(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130547
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】放送受信装置及び放送受信プログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 1/16 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
H04B1/16 A
H04B1/16 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034877
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100183760
【弁理士】
【氏名又は名称】山鹿 宗貴
(72)【発明者】
【氏名】五木田 良一
【テーマコード(参考)】
5K061
【Fターム(参考)】
5K061AA13
5K061BB06
5K061CC02
5K061CC18
5K061CC25
5K061CC45
(57)【要約】
【課題】切替先の音声信号の位相が切替元の音声信号の位相に対して遅延する場合にも、その切替時において音声をシームレスにつなげること。
【解決手段】放送受信装置を、受信した第1のデジタル放送信号と第2のデジタル放送信号の一方の音声信号を切替可能に出力する信号出力部と、第1のデジタル放送信号に含まれる音声信号と第2のデジタル放送信号に含まれる音声信号との位相差の情報を取得する取得部と、信号出力部より出力される出力対象の音声信号の位相が、信号出力部より出力されない非出力対象の音声信号の位相より先行する場合、取得部に取得された位相差の情報に基づいて、出力対象の音声信号の位相、又は出力対象と非出力対象の両方の音声信号の位相を調整したうえで、出力対象の音声信号を信号出力部より出力させる、位相調整部と、を備える構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のデジタル放送信号を受信する第1の受信部と、
前記第1のデジタル放送信号と異なる周波数チャンネルを用いて前記第1のデジタル放送信号と同じ内容を放送する第2のデジタル放送信号を受信する第2の受信部と、
前記第1のデジタル放送信号と前記第2のデジタル放送信号の一方の音声信号を切替可能に出力する信号出力部と、
前記第1のデジタル放送信号に含まれる音声信号と前記第2のデジタル放送信号に含まれる音声信号との位相差の情報を取得する取得部と、
前記信号出力部より出力される出力対象の音声信号の位相が、前記信号出力部より出力されない非出力対象の音声信号の位相より先行する場合、前記取得部に取得された位相差の情報に基づいて、前記出力対象の音声信号の位相、又は前記出力対象と前記非出力対象の両方の音声信号の位相を調整したうえで、前記出力対象の音声信号を前記信号出力部より出力させる、位相調整部と、を備える、
放送受信装置。
【請求項2】
前記第1のデジタル放送信号に含まれる音声信号と前記第2のデジタル放送信号に含まれる音声信号との位相差を検出する位相差検出部と、
前記位相差検出部により検出された位相差の情報を記憶する記憶部と、
を更に備える、
請求項1に記載の放送受信装置。
【請求項3】
前記記憶部は、既に記憶されている前記位相差の情報を、前記位相差検出部により検出された位相差の情報で更新する、
請求項2に記載の放送受信装置。
【請求項4】
前記位相調整部は、前記位相差の情報に基づいて所定の制御信号を生成し、生成された制御信号に基づいて、前記出力対象の音声信号の位相が前記非出力対象の音声信号の位相に合うように、前記出力対象の音声信号の位相、又は前記出力対象と前記非出力対象の両方の音声信号の位相を遅延させる、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の放送受信装置。
【請求項5】
前記情報が示す前記位相差が所定閾値より大きい場合で、且つ前記出力対象の音声信号の位相が、前記非出力対象の音声信号の位相より先行する場合、前記位相調整部は、前記位相の調整を行わない、
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の放送受信装置。
【請求項6】
前記情報が示す前記位相差が所定閾値より大きい場合で、且つ前記出力対象の音声信号の位相が、前記非出力対象の音声信号の位相より先行する場合、前記位相調整部は、前記位相差が小さくなるように、前記出力対象の音声信号の位相、又は前記出力対象と前記非出力対象の両方の音声信号の位相を遅延させる、
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の放送受信装置。
【請求項7】
前記デジタル放送信号の受信信号品質の劣化を検出する受信品質検出部を更に備え、
前記受信品質検出部が前記出力対象の音声信号に対応するデジタル放送信号の受信信号品質の劣化を検出すると、前記信号出力部は、出力する前記音声信号の切替を行う、
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の放送受信装置。
【請求項8】
第1のデジタル放送信号を受信し、前記第1のデジタル放送信号と異なる周波数チャンネルを用いて前記第1のデジタル放送信号と同じ内容を放送する第2のデジタル放送信号を受信し、前記第1のデジタル放送信号と前記第2のデジタル放送信号の一方の音声信号を切替可能に出力する信号出力部を備える放送受信装置に実行させる放送受信プログラムであって、
前記第1のデジタル放送信号に含まれる音声信号と前記第2のデジタル放送信号に含まれる音声信号との位相差を示す情報を取得し、
前記信号出力部より出力される出力対象の音声信号の位相が、前記信号出力部より出力されない非出力対象の音声信号の位相より先行する場合、前記取得された位相差の情報に基づいて、前記出力対象の音声信号の位相、又は前記出力対象と前記非出力対象の両方の音声信号の位相を調整したうえで、前記出力対象の音声信号を前記信号出力部より出力させる、
放送受信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送受信装置及び放送受信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル放送信号を受信可能な車載用の放送受信装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この種の放送受信装置では、例えば、車両の移動に伴って受信中のデジタル放送信号の受信信号品質が劣化して、番組を再生できなくなることがある。この場合、放送受信装置は、受信信号品質の劣化前に再生していた番組と同じ番組を放送する、別の周波数チャンネルに切り替えることにより、同一番組を継続して再生できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デジタル放送信号を放送する放送設備の性能に差がある等の理由から、番組(便宜上「切替元の番組」と記す。)を放送する放送局と、これと同じ番組(便宜上「切替先の番組」と記す。)を別の周波数チャンネルで放送する放送局とで、番組を放送するタイミングにずれが生じることがある。すなわち、切替元の番組を放送するデジタル放送信号に含まれる(デジタル変調された)音声信号の位相と、切替先の番組を放送するデジタル放送信号に含まれる音声信号の位相が一致しないことがある。
【0005】
以下、本明細書中に記載される「位相」は特段の説明がない限り、「音声信号の位相」を示す。例えば、「デジタル放送信の位相」と記載される場合、「デジタル放送信に含まれる音声信号の位相」を示す。また、「デジタル放送信号間の位相差」と記載される場合、「一方のデジタル放送信号に含まれる音声信号と他方のデジタル放送信号に含まれる音声信号との位相差」を示す。
【0006】
例えば、切替元の番組の音声が切替先の番組の音声に対して遅延するケースがあり、また、切替先の番組の音声が切替元の番組の音声に対して遅延するケースがある。
【0007】
前者のケースでは、時間的に先行する切替先の番組を、再生中の切替元の番組のバックグラウンドで遅延させることにより、切替時に、番組をシームレスにつなげることができる。
【0008】
これに対し、後者のケースでは、時間的に先行する切替元の番組が再生中であるため、これを遅延させて切替先の番組にシームレスにつながることは難しい。また、デジタル放送信号間の位相差を検出するためには、切替元と切替先の両方でデジタル放送信号の受信信号品質が良好である必要がある。そのため、切替元の番組を放送するデジタル放送信号の受信信号品質が劣化した時点では、デジタル放送信号間の位相差を検出することが難しい。この点からも、後者のケースでは、切替時に、番組をシームレスにつなげることは難しい。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑み、切替先の番組を放送するデジタル放送信号の位相が切替元の番組を放送するデジタル放送信号の位相に対して遅延する場合にも、その切替時において番組をシームレスにつなげることができる放送受信装置及び放送受信プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る放送受信装置は、第1のデジタル放送信号を受信する第1の受信部と、第1のデジタル放送信号と異なる周波数チャンネルを用いて第1のデジタル放送信号と同じ内容を放送する第2のデジタル放送信号を受信する第2の受信部と、第1のデジタル放送信号と第2のデジタル放送信号の一方の音声信号を切替可能に出力する信号出力部と、第1のデジタル放送信号に含まれる音声信号と第2のデジタル放送信号に含まれる音声信号との位相差の情報を取得する取得部と、信号出力部より出力される出力対象の音声信号の位相が、信号出力部より出力されない非出力対象の音声信号の位相より先行する場合、取得部に取得された位相差の情報に基づいて、出力対象の音声信号の位相、又は出力対象と非出力対象の両方の音声信号の位相を調整したうえで、出力対象の音声信号を信号出力部より出力させる、位相調整部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、切替先の番組を放送するデジタル放送信号の位相が切替元の番組を放送するデジタル放送信号の位相に対して遅延する場合にも、その切替時において番組をシームレスにつなげることができる放送受信装置及び放送受信プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る放送受信装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態において放送受信装置のMPU(Micro Processor Unit)により実行される位相調整処理を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態において放送受信装置のMPUにより実行される調整値算出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。以下においては、本発明の一実施形態として、DAB(Digital Audio Broadcasting)のアンサンブルを受信可能な放送受信装置及び放送受信プログラムを例に取り説明する。アンサンブルは、第1のデジタル放送信号の一例であり、また、第1のデジタル放送信号と異なる周波数チャンネルを用いて第1のデジタル放送信号と同じ内容(サービス)を放送する第2のデジタル放送信号の一例である。
【0014】
本実施形態では、処理対象のデジタル放送信号の一例としてDABのアンサンブルを挙げるが、別の実施形態では、DABと異なる規格に準拠した別のフォーマットのデジタル放送信号を処理対象としてもよい。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る放送受信装置1の構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、放送受信装置1は、MPU100、HMI(Human Machine Interface)110、DAB信号処理回路120A、120B、出力回路130、オーディオアンプ140、スピーカ150、フラッシュROM(Read Only Memory)160、ディスプレイ170を備える。なお、
図1では、本実施形態の説明に必要な主たる構成要素を図示しており、例えば放送受信装置1として必須な構成要素である筐体など、一部の構成要素については、その図示を適宜省略する。
【0016】
放送受信装置1は、例えば道路を走行する車両に搭載された車載型の装置である。放送受信装置1は、これ単独の装置であってもよく、また、ナビゲーション装置やIVI(In-Vehicle Infotainment)の一部をなす装置であってもよい。放送受信装置1は、車載型の装置に限らず、スマートフォン、フィーチャフォン、タブレット端末、PC(Personal Computer)、PDA(Personal Digital Assistant)、PND(Portable Navigation Device)、携帯ゲーム機等の他の形態の装置であってもよい。
【0017】
DABでは、サービス(すなわち番組)の放送エリアを広くカバーするため、例えば各地域で異なる周波数チャンネルを用いて同一内容のサービスが放送される。放送受信装置1は、例えば、地域を跨いで移動する等して、受信中のアンサンブルの受信信号品質が劣化すると、同一内容のサービスを継続して再生するため、受信周波数チャンネルを、受信信号品質の良い、同一内容のサービスを放送する別の周波数チャンネル(すなわち、AF(Alternative Frequency)サービスを放送する放送局の周波数チャンネル)に自動的に切り替える。この同一サービスへの切替動作を「DAB-DABリンク」と記す。
【0018】
MPU100は、フラッシュROM160に記憶された放送受信プログラム162を実行するコンピュータの一例である。MPU100は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュROM等を備えており、放送受信装置1全体を制御する。例えば、MPU100は、フラッシュROM160に記憶された放送受信プログラム162をはじめとする各種プログラムをワークエリアであるRAM上に展開し、展開されたプログラムに従って放送受信装置1を制御する。
【0019】
MPU100は、例えばシングルプロセッサ又はマルチプロセッサであり、少なくとも1つのプロセッサを含む。複数のプロセッサを含む構成とした場合、MPU100は、単一の装置としてパッケージ化されたものであってもよく、放送受信装置1内で物理的に分離した複数の装置で構成されてもよい。
【0020】
フラッシュROM160に記憶された放送受信プログラム162は、第1のデジタル放送信号を受信し、第1のデジタル放送信号と異なる周波数チャンネルを用いて第1のデジタル放送信号と同じ内容を放送する第2のデジタル放送信号を受信し、第1のデジタル放送信号と第2のデジタル放送信号の一方の音声信号を切替可能に出力する信号出力部を備える放送受信装置1に実行させるプログラムである。
【0021】
放送受信プログラム162は、信号出力部より出力される出力対象の音声信号(例えば切替元のサービスの音声信号)の位相が、信号出力部より出力されない非出力対象の音声信号(例えば切替先のサービスの音声信号)の位相より先行する場合、第1のデジタル放送信号に含まれる音声信号と第2のデジタル放送信号に含まれる音声信号との位相差の情報に基づいて、出力対象の音声信号の位相、又は出力対象と非出力対象の両方の音声信号の位相を調整したうえで、出力対象の音声信号を信号出力部より出力させる、という処理を、コンピュータの一例である放送受信装置1に実行させる。放送受信プログラム162の実行により、例えば、切替先の番組の音声が切替元の番組の音声に対して遅延する場合にも、その切替時において番組の音声をシームレスにつなげることができる。放送受信プログラム162の詳細は後述する。なお、「出力対象」、「非出力対象」は、それぞれ、「再生対象」、「非再生対象」と記すこともある。
【0022】
MPU100は、機能ブロックとして、受信品質検出部100A、位相差検出部100B、記憶部100C、取得部100D、位相調整部100Eを備える。各機能ブロックは、コンピュータの一例であるMPU100が実行する放送受信プログラム162により実現される。各機能ブロックは、一部又は全部が専用の論理回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0023】
HMI110には、ハードウェア又はソフトウェア若しくはこれらを組み合わせた種々のユーザインタフェースが想定される。例示的には、HMI110は、放送受信装置1本体のフロントパネルに実装されたメカニカルスイッチキー、タッチパネル環境下で提供されるGUI(Graphical User Interface)、リモートコントローラ等である。ユーザは、HMI110に対する操作により、例えば、受信局を指定したり、放送受信装置1にシーク処理を実行させたりすることができる。
【0024】
例えば、HMI110に対してユーザによる選局操作が行われると、選局操作により指定された選択局の情報がMPU100内のフラッシュROMに格納される。MPU100は、例えば放送受信装置1の電源投入直後やユーザによる選局操作時、フラッシュROMに格納された選択局の情報に従い、DAB信号処理回路120A及び120Bの選局動作を制御する。
【0025】
DAB信号処理回路120A及び120Bは、アンサンブルの受信処理を行う回路である。DAB信号処理回路120Aは、アンテナ122A、RF部124A、復調部126A及び信号検出部128Aを備える。DAB信号処理回路120Bは、アンテナ122B、RF部124B、復調部126B及び信号検出部128Bを備える。DAB信号処理回路120AとDAB信号処理回路120Bの構成は同じである。そのため、DAB信号処理回路120Bについては、DAB信号処理回路120Aの説明をもって、その詳細な説明を省略する。
【0026】
なお、本実施形態では、2つのDAB信号処理回路120A、120Bのそれぞれにアンテナ122A、122Bが備えられるが、別の実施形態では、2つのアンテナ122A及び122Bに代えて、RF部124A及びRF部124Bに接続された1つのアンテナが備えられてもよい。すなわち、2つのDAB信号処理回路120A、120Bが1つのアンテナを共用する構成としてもよい。
【0027】
アンテナ122Aは、各放送局で放送される放送電波を受けて受信信号を出力する。RF部124Aは、アンテナ122Aより入力される受信信号のなかから、選択局のアンサンブルを抽出して、復調部126Aに出力する。
【0028】
アンサンブルは、概略的には、復調の際にフレーム同期に用いられる同期チャンネル、サービス構成情報等が含まれるFIC(Fast Information Channel)、音声サービスやデータサービスが含まれるMSC(Main Service Channel)で構成される。
【0029】
FICは、FIB(Fast Information Block)で構成されており、SID(Service Identifier)、EID(Ensemble Identifier)、SCIdS(Service Component Identifier within the Service)等の各識別子及び識別子に関連付けられたラベルデータ(例えばラジオ放送サービス名(ラジオ放送番組名)を示すサービスラベル)を含む。FIBは、FIG(Fast Information Group)及びCRC(Cyclic Redundancy Check)を含む。FIGは、その用途によりType 0からType 7の8種類で分類される。
【0030】
FIGには、DAB-DABリンクの実行に必要なハードリンク・サービス情報、FI(Frequency Information)、OEサービス(Other Ensemble Services)情報、SL(Service Link)情報が含まれる。
【0031】
復調部126Aは、RF部124Aより入力されるアンサンブルを復調し、復調されたアンサンブルからサービスを選択して復調する。これにより、音声信号及び表示用データが得られる。表示用データは、例えばサービスラベルを含む。便宜上、選択局のアンサンブルから再生されるサービスを「選択局サービス」と記す。
【0032】
このように、DAB信号処理回路120Aは、第1のデジタル放送信号を受信する第1の受信部として動作する。DAB信号処理回路120Bは、第1のデジタル放送信号と異なる周波数チャンネルを用いて第1のデジタル放送信号と同じ内容を放送する第2のデジタル放送信号を受信する第2の受信部として動作する。
【0033】
信号検出部128Aは、例えば、復調部126Aにてアンサンブルが復調されたことによって得られる多重化データを検出し、また、エラーレートに基づいてアンサンブルの受信信号品質を検出する。信号検出部128Aは、例えば、受信電波の電界強度や受信電波のSN比に基づいてアンサンブルの受信信号品質を検出してもよい。
【0034】
MPU100は、信号検出部128Aにて検出された多重化データに基づいて、DAB信号処理回路120Aで受信中のアンサンブルと異なる周波数チャンネルで同じ内容のサービス(以下「代替局サービス」と記す。)を放送するアンサンブルを特定する。MPU100は、各アンサンブルを放送する全ての周波数チャンネルをサーチし、これによって得た情報に基づいて、代替局サービスを放送するアンサンブルを特定してもよい。MPU100は、特定されたアンサンブルの情報に基づいてDAB信号処理回路120Bの選局動作を制御する。すなわち、代替局サービスを含むアンサンブルをDAB信号処理回路120Bに受信させる。
【0035】
復調部126Aによる復調処理によって得られた音声信号は、出力回路130に出力される。これと同様に、復調部126Bによる復調処理によって得られた音声信号も、出力回路130に出力される。説明の便宜上、復調部126A(言い換えると、DAB信号処理回路120A)より出力回路130に入力される音声信号を「音声信号SA」と記し、復調部126B(言い換えると、DAB信号処理回路120B)より出力回路130に入力される音声信号を「音声信号SB」と記す。
【0036】
出力回路130は、音声信号SAの位相と音声信号SBの位相とを合わせるとともに、音声信号SAと音声信号SBの一方を出力する。この処理を実現するため、出力回路130は、FIFO(First In First Out)バッファ132A、132B及びセレクタ134を備える。
【0037】
MPU100は、フラッシュROM160に記憶された調整値AVに基づいて遅延制御信号DSを生成し、生成された遅延制御信号DSに基づいて、FIFOバッファ132AとFIFOバッファ132Bの一方に対して遅延時間を設定する。FIFOバッファ132Aは、MPU100により設定された遅延時間に応じて音声信号SAの出力タイミングを遅延させる。FIFOバッファ132Bは、MPU100により設定された遅延時間に応じて音声信号SBの出力タイミングを遅延させる。
【0038】
MPU100は、セレクタ信号SSをセレクタ134に出力する。セレクタ134は、例えばマルチプレクサ回路である。セレクタ134は、MPU100より入力されるセレクタ信号SSに従い、FIFOバッファ132Aより入力される音声信号SAとFIFOバッファ132Bより入力される音声信号SBの一方を出力する。
【0039】
本実施形態では、DAB信号処理回路120Aをメインチューナと位置付け、DAB信号処理回路120Bをサブチューナと位置付ける。MPU100は、原則、音声信号SAを出力するようにセレクタ134を制御する。
【0040】
但し、DAB信号処理回路120Aによるアンサンブルの受信信号品質が劣化し(例えば受信信号品質を示す値が第1の閾値未満であり)且つDAB信号処理回路120Bによるアンサンブルの受信信号品質が良好(例えば受信信号品質を示す値が第1の閾値以上)であれば、MPU100は、音声信号SBを出力するようにセレクタ134を制御する。また、音声信号SBを出力するようにセレクタ134が制御されている状態で、DAB信号処理回路120Bによるアンサンブルの受信信号品質が劣化し且つDAB信号処理回路120Aによるアンサンブルの受信信号品質が良好になると、MPU100は、セレクタ134の出力を、音声信号SBから音声信号SAに切り替える。
【0041】
このように、出力回路130(より詳細にはセレクタ134)は、第1のデジタル放送信号と第2のデジタル放送信号の一方の音声信号を切替可能に出力する信号出力部として動作する。
【0042】
また、MPU100は、デジタル放送信号の受信信号品質の劣化を検出する受信品質検出部100Aとして動作する。附言するに、受信品質検出部100Aとして動作するMPU100は、信号出力部の一例である出力回路130より出力されるサービスに対応するデジタル放送信号の受信信号品質の劣化(例えば受信信号品質を示す値が第1の閾値未満になったこと)を検出すると、出力回路130より出力される音声信号の切替を行う。すなわち、MPU100は、DAB-DABリンクを実行する。
【0043】
セレクタ134より出力される音声信号は、オーディオアンプ140によるボリュームに応じた利得調整を経て、スピーカ150から音声として出力再生される。
【0044】
復調部126Aによる復調処理によって得られた表示用データは、ディスプレイ170に出力される。これにより、例えば再生中のサービスのサービスラベルがディスプレイ170に表示される。
【0045】
フラッシュROM160には、ステーションリスト164が格納される。ステーションリスト164は、アンサンブルラベル、サービスラベル、SID、SCIds、種別(Primary, Secondary)、ハードリンク・サービス情報、FI、OEサービス、SL情報等の各情報を関連付けて保持するリストデータである。ステーションリスト164は、「サービスリスト」と呼称されてもよい。
【0046】
ステーションリスト164には、更に、後述する調整値算出処理(
図3)で算出された調整値AVの情報が含まれてもよい。
【0047】
MPU100は、例えば、サブチューナであるDAB信号処理回路120Bを制御して、アンサンブルを放送する周波数チャンネルに対してシーク処理を実行する。概説すると、MPU100は、DAB信号処理回路120Bに受信制御信号を出力して、1つの周波数チャンネルの選局を指示する。DAB信号処理回路120Bでは、MPU100より入力される受信制御信号に従って受信処理が行われる。対象の周波数チャンネルでアンサンブルが検出されなければ(すなわち、受信可能なアンサンブルが検出されなければ)、次の周波数チャンネルに対して受信処理が行われる。シーク処理は、最も低い周波数チャンネルから昇順で実行されてもよく、また、最も高い周波数チャンネルから降順で実行されてもよい。受信可能なアンサンブルが検出されて復調処理が成功すると、ステーションリスト164の作成に必要なサービス構成情報が得られる。DAB信号処理回路120Bは、取得されたサービス構成情報をMPU100に出力する。
【0048】
MPU100は、DAB信号処理回路120Bより入力されるサービス構成情報を用いてステーションリスト164を作成し、作成されたステーションリスト164をフラッシュROM160に格納する。
【0049】
HMI110に対するユーザの操作により、MPU100は、ステーションリスト164に含まれるサービスラベルのリストをディスプレイ170に表示させることができる。ユーザは、例えば、ディスプレイ170に表示されたリストのなかから、再生中のサービスとは異なるサービスのサービスラベルを選択することにより、再生対象のサービスを変更することができる。
【0050】
ステーションリスト164上のサービスが選択操作されると、MPU100は、選択されたサービスに関連付けられて記憶されたアンサンブルの周波数チャンネル、EID、SID等に基づいてアンサンブルを受信し、受信したアンサンブルに含まれる選択局サービスの音声信号をスピーカ150にて再生させるとともに、このサービスの表示用データをディスプレイ170に表示させる。
【0051】
HMI110は、選択局の登録及び呼び出しを行うための複数のプリセットボタンを備える。プリセットボタンは、例えば、放送受信装置1本体のフロントパネルに設けられたハードウェアキーである。プリセットボタンは、タッチパネルディスプレイに表示されたソフトウェアキーであってもよい。
【0052】
プリセットボタンに対する登録操作が行われると、MPU100は、登録操作により指定された選択局の情報をフラッシュROM160に格納する。
【0053】
例示的には、ユーザは、ディスプレイ170に表示されたサービスラベルのリストから、登録対象の選択局を指定することができる。登録対象の選択局が指定されると、MPU100は、指定された選択局の情報をステーションリスト164から取得して、プリセット情報166としてフラッシュROM160に格納する。プリセット情報166には、例えば、アンサンブルラベル、サービスラベル、SID、SCIds、種別、ハードリンク・サービス情報、FI、OEサービス、SL情報等の各情報が含まれる。
【0054】
プリセット情報166には、更に、後述する調整値算出処理(
図3)で算出された調整値AVの情報が含まれてもよい。
【0055】
上述したように、切替先の番組(本実施形態ではサービス)の音声が切替元のサービスの音声に対して遅延するケースがある。従来構成の放送受信装置では、時間的に先行する切替元のサービスが再生中であるため、これを遅延させて切替先のサービスにシームレスにつながることは難しい。また、切替時点では、既に、切替元のサービスを放送するデジタル放送信号の受信信号品質が劣化している。そのため、デジタル放送信号間の位相差を検出することが難しい。この点からも、切替時に、サービスをシームレスにつなげることは難しい。なお、デジタル放送信号間の位相差を検出するためには、ある程度の時間(例えば20秒~30秒)を要する。
【0056】
これに対し、本実施形態に係る放送受信装置1では、フラッシュROM160に記憶された調整値AVに基づいて、出力回路130より出力される音声信号の位相を調整したうえでこの音声信号を出力する。これにより、切替先のサービスが切替元のサービスに対して遅延する場合にも、その切替時においてサービスの音声がシームレスにつながる。
【0057】
調整値AVは、第1のデジタル放送信号と第2のデジタル放送信号との位相差を示す値である。すなわち、調整値AVは、第1のデジタル放送信号と第2のデジタル放送信号との位相差の情報の一例である。
【0058】
図2は、調整値AVを用いて実行される位相調整処理のフローチャートを示す図である。MPU100が放送受信プログラム162を実行することにより、
図2に示される処理が実現される。選択局が指定されると(例えばプリセット登録された選択局を呼び出す操作が行われると)、
図2に示される処理の実行が開始される。
【0059】
図2に示されるように、放送受信プログラム162は、選択局及び代替局の受信制御を行う(ステップS101)。具体的には、放送受信プログラム162の制御下で、DAB信号処理回路120Aがアンサンブルの受信、復調、サービス構成確認、選択局サービスの選択等を行うとともに、DAB信号処理回路120Bがアンサンブルの受信、復調、サービス構成確認、代替局サービスの選択等を行う。なお、ステーションリスト164やプリセット情報166に代替局サービスの情報がなければ、DAB信号処理回路120Bは、代替局サービスを見つけるため、例えば周波数チャンネルをサーチする。
【0060】
放送受信プログラム162は、サービスが再生可能か否かを判定する(ステップS102)。
【0061】
具体的には、ステップS102において、DAB信号処理回路120Aによるアンサンブルの受信信号品質を示す値が第1の閾値以上であれば、放送受信プログラム162は、サービスが再生可能であると判定する。この場合、DAB信号処理回路120Aで受信される選択局サービスが現時点での再生対象のサービスとなり、DAB信号処理回路120Bで受信される代替局サービスが現時点での非再生対象のサービスとなる。
【0062】
DAB信号処理回路120Aによるアンサンブルの受信信号品質を示す値が第1の閾値未満であっても、DAB信号処理回路120Bによるアンサンブルの受信信号品質を示す値が第1の閾値以上であれば、放送受信プログラム162は、サービスが再生可能であると判定する。この場合、DAB信号処理回路120Bで受信される代替局サービスが現時点での再生対象のサービスとなり、DAB信号処理回路120Aで受信される選択局サービスが現時点での非再生対象のサービスとなる。
【0063】
DAB信号処理回路120A、120Bの何れにおいてもアンサンブルの受信信号品質を示す値が第1の閾値未満であれば、放送受信プログラム162は、サービスを再生できないと判定する。この場合(ステップS102:NO)、放送受信プログラム162は、スピーカ150とディスプレイ170の少なくとも一方を用いて、サービスが再生できない旨を通知して(ステップS103)、
図2に示されるフローチャートを終了する。
【0064】
サービスが再生可能な場合(ステップS102:YES)、放送受信プログラム162は、再生対象のサービスに対する調整値AVが記憶されているか否か(すなわち、対応する調整値AVが、ステーションリスト164に登録されているか否か、プリセット情報166に含まれる情報の1つとしてフラッシュROM160に格納されているか否か等)を判定する(ステップS104)。
【0065】
再生対象のサービスに対する調整値AVが記憶されていない場合(ステップS104:NO)、放送受信プログラム162は、調整値AVを用いた位相調整を行うことなく、再生対象のサービスを選択するためのセレクタ信号SSをセレクタ134に出力し(ステップS105)、
図3に示されるフローチャートを終了する。セレクタ134において再生対象のサービスが選択されると、この時点で、再生対象のサービスの出力再生が開始される。
【0066】
再生対象のサービスに対する調整値AVが記憶されている場合(ステップS104:YES)、放送受信プログラム162は、この調整値AVを取得する(ステップS106)。
【0067】
例示的には、ステップS106において、放送受信プログラム162は、調整値AVをフラッシュROM160から読み出してワークエリアに展開する。
【0068】
このように、ステップS106において、MPU100は、第1のデジタル放送信号と第2のデジタル放送信号との位相差の情報の一例である調整値AVを取得する取得部100Dとして動作する。
【0069】
放送受信プログラム162は、ステップS106にて取得された調整値AVが示す位相差がゼロか否かを判定する(ステップS107)。位相差がゼロの場合(ステップS107:YES)、放送受信プログラム162は、調整値AVを用いた位相調整を行うことなく、セレクタ信号SSをセレクタ134に出力し(ステップS105)、
図3に示されるフローチャートを終了する。これにより、再生対象のサービスの出力再生が開始される。
【0070】
ステップS106にて取得された調整値AVが示す位相差がゼロでない場合(ステップS107:NO)、放送受信プログラム162は、この位相差から、再生対象のサービスが非再生対象のサービスに対して時間的に先行するか否かを判定する(ステップS108)。
【0071】
再生対象のサービスが非再生対象のサービスに対して時間的に先行する場合(ステップS108:YES)、放送受信プログラム162は、再生対象のサービスを、ステップS106にて取得された調整値AVが示す位相差分だけ遅延させるための遅延制御信号DSを生成する(ステップS109)。
【0072】
放送受信プログラム162は、ステップS109にて生成された遅延制御信号DSに基づいて、対応するFIFOバッファに対して遅延時間を設定する(ステップS110)。
【0073】
具体的には、再生対象のサービスが選択局サービスである場合、放送受信プログラム162は、FIFOバッファ132Aに対して遅延時間を設定する。再生対象のサービスが代替局サービスである場合、放送受信プログラム162は、FIFOバッファ132Bに対して遅延時間を設定する。
【0074】
これにより、FIFOバッファ132Aと132Bの一方より出力される再生対象のサービスの音声信号の位相と、FIFOバッファ132Aと132Bの他方より出力される非再生対象のサービスの音声信号の位相と、が一致する。
【0075】
次いで、放送受信プログラム162は、セレクタ信号SSをセレクタ134に出力する(ステップS110)。これにより、再生対象のサービスの出力再生が開始される。
【0076】
本実施形態では、再生対象のサービスの音声信号だけ遅延させるが、本発明の構成はこれに限らない。別の実施形態では、再生対象のサービスの音声信号の位相と非再生対象のサービスの音声信号の位相の両方を遅延させてもよい。
【0077】
このように、ステップS109~S111において、MPU100は、信号出力部の一例である出力回路130より出力される出力対象の音声信号(再生対象のサービスの音声信号)の位相が、出力回路130より出力されない非出力対象の音声信号(非再生対象のサービスの音声信号)の位相より先行する場合、取得部100Dに取得された位相差の情報(調整値AV)に基づいて、再生対象のサービスの音声信号の位相、又は再生対象と非再生対象の両方のサービスの音声信号の位相を調整したうえで、再生対象のサービスの音声信号を出力回路130より出力させる、位相調整部100Eとして動作する。
【0078】
附言するに、位相調整部100Eとして動作するMPU100は、調整値AVに基づいて所定の制御信号の一例である遅延制御信号DSを生成し、生成された遅延制御信号DSに基づいて、再生対象のサービスの音声信号の位相が非再生対象のサービスの音声信号の位相に合うように、再生対象のサービスの音声信号の位相、又は再生対象と非再生対象の両方のサービスの音声信号の位相を遅延させる。
【0079】
本実施形態では、再生対象のサービスの出力再生を開始する時点で、再生対象のサービスと非再生対象のサービスの両方の音声信号の位相が一致している。そのため、再生対象のサービスが非再生対象のサービスに対して時間的に先行する場合にも、DAB-DABリンクの実行時にサービスの音声がシームレスにつながる。また、DAB-DABリンクの実行時に位相差を検出する必要がないため、切替先のサービスを速やかに出力再生することができる。
【0080】
再生対象のサービスが非再生対象のサービスに対して時間的に遅延する場合(ステップS108:NO)、放送受信プログラム162は、セレクタ信号SSをセレクタ134に出力する(ステップS112)。これにより、再生対象のサービスの出力再生が開始される。
【0081】
放送受信プログラム162は、再生対象のサービスが出力再生されるバックグラウンドで、非再生対象のサービスを、ステップS106にて取得された調整値AVが示す位相差分だけ遅延させるための遅延制御信号DSを生成し(ステップS113)、生成された遅延制御信号DSに基づいて、対応するFIFOバッファに対して遅延時間を設定する(ステップS114)。
【0082】
これにより、FIFOバッファ132Aと132Bの一方より出力される再生対象のサービスの音声信号の位相と、FIFOバッファ132Aと132Bの他方より出力される非再生対象のサービスの音声信号の位相と、が一致する。そのため、DAB-DABリンクの実行時にサービスの音声がシームレスにつながる。
【0083】
本実施形態では、ステップS113及びS114の処理をバックグラウンドで実行することにより、再生対象のサービスを速やかに出力再生することができる。
【0084】
図3に、調整値AVを算出する処理のフローチャートを示す。例えば、選択局サービスを含むアンサンブルの受信信号品質と代替局サービスを含むアンサンブルの受信信号品質の両方が良好である時(例えば、DAB信号処理回路120A、120Bによるアンサンブルの受信信号品質を示す値が何れも第1の閾値以上である時)、
図3に示される処理の実行が開始される。
【0085】
図3に示されるように、放送受信プログラム162は、DAB信号処理回路120Aで受信される選択局サービスの音声信号SAとDAB信号処理回路120Bで受信される代替局サービスの音声信号SBとの位相差を検出する(ステップS201)。
【0086】
一例として、ステップS201では、相互相関関数を用いた相互相関解析により音声信号SAと音声信号SBとの位相差が検出される。
【0087】
このように、ステップS201において、放送受信プログラム162を実行するMPU100は、第1のデジタル放送信号の一例である選択局サービスの音声信号SAと、第2のデジタル放送信号の一例である代替局サービスの音声信号SBとの位相差を検出する位相差検出部100Bとして動作する。
【0088】
位相差が検出できなかった場合(ステップS202:NO)、放送受信プログラム162は、ステップS201に戻り、所定時間経過後に位相差の検出を再度試みる。
【0089】
位相差が検出できた場合(ステップS202:YES)、放送受信プログラム162は、調整値AV(すなわち、ステップS201で検出された位相差を示す値)を記憶する(ステップS203)。
【0090】
具体的には、放送受信プログラム162は、選択局に関する情報の1つとして、調整値AVをステーションリスト164に登録する。
【0091】
また、選択局の情報がプリセット登録されている場合、放送受信プログラム162は、対応するプリセット情報166に含まれる情報の1つとして、調整値AVをフラッシュROM160に格納する。
【0092】
なお、ステップS201にて検出された位相差がゼロの場合(すなわち、両者のサービスに位相差がない場合)も、放送受信プログラム162は、調整値AVを記憶する。
【0093】
このように、ステップS203において、MPU100は、第1のデジタル放送信号と第2のデジタル放送信号との位相差の情報の一例である調整値AVを記憶する記憶部100Cとして動作する。より詳細には、記憶部100Cとして動作するMPU100は、位相差検出部100Bにより検出された位相差を示す調整値AVを記憶する。
【0094】
なお、これまでに実行された
図3に示される処理の結果として、選択局に関し、調整値AVが既に記憶されている(すなわち、調整値AVが、ステーションリスト164に既に登録され、また、プリセット情報166に含まれる情報の1つとしてフラッシュROM160に既に格納されている)場合もある。この場合、ステップS203において、放送受信プログラム162は、既に記憶されている調整値AVを、ステップS201にて検出された位相差を示す調整値AVで更新する。これにより、調整値AVが最新の値に更新される。
【0095】
本実施形態では、ステップS201にて検出された位相差を示す調整値AVがローカルであるフラッシュROM160に記憶されるが、本発明の構成はこれに限らない。放送受信プログラム162は、調整値AVをネットワーク上の所定のサーバにアップロードして、サーバに記憶させてもよい。この場合、調整値AVを記憶するフラッシュROM160内の領域が不要となる。
【0096】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0097】
上記の実施形態では、調整値AVが示す位相差の大きさに拘わらず、
図2のステップS109~S111において、再生対象のサービスを位相差分だけ遅延させたうえで、再生対象のサービスの出力再生を開始している。位相差が大きいほど、再生対象のサービスに対する遅延時間が大きくなるため、再生対象のサービスの出力再生が開始されるまでの無音時間が長くなってしまう。
【0098】
そこで、調整値AVが示す位相差が第2の閾値より大きい場合、放送受信プログラム162は、
図2のステップS109~S110の処理を実行することなく、ステップS111の処理を実行してもよい。この場合、再生対象のサービスが遅延されないため、再生対象のサービスの出力再生が開始されるまでの無音時間が短く抑えられる。
【0099】
すなわち、調整値AVが示す位相差が第2の閾値(所定閾値の一例)より大きい場合で、且つ信号出力部の一例である出力回路130より出力される出力対象の音声信号(再生対象のサービスの音声信号)の位相が、出力回路130より出力されない非出力対象の音声信号(非再生対象のサービスの音声信号)の位相より先行する場合、放送受信プログラム162は、位相の調整を行わず、再生対象のサービスを速やかに出力再生させてもよい。
【0100】
但し、この場合、DAB-DABリンクの実行時にサービスの音声をシームレスにつなぐためには、実際に切り替えが発生するまでの間に再生中の音声をスロー再生するなどして遅延させる必要がある。所定の位相差分だけ遅延させてあることによって、調整する時間(遅延させる位相量)が短くなる、もしくは音声をスローにする量を小さくすることが可能になる。
【0101】
例えば、調整値AVが示す位相差が5秒相当である場合を考える。この場合、放送受信プログラム162は、再生対象のサービスを3秒遅延させるための遅延制御信号DSを生成する。再生対象のサービスに対する遅延時間が3秒になるため、再生対象のサービスの出力再生が開始されるまでの無音時間を5秒未満に抑えることができる。また、再生対象のサービスの再生速度を一時的に低下させることにより、DAB-DABリンクの実行時までに、残り2秒相当の位相差をゼロに近付けることができる。すなわち、スロー再生処理を併用することにより、再生対象のサービスの出力再生が開始されるまでの無音時間を抑えつつ、DAB-DABリンクの実行時にサービスの音声をシームレスにつなげることができる。
【0102】
このように、調整値AVが示す位相差が第2の閾値(所定閾値の一例)より大きい場合で、且つ信号出力部の一例である出力回路130より出力される出力対象の音声信号(再生対象のサービスの音声信号)の位相が、出力回路130より出力されない非出力対象の音声信号(非再生対象のサービスの音声信号)の位相より先行する場合、放送受信プログラム162は、音声信号間の位相差が小さくなるように、再生対象のサービスの音声信号の位相、又は再生対象と非再生対象の両方のサービスの音声信号の位相を遅延させてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 :放送受信装置
100 :MPU
100A :受信品質検出部
100B :位相差検出部
100C :記憶部
100D :取得部
100E :位相調整部
110 :HMI
120A :DAB信号処理回路
120B :DAB信号処理回路
130 :出力回路
132A :FIFOバッファ
132B :FIFOバッファ
134 :セレクタ
140 :オーディオアンプ
150 :スピーカ
160 :フラッシュROM
162 :放送受信プログラム
164 :ステーションリスト
166 :プリセット情報
170 :ディスプレイ