(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130493
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】尾静脈注射システム
(51)【国際特許分類】
A61D 1/00 20060101AFI20230912BHJP
A61M 5/42 20060101ALI20230912BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
A61D1/00 B
A61M5/42 520
G01B11/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115720
(22)【出願日】2023-07-14
(62)【分割の表示】P 2023524969の分割
【原出願日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2022032006
(32)【優先日】2022-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515130201
【氏名又は名称】株式会社Preferred Networks
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 天毅
(72)【発明者】
【氏名】寺田 耕志
(72)【発明者】
【氏名】西脇 光一
(72)【発明者】
【氏名】三股 舜
(72)【発明者】
【氏名】北村 秀智
(57)【要約】
【課題】尾静脈に対する穿刺を容易にする尾静脈注射システムを提供する。
【解決手段】尾静脈注射システムは、尾を撮影した画像に基づいて、尾静脈の位置を算出する算出部と、位置調整機構を用いて、注射針の位置及び姿勢を調整する調整部と、前記注射針又は注射器を交換したときに、前記位置調整機構に対する注射針の位置を校正する校正部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尾を撮影した画像に基づいて、尾静脈の位置を算出する算出部と、
位置調整機構を用いて、注射針の位置及び姿勢を調整する調整部と、
前記注射針又は注射器を交換したときに、前記位置調整機構に対する注射針の位置を校正する校正部と、を有する、
尾静脈注射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、尾静脈注射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
動物実験は、生化学や創薬など、さまざまな分野で重要な役割を果たしている。特に、実験用マウスが実験動物として広く用いられている。マウスに穿刺する際には、尾静脈注射が行われることがある。
【0003】
人の腕の血管に対する穿刺に関連する技術として、第1及び第2のカメラで撮影した第1及び第2画像から血管部分の特徴形状を1次の直線式で表し、アクチュエータを制御して、シリンジの穿刺針を血管に対して穿刺する自動注射装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば、マウスの尾静脈の直径は、約300μmであり、人間の腕の血管の直径と比べると1/10程度であること等から、特許文献1に示すような、人間の腕の血管に対する穿刺技術を、尾静脈注射に適用することは困難な場合があった。
【0006】
本開示の一実施形態は、尾静脈に対する穿刺を容易にする尾静脈注射システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係る尾静脈注射システムは、尾を撮影した画像に基づいて、尾静脈の位置を算出する算出部と、位置調整機構を用いて、注射針の位置及び姿勢を調整する調整部と、前記注射針又は注射器を交換したときに、前記位置調整機構に対する注射針の位置を校正する校正部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、尾静脈に対する穿刺を容易にする尾静脈注射システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態における尾静脈注射システムの概略図である。
【
図2A】一実施形態に係る尾静脈注射方法のイメージを示す図(1)である。
【
図2B】一実施形態に係る尾静脈注射方法のイメージを示す図(2)である。
【
図3】一実施形態に係る曲げ治具、及び保定部の構成例を示す図である。
【
図4】一実施形態に係るクランプ部の構成例を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る情報処理装置の機能構成の例を示す図である。
【
図6A】一実施形態に係る尾静脈の検出処理について説明するための図(1)である。
【
図6B】一実施形態に係る尾静脈の検出処理について説明するための図(2)である。
【
図7A】一実施形態に係る注射器の針の検出処理について説明するための図(1)である。
【
図7B】一実施形態に係る注射器の針の検出処理について説明するための図(2)である。
【
図8】一実施形態に係る尾静脈注射システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】一実施形態に係る算出処理の例を示すフローチャートである。
【
図10】一実施形態に係る算出処理について説明するための図(1)である。
【
図11】一実施形態に係る算出処理について説明するための図(2)である。
【
図12】一実施形態に係る算出処理について説明するための図(3)である。
【
図13】一実施形態に係る算出処理について説明するための図(4)である。
【
図14】一実施形態に係る算出処理について説明するための図(5)である。
【
図15】一実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す説明では、各図において共通する部分について、同一の符号を付して説明を省略する。また、理解を容易にするため、各図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を含む。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。なお、以下の説明において、例えば、平行、直行、上下、左右、方向等の用語には、本発明の効果を損なわない程度のずれが許容される。
【0011】
<システム構成>
図1は、一実施形態に係る尾静脈注射システムの概略図である。尾静脈注射システム1は、例えば、5軸以上の位置調整機構10、第1のカメラ20a、第2のカメラ20b、マウス(ネズミ)等を保定する保定器30、マウス等の尾41を保持する固定具40、注射器50、及び情報処理装置100等を有する。
【0012】
位置調整機構10は、例えば、X軸方向の第1の自由度11、Y軸方向の第2の自由度12、Z軸方向の第3の自由度13、X軸周りの第4の自由度14、Y軸周りの第5の自由度15、及びZ軸周りの第6の自由度16の6軸の自由度を有するロボット等である。この6軸の自由度により、位置調整機構10は、例えば、情報処理装置100からの制御に従って、注射器50、又は注射器50の針(以下、注射針と呼ぶ)を、任意の位置、及び方向に移動させることができる。
【0013】
なお、6軸の自由度のうち、X軸周りの第4の自由度14は、例えば、注射器50を位置調整機構10に取り付けるとき(又は注射針を注射器50に取り付けるとき)に位置を合わせても良い。この場合、位置調整機構10は、5軸以上の自由度を有していれば、注射器50、又は注射針を、任意の位置、及び方向に移動させることができる。これにより、人等の血管よりも細いマウスの尾の血管であっても、より適切に穿刺することができる。また、尾の延伸方向に加え、尾の断面に垂直な方向に沿って穿刺が可能になる。これにより、適切に穿刺することができる。
【0014】
第1のカメラ20a、及び第2のカメラ20bは、異なる方向から尾41を撮影(撮像)するカメラである。好ましくは、第1のカメラ20a、及び第2のカメラ20bは、可視光カメラである。マウス等の尾41は、人間の腕等より皮膚が薄いため、可視光領域でも尾静脈を検出し易いという特徴がある。
【0015】
保定器(保定部)30は、尾静脈注射をするときに、尾静脈注射の対象となるマウス等が動かないように抑える(保定する)ために用いられる。なお、尾静脈注射の対象となる動物は、マウス(ネズミ)に限られず、例えば、ラット、モルモット、スナネズミ、ハムスター、フェレット等の他の動物であってもよい。ここでは、一例として、尾静脈注射の対象となる動物がマウスであるものとして以下の説明を行う。
【0016】
固定具40は、例えば、直線部と曲げ部とを有し、尾41を保持する固定具(治具)である。注射器50は、尾静脈に穿刺するための注射器である。ここで、穿刺とは、体液又は組織の採取のため、又は薬物等の注入のために、体外から血管などに注射針を刺し入れることをいう。
【0017】
情報処理装置100は、例えば、コンピュータの構成を有しており、所定のプログラムを実行することにより、5軸以上の位置調整機構10、第1のカメラ20a、及び第2のカメラ20b等を制御する。
【0018】
なお、
図1に示した尾静脈注射システム1の構成は一例である。例えば、尾静脈注射システム1は、1つの装置に組み込まれた尾静脈注射装置であっても良い。また、尾静脈注射システム1は、尾41を撮影可能な3つ以上のカメラを有していても良い。
【0019】
<尾静脈注射方法の概要>
図2A、
図2Bは、一実施形態に係る尾静脈注射方法のイメージを示す図である。
図2Aに示すように、固定具40は、尾41の一部を直線部分として直線的に保持する直線部201と、直線部分より曲率が高くなるように尾41の別の一部を保持する曲げ部202とを有する。
【0020】
情報処理装置100は、カメラ(第1のカメラ20a、第2のカメラ20b等)を用いて、固定具40で保持した尾41を撮影し、撮影した画像に基づいて、尾静脈203上の2つの点の3次元的な位置を算出する。例えば、情報処理装置100は、直線部201が保持する尾41の直線部分において、穿刺点となる点204と、穿刺終了点となる点205の3次元的な位置を算出する。また、情報処理装置100は、5軸以上の位置調整機構10を用いて、注射針207の位置を、点204と点205とを通る線206上に合わせる。
【0021】
これにより、本実施形態に係る尾静脈注射システム1では、
図2Bに示すように、点204と点205とを通る線206に沿って、注射針207を刺す。例えば、尾静脈注射システム1では、点204を穿刺点とし、点205を穿刺終了点として、穿刺を行う。
【0022】
従来の技術では、血管に対して斜め方向に穿刺が行われるため、注射針207が血管に達した後に、注射針207をさらに前進させると血管を突き抜けてしまうという問題がある。一方、本実施形態に係る尾静脈注射システム1では、
図2Bに示すように、注射針207が尾静脈203に達した後に、さらに注射針207を前進させることができるので、人間の血管より細いマウス等の尾静脈に対する穿刺が容易になる。
【0023】
なお、注射針207を尾静脈203に刺す穿刺動作は、尾静脈注射システム1が、アクチュエータ等を用いて行うものであっても良いし、ユーザが実行するものであっても良い。
【0024】
<固定具、及び保定器の構成>
図3は、一実施形態に係る固定具、及び保定器の構成例を示す図である。
図3の例では、土台となる基部300に対して、固定具40、保定器30、及びクランプ部320等が取り付けられている。
【0025】
保定器(保定部)30は、マウスの前方が開口した筒状になっており、前方にマウスの頭を向けて、開口部301から、マウスを保定器30に入れる。保定器30の上方の壁302には、マウスの尾41を通すためのスリット303が設けられており、マウスの尾41を固定具40に容易にセットできるようになっている。
【0026】
また、保定器30の上方の壁302は、保定器30の前方から後方に向けて高さが徐々に低くなるように傾斜している。これにより、保定器30は、マウスの後ろ足が壁を蹴ることを抑制しつつ、マウスの尻部を保持することができる。さらに、保定器30の前方に開口部301を設けることにより、マウスが開口部301から逃げようとするため、マウスの尾41が、さらにしっかりと伸びるという効果が期待できる。
【0027】
固定具40は、駆血帯311を有し、この駆血帯311により、尾41を固定するとともに、尾静脈を拡張させることができる。
【0028】
また、固定具40は、尾を這わせるための溝312を有し、直線部201の溝312には、尾41を吸引するとともに、光を照射するための穴313が設けられている。例えば、吸引ポート314に吸引ポンプを接続し稼働させることにより、固定具40の直線部201に設けられた穴313に尾41の一部が吸引され、尾41が直線的に保持される。また、固定具40の内部に設けられた光源を点灯することにより、穴313から光が照射され、第1のカメラ201a、又は第2のカメラ201bで撮影した画像から、尾静脈を検出することが容易になる。
【0029】
<クランプ部の構成>
クランプ部320は、例えば、
図4に示すような構成を有している。
図4は、一実施形態に係るクランプ部の構成例を示す図である。
図4の例では、クランプ部320は、尾41の尾先400を保持する2つのローラー401、411を有する。ローラー401は、基部300に固定されたシャフト402に取り付けられ、一方向にのみ回転力を伝達するワンウェイクラッチ403を備えている。
【0030】
ローラー411は、シャフト414を介して、基部300に取り付けられた稼働式のアーム413に、シャフト412を介して取り付けられ、ローラー401と同様にワンウェイクラッチ416を備えている。また、ローラー411は、可動式のアーム413に取り付けられたスプリング415の弾力を利用して、可動式のアーム413を移動させることにより、尾先400の保持、及び解放を行えるようになっている。また、クランプ部320は、上記の構成により、マウスの尾41が、マウスによって矢印方向に引っ張られたときに、尾先400を保持する保持力が増すように構成されている。
【0031】
<情報処理装置の機能構成>
情報処理装置100は、コンピュータの構成を有しており、コンピュータで所定のプログラムを実行することにより、画像取得部501、検出部502、校正部503、記憶部504、算出部505、調整部506、及び穿刺部507等を実現している。なお、上記の各機能構成のうち、少なくとも一部は、ハードウェアによって実現されるものであっても良い。
【0032】
画像取得部501は、例えば、第1のカメラ20a、及び第2のカメラ20bを制御して被写体を撮影し、撮影した画像を取得する。例えば、画像取得部501は、第1のカメラ20aで尾41の直線部分を撮影した第1の画像、及び第2のカメラ20bで尾41の直線分を撮影した第2の画像を取得する。なお、以下の説明において、第1のカメラ20a、第2のカメラ20bのうち、任意のカメラを示す場合、「カメラ20」という。好ましくは、カメラ20は、可視光カメラである。
【0033】
検出部502は、画像取得部501が取得した画像から、尾静脈203、注射針207等を検出する。好ましくは、検出部502は、可視光領域で尾静脈203、注射針207等を検出する。
【0034】
図6Aは、固定具40で保持した尾41をカメラ20で撮影した画像の一例を示している。本実施形態に係る固定具40は、尾41を吸引するとともに、光を照射する穴313を有しているため、
図6Aに示すように、吸引により尾41を直線的に保持することができる。また、マウスの尾41は、例えば、人間の腕等と比べて、十分に細いため、固定具40の穴313から照射する可視光により、可視光カメラで撮影した画像から、尾静脈203を検出することができる。
【0035】
例えば、検出部502は、可視光カメラで撮影した画像から、最も暗い点を尾静脈203の候補とし、候補に線形フィッティングを行うことにより、尾静脈203を検出する。この処理は、画像で尾静脈203がax+bで表される場合、次の式(1)で表される。
【0036】
【数1】
式(1)において、I(x,y)は、ピクセル(x,y)における画素の明るさを表す。なお、画像が、RGBカラーで表される場合、尾静脈203は、R(Red)チャネル、及びG(Green)チャネルで暗い領域として表される。従って、検出部502は、Rチャネル、及びGチャネルで、個別に線形フィッティングを実行し、外れ値の少ない方のチャネルの検出結果を採用しても良い。
【0037】
図6Bは、固定具40で吸引を行わない場合における、尾41をカメラ20で撮影した画像の一例を示している。吸引を行わない場合、マウスの尾41は、
図6Bに示すように曲がってしまうことが分かっている。従って、吸引を行わない場合、尾41を直線的に保持することは困難である。また、この場合、穴313から光が漏れてしまうため、尾静脈203が不鮮明となり、尾静脈203の検出も困難になる。
【0038】
一方、本実施形態に係る固定具40は、尾41を吸引するとともに、光を照射する穴313を有しているため、尾41を直線的に保持し、かつ可視光カメラを用いて尾静脈を検出することが容易になる。
【0039】
図7Aは、注射針207をカメラ20で撮影した画像の一例を示している。
図7Aに示すように、注射針207は、金属面の鏡面反射のため、この画像から針先を検出することは困難である。このような場合、
図7Bに示すように、注射針207に逆光を当てて、注射針207をシルエットとして検出することが効果的である。しかし、第1のカメラ20a、及び第2のカメラ20bの各々に対して、注射針207に、十分な明るさの逆光を当てるためのバックライトを設置することは、スペース、及びコストの面で望ましくない場合がある。
【0040】
そこで、本実施形態では、注射針207の背景となるバックパネルを蛍光体で覆い、カメラ20側から紫外線を照射することにより、薄型で均一な明るさのバックパネルを実現している。カメラ20側から照射する紫外線は、カメラ20が撮影する画像には影響を与えずに、蛍光体で覆ったバックパネルを可視光領域で発光させることができる。これにより、検出部502は、例えば、
図7Bに示すような画像から、注射針207の針先701を容易に検出することができる。
【0041】
なお、カメラ20が、従来技術のように赤外線カメラである場合、赤外線領域で発光する蛍光体は一般的ではないので、同様の構成を同様のコストで実現することは困難となりうる。
【0042】
ここで、
図5に戻り、情報処理装置100の機能構成の説明を続ける。校正部503は、カメラ20のカメラパラメータと、固定具40、位置調整機構10、及び注射針207の針先701の位置のいずれか2つ以上を校正する第1の校正処理(全体キャリブレーション)を実行する。また、校正部503は、注射器50、又は注射針207を交換したときに、注射針207の針先701の位置を含む、第1の校正処理より少ない数の部材を校正することにより再校正可能な第2の校正処理(針先キャリブレーション)を実行する。
【0043】
ここでは、校正部503が、カメラ20のカメラパラメータ、位置調整機構の10の位置、及び注射針207の針先701の位置を校正する場合の例について説明する。
【0044】
注射針207を、直径0.3mm程度のマウスの尾静脈203に正しく穿刺するためには、位置調整機構10に対する注射針207の針先701の位置、及びカメラパラメータ等のシステムパラメータを正しく校正する必要がある。本実施形態では、この校正処理を第1の校正処理と呼ぶ。しかし、穿刺を行った後には、注射器50、又は注射針207を交換するため、穿刺を行う度に第1の校正処理を実行することは、時間的に望ましくない。
【0045】
そこで、本実施形態に係る校正部503は、注射器50、又は注射針207を交換したときに、位置調整機構10に対する注射針207の針先701の位置を校正することにより、再校正が可能となるように構成されている。本実施形態ではこの校正処理を第2の校正処理と呼ぶ。
【0046】
第1の校正処理では、校正部503は、位置調整機構10を制御して、注射針207の針先701の位置を少しずつ移動させて、カメラ20で針先701を撮影し、式(2)の最適化問題を解くことにより、システム全体の校正を行う。
【0047】
【数2】
式(2)において、cは、カメラ20のカメラパラメータであり、例えば、第1のカメラ20a、又は第2のカメラ20bの位置、画角(レンズのパラメータ等)を表す。Hは、位置調整機構10の位置(例えば、原点の位置)を表す。qは、位置調整機構10の位置からみて、注射針207の針先701がどこにあるかを表す。関数fは、カメラパラメータcを用いて、3次元空間上の点を、カメラ20の画像上のピクセルに変換する関数である。pは、カメラ20の画像上の針先701の位置を表す。
【0048】
校正部503は、pで表されるカメラの20の画像上の針先701の位置と、関数f()によって変換した針先701の位置との差が最小となるように、式(2)の最適化問題を解くことにより、システム全体の校正処理(第1の校正処理)を行う。
【0049】
第2の校正処理では、校正部503は、位置調整機構10に対する針先701の位置を表すqのみを校正する。この第2の校正処理は、例えば、位置調整機構10をホームポジションに設定して、第1のカメラ20a、及び第2のカメラ20bを用いて、1組の画像を撮影するだけで実行可能なので、第1の校正処理と比べて大幅に処理時間を短縮することができる。
【0050】
記憶部504は、例えば、校正部503が求めた、第1のカメラ20a及び第2のカメラ20bのカメラパラメータc、位置調整機構10の位置H、及び位置調整機構10に対する針先701の位置q等を記憶する。
【0051】
算出部505は、尾41をカメラ20で撮影した画像に基づいて、尾静脈203上の2つの点の3次元的な位置を算出する算出処理を実行する。算出部505は、少なくとも位置または方向のいずれかが異なる条件で尾を撮影した画像に基づいて、尾静脈上の2つの点の3次元的な位置を算出する。例えば、算出部505は、第1のカメラ20aで撮影した第1の画像と、第2のカメラ20bで撮影した第2の画像とを用いて、
図2Aで説明した点204、及び点205の3次元的な位置を算出する。なお、算出部505による算出処理の具体的な処理内容については、フローチャート、及び図を用いて後述する。
【0052】
調整部506は、5軸以上の位置調整機構を用いて、注射針の位置及び姿勢を調整する調整処理を実行する。例えば、調整部506は、
図2Aで説明したように、5軸以上の位置調整機構10を用いて、注射針207の位置を、算出部505が求めた点204と点205とを通る線206上に合わせる。調整部506は、校正部503による校正結果を用いて、第1のカメラ20aが撮影した第1の画像、及び第2のカメラ20bが撮影した第2の画像を用いて、注射針207の針先701の位置を正確に把握することができる。従って、調整部506は、第1の画像、及び第2の画像を取得して、針先701の位置を確認しながら、位置調整機構10を制御して注射器50の姿勢を少しずつ変化させることにより、注射針207の位置を、点204と点205とを通る線206上に合わせることができる。
【0053】
穿刺部507は、
図2Bに示すように、点204と点205とを通る線206に沿って、注射針207を刺す。例えば、穿刺部507は、点204を穿刺点とし、点205を穿刺終了点として、穿刺を行う。
【0054】
なお、本実施形態に係る尾静脈注射システム1では、穿刺部507は、様々な構成とすることができる。例えば、尾静脈注射システム1は、注射針207の位置を、点204と点205とを通る線206上に合わせる処理までを行い、穿刺処理は、例えば、人の手等によって行うものであっても良い。この場合、情報処理装置100は、穿刺部507を有していなくても良い。
【0055】
また、穿刺部507は、穿刺した後に注入する薬液の圧力を検出し、検出した圧力に基づいて薬液の注入を制御しても良い。例えば、穿刺部507は、注射針207が尾静脈203に正しく刺さっていないと圧力が大きいことを利用して、圧力が閾値を超えた場合、穿刺を中止しても良い。或いは、穿刺部507は、注射針207が尾静脈203に刺さっている場合、注射器50のピストンを引くと、注射器50内に血液が抽出されることを利用して、注射針207が尾静脈203に刺さっているか否かを画像で判断しても良い。
【0056】
このように、本実施形態に係る尾静脈注射システム1では、注射針207の位置を、点204と点205とを通る線206上に合わせる処理を行うものであれば、穿刺部507は任意の構成であって良い。
【0057】
<処理の流れ>
続いて、本実施形態に係る尾静脈注射方法の処理の流れについて説明する。
【0058】
(尾静脈注射システムの処理)
図8は、一実施形態に係る尾静脈注射システムの処理の例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、
図1に示すような尾静脈注射システム1において、情報処理装置100が実行する処理の一例を示している。
【0059】
ステップS801において、情報処理装置100の校正部503は、例えば、第1のカメラ20a、及び第2のカメラ20bのカメラパラメータと、位置調整機構10の位置と、注射針207の針先701の位置と、を校正する第1の校正処理を実行する。例えば、校正部503は、前述したように、位置調整機構10を制御して、注射針207の針先701の位置を少しずつ移動させて、カメラ20で針先701を撮影し、式(2)の最適化問題を解くことにより、システム全体の校正を行う。
【0060】
ステップS802において、情報処理装置100の算出部505は、第1のカメラ20aで撮影した第1の画像と、第2のカメラ20bで撮影した第2の画像とを用いて、点204、及び点205の3次元的な位置を算出する算出処理を実行する。なお、算出処理の具体的な処理内容については、
図9~14を用いて後述する。
【0061】
ステップS803において、情報処理装置100の調整部506は、
図2Aで説明したように、5軸以上の位置調整機構10を用いて、注射針207の位置を、算出部505が求めた点204と点205とを通る線206上に合わせる。
【0062】
ステップS804において、情報処理装置100の穿刺部507は、
図2Bに示すように、点204と点205とを通る線206に沿って、尾静脈203に注射針207を刺す。例えば、穿刺部507は、点204を穿刺点とし、点205を穿刺終了点として、穿刺を行う。
【0063】
ステップS805において、情報処理装置100は、次の穿刺を実行するか否かを判断する。次の穿刺を行う場合、情報処理装置100は、処理をステップS806に移行させる。一方、次の穿刺を行わない場合、情報処理装置100は、
図8の処理を終了する。
【0064】
ステップS806に移行すると、情報処理装置100は、注射針207(又は注射器50)等を交換したか否かを判断する。注射針207等を交換した場合、情報処理装置100は、処理をステップS807に移行させる。一方、注射針207を交換していない場合、情報処理装置100は、処理をステップS802に戻す。
【0065】
別の一例として、情報処理装置100は、注射針207を交換していない場合、注射針207の交換を促すメッセージを表示して、注射針207が交換されるまで処理を保留しても良い。なお、情報処理装置100は、注射針207を交換したか否かを、ユーザよる入力操作等により判断してもよいし、カメラ20で撮影した画像等によって判断してもよい。
【0066】
ステップS807に移行すると、情報処理装置100の校正部503は、位置調整機構10に対する注射針207の針先701の位置を校正する第2の校正処理を行い、校正後に、処理をステップS802に戻す。
【0067】
上記の処理により、尾静脈注射システム1は、
図2A、
図2Bで説明したように、尾静脈に対する穿刺を容易にすることができる。また、尾静脈注射システム1は、穿刺を行うごとに注射針207、又は注射器50を交換して、穿刺を複数回実行する場合でも、校正に要する時間を大幅に削減することができる。
【0068】
(算出処理)
図9は、一実施形態に係る算出処理の例を示すフローチャートである。この処理は、
図8のステップS802において、情報処理装置100の算出部505が実行する算出処理の一例を示している。
【0069】
なお、ここでは、第1の校正処理、又は第2の校正処理により、第1のカメラ20a、及び第2のカメラ20bのカメラパラメータが既知であるものとする。なお、カメラパラメータには、例えば、第1のカメラ20a、及び第2のカメラ20bの位置姿勢、焦点距離、光学中心、又は歪み補正パラメータ等が含まれる。また、固定具40と、第1のカメラ20a、及び第2のカメラ20bとの位置関係は固定であるものとする。
【0070】
ステップS901において、算出部505は、第1のカメラ20aで撮影した第1の画像を用いて、穿刺位置、及び穿刺終了位置を決定する。
【0071】
好適な一例として、固定具40には、
図10に示すように、位置決め用の第1のマーカ1001aと第2のマーカ1001bとが記されている。この固定具40を、第1のカメラ20aで撮影することにより、
図10に示すように、固定具40上の第1のマーカ1001a、及び第2のマーカ1001bを撮影した画像1002が得られる。
【0072】
例えば、算出部505は、画像1002において、第1のマーカ1001aのX軸方向の位置を穿刺位置c1x1として決定する。また、算出部505は、穿刺終了点までの距離に基づいて、X軸方向の穿刺終了位置c1x2を決定する。例えば、第1のマーカ100aと第2のマーカ1001bとの間の距離がDであり、穿刺終了点までの距離をdに設定する場合、算出部505は、穿刺位置c1x1から、X軸方向にd/Dの位置を穿刺終了位置c1x2として決定する。
【0073】
ステップS902において、算出部505は、第1のカメラ20aで撮影した第1の画像を用いて、尾静脈上の第1の点と第2の点とを決定する。例えば、算出部505は、
図11に示すように、固定具40にマウス1101の尾41を固定した状態で、画像取得部501を用いて、第1のカメラ20aで尾41を撮影した第1の画像1102を取得する。また、算出部505は、検出部502を用いて、第1の画像1102から尾静脈203を検出する。さらに、算出部505は、第1の画像1102において、X軸方向の穿刺位置c1x1と、尾静脈203との交差位置を第1の点c1p1とし、X軸方向の穿刺終了位置c1x2と、尾静脈203との交差位置を第2の点c1p2とする。
【0074】
ステップS903において、算出部505は、第2のカメラ20bで尾41を撮影した第2の画像において、第1のエピポーラ線c2l1と第2のエピポーラ線c2l2とを算出する。例えば、算出部505は、
図12に示すように、固定具40にマウス1101の尾41を固定した状態で、画像取得部501を用いて、第2のカメラ20bで尾41を撮影した第2の画像1201を取得する。また、算出部505は、第2の画像1201において、第1のカメラ20aと第1の点c1p1とを結ぶ第1のエピポーラ線c2l1を算出する。
【0075】
第1のカメラ20aと、第1の点c1p1とを結ぶ直線は、第2のカメラ20bに直線として投影される。この直線をエピポーラ線と呼ぶ。第1の点c1p1の座標が分かっていない場合、第1のカメラ20aで撮影した第1の点c1p1は、第1のエピポーラ線c2l1上にあることが分かる。
【0076】
同様にして、算出部505は、第2の画像1201において、第1のカメラ20aと第2の点c1p2とを結ぶ第2のエピポーラ線c2l2を算出する。
【0077】
ステップS904において、算出部505は、
図13に示すように、第2の画像1201において、尾静脈203と第1のエピポーラ線c2l1とが交わる第3の点c2p1と、尾静脈203と第2のエピポーラ線c2l2とが交わる第4の点c2p2とを求める。
【0078】
ステップS905において、算出部505は、第3の点c2p2、及び第4の点の3次元的な位置を算出する。第1の画像1102における第1の点c1p1と、第2の画像1201における第3の点c2p1とは同じ点(例えば、
図14の点p1)を示す。従って、算出部505は、第1のカメラ20a、及び第2のカメラ20bのカメラパラメータと、第1の画像1102、及び第2の画像1201とを用いて、例えば、公知の三角測量の手法等を用いて、点p1の三次元の座標(x1,y1,z1)を算出することができる。なお、この点p1は、
図2Aの点204に対応している。
【0079】
同様に、第1の画像1102における第2の点c1p2と、第2の画像1201における第4の点c2p2とは同じ点(例えば、
図14の点p2)を示す。従って、算出部505は、第1のカメラ20a、及び第2のカメラ20bのカメラパラメータと、第1の画像1102、及び第2の画像1201とを用いて、例えば、公知の三角測量の手法等を用いて、点p2の三次元の座標(x2,y2,z2)を算出することができる。なお、この点p2は、
図2Aの点205に対応している。
【0080】
上記の処理により、情報処理装置100は、尾静脈203上の2つの点(例えば、
図2Aの点204、205)の3次元的な位置を算出することができる。
【0081】
<情報処理装置の構成>
前述した実施形態における情報処理装置100の一部又は全部は、ハードウェアで構成されていてもよいし、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等が実行するソフトウェア(プログラム)の情報処理で構成されてもよい。ソフトウェアの情報処理で構成される場合には、前述した実施形態における情報処理装置100の少なくとも一部の機能を実現するソフトウェアを、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的な記憶媒体(非一時的なコンピュータ可読媒体)に収納し、コンピュータに読み込ませることにより、ソフトウェアの情報処理を実行してもよい。また、通信ネットワークを介して当該ソフトウェアがダウンロードされてもよい。さらに、ソフトウェアの処理の全部又は一部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の回路に実装されることにより、当該ソフトウェアによる情報処理がハードウェアにより実行されてもよい。
【0082】
ソフトウェアを収納する記憶媒体は、光ディスク等の着脱可能なものでもよいし、ハードディスク、メモリ等の固定型の記憶媒体であってもよい。また、記憶媒体は、コンピュータ内部に備えられてもよいし(主記憶装置、補助記憶装置等)、コンピュータ外部に備えられてもよい。
【0083】
図15は、前述した実施形態における情報処理装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置100は、一例として、プロセッサ71と、主記憶装置72(メモリ)と、補助記憶装置73(メモリ)と、ネットワークインタフェース74と、デバイスインタフェース75と、を備え、これらがバス76を介して接続されたコンピュータ7として実現されてもよい。
【0084】
図15のコンピュータ7は、各構成要素を一つ備えているが、同じ構成要素を複数備えていてもよい。また、
図15では、1台のコンピュータ7が示されているが、ソフトウェアが複数台のコンピュータにインストールされて、当該複数台のコンピュータそれぞれがソフトウェアの同一の又は異なる一部の処理を実行してもよい。この場合、コンピュータそれぞれがネットワークインタフェース74等を介して通信して処理を実行する分散コンピューティングの形態であってもよい。つまり、前述した実施形態における情報処理装置100は、1又は複数の記憶装置に記憶された命令を1台又は複数台のコンピュータが実行することで機能を実現するシステムとして構成されてもよい。また、端末から送信された情報をクラウド上に設けられた1台又は複数台のコンピュータで処理し、この処理結果を端末に送信するような構成であってもよい。
【0085】
前述した実施形態における情報処理装置100の各種演算は、1又は複数のプロセッサを用いて、又はネットワークを介した複数台のコンピュータを用いて、並列処理で実行されてもよい。また、各種演算が、プロセッサ内に複数ある演算コアに振り分けられて、並列処理で実行されてもよい。また、本開示の処理、手段等の一部又は全部は、ネットワークを介してコンピュータ7と通信可能なクラウド上に設けられたプロセッサ及び記憶装置の少なくとも一方により実現されてもよい。このように、前述した実施形態における各装置は、1台又は複数台のコンピュータによる並列コンピューティングの形態であってもよい。
【0086】
プロセッサ71は、少なくともコンピュータの制御又は演算のいずれかを行う電子回路(処理回路、Processing circuit、Processing circuitry、CPU、GPU、FPGA、ASIC等)であってもよい。また、プロセッサ71は、汎用プロセッサ、特定の演算を実行するために設計された専用の処理回路又は汎用プロセッサと専用の処理回路との両方を含む半導体装置のいずれであってもよい。また、プロセッサ71は、光回路を含むものであってもよいし、量子コンピューティングに基づく演算機能を含むものであってもよい。
【0087】
プロセッサ71は、コンピュータ7の内部構成の各装置等から入力されたデータやソフトウェアに基づいて演算処理を行ってもよく、演算結果や制御信号を各装置等に出力してもよい。プロセッサ71は、コンピュータ7のOS(Operating System)や、アプリケーション等を実行することにより、コンピュータ7を構成する各構成要素を制御してもよい。
【0088】
前述した実施形態における情報処理装置100は、1又は複数のプロセッサ71により実現されてもよい。ここで、プロセッサ71は、1チップ上に配置された1又は複数の電子回路を指してもよいし、2つ以上のチップあるいは2つ以上のデバイス上に配置された1又は複数の電子回路を指してもよい。複数の電子回路を用いる場合、各電子回路は有線又は無線により通信してもよい。
【0089】
主記憶装置72は、プロセッサ71が実行する命令及び各種データ等を記憶してもよく、主記憶装置72に記憶された情報がプロセッサ71により読み出されてもよい。補助記憶装置73は、主記憶装置72以外の記憶装置である。なお、これらの記憶装置は、電子情報を格納可能な任意の電子部品を意味するものとし、半導体のメモリでもよい。半導体のメモリは、揮発性メモリ又は不揮発性メモリのいずれでもよい。前述した実施形態における情報処理装置100において各種データ等を保存するための記憶装置は、主記憶装置72又は補助記憶装置73により実現されてもよく、プロセッサ71に内蔵される内蔵メモリにより実現されてもよい。例えば、前述した実施形態における記憶部504は、主記憶装置72又は補助記憶装置73により実現されてもよい。
【0090】
前述した実施形態における情報処理装置100が、少なくとも1つの記憶装置(メモリ)と、この少なくとも1つの記憶装置に接続(結合)される少なくとも1つのプロセッサで構成される場合、記憶装置1つに対して、少なくとも1つのプロセッサが接続されてもよい。また、プロセッサ1つに対して、少なくとも1つの記憶装置が接続されてもよい。また、複数のプロセッサのうち少なくとも1つのプロセッサが、複数の記憶装置のうち少なくとも1つの記憶装置に接続される構成を含んでもよい。また、複数台のコンピュータに含まれる記憶装置とプロセッサによって、この構成が実現されてもよい。さらに、記憶装置がプロセッサと一体になっている構成(例えば、L1キャッシュ、L2キャッシュを含むキャッシュメモリ)を含んでもよい。
【0091】
ネットワークインタフェース74は、無線又は有線により、通信ネットワーク8に接続するためのインタフェースである。ネットワークインタフェース74は、既存の通信規格に適合したもの等、適切なインタフェースを用いればよい。ネットワークインタフェース74により、通信ネットワーク8を介して接続された外部装置9Aと情報のやり取りが行われてもよい。なお、通信ネットワーク8は、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、PAN(Personal Area Network)等の何れか又はそれらの組み合わせであってよく、コンピュータ7と外部装置9Aとの間で情報のやり取りが行われるものであればよい。WANの一例としてインターネット等があり、LANの一例としてIEEE802.11やイーサネット(登録商標)等があり、PANの一例としてBluetooth(登録商標)やNFC(Near Field Communication)等がある。
【0092】
デバイスインタフェース75は、外部装置9Bと直接接続するUSB等のインタフェースである。
【0093】
外部装置9Aはコンピュータ7とネットワークを介して接続されている装置である。外部装置9Bはコンピュータ7と直接接続されている装置である。
【0094】
外部装置9A又は外部装置9Bは、一例として、入力装置であってもよい。入力装置は、例えば、カメラ、マイクロフォン、モーションキャプチャ、各種センサ、キーボード、マウス、タッチパネル等のデバイスであり、取得した情報をコンピュータ7に与える。また、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等の入力部とメモリとプロセッサを備えるデバイスであってもよい。
【0095】
また、外部装置9A又は外部装置Bは、一例として、出力装置でもよい。出力装置は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)パネル等の表示装置であってもよいし、音声等を出力するスピーカ等であってもよい。また、パーソナルコンピュータ、タブレット端末又はスマートフォン等の出力部とメモリとプロセッサを備えるデバイスであってもよい。
【0096】
また、外部装置9Aまた外部装置9Bは、記憶装置(メモリ)であってもよい。例えば、外部装置9Aはネットワークストレージ等であってもよく、外部装置9BはHDD等のストレージであってもよい。
【0097】
また、外部装置9A又は外部装置9Bは、前述した実施形態における情報処理装置100の構成要素の一部の機能を有する装置でもよい。つまり、コンピュータ7は、外部装置9A又は外部装置9Bに処理結果の一部又は全部を送信してもよいし、外部装置9A又は外部装置9Bから処理結果の一部又は全部を受信してもよい。
【0098】
以上、本実施形態によれば、尾静脈に対する穿刺を容易にする尾静脈注射システム1を提供することができる。
【0099】
(補足)
本明細書(請求項を含む)において、「a、b及びcの少なくとも1つ(一方)」又は「a、b又はcの少なくとも1つ(一方)」の表現(同様な表現を含む)が用いられる場合は、a、b、c、a-b、a-c、b-c又はa-b-cのいずれかを含む。また、a-a、a-b-b、a-a-b-b-c-c等のように、いずれかの要素について複数のインスタンスを含んでもよい。さらに、a-b-c-dのようにdを有する等、列挙された要素(a、b及びc)以外の他の要素を加えることも含む。
【0100】
本明細書(請求項を含む)において、「データを入力として/を用いて/データに基づいて/に従って/に応じて」等の表現(同様な表現を含む)が用いられる場合は、特に断りがない場合、データそのものを用いる場合や、データに何らかの処理を行ったもの(例えば、ノイズ加算したもの、正規化したもの、データから抽出した特徴量、データの中間表現等)を用いる場合を含む。また、「データを入力として/を用いて/データに基づいて/に従って/に応じて」何らかの結果が得られる旨が記載されている場合(同様な表現を含む)、特に断りがない場合、当該データのみに基づいて当該結果が得られる場合や、当該データ以外の他のデータ、要因、条件及び/又は状態にも影響を受けて当該結果が得られる場合を含む。また、「データを出力する」旨が記載されている場合(同様な表現を含む)、特に断りがない場合、データそのものを出力として用いる場合や、データに何らかの処理を行ったもの(例えば、ノイズ加算したもの、正規化したもの、データから抽出した特徴量、各種データの中間表現等)を出力として用いる場合を含む。
【0101】
本明細書(請求項を含む)において、「接続される(connected)」及び「結合される(coupled)」との用語が用いられる場合は、直接的な接続/結合、間接的な接続/結合、電気的(electrically)な接続/結合、通信的(communicatively)な接続/結合、機能的(operatively)な接続/結合、物理的(physically)な接続/結合等のいずれをも含む非限定的な用語として意図される。当該用語は、当該用語が用いられた文脈に応じて適宜解釈されるべきであるが、意図的に或いは当然に排除されるのではない接続/結合形態は、当該用語に含まれるものして非限定的に解釈されるべきである。
【0102】
本明細書(請求項を含む)において、「AがBするよう構成される(A configured to B)」との表現が用いられる場合は、要素Aの物理的構造が、動作Bを実行可能な構成を有するとともに、要素Aの恒常的(permanent)又は一時的(temporary)な設定(setting/configuration)が、動作Bを実際に実行するように設定(configured/set)されていることを含んでよい。例えば、要素Aが汎用プロセッサである場合、当該プロセッサが動作Bを実行可能なハードウェア構成を有するとともに、恒常的(permanent)又は一時的(temporary)なプログラム(命令)の設定により、動作Bを実際に実行するように設定(configured)されていればよい。また、要素Aが専用プロセッサ、専用演算回路等である場合、制御用命令及びデータが実際に付属しているか否かとは無関係に、当該プロセッサの回路的構造等が動作Bを実際に実行するように構築(implemented)されていればよい。
【0103】
本明細書(請求項を含む)において、含有又は所有を意味する用語(例えば、「含む(comprising/including)」、「有する(having)」等)が用いられる場合は、当該用語の目的語により示される対象物以外の物を含有又は所有する場合を含む、open-endedな用語として意図される。これらの含有又は所有を意味する用語の目的語が数量を指定しない又は単数を示唆する表現(a又はanを冠詞とする表現)である場合は、当該表現は特定の数に限定されないものとして解釈されるべきである。
【0104】
本明細書(請求項を含む)において、ある箇所において「1つ又は複数(one or more)」、「少なくとも1つ(at least one)」等の表現が用いられ、他の箇所において数量を指定しない又は単数を示唆する表現(a又はanを冠詞とする表現)が用いられているとしても、後者の表現が「1つ」を意味することを意図しない。一般に、数量を指定しない又は単数を示唆する表現(a又はanを冠詞とする表現)は、必ずしも特定の数に限定されないものとして解釈されるべきである。
【0105】
本明細書において、ある実施形態の有する特定の構成について特定の効果(advantage/result)が得られる旨が記載されている場合、別段の理由がない限り、当該構成を有する他の1つ又は複数の実施形態についても当該効果が得られると理解されるべきである。但し、当該効果の有無は、一般に種々の要因、条件及び/又は状態に依存し、当該構成により必ず当該効果が得られるものではないと理解されるべきである。当該効果は、種々の要因、条件及び/又は状態が満たされたときに実施形態に記載の当該構成により得られるものに過ぎず、当該構成又は類似の構成を規定したクレームに係る発明において、当該効果が必ずしも得られるものではない。
【0106】
本明細書(請求項を含む)において、「最大化する(maximize)/最大化(maximization)」等の用語が用いられる場合は、グローバルな最大値を求めること、グローバルな最大値の近似値を求めること、ローカルな最大値を求めること、及びローカルな最大値の近似値を求めることを含み、当該用語が用いられた文脈に応じて適宜解釈されるべきである。また、これら最大値の近似値を確率的又はヒューリスティックに求めることを含む。同様に、「最小化する(minimize)/最小化(minimization)」等の用語が用いられる場合は、グローバルな最小値を求めること、グローバルな最小値の近似値を求めること、ローカルな最小値を求めること、及びローカルな最小値の近似値を求めることを含み、当該用語が用いられた文脈に応じて適宜解釈されるべきである。また、これら最小値の近似値を確率的又はヒューリスティックに求めることを含む。同様に、「最適化する(optimize)/最適化(optimization)」等の用語が用いられる場合は、グローバルな最適値を求めること、グローバルな最適値の近似値を求めること、ローカルな最適値を求めること、及びローカルな最適値の近似値を求めることを含み、当該用語が用いられた文脈に応じて適宜解釈されるべきである。また、これら最適値の近似値を確率的又はヒューリスティックに求めることを含む。
【0107】
本明細書(請求項を含む)において、複数のハードウェアが所定の処理を行う場合、各ハードウェアが協働して所定の処理を行ってもよいし、一部のハードウェアが所定の処理の全てを行ってもよい。また、一部のハードウェアが所定の処理の一部を行い、別のハードウェアが所定の処理の残りを行ってもよい。本明細書(請求項を含む)において、「1又は複数のハードウェアが第1の処理を行い、前記1又は複数のハードウェアが第2の処理を行う」等の表現(同様な表現を含む)が用いられている場合、第1の処理を行うハードウェアと第2の処理を行うハードウェアは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。つまり、第1の処理を行うハードウェア及び第2の処理を行うハードウェアが、前記1又は複数のハードウェアに含まれていればよい。なお、ハードウェアは、電子回路、電子回路を含む装置等を含んでよい。
【0108】
本明細書(請求項を含む)において、複数の記憶装置(メモリ)がデータの記憶を行う場合、複数の記憶装置のうち個々の記憶装置は、データの一部のみを記憶してもよいし、データの全体を記憶してもよい。また、複数の記憶装置のうち一部の記憶装置がデータを記憶する構成を含んでもよい。
【0109】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は上記した個々の実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加、変更、置き換え、部分的削除等が可能である。例えば、前述した実施形態において、数値又は数式を説明に用いている場合、これらは例示的な目的で示されたものであり、本開示の範囲を限定するものではない。また、実施形態で示した各動作の順序も例示的なものであり、本開示の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0110】
1 尾静脈注射システム
7 コンピュータ
10 位置調整機構
20a 第1のカメラ
20b 第2のカメラ
30 保定器(保定部)
40 固定具
41 尾
50 注射器
201 直線部
202 曲げ部
204、205 点(2つの点)
206 線(2つの点を通る線)
207 注射針
505 算出部
506 調整部
507 穿刺部
701 針先
1101 マウス
1102 第1の画像
1201 第2の画像
c1p1 第1の点
c1p2 第2の点
c2l1 第1のエピポーラ線
c2l2 第2のエピポーラ線
c2p1 第3の点
c2p2 第4の点