚上に配置された後、リザーバに圧力を加えると、リザーバの内容物は、マイクロニードルの通路を経由してマイクロニードルシステムの外部に放出可能である。手元の調製物は、マイクロニードルシステムからマイクロニードルの先端またはその近傍に流出し、そして標的組織内に侵入することができる。リザーバは平面担体の表面に通常連結しており、この表面は、マイクロニードルが押し出される担体の表面と
は反対側に位置する担体の表面である。
【0040】
リザーバは、リザーバに加えられた圧力に対して若干抵抗するように、容易に圧迫され、これにより、リザーバに収納された調製物に対して圧力を伝え、調製物を流出させることができる。1つの実施形態によれば、リザーバは、例えば、可撓性のバッグの形態で存在することができる。
【0041】
好ましい実施形態によれば、リザーバは、パッドまたはバルーンとして設計され、そして弾性材料から、例えば、エラストマーポリマーまたはゴムから製造される。ポリマーの例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルケトン(PAEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリウレタン(PU)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)のようなポリオレフィン、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリラクテート(PLA)、ならびにセルロース水和物またはセルロースアセテートのようなセルロースベースのプラスチック材料が挙げられる。
【0042】
別の好ましい実施形態では、マイクロニードルアレイを含むマイクロニードルシステムは、アプリケータと共に構成される。そのようなアプリケータは、マイクロニードルアレイが皮膚または角質層を穿刺するように、圧力機構を有利に作動可能にする(例えば、国際公開第2008091602A2号、同第2016162449A1号を参照)。
【0043】
さらなる実施形態によれば、マイクロニードルアレイは、好ましくは、コンタクト接着ストリップまたはパッチによって、患者またはテスト対象の皮膚に付着する固定手段を含むことができる。好適なコンタクト接着剤として、感圧接着剤(PSA)として知られている、軽微な圧力を短時間加えた後に皮膚に接着する高粘度物質が挙げられる。これは、高い凝集力および接着力を有する。例えば、ポリ(メタ)アクリレートベースの、ポリイソブチレンベースの、またはシリコーンベースのコンタクト接着剤を使用することが可能である。さらなる実施形態では、固定手段は、バンド、弾性バンド、ゴム、またはストラップから作成できる。身体への確実な固定は、そのような固定手段によって達成できる。
【0044】
したがって、本発明は、皮内送達するためのマイクロニードルアレイを含む本発明によるアプリケータシステムであって、皮膚に対する固定手段を含む前記アプリケータシステムに関する。
【0045】
本発明によれば、用語「皮内送達(intradermal delivery)」(類義語:「皮膚内送達(intracutaneous delivery)」)は、マイクロニードルアレイを経由する、皮膚中への
任意の活性成分の投与について記載し、及び皮膚に穴を開けるまたはそれを穿刺するマイクロニードルを必要とする。
【0046】
したがって、同様に、本発明は、皮内送達するための方法であって、
担体に複数のマイクロニードルを備えるマイクロニードルアレイを含むアプリケータシステムによって、少なくとも1種の第1の活性成分が送達され、
マイクロニードルおよび/または担体は、少なくとも1種の創傷治癒のための第2の活性成分を含む前記方法に関する。
【0047】
下記の実施例は、本発明をさらに記載するために提供されるが、本発明はこの実施例に制限されない。
【実施例0048】
a)実験デザイン
デクスパンテノールを含まないマイクロアレイ、および150mgのデクスパンテノールを含むマイクロアレイを、健康な皮膚(脇の下)上にそれぞれ用手適用し、テープで固定し、そして1時間装着後に除去した。比較するために、マイクロアレイを配置する前、マイクロアレイを除去した直後、残留する可能性のある残渣を拭き取らずに、および70時間後に、適用部位を写真撮影した。
【0049】
b)材料および方法
Microarray Stansomatic Octagon536;Wl.4301
デクスパンテノール(欧州薬局方)ロット#BCBQ1802V
Hansaplast Leukosilk固定テープ
Canon EOS 1200Dカメラ
【0050】
c)結果および考察
デクスパンテノールを含まないマイクロアレイで処置された皮膚は、いくつかのエリアにおいて発赤し、傷ができた。デクスパンテノールを含むマイクロアレイで処置された皮膚は、発赤がより少なかった。傷については肉眼では目視不能であった。
【0051】
d)結論
デクスパンテノールを用いてマイクロアレイを事前処理すれば、適用に付随する望ましくない効果が低減した。
【0052】
類似した実験を、コラーゲン、ヒアルロン酸、アロエベラ、オリーブオイル、および尿素について実施した。使用した量は、0.01mg~200mg/cm2の範囲であった。
【0053】
すべての実験において、皮膚はより少なく発赤し、また傷は回避できた。