(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130553
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】内足場の取付構造
(51)【国際特許分類】
E02D 23/00 20060101AFI20230913BHJP
E02D 23/08 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
E02D23/00 Z
E02D23/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034889
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000140694
【氏名又は名称】株式会社加藤建設
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 達也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】内山 敬二
(72)【発明者】
【氏名】多田 昌人
(57)【要約】
【課題】内足場の着脱に係る作業性を向上させることができる内足場の取付構造を提供する。
【解決手段】本発明に係る内足場の取付構造は、内足場2に設けられた突起部23の軸部25を放射方向へ進出させ、ケーソン躯体1の内側に設けられた被係止部13の段部14に係止させることで、内足場2をケーソン躯体1に取り付けるものである。これにより、内足場2をケーソン躯体1に直接取り付けることが可能となるため、ケーソン躯体1に対する内足場2の取付作業を容易に行うことができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚重機によって鉛直方向に沿って昇降可能に設けられ、ケーソン躯体の内側に自立可能に取り付けられる内足場の取付構造であって、
前記ケーソン躯体の内側に設けられた窪み状又は段差状に設けられた被係止部と、
前記内足場において前記鉛直方向に直交する放射方向へ出没自在に設けられ、前記被係止部に係止する突起部と、
を備えた、
ことを特徴とする内足場の取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の内足場の取付構造であって、
前記突起部は、
前記内足場の上面に前記放射方向に沿って設けられた複数の軸受部と、
前記軸受部により前記放射方向へスライド可能に軸受けされ、前記内足場の外周縁よりも外側に突出した状態で前記被係止部に係止する軸部と、
前記軸部に一体又は別体に設けられ、前記軸受部に係止して前記軸部のスライドを規制するストッパ部と、
を有する、
ことを特徴とする内足場の取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載の内足場の取付構造であって、
前記軸部は、前記軸受部による軸受け状態において前記軸部の軸線周りに回転自在に設けられ、
複数の前記軸受部のうち少なくとも一の前記軸受部は、前記軸部の回転方向における特定の位相で前記軸受部の内外を連通して前記ストッパ部が通過可能に形成された開放溝を有し、
前記ストッパ部は、前記軸部に一体的に設けられていて、前記特定の位相において前記開放溝を通過することをもって前記軸部のスライドを許容し、前記特定の位相を除くその他の位相において前記軸受部に係止することをもって前記軸部のスライドを規制する、
ことを特徴とする内足場の取付構造。
【請求項4】
請求項3に記載の内足場の取付構造であって、
前記内足場の上面に、前記放射方向において前記軸受部よりも内側となる位置に設けられた固定部と、
一端が前記固定部に固定され、他端が前記ストッパ部に引っ掛けられ、前記軸部が前記内足場から突出した状態で収縮力を発揮する、伸縮可能な弾性部材と、
を備え、
前記弾性部材は、前記内足場の撤去時において前記他端が前記ストッパ部に引っ掛けられることにより前記収縮力を発揮し、前記軸部の先端が前記内足場の外縁よりも内側に位置するまで前記軸部を後退させる、
ことを特徴とする内足場の取付構造。
【請求項5】
請求項4に記載の内足場の取付構造であって、
前記弾性部材の収縮力は、前記被係止部と前記軸部との間に作用する摩擦力よりも小さく設定されていて、
前記揚重機によって前記内足場が吊り上げられ、前記鉛直方向において前記軸部が前記被係止部から離間した状態で、前記弾性部材の収縮力により、前記軸部を後退させる、
ことを特徴とする内足場の取付構造。
【請求項6】
請求項2に記載の内足場の取付構造であって、
前記軸部は、径方向に開口する挿入孔を有し、
前記ストッパ部は、前記軸部とは別体であって前記挿入孔に対して着脱可能に設けられた係止部材によって構成されていて、前記係止部材が前記挿入孔から離脱した状態で前記軸部のスライドを許容し、前記係止部材が前記挿入孔に挿入された状態で前記軸受部に係止して前記軸部のスライドを規制する、
ことを特徴とする内足場の取付構造。
【請求項7】
請求項2に記載の内足場の取付構造であって、
前記軸部と一体的に設けられたレバー部と、
前記内足場の上面に、前記放射方向において前記軸受部よりも内側となる位置に設けられた固定部と、
一端が前記固定部に固定され、他端が前記レバー部に引っ掛けられ、前記軸部が前記内足場から突出した状態で収縮力を発揮する、伸縮可能な弾性部材と、
を備え、
前記軸受部は、前記鉛直方向に延びる長穴状の軸孔によって軸部を支持し、
前記軸孔は、前記鉛直方向の下端部両側に、前記軸孔を前記鉛直方向に直交する方向へ拡張して前記ストッパ部の通過を許容する拡幅部を有し、
前記軸部が前記被係止部に係止した状態では、前記鉛直方向において前記軸部が前記軸孔の上側に位置することで、前記ストッパ部が前記軸受部の端面に係止する一方、
前記軸部が前記被係止部から離間した状態では、前記鉛直方向において前記軸部が前記軸孔の下側に位置することで、前記拡幅部を通じて前記ストッパ部の通過を許容し、
前記弾性部材は、前記内足場の撤去時に、前記ストッパ部が前記軸受部の端面に係止した状態で前記他端が前記レバー部に引っ掛けられるものであって、前記揚重機によって前記内足場が吊り上げられ、前記ストッパ部が自重により前記軸孔の下側へ移動し、前記拡幅部により前記ストッパ部による前記軸受部の端面との係止状態が解除された状態で前記収縮力を発揮することにより、前記軸部の先端が前記内足場の外縁よりも内側に位置するまで前記軸部を後退させる、
ことを特徴とする内足場の取付構造。
【請求項8】
請求項1に記載の内足場の取付構造であって、
前記内足場は、外周縁部に切り欠かれた受容溝を有し、
前記受容溝は、前記放射方向の内側に設けられ、鉛直下端部が底壁により閉塞された有底部と、前記放射方向の外側に設けられ、前記鉛直方向に貫通する開放部と、を有し、
前記突起部は、概ね直線状を呈し、中間部が前記受容溝の前記開放部に支持されることで前記中間部を支点として回動可能に設けられていて、水平方向に概ね平行な水平位相と、前記鉛直方向に概ね平行な鉛直位相と、に変位し、
前記水平位相では、前記放射方向の内側に指向する一端部が前記底壁の上面に当接して前記突起部の回動を規制した状態となり、前記放射方向の外側に指向する他端部が前記内足場の外周縁よりも外側に突出して前記被係止部に係止することにより前記内足場が自立可能に保持される一方、
前記鉛直位相では、前記開放部において前記突起部の両端部が前記内足場の上下方向に指向した状態となり、前記突起部の両端部が前記放射方向において前記内足場の外周縁よりも内側に位置することにより前記内足場の昇降が許容される、
ことを特徴とする内足場の取付構造。
【請求項9】
請求項8に記載の内足場の取付構造であって、
前記突起部は、前記内足場の取付時において、前記内足場の外周縁よりも外側に突出し、かつ前記水平位相と前記鉛直位相との間の傾斜位相にある場合、前記内足場の下降移動に伴い前記他端部が前記被係止部に当接することにより、前記一端部が前記底壁に近接する方向へ回動して前記水平位相に自動的に変位する、
ことを特徴とする内足場の取付構造。
【請求項10】
請求項8に記載の内足場の取付構造であって、
前記突起部は、前記内足場の撤去時において、前記内足場の上昇移動に伴い前記内足場の外周縁よりも外側に突出した前記他端部が前記内足場よりも鉛直上側に積み上げられた前記ケーソン躯体に当接することにより、前記一端部が前記底壁から離間する方向へ回動して前記鉛直位相に自動的に変位する、
ことを特徴とする内足場の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割組立型土留壁(ケーソン)の圧入沈設に用いる内足場の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内足場の取付構造としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、特許文献1に記載された内足場の取付構造では、圧入後のケーソン躯体の内側にアンカーボルトによってブラケットを取り付け、このブラケットの上面に内足場を設置する。
【0004】
具体的には、圧入後のケーソン躯体の内側に、前記ブラケットの取り付けに供するブラケット取付用足場を設置し、この設置したブラケット取付用足場に作業者が乗り込み、ケーソン躯体の内側に複数のアンカーボルトを介してブラケットを取り付ける。その後、内足場をクレーンにより揚重してケーソン躯体の内側へと吊りこみ、当該内足場を下降させてブラケット上に載置することで、ケーソン躯体に対する内足場の設置が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の内足場の取付構造では、前記ブラケットを介してケーソン躯体に内足場を設置する構造となっている。このため、内足場の取り付けるには、まず、ケーソン躯体に内足場を取り付けるための前記ブラケット取付用足場を取り付け、このブラケット取付用足場を利用してケーソン躯体にブラケットを取り付けた後、前記ブラケット取付用足場を撤去する、といった作業を繰り返す必要がある。これにより、内足場の取り付け作業が煩雑となる点で改善の余地を残していた。
【0007】
また、前記従来の内足場の取付構造は前記ブラケットを介して内足場を設置する構造であるため、ケーソン躯体の組立後に内足場を撤去する際には、まず、クレーンにより内足場を吊り上げて撤去した後、前記ブラケット取付用足場を設置して、このブラケット取付用足場を利用してケーソン躯体からブラケットを取り外した後、前記ブラケット取付用足場を撤去する、といった作業を繰り返す必要がある。これにより、前記内足場の取り付け作業のみならず、当該内足場の撤去作業についても煩雑なものとなっており、当該内足場の着脱を容易に行える内足場の取付構造が望まれていた。
【0008】
本発明は、かかる技術的課題に着目して案出されたものであって、内足場の着脱に係る作業性を向上させることができる内足場の取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る内足場の取付構造は、その一態様として、揚重機によって鉛直方向に沿って昇降可能に設けられ、ケーソン躯体の内側に自立可能に取り付けられる内足場の取付構造であって、前記ケーソン躯体の内側に設けられた窪み状又は段差状に設けられた被係止部と、前記内足場において前記鉛直方向に直交する放射方向へ出没自在に設けられ、前記被係止部に係止する突起部と、を備えた、ことを特徴としている。
【0010】
このように、本発明によれば、内足場に設けられた突起部を放射方向へ進出させ、ケーソン躯体の内側に設けられた被係止部に係止させることで、内足場をケーソン躯体に取り付けることができる。これにより、予めケーソン躯体に内足場を載置するためのブラケットを取り付ける必要がある前記従来の内足場の取付構造と比べて、内足場をケーソン躯体に直接取り付け可能となるため、ケーソン躯体に対する内足場の取付作業を容易に行うことができる。
【0011】
さらに、本発明によれば、内足場を撤去する場合も、突起部を後退させて被係止部に対する突起部の係止状態を解除するのみで、ケーソン躯体から内足場を離脱することができる。
【0012】
また、前記内足場の取付構造の別の態様として、前記突起部は、前記内足場の上面に前記放射方向に沿って設けられた複数の軸受部と、前記軸受部により前記放射方向へスライド可能に軸受けされ、前記内足場の外周縁よりも外側に突出した状態で前記被係止部に係止する軸部と、前記軸部に一体又は別体に設けられ、前記軸受部に係止して前記軸部のスライドを規制するストッパ部と、を有する、ことが望ましい。
【0013】
かかる態様によれば、ストッパ部を軸受部に係止させることにより、軸部のスライドを規制可能となっている。このように、軸部のスライドをストッパ部により機械的に規制することで、内足場がケーソン躯体に取り付けられた状態で軸部が意図せずに後退して被係止部から脱落してしまう不具合を確実に防止することが可能となり、内足場の取付安全性を向上させることができる。
【0014】
また、前記内足場の取付構造のさらに別の態様として、前記軸部は、前記軸受部による軸受け状態において前記軸部の軸線周りに回転自在に設けられ、複数の前記軸受部のうち少なくとも一の前記軸受部は、前記軸部の回転方向における特定の位相で前記軸受部の内外を連通して前記ストッパ部が通過可能に形成された開放溝を有し、前記ストッパ部は、前記軸部に一体的に設けられていて、前記特定の位相において前記開放溝を通過することをもって前記軸部のスライドを許容し、前記特定の位相を除くその他の位相において前記軸受部に係止することをもって前記軸部のスライドを規制する、ことが望ましい。
【0015】
かかる態様によれば、軸部を回転させてストッパ部を特定の位相に合わせることで、軸受部に対するストッパ部の係止状態を解除可能となっている。これにより、軸受部に対するストッパ部の係止状態が意図せずに解除されてしまうおそれがなく、内足場の取付安全性をより効果的に向上させることができる。
【0016】
また、前記内足場の取付構造のさらに別の態様として、前記内足場の上面に、前記放射方向において前記軸受部よりも内側となる位置に設けられた固定部と、一端が前記固定部に固定され、他端が前記ストッパ部に引っ掛けられ、前記軸部が前記内足場から突出した状態で収縮力を発揮する、伸縮可能な弾性部材と、を備え、前記弾性部材は、前記内足場の撤去時において前記他端が前記ストッパ部に引っ掛けられることにより前記収縮力を発揮し、前記軸部の先端が前記内足場の外縁よりも内側に位置するまで前記軸部を後退させる、ことが望ましい。
【0017】
かかる態様によれば、内足場の撤去時に、弾性部材の収縮力によって自動的に軸部を後退させることができる。これにより、内足場の撤去に際し、軸部を後退させることによって行う、被係止部に対する突起部の係止状態の解除作業を省略することが可能となり、当該内足場の撤去作業をさらに容易に行うことができる。
【0018】
また、前記内足場の取付構造のさらに別の態様として、前記弾性部材の収縮力は、前記被係止部と前記軸部との間に作用する摩擦力よりも小さく設定されていて、前記揚重機によって前記内足場が吊り上げられ、前記鉛直方向において前記軸部が前記被係止部から離間した状態で、前記収縮力によって前記軸部の先端が前記内足場の外縁よりも内側に位置するまで前記軸部を後退させる、ことが望ましい。
【0019】
かかる態様によれば、軸部は、軸部と被係止部との摩擦が作用する状態では弾性部材の収縮力によりスライドせず、軸部と被係止部との摩擦が解放された状態で弾性部材の収縮力により後退する。これにより、内足場の吊り上げ前は軸部と被係止部との摩擦により被係止部に対する軸部の係止状態が維持されるため、より安全に内足場を撤去できることは勿論、比較的小さい収縮力でもって軸部を後退させることが可能となるため、比較的小さい弾性力を有する弾性部材を使用でき、弾性部材の弾性力に抗して当該弾性部材をストッパ部に引っ掛ける弾性部材の取付作業が容易となる。その結果、内足場の撤去作業を一層容易に行うことができる。
【0020】
また、前記内足場の取付構造のさらに別の態様として、前記軸部は、前記径方向に開口する挿入孔を有し、前記ストッパ部は、前記軸部とは別体であって前記挿入孔に対して着脱可能に設けられた係止部材によって構成されていて、前記係止部材が前記挿入孔から離脱した状態で前記軸部のスライドを許容し、前記係止部材が前記挿入孔に挿入された状態で前記軸受部に係止して前記軸部のスライドを規制する、ことが望ましい。
【0021】
かかる態様によれば、軸部とは別体に設けられた係止部材が挿入孔から離脱した状態で軸部のスライドが許容され、係止部材が挿入孔に挿入された状態で軸受部に係止して軸部のスライドが規制される。換言すれば、係止部材が挿入孔に挿入された状態では、軸部の位相にかかわらず軸部のスライドを規制することができる。これにより、軸受部に対するストッパ部による係止状態が意図せず解除されてしまうおそれがなく、内足場の取付安全性をより効果的に向上させることができる。
【0022】
また、当該態様によれば、係止部材を挿入孔に挿入するのみによって軸部のスライドを規制することができる。このため、例えば軸部を回転させて特定の位相に合わせるなどの特別な操作を行うことなく軸部のスライドを規制できるメリットがある。
【0023】
また、前記内足場の取付構造のさらに別の態様として、前記軸部と一体的に設けられたレバー部と、前記内足場の上面に、前記放射方向において前記軸受部よりも内側となる位置に設けられた固定部と、一端が前記固定部に固定され、他端が前記レバー部に引っ掛けられ、前記軸部が前記内足場から突出した状態で収縮力を発揮する、伸縮可能な弾性部材と、を備え、前記軸受部は、前記鉛直方向に延びる長穴状の軸孔によって軸部を支持し、前記軸孔は、前記鉛直方向の下端部両側に、前記軸孔を前記鉛直方向に直交する方向へ拡張して前記ストッパ部の通過を許容する拡幅部を有し、前記軸部が前記被係止部に係止した状態では、前記鉛直方向において前記軸部が前記軸孔の上側に位置することで、前記ストッパ部が前記軸受部の端面に係止する一方、前記軸部が前記被係止部から離間した状態では、前記鉛直方向において前記軸部が前記軸孔の下側に位置することで、前記拡幅部を通じて前記ストッパ部の通過を許容し、前記弾性部材は、前記内足場の撤去時に、前記ストッパ部が前記軸受部の端面に係止した状態で前記他端が前記レバー部に引っ掛けられるものであって、前記揚重機によって前記内足場が吊り上げられ、前記ストッパ部が自重により前記軸孔の下側へ移動し、前記拡幅部により前記ストッパ部による前記軸受部の端面との係止状態が解除された状態で前記収縮力を発揮することにより、前記軸部の先端が前記内足場の外縁よりも内側に位置するまで前記軸部を後退させる、ことが望ましい。
【0024】
かかる態様によれば、内足場の撤去時に、弾性部材の収縮力によって自動的に軸部を後退させることができる。これにより、内足場の撤去に際し、軸部を後退させることによって行う、被係止部に対する突起部の係止状態の解除作業を省略することが可能となり、当該内足場の撤去作業をさらに容易に行うことができる。
【0025】
また、上記態様によれば、軸部が被係止部に係止した状態で、軸部が軸孔の上側に位置してストッパ部が軸受部の端面に係止し、軸部が被係止部から離間した状態で、軸部が軸孔の下側に位置して拡幅部を通じてストッパ部の通過を許容する構成となっている。このため、ストッパ部の着脱を伴うことなく、被係止部に軸部が係止して軸部のスライド規制が必要となる状態ではストッパ部によって軸部のスライドを規制し、被係止部から軸部が離間して軸部のスライド規制を必要としない状態では軸部のスライドを許容することができる。このように、必要に応じて軸部のスライドを自動的に規制し、又は解除可能となることで、内足場の着脱作業をより一層容易に行うことができる。
【0026】
特に、上記軸部のスライドの規制を自動化する構成を、前記弾性部材により軸部の格納を自動化する構成と組み合わせることで、これら両構成が有機的に関連し、内足場の撤去時に弾性部材をレバー部に引っ掛けるのみで、係止部材による係止状態の解除と、弾性部材による軸部の格納とを自動的に行うことができる。これにより、内足場の撤去作業に係る工数が各段に低減されて、当該内足場の撤去作業をより一層容易なものとすることができる。
【0027】
また、前記内足場の取付構造のさらに別の態様として、前記内足場は、外周縁部に切り欠かれた受容溝を有し、前記受容溝は、前記放射方向の内側に設けられ、鉛直下端部が底壁により閉塞された有底部と、前記放射方向の外側に設けられ、前記鉛直方向に貫通する開放部と、を有し、前記突起部は、概ね直線状を呈し、中間部が前記受容溝の前記開放部に支持されることで前記中間部を支点として回動可能に設けられていて、水平方向に概ね平行な水平位相と、前記鉛直方向に概ね平行な鉛直位相と、に変位し、前記水平位相では、前記放射方向の内側に指向する一端部が前記底壁の上面に当接して前記突起部の回動を規制した状態となり、前記放射方向の外側に指向する他端部が前記内足場の外周縁よりも外側に突出して前記被係止部に係止することにより前記内足場が自立可能に保持される一方、前記鉛直位相では、前記開放部において前記突起部の両端部が前記内足場の上下方向に指向した状態となり、前記突起部の両端部が前記放射方向において前記内足場の外周縁よりも内側に位置することにより前記内足場の昇降が許容される、ことが望ましい。
【0028】
かかる態様によれば、突起部の回転方向の位相を変更するのみで、被係止部に対する突起部の係止状態と当該係止状態の解除とを切り替えることができる。これにより、軸部をスライドさせて被係止部に対する突起部の係脱状態を切り替える態様に比べて、被係止部に対する突起部の係脱状態の切替作業を比較的容易に行うことができ、ケーソン躯体に対する内足場の着脱作業をさらに容易かつ効率的に行うことができる。
【0029】
また、前記内足場の取付構造のさらに別の態様として、前記突起部は、前記内足場の取付時において、前記内足場の外周縁よりも外側に突出し、かつ前記水平位相と前記鉛直位相との間の傾斜位相にある場合、前記内足場の下降移動に伴い前記他端部が前記被係止部に当接することにより、前記一端部が前記底壁に近接する方向へ回動して前記水平位相に自動的に変位する、ことが望ましい。
【0030】
かかる態様によれば、内足場の取付時に、内足場を下降させるのみで、傾斜位相にある突起部が被係止部に当接することによって自動的に回動し、当該突起部を水平位相へと変位させることが可能となる。これにより、内足場の取付時において、突起部が予め完全な水平位相となっていない場合でも、当該突起部を自動的に水平位相へと変位させ、突起部と被係止部の係止状態を確保することが可能となり、内足場の取付作業を一層容易に行うことができる。
【0031】
また、前記内足場の取付構造のさらに別の態様として、前記突起部は、前記内足場の撤去時において、前記内足場の上昇移動に伴い前記内足場の外周縁よりも外側に突出した前記他端部が前記内足場よりも鉛直上側に積み上げられた前記ケーソン躯体に当接することにより、前記一端部が前記底壁から離間する方向へ回動して前記鉛直位相に自動的に変位する、ことが望ましい。
【0032】
かかる態様によれば、内足場の撤去時に、単に内足場を上昇させるのみで、水平位相にある突起部が上段のケーソン躯体に当接することによって自動的に回動し、当該突起部を鉛直位相へと変位させることが可能となる。これにより、内足場の撤去時において、作業者が突起部に何ら手を加えることなく、突起部を内足場に自動的に格納することができ、内足場の撤去作業をより一層容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、内足場に設けられた突起部を放射方向へと進出させ、ケーソン躯体の内側に設けられた被係止部に係止させることで、内足場をケーソン躯体に取り付けることができる。このため、予めケーソン躯体に内足場を載置するためのブラケットを取り付ける必要がある前記従来の内足場の取付構造と比べて、内足場をケーソン躯体に直接取り付けることが可能となる。その結果、ケーソン躯体に対する内足場の取付作業が容易化され、当該内足場の取付作業を容易に行うことができる。
【0034】
また、本発明によれば、内足場を撤去する際も、突起部を後退させて被係止部に対する突起部の係止状態を解除するのみで、ケーソン躯体から内足場を離脱することができる。このため、前記取付作業のみならず、内足場の撤去作業についても容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る内足場の取付状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す内足場の平面図であって、突起部を突出させた状態を示す図である。
【
図4】
図2に示す内足場の平面図であって、突起部を格納した状態を示す図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る内足場の取付状態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は同図(a)のA-A線断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る内足場の取付方法を示す断面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る内足場の撤去方法を示す断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る内足場の要部を拡大して表示した平面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る内足場の撤去方法を示す断面図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係る内足場の要部拡大図であって、突起部を突出させた状態を表示した、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【
図12】本発明の第3実施形態に係る内足場の要部拡大図であって、突起部を格納した状態を表示した、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【
図13】本発明の第4実施形態に係る内足場の要部拡大図であって突起部を突出させた状態を示し、(a)は内足場の横断面図、(b)は同図(a)のC-C線断面図である。
【
図14】本発明の第4実施形態に係る内足場の要部拡大図であって突起部を格納した状態を示し、(a)は内足場の横断面図、(b)は同図(a)のD-D線断面図である。
【
図15】本発明の第5実施形態に係る内足場の要部を拡大して表示した斜視図であって、突起部を突出させた状態を示す図である。
【
図16】本発明の第5実施形態に係る内足場の要部を拡大して表示した斜視図であって、突起部を格納した状態を示す図である。
【
図17】本発明の第5実施形態に係る内足場の取付状態を示す図であって(a)は平面図、(b)は同図(a)のE-E線断面図である。
【
図18】本発明の第5実施形態に係る内足場の取付方法を示す断面図である。
【
図19】本発明の第5実施形態に係る内足場の撤去方法を示す断面図である。
【
図20】本発明の変形例に係る内足場の取付状態を示す斜視図である。
【
図21】従来の内足場の取付方法を示す断面図である。
【
図22】従来の内足場の撤去方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明に係る内足場の取付構造の実施形態を、図面に基づいて詳述する。なお、下記の各実施形態では、本発明を、RCセグメントを組み立ててなる沈設用土留壁としてのケーソン躯体の圧入沈設に適用したものを例示する。また、以下の説明では、ケーソン躯体1の圧入方向に直交する方向を「径方向」とし、ケーソン躯体1の圧入方向周りの方向を「周方向」として説明する。
【0037】
〔第1実施形態〕
図1~
図7は、本発明の第1実施形態に係る内足場の取付構造を示している。なお、以下では、便宜上、内足場の取付構造、内足場の着脱方法、及び本実施形態の作用効果の項に分けて説明する。
【0038】
(内足場の取付構造)
図1に示すように、オープンケーソン工法では、地面Gに穿設された立坑に、円筒状の分割組立型土留壁であるケーソン躯体1を構成する概ね円弧状に分割(本実施形態では5分割)して形成された複数のリングピース11を水平方向及び鉛直方向に連結してなる概ね円筒状のケーソン躯体1を圧入し、沈設する。このケーソン躯体1は、ピット最下部に設置された刃口リング12上にリングピース11を周方向に接続してなる概ね円筒状の単位土留壁10を鉛直方向に重ねるかたちで組み立てることによって形成される。
【0039】
この際、かかる単位土留壁10を構成する各リングピース11同士は、図示外の継手板等を用いて図示外のボルト及びナットによって締結される。そして、この各リングピース11の接続(締結)作業は、ケーソン躯体1の内側に設置される内足場2に乗り込んだ作業者によって行われる。これにより、ケーソン躯体1は、例えば単位土留壁10を3段重ねる毎など、単位土留壁10の高さに応じた所定の間隔で、鉛直方向の上側に内足場2を掛け替えながら組み立てられる。
【0040】
内足場2は、ケーソン躯体1の内側に取り付けられる板状のベース部材21と、このベース部材21の上に固定される足場部材22(例えば
図6参照)と、を有する。ベース部材21は、ケーソン躯体1の内側空間に対応する形状、本実施形態では平面視が概ね円形となる円板状に形成されている。そして、このベース部材21は、外周縁部に、放射状に任意の間隔をもって配置され、かつ放射方向に出没自在に設けられた複数の突起部23を有する。
【0041】
なお、本実施形態の場合、円筒状のケーソン躯体1に適用するため、平面視が円形となる円板状のベース部材21を例示するが、ベース部材21の形態については、ケーソン躯体1の内側空間に対応する任意の形状を採用することができる。換言すれば、ベース部材21の形態は、本実施形態の開示された円形に限定されるものではなく、例えば角筒状のケーソン躯体1に対しては当該角筒の内側空間に対応する多角形の形態を有するベース部材21を採用することができる。また、ベース部材21は、当該ベース部材21を搬送する搬送車の荷台の大きさなど、搬送手段に応じて適宜分割(本実施形態では2分割)することも可能である。
【0042】
そして、内足場2は、ベース部材21に設けられた前記複数の突起部23をそれぞれケーソン躯体1の内側に窪み状又は段差状に設けられた複数の被係止部13に係止させることをもって、ケーソン躯体1の内側に取り付けられる。なお、前記RCセグメントによって構成されるケーソン躯体1の場合、通常は内周面が概ね平坦状に形成されることから、本実施形態に係るケーソン躯体1には、例えば
図1に示すように、上端側の内周縁部であって前記複数の突起部23に対応する周方向位置に、予め当該複数の突起部23を係止可能な前記複数の被係止部13が窪み状に形成されている。
【0043】
具体的には、例えば
図5に示すように、被係止部13は、ケーソン躯体1の上端部の内周縁部に凹状に切り欠かれ、鉛直上側及び径方向内側に開口する。すなわち、被係止部13は、ケーソン躯体1の内側面が局部的に窪み形成されていて、鉛直上側に向かって段差状に拡径してなる段部14を構成する。これにより、内足場2の下降に伴って鉛直上側から進入する突起部23が被係止部13の段部14に当接することをもって突起部23が被係止部13に係止し、内足場2がケーソン躯体1に支持される。
【0044】
なお、本実施形態に係る被係止部13は、周方向両側に対向する一対の側壁151,152を有し、突起部23が側壁151,152に当接することで、突起部23の周方向の移動も規制する。また、被係止部13に形成された一対の側壁151,152は、前記突起部23の周方向の移動を規制すると共に、突起部23の鉛直方向の移動を案内するガイドとしても機能する。
【0045】
突起部23は、特に
図2、
図3、
図4に示すように、ベース部材21の上面の外周縁部に放射方向に沿って直列に配置された複数(本実施形態では4つ)の軸受部24と、これら複数の軸受部24によって放射方向へスライド可能に軸受けされた軸部25と、軸部25に一体に設けられ、軸受部24に係止することにより前記軸部25のスライドを規制するストッパ部26と、を有する。すなわち、突起部23は、ベース部材21の外周縁よりも外側に突出した軸部25がケーソン躯体1の被係止部13に係止することにより、ケーソン躯体1の内側にベース部材21を支持する。
【0046】
軸受部24は、放射方向の最も内側に配置される第1軸受部241と、放射方向の最も外側に配置される第2軸受部242と、これら第1軸受部241と第2軸受部242との間に配置される第3軸受部243及び第4軸受部244と、を有する。なお、この第1軸受部241、第2軸受部242、第3軸受部243及び第4軸受部244は、ベース部材21の上面に、例えば溶接などの任意の固定手段によって固定されている。
【0047】
第1軸受部241及び第2軸受部242は、それぞれ軸部25が貫通可能な円形の第1軸孔241a及び第2軸孔242aを有し、この第1軸孔241a及び第2軸孔242aに挿通された軸部25を、全周を包囲した状態で軸受けする。また、第1軸孔241a及び第2軸孔242aは、軸部25の外径よりも若干大きな内径を有していて、当該第1軸受部241及び第2軸受部242によって軸受けされた状態で、軸部25の軸線X方向の軸部25のスライドを許容しつつ、軸線X周りの軸部25の回転を許容している。
【0048】
第3軸受部243及び第4軸受部244は、それぞれ軸部25が貫通可能な円形の第3軸孔243a及び第4軸孔244aを有する。第3軸孔243a及び第4軸孔244aは、それぞれ軸部25よりも若干大きな内径を有しており、第1軸孔241a及び第2軸孔242aと同様に、第3軸受部243及び第4軸受部244によって軸受けされた状態で、軸線X方向の軸部25のスライドを許容しつつ、軸線X周りの軸部25の回転を許容する。また、第3軸孔243a及び第4軸孔244aには、それぞれ周方向の一部を切り欠いてなる開放溝243b,244bが設けられている。
【0049】
この開放溝243b,244bは、第3軸受部243及び第4軸受部244の周方向における特定の位相(本実施形態では12時位置となる鉛直真上位置)において第3軸孔243a及び第4軸孔244aの内外を連通する。すなわち、開放溝243b,244bは、ストッパ部26の最大幅よりも若干大きな溝幅を有し、軸部25が放射方向へスライドする際、前記特定の位相にてストッパ部26の通過を許容する。なお、各開放溝243b,244bの位相は、第3軸受部243と第4軸受部244とで同じ(共通)に設定されていればよく、両者の具体的な位相については、任意の周方向位置に設定することができる。
【0050】
このように、突起部23では、ストッパ部26が開放溝243b,244bを通過することで、ストッパ部26が第1軸受部241に当接するまで前進し、第2軸受部242に当接するまで後退可能となっている。換言すれば、突起部23では、第1軸受部241と第2軸受部242の間をストッパ部26が移動し、当該ストッパ部26の移動が可能な範囲内において、軸部25がスライド可能となっている。
【0051】
そして、
図3に示すように、ストッパ部26が第2軸受部242と第4軸受部244との間に位置する状態において、軸部25の先端がベース部材21の外周縁よりも外側に位置し、当該軸部25がベース部材21から突出した状態となる。一方、
図4に示すように、ストッパ部26が第1軸受部241と第3軸受部243との間に位置する状態において、軸部25の先端がベース部材21の外周縁よりも内側に位置し、当該軸部25がベース部材21に格納された状態となる。
【0052】
軸部25は、横断面が円形となる丸棒状を呈し、軸線X方向において一定の外径を有する。また、軸部25の外周側に、軸部25の径方向に沿って延びる丸棒状のストッパ部26が設けられている。なお、このストッパ部26は、軸部25の外周面に、例えば溶接などの任意の固定手段によって固定されている。また、このストッパ部26の形状についても、本実施形態では丸棒状の形態を例示しているが、各開放溝243b,244bを通過可能に構成されていればよく、例えば角柱状など、各開放溝243b,244bとの関係で内足場2の構成に応じて任意の形態を採用することができる。
【0053】
(内足場の取付方法)
以下に、内足場2の取付方法について、
図6に基づいて説明する。
【0054】
内足場2の取付に際しては、まず、
図6(a)に示すように、突起部23について、軸部25の先端をベース部材21の外周縁よりも外側へと突出させた状態で、ベース部材21の上面に足場部材22が固定された内足場2を、図示外のクレーンによって揚重し、ケーソン躯体1の内側へと吊り込む。この際、意図せず軸部25が後退しないように、ストッパ部26を前記特定の位相以外の位相に合わせてストッパ部26を第4軸受部244の外側端面に係止させておくことが望ましい(
図5(a)参照)。
【0055】
そして、内足場2の突起部23の周方向位置をケーソン躯体1の被係止部13の周方向位置に合わせた状態で内足場2を下降させ、
図6(b)に示すように、ベース部材21の外周縁よりも外側に突出した軸部25の先端部を被係止部13の段部14に当接させることにより、当該軸部25の先端部が段部14に係止する。これにより、内足場2を構成するベース部材21が突起部23を介してケーソン躯体1の内側に支持され、ケーソン躯体1に対する内足場2の取付が完了する。
【0056】
(内足場の撤去方法)
以下に、内足場2の撤去方法について、
図7に基づいて説明する。
【0057】
内足場2の撤去に際しては、まず、
図7(a)に示すように、内足場2の足場部材22に図示外のクレーンに接続されるワイヤロープWを掛ける。その後、図示外のクレーンによって内足場2を僅かに吊り上げて、ケーソン躯体1の被係止部13に係止状態にある突起部23の軸部25を被係止部13の段部14から離間させる。
【0058】
続いて、突起部23について、軸部25を軸線X周りに回動させてストッパ部26を前記特定の位相に合わせて当該ストッパ部26のロック(係止状態)を解除する(
図3参照)。そして、開放溝243b,244bを通じてストッパ部26を第1軸受部241と第3軸受部243の間に移動させ、
図7(b)に示すように、軸部25の先端がベース部材21の外周縁よりも内側に位置するまで軸部25を後退させることにより、軸部25をベース部材21に格納する。
【0059】
その後、具体的な図示は省略するが、意図せずベース部材21の外周縁から軸部25が突出しないように、ストッパ部26を前記特定の位相以外の位相に合わせてストッパ部26を第3軸受部243の内側端面に係止させたうえで、
図7(c)に示すように、図示外のクレーンにより内足場2を吊り上げて上昇させる。これにより、ケーソン躯体1に対する内足場2の撤去が完了する。
【0060】
(第1実施形態の作用効果)
以下、本実施形態に係る内足場の取付構造の特徴的な作用効果について具体的に説明する。
【0061】
前記従来の内足場の取付構造において、ケーソン躯体1の内側に内足場2を取り付ける場合には、まず、
図21(a)に示すように、後述するブラケットBKTを取り付けるためのブラケット取付用足場20を、ケーソン躯体1の内側に吊り下げるように設置する。続いて、
図21(b)に示すように、この設置したブラケット取付用足場20に作業者が乗り込み、複数のアンカーボルトAB(
図21(c)参照)を介してケーソン躯体1の内側にブラケットBKTを取り付け、その後ブラケット取付用足場20を撤去する。これを繰り返して、ケーソン躯体1の内側の所定箇所に、それぞれブラケットBKTを取り付ける。そして、ブラケットBKTを全て取り付けた後、
図21(c)に示すように、ベース部材21の上面に足場部材22が固定設置された内足場2を、図示外のクレーンにより揚重して、ケーソン躯体1の内側へ吊り込む。そして、
図21(d)に示すように、内足場2をブラケットBKTの上に載置して、ケーソン躯体1に対する内足場2の取付が完了する。
【0062】
このように、前記従来の内足場の取付構造では、複数のブラケットBKTを介してケーソン躯体1に内足場2を設置する構造となっている。このため、内足場2の取り付けるには、まず、ケーソン躯体1に前記ブラケット取付用足場20を取り付け、このブラケット取付用足場20を利用してケーソン躯体1にブラケットBKTを取り付けた後、前記ブラケット取付用足場20を撤去する、といった作業を繰り返す必要がある。これにより、内足場2の取り付け作業が煩雑となる点で改善の余地を残していた。
【0063】
また、前記従来の内足場の取付構造は前記ブラケットBKTを介して内足場2を設置するため、ケーソン躯体1の組立後には、
図22(a)に示すように、クレーンにより内足場2を吊り上げて撤去した後、
図22(b)に示すように、前記ブラケット取付用足場20を設置する。そして、
図22(c)に示すように、当該ブラケット取付用足場20を利用してケーソン躯体1からブラケットを取り外した後、
図22(d)に示すように、前記ブラケット取付用足場20を撤去する、といった作業を繰り返す必要がある。これにより、前記内足場2の取り付け作業のみならず、当該内足場2の撤去作業についても煩雑なものとなっており、当該内足場2の着脱を容易に行うことができる内足場の取付構造が望まれていた。
【0064】
これに対し、本実施形態では、揚重機(図示外のクレーン)によって鉛直方向に沿って昇降可能に設けられ、ケーソン躯体1の内側に自立可能に取り付けられる内足場2の取付構造であって、ケーソン躯体1の内側に設けられた窪み状又は段差状に設けられた被係止部13と、内足場2において前記鉛直方向に直交する放射方向へ出没自在に設けられ、被係止部13に係止する突起部23(軸部25)と、を備えている。
【0065】
このように、本実施形態では、内足場2に設けられた突起部23(軸部25)を放射方向へと進出させ、ケーソン躯体1の内側に設けられた被係止部13に係止させることにより、内足場2をケーソン躯体1に取り付けることが可能となっている。このため、予めケーソン躯体1に内足場2を載置するためのブラケットBKTを取り付ける必要がある前記従来の内足場の取付構造と比べて、内足場2をケーソン躯体1に直接取り付け可能となるため、ケーソン躯体1に対する内足場2の取付作業を容易に行うことができる。
【0066】
さらに、本実施形態の場合には、内足場2を撤去する際も、突起部23(軸部25)を後退させて被係止部13に対する突起部23の係止状態を解除するのみで、ケーソン躯体1から内足場2を離脱させることができる。これにより、ケーソン躯体1からの内足場2の撤去作業についても容易に行うことができる。
【0067】
また、本実施形態では、突起部23は、内足場2の上面に前記放射方向に沿って設けられた複数の軸受部(第1軸受部241、第2軸受部242、第3軸受部243及び第4軸受部244)と、軸受部(第1軸受部241、第2軸受部242、第3軸受部243及び第4軸受部244)により前記放射方向へスライド可能に軸受けされ、内足場2の外周縁よりも外側に突出した状態で被係止部13に係止する軸部25と、軸部25と、軸部25に一体又は別体に設けられ、軸受部(本実施形態では第3軸受部243及び第4軸受部244)に係止して軸部25のスライドを規制するストッパ部26と、を有している。
【0068】
このように、本実施形態では、ストッパ部26を第3軸受部243及び第4軸受部244に係止させることで、軸部25のスライドを規制することが可能となっている。このように、軸部25のスライドをストッパ部26により機械的に規制することで、内足場2がケーソン躯体1に取り付けられた状態で軸部25が意図せず後退して被係止部13から脱落してしまう不具合を確実に防止することが可能となり、内足場2の取付安全性を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、軸部25は、軸受部(第1軸受部241、第2軸受部242、第3軸受部243及び第4軸受部244)による軸受け状態において軸部25の軸線X周りに回転自在に設けられ、複数の軸受部(第1軸受部241、第2軸受部242、第3軸受部243及び第4軸受部244)のうち少なくとも一の軸受部(本実施形態では第3軸受部243及び第4軸受部244)は、軸部25の回転方向における特定の位相で軸受部(本実施形態では第3軸受部243及び第4軸受部244)の内外を連通してストッパ部26が通過可能に形成された開放溝243b,244bを有し、ストッパ部26は、軸部25に一体的に設けられていて、前記特定の位相において開放溝243b,244bを通過することをもって軸部25のスライドを許容し、前記特定の位相を除くその他の位相において軸受部(本実施形態では第3軸受部243及び第4軸受部244)に係止することをもって軸部25のスライドを規制する。
【0070】
このように、本実施形態では、軸部25を回転させてストッパ部26を前記特定の位相に合わせることにより、第3軸受部243及び第4軸受部244に対するストッパ部26の係止状態を解除することが可能となっている。これにより、第3軸受部243及び第4軸受部244に対するストッパ部26の係止状態が意図せず解除されてしまうおそれがなく、内足場2の取付安全性をより効果的に向上させることができる。
【0071】
〔第2実施形態〕
図8~
図10は本発明に係る内足場の取付構造の第2実施形態を示しており、本実施形態は、前記第1実施形態における突起部23の軸部25の格納手段を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については前記第1実施形態と同様である。そのため、前記第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0072】
本実施形態に係る内足場の取付構造は、
図6、
図7に示すように、前記第1実施形態の構成に加えて、内足場2の上面に、前記放射方向において第1軸受部241よりも内側となる位置に設けられた固定部であるアンカーボルトABと、アンカーボルトABとストッパ部26の間に設けられ、軸部25が内足場2から突出した状態で収縮力を発揮するゴム紐状の弾性部材3と、を備える。
【0073】
すなわち、本実施形態では、内足場2の上面であって軸線X上における第1軸受部241よりも内側に、アンカーボルトABが設けられていて、弾性部材3の一端31がアンカーボルトABに固定されると共に、弾性部材3の他端32が内足場2の撤去時にストッパ部26に引っ掛けられる。これにより、弾性部材3は、内足場2の撤去時において、前記収縮力をもって軸部25の先端がベース部材21の外周縁よりも内側に位置するまで軸部25を後退させる構成となっている。
【0074】
(内足場の撤去方法)
上述のように、本実施形態は、弾性部材3の収縮力をもって軸部25の格納を行うものであって、弾性部材3は内足場2の撤去時に使用されるものであるため、内足場2の取付方法については前記第1実施形態と同様である。よって、以下では、内足場2の撤去方法についてのみ、
図10に基づいて説明する。
【0075】
内足場2の撤去に際しては、まず、
図10(a)に示すように、内足場2の足場部材22に図示外のクレーンに接続されるワイヤロープWを掛ける。次に、突起部23について、軸部25を軸線X周りに回動させてストッパ部26を前記特定の位相に合わせることにより、当該ストッパ部26のロック(係止状態)を解除する。そして、このロックが解除されたストッパ部26に、一端31がアンカーボルトABに固定された弾性部材3の他端32を引っ掛ける。なお、この時点では、突起部23は被係止部13に係止状態にあり、被係止部13の段部14と軸部25との間に静摩擦が作用しているため、当該静摩擦力が弾性部材3の収縮力に抗し、被係止部13の段部14に対する軸部25の係止状態が維持される。
【0076】
続いて、前記図示外のクレーンにより内足場2を僅かに吊り上げ、ケーソン躯体1の被係止部13に係止状態にある突起部23の軸部25を被係止部13の段部14から離間させる。すると、被係止部13の段部14と軸部25との間の静摩擦力が解放され、
図10(b)に示すように、弾性部材3の収縮力によりストッパ部26が第1軸受部241側へと引っ張られて、開放溝243b,244bを通じてストッパ部26が第1軸受部241と第3軸受部243の間に自動的に移動する。これにより、軸部25の先端がベース部材21の外周縁よりも内側に位置するまで軸部25が後退して、軸部25がベース部材21に格納される。
【0077】
その後、
図10(c)に示すように、図示外のクレーンにより内足場2を上昇させる。これにより、ケーソン躯体1に対する内足場2の撤去が完了する。
【0078】
(第2実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態では、内足場2の上面に、前記放射方向において軸受部(第1軸受部241)よりも内側となる位置に設けられた固定部(アンカーボルトAB)と、一端31が固定部(アンカーボルトAB)に固定され、他端32がストッパ部26に引っ掛けられ、軸部25が内足場2から突出した状態で収縮力を発揮する、伸縮可能な弾性部材3と、を備え、弾性部材3は、内足場2の撤去時において他端32がストッパ部26に引っ掛けられることにより前記収縮力を発揮し、軸部25の先端が内足場2の外縁よりも内側に位置するまで軸部25を後退させる。
【0079】
このように、本実施形態では、内足場2を撤去する際に、弾性部材3の収縮力によって自動的に軸部25を後退させることができる。これにより、内足場2の撤去に際して、軸部25を後退させることによって行う、被係止部13に対する突起部23の係止状態の解除作業を省略することが可能となり、内足場2の撤去作業をさらに容易に行うことができる。
【0080】
また、本実施形態では、弾性部材3の収縮力は、被係止部13(段部14)と軸部25との間に作用する摩擦力よりも小さく設定されていて、揚重機(図示外のクレーン)によって内足場2が吊り上げられ、前記鉛直方向において軸部25が被係止部13(段部14)から離間した状態で、弾性部材3の収縮力によって軸部25の先端が内足場2の外縁よりも内側に位置するまで軸部25を後退させる。
【0081】
かかる態様によれば、軸部25は、軸部25と被係止部13との摩擦が作用する状態では、弾性部材3の収縮力によってスライドせず、軸部25と被係止部13との摩擦が解放された状態において、弾性部材3の収縮力によって後退する構成となっている。これにより、内足場2の吊り上げ前は、軸部25と被係止部13の段部14との摩擦により段部14に対する軸部25の係止状態が維持されるため、より安全に内足場2を撤去できることは勿論、比較的小さい収縮力で軸部25を後退させることが可能となるため、比較的小さい弾性力を有する弾性部材3を使用でき、弾性部材3の弾性力に抗して当該弾性部材3をストッパ部26へと引っ掛ける弾性部材3の取付作業が容易となる。その結果、内足場2の撤去作業を一層容易に行うことができる。
【0082】
〔第3実施形態〕
図11、
図12は本発明に係る内足場の取付構造の第3実施形態を示しており、本実施形態は、前記第1実施形態におけるストッパ部26の具体的態様を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については前記第1実施形態と同様である。そのため、前記第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0083】
本実施形態に係る内足場の取付構造は、
図11、
図12に示すように、軸部25に、径方向に開口する挿入孔250が貫通していて、この挿入孔250に係止ピン27が挿入されることをもって、前記第1実施形態に係るストッパ部26による軸部25のスライドロック機構が代替されている。なお、係止ピン27は、例えば周知のボルト271により形成されていて、当該ボルト271の先端部にロックナット272がねじ込まれることによって、挿入孔250に固定されている。
【0084】
このように、本実施形態では、ストッパ部26が、軸部25とは別体に形成されてなる係止ピン27により構成されていて、当該係止ピン27を構成するボルト271とロックナット272が第3軸受部243又は第4軸受部244に係止することをもって、軸部25の格納方向のスライド(後退)を規制するようになっている。換言すれば、開放溝243b,244bを通じてストッパ部26の係止状態を解除する前記第1実施形態と異なり、本実施形態によれば、係止ピン27が挿入孔250に挿入された状態では、軸部25の位相にかかわらず軸部25の格納方向へのスライド(後退)が規制される構成となっている。
【0085】
なお、本実施形態においても、前記第1実施形態と同様に、軸部25にストッパ部26が一体に設けられているが、本実施形態に係るストッパ部26は、軸部25のスライドを規制すること目的とするものではなく、軸部25をスライドさせる際の把持部(ハンドル)として機能するものである。
【0086】
(第3実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態では、軸部25は、径方向に開口する挿入孔250を有し、ストッパ部26は、軸部25とは別体であって挿入孔250に対して着脱可能に設けられた係止部材(係止ピン27)によって構成され、係止部材(係止ピン27)が挿入孔250から離脱した状態で軸部25のスライドを許容し、係止部材(係止ピン27)が挿入孔250に挿入された状態で軸受部(第3軸受部243又は第4軸受部244)に係止して軸部25のスライドを規制する。
【0087】
かかる態様によれば、軸部25とは別体に設けられた係止ピン27が挿入孔250から離脱した状態で軸部25のスライドが許容されて、係止ピン27が挿入孔250に挿入された状態で第3軸受部243又は第4軸受部に係止して軸部25のスライドが規制される。換言すれば、係止ピン27が挿入孔250に挿入された状態では、軸部25の位相にかかわらず軸部25のスライドを規制することができる。これにより、第3軸受部243又は第4軸受部に対する係止ピン27の係止状態が意図せずに解除されてしまうおそれがなく、内足場2の取付安全性をより効果的に向上させることができる。
【0088】
また、当該態様によれば、係止ピン27を挿入孔250に挿入するのみで軸部25のスライドを規制することができる。これにより、例えば前記第1実施形態のように軸部25を回転させて特定の位相に合わせるなどの特別な操作を行うことなく軸部25のスライドを規制できるメリットがある。
【0089】
〔第4実施形態〕
図13、
図14は本発明に係る内足場の取付構造の第4実施形態を示しており、本実施形態は、主として、前記第3実施形態について前記第2実施形態で開示した弾性部材3による軸部25の自動格納構造を組み合わせたものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については基本的に前記第3実施形態と同様である。そのため、前記第3実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0090】
本実施形態に係る内足場の取付構造は、
図13、
図14に示すように、軸部25の外周側に、第1軸受部241の外側面と第2軸受部242の内側面との間を行き来するレバー部28が、軸部25の径方向に沿って延設されている。このレバー部28は、軸部25に対して概ね直交する方向に沿って延びる円柱状を呈し、軸部25と一体に形成されている。
【0091】
さらに、本実施形態では、前記第3実施形態における第3軸受部243又は第4軸受部244が廃止されていて、その代わりに、第1軸受部241と第2軸受部242との間に、第1軸受部241と第2軸受部242との間を行き来するレバー部28の移動を案内(ガイド)するガイドレールGLが設けられている。
【0092】
ガイドレールGLは、第1軸受部241の外側面と第2軸受部242の内側面との間に平行に架け渡された一対のレール構成部材GL1,GL2によって構成される。一対のレール構成部材GL1,GL2は、それぞれ横断面が円形となる円柱状を呈し、レバー部28と線接触することにより、レバー部28の摺動抵抗が低減されている。
【0093】
また、本実施形態では、第2軸受部242の第2軸孔242aが鉛直方向に延びる長穴状に形成されていて、この第2軸孔242aの下端部両側に、当該第2軸孔242aを鉛直方向に直交する方向に沿って凹状に切り欠いてなる拡幅部242bが形成されている。この拡幅部242bは、軸部25を貫通するかたちで取り付けられた係止ピン27が通過可能な長穴状に形成されている。
【0094】
かかる構成により、突起部23の軸部25が被係止部13の段部14に係止した状態では、軸部25は鉛直上側に持ち上げられる結果、第2軸孔242aの上側に位置し、係止ピン27が第2軸受部242の外側面に係止することとなり、軸部25のスライドが規制される。一方、ベース部材21が吊り上げられて突起部23の軸部25が被係止部13の段部14から離間した状態では、軸部25は自重によって鉛直下側に移動する結果、第2軸孔242aの下側に位置し、拡幅部242bによって係止ピン27の通過が許容されることとなり、軸部25のスライドが許容される。
【0095】
また、本実施形態では、前記第2実施形態と同様、内足場2の上面において、軸線X上であって放射方向における第1軸受部241よりも内側となる位置に、固定部であるアンカーボルトABが設けられていて、このアンカーボルトABとレバー部28の間に、軸部25が内足場2から突出した状態で収縮力を発揮するゴム紐状の弾性部材3が介装される。なお、弾性部材3は、前記第2実施形態と同様、内足場2の撤去時に一端31がアンカーボルトABに固定され、かつ他端32がレバー部28に引っ掛けられることにより、内足場2の撤去時において、前記収縮力をもって軸部25の先端がベース部材21の外周縁よりも内側に位置するまでレバー部28を介して軸部25を後退させる。
【0096】
(第4実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態では、軸部25と一体的に設けられたレバー部28と、内足場2の上面に、前記放射方向において軸受部(第2軸受部242)よりも内側となる位置に設けられた固定部(アンカーボルトAB)と、一端31が固定部(アンカーボルトAB)に固定され、他端32がレバー部28に引っ掛けられ、軸部25が内足場2から突出した状態で収縮力を発揮する、伸縮可能な弾性部材3と、を備え、軸受部(第2軸受部242)は、前記鉛直方向に延びる長穴状の軸孔(第2軸孔242a)によって軸部25を支持し、軸孔(第2軸孔242a)は、前記鉛直方向の下端部両側に、軸孔(第2軸孔242a)を前記鉛直方向に直交する方向へ拡張してストッパ部(係止ピン27)の通過を許容する拡幅部242bを有し、軸部25が被係止部13に係止した状態では、前記鉛直方向において軸部25が軸孔(第2軸孔242a)の上側に位置することで、ストッパ部(係止ピン27)が軸受部(第2軸受部242)の端面に係止する一方、軸部25が被係止部13から離間した状態では、前記鉛直方向において軸部25が軸孔(第2軸孔242a)の下側に位置することで、拡幅部242bを通じてストッパ部(係止ピン27)の通過を許容し、弾性部材3は、内足場2の撤去時に、ストッパ部(係止ピン27)が軸受部(第2軸受部242)の外側面に係止した状態で他端32がレバー部28に引っ掛けられるものであって、揚重機(図示外のクレーン)によって内足場2が吊り上げられ、ストッパ部(係止ピン27)が自重により軸孔(第2軸孔242a)の下側へ移動し、拡幅部242bによりストッパ部(係止ピン27)による軸受部(第2軸受部242)の端面との係止状態が解除された状態で、弾性部材3の収縮力によって軸部25の先端が内足場2の外縁よりも内側に位置するまで軸部25を後退させる。
【0097】
かかる態様によれば、内足場2を撤去する際に、弾性部材3の収縮力により自動的に軸部25を後退させることができる。これにより、内足場2の撤去に際し、軸部25を後退させることによって行う、被係止部13に対する突起部23の係止状態の解除作業を省略することが可能となり、内足場2の撤去作業をさらに容易に行うことができる。
【0098】
しかも、本実施形態では、突起部23の軸部25が被係止部13に係止した状態で、軸部25が第2軸孔242aの上側に位置して係止ピン27が第2軸受部242の端面に係止し、突起部23の軸部25が被係止部13の段部14から離間した状態で、軸部25が第2軸孔242aの下側に位置して拡幅部242bを通じて係止ピン27の通過を許容する構成となっている。このため、係止ピン27の着脱を伴うことなく、突起部23の軸部25が被係止部13の段部14に係止して軸部25のスライド規制が必要となる状態では、係止ピン27により軸部25のスライドを規制し、突起部23の軸部25が被係止部13の段部14から離間して軸部25のスライド規制を必要としない状態では、拡幅部242bにより軸部25のスライドを許容することができる。このように、必要に応じて軸部25のスライドを自動的に規制し、又は解除可能となることで、内足場2の撤去作業性のみならず内足場2の取付作業性も向上させることが可能となり、内足場2の着脱作業のさらなる容易化を図ることができる。
【0099】
特に、上記軸部25のスライド規制を自動化する構成を、前記弾性部材3により軸部25の格納を自動化する構成と組み合わせることで、これら両構成が有機的に関連し、内足場2の撤去時に弾性部材3をレバー部28に引っ掛けるのみで、係止ピン27による係止状態の解除と、弾性部材3による軸部25の格納とを自動的に行うことができる。これにより、内足場2の撤去作業に係る工数が各段に低減され、当該内足場2の撤去作業をより一層容易なものとすることができる。
【0100】
〔第5実施形態〕
図15~
図19は本発明に係る内足場の取付構造の第5実施形態を示しており、本実施形態は、前記第1実施形態における突起部23の具体的態様を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については前記第1実施形態と同様である。そのため、前記第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0101】
本実施形態に係る内足場の取付構造は、
図15、
図16、
図17に示すように、内足場2のベース部材21の外周縁部に、放射方向(径方向)の外側へ開口する受容溝210が切り欠かれていて、この受容溝210に、突起部23を構成する回転ピン29が回転可能に支持されている。すなわち、本実施形態では、回転ピン29が回転することにより、水平方向に概ね平行となる水平位相と、鉛直方向に概ね平行となる鉛直位相と、に変位するように構成され、前記水平位相において回転ピン29の一端がベース部材21の外周縁よりも外側に突出する一方、前記鉛直位相において回転ピン29の両端がベース部材21の外周縁よりも内側に位置する構成となっている。
【0102】
受容溝210は、放射方向の内側に設けられ、鉛直方向の下端部が底壁210cによって閉塞された有底部210aと、放射方向の外側に設けられ、鉛直方向に貫通する開放部210bと、を有する。すなわち、この受容溝210は、内側が有底部210aとなっていて、鉛直上側のみが開口し、鉛直下側は底壁210cによって閉塞されている一方、外側が開放部210bとなっていて、鉛直両側が開口している。
【0103】
有底部210aは、鉛直下側を閉塞する底壁210cと、この底壁210cの両側からそれぞれ鉛直上側へと垂直に立ち上がり、ベース部材21の周方向両側に対向する一対の側壁210d,210eと、を有する。そして、有底部210aは、回転ピン29の厚さTと同等以上の深さ(ベース部材21の上面から底壁210cまでの鉛直距離)を有する。これにより、当該底壁210cと一対の側壁210d,210eにより構成される収容空間に回転ピン29の他端部を収容することで、回転ピン29の前記水平位相を可能としている。
【0104】
開放部210bは、周方向の両側に、有底部210aから連続する前記一対の側壁210d,210eが対向して配置され、鉛直方向の両側及び放射方向の外側が開放されている。さらに、開放部210bは、後述する回転ピン29の厚さTと同等か当該厚さTよりも若干大きい径方向幅を有していて、一対の側壁210d,210eには、回転ピン29の両側に突設された一対の支持部293a,293bを軸受け可能な凹状の被支持部130a,130bが窪み形成されている。これにより、開放部210bでは、回転ピン29の両端部を鉛直方向に突出させることで、回転ピン29の前記鉛直位相を可能としている。
【0105】
回転ピン29は、一定の厚さT及び幅Wを有する角柱状に形成された一般部290と、一般部290の一端部に設けられ、水平位相において受容溝210の有底部210a内に収容される第1端部291と、一般部290の他端部に設けられ、水平位相においてケーソン躯体1の被係止部13の段部14に係止する第2端部292と、を有する。なお、第1端部291及び第2端部292は、それぞれ先端に向かって厚さTが徐々に減少する概ね円弧状に形成されている。これにより、回転ピン29が傾斜状態にある場合でも、内足場2の取付時に第2端部292が段部14に当接した際、回転ピン29に対して第2端部292を持ち上げるようなモーメントを発生させて、自動的に水平位相に変位可能としている。
【0106】
一般部290は、幅方向の両側に突出する一対の支持部293a,293bを有し、この一対の支持部293a,293bがそれぞれ受容溝210の開放部210bにおける被支持部130a,130bに回転可能に係合する。これにより、回転ピン29は、一対の支持部293a,293bが受容溝210の被支持部130a,130bに係合することにより、一対の支持部293a,293bを介して受容溝210の被支持部130a,130bに回転可能に支持されている。
【0107】
以上のような構成から、回転ピン29は、第1端部291が受容溝210の底壁210cに当接すると共に、第2端部292がケーソン躯体1の被係止部13の段部14に当接し、第2端部292が段部14に当接することによって発生する矢印D1方向のモーメントを底壁210cによって支持することで、前記水平位相が維持され、ケーソン躯体1に対する内足場2の取付状態が維持される。一方、この水平位相から回転ピン29が矢印D2方向へ回転することにより、開放部210bにおいて、第1端部291が鉛直上側に突出し、回転ピン29の第2端部292が鉛直下側に突出することで、回転ピン29の前記鉛直位相が維持される。
【0108】
(内足場の取付方法)
以下に、内足場2の取付方法について、
図18に基づいて説明する。
【0109】
内足場2の取付に際しては、まず、
図18(a)に示すように、突起部23について、回転ピン29の第2端部292をベース部材21の外周縁よりも外側へと突出させた状態(例えば水平位相)で、ベース部材21の上面に足場部材22が固定された内足場2を、図示外のクレーンによって揚重し、ケーソン躯体1の内側へ吊り込む。なお、この内足場2をケーソン躯体1の内側へ吊り込んだ状態では、回転ピン29は必ずしも水平位相となっている必要はなく、第1端部291が内側(有底部210a側)へ傾倒した傾斜状態にあればよい。
【0110】
そして、
図18(b)に示すように、内足場2の突起部23の周方向位置をケーソン躯体1の被係止部13の周方向位置に合わせた状態で内足場2を下降させ、ベース部材21の外周縁よりも外側に突出した回転ピン29の第2端部292を被係止部13の段部14に当接させる。すると、この回転ピン29の第2端部292と段部14の当接により発生するモーメントによって第1端部291が有底部210aの底壁210cに当接して、回転ピン29が段部14に係止する。これにより、内足場2を構成するベース部材21が突起部23を介してケーソン躯体1の内側に支持され、ケーソン躯体1に対する内足場2の取付が完了する。
【0111】
(内足場の撤去方法)
以下に、内足場2の撤去方法について、
図19に基づいて説明する。
【0112】
内足場2の撤去に際しては、まず、
図19(a)に示すように、内足場2の足場部材22に図示外のクレーンに接続されるワイヤロープWを掛ける。その後、図示外のクレーンによって内足場2を吊り上げる。
【0113】
すると、内足場2の上昇に伴い、
図19(b)に示すように、回転ピン29の第2端部292が、内足場2よりも鉛直上側に積み上げられたケーソン躯体1xの下端部に当接し、当該第2端部292を鉛直下側へと押し下げるようなモーメントが作用することで、回転ピン29が鉛直位相にする。これにより、回転ピン29の第1端部291と第2端部292が共にベース部材21の外周縁よりも内側に位置することとなって、回転ピン29がベース部材21に格納される。
【0114】
そして、このまま回転ピン29を鉛直位相に維持した状態で、
図19(c)に示すように、図示外のクレーンによって内足場2を上昇させることにより、ケーソン躯体1に対する内足場2の撤去が完了する。
【0115】
(第5実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態では、内足場2は、外周縁部に切り欠かれた受容溝210を有し、受容溝210は、前記放射方向の内側に設けられ、鉛直下端部が底壁210cにより閉塞された有底部210aと、前記放射方向の外側に設けられ、前記鉛直方向に貫通する開放部210bと、を有し、突起部23は、概ね直線状を呈し、中間部(一般部290)が受容溝210の開放部210bに支持されることで中間部(一般部290)を支点として回動可能に設けられていて、水平方向に概ね平行な水平位相と、前記鉛直方向に概ね平行な鉛直位相と、に変位し、前記水平位相では、前記放射方向の内側に指向する一端部(第1端部291)が底壁210cの上面に当接して突起部23の回動を規制した状態となり、前記放射方向の外側に指向する他端部(第2端部292)が内足場2の外周縁よりも外側に突出して被係止部13に係止することにより内足場2が自立可能に保持される一方、前記鉛直位相では、開放部210bにおいて突起部23の両端部が内足場2の上下方向に指向した状態となり、突起部23の両端部が前記放射方向において内足場2の外周縁よりも内側に位置することにより内足場2の昇降が許容される。
【0116】
かかる態様によれば、突起部23を構成する回転ピン29の回転方向の位相を変更するのみによって、被係止部13に対する突起部23の係止状態と当該係止状態の解除とを切り替えることができる。これにより、前記第1実施形態のように、軸部25をスライドさせて被係止部13に対する突起部23の係脱状態を切り替える態様に比べて、被係止部13に対する突起部23の係脱状態の切替作業を比較的容易に行うことができ、ケーソン躯体1に対する内足場2の着脱作業をさらに容易かつ効率的に行うことができる。
【0117】
さらに、本実施形態では、突起部23(回転ピン29)は、内足場2の取付時において、内足場2の外周縁よりも外側に突出し、かつ前記水平位相と前記鉛直位相との間の傾斜位相にある場合、内足場2の下降移動に伴い他端部(第2端部292)が被係止部13に当接することにより、一端部(第1端部291)が底壁210cに近接する方向へ回動して、前記水平位相に自動的に変位する。
【0118】
かかる態様によれば、内足場2の取付時に、内足場2を下降させるのみで、傾斜位相にある回転ピン29が被係止部13に当接することによって自動的に回動し、当該回転ピン29を水平位相へ変位させることが可能となる。これにより、内足場2の取付時において、回転ピン29が予め完全な水平位相となっていない場合でも、当該回転ピン29を自動的に水平位相へと変位させ、回転ピン29と被係止部13の係止状態を確保することが可能となり、内足場2の取付作業を一層容易に行うことができる。
【0119】
加えて、本実施形態では、突起部23(回転ピン29)は、内足場2の撤去時において、内足場2の上昇移動に伴い内足場2の外周縁よりも外側に突出した他端部(第2端部292)が内足場2よりも鉛直上側に積み上げられたケーソン躯体1xに当接することにより、一端部(第1端部291)が底壁210cから離間する方向へ回動して前記鉛直位相に自動的に変位する。
【0120】
かかる態様によれば、内足場2の撤去時に、単に内足場2を上昇させるのみで、水平位相にある回転ピン29が上段のケーソン躯体1xに当接することにより自動的に回動し、当該回転ピン29を鉛直位相へ変位させることが可能となる。これにより、内足場2の撤去時において、作業者が回転ピン29に何ら手を加えることなく、当該回転ピン29を内足場2に自動的に格納することができ、内足場2の撤去作業をより一層容易に行うことができる。
【0121】
本発明は、前記各実施形態において例示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適用対象の仕様等に応じて自由に変更することができる。
【0122】
とりわけ、前記各実施形態においては、本発明に係る内足場の取付構造を、RCセグメントからなるリングピース11を組み立ててなるケーソン躯体1に適用したものを例示している。しかしながら、本発明に係る内足場の取付構造は、上記RCセグメントからなるリングピース11に限定されるものではなく、
図20に示すように、例えば周知のアーバンリング工法に多く採用されるスチールセグメントからなるリングピース11´を組み立ててなるケーソン躯体1´にも適用可能であることは言うまでもない。なお、このスチールセグメントからなるケーソン躯体1´に対しては、前記各突起部23を、ケーソン躯体1´の内側に突設されたリブ15によって形成される段差部150に係止させることで、内足場2をケーソン躯体1´の内側に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0123】
1…ケーソン躯体
1x…ケーソン躯体
1´…ケーソン躯体
10…単位土留壁
11…リングピース
11´…リングピース
12…刃口リング
13…被係止部
14…段部
15…リブ(被係止部)
150…段差部
2…内足場
21…ベース部材
210…受容溝
210a…有底部
210b…開放部
210c…底壁
210d,210e…側壁
22…足場部材
23…突起部
24…軸受部
241…第1軸受部(軸受部)
241a…第1軸孔(軸孔)
242…第2軸受部(軸受部)
242a…第2軸孔(軸孔)
242b…拡幅部
243…第3軸受部(軸受部)
243a…第3軸孔(軸孔)
243b…開放溝
244…第4軸受部(軸受部)
244a…第4軸孔(軸孔)
244b…開放溝
25…軸部(突起部)
250…挿入孔
26…ストッパ部
27…係止ピン(係止部材)
271…ボルト
272…ロックナット
28…レバー部
29…回転ピン(突起部)
291…第1端部(一端部)
292…第2端部(他端部)
3…弾性部材
AB…アンカーボルト(固定部)
X…軸線